◆−セレナーデ story10 〜終曲〜−春祭あられ (2001/12/24 22:52:34) No.19175 ┣人生をもてあそべ。(1)−春祭あられ (2001/12/24 22:57:24) No.19176 ┣人生をもてあそべ。(2)−春祭あられ (2001/12/24 23:00:24) No.19177 ┣人生をもてあそべ。(3)−春祭あられ (2001/12/24 23:03:42) No.19178 ┣人生をもてあそべ。(4)−春祭あられ (2001/12/24 23:05:44) No.19179 ┣人生をもてあそべ。(5)−春祭あられ (2001/12/24 23:08:13) No.19180 ┣人生をもてあそべ。(6)−春祭あられ (2001/12/24 23:12:09) No.19181 ┣人生をもてあそべ。(あとがき)−春祭あられ (2001/12/24 23:25:41) No.19183 ┣はじめまして−清川正寛 (2001/12/26 01:05:04) No.19214 ┃┗Re:はじめまして−春祭あられ (2001/12/26 20:09:55) No.19226 ┗LOVEはにわ!!!−風林みつき (2001/12/26 23:44:13) No.19237 ┗はにわ〜!!−春祭あられ (2001/12/27 01:32:21) No.19242
19175 | セレナーデ story10 〜終曲〜 | 春祭あられ | 2001/12/24 22:52:34 |
第九楽章は何もレスなくツリー落ちしてしまいました。 自分の続きも無く・・・・・・ぎゃふん。 ◇◆◇◆◇◆◇ この世に生きるものは、皆もろい存在。 それは人間であり、魔族ですら。 それであるから、愛しい存在であることにもかわらない・・・・・・ 「おーあれか?リナ」 彼等の目の前には見るからに大きな街がある。それをさしてガウリィは声をあげた。 「そーよ。あれがあたしの住んでた街!」 久しぶりに見上げる街の光景にリナは目を輝かせる。 それを見たガウリィは、まぶしいくらいに笑って安堵した。 「いこ、案内するわ!ああ懐かしい、今思い返せばほんといろんな事あったのよね、ここでは」 「おう、いこうか」 差し出された手を握り、彼らは町の中へ入っていく・・・・・・ 「まずはここ!」 リナの指す先は“食堂「食ってけ」”。街一番の食堂だと彼女は言う。 「へぇ。で、何食うんだ?」 「もっちろん!全メニュー二食ずつ制覇でしょ!」 「ほう・・・・・・じゃ、やってみますかっ」 「あたりまえっ」 にぃっといつもの笑いで腕まくり。目の前の扉に手をかけ、その扉を開ける。 中からはふんわりとおいしそうな香りが漂ってきた。 それはさまざまな香り。 スパゲティにハンバーグなどの洋風料理の香り、エビチリやシュウマイなどの中華料理の香り、鍋や煮物などの和食の香り・・・・・・全部混ざっているにもかかわらず、いやに感じないところがまた凄いところ。また、三大食がすべてそろっているここのメニューの豊富さもまた凄いところであった。 リナやガウリィでなくともよだれが後から後からたれてくるというものだ。 と、そのとき。 「いらっしゃいっ・・・・・・・・・あれ、あんたどっかで・・・」 「久しぶりおばちゃん!今日こそ全メニュー二食ずつ制覇いかせてもらうわよ!」 「やっぱりリナちゃんかい!!綺麗になったじゃないか!」 「やだぁ、ホントのこといったって、何にも出てきやしないわよ」 ふくよかな四十代後半そうな女性。彼女は、この食堂「食ってけ」の女将であった。 「あら、そっちの彼氏は?」 「ああ、こいつはガウリィって言って、あたしの旅のごくつぶしなの」 その言葉に苦笑しつつ、ガウリィは女将に頭を下げる。 「どうも。“保護者”のガウリィです。はじめまして」 「・・・・・・あんたも大変ねぇ。リナちゃんと一緒に旅だなんて・・・・・・」 「おっばちゃん、何かいったぁ?」 「・・・・・・・・・な、何も言っちゃいないよ」 冷や汗をたらしつつも女将は小さく答える。どうやら、リナの怖さはこの女将にも通用するらしかった。 リナの怖さが通じないこの街にも、それなりの常識人は一人や二人はいるものだ。 「女将さーん、どうかしましたかぁー?」 厨房のほうから声があがる。その声に、リナは聞き覚えがある。それはもちろんガウリィにも。 「なんでもないよ、昔の常連が来ただけさ」 声を返して、厨房のほうに帰ろうとした女将をリナは慌てて捕まえる。 「ちょっと待って。今の、誰?」 「今の?ああ、最近入ってきた若いこだからリナちゃんは知らないはずだよね」 「名前は?!」 そうであって欲しいけど、それはそれでありえない。 リナの頭の中にある名前・・・・・・ 同じくして、ガウリィの頭の中にある名前・・・・・・ 「名前?そんなの聞いてどうするんだい」 「良いから、教えて!!」 「しょうがないねぇ、彼は・・・・・・」 「“ゼロス”ですよ、リナさん」 考えていたそのままの彼が、三人の後ろに、いた。 市街地にある森林公園。ガウリィを食堂に置いてきて、ゼロスとリナの二人はそこにいた。 「どういうことなの?」 まず一言目にリナはそういった。 「どうっていわれましてもですねぇ・・・・・・一体何を答えればよいのやら・・・・・・」 「とぼけないで!あたしは、あんたが消滅したって聞いたのよ!ゼラス=メタリオム本人から!」 「・・・・・・知ってますよ。あの宝玉を渡すように頼んでおいたのは僕自身ですしね」 もともとゼロスのものであった宝玉は、今はリナの腰袋に入れてある。 他の宝玉と一緒に売ってしまわないように、しっかりと他と別々にして。 「リナさん、目をつぶって」 「なんでっ」 「いいから・・・・・・」 ゼロスは、リナの目の辺りに手をかけるとそっと視界を隠す。そこまでされると、リナの方も自ら目を閉じてしまう。 そのとたんにふとした唇にぬくもり。 ただ重ねるだけのそれは、五秒ほど続いた。 そして、ゆっくりと、名残惜しそうにはなれていく。 「これが・・・・・・答えです」 リナの目は、ゆっくりと開かれ、その瞳の中には驚きの光。 「ゼロス、あんた・・・・・・魔族よね」 「・・・・・・」 「どうして、ぬくもりがあるの?」 一番最後に会ったあの夜、ゼロスの身体は何処を触っても冷たかった。 それはしょうがない。魔族なのだから。 だが、今のは・・・・・・確かに暖かかったのだ。触れた先が、リナと同じく。 「僕は、確かに消滅しましたよ。魔族として」 「でも、僕はここにいる。・・・・・・今は、人間として」 リナは、今はもう下ろされた手をつかみ、握り締める。その手も、もちろん暖かかった。 人間としてのぬくもり。人間としての感性。 どうして、このような奇跡が起きたのだろうか。 「僕も、どうしてこういう現象が起きたのかは分かりません・・・・・・でも、こうしてリナさんとまた会えたから・・・・・・今度はちゃんとはなれずにいられるから・・・・・だからもう、これ以上追求しないでください。話せること自体、会えること自体、大きな奇跡だから」 「分かった・・・・・・・・・・・・お帰り、ゼロス」 そう、どうしてこんなことが起きたのか、それは誰にも分からない。 リナにも、ゼロスにも、もちろんゼラスにも。 分かるのはただ一人、現象を起こした張本人のみ。 それは、その人の名は―――――― なぜかしら。一度同化してしまったせいかしら。貴女の悲痛の叫びは、私の頭を激しく揺さぶるの。 だからね、今回だけよ。 特別大サービス。貴女達の願いを、共通の願いをかなえてあげる。 だからまた面白いことをしてあたしを楽しませてね。 ここに一人でいることは退屈で退屈で・・・・・・ 人間であったって、暇つぶしの材料にはなるのだから。そう、特に貴女は、ね・・・・・・ 愛しき、あたしの子供・・・・・・ ◇◆◇◆◇◆◇ これで長かったセレナーデも終わりです。 今まで読んでいてくれていた人、もしいればありがとうございました♪ これでセレナーデは終わりですが、もしかしたら、次また曲名シリーズとして、何か出すかもしれません。 今のところ考えているのは、「ノクターン」で、ゼルリナなんですが・・・・・・ いつ出るんだか・・・とうぶんでない・・・ とりあえず、これからも他のものでよろしくお願いします!! ではでは! 春祭あられ |
19176 | 人生をもてあそべ。(1) | 春祭あられ | 2001/12/24 22:57:24 |
記事番号19175へのコメント オリジナルです。 はっきり言って、完璧オリジナルです。 しかもギャグ小説を目指しています。 と、言うわけで、どうぞ。 「うぅ・・・・・・」 目を開いて最初に映ったのは青空。 「・・・・・・・・・・・・・・・」 起き上がったその姿は、十六・七歳の少年。寝ぼけているのか、目がうつろである。 「ここは・・・・・・・・・」 そう呟き周囲を見渡すと、なんと一面の花、花、花。 「は、花畑ぇ〜〜!?」 この年になって“お花畑”なんて言葉を大声で言うことに多少の恥じらいはあるが、今、そんな些細な事を気にしている場合ではない。気にするべきはこの場所。確か自分は、家にいて、家でできることしてて、家の中にいて、家で・・・・・・まさか、一瞬で俺の家が花畑に変わったのか? 「んな理由あるかっ!!」 一人ボケツッコミを一通り終えて考える。 「そうかっ!これは夢!」 ほっぺたをつねってみる。痛くない、痛いはずがない。 ぎりっっ 「いっ、痛って〜〜〜〜〜」 絶対に痛くないと思っておもいっきり抓ってしまったのだ。あまりにも強くやったもんだから、頬が赤くそまる。 「夢じゃない・・・?なら何なんだっっ!!」 「夢・・・それは睡眠中に起きる一種の心理現象。または、はかないさまや容易には実現できないことなどに言う言葉。そして、迷い」 ふと意外と近くで聞こえる言葉。慌てて振り返ってみると、そこには大変可愛らしい少女がいた。頭の上に浮かぶ黄金に光る輪、金色の髪の毛、純白の服に背に生える白い羽。どう考えても、それは天使だった。 「全ては夢かもしれない。そうでしょ?夢の中では痛みを感じないなんて一体誰が決めたの?夢の中であったって痛みは感じるものだよ。その痛みはそのまま精神に及んで、心が傷ついていく。死ぬほどの痛みであればそれは死ぬほどの心の傷。身体は一つしかないの」 「は、馬鹿な・・・・・・天使なんているわけがねぇ」 「いないなんて決めつけちゃ駄目。いるかもしれない。でもいないかもしれない。私はここにいる。私は私自身存在していると知っているからいると信じられる。あなたは?あなたは本当に存在しているの?」 「俺はいる。ここにいる!きちんと存在している!身体だってある!」 彼女に何か言われるたびに、どんどんと不安に駆り立てられていく。手のひらで自分の身体を触ってみた。 大丈夫。ちゃんとある。存在している。 「お前は、誰なんだ?・・・・・・ここは一体どこなんだ?」 彼が感じた最初の疑問。彼女はそれににっこりと笑って答えた。 「ここは見てのとおりの場所だよ。見る限り一面の花畑。唯一他のものが見えるとすれば、ほら、あそこにある森と上に広がる空と雲だけ。」 「それは見ればわかるっ。俺が聞いてるのは、ここが具体的にどこかってことだ!いいか、俺は家にいたんだ。東京都の、港区にある家に、だ。俺の家の近くにこんなところなかったはずだぜ」 「・・・・・・?とうきょうと?みなとく?そんな名前は知らないけど、ここは本当にただの“お花畑”。それ以外の何物でもない」 きょとんとする彼女に、嘘は言ってはいないように思えた。 だが、東京都も港区も知らないとなると、もう本当に素晴らしい世間知らずだな。と彼は思う。 いくらなんでも、箱入り娘でも限度というものぐらいはあるだろう。 「あなたは誰?誰かに名前を聞くのなら、先に自分の名前を言うのが礼儀だとは思わない?」 「え、ああ、そうか。ごめん。俺はりゅうま ひじり壟魔聖。・・・・・・で、あんたは」 「私はとわ永遠。永久じゃないの。永遠。・・・・・・見たまんま、天使なんだよ」 くすくすと彼女が―――永遠が笑う。 「ははは、天使ですか。それはまた珍しい職業で・・・・・・って、天使?マジ?」 「うん。天使。でもただの天使じゃないよ。実はね」 「ペ天使なのだよねー永遠君はー」 また別のところから今度は男の声がする。ずいぶんと年配そうな声だ。 ギョッとして周りを探るがそれらしい人影は見えない。自分と、永遠と、花、花、花。 気のせいかと思って目を永遠に戻そうとしたとき、がさがさと足元で音がした。 まさかと思いつつその音の方へ目を向ける。やはり何かがいた。茶色い、硬そうな・・・ 「はじめましてだね、聖君。私は源というよー。よろしゅうね」 聖の目の前が一気に暗くなりそうだった。 「・・・・・・ハニワ」 そう、ハニワだった。どう見てもあの古代人が作っていそうな置物。しかもそのハニワには見覚えがあるようなないような。 (どっかで見たことがあるような・・・それもごく最近) でもなんだか思い出せない。 「わぁ〜源さんだ!久しぶりだねー」 今まで真面目そうだった・・・お嬢様風だった永遠が急に甘ったれた声をだす。 その変化にもビックリんちょ。 「かれこれ三ヶ月ぶりかねー。元気してたかね」 「げんきげんきぃー。あのね、あのね、桃色のうさぎさんと蒼い狼さんがラブラブしてたんだよー」 「そっかそっか。どの辺りでかねー。北の方?南の方?」 「んと、え〜と、西の方!」 「そうか。西の方のあっちの世界に飛んでたか・・・はてさて聖君。ああ、聖と呼ばせてもらうけれどもどうかねぇー、この景色は。奇麗だとは思わぬかー?」 ぴょこぴょこと永遠の頭の上に上りながらハニワの源は聖に言う。その姿が大変滑稽。 何なんだこれは・・・・・・とか聖は思う。何でハニワがしゃべってるんだろう。何で土偶が動いてるんだろう。 世界は分からないことだらけというが、これはいくらなんでも行き過ぎではなかろうか。 「一面の花というのは、実に心が休まるものだ。して、聖。君は今何がしたい?」 「・・・・・・はい?」 「わたしはだね、あの森に行きたいと思うのだが」 「・・・・・・はあ」 行きたいなら勝手に行けば?などとは多分思ってはいけないのだろうな、と考える。 「ぜひとも君とともに行きたい」 「・・・・・・」 まあ、何となくは予想してたけれどさ。 「ねぇー、永遠もいきたいよぉ。一人追いてくのぉー?」 「永遠も行くだーよ。もちろんもちろん」 「やったぁー!」 何か言ったら、その自分の意思はこの人たち(ハニワは人かどうか分からないが・・・)にはたして通じるだろうか。 「あのー、とりあえず俺、自分の家に帰りたいんですけど・・・」 「ではでは聖、出発するネー!はよはよ〜」 「わーい!おっでかっけ、おっでかっけ!」 「・・・・・・くそったれが」 やはり通じないらしい。かといって、見知らぬ場所で、自分の取れる行動は決まっている。目の前にいる人についていくしかないではないか。 「目的地はばらばら町!ばらばら町ー!」 「ばらばら町・・・・・・んな名前の町なんか聞いたことねぇ」 というよりそんな町が日本の大都市の一つにあったら、一躍笑いものの有名町になっているような気がする。 「おい、本当に、ここはどこなんだ?俺は確かに家にいて、そう、家に誰かが来て・・・・・・それから、確か・・・」 無駄なような気もしたが、聖は前の者たちに向かって聞いてみる。 ・・・・・・本当に無駄だった。二人とも聞いちゃいない。聖の存在を無視しているかのようにずんずんと進んでいってしまう。 (本当に、どうしてこんなことになったんかなぁ?) ため息とともに心の中でそう呟きながら、聖は二人の後を追って駆け出した。 つづく♪ |
