◆−おひさんです。−珀 (2002/1/5 10:45:26) No.19361
 ┣ある一つの、剣物語。−珀 (2002/1/5 12:04:50) No.19362
 ┃┗ある一つの、剣物語。−珀 (2002/1/5 12:32:03) No.19363
 ┃ ┗ある一つの、剣物語。−珀 (2002/1/5 13:02:18) No.19364
 ┃  ┗ある一つの、剣物語。−珀 (2002/1/5 13:28:49) No.19365
 ┃   ┗ある一つの、剣物語。−珀 (2002/1/5 16:51:46) No.19366
 ┃    ┗ある一つの、剣物語。−珀 (2002/1/7 15:21:23) No.19400
 ┗おおおおおお!!−華玉 むつき (2002/1/10 05:17:42) NEW No.19443


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19361おひさんです。E-mail 2002/1/5 10:45:26


お久しぶりです。せんちひがおわって、んでもって、
次はしんせんぐみだす。
頑張って書きます。でわ!どうぞ!!!

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19362ある一つの、剣物語。E-mail 2002/1/5 12:04:50
記事番号19361へのコメント

「渉!!!!渉!!!」

【あぁうるさいなぁ・・・まだねとってもええ時間やんけぇ・・・】

近藤 渉は中3、受験生である。冬休みの今、寒さから逃れたいがために
自分の布団の中から出てこようとはしない。無論、母の言う事など聞く筈が
ないのである。

「渉!はよおきな!!あんた今日塾なんとちがうん!?」

はっとした。そういえば今日は塾での正月休が明けて、確か冬期講習が始まる
日ではなかったろうか・・・・?

「今・・・・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

階段の下まで渉の絶叫は聞こえた。携帯を見ると、彼女からの着信が
あるが、今はそんなこと関係ない。渉は信じ込んでいた。
今の時刻は9時45分だと。実際は7時45分なのに。
急いで服をたんすから引きずり出す。灰色のだぼっとしたかんじの、
今流行っているずぼんに大好きなブランドであるPIKOの
白のトレーナー。靴下は下で履けばいいと、階段を一気に駆け下りる。

「お兄ちゃんおはよぉ。」

妹の春香が熊のぬいぐるみを抱きしめて言った。

「あぁおはよう春香。兄ちゃん今それどころとちがうから塾帰ってきてから
 遊んだろうな〜。」

「渉、なにそんなにいそいでんの?」

母の冷ややかな言葉が渉を振り向かせた。

「9時45分やのに急がん馬鹿はおらんとおもうんやけど。」

「あんた時間読めへんの?」

不思議な顔つきで時計を睨むと、そこには思い切り7時55分と表示されている。
成る程、渉のはやとちり。椅子に腰掛けて、手元にあった菓子パンをかじる。
春香が寄ってくる。

「お兄ちゃん♪春香と遊ぼう♪」

幼稚園の年少である妹の春香は、母に似て美しい顔立ちをしている。
母は色白で目が大きく、髪もまじりっけのない黒髪。内緒だが自慢の
母である。

「渉、なにをさけんどんのや?」

父が背広を着てあくびをしながら洗面所から現れた。渉は典型的な
父親似。切れ長の目、引き締った口元。広い肩幅。長い手足。
そん所そこらの男よりは渉は絶対格好いい。本人は気付いていないが。

「なんでもあらへん。」

菓子パンをぼんやりとかじりつつも睡魔と闘う。
髪の寝癖も直したし、顔も洗ったし、歯も磨いたし、彼女へメールの返信も
した。もはや完璧。しばしの間、春香をくすぐったりして遊ぶ。


「渉〜。康平君たちきたよ〜。」

春香のそばにおいてあった塾用の鞄をもって靴を突っかけ、自転車の所まで行くと
いつもと同じメンバーが渉の自転車のかごになにやらしている。渉がきた事も知らずに。

「おい。なにしてんねん。」

「お〜渉君!!!おはよう!!!」

「おはよう。なにしてん。」

渉に睨まれると、かなり怖い。普通の人なら動揺すると思うほど。

「なんもしてへん。」

「したやろ。」

「してへん。」

「したんやな。充宏君正直やなぁ。なにかな、これ。この雑草。」

「庭の雑草をかごの中に入れて悪戯。」

「馬鹿。」

渉は笑って雑草を捨て、友人とともに塾へ向かった。
これから起こる、ある人たちとのハプニングも知らずに・・・・・・。

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19363ある一つの、剣物語。2002/1/5 12:32:03
記事番号19362へのコメント

