◆−オリジナルにチャレンジです。−tsunami。 (2001/11/3 21:28:09) No.17895 ┣00。−tsunami。 (2001/11/3 21:36:15) No.17897 ┣01。−tsunami。 (2001/11/4 03:08:41) No.17911 ┃┗はじめまして☆−風林みつき (2001/11/4 14:18:03) No.17919 ┃ ┗Re:はじめまして☆−tsunami。 (2001/11/4 19:33:28) No.17927 ┣02-1。−tsunami。 (2001/11/4 18:53:06) No.17924 ┣02-2。−tsunami。 (2001/11/4 18:54:59) No.17925 ┣--- クーベタッドの花嫁 --- 03-1。−tsunami。 (2001/11/5 22:45:29) No.17959 ┣03-2---クーベタッドの花嫁。−tsunami。 (2001/11/6 23:12:21) No.17976 ┃┗嫌がらせのようにだなんて・・・−風林みつき (2001/11/6 23:44:39) No.17978 ┃ ┗ひょこっ。−tsunami。 (2001/11/7 21:15:56) No.17989 ┃ ┗〃さん〃はいらないでさあっ!−風林みつき (2001/11/8 22:33:10) No.18005 ┃ ┗叫んでみる(笑)。−tsunami。 (2001/11/14 00:13:25) NEW No.18095 ┗03-3---クーベタッドの花嫁。−tsunami。 (2001/11/14 00:08:30) NEW No.18094
17895 | オリジナルにチャレンジです。 | tsunami。 | 2001/11/3 21:28:09 |
こんばんわです、tsunamiと申しますです。 ずっと昔にスレパロなお話を何度かか投稿させていただいたものです。 今回投稿させていただくのはオリジナルな話だったりするんですが、書き始めてから、早、○ヶ月。 何度も書き直したり、こねくり回しているうちに、『初めて読んだ方にとって意味の通じている文章になっているのか』という勘が働かなくなってしまいました(^^;)。 途中、何度かみてもらっていた友人二人にも、同じ症状が出てきてしまいました(ゴメンね、何度も読ませて(^^;;)<症状を引き起こしてしまった友人達よ)。 そんなわけで、是非とも皆さまのお力を貸していただけないかと、馴染みのあるこちらへお邪魔させていただきに来ました次第でございます。 宜しければ、読んでやってくださいませ。 ご意見感想・突っ込み等々、頂ければ更に嬉しかったりします。 でわでわ(久しぶりなのでドキドキする(^^;;)。誤字ってませんように)。 |
17897 | 00。 | tsunami。 | 2001/11/3 21:36:15 |
記事番号17895へのコメント 0.序章 その年は炎暑だった。とうに季節は移り変わり、抜けるような青空は爽やかだったが、フェンベルク=クーベタッドがアーチを画く門の影から抜け出ると、新市街の色鮮やかな建物の屋根は力強い太陽光に照らされていた。 まだ人通りもまばらといった通りをフェンベルク=クーベタッドを乗せた鹿毛馬は駆け抜けると、クロレの屋敷の門前で前足を跳ね上げるようにして脚を止めた。鉾を交差させ行く先を押しとどめる衛士は、馬体を揺らす鹿毛馬に荒い息を吹きかけられながらも何者かと詰問し、名乗りあげられた名前に数歩あとずさった。 クーベタッド家は、ファイランド国の王都ローエントッドでも古くから名門を誇る家柄である。衛士達の態度は一変し、フェンベルクは騎乗したままで門をくぐることを許された。 その頃のファイランドは、隣国トリストルとの間に干戈を交えており、ともすればふさぎがちになる人々にとって、数ヶ月前に結ばれたばかりのクーベタッドの婚姻は、明るい話題として取り沙汰されることが多かった。 とかく名門の婚姻というだけで、興味は集まりやすい。ましてや、フェンベルクは、美丈夫として知られている男だった。対して、花嫁に迎えられた娘というのがまた変わっている。伝わる話では、身の丈、180cmの大女。トリストル国の一領地、フランボワ領主の娘で、酷い醜女いう噂だった。女だてらに弓を取れば百発百中という腕前。それが、兵を率い攻めこんだフェンベルクの目にとまった。クーベタッド家は、ファイランド百年の平定と云われる続く平安にあって、軍閥の色合いを強く維持しつづけた一門であるが、身分的にいっても釣り合いが悪いということもなかった。容色に関しての不足は、他で補えばいい。ファイランド国は、身分に応じて正妻以外の女性を他に持つことに寛容な国だったから、いかにも丈夫な子供を生みそうなそれを見逃す手はなかった。 白い石灰岩が短い草に埋もれるようにしていくつも点在する、草原の粗雑なフワンボワの砦。