◆−神さまのお買い物 7−あんでぃ (2002/7/13 19:46:34) No.21194
 ┣神さまのお買い物 8−あんでぃ (2002/7/13 19:51:33) No.21195
 ┣神さまのお買い物 9−あんでぃ (2002/7/13 19:58:12) No.21196
 ┣神さまのお買い物 10−あんでぃ (2002/7/13 20:06:57) No.21197
 ┣神さまのお買い物 11−あんでぃ (2002/7/13 20:10:37) No.21198
 ┗神さまのお買い物 12(最終回)−あんでぃ (2002/7/13 20:18:59) No.21199
  ┗あとがきというみにくいもの。−あんでぃ (2002/7/13 20:40:14) No.21200
   ┣お疲れ様でした!!!!−かお (2002/7/13 21:03:23) No.21201
   ┃┗ありがとうございます(> <)−あんでぃ (2002/7/13 23:16:33) No.21202
   ┣はじめまして。−猫楽者 (2002/7/16 00:48:49) No.21210
   ┃┗はじめまして。ありがとうございます(> <)−あんでぃ (2002/7/16 11:50:12) No.21211
   ┗あんでぃさん発見!→尾行開始(待て)−白河綜 (2002/7/16 15:08:14) No.21212
    ┗白河綜さんを補足、逆追跡!!(待っとけ)−あんでぃ (2002/7/17 13:05:32) No.21214


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21194神さまのお買い物 7あんでぃ E-mail URL2002/7/13 19:46:34


 お久しぶりです(汗) あんでぃです。一ヶ月前に投稿したっきり音沙汰なくなってしまいました(汗) いえ、でもこの一ヶ月で完成させました(> <)

 著者別に以前のお話を登録させて頂いております。あんでぃで探してくださいませっ
 それでは、お付き合いいただけると嬉しいです。


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「おいっ! そこのっ!!」

 横手からかかった声に、あたしは驚いたように身をすくませる。

「は・・・・・・はいっ」

 答えてあたしは声のほうに向き直る。

「何をやってる? こんな所で」

「と、父ちゃんとはぐれちゃって・・・・・・・・・光が見えたんで、つい・・・・・・」

「なんだ・・・・・・・・迷子かよ・・・・・・」

 どうやら信用してくれたようである。

「こっちじゃない。村は逆だよ。・・・・・・とは言え、明りもない山道を、子供ひとりで帰すわけにもいかんしな・・・・・
 おいお前、どこの子だ?」

「・・・・・・へっ?!」

「女みてぇな声を出すんじゃねえよ。家はどこか、って聞いてるんだよ。俺が送ってやるからさ」

待て。おい。



ゴゥォォォォォォォォン・・・・・・・



「何だっ?!」

 男は叫んで振り返る。

「すまんな! ぼうず!」

 言いながら男は、明りのついた杖をあたしに押しつける。

「悪いが送ってやれなくなった! 村はそっちの道をまっすぐだ! 途中で枝道があるが、そっちに行くんじゃねえぞ! いいな!」

「―――――――おっちゃん!」

 言ってくるりと背を向ける男に、あたしは思わず声をかけていた。

「何だ?」

「・・・・・・えっと・・・・・・名前は?」

「――――だ! また会おうな!」




 ・・・・・・・できれば、もう会いたくなかったな。














【神さまのお買い物】













「え?え?リナさ―――――ん!」

『でわ、ごきげんよう』

 統領だと、ディッサさんがそう言った瞬間に、その姿は彼が担いでいたリナさんと共に掻き消えて・・・・・・・・・
「リナ!!」
 私は何があったのか理解できずに、思わずあたりを見回しました。ガウリイさんを見上げると、ガウリイさんは迷うことなく一点を見つめて走り出しました。
「ガウリイさん!!」
 気配を野生のカンでたどっているんですね。という事は、姿が見えないだけであって瞬間移動したわけではないのですね。
 しかし、統領と一緒に姿を現して来ていた騎士らしき男の人がガウリイさんの進行を妨げる形で飛び込んできました。その騎士らしき人はガウリイさんと決して間合いを取らぬようにして刃を合わせていきます。

 ガウリイさんを追わせない気なんですねっ!そうは行きません!!

「霊王結魔弾(ヴィスファランク)!!」
 ガウリイさんがやや大きく跳んで間合いと立った瞬間に、私はその間に飛び込み来る刃を拳で止めました。衝撃は殺せませんからちょっと痛いですっ
「ガウリイさん、いってらっしゃい!」
「おう!!」
 振り向く余裕はありませんでしたけど、微かな足跡と離れていく気配を確かに感じました。蒙追いつけないであろうというくらいに私たちとガウリイさんの気配が離れてから、私は騎士らしき男の人から一度大きく間合いを取りました。ゼルガディスさんの隣まで下がりガウリイさんの向かった方と男の直線上に立ち、もう一度拳に魔力を篭めるべく呪文を口の中で唱え始めました。
「ちっ」
「教えてください。リナさんは何処へ連れて行かれたんですか?」
 ゼルガディスさんが男の人と少しずつ間合いを詰めて行きます。
「俺は騎士だ。騎士は王を護り、王の命令にのみ従う。間違えるな、我らの王は神の落とし子だ。お前等とは格が違う」
「神?」
 ゼルガディスさんは大きく眉を顰めました。私も思わず呆れてしまいました。

 神・・・・・・人間が神ですか?

「何故貴方が思うのかは分かりませんけど・・・・・・神ならば何をしても許されるわけではないのですよ!」
 彼は何も答えずに、ただ無言でその場を去りました。

 ――――――――――先ほどと同じく、突然姿を消して。

 靴と小石が擦れる小さな音に振り向くと、ガウリイさんが小さく首を振りながらこちらへ戻ってきました。リナさんたちを見失ってしまったようです・・・・・・
「リナさん・・・・・・何処へ連れて行かれたんだ・・・・?」
 ディッサさんが眉を顰めて言った事に、私は首を振る事しか出来ませんでした。
 私は暫くゼルガディスさんと一緒にあたりを調べて、ふと疑問が湧きました。ゼルガディスさんの方を振り仰ぎ、たった今思いついた疑問を告げると、それがきっかけでゼルガディスさんはなにかを理解したようでした。















 結局、あれから日が落ちるまで待ってみてもリナさんは戻ってくる事はありませんでした。



「・・・・・・俺が行きます」
 とにかく、これからの事を話し合わなくちゃいけません。再び王の騎士たちに攻め込まれては厄介ですから、あの現場からやや離れた所に宿を取りました。
 ゼルガディスさんのお部屋に押し黙っているガウリイさんの背中を押しながらて私たちがお邪魔して、これから話し合おうというところに彼がそう言い出したのです。突然の事で理解が出来ず、私は暫くの間口をパクパクとさせてしまいました。
「元はと言えば、俺が原因なんです。だから責任は持たないと」
「でも!」
「危険だろう。お前さんの怪力と体力はさっきの事もあるし俺も認める。だがそれだけでは無理だ。人質がいる時に力押しで敵の本拠地へ押し込むわけには行かんだろう? 俺とガウリイの旦那の方がこういったことは慣れている」
 ディッサさんがぐ、と喉を詰まらせる音が聞こえました。
「それに、どうしても解せない事がある」
 ゼルガディスさんはディッサさんに向かって座り直しました。
「何故、リナなんだ?」

 ―――――――統領はリナに向かって『ディッサ』と呼んだ。

「・・・・・・・たしかに、あの統領ってやつとリナは会った事が無かったと思うぞ。じゃあ、何でだ?」
 ディッサさんは暫くどう説明すべきか考えているようでした。視線を暫く廻らせます。
「あの『統領』には特殊な力があるんです。彼には視えるんだそうです。この世の邪悪なものが、普通では視えないものが、普通では聴き得ないことが―――――――――彼はその声を頼りに、その姿を頼りに、この国を治めている。
 それが、彼がこの国を治めていられる理由。神の落とし子と呼ばれる所以です」
 その言葉にゼルガディスさんは眉を跳ね上げました。
「そういえば――――――あの騎士とか言っていた男もそんなことを言っていたな」
 小さく腰を浮かせ座りなおしたディッサさんはさらに口を開きました。分かりやすい表現を探しているようです。ぶつぶつと呟き―――――やがて、小さくぽん、と手を叩きます。整理がついたみたいです。
「ディッサはこの国の奴隷で、俺の命の恩人です。そして・・・・・・・統領の実の娘です」

もう、何が何だかわかりません。

 私はゼルガディスさんに視線を送りました。ゼルガディスさんもまた、困惑した表情を浮かべていました。
「キアーラが統領と離れて暮らしていたのは、彼女が類稀なる魔力の持ち主だったからです。魔力の流れが見えてしまう統領にとって彼女は脅威でした。彼女のその魔力はあまりに大きくて、統領はその溢れ出す魔力を御する力を持たないキアーラに恐怖を覚え、時が経つにつれその精神に亀裂をつくりはじめました。
 ―――――――その頃からです。この国が大きく揺らぎ始めたのは」」
 私は暫く考えてみました。この世の邪悪なもの、普通では視えないものが見え、普通では聴き得ないものが聴こえる。そんな人の気持ちを。

・・・・・・・私だったら、きっと錯乱しているでしょう。

 望まないものまで聴こえる事、視える事――――――それは一種の拷問とも、私には感じてしまうのです。
 確かに私も巫女である身ですから、普通ありえない事を視たりする事は多々あります。でも、私がそれを経験した事は数えるほど。しかも正当な儀式を踏んではじめて起こり得る神の祝福です。日常的にだなんてとんでもないのです。
「リナさんも、大きな魔力を持っているのでしょう?」
「え? ええ。それはもう」
 私が頷くと、ディッサさんは小さく「やっぱり」と呟きました。どうして何処でその話が出るのかわからずディッサさんを見つめていると、少し迷ったそぶりを見せた後にあまり言うべきことじゃないと思うけど、と前置きをしました。
「統領は、全てを拒否しはじめました。その目で見ることも聴くことも――――――全てを。だから己の目を潰し、己の耳を切り落としたと聞いています」
 私は口を押さえました。そこまで彼は追いつめられていたのでしょうか・・・・・・
「彼にはリナさんの姿は見えていない。きっと統領はリナさんのその魔力でリナさんをディッサだと判断したんだ。何も見えなくても気配で理解する。何も聴こえなくても空気の震えで言葉を理解する。統領は、そんな人なんです」
「なるほど、それでリナが連れて行かれている場所に心当たりは―――――――?」
「恐らく―――――――――」


 どこか遠くでそんな話を聞きながら、私は昨夜の事を思い出しました。
 リナさんに言われたあの言葉、あの時はそうだろうかと首をかしげて聞いていた筈なのに、今はなんとなく納得できる気がしました――――――――

















     「えへへ、実は何処の宿屋も部屋がいっぱいで、今夜は何処で寝ようか迷っていたんです。リナさんを見かけてよかったー♪」
     「別にいいわよ、その代わりに明日の朝食はあんた持ちだかんね」
     「えー」
      リナさんは簡単に泊めてくれるとは思っていませんでしたけど、それはさすがに高すぎます。お財布の中身を計算して涙しながら私は床につきました。
      ぼうっとした様子で遠くを見つめているリナさんに私は小さく首を傾げました。
     「・・・・・・リナさん、どうしたんですか?」
     「へ? 何が?」
      リナさんは訳が分からないと言うように、目を見開きました。
     「ディッサさんの事です」
      リナさんはその言葉に軽く眉を顰めた。この話題は正直避けたかったようでしたが、聞いておきたかったのです。
     「・・・・・・別に何も無いけど」
     「いいえ。あります」
      リナさんの言い訳には取り合わず、ぴしゃりと言い切るとリナさんのの正面へ体を移動した。困ったようなリナさんの顔が真正面にある。

      はふっ

      ややあって、リナさんは小さく溜息をつくと備え付けのベッドに勢いよく座りました。
     「似てると思わない?」
     「ディッサさんがですか? 誰にです?」
     「ガウリイに」
      私は小さく目を見張りました。
     「あまり、似ていない気がするんですけど」
     「似てるわ。少なくともあたしは、そう思う」
      部屋に椅子が無かったので、向かい側のベッドにゆっくりと座りました。
      ―――――――――その時のリナさんは遠くを見つめながら、何一つ見ていませんでした。


     「もしかしたら、ガウリイがああなってた可能性もあるってことよね」

      分からない。何の話をしているのですか―――――――?

     「ガウリイさんがリナさんに出会わなかったら、って事ですか?」

      そうしたら、ガウリイさんはそのまま傭兵の仕事を続けていたのでしょうか。

     「そんな事関係ないわよ。ああいうまっすぐでお人好しな奴は・・・・・・・」

      瞳を閉じちゃだめです。現実を見なくちゃだめです―――――――

     「・・・・・・いつ、誰に人生を狂わされても不思議じゃないのよね・・・・・・・」

      誰を――――――何を見てるんですか?

