◆−闇の残り香 12−白河綜 (2001/11/18 00:12:21) No.18176 ┣Re:闇の残り香 13−白河綜 (2001/11/18 00:15:01) No.18177 ┃┣Re:エル様が(はあと)−かお (2001/11/18 00:32:19) No.18179 ┃┃┗お……お早い…………(汗)−白河綜 (2001/11/18 00:41:26) No.18180 ┃┣をう!!いつまに!!−たかこ (2001/11/18 23:17:26) No.18222 ┃┃┗お掃除の友は竹箒と相場が決まってるんです!!(待て)−白河綜 (2001/11/19 00:45:14) No.18229 ┃┣Re:闇の残り香 13だっ♪−宝珠 (2001/11/19 17:05:02) No.18247 ┃┃┗エル様は書いててたのしい・・・vv−白河綜 (2001/11/20 13:09:39) No.18276 ┃┗フィーさんッ!?−むくぅ (2001/11/19 22:01:00) No.18265 ┃ ┗覇王様生き残れるか!?計画発動中♪(待て)−白河綜 (2001/11/20 13:19:33) No.18277 ┗闇の残り香 14−白河綜 (2001/11/23 17:26:51) NEW No.18365 ┣Re:14!!−たかこ (2001/11/23 17:45:20) NEW No.18367 ┃┗お茶菓子はシフォンケーキvv−白河綜 (2001/11/23 18:07:02) NEW No.18371 ┣Re:出てるし♪ふふふふ♪−かお (2001/11/23 21:04:08) NEW No.18377 ┃┗シ○リスくんの声真似が得意だったりして……(笑)−白河綜 (2001/11/23 21:36:41) NEW No.18378 ┃ ┗上の追加です。−白河綜 (2001/11/23 21:42:10) NEW No.18380 ┃ ┗Re:知っててあえて(笑)−かお (2001/11/24 01:16:43) NEW No.18392 ┗グロウも危ない今日この頃(待て)−むくぅ (2001/11/24 11:49:17) NEW No.18407
18176 | 闇の残り香 12 | 白河綜 E-mail | 2001/11/18 00:12:21 |
こんばんは。はいぃっ!! 予告(?)通り、二つ同時にアップするです!! 因みに、12にはエル様いません!!(爆) そして、そのうっぷんを晴らすかのように、13はエル様の回になっています(待て) ううう…………戦闘シーンは難しいです。 ########################################################## お願いがあるんです。 もっと、良い子にしてますから……あなたのために努力しますから。 『わたし』の存在(こと)を見て…………………… * * * * * * * * * * * * * * 「ねぇねぇ、リナチャン。作戦会議はイーからさっ。 ……………………早くしてヨーっ!! この呪文はイッッッッッッッッッッパイ魔力使ってタイヘンなんだからーっ!!!」 攻撃班……リナをはじめとする数人が、漸く一か所にかたまって作戦を作戦を練りだした途端、一番外側の結界を張っているウィン=コバルトが文句を言ってきた。 リナはこめかみを指で押さえ、一瞬、何かに耐えるような顔をして見せた後、ウィンに向かって激昂した。 「うるさいわねっっっ!! 今作戦たてるとこなのっ! まだ話し合いを始めてすらいないのっ! わかるっ!? だいたいあんた『防御はまかせろ』みたいなこと言ってたじゃないっ!!」 言われたこと以上に、ウィンの口調に対して腹がたった。 可愛らしいといえば可愛らしいが…………事が緊迫している時に聞くと、ただただ癇に障るだけである。ふと、視線をナーシャに向けてみれば、彼女も同じ気持ちらしく、第三層目の結界を維持しながら、ウィンに険悪な視線を向けている。 それにはたして気付いているのかいないのか、ウィンは負けじと言い返してきた。 「なによォ!! アタシだって、リナチャン達には攻撃の分野を任したって言ったケド、リナチャン達まだいっっっっかいもお仕事してないジャンっ!! それに、目の前に敵がいるのに、今更作戦会議なんてしても無駄っ!! 当たって砕けるしかないデショ!!?」 「だぁ〜〜〜〜!! 砕けてどーすんのよっ!!」 ぜーはーぜーはー。 …………いけないいけない。またこのまま突っ走ってしまうところだった。 気を取り直して、リナは『攻撃班』の一同と、再び顔を向き合わせた。ちなみに、メンバーはリナ・ガウリイ・ゼルガディス・ファレスの四人である。ヴァルは傷を負って倒れているし、アメリアとフィリアは、そのヴァルの治療にあたっている。最初っから期待なんてしていなかったが、エルとゼロスは消えてしまったきり、姿を現さない。 ヴォルフィード相手に四人で…………というのは、相当キツイと思うのだが………… リナは、ふむ、と右手を顎にあてた。 「…………一番の問題は、『彼女』が『異界』の神だってことなのよね」 真剣な面持ちで言葉を紡ぐ。 そこへ、いつもの如く、お約束なセリフが飛んできて―――― 「なぁ……何で異界の神だと――――」 「二年前に戦った異界の神族、及び『闇を撒く者(ダーク・スター)』に、こちらの攻撃魔法が通じなかったから。」 ――――あっさり、かき消された。 皆まで言えずに、さらりとリナに答えられてしまったガウリイ。少し、いじける。 「…………今度もそうなのかしら…………?」 「わからんぞ。あのヴォルフィードの肉体は、覇王(ダイナスト)が与えたモノなのだろう?」 「…………なんにしても、一回やってみなきゃわかんない…………ってことね」 身体を丸め、床に『の』の字を書き続けるガウリイをあっさりと無視して、リナとゼルガディスは作戦会議を終えた。座り込んだガウリイの耳を引っぱって引き起こし、さらに、ナーシャの隣で待機していたファレスに向き直って、 「聞いての通りよ」 「OK」 そう軽く言葉を返すと、ファレスは呪文を唱えだした。 リナは、再び視線を結界の外へと向けた。 荒れ狂っていた風は、先ほどと比べるとだいぶ収まっていた。その分、ヴォルフィードの手の中に収束しているので、決して喜べはしないが。 ふぅ、と、リナはため息をついた。 ――――こうしていても、始まらない。 「…………ウィン、エイジュさん、ナーシャ…………。ファレスの呪文が完成したら、結界を解いて」 「…………よいのか? リナ殿」 三層目の結界を維持しつつ、かわらぬ調子で、ナーシャ。 リナは、迷うことなくうなずく。 「その後、ナーシャは後退して、アメリア達のまわりに防御結界、ウィンとエイジュさんは援護を。