ただ、トリストル本国との間にあったというだけの運の悪い地。圧倒的な優位を誇るローエントッドの兵を前に、悲壮な興奮を漲らせていた。 今はクーベタッドの花嫁の身となった――ツィンマリ=バンガは、一度は捕虜の身に陥とされ、ローエントッドまで更迭されてきたのである。 青年が一人、フェンベルクの姿を認めて駆け寄ってきた。 「ツィンマリは?」 落ちついた声で尋ねられ、側に立ったクーベタッドの家人、ユルギスは頭を深く下げた。 「中で、ビスキュイ様とお話されております。取次ぎを願いますので少々、お待ち下さい」 再び頭を下げたユルギスは、入り口に近い待合の部屋へフェンベルクを一人残す許しをもらうと、奥へと姿を消した。 (続きます。) |
17911 | 01。 | tsunami。 | 2001/11/4 03:08:41 |
記事番号17895へのコメント 1.クロレ 近づいてくる足音を聞きつけたフェンベルクの注意は、一瞬、扉の外へ向けられた。クーベタッドの来訪を聞きつけ、待合の部屋まで挨拶をのべに出向いていたクロレ邸の主たる夫人は、その様子に気づきそっと笑みをこぼした。 両開きの扉の向こうから、ツィンマリの待つ部屋まで案内するという侍女の声がかかると、なるべく失礼にならないように振舞おうとフェンベルクは努力しているらしかったが、一礼を残し出ていく様はせっかち以外の何者でもなかった。 フェンベルクの通された部屋は、こじんまりとして、客間というには装飾の少ない感じである。 「いらっしゃいませ。 母が挨拶に行ったって聞いたんだけど、変なこと喋ったりしなかった?」 入り口に立つフェンベルクを出迎えながら、この部屋の主、ビスキュイが早速懸念事を口にした。 「いや。普通の挨拶をされにおいでただけだったが」 ビスキュイ=クロレはローエントッドの女にしては断髪といった、異様な長さの髪の娘だった。 フェンベルクの顔を覗きこみ、嘘を言ってないと判断したらしいビスキュイは「良かった」と笑顔を浮かべた。この娘も、決して背丈の低い方ではないが、奥にみえるツィンマリに比べれば頭一つ違う。その横に付き従うユルギスに、許しなくツィンマリをクロレ邸まで連れでたことを咎める視線を向ければ、まるでそれを遮るようにビスキュイがソファーへ座るようにフェンベルクの前を過りながら言った。 苦笑を浮かべたビスキュイに、ため息を一つ吐き返した。 ユルギスは、クーベタッドの奥方となったツィンマリに敬意を払っていた。それでなくとも、ローエントッドの男は元から女性に甘くできていたから、泣き脅し混じりにでもツィンマリに懇願されたとすれば、ユルギスが嫌とも言えなかったのだろうことは容易に想像ができた。自責を感じずにはいられず青ざめているユルギスを見れば、多少なりとも同情がわかないではない。 「ツィンマリの具合が悪くなった、と聞いてきたんだが?」 だが、珍しく早い時間に仕事を終えることができ、屋敷に戻ってきたというのに迎えにでてくる妻の姿がなかった俺のショックにも、俺は同情したかった。 どこに行ったかの伝言もなく、クーベタッドの屋敷に仕える従者の中でももっとも気心の知れたユルギスの姿もない。ようやく居所をクロレの屋敷の者が伝えにきたかと思えば、ツィンマリが倒れたというのである。 こっちの心労も考えてみろ、と言いたげなフェンベルクの様子をビスキュイは上目遣いでちらっと見て、ため息をついて言った。 「まだ少し、顔色は悪いですけど」 「大丈夫です。すいません、ご迷惑をおかけしました」 ビスキュイの言葉を受け取って、ツィンマリがようやく言葉を発した。見つめ返すフェンベルクの前でそれだけを言うと、後はじっと黙り込み、それ以上言葉を発しそうな素振りを見せない。 どういうつもりなんだと問い詰めようとしたフェンベルクに、恨みがましい声で詰め寄ったのはビスキュイだった。 「今日は帰宅、随分お早かったんですね。 先日、お話したいことがあるから是非にってお願いした時は、待てど暮らせど約束した時間を随分過ぎるまで待っても戻ってきてくれなかったのに」 そういえば、とはたと思いだしたフェンベルクが冷や汗を浮かべた。 もちろんフェンベルクとて、約束を破りたくて破ったわけではない。仕事を言い訳にしても、それが事実でも、だからといってビスキュイがすんなり許してくれるとは思えなかった。 思わぬ攻撃に出鼻をくじかれる形になったフェンベルクの語調は、こうなると弱くならざるを得なかった。黙って屋敷を空けたツィンマリに対して責めるような発言は微塵も許されず、勧められたソファーに身をズブズブと沈めながら、俺もやっぱりローエントッドの男だったとフェンベルクは思い知らされるのだった。 (続きます。) |
17919 | はじめまして☆ | 風林みつき | 2001/11/4 14:18:03 |
