◆−Angelic。〜天使が微笑んだあの日〜−珀 (2001/11/4 18:47:49) No.17923
 ┣Re:Angelic。〜天使が微笑んだあの日〜−白河綜 (2001/11/4 21:22:05) No.17931
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  ┗Angelic。〜天使が微笑んだあの日〜−珀 (2001/11/5 15:57:35) No.17946


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17923Angelic。〜天使が微笑んだあの日〜2001/11/4 18:47:49



 君に出会ったのはあの日のあのベンチ・・・・・・。


 弓道場を抜け出して紅矢はいつもどおり校内のベンチへ向かった。市内でも少ない、弓道部のエースの紅矢。練習のときよりもずっとずっと好きな時間をすごす、あのベンチ。小脇に小説を持って、道着を着たままベンチへと足早に歩く。

「桜綺麗だな・・・・・。」

小さい声でつぶやいた。中三になって、この夏引退する。三年間ずっとこのベンチで休憩時間を過ごしてきた。一年生のとき、テニス部の先輩に惚れてから。今はその先輩は卒業していないが、小説を読むには絶好の場所となっていた。ベンチへの角を曲がったとき、ベンチに人影が見えた。弓道部じゃない。・・・剣道部だ。

「剣道部?」

防具をつけて、道着を着て、肩に竹刀をかけて本を読んでいる。

「一緒の事考える人いるんだな。」

紅矢が隣に座ると、その人は紅矢を見た。剣道部女子。上が白で下が紺の道着ということはそうであろう。紅矢も小説を広げた。宮本武蔵の伝記だ。上下巻と出ているので、読破しようと思って自腹を切った小説。しばらくそのままお互い読み続けた。

「宮本武蔵、好きですか?」

剣道部のほうが話し掛けてきた。ショートカットが似合う、すらっとした顔立ち。茶髪。茶色い目・・・・。

「好きといえば好きですよ。」

紅矢もそれに返した。するとその女子はにこっとわらって、紅矢に話し始めた。

「あなた、弓道部の西谷紅矢君だよね?私、わかる?」

「えっ・・・・知らない・・・・・。」

「ひどいなぁ。中一のとき一緒のクラスだったのに。コンタクトにしたからわからないのかも。秋田龍華(りゅうか)って覚えてない?」

「あぁ!秋田!マジで分からなかったよ!!」

紅矢が満面の笑みを浮かべると龍華はにこっと照れくさそうに笑う。紅矢も照れくさそうに笑った。

「ねぇ、ちょっとお話しない?」

「いいけど?」

龍華も紅矢も本にしおりをはさんで話し始めた。中一のときはあまりめだたない存在だった龍華が、今はこんなに喋るようになっていて、紅矢は少し驚いた。

「あぁ、面白かった。ねぇ、またお話しようよ。私もよくこのベンチ座ってるから。紅矢君もまた・・・・・。」

「あぁ、そうだな。また来る。」

そういって別れると、紅矢は少し幸せな気分になった。本を読むだけじゃなくてああやって人と話すのもいいカナと思ったのだ。練習が終わって剣道場の前を通った。秋田とかかれた防具をつけて、気合を張り上げて剣道の試合をする龍華が目にはいる。すると、こっちに手を振るではないか。

「やめろよ・・・・はずかしいじゃん・・・・」

とはおもったものの手を振りかえして紅矢は剣道場の前を離れた。

「明日からまたいっぱい話したい」

そう思う二人の気持ちは大きくなるばかりだった。

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17931Re:Angelic。〜天使が微笑んだあの日〜白河綜 E-mail 2001/11/4 21:22:05
記事番号17923へのコメント

珀さんは No.17923「Angelic。〜天使が微笑んだあの日〜」で書きました。

 初めまして。
 白河綜と申します♪ 
 なんだか響きのキレイなタイトルに惹かれて、レスしてみました♪ 丁度ツリーも前後だしvv


> 弓道場を抜け出して紅矢はいつもどおり校内のベンチへ向かった。市内でも少ない、弓道部のエースの紅矢。練習のときよりもずっとずっと好きな時間をすごす、あのベンチ。小脇に小説を持って、道着を着たままベンチへと足早に歩く。

 うおお!? しょっぱなからびっくりです。実は白河も弓道部でした〜〜。エースじゃないけど(笑)
 この、「ベンチ」っていうのがまた……v 白河も矢がりの時に、道場のすぐ横にあったベンチに座って、先輩達の射型をみてました。
 懐かしいな〜〜。今年引退だったんです。(しみじみ)
 そう。高3。……受験生なのです(涙)


