◆−神さまのお買い物 5−あんでぃ (2002/5/30 19:27:57) No.20948 ┗神さまのお買い物 6−あんでぃ (2002/5/30 19:51:54) No.20949
20948 | 神さまのお買い物 5 | あんでぃ URL | 2002/5/30 19:27:57 |
こんばんは、お久しぶりですあんでぃでございますっ やぁぁぁっと、試験が終わりましたv(至福)世の中高生の方々はこの幸せを分かち合いましょう(笑) 以前の『神さま〜』ツリーが落ちてしまいましたね(汗)過去ログか著者別の「あんでぃ」から行って頂けると幸いです(> <) でわ、続きです。予告どおりアメリアサイドからです★ □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 神さまが誰であろうと関係無い。必要なのはただひとつだけ。 神さまは優しくあって欲しい。 それは綺麗事なのか? 涙で生まれた魔物は 苦痛の霧を晴らせた? 私は大きくなって 剣や弓の在り処も分かるけど 神さま、お願いだから。 俺はあなたに剣を向ける事もできる けれど、そうしたくないから。 願っていないから・・・・・・ だから、ただひとつだけそれを願う・・・・・・・・・・神よ、我等を思え。 【神さまのお買い物】 何事もないある日の昼下がり。 道に迷ったふうな可愛らしい黒髪の少女が暇そうにしているアクセサリーの露店に向かってちょこちょこと近づいていった。 「すみません、道をお聞きしたいんですけどよろしいでしょうか?」 「ん?―――――――――ああ、それならあっちの道をまっすぐ行って・・・・・・それで、右の方にあるはずだぞ」 「ありがとうございました」 道を聞いた少女は満足そうに、そして元気にそう言うと再びちょこちょこと仲間らしい者たちの場所に戻っていった。 そうこれが――――――― 何事もないある日の昼下がりの何事もない出来事。 「あっちだそうですよっ」 露店のおっちゃんに道を尋ねてきたアメリアは声を弾ませて笑顔で東を指差した。 「ごくろうさん」 ガウリイがそう言い、あたしがアメリアに笑いかけるとみんなに振り向いた。 「行こっか」 アメリア、そしてゼルガディス。昨晩偶然同じ宿に身を寄せていたらしく、再会したかつての旅の仲間たち。 アメリアたちとも目的地を同じとし、そしてお互いに慎重に運ばねばならぬ用らしかった。細かい目的は聞いてはいないが、お互いに信用できる仲間が増えた事は確かだ。 それに・・・・・・・・・・・ とにかく、あたしの心は軽くなった。 「・・・・・・・どうしていつの間にかこんなに大所帯になってるんでしょうか?」 「不可抗力よ、それに人数は多ければ多いほど戦力的にいいでしょ」 ゼルもアメリアも信頼できるわよ、とディッサの小さな呟きにあたしは言った。 「そうですか・・・・・・あの、あの人って・・・・・」 ディッサはちらりとゼルを見た。あの岩の肌は何なのかと問いたかったらしい。その視線にゼルは少しだけ目を細める。不快だと、目であたしに言う。 ・・・・・・いやあたしに訴えられても。 「彼は人間よ、ちょっと間違ったものが混じってるけど」 「間違ったものって、お前もう少し言い方ってもんがあるだろう・・・・・・」 「そうです、そういうのは良くないです!」 ゼルが何故か疲れたようにそう言った。アメリアもそれに同意するが、何故かディッサは大きく首を振った。 「いやだからそうじゃなくって、どこかで会った事がありませんか?」 先ほどからゼルをちらりちらりと見ていたのは、見覚えがあったからという事か。あたしはゼルに視線を向けた。しかし彼は訝しそうに眉を寄せた。 「・・・・・・・俺はお前さんに会った記憶は無い。それに俺の姿が気になるのならはっきり言えばいいだろう」 ゼルはディッサの言葉を言い逃れと判断したらしい、さらに眉を顰めた。 