記事番号17911へのコメント はじめまして、tsunamiさん。 あたしは詩を愛するあまり、連載ほっぽってる悪循環の見本、風林(かぜばやし)ですー。〃みっきー〃って呼んでやって下さいな。以後よろしく。 オリジナルですかー。すごいですねー!尊敬しますよ。あたしは設定オリジナルでも、スレキャラの個性がないと文才の無さをカバーしきれないので・・・なおさら。 ここでオリジナル小説を連載するって、結構勇気要ると思う(そんなことないですか?)んですが、これからも頑張って下さいね!! では、短いですがこれで! |
17927 | Re:はじめまして☆ | tsunami。 | 2001/11/4 19:33:28 |
記事番号17919へのコメント はじめましてです、み…みっきーさん(なんか、照れますね(笑)<いきなり愛称)。 > ここでオリジナル小説を連載するって、結構勇気要ると思う(そんなことないですか?)んですが はい。勇気、いりました。 『ここで』ってこともさる事ながら、『投稿』ってのですでに。投稿するときには、心臓バクバク。しばらくして冷静になってくると、今度はなんだか落ちこみたくなってきたり(笑)。 でも、開き直り。 一杯、お客さんのおいでてるサイトサマだから<書き殴りサマ。 良い方に考えれば、多くの人に見てもらえるチャンスだし。 お目汚しな存在になってるとしても、あっというまに落ちていってくれるから大丈夫(笑)<ツリー。 あと、一つだけ開き直れない問題は、『スレイヤーズ関連以外でも投稿してよかったよね?』って疑問だけ(^^;;)。 探しても探しても投稿規程が見つからなくって(^^;)。投稿の仕方とかはちゃんと読んだんですけど……(^^;)。スレイヤーズ以外のパロディや時々はオリジナルも投稿されているのは目にしたことはあったので、大丈夫なのかな…と…(管理人サマに対して、非常に申し訳ないことをしてますね、もしや自分(^^;)<基本的なことも踏まえきれてない状態で投稿とは)。 何はともあれ。 書き込みありがとうございましたです(ぺこり)。 読んでくれている存在がいるんだって感動って、ホント、励みになりますです(^^)。 |
17924 | 02-1。 | tsunami。 | 2001/11/4 18:53:06 |
記事番号17895へのコメント 2.フェンベルク そもそも。このたびの隣国トリストルとの争いの発端は、トリストルの世継ぎ問題にファイランド国が嘴を挟みこんだことにあった。 トリストルは、王権の強いファイランドとは違い、政治的決定権は国議会がもっていた。それだけに、議会の立てた時期皇太子候補に対し、異議をもった王妃が近隣諸国の中からファイランドを選び協力を要請したことが、余程脅威にうつったとみえる。日頃、日和見で何事も時間のかかると云われているトリストルにおいて、ファイランドへの宣戦は、迅速に決議された。 対して、ファイランドの国王は壮健な男で、初老という齢をとうに越しているにもかかわらず、継嗣であるディンクロフトの手に王権を委ねる気配さえ見せようとしなかった。ディンクロフトの方もそれに異存はないらしく、宰相、あるいは摂政といった使い勝手のいい肩書きを手に入れ、恵まれた政務の才で存分に采配をふるうことを良しとしていた。 国力、指揮系統だけをとってもファイランドの優位は間違いなく、ましてやトリストルの直属部隊とくれば貧弱としかいいようのないのが伝統だった。昔から、少しでも旗色が悪くなるやいなやすぐに逃亡するので有名だったが、今回もその悪癖は改まっていないようである。ファイランドにしても、それを見込んでいるところがあり、圧倒的な数をみせつけてはいるもののその中身はといえば、有力貴族の子息に旗を持たせ、見かけばかりは派手だが、精鋭というには程遠い粒揃えであった。このような状況下において、最も深刻な被害を受けたのは、両国間の進攻経路途中に在る属領地であると思われた。 都合が悪くなれば、馬の尻を敵に向け、さっさとトリストル本国に引き上げればいい直属隊とちがい、狩り出されたその地の領民たちは逃げだすというわけにはいかない。 ツィンマリの出自であるフランボワもそういった領地の一つだった。攻め入るだけの価値も、魅力も全くない。ヤギを育て、獣の追い、鳥を撃ち落として暮らしている。 攻め落とした領地から捕虜を出させることは珍しくないことであったが、フェンベルクの引き連れてきた捕虜の中に女が紛れ込んでいたことは、フェンベルク自身が矢傷を負って戻ってきたことと併せてローエントッドを一時、騒然とさせた原因となった。 女の捕虜は、ファイランド国では前代未聞だった。 どうしたものか扱いに困り果てていた役人にとって、ツィンマリの払い下げを願い出てきたフェンベルクの申し出は、すぐにでも飛びつきたいものだったに違いなかった。連れてきたのがフェンベルク=クーベタッドなのであるから、そちらへ預け返すのも筋として通ってなくもない。