19177 | 人生をもてあそべ。(2) | 春祭あられ | 2001/12/24 23:00:24 |
記事番号19175へのコメント 「おい!まだ着かないのか?ばらばら町とかゆーすんげーふざけた名前の町はよ!」 うっそうと茂る草を掻き分け、足元の木の根に注意しながら聖はやけくそに叫んだ。 「・・・・・・。」 「誰か答えろよ!むなしいだろうがっ!」 「・・・・・・。」 「あーもう!永遠!何とか言えよ!」 「・・・・・・え?なんか言った?」 永遠が気の抜ける声で言った。 「おまえ、またどっかイってただろ」 「えーとぉー、今度はぁー、東の方ぉー」 にっこりと笑う永遠。 「・・・・・・ったく、おい!げん源!後どれくらいで着くんだ?」 「ぬはははは。人生急がば回れでーすねぇー」 二人以外のところから何やら声が聞こえてくる。 音の発信源は、聖が着ているボーダーシャツのフードに入っているハニワ。 「とっとといわねーと落として壊すぞコラ。」 「Oh!乱暴はよくないのれーす」 はじめてあった時から、不思議な口調でしゃべっては、自ら揺れる。 ハニワという物は自分から動けるものなのだろうか。 「ふっ。てめえがそーゆー態度に出るんならなあ・・・・・・」 すっと手を後ろに回す。そしてフードの中身を取り出すとそれを思いっきり地面にたたきつけて、蹴り上げて、踏みつけて、くぬっくぬっ! 「こっちにだって考えがあるんだよ!」 次はどこからともなく取り出したハンマーをハニワめがけて振り落とした。 そしてみごとに。 パリンッ 意外とあっけない音がして、あの奇妙なハニワが割れた。 「はぁっ・・・はぁっ・・・ざまーみやがれ」 足元に広がるかけらを見下ろして、聖は呟いた。その言いように、歓喜がこもっているあたり、前々からこうしたくてうずうずしていたらしい。可哀想なハニワよ。無事に成仏しろよ、アーメン。 と、すぐ横の木の上から聞きなれた声。 「若い者はすぐ暴力に頼ろうとする。形あるものはいつか壊れますが壊されるのはたまりませんのねぇー」 「・・・・・・!!うそだろ!?この声はくそハニワの源!」 そこには、みずからの手でこなごなにしたはずのハニワが自分を見下ろしていた。 ・・・・・・なぜ!? 「てめぇ!どっからわいてきやがった!?」 「Oh!若い者が、細かいことをいちいち気にしちゃいけませんねぇー。」 言いながら、再び聖のフードに飛び込む。 ・・・が、聖はそれを見事にかわした。だぁ〜れがお前みたいな得体の知れないものを受けとめるかってんだ。地面に落ちたハニワに、容赦なく二度目のハンマーが降り注いだ。 「・・・・・・今度こそ成仏しろよ。」 哀愁を漂わせて聖は言った。RPGのラスボスも、1度は生き返っても二度目はない!・・・グッバイ、ハニワ! 「オイ!永遠!さっさと行くぞ・・・・・・っていねぇ!?」 辺りを見渡しても誰もいない。 「永遠のヤツ・・・・・・どこ行きやがった!」 「・・・・・・・・・ひ〜じ〜り〜」 どこからともなく聞こえる声。よぉぉぉく見ると、永遠が女二人に捕まっている。 「誰だ?あの二人・・・」 「あれはシアさんとミアさんなのですねぇー」 「ほ〜〜〜〜ん」 ・・・まて、今俺は誰と話したんだ? おそるおそる振り向くと・・・・・・ 「うわぁぁぁぁ!近づくな、悪霊め〜。さっさと成仏しろ〜」 「あまり笑えない冗談ですねぇ。もう少しギャグのセンスを磨いてきなさ〜い」 「ら・・・ラスボス以上!?」 聖の頭の中、混乱中。さらに、追い打ちをかけるような永遠の言葉。 「聖!、!?*&%#×」 「・・・・・・なぁ、あいつ何語しゃべってんだと思う?」 とりあえず誰かに話し掛けてみた。自分も含めて5人もいるんだ。誰かしら答えてくれるだろう。 「多分永遠語でしょう。我らには理解不能な言語ですわ」 ミア―――永遠と同じように天使の羽があるが、天使としての証である輪がない、主に堕天使と呼ばれる―――がさも当然のようにすらりと答えてきた。 「あのね、あのね、あたし分かるよ!!きっとお腹すいたーって言ってるの!」 もう一人の方のシア―――悪魔の羽が生えているが、尾っぽはなく、主に昇魔と呼ばれる―――が永遠にもはや抱きつくような形で叫ぶ。ねんねこ帽子をかぶり、泣き黒子があるという姿はなかなか印象的だった。 「んなわけは絶対にないと思うが」 思わずげんなりと呟く。 というより絶対にそんなことはない。 この状況でお腹すいたと言うほど永遠も腐ってはいないであろう。・・・・・・多分。 「%*#$&=|+〜!!」 永遠がまた騒ぐ。また言っていることがさっぱりだ。というより、本当に何で叫んでいるのだろうか。 ミアは懐からなにやら太いテープを取り出すと、慣れた手付きで永遠の口にびりびりとはっていく。 これでけっこう静かになるらしい。ナイスだ、ミア! 「アトロネア様、遅くなって申し訳ございません。彼が”シーズ“ですか・・・・・・役者はそろいましたわ」 テープで手足もぐるぐる巻きにしてしまうと、まるでいつもの事のようにため息をつきながら彼女は言った。 すると、答えるようにハニワが跳ねた。どうやってか未だによくわからないが。 「うむ。では、今回皆を呼び寄せた目的を話そうと思う。壟魔聖君、我輩の本当の名はアトロネア=ボルトア三世。略して君が我輩を呼ぶときの“源”になる」 「そして、私がミア、姉のシアです」 ミアは礼儀正しく頭を下げる。 「・・・・・で、目的って何なんだ?」 腕を組み、貧乏ゆすりをしている聖は、いらいらする気持ちを何とか必死に抑えて言った。 「・・・ミア、シア・・・・・・例のモノを・・・」 源は目配せをし、(ハニワがどう合図したかは聖には全く判らないが)二人はなにやら白い布を持ってきた。 「聖君、なぜ君がここに来てしまったのか・・・・・・それは、このためなのデ〜ス!!」 その台詞とともに、布がバッと開く。シアが高らかに言う。 「ようこそ!シーズ!夢の世界・ジュレースへ!そんなあなたはちょーラッキー!」 ・・・・・・ハァ?? ひろげられた布は、まるで何かのイベントの垂幕のようだ。 「実は、この私、ハニワに触れたのが、君でちょうど百人目なのだよ。と、いうわけでぇ、夢の世界ジュレースの世界一周旅行に御案なーい!!」 なんとなく棒読みでハニワが叫ぶ。―――出された垂幕には今のハニワの科白と同じようなものが書いてあったりする。しかもちゃんとした装飾文字。真っ白な布は自らの存在を誇示するように風になびく。 「ほう・・・・・・で、オレにどうしろ、と?」 「もちろん、その名の通りこの世界一周をしてもらうのデース!!ふふふ。あなたはなーんてラッキーなのでしょう!ジュレース、まさに夢の国!! (しつこい)そうそうあんたらシーズがこられるとこではないのネェ!!」 思わず耳をふさいでしまうような大声でハニワがまたもや叫ぶ。叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。というより、シーズっていったいなんだ? ぶちっ 聖の耳には、そんな音が聞こえた。ような気がした。 と、気付いたら何故か右手にはとげ付きハンマー(殺傷能力はトリプルエーAAA)左手には金属バットを持って不敵に笑っていた。どこから現われたかなんて、もう聖には関係なし。あるものはあるんだ。例えそれがどんなものでも。 「ちょっと待ちやがれ・・・・・・勝手にオレをこんなところに連れ込みやがって世界一周しろだとぉ?どーっしてくれんだ明日漢字と化学の小テストがあんのによ!あれ受けれなきゃオレもう赤点だぞ!赤点!夏休みの補習だって受けなきゃなんねーのに世界一周なんてしてる暇はこれっっっっっっぽっちもねーんだよ!!」 怒りに身を任せ、まず右腕を高らかに上げ振り落とした。 もちろん狙いはハニワ。去ねやハニワ!とこしえ永久に!! だがハニワはひらりと身をかわした。さながら踊り子のようにしなやかに。 「もし進級できなかったらどーしてくれんだ、よ!!」 続いて第二撃。左腕が加速を異様につけて振られる。 だが、ぐづっと異様な音を立てて地面をえぐることしか出来なかった。 なかなかのしぶとさに思わず舌打ち。 「ただでさえ出席日数足りねーっつーオレにええ?!遊べだと?!遊べだと?!!ふざけんじゃねーっつーの!!」 後ろにハニワの気配を感じ、感覚のままに右腕を後ろに振った。その気配の感じ方はもはや獣。野生の勘。するりとよけたハニワだったが、目測を誤ったのかとげのひとつがあたり、思いっきりはり飛ばされる。 「とっとと元の世界へ戻しやがれ!!」 ようやく当てることができ、歓喜しながらも聖はなんとなく事の始まりを思い出していた。 ◆◇◆◇◆◇ 「ただいま」 ほとんど呟きに近い声で聖は言った。 「あ〜あ、明日は小テストか。勉強・・・・・・やる気しねぇなぁ」 自分の部屋のベッドに突っ伏して独り言。 と、若い青年の声。 「すみませーん、宅急便でーす!」 「ちっ・・・・・・せっかく勉強しようと思ったのになぁ」 一人で見栄を張ってみる。この上なくむなしい。印鑑手にドアを開ける。 「ほれ、印鑑」 「・・・・・・あっ、こっここに押してください、はんこ」 あたふたしているところを見ると、新人だな?まっ、しょーがねーか。 などと思いつつはんこを押す。 「ありがとうごさいました!!」 ・・・・・・あいさつだけはしっかりと。素人の典型だな。 「にしても、軽い。何が入ってんだ?」 無意識のうちに包みを開ける。 「なんだ?・・・・・・ハニワ?」 聖が手に取ろうとそれに触れる。強い風に襲われた。 聖が次に目覚めたとき見えたものは、全く見覚えのないヴィジョン色だった。 ◇◆◇◆◇◆◇ 「〜〜〜〜〜あの時ハニワに触れなきゃあ・・・・・・」 「いちいち悔いても仕方がないでしょう。こういう時は深呼吸をし、気持ちを落ち着かせるのです」 いつの間に戻ってきたのか、源が答えた。それを驚くほどの瞬間技で、ガムテープでぐるぐる巻きにする。 「残念ですが、我々は召喚することはできても戻すことはできませんわ。ご自分で見つけて下さい。ああ、それから・・・・・・このままだとばらばら町へ行くよりもきんぴら漁村へ行くほうがいいかもしれません」 さりげない言い方でミアが言う。 「ちょっと待て。知らないってどういうことだそりゃっ!」 「さあ。私に言われても困りますわ。知らない物は知らないのですから。まあ、それは置いときまして」 「置いとくな、おい」 「ばらばら町に行くためにはここからUターンしなければなりませんからきんぴら漁村に向かう方がはるかに有効的だと思うのですけれども」 きんぴら漁村―――ばらばら町と同じようにこれもまたふざけた名前だ。 「だから置いとくなっつーの。それから、この世界の全体的な地理感がまったくないから良く分からんのだが」 「地図ならこれです。見てください。多分今はここら辺にいると思われます」 ミアがいいながら指した部分は、地図の右端の、禁断の森と描かれている所だった。全体的に細長く、どこかのっぺりとした印象を持たせている。 地図を眺めて、聖はとあることに気付いてしまった。 「ちょっとまてや。ばらばら町に行くにあたって森に入る必要なんてまったくねーんじゃねーか?」 「ええ。その通りです。ですから私はこのままならきんぴら漁村に行った方が良いのでは、と」 きんぴら漁村は、確かに禁断の森の隣であった。だが、と聖は思う。 「このまま・・・・・・あ・・・愛城?とか言うのに行った方がいいんじゃねーか?当然城下町ぐらいはあんだろ?なんだってまた変な名前なんだ・・・・・・」 「ええ。それは勿論。ではそちらに向かいますか。」 「本当にてめーら俺の帰し方わかんねーのかよ。城って言うくらいなんだ。それなりの情報もありそうだしな。」 もはやあきらめの入った声で聖は言った。 「ええ。それはもう。決まったところでさっさと行きましょう。こんな所に長居は無用です」 言うが早いか、ミアはさっさと森を通過すべく歩き出す。なんと言うか、何か別の意味ですばらしき行動力。 「おい、永遠!行くぞ!」 一応、聖も人間らしい所があったので、振り向き、存在を忘れかけていた永遠を呼ぶ。そして見たものは、シアと一緒になって歌いながら踊っている姿であった。ぐるぐる巻きにされていたはずなのに。 この人だけは〜大丈夫だなんて〜絶対〜信じたら〜ダメダメ、ダメ、ダメダメよ〜 脱力しながらもどっかで聞いたことがある歌だと耳をそばだててしまう自分が悲しい。 SOS!SOS!ほらほらよーんでいるーわ〜今日もまた誰か〜乙女のピンチ〜 乙女じゃなくて俺のピンチだ・・・・・・とか思いつつ。 「・・・・・・ピンクレディ?」 と思わず呟く聖であった。 つづく。 |
19178 | 人生をもてあそべ。(3) | 春祭あられ | 2001/12/24 23:03:42 |