      ――――――――リナさんは、何を悔やんでいるんですか?

      リナさんは大きく伸びをしました。そしてその勢いのまま倒れ込んで、それからは一言も発してはくれませんでした。
      問おうと口を開きかけていた私は溜息をついて、ベッドに潜り込みました。







「ガウリイさん・・・・・・」
「とりあえず、今は休もう。リナのことは明日からにしよう。な?」
「・・・・・・・・はい」
 ガウリイさんはにっこりと私に向かって笑いかけてくれました。だから、私は何も言えなかったんです。


















「だって、誰にだって生きる権利はあるんです。私も・・・・・・・・・貴方も――――――――」

「そんな君だからより封印は強固なものになる。
 ―――――――自分から解くようなことは決してしないだろうしね」

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 最終話までいっぺんに投稿させていただきますっ

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21195神さまのお買い物 8あんでぃ E-mail URL2002/7/13 19:51:33
記事番号21194へのコメント

 どうもです(> <)以前12、3話で終了といいましたが、どうやら11話で終わる模様です。

 8話です。どうぞっ

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「ああ、キアーラ・・・・・・無事で良かった・・・・・」

「お父様お願い!私を帰して!」

彼女は解(し)っている筈だ。彼が誰よりも危険だと言う事は。

彼女には、私と同じ者が視えているのだから――――――

「・・・・・・彼が危険だと言う事を解っているのに、何故・・・・・・」

「そんなの決まっています!私が彼を愛しているからです―――――――」

その言葉に、自分の肩が大きく揺れた。思い切りその軽い体をつき突き飛ばしてから、はっと我に返る。

「やめてくれ・・・・・・・」

そんな事、聞きたくない。

「お願い、聞いてください。私にとって何よりも大切な事なの・・・・・・・」

彼女は私のそんな様子に気にする様子も無く、さらに口を開いた。

「彼が何であろうと関係ないんです!彼は彼なんです。何も悪い事なんてしていない!!」

彼女に最後まで言わせずに―――――――首元にある手に力を篭めた。

「貴方は―――――――― 一体何に怯えているんですか・・・・・・?」

徐々に弱くなっていくその脈を手のひらで感じながら、彼女の最期の言葉を聞いた―――――――――

視界が霞む。もう、何も見たくなかった。


「なぜ、私だけを見なかった?そうすればこんな事には・・・・・・・」













【神さまのお買い物】













 再び目を開いた時には、もうすでにとっぷりと日が暮れているようだった。暗いせいか先程よりも目の調子もよく、窓の外を覗いても軽く疼くだけでぼやけながらも多少は見える程度にまで回復した。

(あー、いー、うー、えー、おー・・・・・)

 あたしはうなだれた。あたしの口からは掠れた空気の抜ける感触が残るのみ。呪文を唱える事は無理なようだ。
 それでもここから早く出たかった。あたしは自分の着ているびらびらドレスを見下ろす。歩くたびに踏みそうになる裾が嫌だった。

(大体着慣れてないものを着たくないのよね)

 あたしはこの服の代わりのものが欲しくて、あたりを見回してみた。ベッドの下を覗き込み、さらに立派な装飾が施されている衣装棚を開く。自分の服が出てくればもうけもの、とは思っていたがやはりそう簡単には行かないらしい。とりあえず一番動きやすそうな服を選んで手早く着替え、部屋の奥に隠されていたペーパーナイフを取り出す。
 窓から顔を出して下を見た。霞んでよく見えなかったが、結構な高さがあるようだ。シーツを裁ってロープ代わりにしようと思ったのだが、この窓を降りるにはかなりの長さが必要だろう。この方法では効率が悪いかもしれない。
 かといって魔法の使えないあたしには屋敷の中を強行突破というのはいささか無理があるような気がするし、魔法が使えるなら最初から窓から降りている。

(うーみゅ。やっぱり頑張るかな)

 そこまで考えてから、あたしはやっぱりペーパーナイフをシーツへ突き刺した。
 布というものは縦糸と横糸と呼ばれるごくごく普通の糸を、細かく細かくがったんごっとんがったんごっとんと機織機で織って出来上がるものだ。織り込まれた上糸と下糸は縦、横へ引っ張られる分にはとても強靭だ。しかし、布は斜めに引っ張られるととたんに脆くなる。
 皆様、窓からシーツなどの布を使って逃げ出す時は、そこを念頭に入れて頑張ってもらいたい。って、あたしは誰に言ってるんだか。
 沢山の布を破っては結び、裁っては結びを何度も繰り返しそれが十分な長さになったことを確認すると、先程割った窓の枠を無理矢理外し、あたしは分厚そうな立派なベッドの柱にその簡易ロープを縛り付けた。何度も引き、結び目が解けない事を確認すると、あたしはペーパナイフを口にくわえ、窓を蹴った。スカートなんだから・・・・・下に人がいませんように!


 襲いくる落下感というものは何度体験しても慣れないものではあるが―――――――――――あたしはたった今降りてきた窓を見上げて嘆息した。自分が降りてきた所からこの地面まで建物の二階ほどの高さしかない。それなのにどうしてあんなに高いと思ったのだろうか?

(目がよく見えないと不便よね・・・・・)

 口にくわえていたペーパーナイフを右手に構えなおし、あたりを見回した。周りに見張りがいないことを確認するとあたしは一度深く息を吸うと、極力気配を消して進み始めた。じんじんと少しずつ痛み始めた頭を押さえながら、納得がいかないあたしは首を傾げた。

 あたしは一応人質のはずだ。何故こんなにも警備が薄いのだろう―――――――?

 何はともあれ、見つからないなら見つからないに越した事は無い。太陽が出ていれば方角を探る事も出来るのになぁ、と思いつつあたしはあたりを見回す。と、とたんにぐらりと世界が揺れた。いくら立ち上がろうとしても痛みのせいで膝に力が入らない。頭が――――耳の奥から痛むのだ。耐えきれず頭を押さえる。痛みのせいでただでさえぼやけていた視界がさらに霞む。
 あの部屋を離れてから、その痛みは徐々に増してきていた。そんな自分の症状から、あの部屋で焚かれていたものの正体をようやっと悟る。

(なるほど・・・・・・・朦朧としていた筈だわ)

 溜息をついた。あたしが寝ている間にとんでもない事をされたものだ。
 と、不意に背後から不意に肩を叩かれて、あたしは心臓が飛び跳ねた。慌てて振り向き後退り、ペーパーナイフを構えた。が、すぐにふーっと力を抜く。知った顔だったからだ。
 そこには、あたしにペーパーナイフを突きつけられ困ったような顔をしているディッサがいた。

(ったく、びっくりさせないでよ・・・・・)

 聴こえていないはずだったのだが――――――――

 あたしが小さく呟いた言葉は、聞こえていないはず。彼は少し顔をしかめてから目を閉じ何かを呟き始め、両手をあたしの顔の横にかざした。それはほんのりと暖かく、それと同時に、先程より少し収まっていた、頭に疼くような痛みがあたしの襲う。あまりの痛みに視界が真っ暗になる。

(―――――たーーーーっっ!!痛い痛いっ!!)

 あまりの痛みに悲鳴をあげるが、口を思い切り塞がれる。口を塞がれながらもディッサは何かを呟く事を止めなかった―――――――――って、これ。
「・・・・・・治療(リカバリィ)?」
 喋れないはずの自分の声が、明瞭に聴こえた。
「あれ?」
 どうやら声が出なかったのではなく、耳が聴こえなくなっていた為に自分の声が聞こえなかったせいで声が出ないものと勘違いしていたらしい。
「声、聞こえますか?」
 ディッサの言葉にあたしは頷いた。
 という事はやはりあたしが閉じ込められていた部屋に焚かれていたものは・・・・・・
「・・・・・・・・麻酔ね」
 あたしの耳と目を潰して、その痛みを緩和するために麻酔の働きがある薬を香にして焚いていたというわけか。だからあたしの周りの警備はあんなにも薄かったのだろう。これだけの痛みでは先程の麻酔とは別の意味で意識が飛ぶ。
 麻酔の焚かれている部屋に居る間は良いが、もし離れれば痛みで意識を失うだろう。もしあとからあたしが逃げ出した事が分かっても、倒れているあたしを探し出して拾えばいいのだから、そんなに焦る必要も無いのだろうし。
 でも、あたしは首を傾げた。あたしの記憶が正しければあれはかなり強い麻酔だ・・・・そう、香を焚いている間あたしの意識が混濁するほどに。しかし、それだったらこんなにも目は痛くならないはず。それに、統領・・・・・・・
「・・・・・・うーみゅ」
 解せない。
「まあ、なんかわかんないことはあるみたいですけど・・・・・・リナさんの悲鳴を聞いた奴らがが駆けつけてくる頃だし」
「うーん、分かったわ。これは逃げてから考える」
 あたしの言葉に頷いてディッサは浮遊(レビテーション)の呪文を唱え始めた。





 浮遊(レビテーション)ならば他の呪文も唱えられる。あたしは治療(リカバリィ)で目を治療しつつ、ふよふよとできるだけ高度を取りながらその場を離れていた。
 しかし見つかったらば、集中しなければ呪文を維持できない高速呪文の翔封界(レイ・ウイング)に切り替えなくてはいけない。あたしはのろのろとしか進まない浮遊(レビテーション)で苛々しながら飛びつつ見つからない事を節に願った。目が治るまでは。
 唱えても唱えても一向に回復しない視力にあたしは微かな不安を覚えた。どうしても見えない。痛みが引かない。いや、むしろ酷くなっていっている気がする近くのものしか判別できないうすぼんやりとした視界。光が入るたびに痛む目。そういえば、目というものは人間の体の中で唯一自己回復が不可能な部分だと魔道士協会の研究結果にあった気がする。だから、盲目の人を治すための呪文の研究が大変と―――――――
 あたしは頭を振った。さすがにこのまま見えないままになってしまうだなんて思わない。思いたくなかった。うすぼんやりとしたままの目であたしは後ろを振り返った。振り向いたそこには白い屋根があるのだろうが、あたしに見えるのはただ白のかたまりだという事実に少し嫌な気分になる。

 統領、普通ではないとは思ったが、それでも国民をここまで虐げるほど悪い人ではなかったような気がする。


 では、彼をそこまで追いつめた物は何――――――――?


「そういえば・・・・・・・」
「何?」
 不意に思い出したように言ったディッサにあたしは小さく首を傾げた。
「リナさんとはじめて会った時、こんなまっくら夜だった気がするんですよね」
 何かが弾けるような音を聞いたかもしれない。あたしは見えないにもかかわらず顔を上げ、視線をディッサに向けた。見えないからこそ、他の感覚は鋭くなっている。

 ああ、やっぱりディッサは・・・・・・・・

 確信してしまった。疑問が解決した喜びよりも別の感情に満たされ、あたしは目を閉じた。
「それで、あたしは男の格好をして、迷子のふりをしてあんたを誤魔化したのよね」
「・・・・・やっぱり会った事、あったんですね。じゃあ、間違えないんだ」
「ええ」

 心当たりが無いと言ったけど、そうじゃなければいいってずっと思っていた。だって、彼は―――――――

「あなたは、どうして怒らないの?」
「え?」
 どうしてあたしが、こんなにも腹が立つ。
「あなたは、一体何人に人生を狂わされてるの?! どうして、信じていられるの?!」
「声が大きいです。見つか――――――」
「うるさい! 答えて!!」
 どうして彼は―――――――
「もう、全部思い出しているんでしょう? あたしに会った時の事。
 あんたはあたしたちが―――――」
「ええ」
「それなのに―――――」
 彼は、全てを思い出してる。それでも、何故冷静でいられる?こんな、こんな―――――――
「俺は確かに、いろいろなひとに、いろいろ利用されて生きてきた。だけど、それでも悔いた事は無い。この生き方をしていて、俺がこうして生きている事で傷ついた人は今まで一人もいなかったよ・・・・・・今までは。だから良かったんだ」
 あたしは何も言えなかった。それは彼の言うとおりだったから。
 いつのまにかその場に止まってしまっていた。空の上で彼はあたしの手を引き、さらに進んだ。