とはいうものの、自分一人の判断で承諾するには、やはり心もとなかったとみえ、執拗に繰り返されるフェンベルクの要求をかわしながら、戦地にいるはずのディンクロフト摂政殿下に判断を仰ぐことにした。 いるはず、というのは、トリストルとの防衛線を護る隊の総大将としてディンクロフトは、いざと言う時の判断を下す必要から幕舎にいるということにはなっていたのだが、直々に指揮しなくてはならない連隊をもってないのをいいことに、ファイランドとトリストル防衛線の間を気ままに、行ったり来たりと神出鬼没を誇っていたからだった。 戦地にいるとばかり思っている上司が、前触れもなく突然執務室に現われるのだから事務官達にすれば迷惑この上ない。が、それを面と向かって言えるほどの人物は滅多におらず、フランボワへ分隊して派遣されるまで本隊と行動を共にしていたフェンベルクにしても、いるはずの大将が幕舎にいないという事態にしばしば驚愕させられた経験があった。 フェンベルクがツィンマリの事で、ディンクロフトに呼び出しを食らうことになったのは、半ば強引に役人を説き伏せ、すでにツィンマリを手元に引き取って間もなく後のことだった。 (続きマス。) |
17925 | 02-2。 | tsunami。 | 2001/11/4 18:54:59 |
記事番号17895へのコメント 「帰してこいよ」 人の顔を見るなり、参ったなといった表情をちらっと見せ、言った第一声がそれだった。いくら皇太子殿下の言葉といえ、了承できる話とそうではないものがある。ファイランド国の有力な家門なら全て、多少なりとも王家に通じる縁戚関係をもっているものであるが、中でもこの二人はそれに加え歳も近いことから幼少の頃より引き合わせられており、互いの気質のことはそれなりに飲みこんでいた。 年回りから考えて、生涯をこの皇子に仕えることになるだろうと常々言われて育ったフェンベルクは、初めて引き合わされるというその日は、朝から緊張のしっぱなしだった。その記憶は今でもはっきりと残っているし、全く緊張しないというわけでは決してないのだが、それでも主従の関係というよりは、幼馴染や友人といっていい関係を築き上げていた。 直立の姿勢のまま返事を返さないでいたフェンベルクは、繰り返し解放を命じられ、 「できません」 今度は、即答を返した。ディンクロフトが舌打ちした。 「女を捕虜として扱うのは上手くないんだ。つけこまれる隙は見せたくない。 それに、トリストルとの関係が今以上に悪化する危険をおかしたくない。一兵卒でしかない捕虜でさえ、懇切丁寧にもてなして注意を徹底してるのに、後ろ指を指されるような真似は出来ない。解放するんだ」 ディンクロフトに向けていた眼光の鋭さを、フェンベルクは意を決して、一旦おさめた。 「一つだけ、条件があります。それを許してくれるなら、彼女をすぐにでも捕虜から解放します」 先を促され、フェンベルクは要求を述べた。 「引き続き、解放した後の彼女の身柄を、俺に預からせてください」 それでは現状と、変わりがなさすぎる。 訳がわからないと眉根を寄せるディンクロフトに答えた。 「俺の正妻に迎えたい。クーベタッドの花嫁として大事にするんなら、文句はないんだろ?」 呆気にとられたディンクロフトが、 「そんなに良い女なのか。噂ではすごい見てくれだって聞いてたんだが」 と呟くように尋ねた。 「自分の目で見にくればいいだろ、気になるんなら。家にくればいい」 「そうだな。時間がとれるようになったらそうさせてもらうか。――で、肩の傷の方はどうなんだ?」 軽口を叩ける雰囲気になったところで尋ねられ、もう随分と良いと答えると、その日はそれで退室を許された。 数日後、要求を承諾した旨の書状が届いた。 これによってフェンベルクは、ツィンマリとの婚姻に関して、『なにも関係の悪化している国から、迎えなくても』と反対をしていた親族の口のほとんどを封じることに成功した。書状には、ツィンマリの身柄を預けるということが追認されているだけで、婚姻に関しては全くふれてないのだが、物は言いよう・使いようである。山積みの問題を蹴散らし、ようやく一息つけるようになった頃、それを見計らったかのように、辞令が下りた。 正式な印章の入った辞令書の他に、『新婚に付き、内地勤務にしてやる。ありがたく思え』、というディンクロフトのサインの入った手書きの添付書類が添えられており、フェンベルクは政庁への出仕が命じられた。 (続きマス。) |
17959 | --- クーベタッドの花嫁 --- 03-1。 | tsunami。 | 2001/11/5 22:45:29 |