>防具をつけて、道着を着て、肩に竹刀をかけて本を読んでいる。
>
>「一緒の事考える人いるんだな。」

 うふふv きっと運命vvv(意味不明)


>紅矢が隣に座ると、その人は紅矢を見た。剣道部女子。上が白で下が紺の道着ということはそうであろう。紅矢も小説を広げた。宮本武蔵の伝記だ。上下巻と出ているので、読破しようと思って自腹を切った小説。しばらくそのままお互い読み続けた。

 そうですね。弓道は男女白い胴着に紺か黒の袴だけど、剣道は確か男子は胴着も紺でしたよね。
 しかし……宮本武蔵……文庫ですか? ハードカバーだと、結構高いですよね。
 すごいぞ、紅矢君…………


>「宮本武蔵、好きですか?」
>
>剣道部のほうが話し掛けてきた。ショートカットが似合う、すらっとした顔立ち。茶髪。茶色い目・・・・。
>
>「好きといえば好きですよ。」

 素敵な答え方(笑)


>「あぁ!秋田!マジで分からなかったよ!!」

 こぉら!! 女の子の顔はちゃんと覚えておきなさい!!


>龍華も紅矢も本にしおりをはさんで話し始めた。中一のときはあまりめだたない存在だった龍華が、今はこんなに喋るようになっていて、紅矢は少し驚いた。

 いいじゃないですか、こういう変化なら。白河は、よく友人に「小学校のころは優等生、中学で壊れて、高校で開き直ったよね」とよく言われます。小学生の頃の自分を、今の高校の友人達に話すと、異口同音に「嘘だっ!!」と言われます……(泣)


>そう思う二人の気持ちは大きくなるばかりだった。

 くあ〜〜〜〜!!
 いいですね〜〜v
 白河はこのテの話が書けないので羨ましいです。
 次回はこの武道二人組がどんな風になるのか楽しみです!

 では。
 白河綜でした♪




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17939Angelic。〜天使が微笑んだあの日〜2001/11/4 23:26:46
記事番号17923へのコメント

連作・2

 「ううっわ!やべぇ!寝過ごした!!!」

紅矢は飛び起きると一気に制服に着替え寝癖を市販のジェルウォーターで一気に直し、階段を5歩で駆け下りてテーブルへついた。

「母さん、俺もう飯いいわ!」

「そう?お弁当ここね。」

「わぁったわぁった!!」

母ののんびりに付き合っていると間違いなく遅刻する。無視しきって歯を磨き顔を洗い居間にあった弁当と長い弓道の弓と鞄を掻っ攫って靴をはき、全速力でマンションの駐輪場へ走った。時計はHRが始まるまであと10分をさしている。

「やべぇやべぇやべぇよ、おいおい!!!」

絶叫しながら自転車をこぐ紅矢を家の中から母がのんびりと手を振って見送る。

 学校までは結構な距離があるが、紅矢はそんなこと意識せずに全力で自転車をこぐ。信号無視も今日に限って当たり前にやる。校門が見えてきたときだった。

「おはよう紅矢君!!」

昨日聴いたばかりの声がする。龍華だ。龍華も額に汗をにじませて走っている。龍華は徒歩通なのだ。サブリュックを必死にかかえて走っている龍華をなぜかほうっていけなかった。

「秋田!乗れ!」

自転車を止めて龍華を乗せると、紅矢はまたしても全力で自転車をこぐ。校門に入ったときはぎりぎり三分前。二人して床に座り込んだ。

「ありがとう、紅矢君・・・・。たすかったぁ。」

暑そうに顔をほてらせて龍華がいう。

「あぁ、どうってことねぇよ。お前徒歩通だろ。もうちょっと早く家でろ。」

紅矢が笑いながらいうと、龍華も笑いながら”ごめん”といった。駆け足で教室に入り、間に合った。弓道の弓を教室の隅に立てかけて自分の席についてじっとしていると、HRは終わっていることに気づいた。そう、寝ていたのだ。なんだか笑えた。昼休み、外のあのベンチで宮本武蔵を読んでいると、後ろに人の気配がした。振り返るとやはり龍華。校則違反のミニスカートをおさえるようにして隣に座ってきた。

