◆−時の呪縛1−神無月遊芽 (2002/1/3 10:56:28) No.19330
 ┣はじめまして。−朱花 (2002/1/6 21:52:05) No.19383
 ┃┗初めまして。−神無月遊芽 (2002/1/7 07:12:26) No.19393
 ┗時の呪縛2−神無月遊芽 (2002/1/7 12:36:43) No.19396


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19330時の呪縛1神無月遊芽 E-mail URL2002/1/3 10:56:28


こんにちは、神無月遊芽です。
久しぶりにゼロリナ小説を投稿させてもらいます。
例によって、やっぱりちょっと暗かったりするのですけれど(^^;)
とりあえずハッピーエンドの予定(予定というのが悲しい(笑))で、大体8話くらいで終わるつもりです。
まあ、少しでも興味を持っていただけたのならどうぞ、お付き合いくださいませ。
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    「運命」
     それは私の中にある。
    「生と死」
     それは私の中で紡がれる。
    「時」
     それは我なり。

     人間はこの全てを背負って生きている。

     だが、つまらない。
     抗ってみせよ。打ち砕いてみせよ。
     我、その者に奇跡を与えん…




                           時の呪縛 1




   人が生きている限り時の呪縛から逃れられる事は無い
   例え望まずとも 人が死に絶えるまでその呪縛は続く
   それは人々の身体を縛め 侵食する
   人が生きている間に自由になれることなど決してない



 私はリナ・インバース。
魔を滅する者の称号を持つ者。その名の通り、たくさんの魔族達を混沌に還してきた。
もちろん、私の経歴の中には、たまたま運が良かったりして勝ったというものも多いが…これはこの際どうでもいいか。
とにかく、私は魔族と敵対している。
別に、魔族に特別恨みがあるわけじゃない。目の前に立ち塞がった奴らを倒していたら、たまたまそれが魔族だっただけ。
だけどそのせいで、私は随分魔族に恨みを買っているらしい。毎日と言っていいほど魔族達の襲撃に遭う。
姉ちゃんへのコンプレックスで魔導士になって、姉ちゃんの命令で旅にでたけど、力を持ちすぎるのも、問題があるんだなと思った。
 これまでの説明でも解るだろう。リナ・インバースは魔を滅する者。決して、魔族とは相容れない者。
そう、リナ・インバースは魔族を倒さなくてはいけない。
身を護るために。そして、それが使命でもあるから。
数え切れないほどの魔族を倒してきた。
だけど、たった一人だけ、私が怖いと思う魔族がいる。

  ゼロス・メタリオム。
  私の、恋人―。



                           1・逢瀬



 また、来た。
リナは知らずと溜息を吐いていた。
もう幾度目だろう。彼が私の目の前に現れるのは。
何度目だろう。命と恋に揺れたのは。
ほら今日も。
彼は私の心を揺り動かして去っていくのだ―

「リナさん」
何が楽しいのだろうか、いつも通り張り付いた笑みを浮かべて。
…いや、それを聞けば『リナさんに会えるから』とか言うのだろう。
 そして私も、それを嫌がっていない。
彼のいつも通りの笑みが見たくて、この場所にいるのだ。
一般人ならまず近づかないような、夜の森の中。
辺りは暗くて、月明かりすら届かない。
あるのは闇と、私と、ゼロスだけ。
それを嬉しいととるか、恐ろしいととるか…。
選べない。解らない。
「こんばんは、ゼロス。時間通りね」
「ええ、リナさんとの約束を破るなんてこと、するわけないでしょう?」
恥ずかしいことを平気で口にするのは、彼の得意技。
そんなことを口にしながら浮かべる優しい笑顔は、多分、私だけのもの。
「今日も綺麗ですね」
「当然でしょ」
私が自慢するように胸をはると、ゼロスが優しく微笑んだ。
 私達の会話でもわかるように、私とゼロスはもう何度も出会っている。
しかも、ゼロスはリナ・インバース抹殺の使命を受けている最中だ。
だが、彼は私を殺さない。
毎日会う、この場所、この時間でだけは、そんな使命は役目を果たさない。
夜の闇が全てを隠すこの時間だけは、私はただの私として彼と逢瀬を重ねているのだ。
昼間出会えば、彼は戸惑うことなく私を殺すだろう。
私も、表情一つ変えずに、彼を攻撃するだろう。


