◆−Cheers!8【いざ出陣! ゆくぞ戦うお姫様(後編)】−みてい (2001/10/21 00:14:31) No.17665
17665 | Cheers!8【いざ出陣! ゆくぞ戦うお姫様(後編)】 | みてい | 2001/10/21 00:14:31 |
こんにちは、みていです。 やっと書けたぞの第8話です。 どこからどこまでが本線でどこが伏線だかわからなくなってまいりました。 思わぬところが伏線となります。 暇な方、探してみましょう♪ あらためまして、第8話です。 …ワタシ、ゼル嫌いじゃないんですよ。 ………キツイおねーさんは好きですか(爆) ではでは、おつきあいくださいませ。 ********************************************************************** ――― 今となっちゃ笑い話だけど ――― あたしのカンもたまには外れるという代表格 ――― あの子に言わせると『森』のイメージらしーわよ ――― そう言われればそうかもね ――― …よっぽど気ぃ許した相手しか侵入を許さないんだから ******************** あたしやシャルレさんまで巻き込んだアメリアの名案とはなんとウェディングドレスの制作! 完成するまでだいたい2ヶ月、イヤでも発破かかるわね、ゼル。 【いざ出陣! ゆくぞ戦うお姫様(後編)】 「へぇぇぇぇぇぇ…」 「なんだ、その『へぇぇぇぇぇぇ…』ってのは」 「そんなふうに伝わってたのねぇ」 あたしが素直に感想を述べると、ゼルはがっくしと首を落とした。 「お前なぁ」 「意外と言えば意外、なるほどって言えばなるほどよ。 当事者から見ればね」 …言ってて悲しいもんがあるけど……。 ぱさ。 「それで?どーするワケ」 「どうもこうも無い。そのままだ」 あたしの手から放られた紙の束に視線を落とし、ゼルは答えた。 それに書かれているのは世間のウワサ、というヤツである。 今から五年くらい前、サイラーグの壊滅と『神聖樹(フラグーン)』と賢者レゾについて――― ゼルが持ってきた資料にはそれが事細かに書かれていた。 主に黒インクで書かれた中に、ところどころ青のただし書きが付いている。 「それでよろしいのですか?」 「前にも言ったが。 実際がどうだろうと、ヤツに救われた人間の感情までないがしろにする気は無い」 「じゃあ、『あっち』はどうなってんのよ」 「わたしはゼルガディスさんから後から聞いて事実を知りましたけど、おそらくそこまで掴んでいる人はいないと思います。 …にわかには信じがたい話ですし」 あたしの問いにアメリアが答える。 サイラーグの壊滅について、セイルーンでも内々に調べる動きがあったが、結局よくはわからないということになってしまったらしい。 生存者がほとんどいないということもそうだけど、事実を知るにはまず『赤法師レゾ』の認識を根底から変えなきゃなんないし…。 魔道士のうちですら『魔王シャブラニグドゥ』が実在することすらマユツバだと思ってるのが大多数(昔はあたしもその一人だった)に、それに加えてあたしたちが見たレゾは、明らかに聖人君子ではない。 「……なぁリナ」 「何よ」 「結局、何がどうなったんだ?」 「「「「「………………………。」」」」」 「こぉんんの生ぬくウスラくらげっ!! 今の今まで何を聞いてたのよっ!? さっきから延々延々ゼルの傾向と対策を話し合ってたぢゃないのよおおおっ!!」 ずっぱ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ★ 「……生あったかくてうっすらクラゲなんですか…。 うっすらなのにクラゲ度がアップしてるように聞こえませんか…?」 「『傾向と対策』って、まるで試験のようですわ…」 「毎度毎度あいつらときたら…」 「そのうちリナさんが空しくなって止めると思いますから」 なんか後ろでぼそぼそ言ってる気がするけども。 あまし無駄な体力使いたくないのでこの辺で切り上げ、ガウリイにもわかるように説明を考える。 「いい? ぷるるんクラゲのガウリイにもわかるよーに説明したげるから、反対の耳からこぼれないように押さえて聞きなさいっ!」 