…………エイジュさん、何だか巻き込んでしまいましたが…………」 申し訳無さそうに、リナは空竜(エア・ドラゴン)の生き残りに対し、頭(こうべ)を垂れた。 エイジュは、少し寂しそうに微笑む。 「気にするな。それに、巻き込まれたのは神殿を破壊され、同志をことごとく常世へ送られた時…………今更謝罪されても仕方ないし、何よりそなたの所為ではない。 なんにしても、援護は任せてもらおう。我にできる最善の事を為してみせる。 なぁ、ウィン」 「エーっ!!?」 エイジュが鷹揚(おうよう)にうなずき、ウィンというと不満の声を上げたがこれは無視。 リナはあらためて、ヴォルフィードぶ向き直った。 冷や汗をかきながらも、フフンっ、と不敵な笑みを浮かべ、呪文の詠唱に入る。 …………風に乗って、もう一つの呪文が聞こえてきた。 ファレスだ。彼が唱えているのは、精霊魔法系最強の魔法、『崩霊裂(ラ・ティルト)』。 と。 (…………待てよ…………?) ふと、リナは唱えていた呪文を中断した。 (…………ひょっとして…………) ある考えが浮かび、少し考えてから、リナは再び呪文の詠唱に入った。先ほど唱えていた魔法――――増幅付き烈閃槍(エルメキア・ランス)とは、違う呪文の詠唱に。 そして、ソレとほぼ同時、ファレスの魔法が完成した! 『解呪!!』 ウィンとエイジュの声が響き、結界が消え去った。ファレスが、戦闘慣れした者の動きでヴォルフィードに向かって走る! 突如結界が消えたことに、彼女が驚いている間に懐に入り込み、『力ある言葉』を解放する! 「崩霊裂(ラ・ティルト)!!」 コウっっっ!! 青白い光が、ヴォルフィードを包み込んだ! …………だが。 「あらら?」 場にそぐわない、間抜けな声を出すファレス。 光は、確かにヴォルフィードを直撃した。 だが、それだけだったのである。 ファレスは後ろに大きく跳躍し、リナと並んだ。 彼の視線の先では、表情を完全に消したヴォルフィードが、まるで何もなかったかのように、片手に光球を持ったまま、平然と立っている。 ファレスはカリカリと頬をかき、小声で、 「…………ぜーんぜんきいてねぇでやんの」 と呟いた。 「おい」 「あっ? 何だよゼル」 「どうだった?」 ゼルガディスの言葉は、短かった。この状況では長話をしてる暇はない、と言わんばかりに。だが、ファレスはその質問の意味を正確に理解した。リナの耳にも届くよう、努めて大きな声で言う。 「駄目だな。防でいるわけじゃねーみたいだ」 「…………通用しないってことか…………」 ちっ、と舌打ちする音がが聞こえた。 (――――崩霊裂(ラ・ティルト)はきかなかったけど、もしかしたら――――…………) リナは、先ほど思いついた可能性に賭け、床を蹴った。即座に、ガウリイが援護にまわる。 すると――――………… 「……………………」 ……シュウゥゥ…… 静かな音と共に、ヴォルフィードの空いていた手に、『光』を収束して作られた剣が握られた。もう片方の手に握られていた光球を宙に浮かせ、身構える。 水面の瞳が、二人を射殺さんばかりに厳しくなった。 (…………なるほど。崩霊裂(ラ・ティルト)よりも斬妖剣(ブラスト・ソード)の方が怖いってワケね――――ってことはっ!) リナは、持ち前の身軽さで、あっという間にヴォルフィードに近づいた。そのまま呪文を発動させようと口を開きかけた瞬間―――― 「――――っ!!?」 思わず悲鳴を上げそうになって、それに必至で耐える。 視界のすみに、光が煌めき、襲いかかってくるのを捉えたのだ。 何とか身をひねってかわすも、さらに、そこへヴォルフィードの剣が振り下ろされる! (やばっ――――!) 避けきれないと理解した瞬間―――― キンッ! と硬い音がした。 反射的に伏せた目を開いてみると、そこでは、案の定ガウリイが、ヴォルフィードの剣を受け止めてていた。 それを認めるのと同時。リナは、慌ててヴォルフィードの剣の間合いから抜け出た。 ぎりっ………… ガウリイの斬妖剣(ブラスト・ソード)と、ヴォルフィードが自らの力で創り出した剣の刀身が、小刻みに震えている。互いの力が拮抗しているのだ。 耳が痛いほどの緊張感が、辺りに満ちる。 ――――数瞬後。 不意に、ヴォルフィードはガウリイと距離をとった。 片手で剣を構えたまま、空いた方の手を、す……っ、と真横に掲げる――――呪文を放とうとしていた、ゼルガディスに向かって。 「…………っ!!」 「あなたも邪魔するのね?」 何の感情もこもらない声で、そう、口にした刹那。 「!?」 「ゼルガディスっ!!」 妙に響いて聞こえるガウリイの声。その声を聞き終える前に、ゼルガディスは後方の壁に背中から打ちつけられた! 先ほど、リナが咄嗟に避けたモノと同じモノが、ゼルガディスを吹っ飛ばしたのである。ヴォルフィードの周りを頼りなげに浮遊する光球から、何か――――風の塊のようなものが、ゼルガディスに襲いかかるのを、リナの深紅の瞳が捉えていた。 ドゴオォっっっ!! 派手な音を立て、度重なる衝撃にぎりぎりの状態で持ちこたえていた壁は、そのままゼルガディスと一緒に倒れた。その様子を、やはり無表情に見つめるヴォルフィード。 ――――今!! 「烈火球(バースト・フレア)!!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴっっっ!!!! 唱えていた火炎系最強の魔法を解き放つ!! 一瞬にして、多量の熱量が部屋中を満たした。 ここが街中、しかも、フィリア達の家であるということは、あえて無視! そんなことを気にして勝てる相手ではない。それに、魔法を構成していく過程で少しアレンジを加え、威力ができるだけ一カ所に集中するようにしたし…………なんとかなってくれていることを祈る。 「リナさんっ」 避難の声を発したのは、どうやらアメリアのようだ。 リナは、ぐっ、と汗を腕で拭った。烈火球(バースト・フレア)のせいで、室内――――といっても、もはやそこは『部屋』の形を保ってはいないが――――は高温、サウナ状態になってしまったからである。 アメリアも、リナほどではないにしても、全身から汗をかいていた。 「アメリア……あんた、もういいの?」 「はい。ヴァルさんの怪我は、完全に治りました」 「そう…………じゃ、さっそくで悪いけど、ゼルの様子、見てきてくれる? 多分、あっちの方でぶっ倒れてると思うから」 ふいっ、と指を上げる。 多分、最初からそのつもりだったのだろう。アメリアは直ぐさま踵をかえした。 (やれやれ、あの子も――……) 「おーいリナ、大丈夫か?」 と。思ったより近くから、ガウリイの声が聞こえた。 ゆっくり視線を巡らすと、そこには抜き身の斬妖剣(ブラスト・ソード)を携えた彼が立っていた。 軽く手を振って、リナは答える。 