記事番号19175へのコメント 森を抜けた彼らの眼に最初に見えたのは、巨大にそびえ立つ立派な城であった。 ずいぶんと古風なつくりで、何故か歴史の資料を見ているようだ。 「あれが・・・・・・愛城・・・ですか?」 聖がふうっとため息をつきながら言った。どういうわけか、全体的に印象が丸くなっている。声も高くなっているし・・・・・・そう、はっきり言ってしまえば女っぽい。胸のふくらみがあるようなないような。 「その通りです。しかし、貴女の方向感覚が良くて助かりました。あのままでは一生森の中をさまよっているところでしたわ。私も方向音痴なもので」 ミアがしみじみと言う。それに対して聖がにっこりと微笑んだ。 「いいえ、それほどでも。私は・・・ひじりよりただちょっとだけ感覚が良いだけなんです。誉められるようなことなんて何にもしてませんから」 微笑むというより照れ笑いかもしれない。少しばかり頬が赤かった。 問題はそこではない。聖は自分でひじりといった。これは文章的におかしい。自分が自分より良いなんていう文章はありえない。答えは一つ。・聖は今・聖ではないのだ。 「それにひじりの方がいいところいっぱいあるんですよ。力持ちだし、体力あるし、なんだかんだいってけっこうやさしいし。根が良いんです、あいつは」 「セイさんでしたーね。我輩あんたの方がすきよー!とーってもやさしいのねー!」 着ているボーダーシャツのフードの中からハニワが言った。どうやらそこに入れさせてもらっているらしい。 ―――実は、今の聖は女であった。しかも、ひじり聖ではなくてせい聖である。何故なのかは分からないが、彼、いや彼女にはそういう人にはいえないような変な障害(?)を持っていた。二重人格いわく二重人性。ありえそうにない話だが、“ひじり”の場合は性別的にも男である。性格的にも。だが“セイ”の場合は、性別的にも性格的にも完璧に女になってしまうのである。これが世の人にばれれば絶対に人体実験の対象にされてしまうため秘密にしてあるのだが・・・・・・どうやら森を抜ける間に、何かの拍子に人格が入れ替わってしまったようだ。 「セイーセイー、ふっかふかのベッドに行ったら一緒に寝よーねー」 後ろから飛びつくように抱き付いてきたのは当然のごとく永遠だった。一瞬バランスを崩して前のめりになった聖だが、苦笑しながらもなんとか抱きつかれたまま体制を整える。 「うん。寝よう。町に行ったらきっとゆっくり眠れるよ」 優しく頭を撫でてやりながら言う。うみゅ。数時間前の聖ではありえない行為。ずっとこの人格であれば良いのに。 「ミアぁー、そしたら私たちも一緒に寝よぉー」 「姉さんと?冗談はよして。そんなことするのは死んでもお断りよ」 妹に冷たくあしらわれ、シアがくねりっと身体をくねらせながら悲しみを表現する。 そんなふうに何も身体をくねらせなくても良いだろうとか心の中で思いつつ、 「ほら、皆さん行きましょう?ここで止まっててもしょうがないし」 聖は永遠と手をつなぎながら城下町目指して歩き出した。 「ふふふ。セイ」 宿が見つかって泊まることができ、皆が寝静まった真夜中。 誰かに呼ばれたような気がして、ふっと聖は目を覚ました。 そして見たものは・・・・・・ 「・・・・・・何やってるんですか、永遠さん?」 自分に馬乗りしている永遠だった。なんだか、昼間のようなボケボケした顔をしていない。 どこか狼を思わせる顔つきをしていた。 「何って?見て分からない?組み敷いてるの」 さも当然なことのように言ってにっこりと笑ってきた。そして残念そうに呟く。 「なんで起きちゃったの?寝てる顔も可愛かったのに」 「何を言って・・・・・・?」 「だから、お仕置きしちゃおっかな」 ゆっくりと、ゆっくりと、その顔が近づいてくる。 今になって聖はやっと自分の危機を感じた。遅すぎ。 永遠によって身体を全て押さえ込まれながら馬乗りされているため、思うように動くことができない。つまり、逃げることが不可能。 どうこうしようとしているうちに、その顔の距離がだいぶ縮まってしまった。 もうだめだ。 そう思った瞬間 バコッ なんだかとても痛そうな音がして永遠がぶっ倒れた。不意に力が抜けて、身体が自由になる。 その瞬間は見逃さず、聖は大急ぎでその場を離れることに勤めた。 振り返って永遠を見てみる。 変わらずベットに倒れており、頭に大きなたんこぶができているのが見えた。 「永遠がぺ天使だというのをすっかり忘れていましたわ」 部屋の扉のあたりから声が聞こえた。 「ミアさん!」 まさに救世主。彼女は気付いてから慌ててきたのか、寝巻き姿だった。 「言い忘れていましたけど、永遠は女ではありませんの。立派な・男です。ずいぶん可愛らしい外見とは裏腹にね」 ちょうどそのとき、永遠がもぞもぞと動き出した。 「この裏表のありすぎる性格から堕天しても良いはずだったんですけど、あまりにも聖気が強すぎるために堕天できなかった・・・・・・だからこの世界で、しかもあんなお花畑でふらふらやっていたんです。決して彼に油断してはいけません。襲われますよ」 「ありがとう、ミアさん」 ひじりからは想像出来ない、これこそ本当の“天使の笑み”でせい聖は礼を言った。と・・・・・・ ドサッ 「セイさん!?」 せい聖が倒れた。緊張やらなんやらで疲れてしまったのだろう。慌ててミアが、抱き起こす。 「・・・・・・寝てるわ」 そう言って安堵のため息をつくと、聖を抱きかかえてベッドに寝かす。 「んふふ〜、セイの寝顔ってホント可愛い」 改めて聖を覗きこむ永遠。その背後に潜む影――ミアは、ガムテープを持ち忍び寄る。さすがにペ天使だけあって、隙はない。 「・・・・・・うん・・・」 聖が寝返りをうつ。そのとき、わずかに隙ができた。すかさずミアが永遠をぐるぐる巻きにした。そして、廊下にポイッと出した。 「貴方はここでお休みになって下さい」 と、一言いいドアをバタンと閉めた。 次の日 『教主様は、今忙しいそうだ。アポはとっといたから、5時間後位だね。それまで、城で休んでいてって、おっしゃっていたよ』 門番の言った通り、城内で待つ一行。が、おとなしく待っているはずがない。聖の助言で情報収集を開始した。 そして、3時間後――― 「それでは何か分かった事はありますか?」 用意された客室で、ミアが先陣を切った。 「いんや、何にもわかんねー」 何時の間にもとの人格に戻ったのか、ひじり聖が答えた。 「あのねー、私、分かったよー!」 と、手を上げたのはシア。ミアは一瞬と惑った。 姉さんがこんな真面目な話に参加するなんて!!・・・・・・少し見直したわ。 どうやら単なる馬鹿昇魔だと思っていたらしい。 「姉さん、何がわかったの?」 「あのねー、今、この城の中に」 「・・・・・・中に?」 「食料一週間分しかないんだって―。」 「・・・・・・。」 やっぱり姉さんは姉さんだったわ・・・・・・。少しでも見直してしまった私は、私は・・・・・・ 「堕天使失格よーっ!!」 突然大声を上げたミアに、シアは驚く。 「ミ、ミア、私何かひどいこと言った?」 いやあ、まあ、十二分に。今までの行動も入れたら。 「・・・・・・っつーか、堕天使に失格も何もないよーな気がするが?もともと“堕”だし」 聖の言葉にはっとする。 「それもそうですね。取り乱してすみませんでしたわ」 そして、もう一度仕切りなおし。 「他に何かありませんか?」 辺りは静かだ。永遠さえも黙っている。どうやら、全員収穫はなかったらしい。 「・・・・・・そういや、“愛教”ってなんだ?」 「ああ、聖さんは知らないんですよね。これから教主様にもお会いするわけですし」 ―――愛教とは、「形あるものいつか壊れる」を主軸にしている宗教である。世界宗教でもあるこの宗教は、民に溺愛され、教主が何を言おうとも、皆涙を流すほどのものである――― 「・・・・・・というものです」 「ほーん」 曖昧に返事をしながらも、どんな宗教だ?!と突っ込む聖。 と、そこへ。 トントン 「皆さん、教主様がお会いになるそうです」 一行に緊張が走る。―――ただし、永遠を除いて。 ◇◆◇◆◇◆◇ 一行が案内されたのは紅い絨毯が敷き詰められた何やらとても凄そうな感じのした部屋であった。 中央を走る一直線の道を除き、全ての場所に人が座っている。彼らにはある共通点があった。 それは皆楽器を持っていること。 その楽器も、何故か皆土器できていた。しっかりと音の調節をしている者もいたようであるからちゃんと音もでるらしい。 数分後、全ての音が静まり、沈黙というものが辺りの全てを支配した。 それが、ある一声によって見事にうちくだされた。 「アトロネア=ボルトア三世様の御成ーり!!」 パーパカパンパパパパーッ 「うひゃうっ!!」 部屋中の楽器が一斉に力いっぱい音を鳴らし始め、耳をふさがなければ気を失いそうな感覚に襲われそうになる。だが目だけはしっかりと開けていたら、部屋の奥からカラカラと音をたててワゴンらしきものが出てくる。ワゴンの上には、何か物が置いてあるらしいが、上等そうな布がかけられていて何があるのかが分からない。 否、聖にはもう分かっていた。その布の下にあるものが何なのかが。あの形といい、大きさといい・・・・・・さらに音のなる前の誰かさんの科白。 “アトロネア=ボルトア三世様の御成ーり!!” その名前は間違いなく、そう・・・・・・ 「皆の衆!教主様だよーん!!」 声と共にばっと振り払われる布。その下からはやはり危惧していた物が。 「くっそハニワぁぁぁぁぁ!!!」 周りの土器楽器の音に負けじと聖が叫ぶ。 やっぱり布の下にあったのは何時の間にかいなくなっていた、あのハニワの源さんであった。 ハローンと手を振っているのを見て皆の態度は 「わーい、源さんだー!」これはシア。 「あれが教主なんて代物だったかしら・・・・・・」と、けなすようなとんでもないことを言っているのはミア。 「ハニワが教主やってるような宗教がどこにあるってんだ、すっとこどっこい!!(ここにある)」威勢が良いのは聖。 「上野発の夜行列車降りたときからぁ〜青森ぃ〜駅は雪の中ぁ〜」知ってるはずがないような歌を歌っているのはもちろん永遠。いったいどうやって知ったんだ? 「うひゃひゃひゃひゃひゃ。元気なのはとことん良い事で。で、何しにここに来たのねぇー?」 なんだかとても失礼な振る舞いしかしていない一行にハニワは寛容な態度で話し掛けてきた。うん、えらいぞハニワ。いや、単なる慣れたのかもしれない。 「もちろん俺の元の世界に戻るための方法を探しに、だ!つい昨日まで一緒にいたんだからそんくらい知ってんだろーが。バーカ」 至極もっともなことだとか言ってそうな顔で言う。しかし、いくらなんでも教主に向かって“バーカ”は礼儀的にないだろう。そこら辺が聖らしいといえば聖らしい。 「そのことだったら知らないと何度も言ってるのんねん。諦めが肝心あるよ」 「あきらめられねーからこうやってんだろーが。俺をおちょくんのもいい加減にしやがれよ」 だんだんとどすの聞いた声に変わっていく聖を横目に、ハニワはくすり・・・と何と吐息のような音を立てて笑った。 ぴくりっ 聖の顔に血管が浮かぶ。次の瞬間、彼の思考回路は完璧に機能しなくなった。 「こんのくそハニワぁぁぁ!!覚悟しやがれっ!今こそそのふざけた面を叩き割ってやるぅぅぅっ!!!」 「典型的な馬鹿ですね」 静かにミアは呟いた。 ここは鉄格子の張られた部屋だった。平たく言えば、牢屋。 いきなり暴れだした聖のために皆が閉じ込められてしまったのだ。ただ、皆と言っても三人しかいない。 永遠は何故か別室に案内されていってしまった。だからこの場所にいるのは、ミア、シア、聖。 「呆れるほどの馬鹿ですね」 もう一度、ミアは呟いた。 珍しく、聖は何も言わない。ただうつむいているだけで、最後には哀愁が漂っている。 「・・・・・・もしかして、セイさんですか?」 ふと気が付いて、恐る恐る聞いてみると、こくんと首を縦に振った。 「あ・・・・・・すみません。決して貴女の事を馬鹿と言ったわけではなくて・・・・・・」 「いいえ。私はひじりで、ひじりは私です。あれは私の行動なのです」 「え、あ、いや、あの、体は同じでも人格は違うわけですし」 「同じです。脳みそはひとつです。だから二人の記憶は共通してます。あれは私がやったんです」 「・・・・・・。」 「軽はずみだったんです!あの時私と交代したばっかだったから精神的にも不安定で、とっても切れやすかったんです!あの時、あの時、どんなに頼まれても私のままであっていれば・・・・・・!!」 何時の間にか、涙がぼろぼろと出てきている。涙腺が弱くなっているのか、どうやっても涙が止まらないらしい。何度ごしごしと拭いても後から後からと溢れ出し、結局は無意味な行為として終わる。 こぼれた涙は床を濡らし、丸いシミをいくつも作った。 「あの時・・・あの時・・・」 「そのあの時って、何があったの?貴女は何に泣いているの?さっきの事?それともその“あの時”の事?」 ふと、柔らかい雰囲気が聖の周りを包む。その雰囲気の持ち主は、何とシアだった。 (姉さん・・・・・・?) 今までこんな姉をミアは見たことがなかった。いつもボケボケの馬鹿馬鹿で。まるで、これが幻想なのではないかという感覚にとらわれてしまう。しかし、現実に聖を抱きしめているのはシア。 「両方かもしれません。私にはよくわからない・・・・・・」 「なら、“あの時”のことも話してみなさいな。ね?案外すっきりするかもよ?」 ゆっくりと頭をなでてやると、聖はその暖かさに安心したように話をし始めた。 ―――それは、情報収集してる時のことでした。普通に通りを歩いていたら、急に腕をつかまれて細い路地に引っ張られてしまったのです。腕をつかんでいた人も含めて、そこには何人もの男の人がいました。 「はっ、嬢ちゃん、珍しい格好してんじゃねーか」 だから私は答えてやったのです。 「私も変だと思います」 「だったら何で着てるんですか?」 突っ込み役のいない今、仕方なくミアが突っ込む。 「他のものすべて洗濯してしまって・・・・・・これしかなかったんです」 ―――そして彼らは一瞬何故か動きをとめた後、引きつるように笑いながらこういいました。 「ま、まあいいや。嬢ちゃん、おぢさんたちと遊ばないかい。結構良いつらしてやがんぞおめーは、こんちくしょー」 なんだか怒られてんだか誘われてんだかよく分からない言い方で言われてしまいまして。あの時はちょっとどう対応すればいいんだか本当に困ってしまいました。 それでですね、そうやって悩んでたら急に腕をまたつかまれてしまって・・・・・・それがすっごく汚い手で、汗ばんでて、すっごくすっごく不快感を伴ってたんですよ。だから私、あまりの不快感に我を忘れてしまって、つい 「なあにしやがんじゃボケェーっ!ナスー!年頃の女に手ぇ出してただで済むと思ってやがんのかぁ?!ええっ?!死んでわびんかぁ?!こらぁっ!!」 昔武術やってたものですからその成果を思いっきり出してしまったんですね。本当に、いろんなことしてしまったんですよ。最終的には倒れている人以外いなくなってしまいましてね、あれ、残りの無事だった人が仲間を呼びに言ったみたいなんですよ、それで、やばいなぁって。 そうしたらひじりが頭の中で呼びかけてくれたんです。 (このどあほっ!なんてことしてやがんだ!おまえはめったに切れねぇくせして、些細なことで切れると本気で手、つけられなくなんだからよぉ!ほら、俺と変われ!残りの仲間はおまえの力じゃ無理だ。