「リナさん」
「は?」
「ごめんっ!!」
「え? って、ひわぁぁぁぁぁ!!」
 彼はあたしの肩を強く掴むと思い切り地面に向かって突き落とした。って、自慢だけどその気になれば馬車でも持ち上げられるあたしの浮遊(レビテーション)の呪文が生み出した浮力をさらに上回る力であたしを突き落としたのだから、コイツ人間じゃない。
「統領から逃げられるとは思っていなかったけど、見つけるの早すぎますよ」
 彼のうんざりとした声を聞きながら、あたしは腰をさすりつつ立ち上がった。浮力が残っていたからいいものの、痛い。
「ちょっと――――――!」
「はい。これどうぞ」
 文句を言おうと口を開きかけたあたしの目の前に彼は宝珠を差し出した。思わず反射的に受け取ってしまったあたしを確認すると、彼はにっこりと笑んだ。
「それ、きっとリナさんが持っておくべきなんだと思います。受け取ってください」
 そう言うと彼はあたしから背を向けた。
 彼は歩きながら右手をひらりと一回振って、ちらりとこちらを振り向いて笑う。
「どこ行くのよ」
「リナさんは皆さんのところへ戻ってください」
「あんたは――――――」
「いいから」
 にべも無くそう言われ、あたしは黙り込むしかなかった。彼は統領と決着をつけたがっているのかもしれない。そうしたらあたしには何も言えない。統領があたしとがキアーラという人を間違えた以上、少なくともここにキアーラはいない。では―――――――
「一人でいけますか?」
「・・・・・・あたしを誰だと思ってるのよ」
「失礼しました」
 彼はそう言って笑った。


「・・・・・・・・・ちゃんと戻ってきなさいよ、デュクリス。
 あんたとあたしたちは・・・・・・もう、敵じゃないんだから」





 あたしは走った。呪文を口の中で唱え高速でその場を離れる。途中一度だけ振り向いたが、やはり何も見えなかった。
 向こうの視界にも入らないであろう上空まであがってから、あたしは彼に渡された宝珠を見た。それは宝珠というよりも宝石護符(ジュエルズアミュレット)に形は近い。まるで宝石のように細かくカットされ燦然と輝いていた。
 向こう側が見えるのではなかと思うぐらいに透明度が高いのに、それは銀色に輝いていた。光を反射する銀色なのに透明度が高い。ありえるはずのない事なのにそれが事実である、そんな不思議な宝珠だった。



「やっぱりあんたは・・・・・・・お人好しで・・・・・・・似てるわよ、ガウリイに」










     「えへへ、実は何処の宿屋も部屋がいっぱいで、今夜は何処で寝ようか迷っていたんです。リナさんを見かけてよかったー♪」
     「別にいいわよ、その代わりに明日の朝食はあんた持ちだかんね」
     「えー」
      あたしの言葉にアメリアは何故か涙しながら財布の中身を確認していた。あんた王女でしょうが。
      王女でありながら金銭感覚が逼迫しているというのもおかしい話だが、贅沢三昧で大きな顔をしている人間よりもずっといい。
      あたしは少し笑ったあと、窓の外を見上げた。
     「・・・・・・リナさん、どうしたんですか?」
     「へ? 何が?」
      何故そんな事を聞かれたのか、理解できずにきょとんとアメリアを見返した。
     「ディッサさんの事です」
      あたしはその言葉に軽く眉を顰めた。その話題は正直避けたかった。
     「・・・・・・別に何も無いけど」
     「いいえ。あります」
      いつにも増してまっすぐなアメリアの瞳からは、逃げられそうも無かった。

      はふっ

      小さく溜息をつくと備え付けのベッドに勢いよく座った。あたしですらこの感情をなんと言ったらいいのか理解していない状態なのに。
     「似てると思わない?」
     「ディッサさんがですか? 誰にです?」
     「ガウリイに」
      あたしの言葉にアメリアが小さく目を見張る。
     「・・・・・あまり、似ていない気がするんですけど」
     「似てるわ。少なくともあたしは、そう思う」
      部屋に椅子が無いので、アメリアはあたしの向かい側のベッドにゆっくりと腰を下ろした。


     「ガウリイが、ああなってた可能性もあるってことよね」


      知らない土地で知らないうちに倒れて―――――――


     「ガウリイさんがリナさんに出会わなかったら、って事ですか?」


      それまで自分がどうしていたか、何も覚えていなくて―――――――


     「そんな事関係ないわよ。ああいうまっすぐでお人好しな奴は・・・・・・・」


      そして、苦しい生活と不安な日々を余儀無くされる―――――――


     「・・・・・・いつ、誰かに人生を狂わされてもしょうがないのよね・・・・・・・」


      あたしは大きく伸びをした。そしてその勢いのまま倒れ込んだ。



 かつて出会ったあの人獣を思い出した。敵であるにもかかわらず、あたしは彼を敵視出来なかった。
 迷子だと言った。その嘘をあっさりと信じて、親の所まで送ってやると言ってくれた彼。
 瀕死のところを異形の姿に変えられる事によってその命を繋ぎ止められたと言った。世界の全てを諦観しているその瞳は、それでも人々に対する情愛に満ちていて・・・・・・
 自らすすんでザナッファーをその身に宿した彼の気持ちは、一体どんなものだったのだろう?

「あたしあんたの事、わりと好きだったのよね・・・・・・・」

 ・・・・・・・あんな優しい人獣を憎むことができなかった。

「ねえ・・・・・・・」

 あんな異形の姿に変えられても。

「あんたは強かったね――――――」

 それでも、信じる事をやめなかった。

 誰も、憎まなかった――――――――――――


 風の音を聞きながら、銀色の宝珠を握ってゆっくりと目を閉じた。






     ただ貴方が出来ること

     かろうじて愛せること

     信じること

     きつく抱いてやれること






 あたしができる事。それ自体は多くもないけど、少なくもないと思う。
 けれど、できる事ではなくて・・・・・あたしがやるべき事は一体何なのだろう――――――――?














「人じゃないから、一緒に生きられないだなんて・・・・・・・そんなの人間のエゴです!!」

「もし、この封印を解けるとしたら、それは期が熟したってことだからね」







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 よわよわリナさんと人殺し統領がいます(汗) 困りました。

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21196神さまのお買い物 9あんでぃ E-mail URL2002/7/13 19:58:12
記事番号21194へのコメント

 どうもですっ。某お方にご相談のメールをしたときよりもさらに加筆修正してみました。あはははははは(汗)

 えっと、ディッサが誰だか分かりました?(汗) 分かりにくい書きかたしてすみませんです(汗)

 9話です。どぞっ

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ただひとつ。それだけを祈っていた―――――――


神さまは優しくあって欲しい。


それは綺麗事か?






     涙で生まれた魔物は

     苦痛の霧を晴らせた?

     私は大きくなって

     剣や弓の在り処も分かるけど






――――――――彼女がそうしていたように、耐えさせてくれ。

俺に剣を持たせないでくれ
俺に弓に矢を番えさせないでくれ


そんな事望んでない、望んでいないんだ。

でも、必要ならば・・・・・・・・・・・


俺は貴方を脅かす魔物になる――――――――――














【神さまのお買い物】













「リナさん!」
 呪文を解除して地に足をつけた刹那、かけられた声にあたしは振り向いた。やや遠くからこちらへ向かってくる白い影。
「・・・・・・アメリア?」
「あああ、良かったリナさん無事だったんですね!」
 この距離でようやくアメリアだと、なんとなく分かる。あたしの正面まで走ってきたアメリアはあたしの顔を確認してから、ぶつぶつと呪文を唱え明り(ライティング)を生むと空へ放り投げた。
「いだっ!!」
「へっ?」
 何も考えずに立っていたため、アメリアの生んだ明り(ライティング)をモロに見てしまった。まだ目が完全に回復していなかったらしく、あまりの痛みにあたしはしゃがみこんだ。
「リナさん? 目ですか?」
 しゃがみこんだままきつく目を閉じたあたしに、アメリアは心配そうな声をかけてきた。あたしが小さく頷くのを見ると、ちょっといいですか、と言いながらあたしの目を覗き込んだ。
「みんなは?」
「えっと、手分けして探してました。今目印を飛ばししましたから、皆さんこっちへ向かってきてると思いますよ」
「そう」
 動かないで下さいね、と言いながら復活(リザレクション)を唱え始めたアメリアに小さく返事を返すと、あたしは目を閉じた。目を閉じてもなお流れ込んでくる光のせいで目が焼け付くように痛く、あたしは慌ててアメリアの手を取った。
「いいっ!アメリア、呪文はいらない!」
「リナさん」
「ごめん、平気だから・・・・・・」
 アメリアの呪文を止め、痛みが完全に消えうせてからもう一度目を開いた。光を見る事は出来なかったが、夜の闇の中にある僅かな光には耐えられる程度になっていた。
「でも戻ってから改めてもう一度治しましょうね、リナさん」
 アメリアは宥めるように言ったが、復活(リザレクション)を使ったあたり、相当重症だったらしい。しかしあたしはそんな事を言っていられないのだ。思わず彼に言われたとおり戻ってきてしまったが、あとから何故言うとおりにしてしまったのかと、ふつふつと自分に怒りが湧いてくる。
「それじゃあアメリア、あたしはちょっと行かなくちゃいけないところがあるから、みんなと一緒に来てね」
 呪文ありがとねー、とアメリアに言ってからあたしは呪文を唱え始めた。
 いつもよりも少しだけ長い呪文を―――――――
「え?え? ああああ、ちょっとリナさん?!」
「翔封界!」
 アメリアの制止の声を無視して、あたしは呪文を開放した。そしていつもと比較にならないくらいの速度であたしはその場を離れた。飛びながら、あたしはもう一度瞳を閉じる。願わくば、予想は外れていて欲しい。
「彼は人間よ・・・・・・人の運命を変えるなんていかなる者でもしてはいけない事だわ。その人の運命を変えることを許されているのは、その人。自分自身だけよ―――――――!」
 あたしは速度を上げるために高度を下げようと、下を見た。そして屋根の間から微かに見える明り(ライティング)の光を見ないように片目を閉じた。
「―――――――!?」
 慌てて、あたしは呪文を解除し、地面へ降り立った。そして自分の視界が普通でない事にようやく気付く。
 そして耳は簡単に治り、目がなかなか回復しない理由をようやっと悟った。そう、最初からあたしは目を潰されてなどいなかったのだ――――――
 もう一度目を閉じた。
 統領は全てが視えると言った。彼に視えるのが、今あたしが視ているようなこの世界に流れる魔力の事だったとしたら―――――?

「リナ!」

 声に振り向くと、ぼんやりと金色が見える。
「・・・・・・ガウリイ」
「無事だったか・・・・・怪我は?」
 近い位置にガウリイが来て、そこまでしなくては彼の姿は確認できなかったが、それでもこうまでも視界が危うい事の理由がわかった為か、逆にほっとした。もう一度片目を閉じ、確認をしてからガウリイの言葉には答えずにあたしはおもむろにガウリイの左腕を掴んだ。
「リナ?」
「ついて来て」
 そしてあたしは再び呪文を唱え始めた。そんなあたしの様子にガウリイは小さく首を傾げたが、あまりにあたしが切羽詰った顔をしていた為なのか、それともあたしが説明をしない事は今に始まった事ではないからか、ガウリイは何も言わずにあたしの肩に掴まった。

 どうして、突然あたしの目がこんな風になったのか―――――――

 わからない、わからないが・・・・・・・早く彼のもとへ戻らなくてはいけなかった。
「彼は、敵じゃないから・・・・・・・敵じゃないから、止めなくちゃいけないのよ。彼が彼じゃなくなる前に―――――」
 翔封界で飛びながら言ったあたしの言葉を、ガウリイは相変わらず理解できていないようだったが、それでもこの言葉には頷いてくれた。
「なあリナ。俺さ、ディッサの事覚えてないって言ったけどな・・・・・・なんとなく覚えてるような気がするんだよな。なんとなく・・・においが、な」
「ガウリイ・・・・・」
 ガウリイの勘は恐らく当たっている。そして、ディッサの勘も。そう、あたしは彼のことも、あいつの事も覚えているのだ。忘れられる筈が無かった。
 その事件にはガウリイも巻き込まれていたから、ガウリイが覚えていても不思議ではないし、この国へ来る前・・・・・彼が最初に言ったように、この事件から身を引く事など出来やしないのだ。
 あたしはもう一度目を閉じた。視界は塞がれた筈なのに、何故か分かる。目で見るよりも鮮明に『視える』。これが、統領の言った全てが見えると言う事なのか。
 あたしは自分の手を見た。赤い気のようなものがあたしの周りを廻っているのが分かる。ガウリイを見た。彼の周りに流れる僅かな青い気が見えた。そしてガウリイが腰に差している剣へ、あたしの、ガウリイの、あたりの気は流れ込み、それらが色を変えて噴出しているのも見える。
 魔力の流れが見える。魔道士の周りにはその人の持っている魔力が溢れているのが分かる。
「どうしちゃったのかしら・・・・・・・あたし」
 目を開けばそれがよりわかるが、明り(ライティング)程度の弱い魔法にも過剰に反応してしまう。どんな小さな魔力でも、具現しているのを至近距離で見ると目が焼けるように痛くなってしまうのはそのせいだったのだ。光に弱いのではない。『魔力』が生んだ明りだったから、あんなにも目が痛かったのだ。
 そして、今のあたしには見える。どす黒い気が溢れ出しているのが。流れの原点へ視線をやる。白い屋根から出ているその黒い気が―――――――それが誰のものなのかもわかってしまい、あたしはたまらなく恐くなった。肩に掴まっているガウリイの手を強く握った。

