-ガウリナ小説『仮面舞踏会〜風と炎のダンス』-山塚ユリ(4/6-00:30)No.2067
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2067ガウリナ小説『仮面舞踏会〜風と炎のダンス』山塚ユリ 4/6-00:30

ははは。ガウリイとリナがいちゃいちゃしてるだけの、起承転結あったもんじゃない、という話です。
それでもいいとおっしゃる方、いらっしゃいませ。


セイルーン王宮の大広間。オレは壁際にぼーっと突っ立っていた。
着飾った人たちが笑い、酒を飲み、楽隊の音楽に合わせて踊っている。
オレはなんか場違いなところにいるような気がしてとまどっていた。
「なにぼんやりしてるんですか、ガウリイさん」
背中をたたかれてふりかえると、紫のドレスを着た少女が立っていた。
顔は銀色の仮面に隠れていて、誰だかわからない。
「え…と」
「やだ、わたしですよ」
仮面の下から、見覚えのある顔があらわれた。
「なんだぁ、アメリアか。よくオレだってわかったな」
今のオレの格好は、真っ白のタキシードに青い蝶ネクタイ。金髪を後ろでまとめ、青い仮面で目元を隠している、というものである。
今夜は王宮で仮装…じゃなかった、仮面舞踏会があるっていうんで、アメリアがオレたちを招待客扱いでひっぱって来たのだ。
ちなみに衣装は借り物だったりする。
「そりゃわかりますよ。ガウリイさん背も高いし、その金髪は目立ちますもん」
「オレはわかんなかったなあ。見違えちゃったぞ」
「ふふ。しかし、わたしのことがわからないんじゃ、リナさんを見たらさぞかしびっくりするでしょうね。
あ、うわさをすれば、リナさんですよ」
オレに向かって歩いてくるリナを見て、オレは息をのんだ。
燃えるような赤いドレス。ひらひらした長いスカートがリナの歩調に合わせて揺れている。
アップにした髪に黒いリボン。黒の仮面で目元を隠して口紅までつけているが、それは間違いなくリナだった。
「…なんか、はずかしいな、こういうの」
「わああ、すごく素敵ですよ、リナさん。ね、ガウリイさん」
リナはなにか言いたそうにオレを見る。が、オレが絶句しているのに気がつくと、赤い顔をしてうつむいた。
ひょっとして照れてんのか?
「さ、踊って来てくださいな」
アメリアはそう言って、オレとリナを人と音楽の中に押し出した。