俺がパパパッと片付けてやっから。その代わり俺が切れたらおまえ代わるんだぞ、いいな!) 本当に、本当に、聖はやさしいです。いつも気を使ってくれます。 そういうわけで、私とひじりは交代しました。――― 「なるほど。聞いてて分かったことがひとつあります」 「はい、何でしょう」 「貴女の方が実はひじりさんより手がつけられないということです」 ミアがうんざりという様子で言った。 「これからは多分永遠を野放しにしても大丈夫そうですね。貴女がそんなのであるのなら」 「でも、永遠さんの・・・・・・止めてくれるとありがたいんです」 「・・・・・・何故?」 「私、いつ切れるか分からないし・・・・・・」 苦笑しながらも聖は言った。そこにはもう涙の跡はない。 「でもっでもっ!止めない方が面白いかも!!」 と、シア。 「いつもの姉さんに戻ってる・・・・・・?」 さっきのは一体なんだったのだろう。ミアが恐る恐る聞いたら、いつもの調子、いつもの口調でしゃべりだした。 「あれはねっ!この前やってたドラマのまね〜!なかなか上手かったでしょ〜!」 にっこりと笑うシア。その笑みが見あにはなんだか“してやったり”という風に見えて、怒りやらいろんなものがこみ上げてきて、思いっきり怒鳴ろうと思って、深く深〜く息を吸い込む。いざ!・・・・・・という時 ガチャ 牢の鍵が開く音がした。 「出ろ」 ただただ兵士にそう言われ、三人はとりあえず言われた通りに出る。 「ついてこい」 まあ、ここに居ても仕方ない、と三人は思い、黙ってついていった。 連れて行かれたのは、先ほどの謁見の間。そして教主・・・・・・いや、ハニワがいた。 「そちたちの先ほどの行動、とても許されるものにあらず。だが、ワタシは寛大ゆえ、そちたちを許すことにした。感謝するのだぞ」 教主は実に偉そうに話す。 「さらにもう一つ。そちたちが牢で反省している間に、この城及び城下町にある資料館を調べさせたところ、戻る方法を記したとされる文献が見つかった」 「で、それはもらえるのですか?」 聖は問う。 「うむ。だが一つ問題がある」 今までで一番真剣な声でハニワは言う。 「その文献とは先代の教主、つまり我輩の父上の日記なのだが・・・・・・」 「日記・・・ですか」 と、これはミア。 「そうだ。で・・・・・・これは実際に見てもらった方が早い」 と、ハニワが身体を揺らして音を立てると、古ぼけた本が一冊、三人の前へ置かれた。 その本を開くと・・・・・・ 「・・・・・・・・・」 三人は絶句した。・・・・・・よ、読めない!! 「見ての通り、父上は・・・・ちょっと字が汚い」 「ちょっとどころじゃねえだろ!!」 ひじりだ。ちょっと前までセイだったところを見ると、入れ替わって間もないようだ。正確に言えば、あの日記を見た瞬間だ。 「それに、どーゆー理由で資料館に“日記”があるんだ?!っつーか、偉そうにしてんじゃねーぞ、ハニワの分際で!」 「そこで、そこの黒髪の少年よ」 「無視すんじゃねーよ!」 「実はこの城の最上階に・・・いや、地下だったっけな」 「おい」 「地下に、この文字を読める人物がいる。その者をど〜んと連れてくるがよい。よ〜い!」 あくまでもしらを切るつもりなのか、ひたすらマイペースなのか良く分からないが、勝手に話を進める。 しばらくの睨み合い。 そのうち、聖からどんどん気力が失せてきて、うなだれていく。そして 「分かったよ。連れてくりゃ良いんだろ、連れてくりゃ」 あきらめたような声で呟いた。 「ふふん、そこの扉から道なりに行けばよいのね。が〜んば〜るのね〜」 明らかに勝ち誇ったように、満足げにハニワが言った。 「あと・・・試練も兼ねているのですから、お一人でおゆきなサーイ。二人ともついてっちゃだ〜めだめ」 「はぁ?!どういう意味だ、それ!」 「ほぉら、さっさと行くのデス。行くのデース!!」 ガタゴトガタゴトッ ハニワがものすごい勢いで身体を揺らし、音を立て始める。まるで駄々をこねる子供のように。 すると、周りの付き人が聖に険呑な光を乗せた目をよこしていた。 その瞳が語る。 さっさと教主様の言う通りにしないか。 また牢屋に入りたいか? 教主様にはむかうなど笑止千万。これ以上暴れようものなら・・・・・・ ひたすら怖ひ。 「え、え〜と、も、勿論喜んで行かせてもらいまーすっと」 あとは扉の向こうへ駆け出していった。 その背中を、ミアとシアがため息混じりに見送る。 「・・・・・・アトロネア様もお人が悪いこと。わざわざあれのお迎えに行かせるなんて」 ミアが、同情のこもった声で呟いた。 「私はあの子がどれくらい成長したか・・・・・・それが見たいのだよ」 ハニワが答える。確かにこれはハニワの答え。声は同じだが口調がまったく違う。あのふざけたハニワは?今のハニワは、まさに教主にふさわしい落ち着きぶり。 「ひじり・・・・・・か。ああ、セイとも言ったか。あの子が元の世界に無事帰れたら、故郷へ久しぶりに帰ってみようかな」 「急に源さんどうしたのぅ?」 「なに、シア。人間誰だって、生まれ育った場所に帰りたいと思うときがあるだろう?」 「ないない。魔界へ帰りたいなんて思ったときないもん。それに、シア人間じゃないよー。源さんも人間じゃないじゃーん」 キャハハと楽しげにシアが笑う。そう、シアは悪魔。それが少しだけ人間に近いため、人間でも悪魔でもない昇魔なのだ。多分、魔界ではいじめられた思い出しかないのだろう。悪魔ではない、はじき出された子として。 「そうだったな・・・・・・さて、あの子が帰ってくるまで、お茶会でも開いて待っていようか」 表情が表せないはずのハニワが、一瞬笑ったように皆の目に映った。 つづく。 |
19179 | 人生をもてあそべ。(4) | 春祭あられ | 2001/12/24 23:05:44 |
記事番号19175へのコメント 聖の目の前には、ひたすらでかくて、なおかつひたすら重たそうな扉がずーんとかまえていた。 「うそだろ?これを開けろってか?」 まず無理である。 よほど帰ろうか、そう思った時。 ズズズズズッ その扉が音を立てて・・・開いて・・・・しまった。 いっそ開かなければ良かったのに・・・・・・そう思っていたところだったのに。 (誰が開けたんだ?余計なお世話な) と思いつつ扉の先を見やる。そこには二人の男がいた。 一人は青年。腰まで伸ばされた漆黒の髪は、肩の辺りで緩やかにとめられていた。その姿のせいであろうか、とても落ち着いた物腰が容易に想像できた。 もう一人は中年の男。たぶん扉を開けたのはこの男であろう。あきらかに筋肉質に見えるその身体。髪とひげはぼさぼさに伸ばされ、暑苦しそうにタオル時のバンダナで頭を覆っている。その覆い方がいかにも申し訳なさそうだ。 おまけに目つきが悪い。 この二人に共通点があるとすれば、それはたぶん身長であろう。 ちょうど同じくらいに頭の先がある。 「お待ちしておりました、聖どの」 青年が頭を下げた。 その優雅な仕草に、同じ男であるのにもかかわらず思わずどきりとしてしまう。 「私は愛教の左尊を勤めておりますトルネスと申します。以後お見知りおきを」 握手を交わしながら聖も慌てて頭を下げた。 「りゅ、壟魔聖です。こちらこそ」 「こちらは弟で、右尊を勤めておりますカルネス」 「カルネスだ。よろしくな」 そのごつい手を差し出されて・・・・・・ 「おっ、おっ、おっ、おとうとぉ?!」 「はい。このジュレースでは珍しい“双子”の兄弟でございます。」 聖は我が耳を疑った。い・・・今、双子って言ったよな・・・・・・。 「ふたご?!」 聖は聞き返す。 「左様でございます。それが何か?」 「ちなみに聞くが、二卵性双生児か?」 「いいえ、一卵性双生児です。・・・・・・しかし、二卵性と聞かれたのは初めてです。会う人は皆 “そっくりだ”とおっしゃりますから」 「あっそう・・・・・・・・・」 ここの人間はいったいどういう感覚をしてるんだ? なんだかもう疲れてしまった。 (おい、セイ。お前、俺と変われ。こーゆー役は、お前に任せた) 「聖どの?」 トルネスが話しかける。 「・・・・・・あっ、ええと、トルネスさんにカルネスさん。私は何をすれば良いのでしょう」 口調が代わったのに、二人とも気にも留めない。どうやら、知っているようだ。 すると、カルネスは紙切れをふところから出した。 「おぅ、アトロネア大先生からの言葉を伝えるぜ!“ひじり君、セイ君。これから様々な困難が待ち受けている。頑張ってくれたまえっ!”・・・だそうだ」 「無論、我々も同行させてもらいます」 ・・・・・・という事で、3人は行動を共にする事になった。 「このっ・・・城の地下は、一体・・・どうなってやがる・・・・・・」 息を切らした聖が呟く。 実は、ひたすら大きい扉から50メートルも進んでいない。それに、また入れ替わっている。 出来事はほんの5分前――― 「それでは、参りましょう」 言われるままに歩き出すセイ。―――と カチッ わずかに聞こえるスイッチ音。とりあえず後ろに振り向けば、何食わぬ顔で壁についてあったスイッチを押しているトルネスの姿。 とりあえず、この廊下には燭台と称す物に火は灯っていて、十分明るい。となればまず明かりのスイッチではあるまい。他にスイッチを押すものといえば・・・・・・ ゴゴゴゴゴッ 「・・・・・・ええっと、これはもしかして、もしかするのですか?」 遠くから地響きと一緒に滝の流れるような音が。 「では、がんばってください」 「幸運を祈るぜ」 双子の二人は壁にすすすと身を寄せると、くるりんっと壁を回して消えてしまった。 そう、よく忍者屋敷とかで見かけるからくりの一つ。“ ” 「ってことはやっぱりあれですか?あのあの・・・・・・」 「試練ってやっぱこういうトラップ罠ってことかよ!!」 瞬時にして、セイとひじりが入れ替わる。こういう罠に対する行動はやはり女より男か。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ 音は次第に大きくなっているし、地響きもひどくなってきている。そして、もう一つ感じるようになったもの。―――湿気 つまり、この罠の名前はというと、簡単に言えば 「水攻めをどうやってしのげっつーんだよ。」 ということであるのだが。さてどうしよう。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ 音はどんどん増すばかり。揺れもどんどん増すばかり。飲み込まれるまで後数秒というところか。 「畜生、どうやって・・・・・生き残ろう」 ―――生き残ろう。もはやこれは生死をかけた罠なのだ。水攻めにあおうもんなら間違いなく自分は死ぬ。激流に飲み込まれ、呼吸もままならないまま壁やら床やらにどんどんぶつかってぼろぼろになって最終的に絶対死ぬ。何がなんでもどうにかしなければ・・・・・・ と、いろいろ頭の中で考えていたとき。 腕に何かあたった。 「なんだ?つめて・・・・・・って水ぅぅぅぅ!!!!!!!」 なんだかんだで、もう50メートル先辺りに押し寄せてくる水の姿。 先ほどの二人が消えた辺りの壁を何度も押してはみるが、ぴくりとも動かない。 「一度開いたら二度と開かないようになってやがるのか。くっ、どうすれば・・・・・・!!」 もう水はすぐそこ。 もうだめなのか?! そうやってあきらめの境地で仰いだ天井に、聖は・・ある・・ものを見つける。 (あれで何とかなるかもしれない!) もういろいろと考えている暇はなかった。文句も言わず、ジャンプしてとりあえずそれにつかまる。 天井に吊り下げられた・・二本・の・・・つり革に! 何だってこんなところにそんなものがあるのかはよく分からないが、その二本のつり革の間隔はちょうど肩幅より少し長いくらい。すがる思いでそれにつかまると、ぱかりとその中央の天井が開いた。 そこは、ちょうど身体が一つ入るくらいの、床のない部屋のようだ。 このまま、身体をぶら下げたままだと、激流に腕の力がもたず、結局のところ流されてしまうだろう。 だとすれば、この中に身体を差し込むほかない。 「おんどりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」 命がかかっているのだ。体中の力を腕に注いで、聖は何とか水のくる前に身体を逆上がりするかのように垂直に持ち上げた。 すっぽりと身体が納まると、今度は両足を小部屋の壁につけて体を支える。 と同時に大量の水がすばらしい勢いで通り過ぎていく。 (か・・・・・・間一髪) 足と共に支えている腕は激流にもまれ、なかなか痛いけれども、何とか命だけは助かったことに聖は素直に安堵した。 「まったくをもって、俺を殺す気か?ここの連中は」 「このくらいで死なれては困りますから」 この小部屋の天井辺りがぱかっと開いて、トルネスが顔を出した。 「あってめぇ!」 「ほら、ちょっと待ってろ」 カルネスが次に顔を出し、聖の両足をつかむ。 「ほらよっと」 かけ声と共にあっさり聖を持ち上げてしまった。 持ち上げられた聖は二人がいる部屋の床に下ろされる。見ると、二人のいる中央には四角い穴が開いている。聖も一緒になってその穴を覗き込むと、そこはさっき自分がいたところにつながっていた。 つまりはそこから引っ張り出されたのだと。 なんとなくむっ・・・とする。 「まずは第一の試練を突破ってな」 カルネスがその暑苦しい顔を思い切りくしゃくしゃにして笑う。それはもっと暑苦しい顔だ。 「てめえらがあのスイッチ押したかこうなったんだろ!何だって真っ先に逃げてんだよ!」 「壁の道なら他にもありました。それを探さなかったあなたが悪いんです」 しれっとした顔でトルネス。いや、普通分からんて。 「なってめっそれを言ってから消えろよな!」 「言ったら試練にならないじゃないですか」 二人はしみじみと頷く。 今度またこんな事が起きたら、壁ぶっ壊してでも助かってやる、と心に決めた聖だった。 「あの後、壁から弓矢が吹っ飛んでくるわ、落とし穴に落ちかけるわ・・・・・etc。もう、何がなんだか・・・」 ぜーはー言っている聖をよそにカルネスは元気よく言った。 「おっ、最終関門が見えてきたぞー」 「!!!!」 聖は警戒態勢を取る。 ヒュルルルルルルル 「上かっ!」 聖は華麗に身をひるがえし、着地予想地点から遠ざかる。 ドガァ――――――ン 「な・なんだぁ?!」 落ちてきた物は、よくクイズ番組に出て来そうな台。しかも、早押しボタン付き。 「・・・・・・という事で、最後は頭脳戦です」 「オラ、座った座った」 半強制的に座らされ、シルクハットをかぶせられた。どうやらボタンを押すとシルクハットのてっぺんが開く仕組みになっているらしい。 