 恐い。たまらなく恐い。

 あたしはかつて一緒に戦ったエルフの言葉を思い出した。

『・・・・・・あなたには・・・・・・人間には・・・・・・
 精神世界面(アストラル・サイド)にいる『あれ』の姿が見えないから、そんなこと言ってられるのよ・・・・・・!』

 彼女もあの時は、これと同じくらい・・・・・いや、これよりもずっと恐怖を抱いていたに違いない。なんとなく自嘲の笑みを浮かべ、それでもあたしは速度を上げた。
 うすぼんやりと、魔力の光に灯された白い屋根は目前だった。
「ディッサ・・・・・・・・デュクリス!!」
 勢い込んで地に下りる。彼と別れたのはどのあたりだったか・・・・・・呪文を解除して、あたしは力の限り叫んだ。
 止めなければいけない。なんとしてでも。
「―――――ガウリイ、気配で分かる?!」
「ああ、今は二つしかない・・・・・・こっちだ!」
 ガウリイはあたしの手を引いて走り出した。気配は二つしかない・・・・・・それでは、その他の人間は?
 あたしには見えないが、血のにおいが強く鼻をついた。足元のぬかるんだような感触にぞっとする。片手で口元を押さえ、ガウリイにもう片方の手を引かれながら強く目を閉じて進んだ。
 一際大きい気配があった。とても暗く、黒い。この気配は――――――――

「デュクリス・・・・・・・・・・デュクリス―――――!!」

 大きく叫んだ。止まれ、殺戮よ止まれ―――――――
 このままじゃあ、目覚めてしまう。最悪の『アレ』が。視える・・・・・あの何よりも邪悪なものが!!
「リナ!」
 目を閉じたまま走り出そうとしたあたしをガウリイが押しとどめた。ぱっと目を開けて、顔を見上げたガウリイの顔も緊張していた。ガウリイもその鋭い感覚で感じ取っているのだ。あの邪悪な気配を。
「目は絶対に開けるんじゃないぞ。でもそれじゃあ走れんだろ? ほれ」
「は?」
 差し出された背中にあたしは思わず間抜けな声をあげる。意味が理解できない。
「目が見えなきゃ走れないだろ?急いでるんだから、ほら乗れ」
「いや、目は開けて走れるし」
 盛大に溜息をつかれた。思わずむっとする。
「あんまり見えてないんだろ? いつもより反応が少し遅いしさっきから蹴躓いてるだろ」
「う゛」
 ほれ、と言いながらさらに背中を差し出してくるガウリイに、あたしは溜息をつきながら背中に乗った。僅かに見えた赤い景色に少し気分が悪くなる。
「目は閉じてろよ」
「・・・・・・・・・・」
 念を押されたその言葉に言われずとも、あたしは硬く目を閉じた。












「・・・・・・・彼女の声が聞こえないのか、ディッサ」
「聞こえてるさ」
 背から大きなバトルアックスを抜いた。自身の身長よりも高いのではないかと思われる巨大なその武器を一度大きく振り、血を払った。
「リナさんは、キアーラじゃない。それは統領、お前も分かっていたはずだろう?」
 統領は閉じたままの目に手を当てた。己が潰したその目には、大きな傷跡がひとつ。彼は小さく笑んだ。この溢れ来る感情はなんだろうか。
「お前は誤解をしているようだ。教えてやろう、私が恐怖したのはキアーラの魔力ではない」
 統領は懐から短剣を取り出した。己の目を潰した時の短剣。

 思えば、どこから自分は狂ったのだろうか?

「キアーラの魔力は確かに大きいが、それを扱う術のないあの娘にとって大きな脅威ではない。魔力をこの世界へ具現させる術を持たぬのだから、心配する必要も無かった。ならば何に私は恐怖したと思う?
 ・・・・・・・私が、恐怖したのは。お前だ」
「俺? 俺にはたいした魔力など―――――――」
「無い?! 無いと言いたいのか?! 貴様は己の中にあるその異形を無視する事はすまいな?!
 それが――――――どれくらい危険なものなのか、分かっている筈であろう?!」
 デュクリスは目を閉じた。分かっていないとは言わない。だが・・・・・・
「・・・・・しかしそれがこの国をこんな風にした理由になるのか?」
「私は神の落とし子。そしてここは私の、神の国。いかなるものであろうとも口出しは許さぬ!!」
「・・・・・・それが、返事か」
 己の内から憎しみが湧いてくるのが分かる。デュクリスはそれに抗わずに己の獲物をもつ手に力を篭めた。
「それが、セレイブ達を苦しめた・・・・・・・キアーラを殺した理由なのか?! 神の国は、俺を追い出すと言う大義名分の元にいつから破壊の国になった?!」
「お前は・・・・・・彼女を巻き込みたかったのか?」
 統領も、デュクリスも互いの問いには答えなかった。ただ、諦めたような渇いた笑みだけを浮かべたのを、双方は見た。









 神よ。

 ――――――――彼女がそうしていたように、耐えさせてくれ。

 俺に剣を持たせないでくれ
 俺に弓に矢を番えさせないでくれ


 そんな事望んでない、望んでいないんだ。

 でも、必要ならば・・・・・・・・・・・


 俺は貴方を脅かす魔物になる――――――――――



 何故、国を・・・・・・神たる王の、神たる国を、自身でこんなにも蔑ろにするのか。


「俺はあなたを殺すためにここに来た!!」






 俺の中の魔物が、目を覚ます――――――――――

















「彼の中にいるのは確かに、人とは一緒に生きられないものです。ですが、貴方は彼の姿を見たでしょう? 彼の優しさに触れたでしょう? 不可能ではないはずです。共存は――――――愛し合う事は!!」

「これは保険だから。だから、僕の目的が達成されていれば君は犠牲にならないのだけどね。 でも失敗したならば――――――――『君』は『僕』になる」










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 血の海です。えぐいです(汗) でもおんぶのガウリナ大好きなのですv


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21197神さまのお買い物 10あんでぃ E-mail URL2002/7/13 20:06:57
記事番号21194へのコメント
 あんでぃです、どうもです(> <) この回はアメリアの一人称です。アメリアの一人称ってとっても書きやすくて好きですv

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「ど、どどどどど、どうしましょう・・・・・・・どーしましょーーーーーっっ!!」
 私はリナさんが飛んでいってしまった方向と、その周りをおろおろと見回しました。リナさんを追いかけるべきか、ゼルガディスさんたちを待つべきか・・・・・
「あ゛ー―――――――――っっ!! ゼ・ル・ガ・ディ・スさー――――んっ!!」
「やかましいっ!!」
 こちらの目印に気付いてくれたらしいゼルガディスさんがこちらへ走ってくるのを見て、私は思わず声の限りに叫び・・・・・そして、怒られました。
「そんな大声で、騎士たちに見つかったらどうする?!」
「あああああ、ごめんなさい!! でもそれよりも大変なんです!! リナさんが!」
「何?!」
 ゼルガディスさんが慌てたあたりを見回しましたが、私はそんなゼルガディスさんの腕を無理矢理引っ張りました。
「早く! リナさんを追いかけましょう!!」
「待て、訳がわからーん!」
「わかってます! 行きながら説明しますってば!!」
 走りながら、息も切れ切れにゼルがディさんにリナさんが戻ってきた事、目の調子がおかしかった事、そしてすぐにどこかへ行ってしまった事を話しました。
「・・・・・・・ゼルガディスさん、リナさんが、行ってしまったところ、心当たり、ありますか?」
 走りながらだと、言葉が切れ切れになってしまいます。それでもはっきりと、できるだけ大きな声で話し、できるだけ全力で走りました。
「あると言えば、ある。というよりも、そこしか心当たりが無い」
 その言葉に私は頷くと、ゼルガディスさんの腕を離しました。唯一の心当たり、そこは白い屋根の屋敷―――――統領の屋敷しかありません。少しスピードを上げて、そこからは無言で私より少しだけ前へ出たゼルがディさんについていきました。

 彼らが忽然と姿を消したあの時―――――――私はあるものを見つけました。そう、足跡です。この事はガウリイさんに話したら、すぐに突入しちゃいそうな勢いでしたから、ガウリイさんには内緒で、ゼルガディスさんとこっそりと調べたのです。
 足跡は途中で途切れていた為はっきりとは言えませんが、分かったのはその足跡は統領の屋敷へ向かう方角へ向かっていたという事。ゼルガディスさんは、それであれらが空間を移動したのではないとはっきりしたと言いました。しかし、一体どうやってあの場から見を隠したのでしょうか? 間近に見えてきたその白い屋根を見上げながら、私は小さく首を捻りました。



「・・・・・・・アメリア、分かるか?」
「はい。人の気配がありませんね・・・・・・」
 それに、塀の外であるにもかかわらず微かですが血の匂いがします。大量の血が流れ―――――――無差別な殺戮があったということでしょうか。少なくともこれは、一人や二人の血ではない事は確かです。
「・・・・・・・どうする? ここで待つか?」
「いいえ、行きます」
 ゼルガディスさんの問いに私ははっきりと答えると、高い塀を越えるべく浮遊(レビテーション)の呪文を唱え始めました。ゼルガディスさんも溜息をひとつついてから同じく呪文を唱え始めました。私が聞く耳を持っていないことを理解してくれたようです。

 極力冷静を装ってみても、この血の海の中に―――――血を流しているものとしてリナさんやガウリイさんやディッサさんがいないだろうかと・・・・・・・不安仕方がないです。












【神さまのお買い物】












「・・・・・・・・・・・」
 あたしは無言でガウリイの背から降りた。ぼやる視界で目の前にあるのは大きな裂傷のある男――――――いや、男だったものを見た。白い大理石の床を真っ赤な血で染めながら、彼はすでに事切れていた。体が半分になるのではないかというこの大きな裂傷は、少なくとも普通の腕力と武器を持つものができることではない。そして、剣でできるものでもない。切り口からいって魔法でやったものでもない・・・・・恐らく、恐ろしく巨大な斧のようなもので、叩き割られたのだ。
 そこまで分析してから、あたしは自分自身に対して気分が悪くなった。どうしてあたしはこんなにも冷静なのだろうか? 何が起きているのか、どうなっているのか、分かっているが見えていない――――――それがこんなにも人を冷静にさせるものなのだろうか。
「リナ、大丈夫か?」
「・・・・・・・・・・大丈夫」
 そう言ってあたしは立ち上がった。むせ返るような血の匂いに酔ってはいるが、それは先程からずっと同じ事。この光景を知っても、自分でも恐ろしいくらいに冷静だった。
「ディ・・・デュクリスを探さなきゃ」
「・・・・・・・デュクリス」
 あたしの言葉をガウリイが反芻した。あたしはガウリイの言葉に振り向き――――――そしてやっと気がついた。
「あ・・・・そっか」
 あの時、デュクリスはあたしにとって憎めない敵だった。それは、あの事件の時にあたしとデュクリスの会話を聞いていた、ガウリイやアメリア、ゼルも一緒だろう。彼が悪い人ではなかった事は、あの時の少しの会話で分かった筈だ。それでも、あたしたちは戦わねばならなかった。

―――――――――そして、ガウリイが彼を討った。

 彼がデュクリスのことを覚えているとは思わなかった。実際ガウリイはデュクリスの名前を覚えていたわけではないだろう。でも、一度戦った相手の事、自分が討った相手の事を、いかにガウリイだとしてもそう簡単に忘れられはしないだろう。
「そっか、ディッサはデュクリスなのか・・・・・・」
「・・・・・うん」
 それ以上は何も言えず、あたしは立ち上がった。目を閉じる。そして気が流れてくる方へ――――――これもひとつの野生の勘と言って良いだろうか?――――――歩き始めた。
「・・・・・・・どうやって、生き返ったんだろうなぁ」
「うん」
 目を閉じたまま歩いていたあたしはガウリイに軽く引かれて目を開けた。すると目の前は壁―――――いや、扉だった。ガウリイが力をこめて扉を押し開けるのを確認してから、あたしは再び目を閉じて歩き始めた。暫くして足を止め、少し迷ってからガウリイに言った。
「ね、ガウリイ。デュクリスはさ・・・・・・もう敵じゃないよね。だからさ・・・・・・」

 戦う必要なんて無いよね。

 あたしはその一言が出なかった。けれどガウリイは頷いてくれた。
「デュクリスは、今俺たちの仲間だ。仲間を思うことは当然の事だろう?」
「うん」
「相手を思うなら、相手を思いやる事を忘れちゃダメだろ?」
「うん」
 あたしは小さく頷いた。