「いや、ある。そっちのお嬢さんにも、ガウリイさんにも・・・・・・・・・・リナさんにも」 それだけ言うとディッサは腕を組み、うーんと唸った。あたしたちも互いに顔を見合わせた。 「・・・・・・・・会った事はないと思うんですが・・・・・」 「うん、あたしも記憶が無いな・・・・・・・」 「オレも」 「いやあんたに記憶が無くても不思議じゃないから」 「いやぁ」 照れんでいい、照れんで。 ガウリイに軽くツッコんでから、あたしは記憶を探ろうと空を見上げた。ディッサにはこの街で行き倒れていたとき以前の記憶が無い。でもあたしたちに会ったような気がする、と。 あたしたちと記憶が無くなる以前に出会ったかもしれないのか―――――――――― あたしは勢いよく首を上げた。 「え?」 そしてうろたえるディッサを無視して彼の顔をまじまじと見つめる。 まさか――――――― 軽く首を振った。あたしは頭に浮かんだあるひとを・・・・・・その可能性を打ち消す。 「リナ?」 「・・・・・・なんでもない」 あたしはゼルに向かってそれだけ言うと何事も無かったかのように歩を進めた。 似てるけど、でも同じじゃない。 だから、惑わさされるな。 「―――――今はとりあえず『エーグマティ』の事を考えましょ」 あたしの言葉にディッサは深く頷いた。 「この国では他国の人間が入ってくる事が滅多にないから、珍しがられてしまうと思います。くれぐれも注意してください」 ディッサはそれだけ言うと白い屋根を見つめた。もう目前に目的地は迫っているのだ。ここでヘマはしたくない。 「こんな所まで・・・・・・こんな事につき合わせてしまってごめんなさい。でも、俺たちはどうしても・・・・・・・・」 「いえ、私も一個人として・・・・・・ただの『アメリア』という人間として、この国に来たんです」 アメリアは拳をつくり、それを空いたもう片方の手で包み込むと胸元へ引き寄せた。 「奴隷制があるなんて・・・・・私は単なる噂だとばかり思っていたんです。でも、この国ではそれが普通なんですね・・・・・・そんなの、私の中の正義が許せません!!」 胸元の拳を強く空へ突き出した。小柄な体に似合わぬその鋭い拳の音に、ディッサは少し目を見開く。あたしはアメリアの肩に手を乗せながら、ゼルに顔を向けた。 「行ってどうするの?」 「奴隷制を見直すよう、統領を説得する。聞く耳を持たぬようなら・・・・・・・・」 言いながら、ゼルはかちりと小さく剣を鳴らした。討つ、という事か・・・・・・・ 「目的がわからないわ」 あたしが言った。本当に、解らなかったのだ。アメリアが国の代表として現れたのならば納得がいくかもしれない。しかし、今のアメリアは・・・・・・・・ 「私は私個人として、この国の行く末を案じています」 この国が独自の文化、独自の風習を持っている事を批判するのではない。 間違っているという事に気付けないほどに歪められた事実。人を人とは思わない風習。独善的な身分差別・・・・・・・・・・ 「そして・・・・・・私は私として、自国も案じています。このままだと、私の国も少なからず『エーグマティ』の影響を受けて動揺する事でしょう」 『エーグマティ』は新しい国。『セイルーン』は伝統ある国。 しかし、できた早さなど関係無い。問題は、その国に暮らしている国民がどれだけ幸せでいられるかどうか――――――――― 「申し訳ないんですけど、昨夜リナさんからあなたたちのことは聞きました。絶対に邪魔はしません、だから一緒に行かせてください」 アメリアはぺこりとディッサに頭を下げた。そんな様子を見て、彼は顔を歪めた。 あたしに視線を向けて少し眉を寄せた。あたしが勝手にアメリアたちにディッサたちの話をした事が気に入らなかったのだろう。もちろん、普段ならあたしも個人のプライバシーを話す事はしないのだが・・・・・・・あたしはディッサに向かって手を合わせた。 