「それでは、第一問」 チャッチャラ☆ どこからか、効果音が流れてきた。 「赤ちゃんが生まれてから七日目の夜のことをなんと言う?」 ピコン! 「お七夜です!」 ピンポンピンポンッ! 「正解です。ああ、あなたセイさんですね。頭脳線はセイさんの方が有利というわけですか」 「はい。考えているのは同じなのに、テストとかは何故か私の方が良くて・・・・・・」 「では、この調子でどうぞがんばって。では第二問。人間の身体の中で一番硬い部分はどこですか?」 ・・・・・・。 何処でしょう。 「考えられる時間は十五秒。あと十秒ですね」 ずいぶんと冷ややかに言われた。 こんなことにむっとしていても仕方がない。時間は止まることなく過ぎていく。 五秒、四、三、二 「ああ〜こうなったらもうやけです。答えは“歯”!」 ・・・・・・ピンポンピンポンッ! 「ええっと、今の間は一体」 「どうぞ気にせず。とりあえず正解。続いて第三問。栄養学で使われるカロリーは、物理・化学のカロリーの何倍?」 ・・・・・・?????? わ・わからない。 「ま、またわけのわからないものを・・・・・・とりあえず勘で千倍!」 ピンポンピンポン 「すばらしい。正解です。では第四問」 「ちょっと待って下さい。これ、一体何問で終わるんですか?」 「我々の気のすむまで。ネタのつきるまで。間違えたらその場で即刻アウトとなります」 「・・・・・・」 「文句は言わずに、第四問。アニメ“ひみつのアッコちゃん”で、アッコちゃんが変身するときに使う小道具は?」 「なんだってそんなもの知ってるのですか」 「それが答えですか?」 「いえいえ。コンパクトです」 ピンポンピンポン 「よろしい・・・・・・ではこれで最後としましょう。最終問題。岡目八目とはもともと何の勝負から出たことわざ?」 「岡目八目・・・・・・確か囲碁の勝負だったはず」 ピンポンピンポンピンポンッ! 「全問正解です。良かったですね」 (おまえ、よくわかったな。あんなのどこで知ったんだ?) (この前の授業で先生がおっしゃっていましたよ。) 苦笑しながらセイが心の中で言う。端から見れば、ちょっと不思議な光景。 「さ、お行きなさい。あの方が待っていらっしゃる」 セイは立ち上がって、先へ進んでいく。・・・・・・だが、二人は着いてこなかった。 「トルネスさん、カルネスさん。もう着いて来ないのですか?」 セイは振り返って問う。頭の中では、ひじりが、なんて事を聞くんだっ!来ない方がいいに決まってんだろうがっ!と叫んでうるさい。 「おぅ、もう・・役目は終わったからな」 「そうですか」 セイは再び振り返り、歩み出す。 「では、ご武運を・・・・・・」 セイの前には、ドアがあった。どうやらこの向こうに、あの得体の知れない文字を読める人物がいるらしい。 キィィィィ・・・・・・・・・・・・ そこに居たのは 「セイ〜〜〜〜〜!」 「・・永遠・・さん!?」 そう、永遠だ。 永遠はセイの胸に飛び込む・・・が、何でか胸座を掴まれた。 「どういうことだ?俺らの努力の結晶がこれってか?」 「げっ、ひじりに戻ってるぅぅ!」 「戻っちゃわりーか!てめーと二人きりのときにセイでいると貞操がやべーだろーが!」 「あは。何のことぉ?」 ちっ、ばれてたか。 と内心舌打ちする永遠。するな。するな。 「とりあえず、だ。おまえがあの日記読めるただ一人の人物なんだろ?何が何でも読んでもらうぞ」 「やだぁ。だってぇーそれ永遠のメリットになること何もないじゃーん。無報酬でやるなんてかったるーいもーん」 ばふんっと部屋にあったベッドに寝転ぶ。一度枕に顔を押し当ててから聖の姿を見てにやりと笑った。 「聖だけメリットがあるなんて・・・・・・ちょっと不公平じゃない?」 「そ、そりゃそうだけど」 実は押しに弱い聖はそのもっともな意見にたじろいでしまう。 それをいいことに永遠は今度はまた聖に近づくと、相手の目を覗き込むように顔を近づけた。 「それともなに、何か僕のメリットになるようなことしてくれるの?例えば・・・・・・」 「セイちゃんとキスとか」 「・・・・・・はぁ?!んなもんやらせるかよ!要するに俺とだぞ?わかってんのかてめーふざけんな!!」 と、いうよりキャラ変わりまくりです永遠ちゃん。 「誰もひじりとやりたいなんて言ってないよ。セイちゃんとしたいんだ」 「だーかーらー、セイは俺で、俺はセイなの。おまえの場合ぜってーヤバイから俺の貞操にまでかかわっちゃうし絶対にだめ。それだけはだめ」 「・・・・・・ふーん。じゃあやらない。日記か何か知らないけど、協力なんかしてあげないから」 駄々をこねる子供のように、頬を膨らませて横を向く永遠。 「まじかよ〜、あー、もー、頼むよ。ここまでホント苦労してきたんだからよぉ。・・・・・・あっそうだ」 ふっふっふっふっふっ・・・ 無気味な笑いをし始める聖に思わずひく。そのひいた瞬間に人格が、また性別が変わった。 「永遠さん・・・・・・お願いします。私のために、日記を読んでもらえませんか」 「あっセイちゃん!」 そう、ずばり色仕掛け。相手が自分のことが好きなのならとことん利用してやろう。 (ひじり。ここは私に任せて。絶対出てきちゃったりしちゃだめだよ) (何するつもりだ?単なる色仕掛けだけでいいだろう?) (ふふん。はーい、もうおだまり) 「あの、永遠さんにとっては何のメリットもないかもしれないけれど・・・あなたの助けが必要なんです」 ああ、なんていたいけな。目じりに涙まで忍ばせちゃって。 しかし、なんとこれは永遠にとって逆効果だったようだ。今すぐ食べちゃいたい衝動に駆られてしまう。 「ねえ、セイ。なにもやってあげないなんて言っちゃいないよ。ただ報酬に君のこの柔らかい唇を頂戴って言ってるだけなんだ。何ならもう、前払いしてくれてもいいんだよ。ここにはベッドだってあることだし・・・・・・」 いつのまにか必要以上に近づけられていた顔、身体すべてが後ろに吹っ飛ぶ。 見ると、聖の右腕が何かを攻撃したように伸ばされていた。 「必要以上に近づいてしまった時でも、相手を飛ばしてしまうほどの威力を持つ技を永遠さんはご存知ですか?」 心なしか、聖の身体が震えているような気がする。 「嫌がる人に無理やり迫るなんて、人道的に外れていますよね。それが天使ならなおさら・・・・・・ねえ、永遠さん」 「え、あ、セイ?」 「幸いここには誰もいないことですし、こうなったら私が」 「私が・・・・・・?」 背中に悪寒などと言うものを感じ、知らずの内に相手の言葉を復唱する。 「私が必殺お仕置き人になってやらぁおんどりゃぁぁぁぁ!!」 「ひ、ひあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 つづく。 |
19180 | 人生をもてあそべ。(5) | 春祭あられ | 2001/12/24 23:08:13 |
記事番号19175へのコメント 「ただ今帰りました」 帰ってきた二人の格好は素晴らしかった。セイの格好はボロボロだったが、それにも増して永遠はすごかった。例えるならば、暴力団に散々蹴られ殴られ、そのまま無人島に2週間・・・・・・という感じだ。まぁ、その辺の想像はご自由に。 「じゃあ、早速読んでもらいましょう」 休憩は〜〜? という永遠の視線を無視して話を進めるミア。 「とりあえず、読んで下さい。永遠さん」 微笑むセイ。それは間違いなく“天使の笑み”。だけど、怖く見えるのは・・・なぜ? 「は〜い。え・・・と・・・・・・『あなたはもう忘れたかしら 赤いてぬぐいマフラーにして。2人で行った横丁の風呂屋。一緒に出ようって』」 「っちっがーーーーーう!!!!」 痺れを切らしたのかひじりが突っ込む。 「ちゃんと読みやがれちゃんとっ!・・・・・・さっきのような目に会いたくなかったらな」 ぴくり・・・と永遠の肩が振るえて反応する。よし、効果抜群。 「ええっとぉ・・・・・・『この後、異世界より召喚されしもの“シーズ”が現れることを予測し、これをここに記しておく。シーズを元の世界に戻す方法は一般的にないとされているが、実のところ一つだけ密かに伝えられている。目印として、愛城から北北西にある半島へ向かうがよろしい。半島の先端部分にはシーズにしか見ることのできない扉がある。その扉の向こうが、シーズの世界となっているはず・・・・・・』って書いてありますぅ。」 冷や汗をだらだらと異常なほど流しながら日記を読んでいく。ものすごい緊張感のなかで読んでいるらしい。きっとその緊張の元は、すぐ後ろにいる聖。というより、セイか。 「んじゃ、そこへ行けばいいんだな?」 「そう言う事になりますね」 ミアが答える。 「ね〜ぇ〜、まだなんか書いてあるよ〜」 本当は、もう読みたくはないんだけど、読まないと後でどうなるか分かんないし・・・・・・ 「ホントか?読めっ、永遠!」 めんどくさ〜い・・・とか思いつつも読む永遠。 「・・・・・・『また、その扉を開けるには、“ソングコング町”の村長が持つ“不思議な鍵”がないと開かない』って・・・・・・」 「よっしゃ、そこ行くぞ!今すぐ行くぞ!」 「お待ちなさいな」 脱兎のごとく駆け出そうとした聖に足払いをかける者が一人。勿論いきこんだ顔のまま聖は床と・・・カーペットと思い切りぶつかる事となった。 「・・・・・・っ」 痛みのあまりにもがく聖を見下ろしながら、その人物はいつものように淡々と話し出した。 「確か今ソングコングに村長はいないはずです。先月火事に合われたとかで、崩御されまして。遺品は何ひとつなかったとか。その不思議な鍵とやらも多分ないのではありませんか?」 「おお、その話は本当なのデスカー、ミア。しばらくここいなかったネー、そんなこと聞いてなかったヨー!!」 「て・・・てめ、人をこけさせておきながらよくもまあ淡々と」 ゆっくりと起き上がろうとすると、さらに頭を踏まれて床にぶつかる。 「な、何しやがる!」 頭が踏まれたままなので、相手の顔を見ることもかなわず。蜘蛛のようにもがくことしかできない。 「少し静かに聞いていてもらえませんか、聖さん。でなければセイさんにお変わりになってくださいな。そのほうが話が早く進む次第でして」 「んな風にいわれて“はいそうですか”ってやるかってん・・・・・・・・・すみません。ひじりは眠らせたんで、とりあえず痛いですからその足どかしてもらえませんか?」 足をどかしてもらうと、セイはむっくりと起き上がり、たった今まで怒っていた顔をころりと一変させてやさしく微笑んだ。 「あの、ひじりが失礼なことをしたようで。気にしないでもらえるとありがたいんですけれど」 「もちろん気にしていません。それで、話の続きなんですけれども・・・・・・しかも、村長は一人暮らしだと聞いているので、何一つ分からないと思うんですよ」 なんとも申し訳なさそうに話すミア。それを聞いていたセイは、腕組みをして考えている。 「とりあえず、そこにいってみましょう!ここにいてもしょうがないですし・・・・・・」 セイに後押しされ、一行は“ソングコング町”に旅立った。 「ようこそおいでくださいました!あなた様は我がソングコングを訪れた者の、今年で一万人目にあたる方になりました!というわけで、勿論この町に泊まっていきますよね?泊まっていかれるはずです、だってもうこんなに日が暮れてしまって一番星がほらっあそこに!そうだと思いまして、今夜の宿泊代、どこの宿屋へいこうともタダに・・・・・・無料にさして頂きます!どうです?嬉しいでしょう?いやあそう言ってくれると嬉しいですなぁー。どうぞごゆっくりしていって下さいね。おや、そちらの方は・・・・・・まさか教主様?!いやはやこのようなところでお目にかかれるとは、私はなんと幸せものか。そうだ、今日はそこの町一番のホテルに泊まってってくださいよ。勿論スイートを用意させてもらいますね。なに、食事も用意させてもらいますよ、ええ、喜んで。嗚呼、憧れの教主様にこんなにも近くでお会いできるなんて・・・・・・ああ、はい、握手。さっそくこの右手を家族に自慢してやりましょう。実は私、こう見えても妻子持ちでしてね。年は、私が三十で・・・・・・ははは、年の割に童顔なかおをしているでしょう?妻は21なんですよ。なかなかの美人でしてね。ああ!犯罪だなんて思わないで下さいよ!確かに九歳離れてますけど、犯罪なんて十歳からでしょう?私は9歳です。一年も違うじゃないですか。」 町につくなり外見上好青年が沢山の人を引き連れてやってきた。その手には旗。描かれているのは“ようこそソングコングヘ!”。 「・・・・・・なぁ。これ、どっかで見たことある光景だとおもわねえか?」 うんざりしながらひじり聖は問うた。だが、何の応えも無いままに、青年はまたしゃべりだす。 「あっ、申し遅れましたが私は町長代理を務めています、ジーニと言います。妻は、フィン。可愛い名前でしょう?私が彼女を好きになった要素の一つなんです。もちろん彼女の全てを愛していますがね。他には、あの優しい笑み・・・・・・先日、フィンが高価な壷をほぼ全部割ってしまいまして。“ごめんなさい、壊してしまって・・・許してもらえませんよね”って、悲しそうでそれはもう儚い笑みで言われちゃったりした暁には・・・もう、許さずにはいられないんですよ!・・・・・・っと、すみません。よけいな話しでした。で、こっちが息子のジョセフです。教主様、どうかこの子に愛教の神・ひなわ緋那羽の祝福を・・・」 「分かったので〜すネェ〜」 と、突然ハニワはじゃ〜んぷ。ジョセフの頭上に飛び乗った。 「ジョ、ジョセフ!!なんと光栄なことを!教主様自ら乗ってもらえるなんて・・・・・・!良かったな、お前は長生きするよ。頭も良くなるよ。かっこよくなるよ。もてるよ。性格良くなるよ。運動神経バッチシになるよ。お金持ちになれ・・・」 「いいかげんにするのねぇーっ!!」 なんとあのハニワが痺れを切らしたのか、怒ったように声を張り上げる。あのハニワが。 今まで一度も聖に対しても、永遠に対しても、その他失礼な輩達に対しても、怒らなかったというのに。 「こっちの話もきかんといかんのです!デスです!我輩らは観光のために来たんじゃなーいのよぅ!!」 そして頭の上でビシィっと仮町長ジーニを指してカッコをつける。子供の頭の上ということもあってまったく様にはなっていないのだが。 「今、町長の家はどうなってるのだーね?焼けたと聞いたのだけれどもねー」 「ああ、故・からく唐久るむ琉武さんのお宅ですか。・・・・・・なぜか近寄りがたくってそのままにしてありますよ。