 真に仲間を想うなら、仲間を正す事とて時には必要だ。
 時にはそれが辛くても、哀しくても。







「リナさん!」
「リナ!」
 振り向いた。青い光と、蒼い光。アメリアとゼルだ。
「リナさん大丈夫なんですか?! 目は? 目は?!」
「あー、平気平気。ちょっと見え方違うだけ」
 詰め寄るアメリアにあたしは笑顔で答えると、ゼルを見た。
「ゼル、なんか久しぶりー」
「ああ」
 あたしの言葉にゼルは、懐から小さく何かを取り出した。あたしのイヤリングと同じくらいの大きさの宝珠。まわりには透明ながらも魔力が流れているのが分かる。
「何? これ」
「統領が使った。お前が連れて行かれたときに使われた姿を消すトリックだ」
 ゼルは倒れた騎士の近くに落ちていた。と言いながらそれを手のひらで転がした。
「なんだか、これを使って夢幻覚(イリュージョン)を使っていたようなんですよ。それで私たちから見えなくなったんですね。まあ、途中まで足跡は残ってましたから、それを追うことはできたのですけど」
 ああ、なるほど。あたしは納得した。
 夢幻覚(イリュージョン)は相手に見せたいと思う映像を直接送り込むことによって幻覚を見せる術である。使用中は精神集中が必要で、他の術を使うことはできない。ただし第三者からは見えないのではたから見ると間抜けであるが、それをこの宝珠を使う事によって多人数に一斉に呪文の効力を発揮させたわけだ。
 もちろんあの呪文は視覚的に影響を与えるだけなので、実際に術者が消えることは無い。だからアメリアたちが足跡を追ってある程度の場所を特定したわけだ。
 魔道書で読んだ夢幻覚(イリュージョン)についての記述を思い出しながらあたしはこの宝珠の技術の高さに関心していたのだが、ゼルがそれよりも、とあたしの思考を遮る。
「リナ、ディッサは?」
「ああ・・・・・・・・・・・うん、こっち」
 ゼルの言葉に、あたしは先ほどから向かっていた道に向かって再び歩き始めた。
 統領があたしの耳を潰したは分かった。しかしこの目は、この特別な視界は、人間が創り出せるものなのだろうか? それ以前に、なぜあたしの耳を潰したのだろうか? それを聞くことが出来ないまま、彼は逝ってしまった。
「リナさん・・・・・・顔色悪いですね。大丈夫ですか・・・・・?」
「・・・・全然」
 アメリアの言葉にあたしは振り向きざまに笑顔でそう答えた。
「リナ、ディッサは・・・・」
「うん、やっぱり前に会った事、あった。あたしも、ゼルも・・・・みんなね」
「え?」
 アメリアはまだ分かっていないようだった。まあ無理もない、彼とはここにいる四人と多かれ少なかれ面識があるのだが、アメリアとゼルはほとんど接触が無かった部類だろうから。
「ゼルは前に、ディッサに合成獣だって言われたのかと思って怒ったことあったでしょ。あれ、誤解よ。
 彼がそんな事を気にするはずが無いもの―――――――――」
「誤解、ですか・・・・・・確かに彼の物言いに、悪気は感じられませんでしたけど・・・・・・・・」
「・・・・・何故お前さんに言いきれる。そんな事が」
「彼も合成獣なようなものだったから」
「合成獣のようなもの・・・・・・・ザナッファー・・・・・デュクリス、さんですか?
 でも、彼は死んだはずじゃ・・・・・・・・」
 アメリアの言葉に、全員完全に沈黙した。
 血でむせかえるあかい屋敷。沈黙が何よりも耳に痛くて、あたしは耳を塞いだ。
「・・・・・・・・・ここであった事が全部、夢だったら良かったのにね・・・・・・・・全部、無かった事にできれば良いのに―――――――」
「リナさん・・・・・・」
「そんな事、考えなくても分かる。無理に決まっているだろう。馬鹿は何もかもが手遅れになる寸前にならないと分からないのか?」
「ばっ・・・・・・?!」
 むっとして、言い返そうとしたあたしをガウリイがやんわりと押し止めた。
「ゼルの言うとおり、手遅れになる前に止めるんだ・・・・・」
 あたしは頷いた。統領にここへ連れてこられた時に、あたしは服を着替えさせられてしまった。だから四対の魔血球(デモン・ブラッド)が今あたしの手元には無い。
 ディッサがあの時あたしにくれた銀色の宝珠をかたく握り締めた。


 銀色の宝珠。
 あたしは今世界には現在五体の魔王がいる事を確認している。異世界の魔王――――蒼穹の王(カオティックブルー)、闇を撒くもの(ダークスター)、白霧(デスフォッグ)、この世界の魔王である――――赤眼の魔王(ルビーアイ)、そしてそれらを統べるもの―――――金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)

 魔王は本当にこれしか居ない?

 他にも居るかもしれない。

 あたしはそう思い、金色の魔王の研究と平行して調べていた。そして、その魔王が存在している可能性があるというところまで研究は辿り着いた。
 銀色の魔王・・・・・・時の流れを制すもの。

 先ほどここへ来る時、この宝珠に混沌の言語(カオス・ワーズ)で問い掛けた。そして、発動した。魔血球(デモン・ブラッド)に問い掛け、魔力を増幅する為の呪文が―――――


「彼は決して悪い人ではなかったわ。その証拠に彼はあたしに自分を止めるように―――――その術(すべ)を残していった。あたしはそれに応えなくちゃいけないの」
「はい」
「分かってる」
「やるしかないんだな」
 それぞれの応えに、あたしは複雑な笑みで応えた。


「デュクリス・・・・・・・」
 あたしの言葉に彼はゆっくりと振り向いた。あたしたちの顔を見て、彼は少しだけ動揺したようだったが、すぐにその表情は消え、にっこりと笑んだ。
「久しぶりだね」
「あんた・・・・・」
 彼が発した言葉は、あたしがかつて聞いたものと同じ幼い語り口調。
「僕の事忘れちゃった? 僕はちゃーんと覚えているよ。君たちと僕が出会ったのはたかだか半月前の事だろう?」












赫い黄昏。
朱い暁。
身体を流れる紅い血。


みんなあかいけど、ちょっと違うわね。


でもそれは、全て違う色?
違うわ。そう見えるだけ。
きっと、もともとは同じ色だから。進むべき道が違っただけ。
進む道が違うことで、良くも悪くもなるならば―――――――

貴方は。そしてあたしは・・・・・・・






誤らないで、進むべき道を














「私は諦めません。生きている事には違いが無いのに、運命が・・・・・生き方の違いが何だって言うの?! 私は・・・・・・あなたたちになんて負けない!!」

「君ならば僕が混ざっても、僕が覚醒するまできっと大丈夫。君は白虎の獣人に姿を変えられても自我を失わなかったでしょう? 僕はそんなに存在感が無いから混ざったとしても分からないもん―――――――時が来るまではね」







□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 毎回話の最後に喋っている男女。女の子の方はキアーラです。統領とケンカしている時の言葉です。
 もうひとりは今回の黒幕?です。嫌なやつです。でも美形です。複雑な気分です(笑)

 銀色の宝珠、実はビーパラで出てきたものと同じなのです(汗) 私の脳みそのたんすが少ない為にこういう事態がしばしば起きます(苦笑)見逃してやってくださいです(> <)

 言い訳は長くなりそうなあとがきの為にとっておきます(笑)

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21198神さまのお買い物 11あんでぃ E-mail URL2002/7/13 20:10:37
記事番号21194へのコメント

 こんばんはですっ。そしてごめんなさい(汗) 嘘つきました。全12話でした(汗)

 黒幕の正体と決着がつくぞの12話です。どうぞ!
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■




神さまが一番偉い理由?


何事にも屈しない

何事にも影響されない

誰よりも誇り高く、誰よりも臆病。

全知全能で、そのくせ全くの無能。





だから、一番偉い。








     Because (なぜなら)

     God is watching you (神は貴方を見ているから)

     God is holding your grief (神は貴方の悲しみを抱いて)

     God is watching all shadow (全ての影を見ているから)








神さまは『ひと』を思うがままにし

神さまは『ひと』の悲しみを見てもただ流す。

でも、神さまは決して『ひと』を見逃さない。



だから、一番偉い。



神さまにとって『ひと』は道具

神さまにとって『ひと』は玩具

神さまにとって『ひと』は売り物




神さまのお買い物。
売り物は『ひと』――――――――――――












【神さまのお買い物】












「デュクリス・・・・・・・」
 あたしの言葉に彼はゆっくりと振り向いた。あたしたちの顔を見て、彼は少しだけ動揺したようだったが、すぐにその表情は消え、にっこりと笑んだ。
「久しぶりだね」
「あんた・・・・・」
 彼が発した言葉は、あたしがかつて聞いたものと同じ幼い語り口調。
「僕の事忘れちゃった? 僕はちゃーんと覚えているよ。君たちと僕が出会ったのはたかだか半月前の事だろう?」
 半月前。サイラーグからフラグーンが姿を消し、再び完全な荒野と化した時・・・・・・・あたしたちが冥王(ヘルマスター)フィブリゾを何とか倒した時だ。
「じゃあ、やっぱり・・・・・?!」
 アメリアの掠れたその言葉に、彼は誇らしげにうん。と微笑んで見せた。穢れの無い子供のような微笑みで。
「この国はね、とても動きやすかったよ。僕が来たばかりの頃は独善的な王にもまだ良心があったけれどね。でも彼は人間にしてはなかなか鋭かった。僕がここに居る事を知って、僕を恐れて追い出そうとした。僕が憑代にしていた『彼』の良心を使ってね」
 彼―――――フィブリゾは面白そうに自分の胸元を指さしながらそう言った。あたしは何も言わずに、銀色の宝珠を握り締めた。
「彼は僕を恐れながら、その心を崩壊させていったよ。そして、僕の望むものを手に入れ始めた。そう―――――負の感情をね。
 『彼』は僕に力を取り戻しちゃいけないことを本能的に感じ取っていたみたい、それを防ごうと必死だったし、自分自身決して負の感情を出すまいとしていたよ。だからこそ、あの統領以外には僕の存在がバレなかった。
 ――――――リナ=インバース、君にもね」
「悪いけど、あたしも途中からは気付いてたわよ」
 ガウリイが剣を抜いた。ゼルとアメリアは小さく呪文を唱え始める。
「それでも最期まで僕を倒す事を躊躇っていただろう?」
「お前じゃない。デュクリスを倒す事を、躊躇ってたんだ」
 ガウリイの否定の言葉に同じ事だよ。と彼は小さく笑った。その笑みにとんでもなく腹が立つ。
「でも、少なくとも彼にとって僕は神さまなんだよ。彼を蘇生させて、今まで生きてこれたのは僕のおかげ。彼の輪廻の運命を変化させたのは僕なんだから」
「それは・・・・・・私たち生きとし生けるものたちへの冒涜です!」
 アメリアは一歩前へ出た。
「――――――あなたは自分のことを神よりも偉いものだとでも思っているのですか?」
「僕たちに、神を信じろと言うんだ。君は」
 声をあげて、彼は笑った。さぞかし愉快そうに。
「僕たちは神そのものを信じるように出来ていないんだ。だからどちらが偉いかなんて言えるわけないね。 まあ『母なる彼女』を『神』と呼ぶならば、僕もまた『神の落とし子』なんだろうけど」
「神の落とし子・・・・・神に捨てられた者ということですか? あなたは今度は何をして、今度は誰に見捨てられる気なのですか?」
 アメリアの言葉に、フィブリゾの目がすっと細められた。
「面白い事を言うね」
「お前ほどじゃない」
 ゼルがすっと、庇うようにアメリアの前へ出た。あたしの目にはフィブリゾの周りに漂う気の絶対量が変わった事が分かる。まだ疑問は残っていたが、そろそろおしゃべりは終わりという事だ。
「・・・・・そろそろおしゃべりは飽きたよ」
 フィブリゾの顔から笑みが消えた。すっと腕を上げると、全身が違和感に襲われた。
「みんな?!」
 振り向くと、そこには誰もいなくなっていた。前回と同じように。
「目的は前回と同じなんだから、今回も同じようにしても良いと思わない? 彼らには街の外まで飛んでってもらったよ」
「殺さないのね」
「君が殺すんだから、僕が手を下さなくてもいいでしょう?」
 彼はくすくすと笑いながら言った。言外にあの禁呪を唱えろと言っている。こいつを倒すのに手が無い訳じゃない。しかしその前に聞いておきたいことがあった。
「ねえ、フィブリゾ」
 あたしは余裕の笑みを浮かべているフィブリゾに声をかけた。
「どうしてデュクリスだったの?」
「なぜ? ・・・・・・そうだね、彼は誰よりも強い心を持っていたよ。今もわずかだけど僕に対抗してる」
 彼は無言で自分の心臓を指した。そう、彼は誰よりも強かったと――――――あたしも思う。
「気付かないんだ。誰も憎まない心を持っている彼だからこそ、僕がいることに気付かないんだ」
「だから?」
「僕もさすがに弱ってたから。負の感情をいただきながら復活する必要があったんだ」
 時間を稼ぎたい。それがたとえ逃げているのだと分かっていても――――――
「それじゃあ、そろそろ君に呪文を唱えて欲しいんだけど」
 しかし、それも叶わないらしい。フィブリゾはそう言うとすっと息を吸ったように見えた。いや魔族だから息なんて吸わないんだろうけど。
 あたしは溜息をついた。
 以前と同じ運命の決断。
 以前は偶然勝てたのだ。本当に偶然。制御に失敗したあたしが金色の魔王に体をのっとられて、それに気付かずに攻撃をしたフィブリゾの自滅。
 以前と同じ結果になる確立だなんて無いに等しい。同じ失敗をするほどフィブリゾとて間抜けじゃないだろう。
 汗ばんだ左手で、銀色の宝珠を強く抱きしめた。右手が腰に差してあった剣を探して、そうしてやっといつもの服を着ていないことを思い出す。もっとも、剣を抜いた所で意味は無かったのだが。その右手を握られて、あたしは驚いて振り向いた。そこには暖かい青。あたしはそんなにも長い間悩んでいたのだろう。