「おうっ」 応えて左の耳を押さえるガウリイ。 ……半分ジョークだったんだけどな☆ ――― ことの始まりは五年ほど前。 サイラーグが壊滅させられた。己が目的を果たすため、あたしたちを煽るために。 レゾに与えられた力を持ってレゾを超えようとしたコピーは、その妄執ゆえにあたしたちに勝機をもたらした。 サイラーグの『神聖樹(フラグーン)』を墓標として。 それからまたしばらくして、インケン魔族が来たせいで聖木はその瘴気を吸収しきれず弾けてしまい、紆余曲折あってサイラーグは本当の荒野と化した。 ……これがあたしたちの知ってる真実。 でも、世間に広まっている噂はかなり違っていて。 サイラーグの壊滅の原因は仮説はあるもののこれといって決め手が無く。 一番派手で英雄譚(ヒロイック・サーガ)的なものが多く知れ渡っている。 『サイラーグで再び魔獣ザナッファ−が復活し、それを赤法師が聖木に封じた』――― 噂の出所を探りに言った青書きの言い分では。 いわく、赤法師レゾはあらゆる魔道に精通し、巨大な魔力容量(キャパシティ)を持っている。 いわく、聖木が消えた後のサイラーグには妙な妖気が漂っていない。 いわく、赤法師が壊滅直前にサイラーグへ向かうのを目撃した人がいる。 いわく、かつてのサイラーグでは魔獣ザナッファ−が暴走し、壊滅している。 いわく、レゾの噂を聞いてサイラーグへ向かう途中だった人が巨大な光に包まれた後『神聖樹(フラグーン)』が甦るのを見ている。 そんなこんなが重なって、一見荒唐無稽なそのウワサは信憑性を持って世間に広まった。 ――― 赤法師レゾの最期は、彼の最後の功績とともに語り継がれていく。 「ふむふむ」 うなずくガウリイ。 …この男にどこまで頭が追いついたやら☆ 「そして二年前、サイラーグに再び『神聖樹(フラグーン)』が植樹された。 その枝はかつて魔獣を倒した一族の故郷に在ったものであり、さらにその一族の長が俺の後見人になってもらったランディ氏だ。 ついでに言えば、俺は『そんな偉業』をしたレゾの血縁。 …悪くない状況だ」 にやりと笑みを浮かべるゼルガディス。 たしかに、それがそのまま使えるならゼルにとってかなりの強みとなるけど…。 「…あの、ゼルガディスさん。 このこと、ランディさんには伝えられたんですか」 えっ!? アメリアの発言にあたしたちは面食らう。 「……………まだだ」 えええええええっ!?? 「幸い、と言うのも何ですが、事実を知っているのはこの場にいるわたしたちだけです。 ゼルガディスさんの赤法師レゾに救われた方々の気持ちを大切にしたいという気持ちもわかりますしわたしもそう思います。 でも…でもそれを公の場で使うということは、ランディさんを表舞台に引っ張り出すことになります。 今からでも間に合います。ゼルガディスさんっ」 真摯に訴えるアメリア。 ゼルはその眼を真っ直ぐ見返しながらも苦渋の表情を浮かべる。 ランディさんは再三促された官位をかたくなに辞退していると聞いた。 セイルーンで公式に姿を見せたのは一度だけで、それも一日といなかったらしい。 …それでも、『ランディ=ガブリエフ』の名は功労者の一人として多くに知られることになった。 「もしかして、もうそう答えちまったのか?」 問うガウリイにゼルは無言で肯定とした。 「すまん」 何も言わずに事態を見ていたシャルレさんにゼルは頭を下げる。 「謝罪? 何に対してですか」 「…そこまで考えが至らなかった。 結果、ランディ氏とあんた、イズに対しても余計な負担をかけてしまうことに対してだ。 ガウリイにも」 「いや、オレはまぁ、そんなに気にしないけどよ」 声を絞り出すゼル。 端から見ても、自分の行動を悔やんでいるのがわかる。 「わかってないですわね」 「シャルレさん…?」 「ランディはあなたに『どうぞお好きに』と言ったはずです。 つまり、あなたの行動に一切口を挟まないということ。 あなたの行動によって自分が被害をこうむろうと、それは見通しの甘かったランディ自身のせい。 そのランディに従ったわたしや兄も同様です」 うわ、きっつ〜い。 この言い方、見かたを変えると「ランディさんはゼルを過大評価していた」ってことになる。 