                        これが、私達の約束。


「…ゼロス、私に会えなくて寂しかった?」
「ええ、気が狂いそうでした」
その答えに、苦笑しながらも嬉しさを露にする。
「私もよ」
「おや、リナさんからそんな台詞が聞けるとは思いませんでしたよ」
さやさやと、葉擦れの音がする。
私はこの音が好きだった。しんとした静寂の中で響いて、沈黙も不安も消し去ってくれるから。
「うるさいわね。私だって、たまにはこんなことも言うわ」
「怒らないでください。ただ、かわいいなあって思っただけなんですから」
腕を組み、顔を反らした私に、ゼロスが慌てたようにフォローをしてきた。
私はゼロスに視線だけ向けて、口を尖らせながら言葉を紡ぐ。
「………本当?」
「ええ、本当です♪」
「じゃあ、許してあげる」
言うや否や、私は組んでいた腕をゼロスの首に巻きつけて、その頬にキスをした。


                     いつのまにか覚えていた行為。
                       許して欲しいのは私の方。


唇を離すと、ゼロスが残念そうにする。
「おや、もうおしまいなんですか?」
「そう、おしまい」
「つれないですねえ」
意地悪そうに笑ってから、手を戻そうとする。
だがその前にゼロスに抱きしめられて、ついでに口もゼロスのそれで塞がれてしまった。
「ん…」
キスをしたのは初めてじゃない。
ゼロスが想いを表してくれるのは嬉しいから、夜に会う度唇を合わせていた。
だけど、触れれば触れるほどに、自分を止められなくなりそうで。そして、触れれば触れるほどに彼の存在が確かではなくなって、不安になっていくのだ。
だから、もっと深く唇を重ねていく。
甘い感覚で身体も頭も痺れて、不安になることも忘れるくらい。
”ただのゼロス”と会える一瞬の時間が、永遠に感じられるくらい。


                 深くなればなるほど、離れた時不安になるのに。
                     一瞬は、一瞬でしかないのに。


 一時ほどすると、二人の顔が、名残惜しそうにゆっくりと離れていった。
「時間です」
厳しい表情で、あっさりとそう言いのける彼。
「さようなら”ただのリナさん”」
「…またね”ただのゼロス”」
何度も交わしたやりとり。まだ、慣れない。慣れたくない。
 次に逢う時が怖い。


ねえ、今度の貴方は天使?悪魔?


「…リナさん、愛しています」
「ええ、私もよ」
いつ殺し殺される関係になってもいいように。いつも言い合うこの言葉。
この言葉を言わなければ貴方と戦わなくていいというなら、私は貴方を嫌いだと言うことも出来るのに。
どんなにもがいても、時を重ねても。その運命は変わらない。
 彼の姿が、闇に溶けていく。
一人残された私は、ただ空を見上げた。


   時は気紛れに私を苦しめて
   時は残酷に私を戒めて
   いつになればその呪縛から解いてくれるの?


                     …この逢瀬が…終わるまで…?


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なんか、変なところで区切れてますね。
それに私にしては珍しくキスシーンなどをいれてるし。
書いてるとこっちが恥ずかしいのであんまり書かないんですが(笑)

ではでは、ちょっと手が冷たくてやばいのでこれで去りますわ。
   神無月遊芽

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19383はじめまして。朱花 2002/1/6 21:52:05
記事番号19330へのコメント

はじめまして…なのですが、
実は神無月さまのHPの小説を読み逃げしていた朱花と申します。
ご挨拶が遅れてしまいまして、申し訳ありません。
久しぶりにこちらにお邪魔したんですが、
神無月さまのゼロリナ小説拝読させていただくことができて、
新年早々うれしいです(^^)
読んでいて切ないときもあるけれど、心に残る神無月さまの小説は
わたしにとって大好きな作家さんの一人でもあるので、
連載頑張ってください。