記事番号17895へのコメント 今更ですが、タイトル(=クーベタッドの花嫁)表記しました。仮につけてあるタイトルだったのでどうしようかと思ったんですけど、無いよりはあった方が取っ掛かりのイメージがしやすいと思ったので……。 ================= 3-1.フランボワ 噂を真に受けたままクーベタッドの屋敷を訪ねた者達は、フェンベルクと並び出迎えに現れたツィンマリの姿に、これが本当に噂に高い勇婦なのかと皆一様に首を傾げた。 なるほど、大女だという噂にケチをつけるわけにはいかないが、それが猛々しいといった印象に繋がらない。たおやかな女性としか見えないのだ。 しかしそんな中で、ツィンマリを見初めた張本人であるフェンベルクだけは、少し違った感想をもっていた。 一騎当千の女丈夫、フェンベルクがその姿と名を同時に見知ったとき、戦場に立つツィンマリにはすでにそんな形容詞が冠されていた。 トリストル本国へ向けてフェンベルクの率いるローエントッドの兵がプランボワ領へ進軍したのは、早、数ヶ月前の出来事になる。 フランボワは、悲壮な興奮といった気を漲らせていた。 場当たり的に幾度となく局地戦を打ってくるトリストル軍は、いつのときも適当なところで戦場にしたその地に見切りをつけ、あっさりと引き上げていくのが常だった。今回もそれは繰り返され、取り残されたフランボワの領民達は、土地を捨て逃げだすわけにもいかず、本隊の仕掛けた戦さの後を強引に引き継がせられていた。 数には圧倒的な優位を誇っていたローエントッドの兵も、猟を生業としているだけあってフランボワの長弓には予想外の損害をこうむらされていた。既に十分すぎるほどの数の兵に手傷を負わされ、命を奪われたものも少なくない。フランボワの寄せ集めの兵達の意気も然ることながら、フランボワ領主の娘、公主という噂のツィンマリ=バンガの活躍が目に付いた。 恐ろしいほど正確な弓の腕前と、遠目にも捉えることのできる大柄な身体、それが女だというのに多少の興味をひかれるが、隊を率く立場とあっては悠長なことばかりも云ってはいられない。 粗雑に見える砦は意外な守りの固さをみせていたが、それも限界がある。 投降すれば楽になれるだろうに、時機を逸してしまったのか、それも潔しとしない。高見台から、弓を構える人数はここ数日で誤魔化しようが無いほどに減じている。それでなくとも女までが弓を取っているとなれば、いやでも悲壮感が漂う。怪我人か、死人のどちらかで埋め尽されているだろう砦内部を推察するに、そろそろケリをつけるときとフェンベルクは立ちあがった。 兵を二列に分け、後列には待機を命じ、前列の兵へ弓を構えるよう号令を掛けた。 意地は十分に見せてもらった。 「討て」 フェンベルクの続く号令は、並ぶローエントッドの兵達の端までしかりと響きわたった。雨霰と放たれた矢は、砦へ次々とふりそそぐ。 フランボワの死に物狂いといった応戦に、それは泥仕合といった様相を極めた。 放たれた矢の数に比べ、上がる悲鳴は少い。ローエントッドの兵の腕前が取りたてて悪いというわけではなく、ただ、標的になる敵兵の総数が少なすぎた。 「うわっ」 隣に肩を並べていた男が射られ、悲鳴を上げて落馬したのをフェンベルクは目の端で捉えた。咄嗟にその方向を振りかえろうとした瞬間、フェンベルクの肩を次の矢が射抜いた。怯えた馬が嘶いて前足を跳ね上げ、鼻息を荒げたがそれを叱咤し、辛うじて落馬を踏みとどめた。矢を体から引きぬきながら、いまいましげに高見台を睨んだ。 「あの女……よくも」 髪を左右に、好きなよう風に遊ばせている女の姿があった。矢の飛び交う中、姿を現す女は、ツィンマリ以外には考えられなかった。遠目にも大柄なのが見て取れる体躯の持ち主となれば、ましてや見間違えるはずがない。 戦神、鬼神――トリストルとのことがなければ、こんな女がいることなど知ることは生涯なかっただろう。 あっと、その出来事にフェンベルクが息をのんだ。視線の先で突如、強風にでも煽られたかのように、女が落ちた。 「撃つなっ。弓を収めろ―――止めろって言ってんだ」 一瞬怒りも忘れて、兵士に制止を命じた。 まだ弓を引こうとしていた兵の頭を蹴り飛ばし、鐙をを蹴って、女の落ちた方へ馬を走らせた。 最後だと腹を括ったからこその、攻防だったのか。 ピクリとも動かない女の傍で、フェンベルクはしばらく、馬上からその姿を見下ろした。息をしているのか確かめようと女に手を伸ばしたとき。それまで固く閉ざされていた砦の扉が、突然、左右に大きく開かれた。 フェンベルクが後先の考えなく隊と離れた行動を自省する間もなく、先頭に立って現われた指揮官らしき男が叫んだ。 「フランボワの領民は、降伏を受け入れる」 ローエントッドの兵たちの口から、わぁっと喚声が上がるのを、フェンベルクは瞳を細めて聞いた。 一呼吸、息を吐き、ゆっくりと指揮官に向けていた視線を自軍の兵達の方へを向けた。 鬨の声が、草原中を響きわたった。 (続きマス……ツリーが落ちる前に仕上がれば(笑)) |
17976 | 03-2---クーベタッドの花嫁。 | tsunami。 URL | 2001/11/6 23:12:21 |