ピピピ・・・・ピピピ・・・

志野の頭の上で、目覚し時計が鳴る。豹柄だらけの志野の部屋には朝日がこうこうと差し込んでいた。

「あぁくそぅ・・・・。塾とか・・・・」

目覚し時計を止めて、赤い髪の毛をかきあげる。地毛で赤い志野の髪は志野が唯一自慢できる物だった。クローゼットから志野の好きなブランド、やはりこれもPIKOのパーカー、ずぼんを取り出して腕に掛ける。志野の服はすべて男物で統一されている。もの凄い睡魔に襲われ、またしてもベットに倒れこんだ。

「ねむいぃ・・・・。」

つぶやいて視線をやった先には、渉の写真がある。志野の愛しの君は渉。近藤渉なのだ。失恋したが、まだ諦められずにいた。

「・・・・おはよ、渉君。今日も一日がんばりまっかぁ!」

もともと関西弁で喋る志野は人より数段姐御肌。男よりも女にもてる。

「志野!おきなさい!!斎藤 志野!!」

「おきとるわ!うっさい!!」

ドアをあけて大声で叫ぶ。したから母の笑い声が聞こえた。ため息をついて部屋を改めて見渡すと、部屋の一角だけ豹柄ではないところがある。剣道の竹刀と防具が積まれている。七月まで剣道部の主将として活動していた志野は、剣道の初段を持っている。常時ベスト8の人間だった。

「おはよう。」

薩摩芋を蒸かしながら母は言った。

「おはよぉ・・・・・。」

「塾やろ、はよしぃ。」

「ん〜。」

「あんた、学校のジャージで寝るの、いいかげんやめたら?」

「ええやんべつに。関係あらへん。」

エメラルドグリーンのジャージのずぼんの裾は横が裂けて、志野の不良振りを物語る。上の長袖は斎藤という苗字がもうほとんど無い。

「はい、ご飯。」

「あぁおおきに。」

顔を洗うためにヘアバンドで前髪を上げる。水で顔を洗って、少し目がさめた。CDをかけまくり、テンションをあげる。時間は7時55分。弟達はまだ寝ている。男系家族に生まれたせいか、志野は必ずしも女の格好をしようとはしないし、どんな改まった場でもぜったい自分のスタイルを崩そうとはしない。渉の前でも。

「おかん、これ・・・・なに?」

「甘海老の味噌汁。」

時折母は、訳のわからないものを作るが結構美味い。

「訳分からんもん作んなよ・・・。」

「おいしいで、絶対。」

「その保障は?」

「200%!!!」

自信満々で母は叫ぶ。寝起きの志野にはきつい声。寝癖を直し、歯を磨き、PCをいじり、自分のHPの更新をわずかにする。あっというまに時間はすぎて、もう塾へ行く時間。冬期講習は辛い。行くとき寒いし、と母に頼んだカイロは弟に使われてすでに無い。

「いってくんわ〜。」

「はいよ〜。」

空はみずみずしい色をしていた。風が吹くと、志野は色々考える。でもある一つの事件には考えはたどり着かずにいた。

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19364ある一つの、剣物語。2002/1/5 13:02:18
記事番号19363へのコメント

土方 翔太の部屋はとんでもなく殺風景だ。X−JAPANのポスターが一枚、ベッドと勉強机とタンスだけがぽんぽんと置かれている。目を覚ますと、今日は塾の始まる日だと言う事に気付いた。手を伸ばした所においてある煙草を取り、一本に火をつける。まだまだ時間はあるが、塾が遠いから、すぐに準備を済ませなければならなかった。煙草の一本をすい終えて、階下へ下りると、誰の姿も見当たらなかった。家族全員まだ寝ているのだろう。適当に何か食べようと翔太は冷蔵庫を開ける。入っていた果物を適当にかじって準備に入る。翔太はぼぉっといてした。翔太にとって、塾は非常に楽しい所だ。先生には面白い人が多いし、なんか気のあう女もいる。一度しか話した事は無いが、あの子はかなり面白い子だった。もう一本煙草を吸う。