「朝はありがとう。ホンと、助かったよ。」

「おう。いいよ。別に。また遅刻しそうなときに見つけたら拾ってやる。」

「え〜、まじで?」

昼休みに桜の散るベンチで二人は毎日話しこむようになった。クラブのときも、自分のクラブのことを話し込むようになった。そんなある日。

「紅矢君ってさぁ、好きな人いるわけ?気に入ってることか、かわいいなって思うことか。」

龍華が思いがけないことを聞いてきたのだ。一瞬気が緩んだ。紅矢に好きな人なんていない。

「いねぇけど。」

普通に答えたつもりだったのに、龍華の顔が一瞬冷たくなった気がした。というよりはショックを受けたようなかおをした気がした。昼休みは短くて、もうあと五分しかない。

「秋田は?」

紅矢が聞くと、龍華は顔を曇らせて紅矢を睨んだ。

「なんだよ。」

「言わせるの?自分いわないくせに。」

「いねぇのに言うかぁ?」

「なによ!!!」

「は?なに怒ってんだよ!!!自分から聞いたくせに!」

「そうだよ!?そうだけど・・・・・私の好きな人にはもっと後で告白するつもりだったの!!」

「かってだろうが、そんなもん!」

「紅矢君の事好きで何が悪いの!!!!」

空気が張り詰めた。龍華が自分のことを好き?なにいってるんだよ・・・。

「少しくらいいるっていってくれてもいいでしょ?勝手なのは分かってるよ。でも私はね、一年生のときから思い続けてたんだよ!?このベンチに来るようになったのも、全部紅矢君がいたからなのに!!」

それだけ言うと、紅矢のもとから龍華は走っていってしまった。紅矢もしばらくそこを動けなかった。

 三ヶ月間二人は口を聞かなかった。地区大会の日に事件は起きた。弓道部は地区大会がない。市内に弓道部がないからだ。教室でプリントをしていても、何かと龍華の試合の結果が気になる。ぽぅっとしていたとき・・・。

「おい、紅矢!大変だぞ!!」

「なんだよ映二・・・・。うるっせぇな・・・。」

「秋田が・・・秋田龍華が剣道の試合中に倒れて、意識不明だって!!!」

紅矢の手からシャーペンが音を立てて落ちた。気がつくと紅矢は走っていた。龍華が運ばれたといっている病院へ、あの日の朝と同じように全力で自転車をこいでいた。その目から涙が零れ落ちていたのは言うまでもない。

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17946Angelic。〜天使が微笑んだあの日〜E-mail 2001/11/5 15:57:35
記事番号17939へのコメント

連作第三話

 第一中央病院へ自転車をかっ飛ばして行った。病院の中へはいって受付で聞くと、今検査中だという。検査室の前で塞込んでいると、一人の女の人が寄ってきた。

「西谷紅矢君ですね?」

ふと顔をあげた先で見たのは龍華とそっくりな女の人だった。そう、龍華の母親だ。紅矢が立ち上がって頭を下げると、母も頭を下げてきた。

「まぁ、お座りになって。」

「はい・・・・・。」

母親の目から、涙のあとが見られる。どうしたことなのだ。龍華は如何してしまったのだ。

「龍華さんは如何したんですか・・・・・・?」

「・・・・龍華はね。心臓が悪いの。生まれつき。心臓の弁が一つなくて、いつ死んだっておかしくない状態だったわ。でもあのこ、ここまで生きてくれたからいいほうなのね。わがままはこれ以上いえないわね。ガラスの心臓を持ったあの子に・・・・。剣道だって本当は反対だったの。でもあの子言ったのよ。いつ死んでしまうか分からない身ならば、最期まで自分のやりたいように生きるわって。それに私の好きな人にいつか話し掛けられるくらい強くなりたいのよって。」

「そう・・・ですか。」

「紅矢君のことをあの子がすきだって言うことは知ってたの。いつも紅矢君の写真を持ち歩いてたもの。今もきっと握り締めてるわ。」

「・・・・・・・・。」

そのときだった。検査室のドアが開いて、神妙な顔つきで医師が歩み寄ってきた。

「お母さん、すいませんでした。たった今・・・・・娘さん、息をお引取りになりましたよ。」

「う・・・そ・・・龍華ぁぁぁぁ!!」

「秋田・・・・・!」

紅矢は検査室の中へ走りこんだ。息をせず静かに横たわる龍華の顔を見て気づいた。そして言えばよかったと後悔した。

「秋田・・・・。俺な、お前に言おうと思ってたんだよ。お前が俺をすきだって言ってくれたみたいに、俺もいえばよかったよ、本当の気持ち。俺も好きだよ。宮本武蔵もお前も、めっちゃ好きだよ・・・・。死ぬなよ。俺の彼女になれよ!龍華!龍華!!!」

そういって手を握り締めた瞬間奇跡は起きた。

「先生!心電図が!!!」

トクットクッと心電図の線が動き始めた。そして次第に大きく波打ち、龍華もそっと目を開けた。そして笑った。”紅矢。”とつぶやいて、手を握り返して。
親も紅矢もその場に泣き崩れた。