もしくは、「全幅の信頼をおいてもらった相手にゼルは恩を仇で返した」。 どー言い換えても、キツい。 シルフィールも顔をしかめている。 「それからもう一つ」 「もういいですシャルレさんっ!」 「アメリア様、『あなた』が止められますか?」 たまりかねたアメリアが間に入るが、逆に一言で言い負かされる。 「ゼルガディスさん。 あなたはアメリア様の何を見てこられたのですか」 「…何だと」 さすがにゼルもこの一言には黙ってない。 ゼルがアメリアのこと大事にしてるのはここにいる者全員が ――― シャルレさんだって知ってるはず。 なのに、どうして…? 「わかりませんか。 いつも明るい笑顔を浮かべられたアメリア様だけを見てこられたんですか」 まるで実際に胸を突かれたように一歩下がるゼルガディス。 その姿を見たシャルレさんは安堵とも落胆ともつかないため息を小さくついて部屋を出て行った。 「すまんが、独りにしてくれないか…」 うめくようなゼルの言葉に、あたしたちは抗う言葉が無かった。 *********************** 「あの方の奥様ですのに、ずいぶんと歯に衣を着せない物言いをなさるのですわねっ」 憤慨したシルフィールが語尾を強める。 今この部屋にはあたしとシルフィール、それにガウリイ。 アメリアは部屋を出たものの、ゼルが中にいる部屋の前を動かなかった。 シャルレさんが使ってる部屋にはビィしかおらず、カーテンのひらめく窓からは青い空が見えた。 「ランディに会ったことがあるのかぁ?」 「はい、二度ほどv」 おーい、後ろにハートが飛んでるよー。 って、 「二度?ランディさん二回セイルーンに来てるの?」 「い、いえっ。 一度はサイラーグの方でですわ」 …そか。渡された三本のうちの一本を確認に行ったんだ。別に不思議なことじゃないわよね、うん。 ……………別に不思議なことじゃないわよね? なんでこんなにあからさまに動揺してんのよ彼女。 「それよりも、今はシャルレさんの話ですっ!」 むっ、無理やり話を戻したわね。 「うっかり言ってしまったゼルガディスさんにも非はありますけど、もうちょっと表現を考えられたほうがいいですわ。 後からの質問も、アメリア様の前であんなふうに言われなくても…」 う〜みゅ、かーなりおカンムリだなぁ。シルフィール。 「『悪役』やるのも疲れるんじゃねーかなぁ」 ぼそっと呟いたガウリイにあたしは内でばらばらになっていたピースが繋がる。 「どういうことですの、ガウリイ様」 そういう、ことか ――― 「ねぇシルフィール。 シャルレさんがわざわざああ言ったのは、それが手っ取り早かったからだと思うのよね」 資料に書き加えられていた青字はつい最近見覚えのあるもの。 ウワサの裏を取ることができるような情報網を持った人間のもの。 すなわち、ビィを預けていったイズの筆跡。 ゼルはイズの協力を得ている。 そしてシャルレさんが言ったようにイズはランディさんとも繋がっている。 つまり、イズがゼルに流している情報はランディさんにも流れている可能性がある。 いやおそらく流れている。 そう考えれば聖堂の裏での会話にも納得できる。 「どー言ったらいいかよくわかんないけど、ゼルって思い込んだら一直線ってとこあるでしょ。 なまじ頭も切れるから下手に言葉を連ねたって理詰めで反論されるわ。 だったら一番効果のあるのを一発ドカンと投げてやったほうが目が覚めるんじゃない?」 …かく言うあたしも一発かまされた一人だし…。 ってもしかしてあたしもそーゆータイプってことかしら。 う〜む。 「それでも…」 「ストップ。 あたしたちが外野であーでもないこーでもない言っても意味無いわ。 あの言い方がよかったか悪かったかなんて後で当人が決めればいいことよ。 そうでしょ?」 「…そう、ですわね。 わたくし、ちょっと感情的になってしまったようですわ」 恥ずかしそうにシルフィールは手で頬をおおった。 とりあえず怒りは解けたようである。 *********************** 「リナ=インバースさんですね」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜またかいっ! 「少々お時間よろしいですか」 「イヤ」 「そう言わずに」 「しつっこいわねぇ。 