記事番号17895へのコメント スイマセン、嫌がらせのように長くって(^^;)。 =================== 領主の元へ案内するという男の後を、降伏交渉を申し出るために付き従う途中、人の波間に、気を失ったまま運ばれていくツィンマリの姿が視界を掠めた。 行き先を阻むようにそこかしこに傷を負った者達が転がり、惨憺たる光景の続く通路をぬけ通された広間にさえ、身分の上下なく負傷者達は体を休めていた。その奥に姿をみせた領主は、痩せぎすで、領民達と同様顔色も優れない。これから始まる交渉に、すでに気を病んでしまっているかのような様態を覗かせていた。 「貴公が、フランボワ領主ですね?」 「―――左様……」 フェンベルクがまず自分の身分を証して促すと、フランボワ領主はそれに応えようと掠れた声を漏らした。 「客人に、酒を。外の兵士たちにも、同じように酒と食べ物を振るまうように」 落ちつきを取り戻したその声は、決して大きなものではなかったにも関わらず、その命令はすぐさまに行き届き、どこからともなく酒が運びこまれてきた。引き連れてきた部下達にも酒が振舞われ、いつの間にか側には女が侍っていた。 今回、フェンベルクが率いてきた隊は脅しを利かすための待機を主にした任務ではなく、制圧を選択肢にいれての進軍だったため本隊から分隊して連れてきた兵達には、戦慣れのしている雇いの者達を多く混ぜ込んできてあった。肩を射られ、気の立っていたフェンベルクは、あまり度を越したことはするなと申し訳程度に一言残してきたのみで、その命令がどの程度まで守られるかに関して意にかいす気がなかった。 形のみとはいえ小隊を率いる立場でついてきた良家の子息達でさえも、根が素直なだけに今ごろは手に入れた勝利に浮き足立ち、ましてや品性の悪いのに煽られては大人しくはしていまい。 さすがに指揮官と行動を共に入城してきた将官たちは礼節を守ってはいたが、それも化けの皮一枚といったところだった。 領主の振舞いに、フェンベルクが苦笑いを浮かべた。奪わずとも与えられるなら、外の者達も無体なことはすまい。 思う間にも次々と酒が運び込まれ、今日は詰めた話をする気はないと言わんばかりのトリストルの態度に、フェンベルクはもう一度苦笑した。領地の掌握に、捕虜となった兵達の処罰、領民の扱い。交渉事は、軽くはない内容を多く含んでいる。 こちらばかり気を入れても、空回りするばかりだろう。 仕方ないと、交代で見張りを立てることにし、フェンベルクが酒を飲むことを許すと、兵士達は久しぶりの酒と女っ気に狂喜した。たちまち、開放された広間は、喚声に占められていった。 「ツィンマリというのは、領主殿の娘御になるのですか?」 すっかり羽根を伸ばしてる兵士達の様に苦笑交じりの表情を浮かべながら、先ほどから質問する頃合いを計っていたフェンベルクは杯をあけ領主に尋ねた。 応急処置をしたのみの矢傷の残る肩をフェンベルクは軽く掌で覆い、視線を上げれば、フランボワ領主も静かにフェンベルクを見返した。半拍ほどの躊躇を見せたが、答えぬわけにもいかぬと悟ったらしい領主は頷き返した。 「あれは―――女の身で、トリストルにとられている兄達に代わり、良くこの地を守ってくれました」 領主の声には、容赦を請う響きが含まれていた。 重ねて聞けばトリストルに二人の息子を人質のようにして連れ去られているという。手元に残されたたった一人の娘が負傷したのでは老齢の範疇に入る領主には痛手だっただろう。だからといって、情の薄い性質なわけではないが交渉を有利にもっていくことの出来る可能性のあるそれを、簡単に手放す訳にはなかった。 「御領主は良い娘をもたれた。あれほどの勇婦は、ローエントッドにもそうはいない。 御公主の怪我の具合は、いかがですか?」 既に、先ほどから行ったり来りを繰り返しては何事かを領主の耳元で囁いていく従者の一人から、容態の報告は受けていたのだろう。領主は、多少の誇張をもって、”掠り傷”程度だと答えた。 「しかし、掠り傷にしてはツィンマリ殿はこの場へ姿を見せてはくれないようですが。歓迎されてないということでしょうか?」 フェンベルクが、含みのある微笑を返した。 「この矢傷は、ツィンマリ殿の矢に射られたものなのですが。是非、話をする機会を頂ければと思っています。この様子では、今日はとても交渉の場を設けれそうにもないようですし」 慌てて取り繕うとする言葉には取り合わず、フェンベルクは、ツィンマリの元を訪ねる許可を求めた。同時に女性だからという理由だけで、ファイランド国に、自分に向かって弓をひいたことを決して易くは許しはしないとの意思を示した。 フェンベルクの申し出を断わろうと言葉を尽くす領主に対し、フェンベルクは無言で応えた。 杯を置き、すっくと立ちあがったフェンベルクは美丈夫といわれるだけあって、それだけで十分に威圧的で、ついには、フェンベルクを説得することは出来ないということを認めた領主は、部屋で休んでいるツィンマリの元へ案内するように侍女に言った。 