「見ての通りよ。 よかった。ちゃんと避けててくれて」 「いくらなんでも、アレに巻き込まれるほど鈍くはないさ。それよりも……」 「ええ」 「……………………あのさ、お二人さん。頼むから二人だけで理解しないでほしいんだけど」 と、ファレスがシリアスな空気を割って説明を求めてきた。 抜き身の剣を下げたまま、彼は、 「リナさんよ、何で烈火球(バースト・フレア)なんて使ったんだよ。相手は一応魔族なんだぜ?」 「……さっきも言ったけ、約二年前、あたし達は異界の神と戦ったことがあるの」 アルメイスを始めとする、例の神族三人組のことだ。 ファレスはああ、と頷いて、先を促した。 「彼らには、精神(アストラル)体がなかったわ。代わりに、その肉体をよりどころにしていた。そして、ヴォルフィードはその世界の神」 「なるほど。崩霊裂(ラ・ティルト)が全く効かなかったのはそいつのせいか」 「多分ね。それに、『彼女』は本体の『残り香』だし…… なにより、あんたと違うことしないと『実験』の意味無いじゃない」 リナの視線は、相変わらず、ヴォルフィードが立っていた場所に向けられていた。 舞い上がったほこり・爆発による煙が、風にさらわれ、徐々に徐々にはれていく。 「…………どうやら…………少しは効いたみたいね」 リナは、言葉と共に目を細めた。 そのリナと向かい合う形で、ヴォルフィードが立っている。 ――――平然と。 しかし、彼女の白の装いは、裾がちりぢりになり、白磁の肌も、少し黒ずんでしまっている。 とっさに防御結界を張ったのだろう。ヴォルフィードを中心に、露出した地面が、円形に浅く窪んでいた。 「…………リナ=インバース………… やっぱり…………邪魔するのね」 「お生憎様。あんたの邪魔しないと、この世界が滅びちゃうかもしれないし、なにより!! ここで逃げ出すと、ねえちゃんに殺されるのよっっっ!!」 「……………………滅びる……………………?」 不意に。 リナの言葉に、ヴォルフィードが目を瞠った。 「?」 「滅びる…………って、何?」 童女の様な声音。 純粋で、感情のこもらない、美しいソプラノ。 「わたし、そんなこと知らない。でも、それでもいい。デュグゥは、目的を果たしたのに、わたし一人が変わらないなんて…………それなら、いっそ」 「ちょっ…………ちょっと! 何言って――――!!」 知らないってどういう事よ、あんたの目的はこの世界を滅ぼすことなんじゃないのっ!!? そう、続けるつもりだった。 だが。 光が、弾けた。 唐突に。 何も理解できぬまま、一同は光に飲み込まれた。 |
18177 | Re:闇の残り香 13 | 白河綜 E-mail | 2001/11/18 00:15:01 |
記事番号18176へのコメント あなたは知らない。 わたしにとって――――わたし達にとって、あなたは全てだったのに。 そして――――。 …………気付こうとも、してはくれない………… * * * * * * * * * * * * * * 「――――あっ――――」 光に、呑まれたかと思った。 しかし、いつまで経っても、この身が消える気配はない。 「……………………?」 リナは恐る恐る、目を開いてみた。 まず、視界に入ってきたのは、ガウリイの後ろ姿。 それから、同じようにナーシャを背に庇うファレス。 ゼルガディス、アメリア、ウィン、エイジュ………… そして、フィリアに支えられ、その場で棒立ちになっているヴァルの、その混乱気味の視線の、向こう。 ――――そこには。 ぽけっ、とした表情のヴォルフィードと、彼女の首に大鎌を押しつけ、憮然とした表情でたたずむ全ての者の母――――金色の魔王、ロード・オブ・ナイトメア。 『…………いい加減にしなさいな』 凛としたエルの声が、すでに崩壊した室内に響く。 その声は美しく、気高く――――幼子を咎める、母のような声。この世の何人(なんぴと)たりとも、決して出せはしない、ただ一つの音。 彼女はゆっくりと、大鎌をヴォルフィードから離した。己の肩に担ぎ、ため息をこぼす。 『まったく……。フィー、なんであんたこんな事してるワケ? あんたの魂は、ちゃんと輪廻に乗せたはずよ? 一体なんで『残り香』が残ってんのよ。このままだと、次の生にも悪い影響がでるわよ』 トントン、と、肩を鎌の峰でたたいた。 ヴォルフィードは動かない。 何がどうなっているのか、理解しきれていない顔をして、まじまじと、不躾ともいえる視線でエルを見つめている。 水面の瞳に、混乱の色。 「……………………」 『…………ちょっと? フィー、どうしたのよ。まさか、このあたしが誰かわからないんじゃないでしょうねぇ?』 「……………………か…………あ、さま…………?」 幼い声が、言葉を紡ぐ。 どうやら、やっと理解に至ったらしい。 大きく目を瞠り、小柄な身体を細かく震わせる。 エルは、その整った顔に、形ばかりの笑みを張り付けた。 『そーよ。最も、あたしをそんな風に呼ぶのは、あんたくらいだけど。 …………さっき、あたしがこのメンバーに紛れていたのには気が付かなかったみたいだけど…………いい? もう、あんたの魂は、予定された運命に組み込まれてるのよ。ここで何かしたとしても、何一つ、変わりゃあしないわ。全て無駄』 「…………あ…………っ」 『あんたは魂は、少しの人格変換はあっても、このまま進めば二千年後に――――………… …………? ちょっと。フィー、聞いてんの?』 何の反応も示さないヴォルフィード。 エルは説明を中断して、両肩を抱き、うつむいたまま震えている、ヴォルフィードの顔を覗き込んだ。身につけた豪奢なアクセサリーは、シャラリともいわない。 「……………………どうして……………………」 小さな、弱々しい呟き。 ゆっくりと顔を上げるヴォルフィードの瞳からは、さながら泉のように、滾々と涙が流れていた。 「ヴォルフィード…………」 呼びかける声は、リナの後方から。 おそらく、彼女の涙の理由(わけ)を知っているであろうヴァルが、苦痛をこらえるような顔をして立っている。 はっきり言って、他の面々にはワケがわからない。 そして、それはエルも同じだった。 『ちょっと、フィー…………』 「どうして? かあさま。どうして…………今更…………っ!!」 刹那。 パァアンっっっ!! 『…………!!』 「な…………っ!!」 リナは、思わず目を疑った。 ヴォルフィードが、エルに攻撃を仕掛けたのである。 ――――っといっても、無意識に衝撃波を飛ばしてしまったのであろうが。 本体ではない、しかも、絶対の力を持つエルに効きっこない。案の定、エルは少し目を瞠っただけだった。 ――――だが、まさか攻撃されるとは思っていなかったようである。 『……フィー……』 「知らないっ! かあさまなんか知らない!! 今まで全然見てもくれなかったのに…………今更っ! 