それであんたはどこの誰で何の用があってわざわざあたしを指名して確認してまでここまで来たワケっ!」 「ゼルガディス殿の身元保証人になられたランディ=ガブリエフ殿の話を」 「で、あんたは誰?」 「自分はエルトライゼ家のサクアと申します」 「そ。」 「それでですね、ラ」 「あたしの連れ合いのおにーさん。以上!」 一瞥もせずのしのしと歩き去る! もぉ何人目だか覚えたくもない。 あれからあたしたちはバラバラに動いている。 そのほうが情報を多く仕入れられると踏んだからだ。 がっ。 この方法は逆に言うとあたしたちも情報収集の対象になるのだ。 それくらいなら予想していたことだからそれほど腹は立たない。 っっがっ。 今あたしが仕入れることのできた情報はひっじょうに少ない。 訊かれるのは同じよなことばかり。 ゼルのこと訊かれるのは予想済み(そのときは『けっこうおちゃめなんじゃない』と答えることにしている)だったけど、想像以上にランディさんに対する質問が多い。 ―――『話』は、かなりのスピードで広がってる。 アメリアが崩せないから搦め手でいくつもりでやってるんだろうけど。 ……たぶん、アメリア並みに崩せないんじゃない♪ 「おー、いたいた」 「ガウリイ」 いささか疲れたように、いや、疲れてるガウリイがこっちに駆けてくる。 あたしは廊下の窓の桟に腰かけて彼を待った。 「いや〜、大変だなこりゃ」 頭をかきかきガウリイはあたしの横の壁にもたれる。 「けっこう訊かれたんでしょ」 「さすがのオレでも何言ったか覚えてるくらい何度も訊かれたぞ」 『ランディ=ガブリエフ』について一番詳しい情報を聞こうと思ったら弟のガウリイか名代のシャルレさん。 シャルレさんはばっさり切り捨ててそうだけど、頭脳労働非専門のガウリイにはとってもとってもわずらわしいものだったに違いない。 …あたしもとってもわずらわしいけど。 「何て答えたのよ」 「『オレの兄貴』。 も一つは『オレは敵に回したくない』」 指折り(って言っても二つだけど)しながらどきっぱし言い切ったガウリイ。 最初のは文句ナシだけど、二つ目は意味深ね…。 「リナはどうだったんだ?」 「同んなじよなもんよ」 「同じようなものですねぇ」 アメリアのつぶやき。 「オリジナリティの無い…」 ゼルのぼやき。 夜になって顔再び顔つき合わせて互いの集めた情報を披露してみれば。 「思ったよりも、少ないですわね…」 シルフィールのため息。 「ぶび…」 慰めてるのかおなかが空いているのかわからないビィの鳴き声。 「ゼルのことかランディのこと。 なんかこれっくらいの嬢ちゃんが『オルは、見タ?』って訊かれたときには嬉しかったぞ☆」 ――― そう。ガウリイが特定の会話を覚えてるくらい互いに同じような情報を持ち寄った。 「でも、的が絞れるじゃないですか」 「たしかにね」 アメリアの言うとおり、今のところ関心はこの二点だけである。 加えて明るい要素がもう一つ。 こういう情報収集をする際に邪魔になる根拠の無い流言飛語は今回ほとんどと言っていいほど無い。 おそらく下手なウワサを流そうものならゼルの隣にいるアメリアやアメリアの後ろにいるフィルさんの心象を悪くしてしまうからだろう。 二人が一目置いているランディさんも同様に思われているようだ。 だからこそ、相手を潰すためには反論できない『証拠』を掴む必要がある。 「接触してきたのはエルトライゼ、ストライジェ、クラヴロートルだけか?」 「ええ、そうでしたわ」 「…忘れた」 「どういうスジなわけ?」 「エルトライゼはいわゆる没落貴族というやつだ。 ストライジェはエルトライゼよりはもう少し上の役についていて、先々代の皇后のいとこの流れを汲んでいる。 クラヴロートルは隣都市の大地主でここ数年は定例会議に時々顔を出すようになっている。 …そいつらが『候補』だ」 「へぇ、けっこう把握してんだ」 「お前、俺を何だと思っている。 だてに図書館にはりついてたわけじゃない」 からかうと憮然とした返事が返ってくる。 何の候補かは言わなかったが、よーするにゼルの障害その1である。 「エクトライゼは無かったか?」 「ゼルガディスさん、そこが何か?」 