ところで、今回の小説。
最初っから、リナちゃん辛い立場におかれていますねー。
でも、彼女らしく前向きに生きているところ、
敵対する魔族に対しても、ゼロスに対しても自分の力で対処しようと
しているところが、すごく好きです。
正直、先が読めなくて、今回のお話を読んだだけでも続きが気になるのですが、
ハッピーエンド至上主義者のわたしとしては、
是非とも二人にとって幸せな形であってくれたらよいなと思います。

学校が始まると、感想を書かせていただく時間があまりなくなってしまうので、
今回、突拍子もなくご挨拶させていただきました。
読みにくい、訳のわからん文章であったことを、お詫びいたします。
それでは☆

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19393初めまして。神無月遊芽 E-mail URL2002/1/7 07:12:26
記事番号19383へのコメント

>はじめまして…なのですが、
>実は神無月さまのHPの小説を読み逃げしていた朱花と申します。
>ご挨拶が遅れてしまいまして、申し訳ありません。
 朱花様、初めまして。
 いえいえ、どうぞ御気にしないでくださいませ。
 でも、こうして感想を頂き、本当に嬉しいですわv

>久しぶりにこちらにお邪魔したんですが、
>神無月さまのゼロリナ小説拝読させていただくことができて、
>新年早々うれしいです(^^)
>読んでいて切ないときもあるけれど、心に残る神無月さまの小説は
>わたしにとって大好きな作家さんの一人でもあるので、
>連載頑張ってください。
 うう、そのようなもったいないお言葉を頂きありがとうございます。
 朱花様に見捨てられることのないよう、頑張りたいと思います。

>ところで、今回の小説。
>最初っから、リナちゃん辛い立場におかれていますねー。
>でも、彼女らしく前向きに生きているところ、
>敵対する魔族に対しても、ゼロスに対しても自分の力で対処しようと
>しているところが、すごく好きです。
>正直、先が読めなくて、今回のお話を読んだだけでも続きが気になるのですが、
>ハッピーエンド至上主義者のわたしとしては、
>是非とも二人にとって幸せな形であってくれたらよいなと思います。
 ありがとうございます。
 私もまだどんな風になるか解っておりませんが(笑)、ラストだけは、このリナちゃんの苦労や想いが報われる終わり方にしたいと思っております。

>学校が始まると、感想を書かせていただく時間があまりなくなってしまうので、
>今回、突拍子もなくご挨拶させていただきました。
>読みにくい、訳のわからん文章であったことを、お詫びいたします。
 いえ、感想を頂いて本当に嬉しかったです。
 私も学校が始まると少々時間がとれなくなってしまうかもしれませんが、連載終了まで頑張りますのでよろしければお付き合いくださいませ。

 それでは。
   神無月遊芽

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19396時の呪縛2神無月遊芽 E-mail URL2002/1/7 12:36:43
記事番号19330へのコメント

 こんにちは。
 時の呪縛2です。相変わらずまだ暗いです(^^;)
 しかし、どうしてこう人が小説を書いてる時に限って寒いんでしょう。
 また手が冷たくなってしまいましたわ…。
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                           時の呪縛 2




   人は自由にて笑う 人は束縛にて安心する
   何もかもにがんじがらめされれば人は安堵する
   だがそれでも人は自由を望むのだ
   束縛なる幸福
   だが 臆病な人間達はきっと 結局はそれを選ぶのだろう