今更っっっ!!」 ヴォルフィードは、細い腕で頭を抱え、激しく左右に振っている。 ――――まるで、幼子が駄々をこねるように。 と。 不意に、ヴォルフィードの姿がかき消えた。 「!?」 「…………逃げた?」 『……………………違うわね。錯乱したのよ』 反射的に身構えたリナに、エルは少し疲れを含んだ声で答えた。 担いでいた大鎌を霧散させ、混沌に帰す。 「……………………なんだか、様子がおかしかったですよね、ヴォルフィードさん……………………」 ゼルガディスを支えつつ寄ってきたアメリアが、そう、ぽつりと言った。さらに首を傾げ、意外な事を口にする。 「…………でも、なんだかわたし、彼女の気持ちがわかるような気がします…………」 「どういう事だ?」 「…………そう訊かれると…………う〜〜〜〜ん…………」 と、眉を寄せて考え込んでしまった。 ワケがわからん、とゼルガディス。 その隣では、やはりリナが、 「…………あたしもわかる気がする…………」 「? リナさんも?」 「うん…………。なんか、多分だけど、あたしも経験あるんだわ。あんな感じの気持ち」 「いずれにしても……エル絡みだろうなぁ」 『……………………どういう事よ、ナーシャ』 エルが、険悪な目で、ナーシャをじろりと睨む。 未だ収まりきっていない風に、美しい狐色の髪を弄ばれながら、 「さきほど、ヴォルフィードはこう言っておったであろう。『今更』と。 …………貴女(きじょ)がこちらの世界にばかり干渉していた間に、あちらの世界で何かあったのではないか?」 『…………う゛…………っ。 でっ、でも! 本来自分達の世界での出来事には、自分達で対処するもんよ。『今更』…………なんて言われても、それはフィーの逆恨み。あたしは関係ないわよっっ! ……………………たぶん』 その語尾は、弱々しかった。 「…………ところで、貴女は今まで何処に行っておったのだ?」 『……………………はっ!! そうよっ!!』 ナーシャの素朴な疑問に、エルは竹箒を握ったまま、はっ、と我に返った。 と、ここで、何故エルが竹箒なんぞを持っているか、不思議に思う方もいるだろう。答えは単純明快。お掃除をしているからである。 あの後。 ヴォルフィードがどこかに行ってしまったのは良かったのだが…………残された傷跡は、大きかった。 ヴォルフィードが始めに放った爆破系魔法に、床は床でなくなった。 続いて、ウィン=コバルトが使った超強力結界魔法が、魔法の威力だけでなく、風に乗って吹っ飛んできた家具をも遮断し、その結果、家具は木っ端微塵になった。 ゼルガディスが叩きつけられた壁は、彼の重みに耐えられず、己の役目を手放した。 トドメに、リナが放った烈火球(バースト・フレア)。これで、家は家の機能を果たさなくなった。 ――――というわけで。 今、全員で『元・フィリアとヴァルの家』の跡地を片付けているのである。 エルは竹箒を、ぽいっ、と投げ捨て、ナーシャに向き直り、 『そうっ! そうなのよ、すっかり忘れてたわっっっ!!』 「何を…………」 『ナーシャ! 覇王(ダイナスト)のトコに行くわよっっっ!!』 「………………………………………は?」 ナーシャは、たっぷり時間を置いて、ようやく間の抜けた声をだした。 反対に、エルは嬉しそうに顔を笑ませて、 『だった、アレが一応、今回の騒ぎの原因でしょ? 直談判しにいくのよ。 ………………………………ついでに、とっちめる。』 そう言ってエルの瞳には、怪しい光が差していた。 「……………………不安だ……………………」 ナーシャは、誰にも聞こえぬよう、小さな声で本音を呟いた。 |
18179 | Re:エル様が(はあと) | かお E-mail | 2001/11/18 00:32:19 |
記事番号18177へのコメント こちんにわ♪ ふふふふ♪一気に二本♪ キャナル、エル様に怒ってほしかったのですねぇ♪ 反逆してたとき(笑) まあ、気持ちは分かる(笑) かまってほいしために、悪さする(笑) ほとんど、子供(笑) ふふふふ♪続きが楽しみなのです♪ ではでは、時間が時間ですので♪ 私は、これにて♪ では♪ |
18180 | お……お早い…………(汗) | 白河綜 E-mail | 2001/11/18 00:41:26 |
記事番号18179へのコメント かおさんは No.18179「Re:エル様が(はあと)」で書きました。 > >こちんにわ♪ >ふふふふ♪一気に二本♪ こんにちはvv はいっ! 実は「13」は今日打ち終わったばかりなのです(汗) >キャナル、エル様に怒ってほしかったのですねぇ♪ >反逆してたとき(笑) ふふふvvv >まあ、気持ちは分かる(笑) >かまってほいしために、悪さする(笑) >ほとんど、子供(笑) そーなんです。見た目ばかり大きな子供。 それがこの「残り香」ヴォルフィードちゃんなのです(爆) >ふふふふ♪続きが楽しみなのです♪ >ではでは、時間が時間ですので♪ >私は、これにて♪ >では♪ 毎回ありがとうですvv がんばって打ちたいと思います♪ 毎度の事ですが、続きは一週間後、また2〜3個同時にアップしたいと思ってます。 それでは。 白河綜でした♪ > |
18222 | をう!!いつまに!! | たかこ | 2001/11/18 23:17:26 |
記事番号18177へのコメント こんにちは、白河さんvv 楽しく読ませていただきましたvv エル様vvエル様だぁ〜vv >『…………いい加減にしなさいな』 > 凛としたエルの声が、すでに崩壊した室内に響く。 > その声は美しく、気高く――――幼子を咎める、母のような声。この世の何人(なんぴと)たりとも、決して出せはしない、ただ一つの音。 うきゃぁぁぁぁぁ!! かっこいいですvvエル様!! 母です!! もう、これこそ全ての存在(もの)の母です!! >「さきほど、ヴォルフィードはこう言っておったであろう。『今更』と。 > …………貴女(きじょ)がこちらの世界にばかり干渉していた間に、あちらの世界で何かあったのではないか?」 >『…………う゛…………っ。 > でっ、でも! 本来自分達の世界での出来事には、自分達で対処するもんよ。『今更』…………なんて言われても、それはフィーの逆恨み。あたしは関係ないわよっっ! ……………………たぶん』 > その語尾は、弱々しかった。 ・・・・・エル様・・・(汗) まぁ、エル様らしいですけど。 >「…………ところで、貴女は今まで何処に行っておったのだ?」 >『……………………はっ!! そうよっ!!』 > ナーシャの素朴な疑問に、エルは竹箒を握ったまま、はっ、と我に返った。 > と、ここで、何故エルが竹箒なんぞを持っているか、不思議に思う方もいるだろう。答えは単純明快。お掃除をしているからである エル様に竹箒・・・・・(笑) エル様に・・・・・・・・・・・・!!(笑ってます) っと、いけません。これ以上笑っていたら混沌に沈められてしまいます(汗) ナーシャさんのツッコミ具合が好きですvv エル様につっこめるなんて彼女くらいです!! ふふふ(最近この怪しい笑いが癖になっている・・・・・) では、続き楽しみにしておりますvv たかこ。 |