「根拠は無いが、気になる」 エクトライゼはもともとはエルトライゼと同じくしていたものだったのがあるときに分かれたもので、現在はストライジェの傘下にある。 そのせいもあってエルトライゼとエクトライゼはとっても不仲良し。 発言力とかは比べ物になんないらしーけど…。 首をひねったとき、ぱと顔を上げるガウリイが視界に入る。 誰か来たわね。 ゼルもアメリアも気配に感づいて対象を探る。 「び」 「何?」 「びびっ☆」 眠っていたはずのビィがぱっちり目を覚まし、部屋の窓に駆け寄る。 がっちゃんがっちゃんっ ……背中に『開けてv開けてv』って文字が見える気がする…。 「こんばんハ〜。開けれ」 窓の外から声。 …ここって4階のはずだけど。 「開けれってばよー。疲れるだろぉがよー」 「びっびっびっびっ☆」 開錠を急かす声と鳴き声。 あたしたちの緊張感は霧散し、なぁんだか何ともつかない妙な空気が漂う。 「あの、開けてよろしいんでしょうか」 「開けてやれ、シルフィール」 ゼルに言われ、窓に一番近くで困っていたシルフィールが窓の鍵を外す。 わずかに室内より涼しい空気とともに入ってきたのは。 「おっ、こりゃ皆さんおソロイでっ」 「…よく捕まらなかったな」 「人徳っしょ」 「どれが?」 シャルレさんに一蹴された夜中の来訪者=イズは窓から部屋に入り込んできた。 「あたしたちとの接触は極力避けるんじゃなかったの」 「そう言うなって。 世界は臨機応変に考えなきゃダメっしょ」 ビィをなでくりまわしながらイズはいつもの軽妙な口調で答える。 「で、どんな話してたわけ? ちょっくらこのイズさんに聞かしてくんないかな」 ************************* どんよりどよどよ。 雲行きが怪しい。 「降りそうですわね」 「そーね…」 かちゃとあたしの隣に紅茶の入ったカップが置かれた。 「ありがと」 ぽっぽ〜。 窓の外、隣の部屋のベランダでハトさんが雨宿りの準備をしている。 「ねぇ、シャルレさん」 今朝からゼルは図書館にこもって資料をひっくり返している。 ガウリイもついてったけど、何かの役に立つのかな。 シルフィールは城下に戻ったし、アメリアは公務をこなしている。 「何か」 「昨日イズと何内緒話してたのよ」 あたしたちの集めた情報をひとしきり聞いたイズはこう返してきた。 (ま、そんなモンっしょ。 おれなんぞ使わなくても十分渡り合ってんじゃねぇのか、ゼルガディム) (………ゼルガディス) (すまああああああああああんっ!おいおい覚えるから許せっ!) (今覚えろ今) (ゼルガディスゼルガディスゼルガディスっ。 おし覚えた。 てことでおれ帰るわ) ――― ここで終わったらイズは何しにわざわざ来たんだって話になるんだけど。 窓から身体をすっかり出した状態で一応見送りに行ったシャルレさんに声を潜めてこう訊いていた。 「『花はもう散ったか』だったわよねたしか。 対してシャルレさんは『これから咲くのにもう散ってどうするんです』って答えたわ」 「耳がよろしいですのね」 「誉め言葉として受け取っとくわ。 で、どういう意味なワケ?」 あたしが彼女を見ると、シャルレさんはあたしを真っ直ぐ見返してきた。 「『ランディは無事か』『当たり前でしょう』 訳せばそんなところです。 …数少ない噂を埒も無いと切り捨てるのは危険かもしれません」 「ランディさんに何か起きてるの?」 知らず知らずに声を低く小さくしていた。 あまり考えたくないことだが、ありえないことではない。 シャルレさんは肯定も否定もしなかった。 ――― その二日後、イズはセイルーンを発った。 『カーニャには気をつけろ』という言葉を残して。 /続/ ********************************************************************** …きっとわかりにくかったですよね〜(汗) すいません。現時点でお答えできる範囲は答えさせていただきますので(謝) 全14話の予定なんで、あと6話。 入りきるのか、おーい。 ○今回の小ネタ:ユズハとオルハ。 今回登場しました名前は、某所にて考えていただきました。 感謝ですっ。 ではでは、みていでございました。 多謝v |