「なんか結構髪の毛の赤い子・・・・。斎藤・・斎藤 志野か。」

煙草を吹かしながら翔太はつぶやいた。なんにせよ、あの子には今日も会えるだろう。話したいとは思っても話すきっかけもないし、きっかけがあってもあっちが話すような素振りを見せないから話せない。結局志野と一緒にいる先生としか話さないのだ。今日こそは話せるようにしたいとは思うけど、翔太の友人が翔太にくっつきまわすからどうだろう?といったかんじである。

「服どこだ・・・・?」

赤いパーカーを羽織って、身支度を済ませてCDをかける。風が強い。自転車で体が持つだろうかと翔太は少し心配になった。普段は人よりもっとテンションの高い翔太はもうテンションが上がってきていた。

「くっ・・・あははははは!!」

と大声で笑う。鞄を肩に掛けて、翔太は居間のソファに寝転んだ。そのうち友人の一真たちが迎えにくる。そうしたらおきたら良いのだ。別になんてこと無い。二度ねしてやれと翔太はまた眠ってしまった。30分後、翔太は目を覚ました。やけに
玄関のチャイムが五月蝿い。一真たちだと感じ取り、すぐに外へ出た。

「何してんだべ。お前。」

「ねとったぁぁぁ!」

「阿呆。おきとれ。馬鹿。」

「そこまで言うなさ。つらい。」

いつものテンションでかごナシのママチャリにのって、一真たちと話しながら塾へ向かう。母の意見で荒れ狂ってばかりいないで冬期講習行きなさいと追いやられた冬期講習はまだまだ終わらない。ほとんど毎日3時間勉強しているが、族上がりの高橋、同じく一真、遼。まだまじめな拓也といても、翔太は不真面目さをアピールする。絶対におとなしくはしていないのだ。おそらく今日も塾の階段でぷかぷかしているのだろうと本人達は計画を立てる。10分もしないうちに塾長か室長に見つかって連れ戻されるのであろうが。でもすぐにまた走って階段へ戻るのが、彼らの日課だった。そういえば、偶に志野もサボっているのを見る。友人と一緒にベランダで喋っている。はじめてあったときはなぜか照れ臭くて顔を見る事も最初は侭成らなかったけど、志野の気付いていないときにベランダでぽけらぁとしている志野を何度か見かけた。可愛いとか綺麗とかそういうタイプではなく、かっこいいといった感じの志野はどこか翔太のタイプだった。

「土方?どなした?」

「ん?」

「ぽけらぁ。」

「あぁ眠いだけ。一真、煙草買っていってええか?」

「ええよ。」

自動販売機のところで煙草を購入し、コンビニでいつもの飲み物とお菓子を買う。これであとは授業をふけるだけだ。でもそれから翔太のテンションはあがる事が無かった。自分の体の中にめぐる血液が沸騰しそうなほど熱い。熱さが志野に向けられているのかもしれないが、それ以外にも何かあるきがしてならなかった。



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19365ある一つの、剣物語。2002/1/5 13:28:49
記事番号19364へのコメント

朝っぱらからサッカーボールを蹴っていた沖田 康孝はサッカーのジュニアユースのキャプテンを務めている。康孝も渉たちと同じ塾へ行かなければ成らなかったが、康孝はサッカーばかりして居たかった。サッカーウェアは風を通さず暖かい。町内の走り込みを終えてリフティングも終えて、私服に着替えると塾へ行く時間が迫っているのに気がついた。

「やばい・・・母さん行くわ。」

「送っていこうか?自主練つかれたでしょう。」

一本に髪を束ねた母がにこりと微笑む。おしとやかで、花のような母。康孝は小さい頃から母の誇れる男になろうと思っていた。そのとおり、今康孝はプロのジュニアユースからスカウトがくるほどのサッカー選手になっていた。

「いいん?そんなら送ってって?」

「そやったらもうちょっとまっとってな。」

母が言うと、康孝はうなづいた。決してマザコンだとかそういうわけではない。祖父に柔道を強いられて、嫌で嫌で泣いてばかりいた頃に母がかばってくれたのを本当に心から恩に着ていたからである。今の生活はすばらしいと康孝は思っていた。何をとっても失うものは無いと思っていた。でもそのうち崩れるのだろうから心構えだけはつけないと、と康孝は何時も自分に言い聞かす。テレビで放送されるニュースに耳を傾ける。無口な康孝は本当に無口。とことん無口。たどり着いても無口。絶対に喋ったりしない。