そういうわけで。
オレはリナと踊っていた。
オレの腕の中で、リナが軽やかにステップを踏む。
「けっこううまいんだな」
「どこに出てもはずかしくないようにって、姉ちゃんにしこまれたからね。
それより、ガウリイがダンスなんて知ってるほうが不思議だわ」
明日をも知れぬ傭兵時代、酒場の女の歓心を買うためにダンスを習ったのが遠い昔の出来事のような気がする…。
「昔ちょっと習ったんだ」
「ふうん」
リナはそれ以上追求しなかった。
動機はともかく、ダンスを知っていてよかったと思う。
でなきゃリナとこうして踊ることなんてできなかったもんな。
音楽に合わせて、リナのスカートがまるで炎のように揺らめく。
黒い仮面のせいか、見慣れない髪型のせいか、それとも背中の大きく開いた深紅のドレスのせいか、
今夜のリナはいつもより大人っぽくみえた。
オレは…いつものリナのほうがいいけど。
「なんかそうしてると…火の妖精みたいだな」
「ほめてるの、それ」
リナがくすりと笑う。
「あたしが火の精だったら…そうね、ガウリイは風の精かな」
「なんで」
「ぼーっとして、とらえどころがないからよ」
なんだよそりゃ。
「じゃあアメリアとゼルは」
「アメリアは水でゼルが土ってところかな」
なんか魔法に関係があるものを言っているらしいがよくわからん。
「そう言えばアメリアたちはどうしたんだ」
「あっちで踊っているわよ」
リナの視線を追うと、ピエロと踊っているアメリアがいた。
「ゼルは」
「何言ってんの。あのピエロ、ゼルじゃない」
へ?そーなのか?
顔真っ白に塗って帽子までかぶってたら誰だかわからんぞ。
って、もしかしたらわからないのはオレだけかもしれんが。
「アメリアってばこの仮面舞踏会、ゼルのために計画したんじゃないかな。
だって普通の舞踏会だったら、ゼル絶対に出ないもん」
そういうもんかな。
音楽が鳴りやんだ。楽隊が次の曲の準備をしている間、踊りも小休止。
「なんかのどかわいちゃった。あ、あれ飲みた〜い」
リナは銀盆持って歩き回るボーイに向かってぱたぱた走っていく。
あーゆーところは子供だよな。
「あ…あの」
着飾った女性(もちろん仮面をつけている)に声をかけられた。
「次の曲、一緒に踊っていただけますか?」
ふと見ると、オレのまわりに女性が集まっていた。
オレはリナの顔を見る。
「別にいいんじゃない?あたしは疲れたからここで休んでいるわ」
と、リナ。妙に寛大だなあ。
「せっかくの舞踏会なんだし、こんな機会ってめったにないでしょ」
「そうか?じゃちょっとだけ」
オレは名前も知らない女性の手を取ると、再び広間の真ん中に進んでいった。
一曲踊り終わると別の女性に声をかけられた。次の曲はその女性と踊る。
なんだオレってけっこうもてるじゃん。リナと一緒にいるとそーゆー自覚なくなるけど。
これを見て…ちょっとは妬いてくれるかなリナは。
何人目かの女性と踊っていると。
ガシャアァン!
なにかが割れたような音が広間に響きわたった。
踊りの波が止る。
「ちょっと失礼」
相手の女性(例によって名前は知らない)から離れると、オレは音のしたほうに向かっていった。
壁際の人だかりから、思った通り、リナの声がする。
「そんなんでこのあたしを口説こうなんて、25万8千4百年早いってのよ」
…どっからそういう数字が出てくるんだか。
「はい、ごめんよ」
オレは人をかき分けてリナのそばに寄った。
「なにやってんだよ」
「こいつがどーしても一曲踊ってくれっていうから相手してやったのよ。
そしたらいい気になって、二人だけでどっか行こうなんて言うのよ。冗談じゃないっつーの」
リナの前で、ちょっと軟弱そうないいとこのお坊っちゃんがひっくり返って絶句している。
興奮したリナがついでにたたき落としたんだろう、床には割れたグラスやら銀のお盆やらが散らかり、おそれをなしたボーイさんが逃げていくところだった。
オレはそのお坊ちゃんに手を貸して起こしてやる。
「すまんな、保護者のオレに免じて、かんべんしてくれないか?」
「…こっちだって、こんな乱暴な子だと知ってたら、声なんかかけなかったさ」
「なんですって」
いきり立つリナの手を引く。
「あんたも大変だよな。こんな無分別な子の保護者じゃ」
オレがなんか言うより、リナの足のほうが早かった。
電光の速さで、お坊っちゃんの股間にリナの蹴りが命中。あーあ、こりはひどすぎる…。
「逃げるぞ!」
まだなんかわめいているリナをかかえて、オレは広間を飛び出した。