18229 | お掃除の友は竹箒と相場が決まってるんです!!(待て) | 白河綜 E-mail | 2001/11/19 00:45:14 |
記事番号18222へのコメント たかこさんは No.18222「をう!!いつまに!!」で書きました。 > > > > こんにちは、白河さんvv > 楽しく読ませていただきましたvv うおおおおおお!! 毎回感想をいただいちゃいましてv ありがとうございますvvv > エル様vvエル様だぁ〜vv ふふふっ♪ ばっちりですvv(自分で言うな) 次回もいっっっっっぱい出します♪ >>『…………いい加減にしなさいな』 >> 凛としたエルの声が、すでに崩壊した室内に響く。 >> その声は美しく、気高く――――幼子を咎める、母のような声。この世の何人(なんぴと)たりとも、決して出せはしない、ただ一つの音。 >うきゃぁぁぁぁぁ!! >かっこいいですvvエル様!! >母です!! >もう、これこそ全ての存在(もの)の母です!! お気に召したようで、よかった(ほっ) ここのシーン……っていうか、エル様の「お声」の表現には、毎回気をつかってます。姿は、自由におとりになってしまわれるので、せめて声は(笑) >>「さきほど、ヴォルフィードはこう言っておったであろう。『今更』と。 >> …………貴女(きじょ)がこちらの世界にばかり干渉していた間に、あちらの世界で何かあったのではないか?」 >>『…………う゛…………っ。 >> でっ、でも! 本来自分達の世界での出来事には、自分達で対処するもんよ。『今更』…………なんて言われても、それはフィーの逆恨み。あたしは関係ないわよっっ! ……………………たぶん』 >> その語尾は、弱々しかった。 >・・・・・エル様・・・(汗) >まぁ、エル様らしいですけど。 エル様ですから。 あああ…………それにしても、どんどん庶民(失礼)っぽくなってくるエル様…………(汗) >>「…………ところで、貴女は今まで何処に行っておったのだ?」 >>『……………………はっ!! そうよっ!!』 >> ナーシャの素朴な疑問に、エルは竹箒を握ったまま、はっ、と我に返った。 >> と、ここで、何故エルが竹箒なんぞを持っているか、不思議に思う方もいるだろう。答えは単純明快。お掃除をしているからである >エル様に竹箒・・・・・(笑) >エル様に・・・・・・・・・・・・!!(笑ってます) >っと、いけません。これ以上笑っていたら混沌に沈められてしまいます(汗) (笑) ちなみに、箒はフィリアが押しつけました(笑) 「エル様が監視を怠っていたから、こんな事になってしまったんですねっ!!?」 『え……っ、いや……その…………』(もじもじ) 「………………当然、手伝って下さるんですよね? 片付け。うれしいです。例え世界広しといえど、あなた様に家の片付けを手伝ってもらえるなんて、そんな果報者わたしだけですよね。ハイ」(竹箒をわたす) 『…………』 「エル、貴女の負けだ。さっさと片づけよう」 …………こんな感じで。(笑) 嗚呼、どんどん皆さんと仲良くなるエルさま………… >ナーシャさんのツッコミ具合が好きですvv >エル様につっこめるなんて彼女くらいです!! え、ホントですかvv よかった、ナーシャ。嫌われてはいないぞ(笑) >ふふふ(最近この怪しい笑いが癖になっている・・・・・) 白河はよく「けきょけきょけきょ…………」っていってます(待て待て) >では、続き楽しみにしておりますvv > >たかこ。 ありがとうございますv そりでは。時間が時間なので。 受験勉強の息抜きが此処だったりする白河綜でした♪ > > > |
18247 | Re:闇の残り香 13だっ♪ | 宝珠 | 2001/11/19 17:05:02 |
記事番号18177へのコメント こんにちわ!宝珠です。 うっきゃっーーーーvLさまLさまっ♪(^^) L様・・・・お冠のごよーすですねぇ・・・。んーみゅ。 ををっ!次回、覇王様・・・・一体、生きていられるでしょうか・・・。(汗) L様の仕置きの前に・・・。(汗) 次回作、楽しみに待ってます!それでわ、この辺で☆ |
18276 | エル様は書いててたのしい・・・vv | 白河綜 | 2001/11/20 13:09:39 |
記事番号18247へのコメント 宝珠さんは No.18247「Re:闇の残り香 13だっ♪」で書きました。 > >こんにちわ!宝珠です。 こんにちはv 白河です♪(やめい、その始め方は) >うっきゃっーーーーvLさまLさまっ♪(^^) >L様・・・・お冠のごよーすですねぇ・・・。んーみゅ。 きょきょきょきょきょ・・・・・♪(?) >ををっ!次回、覇王様・・・・一体、生きていられるでしょうか・・・。(汗) >L様の仕置きの前に・・・。(汗) ・・・どうでしょう・・・? でも、多分エル様のことですから、「生かさず殺さず、一番苦しむやりかたでvvv」なんじゃないでしょうか?(待て) >次回作、楽しみに待ってます!それでわ、この辺で☆ うにゅう。ありがたいです!! 次回は孫(+エル様)対祖父の対決になりそうな・・・・ では。 白河綜でした♪ |
18265 | フィーさんッ!? | むくぅ | 2001/11/19 22:01:00 |
記事番号18177へのコメント どうも、夜になると不気味にハイテンションになるむくぅなのです(蝙蝠ゆえに) いきなり叫びました。 今回も出遅れてしまいました。ごめんなさい。 フィーさんー……死なないでー(涙) それがいい意味での死なのか、悪い意味での死なのか――『彼女』の残り香は、輪廻転生の輪に戻れるのか!? ああ。大変……(待て) 覇王は……うーん……とりあえず、がんばってほしいのです(汗) L様は暴れだしてしまうのか、覇王は滅びずにすむのか(確率低し←待て)……なにやら大変な感じなのです! 続きが気になるのですっ! それでは、短くてすいませんっ! しかも感想になってませんっ! 心情的にはヴァル争奪戦はフィリアの勝ちなのです!(だから待てって) それでは、むくぅなのでしたっ!(ぺこり) 逃走ッ! |
18277 | 覇王様生き残れるか!?計画発動中♪(待て) | 白河綜 | 2001/11/20 13:19:33 |