彼は今、アメリアを信じてよいものかどうか、迷っている。頭を下げたままのアメリアの姿とあたしとを交互に見て、ディッサは小さく溜息をついた。 「・・・・・・・・この国を変えられるだなんて、きっと誰も気付いていないんだ。この国の民は・・・・・今日を、明日を生きることで精一杯だろうから」 あたしはディッサに目を向けた。彼もあたしを見ていた。 「でも、国に住むのはこの国の民。ディッサたち『エーグマティ』の国民にこそ、未来を選ぶ権利がある。アメリアがセイルーンの国民行く末を案じるように――――――――ディッサにはこの国の行く末を選ぶ権利があるわ」 あたしがそう言うとゼルに視線を送った。あ、どうやら機嫌を直してくれたらしい。 「王は国民では無い」 ゼルが重い口を開いた。マフラーを巻き、フードを目深にかぶり、それでもその瞳だけは強い意志を滾(たぎ)らせて―――――― 「王は王になった時点で国民ではなくなる。だからこそ、王は時に国民の真に望む事を違える」 あたしはアメリアの背中を軽く叩いた。王が王になった時に国民で無くなるというのは、その時点で自由を制限されるために、国の様子を自分の目で見る事が出来なくなるからだ。だから、己の目で己の国の様子を見極めているアメリアは、立派にセイルーンの国民なのだ。 少なくとも、あたしはそう思っている。 「オレには難しい事はよく分からん。だけど、この国はディッサの国だからな、王様の間違えはディッサたちが正さなくちゃ、な」 ゼルの言葉にガウリイが続いた。珍しい。 「ありがとう、頑張るよ」 ディッサがにっこりと笑んだ。 あたしはこっそりとその笑顔から視線を逸らした。 「でも私には、望むことすらも許してもらえないんですか?」 「ほら、見えるかい?これが今まで『君』と『あれ』をくっつけていた繋ぎだよ」 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ここまで読んで頂いて、ありがとうございますv そろそろ、一番下の言葉が誰の台詞かバレ始めているでしょうか?(笑)実はこの一番下の台詞を言っている彼が一番のカギかもしれません。というかこの人がこうしたからあれがこうなってこんなふうにこうなったのです(分からないってば) ちなみに彼はオリキャラじゃありませんよ(笑) でわ、次も是非読んでいただきたいなぁ、と思っているあんでぃでした! |
20949 | 神さまのお買い物 6 | あんでぃ URL | 2002/5/30 19:51:54 |
記事番号20948へのコメント こんばんは♪そして連続投稿ですっ!すごいです珍しいです私(笑) えー、ここからはリナサイドへ再び戻ってしまったり。分かりにくくてすみません(汗) □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 「どうして・・・・何故なんだ?!」 俺の言葉に彼は不快そうな顔をした。 「何故?理由など決まっているだろう。新しい奴隷が必要であったからだ」 「女の奴隷など邪魔なだけだと、お前が言っていたのだろうが! それに――――――」 だから俺が彼女の分まで働いていた。それに――――――――――― 「そもそも奴隷というものでありながら、働かないというのは矛盾していると思わないかい?」 奴は―――――――統領は口を吊り上げた。 「俺は国を治めるのが役目だ。国のシステムを狂わす輩をそのままにしておける訳が無かろう」 それ以上は何も言わず、男は屋敷の奥へ消えていった。 【神さまのお買い物】 「うわぁ、これまたいきなりですねぇ」 「・・・・・うっさいよアメリア」 あたしは右隣のアメリアに冷たい一瞥をくれたあとに再び前を見つめた。アメリアにそうは言ってみたものの、さすがにこの光景にはうんざりする。 