「やれやれ」
オレたちは王宮の庭にいた。
花壇や噴水や植木が、魔法の明かりに照らされて夜の闇に浮かび上がっている。
もちろんあたりには誰もいない。
「あんなところで騒ぎを起こさなくたっていいだろうに」
「だってえ」
リナがふくれる。
やっぱりオレがついていないと心配だよなこいつは。
「どうなったかな、パーティー」
音楽が聞こえる。リナの立ち回りはアトラクション程度で終わったらしい。
「台無しにならなくてよかったよな、まったく」
「そうね、せっかくアメリアがゼルと踊っているんだし」
人いきれにほてった体に夜風が心地いい。
「さあ、これからどうする?」
「あたしはもう戻れないわ。ガウリイ、ダンスの途中でしょ。戻っていいわよ」
「オレだけ戻ってどうすんだよ」
魔法の明かりに照らされた芝生が目に入る。
「踊らないか?」
オレはリナに声をかけた。
「ここで?」
「いいんじゃない?音楽だって聞こえるし」
オレはリナに手を差し伸べた。冗談めかして言う。
「一曲踊っていただけますか?炎の妖精さん」
リナはスカートを軽くもちあげ、ひざを折って会釈するとにっこり笑った。
「よろこんで。ハンサムな風の精さん」
オレは芝生の上でリナと踊った。
オレのリードで、リナの体が軽く宙をすべる。
リナがオレの思い通りに動くなんて、めったにあることじゃない。
オレはリナを抱いて踊り続けた。
魔法の明かりの下、ステップにあわせて、リナのスカートが炎のように舞い上がる。
リナがターンするたびに、その炎がオレにからみつく。
オレの白い服に燃え移りそうだ。
と、何かにつまずいたのか、リナがよろけた。
あわてて抱きとめると、くたり、と、オレの胸によりかかる。
「おい」
リナは動かない。
「疲れたのか?ベンチで少し休もうか」
いやいやをするように首をふる。
「…熱いの…」
リナの吐息がオレの胸を焼く。
気がつくと、オレはリナを抱きしめていた。
体の奥からこみ上げる、この熱い衝動はなんなのだろう。
リナが顔を上げた。仮面の奥の、熱に浮かされたような目が、オレの顔を見つめている。
誰よりも愛しい、オレだけの妖精。
リナが静かに目を閉じた。
「…口紅が落ちちゃうぞ」
「いいもん」
顔を近づける。
「あたしを…鎮めて…」
ささやく唇をふさいだ。
吹き荒れる風のように激しく、燃え上がる炎のように熱い口づけ。
唇が灼熱のダンスを踊る。
オレはリナの頭を抱き、黒いリボンをほどいた。
リナの髪が炎のように広がり、むき出しの背中をすべり落ちていくのを指で感じる。
風には炎を鎮められない。
炎をあおり、よけい激しく燃え上がらせるだけだ。



終り

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2069Re:ガウリナ小説『仮面舞踏会〜風と炎のダンス』松本 雅 E-mail 4/6-01:18
記事番号2067へのコメント
初めまして。
 小説、読ませて頂きました!!
 すっっっごく、良かったです!
 リナちゃん、かわいい^^。ガウリィ、格好良い^^!
 やっぱりこの二人はこうでなくては…!
 また素敵なガウリナ小説、お待ちしています^^

 この小説と同時進行の状況下で、ゼルアメも読んでみたいです。
 中庭でガウリィとリナがいちゃついて(笑)いる間に、
ゼルとアメリアはどんな会話をしていたのか…聞きたいデス。
 