命じられた侍女は、おぼつかない様子ながらフェンベルクの案内を務め、奥まった通路を通りぬけ、一つのドアの前へたどりつくと足を止めた。振りかえり、次はどうすればいいのかと伺う侍女に、フェンベルクは促し、扉を叩いて来訪を告げさせた。 「どなたです?」 すぐに誰何の声が返ってきた。 「ファイランドのフェンベルク様を、お連れいたしました。ツィンマリ様にお会いしたいとの申し出です」 しばらく間が開いた。返事の代わりにその扉が静かに開かれ、入り口に立つ女の顔が見えた。 ツィンマリではない。が、フェンベルクは、すでにその奥でこちらを見つめている女の姿を見つけていた。下げていた肩布を上げなおし、居住まいを正している。 フェンベルクはツィンマリに向けて微かに笑った。包帯が転がっているのを目にしてり、侍女を押しのけるようにして部屋へ踏み入った。 「傷が深かったのか?」 気色ばむ侍女達を、ツィンマリは軽く手をあげて宥めた。 「いいえ。――ご心配、悼みいります」 言いながら、ツィンマリは隣の椅子をすすめた。籐で編まれた椅子が、フェンベルクの比重に音をたてた。 「酒宴の席においでなかったので。容態を伺いに来たのですが、お邪魔でしたか?」 広間に酒を運んできた侍女たちもそれなりの容色を誇っていたが、公主付きの侍女たちは、選りすぐりが揃えられているようだった。香り立つようで、中央に座するツィンマリが翳む。 こうやって側で眺めるに、鬼神や化け物というわけではないようだが、何より大柄なのが邪魔をしてるとみえ、ツィンマリはどう言葉を繕っても美女とは云い難いようだった。 「いいえ。このような場所にまで足をお運びいただきまして――」 フェンベルクの顔も見ずに、ツィンマリは礼を失しない型通りの挨拶を述べようとした。 その声は、だが、悪くない。品の良い振舞いは、とても数刻前まで弓を片手に戦場に立っていた女のものとは思えないものだった。互いの立場を前面に押し出した会話を、先に嫌ったのはフェンベルクだった。向けられた視線に気づいたツィンマリが、言葉を止めた。 「どうかされましたか?」 不信に思ったツィンマリに尋ねられ、どうしたものかと、フェンベルクは間伸びした声を漏らし、 「もっと普通にしゃべれませんか?。出来れば笑ってもらえるともっといいんだが」 フェンベルクが苦笑と一緒に言った。 (続きマス……けど。そろそろ、ツリーが落ちちゃうかな〜) |
17978 | 嫌がらせのようにだなんて・・・ | 風林みつき | 2001/11/6 23:44:39 |
記事番号17976へのコメント こんばんは。再びおじゃまです。 >スイマセン、嫌がらせのように長くって(^^;)。 嫌がらせだなんて・・・ それに、本文の方も、それほど長いとは思いませんよ?他の方と比べても。あくまでもあたしの意見であり、頼りなさ爆発ではありますが・・・。 個人的には、tsunamiさんの書かれてるぐらいが、区切りも良く、見るのに時間かかりませんから、あたしのように長いのは苦手(好きなものもありますが)とゆー者にはありがたいです!! >(続きマス……けど。そろそろ、ツリーが落ちちゃうかな〜) これは、話を1つのツリーで完結させる、を前提として言ってるのかよくわかりませんが、この位置ならまだまだ落ちる心配はいらないと思いますよ。頼りなさ以下同文。 ではー、時間がないのでお話に触れてなくて失礼なんですけど、撤収させていただきますー。 |
17989 | ひょこっ。 | tsunami。 URL | 2001/11/7 21:15:56 |
記事番号17978へのコメント こんばんわです、再び(無意味なタイトルで失礼いたします。良いタイトルも思いつかないし、かといってそのままってのも味気なく・・・こんなんなっちゃいました<ひょこっ)。 文章の長さや、ログの流れる速度についてなどのアドバイス、ありがとうございますです(^^)。 長さの方は、みっきーさん(ホントにこの呼び方で定着させちゃっても、いいのかな(笑))に言ってもらえて、落ちつきましたです。 ツリーの落ちる心配の方は、この続きをUPするまでにちょいと時間がかかりそうだなって意味を含めての心配でして、こっちはやはり微妙かなって思ってます(^^;)<落ちる前にUPできるか!? トロイもんで、自分。 あと、もう一回分ぐらいは落ちる前に投稿させていただけるんじゃないかとは思ってるんですが……ガンバロっと。 ではでは、もし続きを投稿できましたなら。お時間のあるときにでもこっそりとでも読んでやってもらえると嬉しかったりします。 ありがとうございましたっ。 |
18005 | 〃さん〃はいらないでさあっ! | 風林みつき | 2001/11/8 22:33:10 |