                            2・指輪


 リナは宿屋の自室のベッドで、何をするわけでもなく横になっていた。
窓は開いていて、さやさやと葉擦れの音が聞こえ、カーテンがそよ風のようになびいている。
パステル調で描けるくらい、穏やかな日。穏やかな風景。
 だが、彼女の瞳の中の暗い炎は消えない。
「…そろそろ、旅立たなきゃね…」
彼女は言うや否やベッドから起き上がり、荷物の整理をし始めた。
「この街、結構楽しかったんだけどなあ…。でも、これ以上はいられないよね」
リナが今滞在しているディスティンの街は、運良く丁度祭りの季節を迎えていた。
色とりどりの花を街中に降らせ、綺麗に着飾った少女達が少年達のリュートにあわせて舞い、小物や食べ物を売る露店がいくつも開かれ、活気と笑いに満ちた人々が大通りを闊歩する。
 同じ街に滞在しつづけると魔族に見つかりやすいし、戦いになった場合街を犠牲にされるかもしれないので、さっさと旅立つつもりだったのだが、ついつい祭りの雰囲気に後押しされてしまい、もう3週間にもなってしまった。
「ばいばい」
荷物を抱え、窓の外に向かってそう呟くが…

   ぐきゅるるる〜

リナの腹の虫は、まだこの街が恋しいらしく、鳴いて訴えた。
「…御飯食べてから出発しようっと」
多少顔を紅くして、リナは荷物を肩からおろすと、扉を開けて1階の食堂に降りていった。



「おばちゃ〜ん!Aランチ10人前ね〜!!」
階段を下りながら大声で注文する私に、宿屋兼酒場を営業しているおばちゃんが負けじと大声で返事をする。
「はいよ、Aランチ10人前だね!相変わらずよく食べるねえリナちゃん!」
「えへへ…」
思わず照れ笑いを浮かべると、おばちゃんは早速注文されたものを作り始めた。
 リナはとりあえず手近なテーブルに座ると、辺りをぐるりとみまわした。
客が少ない。それが第一印象だろうか。
今は昼飯時だと言うのに、客は自分を除いて2,3人。…もしかしたらまだ寝坊してる奴などもいるかもしれないがこれはちょっと少ない。
だが、旅人は変わったことが好きだという性分の奴が多いので、祭りに浮かれて飛び出していったのだろう。
 そして、それに興味が無い奴は寂しく御飯、と。
「…ちょっと、寂しいかな」
ぼそりと本音を口にする。
今のような生活を始めてもうどれほどになっただろう。
街に滞在し、祭りも少しは堪能したとはいえ、それ故に名残惜しかった。
祭りのざわめきが、極力絶ってきた人との馴れ合いに導いていく。
だけど、こんなことじゃいけない。
何より巻き添えを食らうのは、この街になるのだから。
「はいよ!Aランチ10人前待たせたね!」
その声に一瞬体が竦むが、目に映った食べ物の数々に―少しだけ無理をした―笑顔を浮かべる。
「うっわー、おいしそう!いっただっきまーす!!」
言うや否や、メインディッシュの肉にかぶりつく。
美味しい料理を口にして、御飯を食べてる時は幸せだなあって思った。
「で、リナちゃんは今日はどうするんだい?」
何故か少々わくわくしたような雰囲気のおばちゃん。
「んー…そろそろ旅立とうと思ってるのよねー」
「え?”恋人達の奇跡祭”が目的じゃなかったのかい?」
「…なにそれ?」
耳慣れぬ言葉を聞いて、それを思わず問うた私に、おばちゃんが親切に説明をしてくれた。


 このディスティンの街の祭りは少々特殊で、”子供達の守護祭””夫婦達の絆祭”など、その立場にあたる人々を祝福する祭りが1週間ごとに交代で行われる。
元々の由来は人々が日々幸せに暮らせるようにという願いからこのような祭りに発展していったらしい。
”恋人達の奇跡祭”もその一つであり、この祭りの間に愛を誓ったものは永久に幸せになれるという言い伝えがあった。
 他人の恋愛話が気になるお年頃のおばちゃんだ。リナの恋が気になったのだろう。