 ・・・・・青が暖かいって言うのも変な感じね

 あたしは少しだけ笑った。
「戻ってくるのが早すぎるんじゃないの? ガウリイ」
「すごいだろ」
 おどけてそう言うガウリイにあたしは少し笑った。そして遅れて辿り着いた二人に声をかけた。
「そっちも、準備はいい?」
「もちろんです」
「お前が一番心配だぞ、リナ」
「うっさいわね。大丈夫よ」
 ゼルに一瞥をくれて、あたしはフィブリゾに向き直った。
「今回は何が目的なの?」
 滅びを望むものが生き続けている。生きる為にその手段を残しておいた。それは一体どういうことだろうか? あたしには大きく矛盾しているとしか思えないのだ。
「変わらないよ。僕たちが望むのは永遠の安寧と静寂」
「じゃあなぜです?」
「言ったろ? 僕たちが世界を壊すなんていつでもできるんだ。でもそれじゃあ意味が無いんだよ。わからないかい?」
 にっこりと笑んだフィブリゾに内心苛立ちながらあたしは目を閉じた。
「わからないさ。一生わかりたいとも思わない」
 ガウリイはそう言うと剣を構えた。
「それは残念。じゃあ、また頑張ってみる? 前は無駄だったじゃない。学習しなよ」
 何故だか、あたしたちが今いる空間とゆーものは、魔力の流れにムラがあるらしい。目を閉じるとそれが良く分かる。魔力が吐き出されているところと吸い込んでいるところ。こうしてバランスを保っているのか、この世界は。
『崩霊裂(ラ・ティルト)!!』
 アメリアとゼルの同時をフィブリゾはそちらへ視線をやる事も無くあしらう。崩霊裂は発動する事も無かった。

 ・・・・・少し動いた。

「はあぁぁぁぁぁ!!」
「馬鹿?」
「うわっ!」
 ガウリイが剣を振りかぶる。ガウリイの剣は今ただの剣だ。多少の魔力で強化されただけに過ぎないその剣はフィブリゾに触れる事も無く突き抜け、吹き飛ばされる。あたしは慌ててガウリイに駆け寄ると、気休めに過ぎないと分かってはいるが、魔皇霊斬(アストラル・ヴァイン)をかける。呪文を発動させた瞬間に、やはり少し動く。
「・・・・・・動く」
「リナ?」
 心配そうに問い掛けてきたガウリイを制してあたしはこの間にも絶え間なく呪文を叩き込み続けるゼルとアメリアに目を閉じたまま視線を走らせる。
「動いてる・・・・・混ざってる」
 あれを、ひとつの所へ終結させる事はできる?
「――――――ガウリイ」
「なんだ?」
「お願いがあるんだけど――――――――」
 あたしはフィブリゾの周りを見渡しながら、ガウリイの耳にこっそりと耳打ちをした。
「・・・・・・・・分かった」




「はっ!!」
 ガウリイがフィブリゾの一歩手前で剣を振る。それは当然彼に当たることなく、空振る。しかしそれでもガウリイはめげずに剣を振り続ける。




          銀色の海を統べる王―――――――




「何してるの? まあ、当たったところでそんななまくら剣じゃ僕に痛みを与える事も出来ないけどね」
「―――――だからって、諦めやしないさ!! 無駄だとも思ってない!」
 そうよ、無駄じゃない。諦めない。
 あたしは少し笑った。その前向きさにあたしはどれだけ救われた事か。
 ガウリイはがむしゃらに剣を振った。そう、あたしの指示した地点を。




          汝の欠片の縁に従い




 魔力の流れが、変わった。ガウリイの剣によって。




          汝の全ての力もて




 ゼルとアメリアにはあらかじめ言っておいた。少しの間、呪文を唱えるのを止めてくれ、と。




          我に更なる力を与えよ―――――――――!!




 あたしの混沌の言語(カオス・ワーズ)での呼びかけに反応して銀色の宝珠が一際大きく輝いた気がする。光を跳ね返すようで、光をいつでも受け入れる。この宝珠は、金色の王と同じくらい不思議だ。
 自分の周りに魔力が集まったのを確認すると、あたしは呪文を切り替えた。




      闇の世界に溶け込む銀色 世界の河を流れる者




「な・・・・・その呪文は!?」
 海で起きる大渦、あれはどうやって出来るか知っているだろうか?あれは潮の流れと流れがぶつかる地点に障害物があると起きるのだ。水が中心に向かって巻き込みながら、激しい勢いで回る。




      混沌の海 動き創る者 瞬く刹那




「へえ。今回は同じ失敗をしたくなかったから君を着替えさせるように計らったのにね」
 フィブリゾは動揺した様子も無くそう言った。あたしを着替えさせ、魔血球(デモン・ブラッド)を手放させたのはフィブリゾの仕業だったわけか。
 やっぱり、この宝珠は魔王自身の魔力を召喚する以外にもこの世界を滞留している魔力を一転に集中させる能力も持っているらしい。ガウリイが指示した地点で剣を振ることによって本来の魔力の流れは遮られ、この世界の魔力の滞留が少し変化する。今、この世界に滞留していた魔力はあたしの周りを大渦のように回り、中心に居るあたしに集まってくる――――




      我らが前に立ち塞がりし 流れを否定す愚かなる者に




「リナ=インバース。やっぱり君は天才だよ。母なる『あのお方』だけじゃなく、父なる『彼の者』まで――――――」
 父なる―――――ああ、やっぱりこの銀色の血の持ち主は高位の魔王だったわけだ。
 正直、四体の魔王よりも行為の存在とはいえ、あたしの手元にある宝珠はひとつ。これだけでフィブリゾを倒せるかどうかなんて、全く自信が無い。だからもうひとつ布石が必要だった。魔力を・・・・・・全てを賭けるこの一発に集める事が――――――――!




      我と汝が力をもて 等しく与える時の旋律っ!!




 世界が、銀色に染まった―――――――――――――


















     暗闇の中に漂う感覚に襲われる。あたしは苦笑した。以前に引き続きまたしても制御に失敗してしまったらしい。
     『お嬢ちゃん――――――いや、リナさん』
     デュクリスだ。なんとなくあたしはそう確信した。
     「デュクリス・・・・・」
     「ありがとう」
     彼はにっこりと笑んだ。あたしは、彼を救った事になるのだろうか―――――









□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 デュクリス。好きだったのですよ(泣) そしてさようならデュクリス(酷)

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21199神さまのお買い物 12(最終回)あんでぃ E-mail URL2002/7/13 20:18:59
記事番号21194へのコメント

 最終回です!! この話を思いついてからまる一年(笑) ようやっとここまで辿り着きました(泣)


 最終回こそはガウリナ風味にしたかったのですけど時間設定が第一部終了から第二部始まる前なので出来ませんでした(泣)
 あんでぃの話の毎回のごとく微妙ですが。最後までお付き合いいただけると幸いでございます(> <)

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「えっと、あなたがキアーラさん?」
「はい」
 宿に訪ねてこられたときには死んだはずなのに、とすごく驚いた。彼女はあたしの服と魔血球(デモン・ブラッド)をわざわざ届にきてくれたのだ。
「わたし、貴女になって戦っていた気がするの」
「・・・・・・覚えてるの?」
「ええ、父もちゃんと覚えています」
「あなたも、統領のように見えないものが―――――――?」
「・・・・はい」
 あの視界は、彼女のものだったのだ。あたしは彼女と一緒に・・・・・フィブリゾを倒したのだ。
 キアーラの父―――――統領もちゃんと生きているらしい。目の前で無残な死体を見たというのに。不思議な気分だ。
「そう・・・・・・」
 あたしと彼女との会話は、それで終わった。彼女はありがとう、とひとつお辞儀をして去って行った。あたしたちの戦いの後が欠片もなくなった町の中へと――――――










【神さまのお買い物】










 空が綺麗だった。すごく。
「リナさーん」
 大きく伸びをした。大きく息を吸った。血の匂いばかりを嗅いでいたせいだろうか、久しぶりの新鮮な空気がおいしかった。
「リナさんってばー」
 ふかふかのベッドに身を投げ出して目を閉じた。もう魔力の流れは見えない。あの呪文を唱えてからあたしの体はまるで正常の―――――そう、まるで事件が起きる前のようになっているのだ。一部を除いては。
「・・・・・・・なに?」
「今回の事件のことです。さっぱり訳が分かりません」
 言ってアメリアはあたりを見回した。ここはエーグマティの首都スフォート。そう、あたしたちが昨日まで戦っていた場所である。街はまるで何事も無かったかのように活気を取り戻していた。青い空の下で露天が建ち並び、人々の笑い声は明るい。

 ――――――――そう、まるで何事も無かったかのように。

「どうしてだか分からないけど、あたしたちのあの戦いは無かったものとして終わってるみたい」
「なんでですかっ!! あんなに頑張ったのに!!」
「そうね」
 昨夜の事はまるで何事も無かったかのように―――――いや、実際無かった事になっているのだ。へとへとに帰ってきたあたしたちに宿のおばちゃんは「夜更かしするんじゃないよ」と怒り、夕べの事をそれとなく聞いてもいつも通りの普通の夜だったと誰もが答えた。もちろん身分差別も無く、普通の王国として今この国は成り立っている。
 もともとあの制度は、フィブリゾにのっとられたデュクリスがこの国に来た事が原因だったのだ。デュクリスが居なければこの国は平和なのだ・・・・・複雑な事に。
「たぶん、あたしの唱えた呪文のせいだと思うわ。何もかも無かった事になってるのは」
「一体どんな呪文を唱えたんだ?」
 いつの間にやってきていたのか、ゼルがあたしの正面の席へつく。彼はウエイトレスに一言「コーヒー」とだけ伝えると、あたしに向き直った。
「時を司る、金色の魔王の次に高位な魔王の呪文を」

ぶぅっ

 あたしの言葉に、アメリアは派手にココアを噴き出した。汚い。
「いるんですか?!」
「いないという確証はないでしょ」
「ということははっきりしていないのか」
 アメリアの問いに淡々と答えるあたしにゼルはそう切り替えした。
「そうね、あの呪文が発動するまで。いないことも無いだろうけどいるって確証は無いって感じだったの」
 存在するからこそあの呪文は、あの宝珠は発動し、今ここにあたしたちがいる。あたしは手の中の宝珠を見た。
 これだけが、あの時のあたしたちが居た証―――――――









「リナさん」
「なに?」
 先ほどしつこく食い下がっていたアメリアが、今度は聞きにくそうに問い掛けてくる。
「あの、デュクリスさんのこと好きだったんですか?