「どうする?リナ」 「うーん。街中で大きな呪文を使う訳にはいかないし・・・・・・やっぱり逃げるが勝ち、かしら」 ガウリイに答えてからちらりと空に視線を走らせる。空から逃げるという手もあるが・・・・・・ 「翔封界(レイ・ウイング)はリナしか使えないだろう、この大所帯をまとめて運べるか?」 「うーん、それって浮遊(レビテーション)よりも遅くなるような気がするのよね」 ゼルの指摘にあたしは困ったようにそう呟いた。 翔封界という呪文は、風の結界をまとって飛ぶ事により浮遊よりも速度を上げられる呪文だが、コントロールが難しい上に、重さと速度と重量がそれぞれ術者の力量に比例する呪文なのだ。 術者の力量に関係するとは言っても、重量が増せばその分だけ速度は遅くなり、高度も下がる。しかし、今回高度は最低でもあの貴族たちの身長よりも高くしなければならないのだ。そうすると必然的に速度が遅くなるという事なのだが・・・・・それじゃあ、逃げ切れないし。 そこまで考えてから、あたしは腰のショート・ソードを抜いた。 そうすると、やっぱり戦うしかない・・・・・ということか。 あたしはディッサに視線を走らせた。そう、問題は彼なのだ。体力には問題が無いのだが、正直言って彼に戦闘経験があるとは思えなかった。 そんなあたしの心配をよそにディッサはあたりをきょろきょろと見回すと、手近にあった丈夫そうな木の棒を拾い上げた。まわりのささくれ立った側の部分をむきむきと剥がしつつ、あたしににっこりと微笑みかけた。 「俺なら大丈夫ですから、遠慮なく行っちゃってください」 その笑顔が恐いと思ったのは、あたしだけなのだろうか――――――― 真っ先に敵の中へ突っ込んで行ったディッサを見てぼんやりとそう思った。 「・・・・・・・やってくれたものだな」 この追っ手たちをはっ倒し続けて一体どれだけの時間が過ぎただろうか? 声のした方を振り向くと、長めの銀髪を小さく揺らし目は硬く閉じたままであるにもかかわらず力強く、手にはロープを持った一際豪華な服を身に纏った男が数人の騎士らしき男たちを連れてゆっくりと歩いてきた。 「・・・・・・統領」 しゃがんでいたディッサは彼を見て身を起こす。倒した男から奪った大剣を肩から下ろし、ぶんっと振った。飛び散る血飛沫が嫌であたしは顔をしかめてディッサから一歩引いた。 軽く周りを見回す、追っ手どもはおおかた倒しきったのだが、まだ十人前後はいる。 さて、それじゃあ一気に行きますか。 男たちの中心部へ呪文を唱えながら飛び込んだ。一斉に飛び掛ってくる男たちに向かってあたしは小さく笑んでやった。 「爆裂陣(メガ・ブランド)っ!!」 とりあえず残った男共をまとめて呪文で吹っ飛ばして、まわりにもう動ける者がいない事を確認してからディッサの元へ戻った。 「――――――貴様か、私の国に波風を立てるものは」 統領らしき男は忌々しいと言うようにディッサに一瞥を投げながらあたしたちに視線を転じ、驚いたように一歩引いた。 「おや・・・・・セイルーンの王女様がこんな物騒な場所で一体何をされているのです?」 「・・・・・私はアメリアです。今は王女でもなんでもありません」 アメリアはからかうように言った騎士に向かってきぱりとそうそう言うと、ざっと構えを取った。 「奴隷だなんて、何て酷い事を・・・・・それが国を治めるものがする行動ですか?!」 統領は、ちらりと彼女を見ただけでそんなアメリアの言葉を一蹴すると、今度はあたしに視線を向ける。どうやらあたしが小石を投げたの事に気付いたらしい。子供っぽいとは言うなかれ、多分こういった駆け引きも必要なのである。 「キアーラという女のひとがあなたの所に居るはずなんだけど、心当たりはないかしら?」 「?」 あたしの言葉に男は一瞬不思議そうな顔をした。 