焼けた柱の木材は炭となって残ってますが、雨が降り水分を含み、風が吹きぼろぼろになっていくもんですからいまやゴミ同然と成り果て・・・(中略)・・・ですからあれは芸術的構造からしてまったくの天然のオブジェでありまして今やこの町の名物化となりましょうか・・・・・・って、ちょっと」 ずっと話をしていた彼がふと気がつくと聖一行はすたすたと町の中へと入って進んでいた。 「あの人の話は最後まで聞いてくれないとこちらが寂しいというかなんというか」 「ああ?だったら手短に話せ。聞いてる暇なんて俺にはないんだ」 ひょこひょことついて来たジーニに聖が冷たく言い放つ。 「分かりました。お詫びと称しましてこの町の案内でも・・・・・・」 「けっこうです」 「で、ではでは、故・唐久琉武さんのお宅まで案内を・・・・・・」 ぴたりと一行の足が止まる。自分の言葉でやっと止まってくれたことに安堵したのもつかの間、全員がいっせいに―――ハニワまでもが―――くるりと彼に向かって振り向いてきた。 「本当にそれだけするネ?」 ハニワが言う。 「勿論です、教主様。他には一切しませんとも」 「だったら一言も話さずに案内するのでアール。あんた、話、長すぎる。だから嫌い」 「それ、は、教主様。お言葉ですがこのジーニ、心身ともに・・・」 「どうなさるんですか?あなた方の大事な大事な教主に嫌われてしまいましてよ?条件を呑む、呑まないでこの町の運命も左右されるとみて間違いないんじゃなくって?」 「きっらわっれた、きっらわっれた」 言い訳を言う暇を与えずミアがジーニを見下していった。面白がってシアがそれに追い討ちをかける。 ジーニのなかで、完璧に何かが崩れ落ちていく。そして残ったのは虚無感というかなんというか。 あそこまで言われて取る行動はもう一つしかないだろう。彼だって仮にも現・町長だ。そう、仮にも。 本当に仮だけど。 「分かりました。・・・・・・ひとっことも話さずに案内させていただきます」 泣く泣く歩き出したのだった。 ◇◆◇◆◇◆◇ 目の前に広がる光景は、ただの焼け跡だった。かろうじて残っているものといえば、それなりに太かったであろう柱が炭化したものがちらほらと。もう火災からかなりの月日がたっているのか、大地には雑草が生えてきていたりする。 本当に何もしていないんだな、と聖は思った。消火活動をして以来のそのままを、それをわざととってある。自分のいた世界に確か同じようなものがあったことを思い出す。あれは確か“原爆ドーム”。だが、あれとこれでは何かが違う。いや、その何かなんてもう分かりきっている。残されている目的が違う。かのドームは“原子爆弾”という恐ろしい核兵器を二度と使わぬよう、使われぬよう、平和への訴え、またシンボルとして残されている。しっかりとした目的ではないか。だがこれは、この焼け跡は、もう、明らかに (単なる、片づけがめんどくさくて何もしてないんだろ) と思わずにいられない。 荒れたこの土地に、見学用として柵がはってるわけでも無し、ましてやここを残して何を訴えようというのか。ここで起きた火災に何の教訓がある?あるにはあるかもしれない。火災の原因は家の中で七輪を取り出して魚をやいていたということだから “危険ですから家の中で七輪を使うのは止めましょう”とか。 (ふざけんな) 胸中で毒づく。第一、家の中で七輪を使う馬鹿がどこにいるというのか。―――いたけれども元町長以外に誰がいるだろう。普通の人間なら七輪をわざわざ出さずに、出したとしても庭でやるだろう。 この焼け跡を残して一体何を訴える?何のシンボルとする? そんなことを考えながら、聖は焼け跡の真中へと来ていた。 (さて、ここからどうするかな。情報は何も無い。手がかりは無し。ここは野生の感っつーことで、お前がやるか?セイ) (いいの?私が出ても。そりゃ外の空気吸いたいのは山々だけど・・・・・・) (出ろ。もう、これ命令。お前に責任を押し付けてやる。後の大変そうなこと全てお前に任せた) (・・・・・・無責任) 聖の中のセイが、くすりと笑った。それが顔に出てきたら入れ替え終了だ。身体中における全ての感覚がせい聖のものとなる。この変わる瞬間の感覚が聖は好きだった。舞台のスポットライトが自分にあたる瞬間。自分の身体が持てるとはなんて素敵なことなんだろう。 そう思おうと、その自分の身体で深呼吸せずにはいられなくなる。 すって、はいて。 すって、はいて。 「聖さん」 すぐそばにいたミアが呼んだ。やさしげに、ふんわりという言葉が似合いそうな振り向き方をする姿に彼女はとっさに気付く。 「ああ、セイさんに変わられていましたか」 「はい」 「何か、お気付きになる事がありましたか?」 最初から、ひじりにもそれを聞いてくるつもりだったのだろうかと聖は思った。ひじりにこんなことを聞いてもまともな答えが帰ってくることなんてめったに無いというのに。それとも本当は自分に変えるつもりでいたのだろうか。 「ええ、まあ一つだけ思いついたことがあるんですけれど」 「思いつくだけで素晴らしいですわ。この何も無い焼け跡を見て」 「こういう展開でよくあるベターなのは、大体が地下室説です。そこに大事なものがしまってあったりするもんです」 「なるほど」 ミアはポンッと手を叩く。 「見てください。この土地には雑草が生えていて、もう自然の中へ溶け込もうとしていますが、一ヶ所だけあまり雑草が生えてない場所があります」 聖の指はその箇所を指す。そこに近寄って、よく見てみると、正方形らしき形が見えてきた。 「不自然な場所でしょう?つまり、ここが地下室への扉という事になります。ジーニさん」 突然自分に振られたので、あたふたしてしまう。 「な・なんでしょう」 「スコップか何か貸してくれませんか?」 「かまいませんけど・・・・・・如何するんですか?」 「ここを掘ってみようと思うんです。」 「でしたら、私がやります。やらせてください!是非ともやりたいんです!!先程のお詫びに・・・・・・いいですよね?駄目だと言われても私はやります!えぇ、やらせていただきますとも!」 そこまで言って、聖の微笑み&言葉に遮られる。 「持って来て・・・いただけますか?」 その微笑みは可愛らしさと共に寒気を帯びていた。何となく雰囲気で分かったのだろう、ジーニは一・二歩後退する。 「わ・分かりました―――――――!!」 と、もの凄い勢いで走って行った。 トン トン トン・・・・・・・・・ 地下への階段を一行は下りて行く。 「意外と広いですね。もっと狭いかと思ってました」 見回すと、木箱やら袋やらいろいろな物が置いてあった。 「そいじゃ、探してみよ〜」 シアのお気楽な合図と共に、探索は始まった。 ―――ところで、探し方には性格が出る。 丁寧に探す、ミアと聖。 散らかし放題のシア。 たまに手伝うが(聖に言われて)、基本的に見ているだけの永遠。 偉そうに指示を出すが、まったく手伝わない愛教の教主。 ◇◆◇◆◇◆◇ 「あ・・・あったぁぁぁ〜〜〜〜!!」 ぼろぼろになって泥だらけになっている永遠が叫んだ。何故と問わなくても大体分かりそうだが、勿論せい聖にやられたものである。理由は働かなさすぎ。つまり制裁を加えられたわけだ。 「えっ見つけたのぉ!?ズッルイなぁー」 その場所にひょこひょこと走っていくシア。聖もミアも、その場所に向かって歩き出すが、二人とも無言だった。 永遠がいたところはいかにも古そうな本棚のあるところだった。そのうちの一つの本を取り出して中を開いている。その中に目的の鍵があったようだ。 永遠の持っているそれは、小さな金色の丸い鍵。よくゲームなどで出てきそうな安直なもの。 「これですか。あの日記に書いてあった“不思議な鍵”とか言う物は。なんともまあ安直な形ですこと」 いつもながらにシアが毒舌をはく。 「でも本の中とは・・・・・・ずいぶんとお約束な所にしまってあるもんですね。お約束といえば、壺や樽の中に何故か薬草やお金が入ってましたけど」 聖も負けじと呟く。なんだかやればやるほどゲームのRPGに近づいていっている気がするのは果たして気のせいというやつなのだろうか。 「ワイール!とりあえず鍵は見つかったな。よかったな。これで聖がもとの世界に帰れるよ!」 ぴょんぴょん飛び跳ねながらハニワも叫ぶ。 ハニワの言葉を聞いたとたん、聖の身体中に鳥肌が立つ。 「源さん・・・・・・やめてくださいそれ。私の中のイメージが崩れちゃうじゃないですか」 さきほどのハニワの言葉―――それは聖の知っている某ゲームの登場人物の話し方だった。しかも、ひじりもセイも今現在かなりはまっているゲームである。(注:というより作者がはまっています。知ってる人は知ってる・・・・・・よね?)可愛らしい女の子が言っていた言葉をこのハニワにいわれたら最大限に拒否反応を出してしまう。 「こうやって鍵もすぐに見つかったし、もうすぐもとの世界に帰れるかもよ?うん!いける、いける!」 「や、止めてくださいよシアさん!」 「エトロピカ半島はここより北北西に三キロの地点だが、地形の関係上北へ一キロ、その場所から西へ五キロ進むのが妥当だといえよう。その場合計六キロになるため、無理のない速度・・・時速二キロのペースで三時間。一時間毎に十分の休憩を入れるとして計三時間三十分。今の時間から考えるとあちらに着くのは夜中になってしまうだろうな。まあ、結論を言えば、明日の朝、日が東の空約四十五度に昇ったころこの町を出、半島の先端で昼食をとり、目的の行動をおこすのが最善ではないかと考えるわけで・・・・・・」 「永遠さんも止めてください!!っていうか、なんであなた方はテイ●ズ・オブ・エ●ーニアを知ってるんですか!ここ異世界じゃないんですか!?そのしゃべり方おもいっきりメ●ディに●ァラにキー●です!なんでリッ●がいないんですか!?」 そのとき、頭の中でひじりの声。 (やっぱ俺だろ、●ッドは。なぁ?セイ) 「ひじりも冗談は止めてください。というか立場的には私のほうがメル●ィです!それに、(中略)・・・・・・って、私もそんな事言ってる場合じゃありません!・・・・・・とりあえず、ジーニさんが用意してくださったホテルにでも行きましょう。今日はそれでお休みです」 「そうですね」 相も変わらずミア。ああ、私もミアさんのような冷徹さ―――もとい冷静―――さが欲しい・・・とか思う聖。深呼吸をして、冷静に、落ち着いて、と。 しかし、それを壊してしまうハニワの一言。 「はいな!」 「 “な”は余計です!」 今、完全に自分の中のイメージが崩れた気がした。 つづく。 |
19181 | 人生をもてあそべ。(6) | 春祭あられ | 2001/12/24 23:12:09 |
記事番号19175へのコメント エトロピカ半島の中心より少し手前辺りで、ひじり聖、永遠、シア、ミア、そして教主アトロネア=ボルトア三世、簡潔に言うとハニワ、ニックネームは源。―――が最後の休憩をとっている。 「おい、ミア。今どの辺りだ?」 唯一地図を持っているミアに聖は問う。勿論冷たくあしらわれること覚悟で。・・・・・・ところがミアはがさがさと地図を広げ始めた。 「・・・・・・今、だいたいこの辺りですわ」 と、彼女が地図のある一点を指差す。 「あと・・・二キロってところか」 「では、昼食をとることにしましょう」 ミアはなにやらランチボックスなど取り出して広げる。 「わーい!お弁当!!」 シアと永遠は手を取り合って喜んでいる。・・・・・・が、弁当のふたが開いた瞬間、聖、永遠、シアの三人は凍りつく。 「さぁ、召し上がってください」 平然とした顔で薦めるミア。そのべんとうは、まさにこの世の物とはいえないような色で、今まで嗅いだことのないような匂いがしていて、何故かうにょにょと動いており、さらに青色の煙まで。 「・・・・・・ミ、ミア。そのお弁当っておまえが作ったんだ?」 思いっきり引きつった顔で聖は言った。そばによるだけで気持ちが悪い。 「勿論です。皆さんのこと考えて栄養たっぷりにさしていただきましたわ。ですからお早く召し上がってくださいまし」 「いや、栄養たっぷりって・・・・・・一体何入れたらこうなるんだ?」 そのとき、中身に立っていた泡らしき物がはじけてその液が跳んだ。それは地面に落ちて、ジュッと音を残して―――煙までたてて―――消えた。 「・・・・・・。なあ、これを食べろってか?マジで死にそうな気がするのは気のせいか?」 「気のせいです。(即答)ただちょっとマジックトリュフの粉を入れただけですから」 その言葉を聞いたとたん聖とミアを除く三人(二人と一個)はどこかへ隠れるように森の中へと消えた。つまり逃げた。 「マジックトリュフ?」 そんなもの聞いたことない。 「あら、知りませんか?マジックマッシュルームに次ぐ栄養たっぷりの素晴らしい魔法のようなきのこじゃありませんか。それの粉末にしたやつを全体に大さじ三杯ふりかけたんです」 「・・・マジックマッシュルーム?!それは麻薬みたいな現象を起こす超危険物じゃねーか!!」 「危険物?気分がハイになってとってもイケルと思いますが?」 「うわ、マジ、ちょっと止めろ!俺、薬だけにはぜってー手をつけたくないんだ!お願いだからそれだけは!」 自分の命がかかっているものだから本気で、冷や汗までかいていやいやする聖。 それを見たミアは本当に残念そうにため息をついた。 「本当においしくていいのに。・・・・・・仕方ありません。ごくありきたりなサンドウィッチも作ってきているので、それを食べましょう」 そういってどこからともなく取り出したまた同じようなランチボックス。その中身は、サラダ、卵、ツナ、カツ、ハムチーズなどのごくごく普通の、本当においしそうなサンドウィッチが入っていた。 「あるんだったらそれをさっさと出せ!」 ◇◆◇◆◇◆◇ 「聖。あなたのお父さんはね、それはそれは素晴らしい人なのよ」 誰かが聖の頭を撫でる。そう、これは母さんの手だ。暖かくて気持ち良い。俺は母さんの膝枕が好きだったんだ。 「自分の世界を持った、きちんとした人だった」 そうだ。いつもいつもこんなことを言っていた。今になって思えば、それって自分の妄想の世界を持ってる人って事なんじゃないのか? 「あなたに今一度あの人に逢わせたかった。でも無理ね」 「何で?」 あの時もこうやって聞いたんだ。十年前のあの時も。そのとき母さんは哀しそうに笑っていただけで答えてくれなかったけれど。 「あなたのお父さんはこの世界に存在している人じゃないもの。死んでいるとかそういうんじゃない。・・別・の・・・世界に生きている人なの」 違う、こんな事言っていない。こんな科白は初めてだ! 「逢えるかもしれない。でも逢えないかもしれない。今は無理。だけれど未来は分からない。あなたなら逢いに行けるかもしれないわ」 やめろ!おまえはいったいだれだ!この膝枕も、この手も、母さんじゃない! ◇◆◇◆◇◆◇ 「やめろ!