 いや、本当に素敵な小説を有難うございました。

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2074Re:ガウリナ小説『仮面舞踏会〜風と炎のダンス』リナ 4/6-06:53
記事番号2067へのコメント
山塚ユリさんは No.2067「ガウリナ小説『仮面舞踏会〜風と炎のダンス』」で書きました。
>ははは。ガウリイとリナがいちゃいちゃしてるだけの、起承転結あったもんじゃない、という話です。
>それでもいいとおっしゃる方、いらっしゃいませ。
>
>
>セイルーン王宮の大広間。オレは壁際にぼーっと突っ立っていた。
>着飾った人たちが笑い、酒を飲み、楽隊の音楽に合わせて踊っている。
>オレはなんか場違いなところにいるような気がしてとまどっていた。
>「なにぼんやりしてるんですか、ガウリイさん」
>背中をたたかれてふりかえると、紫のドレスを着た少女が立っていた。
>顔は銀色の仮面に隠れていて、誰だかわからない。
>「え…と」
>「やだ、わたしですよ」
>仮面の下から、見覚えのある顔があらわれた。
>「なんだぁ、アメリアか。よくオレだってわかったな」
>今のオレの格好は、真っ白のタキシードに青い蝶ネクタイ。金髪を後ろでまとめ、青い仮面で目元を隠している、というものである。
>今夜は王宮で仮装…じゃなかった、仮面舞踏会があるっていうんで、アメリアがオレたちを招待客扱いでひっぱって来たのだ。
>ちなみに衣装は借り物だったりする。
>「そりゃわかりますよ。ガウリイさん背も高いし、その金髪は目立ちますもん」
>「オレはわかんなかったなあ。見違えちゃったぞ」
>「ふふ。しかし、わたしのことがわからないんじゃ、リナさんを見たらさぞかしびっくりするでしょうね。
>あ、うわさをすれば、リナさんですよ」
>オレに向かって歩いてくるリナを見て、オレは息をのんだ。
>燃えるような赤いドレス。ひらひらした長いスカートがリナの歩調に合わせて揺れている。
>アップにした髪に黒いリボン。黒の仮面で目元を隠して口紅までつけているが、それは間違いなくリナだった。
>「…なんか、はずかしいな、こういうの」
>「わああ、すごく素敵ですよ、リナさん。ね、ガウリイさん」
>リナはなにか言いたそうにオレを見る。が、オレが絶句しているのに気がつくと、赤い顔をしてうつむいた。
>ひょっとして照れてんのか?
>「さ、踊って来てくださいな」
>アメリアはそう言って、オレとリナを人と音楽の中に押し出した。
>
>そういうわけで。
>オレはリナと踊っていた。
>オレの腕の中で、リナが軽やかにステップを踏む。
>「けっこううまいんだな」
>「どこに出てもはずかしくないようにって、姉ちゃんにしこまれたからね。
>それより、ガウリイがダンスなんて知ってるほうが不思議だわ」
>明日をも知れぬ傭兵時代、酒場の女の歓心を買うためにダンスを習ったのが遠い昔の出来事のような気がする…。
>「昔ちょっと習ったんだ」
>「ふうん」
>リナはそれ以上追求しなかった。
>動機はともかく、ダンスを知っていてよかったと思う。
>でなきゃリナとこうして踊ることなんてできなかったもんな。
>音楽に合わせて、リナのスカートがまるで炎のように揺らめく。
>黒い仮面のせいか、見慣れない髪型のせいか、それとも背中の大きく開いた深紅のドレスのせいか、
>今夜のリナはいつもより大人っぽくみえた。
>オレは…いつものリナのほうがいいけど。
>「なんかそうしてると…火の妖精みたいだな」
>「ほめてるの、それ」
>リナがくすりと笑う。
>「あたしが火の精だったら…そうね、ガウリイは風の精かな」
>「なんで」
>「ぼーっとして、とらえどころがないからよ」
>なんだよそりゃ。
>「じゃあアメリアとゼルは」
>「アメリアは水でゼルが土ってところかな」
>なんか魔法に関係があるものを言っているらしいがよくわからん。
>「そう言えばアメリアたちはどうしたんだ」
>「あっちで踊っているわよ」
>リナの視線を追うと、ピエロと踊っているアメリアがいた。
>「ゼルは」
>「何言ってんの。あのピエロ、ゼルじゃない」
>へ?そーなのか?
>顔真っ白に塗って帽子までかぶってたら誰だかわからんぞ。
>って、もしかしたらわからないのはオレだけかもしれんが。
>「アメリアってばこの仮面舞踏会、ゼルのために計画したんじゃないかな。
>だって普通の舞踏会だったら、ゼル絶対に出ないもん」
>そういうもんかな。
>音楽が鳴りやんだ。楽隊が次の曲の準備をしている間、踊りも小休止。
>「なんかのどかわいちゃった。あ、あれ飲みた〜い」
>リナは銀盆持って歩き回るボーイに向かってぱたぱた走っていく。
>あーゆーところは子供だよな。
>「あ…あの」
>着飾った女性(もちろん仮面をつけている)に声をかけられた。
>「次の曲、一緒に踊っていただけますか?」
>ふと見ると、オレのまわりに女性が集まっていた。
>オレはリナの顔を見る。
>「別にいいんじゃない?あたしは疲れたからここで休んでいるわ」