記事番号18265へのコメント むくぅさんは No.18265「フィーさんッ!?」で書きました。 > > どうも、夜になると不気味にハイテンションになるむくぅなのです(蝙蝠ゆえに) > いきなり叫びました。 どうもです。白河も、夜はよく叫びます。受験勉強中に。(待て) > 今回も出遅れてしまいました。ごめんなさい。 そんなことないですっ! お気になさらないでください!! > フィーさんー……死なないでー(涙) > それがいい意味での死なのか、悪い意味での死なのか――『彼女』の残り香は、輪廻転生の輪に戻れるのか!? > ああ。大変……(待て) ううう・・・。 一応・・・ハッピーエンドを目指しております。泣かないで(汗) > 覇王は……うーん……とりあえず、がんばってほしいのです(汗) > L様は暴れだしてしまうのか、覇王は滅びずにすむのか(確率低し←待て)……なにやら大変な感じなのです! ふふふっ。エル様を敵に回してしまうからです!(厳密には違う) でも、当面はナーシャとのくち喧嘩・・・(?)になる予定ですので。 > 続きが気になるのですっ! > それでは、短くてすいませんっ! しかも感想になってませんっ! そんなことないですってば!!(汗) > 心情的にはヴァル争奪戦はフィリアの勝ちなのです!(だから待てって) あっ、ホントですか? よかった〜〜〜〜vv なんか書いてて「フィーとヴァルが・・・なんだか・・・(汗)」な感じになってたんで。本人が書きたかったあの二人は、恋人、じゃなくて兄妹だったのです。 よかった。フィリアの勝ちで(安心) > それでは、むくぅなのでしたっ!(ぺこり) > 逃走ッ! ありがとうございました! 白河綜でした!(脱兎のごとく逃げて行く・・・) |
18365 | 闇の残り香 14 | 白河綜 E-mail | 2001/11/23 17:26:51 |
記事番号18176へのコメント あうう………。 こんにちは、一週間ぶりに新作アップです。 今回の話は、白河のただでさえゆっくりスピードな話の”閑話”になっております。故に、二つ続けてアップするのは何だかな〜〜って感じだったので、一応これだけのアップとしました。続きは明日か明後日になります。 ではでは。 …………ふふふvv エル様vv ########################################################## 幼い日を、思い出す。 ただ、寂しかったあの日々を。 あの方は知らない。 寂しくて、それは彼も同じで。 だから、二人でここまで舞台をこしらえて、だから、わたしは………… * * * * * * * * * * * * * * コポコポコポ…… カップにお茶が注がれる音がした。 かろうじて破壊されていなかった、離れの一部屋。普段はフィリアが、骨董品を置いているのに使っているらしい。 漸く掃除を終えて、一休みしているのである。 と。 不意にナーシャが顔を上げた。 「ところでエル。祖父様に会いに行くと言っていたが…………どうやって? あの方は今、リナ殿達にやられて、物質界に出てこれんのだろう?」 『うん』 「…………会いに行きようがないではないか。貴女(きじょ)が呼びつけるワケにもいかぬなら…………」 『なーにいってんのよ、ナーシャ。こっちから行くに決まってんじゃない』 「…………なんだって…………?」 カシャンっ ナーシャが紅茶のカップを落とした。…………本人は気付いていないが。 テーブルにぶち撒かれた紅茶を、隣に座っていたウィン=コバルトがせっせと拭く。 再びお茶を注がれたところで、漸くナーシャは我に返った。 「すまぬ、ウィン」 「イエイエv どういたしましテvv ところでエル様。出向くって、どちらにいかれるんですカ?」 『決まってるでしょうが。当然、精神世界面(アストラル・サイド)よ』 なにいってるのよ、とエル。 「…………私は一応、生身の人間なんだが…………」 『四分の一は、魔族でしょ』 さらり、と言って、エルは優美な仕草で紅茶をすすった。 身体は半透明なのに、何故か食べ物はきちんと食べられるらしい。 細く長い指を伸ばし、お茶菓子を手に取る。それを口へ運びつつ、 『大丈夫よ。あたしがサポートしてあげるし』 「待った。」 唐突に、制止の声が入った。 リナだ。 かぐわしい湯気のたちのぼる紅茶を、一気にのどに流し込み、はぁ、と口中にたまった息を吐く。 「あのさ、精神世界面(アストラル・サイド)に行くって…………とりあえず、そこに覇王(ダイナスト)がいるのよねぇ?」 『そーよ』 ずずっ、と、エルがお茶をすすった。さらにお茶菓子に手を伸ばし、一口大に砕いてから口に運ぶ。ぽりぽりと美味しそうな音を立て、それはお腹に収まった。 『最初に言ったでしょ。何にしても、黒幕である覇王(ダイナスト)をどーにかすれば、話は早いのよ。アイツがフィーの魂と肉体を繋いでいるんだから、それを断ち切らせれば、あの子は輪廻の流れに戻る…………と思う。多分』 「不安だなー…………」 と、この突っ込みはファレス。 彼はナーシャにお茶のお代わりを注いでもらいながら、嫌そうな顔でエルを見ていた。 「…………そんな不確定な事しに、ヒトの奥さん連れてくわけか? やめよーぜ、精神世界面(アストラル・サイド)なんて。俺達いけねーし」 こくん、と、リナも彼のセリフに頷いた。リナが制止の声を上げたのも、それが原因だからだ。 行き先は、精神世界面(アストラル・サイド)。 当然、生身の肉体――――普通の人間にはいけっこない。 「エル、精神世界面(アストラル・サイド)には覇王(ダイナスト)がいる…………ってことは、ヤツの部下も当然、いるんでしょ? 危ないじゃない! ナーシャがいくら覇王(ダイナスト)とスィーフィードの力を持っているからって、やっぱり危険よ。それに、あたし達も行けないって事は、守ってあげることもできないじゃない」 『…………あたしがそばにいて、それでも攻撃を仕掛けようなんて奇特な奴、いるかしら?』 「いるわよ、一人」 『誰?』 「覇王神官(プリースト)グロウ」 リナは本っっっっっっっっっっっっっっっっっ当に嫌そうに顔を顰めた。 「あのサド魔族ならやりかねないわ」 『それなら平気。ゼラスからゼロスを借りてあるから。今追わせてるところよ。 それに、そんなに心配なら、ウィンあたりが付いてくる?』 「えっ、エル様、アタシですカ〜〜〜〜?」 ウィン=コバルトは、口をとがらせてエルに抗議した。幼い顔立ちに、その動作はひどく似合っている。 「〜〜〜〜面倒だナ〜〜〜〜…………」 『甘ったれんじゃないの。あんた最近お仕事さぼってるじゃない』 「うううう…………」 「…………?」 エルとウィン=コバルトの会話に、少し疑問を抱きつつも、リナは取りあえず安心した。 例え逆立ちをしたって、自分達は助けになど行けない。だからといって、ナーシャとエルだけで行かせるのも心配だった。 