おまえはだれだ!」 叫びながら聖は勢い良く起き上がった。どうやら今まで寝ていたらしい。 「大丈夫ですか?うなされてましたけれど」 すぐそばにはミア。ミアのひざにはタオルがかかっており、ここに頭を乗っけて寝ていたらしいことが推測された。 「マザコンなんですね。ずっと母さん、母さんって言ってましたよ」 「ち、違ぇーよ!ただ夢を見ていただけだ!」 図星とまではいかないが、恥ずかしいことを言われて思いっきり顔を赤くしてしまう。その様子を見て、ミアはまぁ、可愛らしい・・・と感情のない声で呟いた。 と、ふと気付く。 「あ?何で俺寝てたんだ?飯食ってたはずなのに」 「ええ。食べていましたよ。食べている途中で泡吹いて倒れたんです」 「ちょっと待て。ふつーに飯食っててなんで泡吹いて倒れなきゃいけないんだ?・・・・・・まさかおまえ、あれにもなんか入れたか?」 「なんか、とは失礼な。栄養素たっぷりのマジックトリュフを具の中に少し入れただけじゃないですか」 とんでもないことをさも当然のように話してくれるミア。良いのかそれで。 「のあぁぁぁぁぁっ、あれか?!サラダの中に入ってたあの恐ろしくまずかったキノコか?!あれなんだな?!おかしいなと思いつつ食っちまったぁっ!入れるなバカタレ!」 確かにそれらしいものがあったことを思い出し、思い切り後悔する。後悔先に立たず。 嗚呼、御母さん、どこにいるか良く分からないけど多分天国の御父さん、ごめんなさい。俺はついに、ついに薬物に手を出してしまいました。どうか、どうかこんな俺を流し目で許してください!なお、呆れてくれるとさらに良! ―――良いのか? 「とりあえずすんだことです。もう気にするのはよしておきましょう」 「まてや、おい」 「実はあれからずいぶんと時間がたっていましてね。もうここはエトロピカ半島のがけっぷちだったりします」 ミアがほら、と聖の後ろを指す。話しをすっかりと別なところに置かれたことにぶつぶつと文句を言いながら後ろを見る。確かにがけっぷちだった。でも扉らしきものは一切ない。ただのがけっぷち。 「聖ったらずーっと寝てたんだもん。しょうがないから運んできちゃった」 ミアの隣でシアが言う。いつの間にかそこにいた。 「連れてきたって、どうやってだ?女しかいねーのに良く運べたな」 正確には永遠という立派かどうかはしらないが男はいるわけだけれども、あえてそれは言わない。 「源さんが運んでくれたんだよぉー。永遠ちゃん、セイじゃなきゃ嫌だって連呼するししょうがなく」 「だって、何で私が聖なんか運ばなくちゃいけないのさぁ。野郎なんか運んだってぜーんぜん楽しくないもーん」 聖自身、永遠に運ばれなくてよかったと心の中で安堵する次第で。ただ、一つ疑問が。 「源が運んでくれた?どうやってだ?」 どう考えても源は身長三十センチ未満だし、自分を運ぶのはだいぶ無理なような気がする。すると、永遠の頭に乗っかっていた源はにょほほほほと笑った。 「企業秘密(はあと)」 「はぁ?」 聖にはわけがわからない。っつーか、どこの企業だっ!とか突っ込みつつ可能性を考えてみる。 その一、巨大化・・・・・・どうやって歩いたんだ? その二、変化・・・・・・人間やら動物やらに化けて・・・っていくらなんでもそれは無理か?いや、あのハニワならありえそうだ。 その三、超能力・・・・・・俺の身体を浮かして・・・うーむ。 (ああ・・・どれもありえそうでなんかコワイ) さあ、果たしてどれでしょう。正解はこの三つの中に実はあるのです。がんばって正解しましょう!バーイ作者ズ♪ 「でもさあ、扉っていってもどこにもないじゃんねー」 「ねー」 シアと永遠が可愛らしく小首をかしげて文句を言った。確かになぁ・・・と聖も思う。 「一応カギはこれなんですけれども。けっきょく必要なのは聖さんですからもう渡しておきますね」 「お、さんきゅ」 素直にその金色の鍵を受け取る。 「しっかしさあ、どこをどう見てもゲームの中で出てきそうな鍵だよなあ。こんなんでどこが伝説なんだか」 受け取ると同時に愚痴ももらす。 「おまけに扉もないしさー・・・・・・ってなわぁぁぁぁぁ?!」 そしてもう一度がけっぷちに目を向けたとき、それはそこにあった。 「どうかしました?」 「扉が、扉がある!」 「ええぇ!本当?!どこどこぉ?!」 「あそこ!がけっぷちのところに浮いてる!」 が、聖が指指す先には何も見えない。 「・・・・・・これは、鍵を持つシーズにしか見えない扉・・・なのでしょう。鍵を差し込んでみてはいかがですか?」 「ああ、そうしてみる」 聖は、聖にしか見えない扉の鍵穴に鍵を入れる。 が、はまりはするが右に回しても左に回してもいっこうに開く気配がない。 「・・・・・・?あかねーぞ?」 さらにもう一回まわすが、同じ事だった。おかしいなーとか思っていると、不意に声がした。 「あー、ダメダメ。こーゆーのはこうやってちゃっちゃと入れないと」 「?・・・・・・なあ、誰か俺に話し掛けたか?」 聖は振り向く。が、誰一人首を縦に振るものはいなかった。しかし、誰かの声が聞こえたような気がしたのだが。 「空耳か?にしてはやけにはっきりしてたなあ」 「んもー、気付きなさいってばー、聖君。僕はここ。ここにいるよ」 聖は声の主を探そうと、耳を傾ける。するとからかうような声が。 「ほーらここだってば。鬼さんこちら、手のなる方へ♪」 なんとなく、ムカ。 そしてそれらしい一点をとうとう見つけた。 「ここ・・・・・・からかぁ?」 「ピンポ〜ン、大正ー解!」 こことは、な・なんとあの扉だった!普通驚く場面なのだが、聖は至って平然としていた。多分ハニワやなんやらで慣れてきてしまったせいであろう。 「ふーん、そうか。んで、このカギをどうしろと?」 「ありゃー驚かないんだね。お兄さんちょっと残念。こういうときは『イヤーン、扉がしゃべってるぅ〜』って驚いてくんないと」 「・・・・・・で、このカギをどうしろと?」 ちょっぴし険悪モードに入っている聖に、扉は少し間を置いてからにこやかな声で再び話し出した。 「ああ、はいはい。だからそれは、これはこうしてこうやってこうこう・・・」 「”こう”じゃわかんねーだろっ!具体的に言え、コラ」 「だから言ってるじゃない。こうやってこうして」 「てめーのその言葉だけでわからいでか!んなこといってるならてめーでとっとと開けやがれ!」 「いやだねぇ、最近の若い者は。切れやすくって切れやすくって、おじさんじゃついていけなくって。言っとくけど、僕、自分でここを開ける事なんて出来ないよ。君のそのカギで鍵穴回してくんないと。ま、頑張ってくれたまえ」 その飄々とした声は、嫌味なくらいに声をあげて「はっはっはっ」と笑った。 それがまた聖の癇に障る。 「だから入れても出来ねーっつってんだろ!何かヒントぐらい出しやがれ!」 「うーん、しょうがないなぁ。じゃあ、このクイズに答えられたらね。 これは、私の通学路での出来事です。一体何をやってるんだろうと思ったところで、片足を上げてその場でくるくる廻ってください。 @ある朝、とある家の前を通ると、木魚を叩く音がした。(普通の家にあるのかどうか知らないが) Aしかも力いっぱい叩いているため、木琴のような音を立てている。 B高校の入学式、その家の前を通ると、タイミングぴったしに「今日もガンバロー!」と言われた。(しかもしばらくしてから「おー!」と複数の人が叫んでいる声が) Cそして昨日、その家の前を通ったら大声でお経を復唱していた。(勿論木魚の音つき) D怖くて力いっぱい逃げました。 さ、答えをどうぞ」 「知るか!っていうか、それ本当にクイズか?!答えあんのか?!」 「勿論だよ。答えがなけりゃクイズなんて言えないし、成立しないだろう?」 確かにそーだ、とか思う聖。でもどこだ?どこなんだ?!仮に答えが見つかったとして、片足あげてくるくる廻れるか?俺、バレリーナっぽいのって苦手なんだよなあ・・・と、ここまで考えて聖は叫ぶ。 「ってちがぁぁぁう!!」 まさに、一人ノリツッコミ。 「さ、正解は?わかんない?こーんなに簡単なのにぃ。君って意外と頭悪いんだね。・・・あと、片足上げてくるくる廻るのは自分の感覚であって、答えで上げるわけじゃないんだなぁこれが」 「なにぃ?!」 んなこと聞いてないぞ!と叫ぼうとしたのに、相手が先に話し出す。 「馬鹿じゃないんだったらそれくらいわかるでしょ?さ、早く答えて答えて。あほじゃないなら」 「ふ、ふぬぅ〜」 妙にとげのある科白をはく扉。わざとなのか、わざとじゃないのか。当の本人は、馬鹿でもあほでもない!と憤慨してしまう。 「時間切れー。残念だなぁ、うん、本当ぉーに残念だねぇ」 「時間制限有り?聞いてねーぞ、そんなこと!」 「おや、言ってなかったっけ。ま、若いもんがいちいち気にすんじゃないよ。何ごとも、ケ・セラ・セラさっ!」 どこかで聞いたことがあるような科白を言いながら扉は笑う。 「んじゃあ、俺は、もしかして、元の世界に帰れないのか?!」 「うーん、そう言う事になるかなぁ。まぁ、気を落とさないで」 「落とさずにいられるか!これが!」 「・・・・・・ここに二問目があるからさ!」 「あるんならとっとと出せ」 あー、この世界から帰れなかったら、家は?学校は?お金は?母さんは?etc・・・なんて考えてしまった聖。そう言う事は早く言ってくれよ、扉。 「じゃあ、二問目。これ正解したら、これこれこうこうを具体的に話してあげる」 「・・・・・・結局、さっきのは正解しなくてもラッキーだったのか?」 「そういうこと。では問題。さっきの問題の中に、“と”はいくつ入っていたでしょう」 「はぁ?そんな問題ありか?」 「ありなんじゃないの?今現在ここにあるわけだし。ちなみに、”ど”は入らないから」 「・・・・・・」 (おい、セイ。覚えてねーか?) (・・・・・・待って。今数えるから) 「制限時間は一分!いーち、にーい、さーん、・・・・・・・・・・・・じゅうご、じゅうろく・・・」 (早くしろ、セイ) (あんま急かさないでよ!あそこと・・・・・・) 「・・・さんじゅく、よんじゅう・・・・・・・・・よんじゅはーち」 楽しそうにカウントする扉の傍らで、聖は貧乏ゆすりまで始めていた。 「ごーじゅご、ごーじゅろーく」 (・・・・・・わっかたよ。全部で十四個だと思う) 「分かった!」 「ほう?正解は?」 「じゅ・・・・・・十四個」 沈黙が流れる。もしかして間違っていたのか?と思い始めたその時。 「ピンポーン!正ー解」 「ハァァ〜。よ、良かった」 心底安堵するひじり&セイ。ホント、ドキドキものだった・・・・・・(セイ) 「それじゃあ、約束通り具体的に言ってあげようじゃないか。そーだねぇ。簡単に、単刀直入に言うとだね、それは・・・・サカサマに入れるんだよ」 「逆ぅ〜?!」 ところで、聖にしか見えない扉。勿論他の者には見えない。はたから見ると、がけっぷちで一人、空に向かって叫んでいる(話している)ようにしか見えない。それはそれはちょっと不思議な光景。なんだか自分が話に参加するのはまだ後だ、と思ったのか、全員くつろいでいる。シアと永遠は相変わらず二人で歌って踊っている。ミアに関してはピクニックシートを広げ、そこに座り、お茶などをすすっているし、忘れちゃいけないハニワの源は、そんなミアと世間話をしていたりする。そんな時、いつになく大声で叫んだ聖の科白の内容が、三人と一個の耳に止まった。 「逆?」 「何がぁ?」 ぞろぞろと聖の周囲に集まる三人+α 「おっ、おめーら、いいとこに来たな。やっと帰れる方法がわかったんだ」 嬉しそうに、いつになく聖がにっこりと笑う。セイのときはよく笑うが、聖はめったに笑わない。喜怒哀楽のうち、怒しか今のところ皆には見せなかったのだ。と、言うわけで大変珍しい光景。 「へぇー。そりゃ良かった。で、どうやんのさー」 いじめたりいじめられたりする対象がいなくなって、つまらないのか永遠はむっくり膨れながら内容を聞いてくる。何気に聖のことを気に入っていたのかもしれない。 「なんだかな、この扉が言うには、カギを逆さに突っ込めばいいらしいんだ」 「だったら早く突っ込みなよ」 いつもと違って敵意丸出しの永遠に聖は多少たじろいだ。 「わ、わーってるよ」 丸っこいほうを細い鍵穴に向けて、差し込もうとする。だが、差し込む寸前ふと思う。 (鍵穴は普通の大きさなのに、でかいこっちをやっても入らないんじゃねーか?) それでも、もうこれしか方法がないので、力強くぐいっと突っ込んだ。 がちゃっ わずかな音がして、カギが入って自動的にまわる。 「うん、うん、おめでとう聖君。それじゃあ、最後の試練ね」 「なっ?!まだなんかあるのか?!」 「そーゆうこと。何のためにがけっぷちに僕がいると思うの?こういうことのためだと思わない?」 何か含んだ言い方をしてから扉がぴょんと一歩以上がけの向こうへ跳んだ。そして、同じ高さぐらいに浮遊する。 「さあ、そこから飛び込んでおいで。見事中に入ることが出来たら君の世界に帰れるから」 いくらなんでもこれには無理がある。がけと扉の距離は軽く三メートルは越えている。 「マジ、かよ。いくらなんでもプロの走り幅跳び選手じゃないと無理だろ、それは」 「ま、がんばって。ほーらこうやって扉を開けておくからさ」 言った通り、きぃぃっときしむ音を立てながら扉が開く。だが、その向こうもこの世界の海が見えた。 「おい、本当につながってんのか?俺の世界に」 「もちろんさ」 思わずがけの下を見てしまう。落ちたら間違いなく死ぬ高さ。 「と、跳べねーよ」 口が滑って、弱気な言葉を吐いてしまった。慌てて取り繕うとしたが、無理そうなのでうなだれてあきらめる。するとポツリと一言。 「ならば、強運と名のつく翼で飛べばいい」 「・・・・・・は?」 いきなりの永遠のシリアスな声に、皆が絶句する。 「飛ぶのなら翼がいるだろう?おまえの翼は”強運”だ」 「何をいきなり・・・」 「ふーんだ。セイならともかく、もう聖なんかたくさんなんだもん。つまんないしぃ。乱暴だしぃ。さっさと帰ればぁ?」 「て、てめえなぁ・・・言われなくったって帰ってやらあ!」 急なその言い様に、むっとする。さっきのシリアスは一体なんだったのだろうか。 「跳んでやろうじゃねーか。じゃあな、皆。俺はもう帰る」 「短い間でしたけれど。セイさんだけにはお世話になりましたわ」 「・・・・・・」 「聖とセイ、バーイバーイ。また遊びに来てねぇ。シアが存分遊んであげるわぁ!」 「・・・・・・二度と来るか」 「また召喚したいと思いマースので、今度こそ世界一周しまショーネー!!」 「すんな!」 それぞれ独特な別れの言葉を言われ、それをいちいち返しながら助走をつけて走り出す。 