>と、リナ。妙に寛大だなあ。
>「せっかくの舞踏会なんだし、こんな機会ってめったにないでしょ」
>「そうか?じゃちょっとだけ」
>オレは名前も知らない女性の手を取ると、再び広間の真ん中に進んでいった。
>一曲踊り終わると別の女性に声をかけられた。次の曲はその女性と踊る。
>なんだオレってけっこうもてるじゃん。リナと一緒にいるとそーゆー自覚なくなるけど。
>これを見て…ちょっとは妬いてくれるかなリナは。
>何人目かの女性と踊っていると。
>ガシャアァン!
>なにかが割れたような音が広間に響きわたった。
>踊りの波が止る。
>「ちょっと失礼」
>相手の女性(例によって名前は知らない)から離れると、オレは音のしたほうに向かっていった。
>壁際の人だかりから、思った通り、リナの声がする。
>「そんなんでこのあたしを口説こうなんて、25万8千4百年早いってのよ」
>…どっからそういう数字が出てくるんだか。
>「はい、ごめんよ」
>オレは人をかき分けてリナのそばに寄った。
>「なにやってんだよ」
>「こいつがどーしても一曲踊ってくれっていうから相手してやったのよ。
>そしたらいい気になって、二人だけでどっか行こうなんて言うのよ。冗談じゃないっつーの」
>リナの前で、ちょっと軟弱そうないいとこのお坊っちゃんがひっくり返って絶句している。
>興奮したリナがついでにたたき落としたんだろう、床には割れたグラスやら銀のお盆やらが散らかり、おそれをなしたボーイさんが逃げていくところだった。
>オレはそのお坊ちゃんに手を貸して起こしてやる。
>「すまんな、保護者のオレに免じて、かんべんしてくれないか?」
>「…こっちだって、こんな乱暴な子だと知ってたら、声なんかかけなかったさ」
>「なんですって」
>いきり立つリナの手を引く。
>「あんたも大変だよな。こんな無分別な子の保護者じゃ」
>オレがなんか言うより、リナの足のほうが早かった。
>電光の速さで、お坊っちゃんの股間にリナの蹴りが命中。あーあ、こりはひどすぎる…。
>「逃げるぞ!」
>まだなんかわめいているリナをかかえて、オレは広間を飛び出した。
>
>「やれやれ」
>オレたちは王宮の庭にいた。
>花壇や噴水や植木が、魔法の明かりに照らされて夜の闇に浮かび上がっている。
>もちろんあたりには誰もいない。
>「あんなところで騒ぎを起こさなくたっていいだろうに」
>「だってえ」
>リナがふくれる。
>やっぱりオレがついていないと心配だよなこいつは。
>「どうなったかな、パーティー」
>音楽が聞こえる。リナの立ち回りはアトラクション程度で終わったらしい。
>「台無しにならなくてよかったよな、まったく」
>「そうね、せっかくアメリアがゼルと踊っているんだし」
>人いきれにほてった体に夜風が心地いい。
>「さあ、これからどうする?」
>「あたしはもう戻れないわ。ガウリイ、ダンスの途中でしょ。戻っていいわよ」
>「オレだけ戻ってどうすんだよ」
>魔法の明かりに照らされた芝生が目に入る。
>「踊らないか?」
>オレはリナに声をかけた。
>「ここで?」
>「いいんじゃない?音楽だって聞こえるし」
>オレはリナに手を差し伸べた。冗談めかして言う。
>「一曲踊っていただけますか?炎の妖精さん」
>リナはスカートを軽くもちあげ、ひざを折って会釈するとにっこり笑った。
>「よろこんで。ハンサムな風の精さん」
>オレは芝生の上でリナと踊った。
>オレのリードで、リナの体が軽く宙をすべる。
>リナがオレの思い通りに動くなんて、めったにあることじゃない。
>オレはリナを抱いて踊り続けた。
>魔法の明かりの下、ステップにあわせて、リナのスカートが炎のように舞い上がる。
>リナがターンするたびに、その炎がオレにからみつく。
>オレの白い服に燃え移りそうだ。
>と、何かにつまずいたのか、リナがよろけた。
>あわてて抱きとめると、くたり、と、オレの胸によりかかる。
>「おい」
>リナは動かない。
>「疲れたのか?ベンチで少し休もうか」
>いやいやをするように首をふる。
>「…熱いの…」
>リナの吐息がオレの胸を焼く。
>気がつくと、オレはリナを抱きしめていた。
>体の奥からこみ上げる、この熱い衝動はなんなのだろう。
>リナが顔を上げた。仮面の奥の、熱に浮かされたような目が、オレの顔を見つめている。
>誰よりも愛しい、オレだけの妖精。
>リナが静かに目を閉じた。
>「…口紅が落ちちゃうぞ」
>「いいもん」
>顔を近づける。
>「あたしを…鎮めて…」
>ささやく唇をふさいだ。
>吹き荒れる風のように激しく、燃え上がる炎のように熱い口づけ。
>唇が灼熱のダンスを踊る。
>オレはリナの頭を抱き、黒いリボンをほどいた。
>リナの髪が炎のように広がり、むき出しの背中をすべり落ちていくのを指で感じる。
>風には炎を鎮められない。
>炎をあおり、よけい激しく燃え上がらせるだけだ。
>
>
>
>終り
>
きゃ−きゃ−−−−、ガウリィ格好いい−−−!!!盛り上がりすぎた・・・。山塚ユリさんのガウリナ小説の大ファンです。