肉親の、情。 魔族にそんなものが有るかは知らないし、また興味もない。 でも、人間につきまとう血縁というのもは、本人が自覚している以上に、己の本質に関わってくるものだ。例え毛嫌いしている輩(やから)であろうとも、冷たくされれば心が痛む。リナが心配したのは、ソコだ。 もし、ナーシャの心が揺らいだ時。 心に、傷を負ってしまった時。 この、危ういバランスの中で生きている女性は、はたして『ナーシャ』というヒトのまま、戻ってくることができるのだろうか? もし、そうなってしまった時、残念ながらエルには頼れない。彼女は、世界の『本質』であると同時に、最も『異質』な存在なのだから。『異質』な存在が『異質』な存在によって助けられることは、無い。それは、助けられたと理解した瞬間に、己が『異質』なのだと、自覚してしまう事なのだから。 だが、旧知の友らしいウィンが一緒に行くのなら、ひとまず安心と言っていいだろう。 …………それ以前に、ナーシャが傷つきそうになったら、エルが問答無用で黙らせるだろうけど。 ふぅ リナは湿った息を吐き出すと、ティーカップにもう一杯、お茶を注いだのだった。 「…………じゃ、あたし達は移動を開始するから、事がすんだらこっちに来てよ」 翌朝、である。 エル・ナーシャ・ウィンが精神世界面(アストラル・サイド)に、リナ達はかつての空竜(エア・ドラゴン)の神殿に行くことにした。 何故リナ達まで移動するのか。 答えは単純。ヴォルフィードが再び襲ってきたとき、街の中では多大な被害が出てしまうからである。それを防ぐためだ。なんといっても、彼女はリナを、そして何故か『裏切った』と判断したヴァルを追ってきているのだから。 幸いにして、昨日の襲撃はフィリアの家が崩壊した程度ですんだが………… エルは、ぱちんっ、と器用にウインクしてみせる。 『まっかせなさいって。そっちこそ、気を付けてねv』 「…………エル様ぁ…………やっぱアタシも行かなきゃダメぇ?」 『ダメ』 三人の姿が消えたのは、その直後だった。 |
18367 | Re:14!! | たかこ | 2001/11/23 17:45:20 |
記事番号18365へのコメント こんにちは!白河綜さん 14ですねv 読ませていただきましたvv >『…………あたしがそばにいて、それでも攻撃を仕掛けようなんて奇特な奴、いるかしら?』 >「いるわよ、一人」 >『誰?』 >「覇王神官(プリースト)グロウ」 > リナは本っっっっっっっっっっっっっっっっっ当に嫌そうに顔を顰めた。 ・・・・・・そんなに嫌なんでしょうか、リナは。 > 肉親の、情。 > 魔族にそんなものが有るかは知らないし、また興味もない。 > でも、人間につきまとう血縁というのもは、本人が自覚している以上に、己の本質に関わってくるものだ。例え毛嫌いしている輩(やから)であろうとも、冷たくされれば心が痛む。リナが心配したのは、ソコだ。 をう!優しいですな、リナ。 しかし、ナーシャさんのことエル様結構気に入ってる?(お気に入りではあるんだろうが・・・・・そうじゃなくて・・・・・う〜ん、う〜ん・・・・・・うまい言葉が見つからん。) 続きぃぃぃぃぃぃぃぃ!! この続きは? 待ってますvv 頑張って書いてくださいね♪ ふふふ。 ではでは。 たかこ。 |
18371 | お茶菓子はシフォンケーキvv | 白河綜 E-mail | 2001/11/23 18:07:02 |
記事番号18367へのコメント たかこさんは No.18367「Re:14!!」で書きました。 > > >こんにちは!白河綜さん >14ですねv こんにちはv >読ませていただきましたvv ふふふ。私もたった今読んできました、たかこさんのvv 毎回ありがとうございます♪ >>『…………あたしがそばにいて、それでも攻撃を仕掛けようなんて奇特な奴、いるかしら?』 >>「いるわよ、一人」 >>『誰?』 >>「覇王神官(プリースト)グロウ」 >> リナは本っっっっっっっっっっっっっっっっっ当に嫌そうに顔を顰めた。 >・・・・・・そんなに嫌なんでしょうか、リナは。 ううぅぅぅぅぅうぅぅぅぅうぅん……(悩)←待て。考えてないのか!? >> 肉親の、情。 >> 魔族にそんなものが有るかは知らないし、また興味もない。 >> でも、人間につきまとう血縁というのもは、本人が自覚している以上に、己の本質に関わってくるものだ。例え毛嫌いしている輩(やから)であろうとも、冷たくされれば心が痛む。リナが心配したのは、ソコだ。 >をう!優しいですな、リナ。 リナは優しいけど照れ屋さんだから口には出さないのです!!(それじゃなきゃ、ガウリイとくっついてそう(笑)) >しかし、ナーシャさんのことエル様結構気に入ってる?(お気に入りではあるんだろうが・・・・・そうじゃなくて・・・・・う〜ん、う〜ん・・・・・・うまい言葉が見つからん。) うーんと、ここらへんのエル様の考え方、ナーシャへの接し方については、エピソードを考えてあります。でも、多分、その話をアップできるのは、無事受験が終わってからになるかと(汗) でも、確かにエル様はナーシャを特別視してますね。リナ達とは別の角度から。 >続きぃぃぃぃぃぃぃぃ!! >この続きは? >待ってますvv >頑張って書いてくださいね♪ >ふふふ。 >ではでは。 >たかこ。 にょおぉぉぉぉおおぉぉぉぉ!! ふふふ、がんばるです!! ではでは。 白河綜でした♪ |
18377 | Re:出てるし♪ふふふふ♪ | かお E-mail | 2001/11/23 21:04:08 |
記事番号18365へのコメント こんにちわ♪ ふふふ、でましたねぇ♪続き♪ >『まっかせなさいって。そっちこそ、気を付けてねv』 >「…………エル様ぁ…………やっぱアタシも行かなきゃダメぇ?」 >『ダメ』 なんか、エル様だったら、面白そうという理由で、リナ達も連れてくかなぁと 思ったんだけどなぁ(笑) んでもって、精神世界を大混乱にぃ(笑)←さらにまてぃ!! >『…………あたしがそばにいて、それでも攻撃を仕掛けようなんて奇特な奴、いるかしら?』 >「いるわよ、一人」 >『誰?』 >「覇王神官(プリースト)グロウ」 でも、エル様の前では小物ぉ(笑) > リナは本っっっっっっっっっっっっっっっっっ当に嫌そうに顔を顰めた。 まあ、あの性格ならねぇ(笑) >「あのサド魔族ならやりかねないわ」 >『それなら平気。ゼラスからゼロスを借りてあるから。今追わせてるところよ。 > それに、そんなに心配なら、ウィンあたりが付いてくる?』 ゼロス・・哀れなり(笑)エル樣にこきつかわれてるのね(笑) > 幼い日を、思い出す。 > ただ、寂しかったあの日々を。 > あの方は知らない。 > 寂しくて、それは彼も同じで。 > だから、二人でここまで舞台をこしらえて、だから、わたしは………… もしもし?部下として、創り出された時点で、それは、覚悟することだったのでは? ふふふふ♪続き、すぐですか・・。ふふふ♪楽しみにしてますのです♪ 私は、前半、後半と打ち込み終了して、投稿する予定(笑) ・・かなり先になりそう・・(汗)←お゛い゛・・。 ではでは、感想になってませんが、感想でした。 byかお |