「やだなあ、あたし、そんな相手いないよ」
軽く、引き攣った笑みを浮かべながら手を振り否定の意を示す。
するとおばちゃんががっかりしたように首を項垂れた。
「そうかい…残念だねえ」
だがすぐにすくっと顔を上げて笑顔で説得をする。
「あ、だけど相手がいない人は運命の相手に出会えるっていうらしいし、片思いの人は想いが通じるって話だよ?
 リナちゃんくらいの年齢なら、やっぱりこういう話は気になるだろう?」
「…まあ、ね」
否定するのが面倒だったのか、リナはとりあえず頷いた。
「せっかくこの街に来たんだ。せめて今日まではいないと損だよ」
そう言って厨房に戻っていったおばちゃんを見てリナはほっと溜息を吐いた。
 そして、苦しそうに言葉を吐き出す。
「あたしの恋は、どうなるんだろう」


                         苦しいくらいに愛してる
                   貴方がいなくちゃ生きていけないくらい大好き
                      そして貴方もそう感じてくれている


                   好きな人はいるわ 片思いなんかじゃないわ
                    誰よりも強い絆で結ばれていると信じてる
             だけど 私達が永久に幸せになるなんて 絶対にかなわないの…




                 私達に与えられているのは たった一時の幸せだけ





「…ねえ?ゼロス」
この場にいない想い人に、そう話を振る。
きっと、彼がいたなら笑顔で頷いてくれただろうと思いながら、とりあえず目の前の食べ物に手をつけた。




 夜の帳が降りると共に、彼は姿を現した。
私は薄いワンピース一つで、草むらで外の景色を眺めていたのだが、彼の出現と同時にそちらに目を向ける。
闇色の貴方、だけど決して周りの闇に溶け込まれることはなく静かに佇んで。
「…こんばんは、リナさん」
いつもなら絶対に現れないはずの時刻に現れた彼に、ついに戦う時が来てしまったのかと、リナは瞳を見開き体を震わせる。
だが、その警戒はすぐに解けた。その優しい瞳が、そうでないことを静かに語っていたから。
「…こんばんは。ゼロス。
 ……時間が早かったから、びっくりしたわよ」
「すいません。今日は少し用事があったもので」
言うと、ゼロスはズボンのポケットから小さな箱を取り出した。
「……これは?」
「開けて見て下さい」
言われるままに、箱の包装を解き、その蓋を開けた。
「………」
小さな、指輪だった。
シルバーのリングの上に、ちょこんと紅い石が鎮座して、その周りを小さな透明な石と黒い石が取り囲んでいた。
「いやあ、このへんをうろうろしていたら
 『これを彼女にプレゼントすればプロポーズも成功間違いなし』
 なーんて売り込まれちゃいまして」
「ゼロス…」
じんと、あついものがこみあげてくる。
「受け取ってもらえますか?」
リナは笑顔で返事をすると、左手をそっと差し出した。
白い指を指輪が包む。


  ドーン…


ゼロスに指輪をはめてもらうと同時に、夜空を大輪の花火が飾った。
「…リナさん、花火ですよ」
言われて夜空をみあげる。
そのルビーの瞳が、ふと、細まった。



   綺麗。何もかも。
   あの夜空に輝く星々も。闇を打ち消して大輪の華を咲かせる花火も。
   私の指で光る絆も。目の前の貴方も。全て。


「…うっ…ふぇぇ……」
途端、私は声をあげて泣き出した。
心配したゼロスが、私の顔を覗き込む。
「リナさん…?」
「……ひっく…」
こんなに、こんなに。
「…大好き…」
こんなに、大好きなのに。
「……僕もですよ」
私の顔を自分の胸におしつけて、優しく手で包んでくれた。
そして、涙は止まることを忘れてしまう。


花火が夜空に咲いている間
私はその光に隠れるように 彼の胸で泣いた



     大好き 大好き 大好き
     こんなに 大好きなのに
     どうして?


     貴方がくれた指輪は、まるで
     『戦ってどちらかが死んでも、ずっと愛している』
     そう、言っているように見えた



                          恋人達の奇跡祭
                      与える祝福は 愛の証か諦めか


******************************************
 続きます。
 やっぱり暗めだと書きやすいですわね。
 どうも幸せ一杯というのが書き辛くて。

 では。
  神無月遊芽