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2091Re:ガウリナ小説『仮面舞踏会〜風と炎のダンス』松原ぼたん E-mail 4/6-15:04
記事番号2067へのコメント
 面白かったです。

>ははは。ガウリイとリナがいちゃいちゃしてるだけの、起承転結あったもんじゃない、という話です。
 いいじゃないですか。面白かったし。
 あたしは思いっきり照れましたけど(爆)。
 あ、ゼルのピエロはなんか好きです(笑)。

 ではまた、ご縁がありましたなら。

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2103Re:ガウリナ小説『仮面舞踏会〜風と炎のダンス』さぼてん 4/6-20:39
記事番号2067へのコメント
山塚ユリさんこんにちは。
またお書きになられましたね。ガウリナ小説


>オレに向かって歩いてくるリナを見て、オレは息をのんだ。
>燃えるような赤いドレス。ひらひらした長いスカートがリナの歩調に合わせて揺れている。
>アップにした髪に黒いリボン。黒の仮面で目元を隠して口紅までつけているが、それは間違いなくリナだった。
おおっやっぱドレスアップするとイメージも違ってくるんでしょうね。


>「けっこううまいんだな」
>「どこに出てもはずかしくないようにって、姉ちゃんにしこまれたからね。
>それより、ガウリイがダンスなんて知ってるほうが不思議だわ」
リナは何でも姉ちゃんから仕込まれてるんだなぁってよくおもいます・・・。

「あたしが火の精だったら…そうね、ガウリイは風の精かな」
>「なんで」
>「ぼーっとして、とらえどころがないからよ」
ははいえてる。

>なんか魔法に関係があるものを言っているらしいがよくわからん。
ガウリイだからねぇ・・・(笑)