「康孝、いこうか。」

母が車の鍵を持っていった。何も言わずに立ち上がると、靴をはいて車庫へ行く。母の身長をとうに追い越して、母を後ろから見下ろすようにあるく。何時から自分はこんなに身長が伸びたのだろうかと康孝は自分で自分の事が不思議になるときがある。クラスでも自分は背の高い方で、運動だってそれなりに出来るけど、なぜか康孝は剣道部が理解出来ないで居た。たしかサッカーチームで同じ、斎藤正誇の姉は剣道部の主将だったはずだ。同じ塾にも居るし。志野っていったっけ。と康孝は考えに考えていた。友人の中道悠貴の弟も同じサッカーチームにいる。その弟の貴之の友人で悠貴の友人である一人の男は俺と同じくらいの身長だったかなとまた色々ややこしい空想をめぐらせる。近藤渉とか言う奴。あいつくらいしか身長の会う奴は居なかった。

「ねぇ、康孝。」

母が急に話し掛けてきた。

「あんた、ジュニアユース、行くのやめてくれない?」

「・・・・・・なんで?」

「お父さんね、なんか単身赴任いかなあかんみたいなん。おかあさん一人になるし、おじいちゃんの介護もある。あんたおってくれるとありがたいけど・・・。」

母の急な発言に、康孝は妙な焦りを覚えた。せっかくスカウトも来たのに・・。
そこはもう答えなかった。答えると、なぜか嫌になりそうだったのだ。授業料免除、サッカーはやりたいように出来る。こんな機会、めったに無いのに・・・。
そう思っていた瞬間。心臓が妙におかしくなった。拍数が一気に増えた。言われた事の悲しさなのかもしれないとまた落ち着き払って康孝は捕らえた。この後、すべての真実は明かされる。この胸騒ぎとおなじに・・・・・・。

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19366ある一つの、剣物語。2002/1/5 16:51:46
記事番号19365へのコメント

AM9:25・・・・

塾の階段の前で翔太は一真たちと話しこんでいたし、渉や康平は自動販売機の前で飲み物を買って飲みつつ盛り上っていた。康孝は螺旋階段に座りサッカーの本を読み、志野は自分の自転車のところでいつものぽけらぁをかましていた。お互い顔見知りではあったとて話した事もそうそう無かったし、はっきり話すような事も無い。まだ深く話し込んだといえば翔太と志野くらいであろう。五分間の休憩を終えて授業へ向かおうとするものの翔太達が座り込んでいて簡単には通れそうに無い。男同士である渉たちはお互いを目で殺すようににらみ合い通っていく。無表情に康孝が続き、最後に志野。

「すんません、どいてもらえまっか?」

ニューヨークメッツの黒い帽子を目深にかぶり声を押し殺すようにして志野が喋った。みるみるうちに翔太の顔色が変わる。そして一真達もすぐに道を開けた。

「おおきに。」

志野の通った後、一真達はひゅうひゅうと口笛を吹く。

「なにあの女!!かっこえ〜!!!」

「めっちゃ関西弁やった!!」

一真や遼達が騒ぎ立てている中で一人、翔太は息を呑んでいた。こいつらは何も感じては居なかった。彼女から発せられる威圧感というものを・・・・・。

「おおきにって上手い事使えヤンよな〜。」

高橋が感動したといわんばかりに手をたたく。その頃、当の志野は渉の斜め前の席にあたってしまい、死ぬような思いをしていた。

【渉君近いな・・・・どないすんねん・・・・・】

帽子を脱いで椅子に座る。渉も志野を横目で見ていた。渉が志野の気持ちに気付いていたからだ。赤い髪がさらさらと動くのを見て、ため息をつく。渉の後ろの席には康孝が控えていた。そして翔太は志野の隣りの席。

「おはようさん。」

と軽く担当の先生に挨拶を交わして椅子に座ると、志野と目が合う。15年間男の中で育ってきた彼女の目は強いとしかいえない。恐ろしささえ感じる、そんな目。でも翔太はなんとも思わなかった。それから二時間、何も起こらなかった。二時間は。たったの二時間の間は・・・・・・・。
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・
 3時間目に突入し、翔太達も疲れ始めていた。康孝は普通に勉強を続けていたが、渉と志野はフードをかぶって爆睡、翔太は一真達の所で喋っていた。まずこの現象がおきたのは、翔太だった。