記事番号17989へのコメント tsunami。さんは No.17989「ひょこっ。」で書きました。 > > こんばんわです、再び(無意味なタイトルで失礼いたします。良いタイトルも思いつかないし、かといってそのままってのも味気なく・・・こんなんなっちゃいました<ひょこっ)。 こんばんは。返しレスです☆ > 文章の長さや、ログの流れる速度についてなどのアドバイス、ありがとうございますです(^^)。 頼りないですけどね・・・(^_^;)。 > 長さの方は、みっきーさん(ホントにこの呼び方で定着させちゃっても、いいのかな(笑))に言ってもらえて、落ちつきましたです。 〃みっきー〃で良いですよー。みっきーさんって変じゃないですか(爆)? > ツリーの落ちる心配の方は、この続きをUPするまでにちょいと時間がかかりそうだなって意味を含めての心配でして、こっちはやはり微妙かなって思ってます(^^;)<落ちる前にUPできるか!? そういうことでしたかぁ。 > トロイもんで、自分。 あたしなんかトロイ上に天性一発書き野郎なもんで・・・。最近詩ばっかり書いてるし。 > あと、もう一回分ぐらいは落ちる前に投稿させていただけるんじゃないかとは思ってるんですが……ガンバロっと。 待ってまーす。 > ではでは、もし続きを投稿できましたなら。お時間のあるときにでもこっそりとでも読んでやってもらえると嬉しかったりします。 読みますよー。 > ありがとうございましたっ。 それでは、風林でした☆ |
18095 | 叫んでみる(笑)。 | tsunami。 URL | 2001/11/14 00:13:25 |
記事番号18005へのコメント た、大変遅くなりましたです(^^;)<レス。 まさか、レスのレスが頂けるとは思ってなかったもので、油断してましたっ。 >〃みっきー〃で良いですよー。みっきーさんって変じゃないですか(爆)? では、お言葉に甘えまして(笑)。 みっきーっ……(照(笑))。 どーやら、この辺りで、このツリーは落ちてしまいそうですが。またどこかで会えましたならば、どうぞ声かけてやってくださいませです(^^)。 ではでは。 ――つなみ。 |
18094 | 03-3---クーベタッドの花嫁。 | tsunami。 URL | 2001/11/14 00:08:30 |
記事番号17895へのコメント 今回はとっても短いです。ここまでしか、見直し等々出来ませんでした(^^;)。 ========= 「もっと普通にしゃべれませんか?。出来れば笑ってもらえるといいんだが」 フェンベルクが苦笑と一緒に言った。 一瞬、思いもかけずツィンマリが柔らかな表情を覗かせた。すぐにその表情は消されてしまったが、それだけで随分と印象が変わる。 その様子にフェンベルクは、勿体ないと正直に呟いた。 「フェンベルク殿。 一体、何をされにここに御出でになられたのです? お酒でしたら、向こうの広間にまだいくらでもありましたでしょう。お疲れなのでしたら、寝室へご案内させます」 「呼び捨てで結構です、御公主」 自分のことは呼び捨てでいいと言いながら、こちらのことは御公主などと厭味ったらしいことを言う。軽薄なその物言いに、今度こそツィンマリは不愉快を顕わにし、それを目にしたフェンベルクは何が面白かったのか笑ってみせた。 「どうか本日はこの辺りでお引取りを願います。矢傷の怪我が易くないのは、フェンベルク殿、貴方のほうでしょう」 「フェンベルクです」 「フェンベルク殿」 ツィンマリに毅然とした声で呼ばれ、フェンベルクは三度、自分の名前の呼び方を繰り返し教えた。 「元気があるようでしたら気に入った娘を連れて下さって構いません。フランボワは小さな属領ゆえ、おもねり諂うことは慣れています。必要なものがあれば言ってください、出きる限りのことをしましょう。 ですから、どうぞあまり領内を荒らしたり領民を傷つけるようなことはしないでください。私からお願いしたいことはそれだけです。 お引取り願えますね、フェンベルク」 ここまで意固地になられては、一旦退いた方が無難なのだろう。フェンベルクは大人しく、腰を上げた。 どれでも好きな娘をどうぞ、という申し出に全く気持ちが動かなかったとはいわないがそれを実行しては、ツィンマリをがっかりさせるような気がして慎むことにした。淑女然と振舞う彼女の前でそれをやっては、自分の格を下げるような気もし、敵軍とはいえその将たるに相応しい人物を望むツィンマリの密かな期待を感じては、それに応えるざるを得なかった。 「また、来ます」 いいですか、と尋ねられれば、良い返事を返さないまでもツィンマリは否とは言わない…言えるわけのない立場だった。膝を軽くおり一礼するツィンマリに見送られてフェンベルクは退出し、再びその扉が閉ざされると、残された全ての者達の唇からため息が漏れた。 フランボワの姫君とその侍女達にとって、ローエントッドの行軍を指揮するフェンベルクは、如何に礼儀正しく振舞ってくれようと歓迎すべき客になりえなかったのである。 (投稿した途端に、落ちたりして(笑)。 そして、全く話の収集がつかないままにフェイドアウトしてゆくのだった(--;)) |