走り幅跳びなんて初めてだが、大丈夫だろうか・・・なんてちょっと心配に思ってみたりする。 でも、もうこれしかないのだ。迷いを捨てて、跳ばなければならない。 そして――― 「とりゃぁぁぁぁっ!!」 勢い良くがけから跳び出した。だんだんと扉が近づいていく。後少し、後少しなのに・・・ (くっ、足りねえ!) 扉までには、跳躍力が足りなかった。行き着くまでに、身体は下降していく。 もうだめなのか・・・? そう思ったときだった。 体が落下と違う浮遊感に包まれ、距離の足りなかった扉まで見事にたどり着いた。 (え・・・・・・?) どうしてか分からないが、助かった。 勢いに乗じて、するりと扉の向こうに身体を吸い込ませる。足の先から、金色の光に包まれていくのが見えて、帰れる!と、はっきりと自覚した。やっと安堵のため息がつける。 「ふう・・・」 何故か最後に光に包まれる瞬間、永遠の顔が見えた気がした。 「意外と簡単に消えてったもんだね。絶対たどり着けないような距離に僕は移動したのになぁ。なんかしたでしょ、えーと、永遠君、だっけ?」 顔があったら、絶対ににやりとしていそうな声で扉は言った。 「べーつにー。なーんもしてないよぉ。私がどーして聖を助けなきゃいけないのさぁ?」 聴こえるはずのない扉の声に永遠は平然と答える。 「ふーん。そっか。浮遊させてあげたのは君じゃあないんだぁ。ふーん」 「・・・・・・」 永遠は、少しふくれると、そのままぷいっとそっぽを向いてどこかへ消えてしまった。砂のようにさらさらと。溶けるように一瞬で。これが本当の天使の力ということか。 「お互い素直じゃないのねー」 その様子を見ていたハニワの源が、ぽつりと呟いた。 ◇◆◇◆◇◆◇ 「・・・・・・はっ!」 頭が真っ白になるような感覚の後、気がつくと聖は自分の家の玄関にいた。 手にはハニワの入っていた箱がある。最初の元凶のハニワ。 また触りそうになって、慌てて手を引っ込める。また吸い込まれてはたまんない。 その時、派手な音を立てて玄関の扉が開いた。 「ただいま」 聖の、たった一人の元気な母さんだ。 そういえば、これは何となく、確か母さん当ての荷物だったような・・・・・・ま、いっか。 「お帰り。なあ母さん、見てこれ。誰だか知んないけど、こんなの送りつけたやつがいるんだけど・・・・・・」 えんど。 |
19183 | 人生をもてあそべ。(あとがき) | 春祭あられ | 2001/12/24 23:25:41 |
記事番号19175へのコメント えーっと、このシリーズ全部見てくれた人、長い物を付き合ってくれて、ありがとうございました。 感謝します。 それで、実はこれは私の友達との合作でして、しかも学校の文化祭で、一冊百円で売り出した本なのです。 相棒の名前は星ほたる。 彼女はパソコンのある環境にいないため、学校のコンピューター室を先生に無理言って貸してもらった苦い記憶がいっぱいあります・・・・・・(汗) と、言うわけで、そのとき出した本のあとがきをそのまま載せさせてもらいます。 あとがき はじめまして。春祭あられです。 なに偽名使ってんだとお思いの方も多分いらっしゃるでしょう。 良いじゃないですか。使わせてください。これが私の全てに対して共通のP.Nというやつです。 この名前で、いくつか雑誌に投稿していたりもします。見つけた方、「あ、こいつか」なんて言いながら思い出してくれれば幸いです。 さて、今回のお話についてですが、まず最初に謝ります。 ごめんなさい。 中身がとんでもないものになってしまいました。 でも書いてて楽しかったです。 今回のテーマが「普段小説をあまり読まない人(嫌いな人)でも読めるような本!」ということだったんですけれども、それを意識しすぎたがために思いきりふざけたものになりました。書いてた本人も、 「えへへ、あはは、こうやったら面白いかなぁ?イエーイ、うけ狙いうけ狙い♪」 なんて言いながら書いてたりします。その度に隣にいる相棒に小突かれたりしたものですが・・・・・・なんだかもう遠い過去。(遠い目) ああ、でもあれだ。この本とも呼べなさそうな冊子が私の初めての本になるわけだ。 でもこれはリレー小説という形で書いたので、私だけの本ではないのですが、書き終えた小説というのは初めてです。 私は気力が続かない、集中力がない、すぐに他のものに目移りしてしまう・・・・・・という欠点のせいか、今まで書いた小説は数多にあっても完結した小説は一つもないのです。駄目人間ですね、春祭は。 勿論、ショートストーリーなら完結したお話はいっぱいあるのですけれども、果たしてそれは小説と呼べる代物なのだかどうか怪しいところで。 なんだか全て春祭の妄想の産物を文章化したといった感じで、凍りついた笑みしか出てきませんわな。今度なんかの機会があったらそれを全部まとめて本にしてみようかな。 特定の友達にしか見せられないけれども多分ものすごくくだらない面白作品の続出かと。 というか、友達Wさん、頼むからホームページ開いて。うちじゃ開けないの。 開いてくれたら絶対小説を投稿させてもらうわ。 でもって、いつも何も言わないで私の小説読んでくれてありがとう。 励ましになっています。(でも感想も言ってくれると本当に嬉しいんだけれど。これ切実) 今回のこの冊子を読んでくれた方も、よろしければ感想ください。 それは私にとって、良いアドバイスとなります。更なる精進をかけて頑張りますので、どうかお一つよろしくお願いします。 話が思い切りずれました。本題はこのお話のあとがき。 といっても、大して話すことはないような気がします。 あとがき・・・あとがき・・・うーん・・・あそうだ、先ほどから完結したお話とか言っていたくせに、実は続けるつもりでいます。 っていうか、続けたいなぁ(願望)という感じで。 実はハニワは○○だった!とか、永遠は○○だった!とかやりたいのです。 今から少しずつ書いていけば、きっと来年の冊子はもっとまともになっている!はず。 あくまでも“はず”。 なってないかもしれない。でもなるように心がけます。 それから、この作品のネタについて。この話は、我々作者陣のシュミを大きく反映してます。 そのため、ネタばれ寸前(っつーかばらしてる)のものから、よく知らないとまったく分からない微妙なネタまでいっぱいあります。 探してみるのも暇つぶしになるでしょう。 とりあえず、笑いをとるためならなんだってしている、春祭です。 笑いを馬鹿にしてはいけません。 笑うことは、生きていくためにけっこう必要だったりするんですよ。 健康に生きるために、思い切り笑うのもいいかと私は思うのです。 お勧めとして、NHKなんてどうでしょう。けっこう良いですよ。 深夜辺りになってしまうのですが、毎週土曜日の十一時五十分辺りから「爆笑オンエアバトル」というものがあります。 その後に続けて海外ドラマ「二人は最高、ダーマ&グレッグ」というのがあります。 私はいつもそれらを見ているのですが、私的にお勧めです。思い切り笑って人生楽しみませう。 はてさて、さっぱりさっくりと終わらせるはずだったあとがきがこんなに長くなってしまいました。 どうもすみません。所詮あとがき、されどあとがき。 最後になりましたが、私たちの作った、この「人生をもてアソベ」を手にとっていただき、本当にありがとうございました。 そして、挿絵を描いて下さったもめん子さん、製本を手伝ってくれた皆さん、いろいろと手伝ってくださった先生方、この場にかえてに感謝させていただきます。皆様のご協力あってこそのこの本です。 それでは、また読んで下さっている皆様に会えることを祈って。 二〇〇一年 まだまだ蝉が頑張っている長月より。 春祭あられ あとがき 今回はこの「人生をもてアソベ」をお買い上げいただき、本当にありがとうございます。 読んでオモシロかった人も、つまらなかった人も、どうか捨てずに三年間ぐらい立ってから捨ててください。 本当は捨てて欲しくないのですが、愛教の信者なもので(笑)。 あ、申し遅れましたが、春祭あられの相棒こと星ほたるです。 自分で考えた中の一番好きな名前なんです。 星・ほたるではなく、星ほたるなので、ご了承ください。 愛教といえばハニワ(笑)。結構好きなキャラクターだったりします。 寛容で・・・・・・あの中で一番人間(?)が出来ているんじゃないでしょうか。 ハニワの正体はあられさんも言っていましたが、さらに詳しく言うと、ハニワは○で、○の、○○だった!ですね。 私的に書きたいなぁ、続編。 それにしてもギャグって難しい・・・(笑)。まぁ、これが果たしてギャグと呼べるかどうかは別としてですケド。 文章量の三十八パーセントしか書いていない星ほたる。 ダメ人間です。キーボードの練習を毎日しないと、本当に足手まといです。 目指せ、一時間三ページ(笑)。 ちなみに今は、一時間に十行前後(泣)。 こんな星ほたるを笑ってやってください。 あられさんと同じく、この作品のネタについて。 いっぱいってのはどうかと思うぞ、あられさん。 さて、そろそろ終りにしたいのですが、自分的に、「私で終わるってのはどうよ?!」とか思いますが、ちゃんときちんと終わらせたいと思います。 今回の冊子を作ることで学んだことはTime is money “時は金なり”です。 時間が足りなくて、四苦八苦でした。でもそれは、顧問の先生の協力(PC教室の使用・印刷等)がなければもっと大変だったと思います。本当にありがとうございました。 そして、これからもよろしくお願いします。 最後に、この本を買って下さった皆さん、今日は本当にありがとうございました。 二〇〇一年九月 涼やかな夜の風に舞う「星ほたる」より。 |
19214 | はじめまして | 清川正寛 | 2001/12/26 01:05:04 |
記事番号19175へのコメント こんばんわぁ。はじめてレスさせていただきます。清川です。 今までレスしようと何度も思っていたのですが、そのたびに機会を逸していました。でも、今回は意を決して書き込んでみます。 春祭さんのお話は、以前からちょくちょく盗み読みしていたのですが、とっても明るい雰囲気でいいですね。なおかつ、話のテンポもとってもよくて、読みやすいと思います。スレキャラの動かし方もうまいけど、オリキャラもいろろと工夫なさっていますし。私の場合は、オリキャラ描くのはどうも苦手でして(汗) では、短いですけど、時間がないので今日のところは感想はこれまでにしておきます。 今度は、「セレナーデ」シリーズを過去ログからもう一回読み直してみますね。では、またですぅ。 |
19226 | Re:はじめまして | 春祭あられ | 2001/12/26 20:09:55 |
記事番号19214へのコメント 清川正寛さんは No.19214「はじめまして」で書きました。 > > こんばんわぁ。はじめてレスさせていただきます。清川です。 こんばんは。レスくださってありがとうございます! > 今までレスしようと何度も思っていたのですが、そのたびに機会を逸していました。でも、今回は意を決して書き込んでみます。 どうもです。最近誰かからのレスがないんで、とっても嬉しいのです。 > 春祭さんのお話は、以前からちょくちょく盗み読みしていたのですが、とっても明るい雰囲気でいいですね。 そうですね・・・・・・何とか明るくしようと頑張っています。 でも、セレナーデだけはシリアスになるように頑張って書いていたつもりです。 だから明るくは無いのではないかと・・・・・・ >なおかつ、話のテンポもとってもよくて、読みやすいと思います。スレキャラの動かし方もうまいけど、オリキャラもいろろと工夫なさっていますし。私の場合は、オリキャラ描くのはどうも苦手でして(汗) わかります。オリキャラは動かしやすそうに見えて、どうもやりずらいですよね。 もともとそこにはいないキャラですからねぇ・・・・・・なんでもありなところが結構大変ですよね。 > では、短いですけど、時間がないので今日のところは感想はこれまでにしておきます。 はい、ありがとうございました! > 今度は、「セレナーデ」シリーズを過去ログからもう一回読み直してみますね。では、またですぅ。 読み直してくださるなんて・・・ありがとうございます! これからもどうぞ、末永くよろしくお願いしますね♪ 春祭あられ |
19237 | LOVEはにわ!!! | 風林みつき | 2001/12/26 23:44:13 |
記事番号19175へのコメント こんにちは、あられさん! まずタイトルに惹かれて読みましたが、はにわ(←すいません会の都合上ひらがなです)!!! これに尽きるですーーー!! 実はあたし学校の部活が文芸なんですけど、『オープニングにはにわを使おうの会・副会長』でして。二年の先輩に副な会長を頼まれたのです。 はにわは大好きなので、レスせずにはいられなかったです! あられさんステキ! あたしなんかの暗い小説よりも、楽しいギャグ調の方がだんぜん良いですよ! 文章綺麗ですし。 いいなぁ・・・・・・v では、これからも頑張ってください! 短くてすいませんがこれにて!! |
19242 | はにわ〜!! | 春祭あられ | 2001/12/27 01:32:21 |
記事番号19237へのコメント 風林みつきさんは No.19237「LOVEはにわ!!!」で書きました。 > >こんにちは、あられさん! こんにちはです! >まずタイトルに惹かれて読みましたが、はにわ(←すいません会の都合上ひらがなです)!!! >これに尽きるですーーー!! 良いですよねぇ、ハニワ。あたしも好きですよ。(笑) >実はあたし学校の部活が文芸なんですけど、『オープニングにはにわを使おうの会・副会長』でして。二年の先輩に副な会長を頼まれたのです。 私も一年なのに、文芸部の副部長をしております。 おかげで先生にめちゃめちゃ顔覚えられています。広範囲にわたって。 >はにわは大好きなので、レスせずにはいられなかったです! >あられさんステキ! >あたしなんかの暗い小説よりも、楽しいギャグ調の方がだんぜん良いですよ! ギャグは、本当に一所懸命かいてます。 もともと、シリアスしか書けない者だったんで。 小説を書き始めたころのものを読み返しても、笑えそうなもの一つも出てきません。 >文章綺麗ですし。 そうですか?そういわれると嬉しいです。(ちょっと照れてる) >いいなぁ・・・・・・v >では、これからも頑張ってください! はい。がんばります! >短くてすいませんがこれにて!! 感想、どうもありがとうございました! 風林さんも、小説のほう頑張ってくださいね。 春祭あられ |