       土方・・・・・・・土方 歳三・・・・・・・・

そんな声が聞こえて、翔太が気付いたときはすでに何もない真っ暗な所に居た。そしてすぐまた気を失った。

「土方君倒れました!!!」

本部席内が殺伐とした空気に包まれる。志野も翔太を知っていたからなんとなく心配になった。興味深げに立ち上がった渉を突然の眩暈が襲う。

「あれ・・・・?なんか・・・・」

そういったきり、渉もばたんとその場に倒れこんだ。

「渉君!?大丈夫かぁ!?」

駆け寄った志野を激しい頭痛が襲う。眩暈も同時にしてきた。

「なんでや・・・なんでうちもなんや・・・・・倒れへんで・・・・」

とはつぶやいたものの、渉に重なるように気を失った。先生達が気を取られているうちに康孝にさえその症状が及んでいた。

「せん・・・・・せ・・・・」

声の出ないうちに気を失った康孝は自力で先生の所まで這っていき、やがてことんと気を失ってしまい、塾内は大騒ぎになってしまった。彼らの意識は今どこにあるかとも知らずに。
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・
 「う・・・・・・」

康孝が最初に目を覚ました。なぜこんなにも周りが騒がしいか・・・・・・。ぱっと目を開けると、そこには侍の格好をした人や、着物を着た人たちが追いかぶさるように康孝達を見つめていた。

「お・・・うおわぁぁぁ!」

大声で叫んだ康孝は飛び起きた。

「なんなんや、この子らは。」

「化け物か?」

「いやいや、神様かも知れん。」

口々に交わす言葉が怪しすぎると康孝は思い、身の回りを見渡すと、三人も居るではないか。隣りに居た渉を揺り起こすと、渉も同じように絶叫した。渉が翔太を起こし、翔太の意識がはっきりするまで肩をゆすり続けていた。意識が段々はっきりしてきた翔太は驚きの余り目がてんになり、声が出ず、口を鯉のようにぱくぱくさせているだけである。結局志野を起こしてみたが、志野など叫んだかと思ったら渉に抱きついて離れない。

「ほんまになんなんや、この子らは・・・・・。」

「だから神様やて。」

「ほんな阿呆なことあろかさ。」

「あの・・・・・・」

「喋った!!!!!」

渉の切り出した言葉に今度は侍達が絶叫する。

「話を聞いてはくれませんか?」

「なにをいうか!!!この化け物め!」

「ひ・・・・土方君・・・・・・・・ここって・・・・日光江戸村?なんかな?俺そう思う・・・・。」

「んな阿呆な・・・・だって三重県から一気にここまでは無理や。」

「馬鹿なこと言うな。殺されるぞ。」

男三人が馬鹿らしい会話を交わしているうちに、志野の姿が忽然と消えた。そして目前でおきている、一つの真実を受け止めることとなる。

「やぁれるもんならやってみぃやこのくそあんご!!」

「なにをいうか!警察隊に向かって!」

「くそ無礼や言うとんねん!話聞かんかい!」

と絶叫している志野を発見。力で志野を押さえ込み、さぁ大騒動になってきたという頃だった。ざわざわと人垣がほぐれていく。何事かと思ったとき、目の前に颯爽と現れた軍隊が・・・・・あった。

そのうちの一人の顔を見た瞬間、志野の声が響き渡り、その声で叫んだ名前を男三人も聞くことになる。

「こ・・・・近藤・・・・・・」

「あっ?近藤は俺や!近藤渉!俺やぞ!!」

「新撰組局長・・・近藤勇!!!!!」

この人の名前を知らないはずが無かった。かの有名な池田屋事件。彼に憧れる人も多い。志野も同じ剣の道を歩んでいるという事で近藤勇は憧れに憧れている人物だった。

「なぜ私の名を・・・・。」

「しゃべったぁぁぁぁぁぁぁ!」

四人が絶叫してまたしてもパタンと倒れてしまったのを、その近藤勇たちが抱き上げてある屋敷へと連れ込んだ。

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19400ある一つの、剣物語。2002/1/7 15:21:23
記事番号19366へのコメント