ぶはっ

 迷って言いにくそうにしていても結局単刀直入なアメリアのその問いにあたしはカシスジュースを噴き出した。もったいない。
 慌ててナプキンでテーブルを拭きつつあたしはゼルに目配せした。どっかいけ、と。あたしの視線に気付いたのかもしくはもともと興味が無かったのか、ゼルはやれやれと立ち上がると部屋へ戻っていった。
「嫌いじゃなかったわ。ううん、むしろ好きだったと思うわ」
「リナさん」
「でも、恋愛感情とかじゃなかったのよ」
「心配だったんですね・・・・・・・」
 あたしは今度はコーヒーを注文した。あまりコーヒーは得意じゃないのだが、香りがこの上なく好きだった。
「リナさん、言ってましたよね。デュクリスさんはガウリイさんに似てるって」
 アメリアは覚めたココアを口に含んだ。暫く迷ったようだった。
「リナさんは心配だったんですね。ガウリイさんもデュクリスさんのように優しくて強い人ですから」
「・・・・・」
 あたしは無言でコーヒーを飲んだ。苦いが、その苦さは今のあたしの気分のようだった。
「デュクリスさんと出会ってからずっと心配だったんですね。リナさんはまわりで事件が絶えないですから、ガウリイさんもデュクリスさんのように不幸になってしまわないか」
 アメリアの言葉には答えず、あたしは今度はケーキセットを頼んだ。
「アメリア」
「はい」
「ここのお茶代はあんた持ちよ」
「えええええええええ!!」
 あたしは泣きながら財布の確認を始めたアメリアを無視してケーキを食べつつもう二人前注文した。



「ただいま。リナ、頼まれたもん買ってきたぞ」
「おかえり。お疲れさま、ありがとガウリイ」
 おつかいに出していたガウリイから荷物を受け取ると、あたしは立ち上がった。
「じゃ、ちょっと寝るわね」
「ああ、良かったもう・・・・・・じゃなくて、寝すぎですよ!」
「あんた、あたしのこの髪の毛見えないの?」
 伝票を見て青ざめているアメリアにあたしは魔力の使いすぎで銀色に染まった髪の毛をぴこぴこと動かし見せると、自室へと急いだ。
「リナさん、何を買ったんですか?」
「さて、な」
 そんな会話を背で聞きながら。
 部屋へ戻ると、あたしはランプに火を点けた。照明用のランプは明るい部屋で寂しく揺れる。あたしは部屋の真ん中の床にそのランプを置くと、部屋のカーテンを閉める。暗くなった部屋にガウリイに頼んで買って来てもらったさまざまな大きさ、形、香りのするキャンドルを順々にランプで火をつけつつ並べていく。

 こんこん。かちゃ。

 ノックをしてすぐに扉を開ける音がする。遠慮なく入ってくる相手にあたしは振り向かずに声をかけた。
「ガウリイ、レディーに対する礼儀がなってないわよ」
「ノックはしただろ」
 返事する間もなく入ってきたらノックした意味が無いだろうが。
 あたしはその間もキャンドルにランプから火を点ける。
「・・・・・それで、何してるんだ?」
 図々しくもガウリイはあたしの隣へ座り込み、先ほど自分が買ってきた袋から一本キャンドルを取り出し、あたしにならって火を点けそれを床に並べる。
「ゼフィーリアではこうするのよ」
「デュクリスを弔ってるのか?」
「・・・・・・・・・そうよ」
 袋からキャンドルを取って祈りながら一本火を点ける。それを床に並べる。火が絶えるまでそれを見つめ続ける。
「だって・・・・・・・出来なかったのよ」
 あたしはキャンドルを手に取った。
「前は、デュクリスを弔えなかったのよ・・・・」
「ああ」
 キャンドルに点けた炎が霞んだ。
「・・・好きだったのか? デュクリスのこと」
「好きだったわ」
 ガウリイの問いにあたしは即座に返した。本音だったから。ガウリイが押し黙るのが分かる。でも気にしなかった。
「馬鹿みたい・・・・・信じて裏切られて、それでも信じて」
「でも、それがデュクリスの良い所だった」
「そこが好きだったのよ」
 絶対なる信頼。どこからそう思う力が湧いてくるの? 誰よりも強い。彼は、誰よりも強かった。
「まっすぐでお人好しで・・・・・・・」
 あたしの頭をガウリイが軽く撫でた。
 苦しくて、息が出来ない。吐き出したいのにどこかで引っかかって出てこない。そんな感じだった。
「ガウリイが、ああなってた可能性もあるってことよね」
「俺?」
「そうよ。ガウリイみたいなお人好しは・・・・・・いつ、あたしみたいなのに人生を狂わされてもおかしくないのよね・・・・」
 キャンドル全てに火を灯し終えた。あとは、その火が絶えるまで見つめていよう。
「でも、もしそうなったとしてもリナは俺を弔ってくれるんだろう?」
 あたしは訳が分からずガウリイを見つめた。ガウリイは小さく笑ってあたしの頬を乱暴に拭った。
「リナは裏切らないよ。人生が狂うなんてリナらしくない言葉だ。『自分の人生は自分で切り拓く』んだろ? だったら俺の人生は俺が切り拓くさ。
 だって俺たちは、『自由』だろ?」
「・・・・・・・あっそ」
 あたしはぷい、と視線をそらした。なぜだか弱音を吐いてしまった自分がすごく恥ずかしかったのだ。小さく笑うガウリイに冷たい一瞥を向けると、再びキャンドルを見つめた。




 ―――――――――ずっとずっと、見つめていた。








□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 二人が飲み物を噴き出した時のリナちゃんのコメント。『汚い』と『もったいない』はやっぱり主観的な見方と客観的なものの見方の違いですよね(笑)


 ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました(> <)



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21200あとがきというみにくいもの。あんでぃ E-mail URL2002/7/13 20:40:14
記事番号21199へのコメント

 こんばんは。あんでぃと申します。ご存知の方も少ないかと存じますがどうぞよろしくお願い致します。そして、【神さまのお買い物】最後まで読んでいただき嬉しい限りでございます。本当にありがとうございました!



 このお話は鬼束ちひろさんの『LITTLE BEAT RIFLE』という曲がイメージ曲で、コンセプトは『自由』です。
 私が思うに『自由』って難しいのですよ。これは学生だから思うのでしょうかね? 自由って振りかざしちゃいけないものですけど無くちゃいけないものなのですよね、難しいです。
 『LITTLE BEAT RIFLE』もすごくいい歌なのですよv 詩が好きなのですv ピアノのピも知らない人間の私が楽譜を買っちゃうくらい好きですなのですよ(笑)
 この話を書き始めるきっかけというのも実は鬼束さんとの出会いからなのですから(笑)

 デュクリス。スレイヤーズ本編第一部五巻の【白金の魔獣】で出てきた憎めない悪役獣人さんなのですが、皆さん覚えていらっしゃるでしょうか? 一部で本編の文章を丸々使わせて頂きました。著作権違反でしょうか? ドキドキ(汗)
 なぜだか彼は忘れられないのですよ。白虎で良い人なのですよっ?! 私が忘れるわけが無いです!! 虎も豹も良い人も大好きだぜコンチキショー!!

 というわけで彼を使ったお話をいつか書きたいなぁと思いつつ、昨年必修科目だった世界史の授業なのです。
 永世中立国。奴隷制。独裁政治。
 …………きらーん☆
 というわけでこの話が出来ました(笑) 長かったです。本当に長かったです(笑)
 言い訳は果てしないのですが、本当にタイトルどおり醜くなりそうなのでやめておきますです(笑)




 ビーパラ以前から暖めていた話だけにとても思い入れの深い作品でした。今回最後まで終わらせる事が出来てとても嬉しいです。
 そして、相談に乗ってくださったお方、読んでくださった皆様の心から感謝です!



 でわ、あんでぃでした!!

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21201お疲れ様でした!!!!かお E-mail URL2002/7/13 21:03:23
記事番号21200へのコメント

あんでぃさんは No.21200「あとがきというみにくいもの。」で書きました。
>
こんにちわ。あんでぃさん。
そーいえば・・レスするの初めてのような気が・・(汗)
すいません(汗)←読み逃げ専用(こらこら・汗)
> こんばんは。あんでぃと申します。ご存知の方も少ないかと存じますがどうぞよろしくお願い致します。そして、【神さまのお買い物】最後まで読んでいただき嬉しい限りでございます。本当にありがとうございました!
おつかれさまでした!!
まさか、デュクリスがでてくるとは!!!
私も・・かれ、憎めませんでした(涙)
>
>
>
> このお話は鬼束ちひろさんの『LITTLE BEAT RIFLE』という曲がイメージ曲で、コンセプトは『自由』です。
> 私が思うに『自由』って難しいのですよ。これは学生だから思うのでしょうかね? 自由って振りかざしちゃいけないものですけど無くちゃいけないものなのですよね、難しいです。
> 『LITTLE BEAT RIFLE』もすごくいい歌なのですよv 詩が好きなのですv ピアノのピも知らない人間の私が楽譜を買っちゃうくらい好きですなのですよ(笑)
> この話を書き始めるきっかけというのも実は鬼束さんとの出会いからなのですから(笑)
>
> デュクリス。スレイヤーズ本編第一部五巻の【白金の魔獣】で出てきた憎めない悪役獣人さんなのですが、皆さん覚えていらっしゃるでしょうか? 一部で本編の文章を丸々使わせて頂きました。著作権違反でしょうか? ドキドキ(汗)
> なぜだか彼は忘れられないのですよ。白虎で良い人なのですよっ?! 私が忘れるわけが無いです!! 虎も豹も良い人も大好きだぜコンチキショー!!
しかも、恩を感じて、悪事としりつつ・・・・。
くぅぅぅ!!
彼・・・気の毒ですよね・・くすん(涙)
しっかし・・・・フィブリゾぉぉぉぉ!!
よくまあ、エル様の攻撃うけて、無事だったものだな・・(汗)
とゆーか、一部だけ残ってたのか?!(不思議だ・・・汗)
銀色の王・・・・。
エル様と同等の存在。というか、エル様と対を成す王・・。
といった、設定ですか?
(私的には、エル様が全てだと捕らえてる人・・・)
(世界別にいろいろとやってると捕らえてるけど・・爆!)
>
> というわけで彼を使ったお話をいつか書きたいなぁと思いつつ、昨年必修科目だった世界史の授業なのです。
> 永世中立国。奴隷制。独裁政治。
> …………きらーん☆
> というわけでこの話が出来ました(笑) 長かったです。本当に長かったです(笑)
> 言い訳は果てしないのですが、本当にタイトルどおり醜くなりそうなのでやめておきますです(笑)
>
まさか、こういう落ちだとは、夢にもおもってなかったのです!!
本当に、お疲れ様なのです!!!
あんでぃさん・・・。
文章上手でうらやましいです・・(はあと)
(見習わなくちゃ・・自分も・・汗)
>
>
>
> ビーパラ以前から暖めていた話だけにとても思い入れの深い作品でした。今回最後まで終わらせる事が出来てとても嬉しいです。
> そして、相談に乗ってくださったお方、読んでくださった皆様の心から感謝です!
>
おつかれさまでした!!
読んでいるくせに、一度もレスしてないとんでもない私です・・(汗)
>
>
> でわ、あんでぃでした!!
はい!!
次回作も、楽しみにしております!!
それでは!!
とっても、楽しい、それでいて切ない(しくしく・・デュクリスが不幸だぁぁ!)
話をどうもなのです(はあと)
(彼には・・幸せになって欲しいからなぁ・・・・。
  憎めない悪役・・・確かに・・ガウリイに似てるかも・・・汗)
では♪
感想になってない、かんそうですが。
とっても、楽しませていただきました(はあと)
では(はあと)

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21202ありがとうございます(> <)あんでぃ E-mail URL2002/7/13 23:16:33
記事番号21201へのコメント

>そーいえば・・レスするの初めてのような気が・・(汗)
>すいません(汗)←読み逃げ専用(こらこら・汗)

 こんばんはです、そしてはじめましてです! あんでぃと申します(> <)
 私もかおさんのお話を読ませて頂いているにもかかわらずレスっていないのです(汗) すみませんです・・・・・でもレスいただけて嬉しいですv


>まさか、デュクリスがでてくるとは!!!
>私も・・かれ、憎めませんでした(涙)

 ありがとうございます♪
 そうなんです、彼憎めないのですよぉぉぉぉ(泣) しかも私的にゼルよりも不幸な人だと思うのです(汗) 悪役にもかかわらず大好きで(笑) いつか絶対に出演していただきたいと思っていたのです。念願叶ってしまいました♪



>しっかし・・・・フィブリゾぉぉぉぉ!!
>よくまあ、エル様の攻撃うけて、無事だったものだな・・(汗)
>とゆーか、一部だけ残ってたのか?!(不思議だ・・・汗)

 ここを書かねばいけませんでしたね(汗) あとがきで言い訳するつもりが・・・忘れてました(おい)

 実は五巻終了あたりでフィブリゾは死んだデュクリスの魂を蘇らせて、合成獣(キメラ)にされていた部分を取り除き、空いた部分に自分の一部を潜り込ませたのです。そして魔族は滅ぼされない限りは存在しつづけられますから、そこから復活したのです(笑) 世界が滅びれば無意味な布石ですけど、世界が滅びなければその一部は残るわけです。
 それで、時間的にはそのあとに彼女の怒りをかってしまったのですね(笑)

 毎話毎話の一番最後のセリフは実はフィブリゾで、その時の彼のセリフです。ずる賢い(うわ) フィブリゾですから、あの計画に失敗した時の事もちゃんと考えていたのですね。

 …ここの説明の部分、そういえば話の都合で削ってしまったのでした(汗) 解説しないと内容のわからない話になってしまいました(汗) 修行が足りません(汗)



>銀色の王・・・・。
>エル様と同等の存在。というか、エル様と対を成す王・・。
>といった、設定ですか?
>(私的には、エル様が全てだと捕らえてる人・・・)
>(世界別にいろいろとやってると捕らえてるけど・・爆!)