この反応はまるで何の話だか理解していないような―――――― 「キアーラ・・・・・何を言っているんだ?」 首を傾げながらも、彼の手は止まらなかった。 「リナ!!」 あたしがガウリイの声に反応する前に――――――ロープがあたしに絡みついた。 「へ?」 「さあ、こちらへ・・・・・」 距離があるから油断していた――――統領が持っていたのはグラップルだったのか! グラップルというのはロープの先端に錘(おもり)をつけた捕獲を目的とする武器だ。その先端の錘が、鉤爪や針状のものであれば十分殺傷能力もあるし、ロープもこの統領が持っているような荒縄などではなく鎖にすればそう簡単に切られる事も無い。 統領はまるで荷物のようにロープであたしを引き寄せると、ひょいっと持ち上げる。 「ちょっと待て!なんなのよ人を荷物みたいに―――――――むぎゅっ」 ばたばたともがくあたしの頭をぎゅっと押さえつける。 暴れるあたしをあっさりと押さえつけると、統領はあたしを抱えてその場をゆっくりと去った。 「ちょっとちょっと!!なんでーーーー?!」 「では、ごきげんよう」 あたしの叫びは虚しく、つんとした匂いとともに意識は飛んでいった。 意識を取り戻して一番に目に入ったのは、薄暗い部屋の中の高い天井だった。 何が起きたのか、何故自分が昼間から寝ていたのか――――――――理解できずに暫くの間、やたらゴージャスなベッドの上で考え込む。 軽く頭を振った。何か薬品を嗅がされてここまで連れて来られたらしい、頭がぼんやりとする。微かに漂うこの香りにも何か記憶がある気がするのだが、思い出せなかった。 やたらと重く、ずる長いドレスを着せられているなぜか力の入らない体を無理矢理起こし、ここは何処なのかと窓の外を見ようとカーテンを開いた刹那―――――― (うわ痛っ!!) 突如起こった目の痛みにあたしは思わず目を押さえカーテンを閉めた。痛みに暫くうずくまった後ゆっくりと目を開くと、今度は痛みも何もなく、何事もなく目は開く。どうやら強い光を見る事が出来ないらしい。これでは外へ出られない。 (なんなのよ・・・・・・って) 訳が分からず思わずぼやくが、次の瞬間にあたしは力無くへたり込んだ。 (声まで出ないじゃない・・・・・・・) 呪文を使うにしても肉弾で強引に脱出するにも、目が見えなくてはどうにもならない。しかし、目を治そうにも声が出なければ呪文は唱えられない。ということは・・・・・・・・ここから逃げられない。 (最悪・・・・・・) なにやら装飾品を大量につけられた髪の毛をかき混ぜながら、盛大にあたしは溜息をついた。もはや絶望的な気分であった。しかしこのままでいる事も出来ない。 あたしは重い体に鞭を打って部屋の隅にあった花瓶を持ち上げた。それを漆喰で塗り固め開けられないようにされている窓に向かって目を閉じたまま投げつけた。 ガチャンッ 鈍い音を立て割れたガラスから両手で目を覆ったまま新鮮な空気を吸う。すると少しだけ頭の中の靄が晴れたような気がした。外の空気を吸ってから部屋の中の空気を吸う。やはり、どこかで嗅いだ事がある匂いだ。何処だったか――――――?! かちゃり 「ああ、やはり目を覚ましていたんだね」 その声を聞くと同時にあたしは足元に落ちていたガラスの破片をその気配の方へ投げつけた。そのはずみで軽く指を切ってしまったようだが、意識して表情は変えなかった。 「キアーラ・・・・・・そんなに怒らないで。彼は危険なんだ」 (キアーラ・・・・・・って、あたしが? 危険って、ディッサが?) 喋れないないという事にまだ慣れていないため、その意識が時々欠落してしまう。声が出ないにもかかわらず思わず話そうと口を動かしてしまい、あたしは思わず口を押さえた。もちろん声は出ていない。しかし聞こえていないはずなのだが彼はあたしに向かって頷いてきた。どうやら彼は読唇術と言うものを心得ているらしい。 ―――――――目を閉じているはずなのに? あたしは痛みはじめた目を堪えて開き彼を凝視した。やはり彼の目は硬く閉じられたままであった。 「あの男・・・・・・正気の人間の目をしていない。あの男は危険なのだ。あのままあの男といたら貴女はきっとあの男に喰われていた・・・・・・貴女は私がどれだけ貴女を愛しているか知っているだろう?助けずにはいられなかった」 何かがおかしい。何かが違う。 (・・・・・彼は正気よ。むしろあなたの方が・・・・!) 「違う、彼は何かと戦っている。私にはそれが見える。彼は確かに時に正気だ、しかし奴は時に人間ではなくなる・・・・・」 何?何を見ている? (なぜ? あなたには何が見えているって言うの?) 「わからない・・・・だが私には全てが見える。彼の事もキアーラ・・・・君のことも。私は神の落とし子だから」 全てが見える?この目の前の事実を間違えている事にすら気付かないあなたに――――――? (あたしはあなたの見ている人とは違う・・・・・!) 「いや、同じだよ。キアーラ、私の愛する娘。 ・・・・・さあ、ここは足元が危ない。早くここからどきなさい」 彼はあたしの目をまっすぐと見て、あたしの事をキアーラと呼んだ。あたしが先ほどガラスで切った指をハンカチで包むと、肩を持ちあたしを立たせカーテンを閉め、ベッドへ促した。そしてドアの外に何事か声をかけ、メイドらしき人にあたしが割ったガラスを片付けさせる。 ――――――彼は混乱している。だからあたしとキアーラという人を間違えている。 あたしは直感的にそう思った。そして同時に危険だとも思った。 だが、少なくとも彼は今、あたしに対して害意は無いようだった。ならば下手に刺激する事は得策じゃない。このまま何かを言って興奮させては危険だ・・・・・そう思ったあたしは口をつぐんだ。 彼はそんなあたしを悲しそうに見つめると、薄く微笑んだ。あたしの事を心底キアーラだと思っているのであろうか。彼のその笑顔はとても優しいものだった。 窓の外を見上げると、夕暮れに染まった空が見えた。痛む目でそれを精一杯見つめた後に、あたしは硬く目を閉じた。ふっ、と微かに感じた覚えのある香り。それが何だったのかを思い出そうとしたのだが、つんとした薬品の匂いでかき消され、それが何だったのかを思い出すことも出来ずに深い眠りに落ちた―――――――― 形が無くて頷けない貴方を 私はちゃんと濁せない 砂の味など覚えない様に その画像が乱れない様に 汚す必要も無い 本当は失くすモノだって1つも無い 貴方はそこで 全てを解(ほど)ける 明確に、納得できるように伝える事が出来なかった。 何が正しくて、何が間違っているのか・・・・・・ それを伝えようにもあたしは何も知らなすぎる――――――――――――― 「私は・・・・・・・・あなたがそれを望んでいない事を知っています。でも・・・・私は希望をもっていたいんです」 「さすが、と言うべきなんだろうね。君はこれだけの事があっても誰も憎まなかった。僕には真似できないかもしれない」 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 攫われている・・・・・(汗)かどわかされてますよ!!リナさん!!(待て) グラップルという武器の存在を知ってしまった瞬間にリナさんこんな運命に(笑) えっとですね、これからいろいろあってディッサの正体が分かって、一番最後に出てくる彼が出てきます(笑)また運命が変わらなければですが(笑)←待てってば 前回に引き続き「神さま〜」のイメージソング『LITTLE BEAT RIFLE(鬼束ちひろ)』の歌詞が挿入されています。いい歌だーv えーっと、10・・・・・・じゃ終わりませんね(汗)多分12、13話くらいで終わるかと思いますです。 お付き合いいただければ幸いです(> <) それでは、あんでぃでした!! |