>リナの視線を追うと、ピエロと踊っているアメリアがいた。
>「ゼルは」
>「何言ってんの。あのピエロ、ゼルじゃない」
ぶっ

>へ?そーなのか?
>顔真っ白に塗って帽子までかぶってたら誰だかわからんぞ。
>って、もしかしたらわからないのはオレだけかもしれんが。
>「アメリアってばこの仮面舞踏会、ゼルのために計画したんじゃないかな。
>だって普通の舞踏会だったら、ゼル絶対に出ないもん」
そっかぁ・・・顔見せなくてすむもんねぇ・・・

>オレがなんか言うより、リナの足のほうが早かった。
>電光の速さで、お坊っちゃんの股間にリナの蹴りが命中。あーあ、こりはひどすぎる…。
おっガウリイもやるじゃん・・・(おいっ)

では

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2145『仮面舞踏会〜風と炎のダンス』感想です!むつみ。 4/8-00:48
記事番号2067へのコメント
山塚ユリさん。読ませていただきました!面白かったです!
>

>顔は銀色の仮面に隠れていて、誰だかわからない。
>「え…と」
>「やだ、わたしですよ」
>仮面の下から、見覚えのある顔があらわれた。
>「なんだぁ、アメリアか。よくオレだってわかったな」
 冒頭から既にガウリィ。(笑)


>リナはなにか言いたそうにオレを見る。が、オレが絶句しているのに気がつくと、赤い顔をしてうつむいた。
 リナちゃん、可愛い!


>黒い仮面のせいか、見慣れない髪型のせいか、それとも背中の大きく開いた深紅のドレスのせいか、
>今夜のリナはいつもより大人っぽくみえた。
>オレは…いつものリナのほうがいいけど。
 この一言が、良いな。

>「なんかそうしてると…火の妖精みたいだな」
>「ほめてるの、それ」
>リナがくすりと笑う。
>「あたしが火の精だったら…そうね、ガウリイは風の精かな」
>「なんで」
>「ぼーっとして、とらえどころがないからよ」
>なんだよそりゃ。
>「じゃあアメリアとゼルは」
>「アメリアは水でゼルが土ってところかな」
 リナ達四人が、「地水火風」にあたる・・・。ううむ。なるほど。

>「アメリアってばこの仮面舞踏会、ゼルのために計画したんじゃないかな。
>だって普通の舞踏会だったら、ゼル絶対に出ないもん」
>そういうもんかな。
 アメリアちゃん、可愛い!(こればっかり)。



>オレのリードで、リナの体が軽く宙をすべる。
>リナがオレの思い通りに動くなんて、めったにあることじゃない。
 ふふふ。ガウリィ、よかったね。

 すごくよかったです。私も、ピエロゼルと、アメリアがどんな会話していたのか、知りたいです。
 ラストシーンも、素敵でした。(照れくさいので引用しなかったけど。)
 炎のリナと、風のガウリィ。いいなあ。
 ・・・すると、「固い大地のゼルに実りの豊かさを与える水のアメリア」ってところかな?(うっとり)

ひとり妄想にはいってしまいました。すいません。本当に、楽しかったです。
それではまた。

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2161Re:ガウリナ小説『仮面舞踏会〜風と炎のダンス』えれな E-mail 4/9-03:29
記事番号2067へのコメント
山塚ユリさん、こんにちわ♪えれなです。
久々に覗いてみたら・・・ああっ。ユリさんの新作がっ!!
しかもめちゃめちゃいいっ!めんどくさがりでカキコは滅多にしないえれなですが(爆)、
ユリさんのにはよいっ!って感じた。てことを知らせたくってカキコしちゃいます(笑)
気に入ったとこはいーーーっぱいありますけど、ひとつだけ。

>風には炎を鎮められない。
>炎をあおり、よけい激しく燃え上がらせるだけだ。

ここ。むっっっっっちゃよいです(笑)
やっぱし、ガウリナってええのう・・・ってユリさんの読むといつも思います(笑)
また書いてくださいね♪応援してます♪では。