 気がつくと、そこはかなり広い部屋だった。次に最初に目を覚ましたのは渉。一瞬自分の部屋のように見えたのだが、まずそんな事は無かった。掛け軸に書いてある絵を気にして渉は立ち上がろうとしたが、隣りに志野が寝ていた。踏まないように気を払って、掛け軸の所へ行く。綺麗な女の人の絵であった。優しそうな雰囲気が異様に自分の彼女と似ていて、一気に絵の中に引き込まれたような気がした。よく見ると、その女の人の手を、男の人が引いている。手をつないだ二人の向こうにもう一人女の人が居る。・・・・・泣いている。渉は後ろを振り向いてみた。眠っている志野は、きっとこの泣いている女の人なのだろうと思った。

「気がついたか、男。」

気がつくとふすまに肩をかけて立っている男の人がいた。近藤勇である。

「あぁ・・・はい。おかげさまで。」

「君も近藤と言うのか。君の名前は?」

「俺も近藤です。近藤渉といいます。」

「そうか。」

座れと促して、近藤勇氏は渉の横に座った。しばしの沈黙は、渉にとって最高の苦痛だった。もし仮に、この人が本物の近藤勇だったとしたら俺は凄い人の隣りに座っているのだと言う気持ちもあるにはあった。

「・・・・・・君は、どこからきたんだい?」

勇氏が優しい口調で尋ねる。渉は何をどういえばいいのかよく分からなかった。日本だと言えばここも日本だし、三重県だと言えば、この時代ではわからないだろう。四苦八苦しているうちに、勇氏は声を上げて笑った。

「分かっている。君達はこの時代のものではないんだね。」

渉は驚きを隠す事など到底無理だと言う顔をして見せた。

「はい。俺は・・・俺たちは。この時代のものではないです。この時代の何百年も後の人間です。だから俺は何でここに居るのかもわからないし、何をしたかも覚えていません。ただ塾に行って高校生になるために勉強していただけなんです。でもいきなりこんな所に連れてこられて気を失いっぱなしで・・・・・・。」

いっきに喋ったせいか、酸欠を起こしている。勇氏は相変わらず笑い続けている。何でこの人はこんなに笑うのかと渉は不思議になった。

「君達の現れる一年ほど前だ。予言されていたよ。」

「予言?」

「この町の遠く離れた所に腕の立つ占い師が居てね。予言者でもある。彼は私たちにこういった。”一年後の今日あたり、違う時代からそなたたちの血を引いた四人が現れる。男三人、女一人だ。”ってね。まさかとは思っていたけど、やはり君達だったか。」

「まじで!?」

「まじで?」

「あっ、すいません。俺たちの言葉です。」

渉は説明した。勇氏は興味深げに聞いていた。話が盛りに入ってきた頃、二人は完全に打ち解けていた。渉は勇氏の事が本当に好きになっていた。そして気付き始めていたのだ。俺はこの人の血を継いでいる人間なのだと。

「ここ、どこや?」

かすれた関西弁が聞こえた。志野がおきた。赤いパーカーがクシャクシャになっている。目をこすりながら渉の方を見ると、片思いの相手と憧れの勇氏が並んで座っている。志野にとって息の止まりそうな光景である。

「近藤勇氏・・・・・うそっ・・・・」

志野のかすれた声が勇氏に受けた。叉笑い出した勇氏はそりゃあ笑い転げている。何がなんだかわからないうちに自分が笑いをとったのだから、志野にしてみても訳のわからないことである。ぽけぇとしていると、勇氏が手をたたいて誰かを呼んだ。その名前を聞いた瞬間、志野の目に涙がこぼれたことはいうまでもない。

「一!一!!!」

走ってきてふすまを開けた人は剣を持たせたら誰よりも強いと言われた斎藤一。

「局長、この女子が俺の血を継いだ子・・・・・。」

「そうだ。」

事の全てを話してもらった志野は目に涙を一杯に浮かべながら納得した。

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19443おおおおおお!!華玉 むつき 2002/1/10 05:17:42
記事番号19361へのコメント

珀さ〜ん!どうも華玉といいます。
おもしろいですね(^^)なんかとても続きが楽しみです。
近藤勇かぁ!斉藤一も!いいですね!!
主人公らしき少年もなんかいい感じだし、かなりはまりそうです!!
私的には女の子もいい感じで・・・とにかくがんばってください!
期待してます!!! 華玉