18378 | シ○リスくんの声真似が得意だったりして……(笑) | 白河綜 E-mail | 2001/11/23 21:36:41 |
記事番号18377へのコメント かおさんは No.18377「Re:出てるし♪ふふふふ♪」で書きました。 > >こんにちわ♪ >ふふふ、でましたねぇ♪続き♪ >>『まっかせなさいって。そっちこそ、気を付けてねv』 >>「…………エル様ぁ…………やっぱアタシも行かなきゃダメぇ?」 >>『ダメ』 >なんか、エル様だったら、面白そうという理由で、リナ達も連れてくかなぁと >思ったんだけどなぁ(笑) >んでもって、精神世界を大混乱にぃ(笑)←さらにまてぃ!! あはは(汗) そうしようとも考えたんですけどねぇ(滝汗) >>『…………あたしがそばにいて、それでも攻撃を仕掛けようなんて奇特な奴、いるかしら?』 >>「いるわよ、一人」 >>『誰?』 >>「覇王神官(プリースト)グロウ」 >でも、エル様の前では小物ぉ(笑) イメージ的には「ぼ○ぼの」のあ○いぐまくん(笑) 最後に泣きを見るという…………。 >> リナは本っっっっっっっっっっっっっっっっっ当に嫌そうに顔を顰めた。 >まあ、あの性格ならねぇ(笑) ねぇ?(待て) >>「あのサド魔族ならやりかねないわ」 >>『それなら平気。ゼラスからゼロスを借りてあるから。今追わせてるところよ。 >> それに、そんなに心配なら、ウィンあたりが付いてくる?』 >ゼロス・・哀れなり(笑)エル樣にこきつかわれてるのね(笑) 使われてます(キッパリ) ええ、そりゃあもう(止めてやれ) >> 幼い日を、思い出す。 >> ただ、寂しかったあの日々を。 >> あの方は知らない。 >> 寂しくて、それは彼も同じで。 >> だから、二人でここまで舞台をこしらえて、だから、わたしは………… >もしもし?部下として、創り出された時点で、それは、覚悟することだったのでは? うにゅ。ここら辺のエピソードは、後ほど話の中で出てきますので、もうちょっと待って下さいね。 >ふふふふ♪続き、すぐですか・・。ふふふ♪楽しみにしてますのです♪ >私は、前半、後半と打ち込み終了して、投稿する予定(笑) >・・かなり先になりそう・・(汗)←お゛い゛・・。 >ではでは、感想になってませんが、感想でした。 >byかお ふふふぅvv 毎回ありがとうございますです♪ あ、そう言えば………… 著者別でかおさんの「エル様漫遊記・番外編7・8」(…………だったかな?)を見ようとしたら、「ページがありません」ってでちゃったんですけど………… 白河のパソコだけでしょうか? う〜〜〜〜む。 それでは。 白河綜でした。 |
18380 | 上の追加です。 | 白河綜 E-mail | 2001/11/23 21:42:10 |
記事番号18378へのコメント 追加です。 多分、まだツリーが落ちていないせいだと思うのですが…………。 確か、ツリーがまだあるうちは(落ちていないなら)著者別には登録できないはずです。 すでに御存知だったらすみません。 念のため、というやつなので、気にしないで読み飛ばしてください(笑)。 しっかしかおさん、お話アップするのがお早いです…………(尊敬の眼。←止めろ。お前がやっても気味悪いだけ) それでは。 失礼しました。 白河綜でした。 |
18392 | Re:知っててあえて(笑) | かお E-mail | 2001/11/24 01:16:43 |
記事番号18380へのコメント 白河綜さんは No.18380「上の追加です。」で書きました。 > > こんにちわ♪白河綜さん♪ > > 追加です。 > > 多分、まだツリーが落ちていないせいだと思うのですが…………。 > 確か、ツリーがまだあるうちは(落ちていないなら)著者別には登録できないはずです。 いえいえ、知ってますわさ(笑) ただ、落ちそーだったので、で、長編の登録と一緒についでに登録を(笑) だって、どーせ、(やっぱ落ちたし・笑)すぐ落ちそ〜だったし(笑) > すでに御存知だったらすみません。 いえいえ、わざわざ、どうもなのです♪ まあ、登録しとけば、あとで、落ちたとき、確認しなくていいので(笑)←ツリー番号(笑) (んな理由で落ちてないのに登録したやつ・爆!) > > 念のため、というやつなので、気にしないで読み飛ばしてください(笑)。 わざわざ、ありがとうなのです♪ ついさっき、次の番外編を投稿しましたので(笑)よければ、そちらをどーぞ(笑)←進めてどうする!?(汗) > > しっかしかおさん、お話アップするのがお早いです…………(尊敬の眼。←止めろ。お前がやっても気味悪いだけ) ・・・・遅いですよぉ・・・・。ふっ・・・。 まだ、長編の続き・・一行も打ち込んでない・・・・。 エル:なんですってぇぇぇ!!?? あ゛あ゛!?また、見つかったぁぁ!?(滝汗) > > それでは。 ではでは、 > > 失礼しました。 わざわざありがとうなのです♪ > 白河綜でした。 かおでした♪←まねするなよな(汗) それでは♪byかお > > |
18407 | グロウも危ない今日この頃(待て) | むくぅ | 2001/11/24 11:49:17 |
記事番号18365へのコメント ああ。やばいなー覇王サイド、と思う今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?(だから待て) 今回も多大に遅れたとゆーか自分の話投稿しつつコメントがつけられなかったむくぅなのです(深々と礼) 佐渡……もとい、サド魔族で名称が決定したグロウさん。覇王さんは助かるかも知れないけどグロウさんはどーなるんかなぁとかしみじみと思いますのです(勝手な予想) サドだから(関係なし) むぅ、サドサド連発されて本人はどのような気持ちになってるのか…… そんな些細なことはともかく(些細か?)、次回はおそらくウィンさんとL様大活躍ッ! 来る敵来る敵ハンマァやらトンカチやらカナヅチ(全部同じ)やらで、どかどかぁっ! っと気持ちよく殴り飛ばしてくれるはず!(待て) 楽しみだなぁ(そういう楽しみかたかい) ……………はい。毎度のことながら、短くて感想にすらなってません。ごめんなさい。 それでは逃げさせていただきますのですっ! むくぅなのでしたぁぁぁぁぁっ! 逃走ッ! |