 金色の魔王が世界を、全てを生みだせし生み出せる母なるものならば、銀色の王はそれを動かす父なるものというイメージでやってますです。
 時間を操作するのです。といっても未来は干渉できませんが。この設定でゼルの身体が元に戻るネタをやりたいのですが、ちょっとあまりにもとんでもないことになる予感なので、ボツです(笑)


>まさか、こういう落ちだとは、夢にもおもってなかったのです!!
>本当に、お疲れ様なのです!!!

 私も、こんなオチになるとは思いませんでした(笑) あう(汗)めちゃくちゃな失敗発見(汗) 言わなければばれないでしょうので内緒にしておきます(笑)
 『(時の)流れを否定す 愚かなるものに 我と汝が力をもて 等しく与える時の旋律』なので、時の流れを否定したフィブリゾとデュクリスに滅びにを与え、本来の時の流れに戻したのですね。そうらしいです(なぜ他人事)


>おつかれさまでした!!
>読んでいるくせに、一度もレスしてないとんでもない私です・・(汗)

 ありがとうございますvv
 とんでもないです! 読んでいただき嬉しいです♪


>次回作も、楽しみにしております!!

 え゛? じ、次回作?!(笑)
 が、頑張りますっ(笑)


>とっても、楽しい、それでいて切ない(しくしく・・デュクリスが不幸だぁぁ!)
>話をどうもなのです(はあと)
>(彼には・・幸せになって欲しいからなぁ・・・・。
>  憎めない悪役・・・確かに・・ガウリイに似てるかも・・・汗)

 たぶん、ガウリイに似てるのですよ(笑)←私見 お人よしですぐに人を信用しちゃう所とか。
 デュクリスは好きだから(このあたり間違ってる)不幸じゃなくしたかったのですけど・・・・・(泣)
 でもリナちゃんに好きって言ってもらえただけ幸せでしょうか?(待っとけ)


>感想になってない、かんそうですが。
>とっても、楽しませていただきました(はあと)
>では(はあと)

 こちらこそ最後まで読んで頂いて、本当にありがとうございました(> <)
 それでは、あんでぃでした!!


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21210はじめまして。猫楽者 2002/7/16 00:48:49
記事番号21200へのコメント

あんでぃさんは No.21200「あとがきというみにくいもの。」で書きました。
>
> こんばんは。あんでぃと申します。ご存知の方も少ないかと存じますがどうぞよろしくお願い致します。そして、【神さまのお買い物】最後まで読んでいただき嬉しい限りでございます。本当にありがとうございました!
>
こんばんは。そして、はじめまして。あんでぃさん。
猫楽者と申します。
よろしくお願いいたします。
【神さまのお買い物】の完成。おめでとうございます。
とても面白くて、著者別リストと、こちらの投稿分を一気に最後まで読ませて
いただきました。

> このお話は鬼束ちひろさんの『LITTLE BEAT RIFLE』という曲がイメージ曲で、コンセプトは『自由』です。
> 私が思うに『自由』って難しいのですよ。これは学生だから思うのでしょうかね? 自由って振りかざしちゃいけないものですけど無くちゃいけないものなのですよね、難しいです。
> 『LITTLE BEAT RIFLE』もすごくいい歌なのですよv 詩が好きなのですv ピアノのピも知らない人間の私が楽譜を買っちゃうくらい好きですなのですよ(笑)
> この話を書き始めるきっかけというのも実は鬼束さんとの出会いからなのですから(笑)
>
> デュクリス。スレイヤーズ本編第一部五巻の【白金の魔獣】で出てきた憎めない悪役獣人さんなのですが、皆さん覚えていらっしゃるでしょうか? 一部で本編の文章を丸々使わせて頂きました。著作権違反でしょうか? ドキドキ(汗)
> なぜだか彼は忘れられないのですよ。白虎で良い人なのですよっ?! 私が忘れるわけが無いです!! 虎も豹も良い人も大好きだぜコンチキショー!!
>
デュクリスさん。良い人でしたね。
迷子に親切でしたし。とても子供好きな方だったんでしょうね。

> というわけで彼を使ったお話をいつか書きたいなぁと思いつつ、昨年必修科目だった世界史の授業なのです。
> 永世中立国。奴隷制。独裁政治。
> …………きらーん☆
> というわけでこの話が出来ました(笑) 長かったです。本当に長かったです(笑)
> 言い訳は果てしないのですが、本当にタイトルどおり醜くなりそうなのでやめておきますです(笑)
>
デュクリスさん。
冥王さまと、戦っていたんですね。

しかし、さすが冥王さまと言うべきなのでしょうか。
サイラーグでの対リナ・インバース戦が失敗した場合の事も考えていたとは
ただの陰険野郎(失礼)じゃなかったんですね。

また。デュクリスさんが活躍してくれる事を、祈っています。

>
>神さまは『ひと』を思うがままにし
>
>神さまは『ひと』の悲しみを見てもただ流す。
>
>でも、神さまは決して『ひと』を見逃さない。
>
>
>
>だから、一番偉い。
>
>
>
>神さまにとって『ひと』は道具
>
>神さまにとって『ひと』は玩具
>
>神さまにとって『ひと』は売り物
>
>
>
>
>神さまのお買い物。
>売り物は『ひと』――――――――――――
>
ここの神さまの部分。とても好きです。
自分は悪魔信仰とかを、している訳では無いのですが。
ヒネクレ者なので、神さんの方が怖いです。
罰は与えるは、都市は塩の柱にして壊滅させるは、洪水起こして皆殺しにするは、もちっと『神の子』といわれている者に優しくて出来んのか。
とか、思ったりもしました。
(すいません。お話に関係ない。個人的な事を書いてしまって)

銀色の王の呪文の部分。すごいです。
どうなるのか。ドキドキしながら読ませていただきました。

>暗闇の中に漂う感覚に襲われる。あたしは苦笑した。以前に引き続きまたし
> ても制御に失敗してしまったらしい。
いや、あの。笑ってて良いんですか。
制御に失敗したら、いったいどうなるんですか。

>     『お嬢ちゃん――――――いや、リナさん』
>     デュクリスだ。なんとなくあたしはそう確信した。
>     「デュクリス・・・・・」
>     「ありがとう」
>     彼はにっこりと笑んだ。あたしは、彼を救った事になるのだろうか―――――

よかった。彼は救われましたよ。
今度こそ、幸せになって欲しい。ですね。

>
> ビーパラ以前から暖めていた話だけにとても思い入れの深い作品でした。今回最後まで終わらせる事が出来てとても嬉しいです。
> そして、相談に乗ってくださったお方、読んでくださった皆様の心から感謝です!
>
>
>
> でわ、あんでぃでした!!

とても面白かったです。
こんな素敵なお話を読ませていただけて。ありがとうございました。

書きなぐりさんへ、レスさせていただくの、初めてでして。
読みにくかったり、内容が変でしたら。ごめんなさい。

では、毎日暑いですし、何やら台風が来ているようですか。
お体に気を付けて。お元気で。

では、失礼します。
猫楽者でした。

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21211はじめまして。ありがとうございます(> <)あんでぃ E-mail URL2002/7/16 11:50:12
記事番号21210へのコメント

>こんばんは。そして、はじめまして。あんでぃさん。
>猫楽者と申します。
>よろしくお願いいたします。

 こんにちは、レスありがとうございますv あんでぃと申します。



>【神さまのお買い物】の完成。おめでとうございます。
>とても面白くて、著者別リストと、こちらの投稿分を一気に最後まで読ませて
>いただきました。

 マジですかっっ あわわ、面白いといっていただけるのはとても嬉しいです。しかも著者別リストの方まで行ってくださったのですね(> <)
 長かったと思いますが、一気に読んでくださるなんてすごく嬉しいです!



>デュクリスさん。良い人でしたね。
>迷子に親切でしたし。とても子供好きな方だったんでしょうね。

 子供好き、そうですそんな感じなんですっ。絶対死ぬべきじゃない、と私の中でインプットされている方でもあります。スレイヤーズ本編第一部のお話の中で、四人を抜かして一番好きな人です。揺るぎなく一番好きなんです(笑) だって白虎だし(笑)←虎が大好きらしいです。白だとさらに得点高いらしいです。



>デュクリスさん。
>冥王さまと、戦っていたんですね。
>
>しかし、さすが冥王さまと言うべきなのでしょうか。
>サイラーグでの対リナ・インバース戦が失敗した場合の事も考えていたとは
>ただの陰険野郎(失礼)じゃなかったんですね。
>
>また。デュクリスさんが活躍してくれる事を、祈っています。


 そうです、あのサイラーグでの一件を失敗した事まで考えていたらしいから侮れない人(人じゃない人じゃない)です(笑)
 本当は金色の魔王・・・・・もといL様にしばかれて、こんな短い間じゃ復活しないだろうと思い、50年ほど間をおこうとしたのですよ。でもそれは書き終った頃に思い出しちゃったりしました(笑) まあ、リナちゃんたちでこの話は書きたかったのでオールオッケーですよね(笑)
 デュクリス、また活躍してくれるといいですね・・・・・・でも、私が書くとキャラが違っているような(汗) いえ、記憶喪失でしたから、仕方が無いです(言い訳はみにくい)



>>神さまは『ひと』を思うがままにし
>>
>>神さまは『ひと』の悲しみを見てもただ流す。
>>
>>でも、神さまは決して『ひと』を見逃さない。
>>
>>
>>
>>だから、一番偉い。
>>
>>
>>
>>神さまにとって『ひと』は道具
>>
>>神さまにとって『ひと』は玩具
>>
>>神さまにとって『ひと』は売り物
>>
>>
>>
>>
>>神さまのお買い物。
>>売り物は『ひと』――――――――――――
>>
>ここの神さまの部分。とても好きです。
>自分は悪魔信仰とかを、している訳では無いのですが。
>ヒネクレ者なので、神さんの方が怖いです。
>罰は与えるは、都市は塩の柱にして壊滅させるは、洪水起こして皆殺しにするは、もちっと『神の子』といわれている者に優しくて出来んのか。
>とか、思ったりもしました。
>(すいません。お話に関係ない。個人的な事を書いてしまって)


 ここの部分は、二話か三話を書いてる頃にはもうすでに決まってた部分なのですよ、だから今回の話のタイトルは『神さまのお買い物』なのですね。まえまえから出すぞ出すぞ、と意気込んでいた部分なので好きだといってくださってすごく嬉しいです♪

 今回、私が神さまという表現を使ったのは統領とフィブリゾに対してですね。統領は国民を、フィブリゾはデュクリスの運命を蔑ろにしてたのですよね。だから『神さまにとって『ひと』は――――』という表現が一番しっくりくるんじゃないかな、と。
 お買い物、というのは奴隷の売り買いのことなどだと思います。神にとって人間がこれくらいの価値しかないのか、と。それで人間たちは神に『弓を番えさせないでくれ』つまり、もうちょっと大切にして。でないと反乱しちゃうぞ。と言ってるわけです。

 神さまって定義が難しいですよね。よい神を神さまというのかというとそうでもないですから。『邪神』って表現もあるくらいですし(笑)




>銀色の王の呪文の部分。すごいです。
>どうなるのか。ドキドキしながら読ませていただきました。

 ありがとうございます(> <) 呪文を考えるのはいっぱいいっぱいでしたが楽しかったです♪ 使いまわ(以下自主規制) 私の引出しの少なさが垣間見えるようです(笑)
 魔力の流れを変えて大渦にする。簡単にいえばリナちゃんは魔力の風でできた竜巻の中心にいたのです。あ、こっちの表現の方がわかりやすかった(爆死)
 時間的に第一部終了直後だったので、ガウリイ君の剣じゃ魔族相手にはさっぱり役に立たないのですね。本当に魔力の宿っていない普通の剣ですから。それなのに活躍したガウリイには心から乾杯です(笑)



>>暗闇の中に漂う感覚に襲われる。あたしは苦笑した。以前に引き続きまたしても制御に失敗してしまったらしい。
>いや、あの。笑ってて良いんですか。
>制御に失敗したら、いったいどうなるんですか。

 人間、極限まで困ると笑うしかなくなってしまうものなのです(きぱり)←うわ。 そして制御に失敗して、やっぱりここは銀色の魔王に体を奪われてます(笑)
 わざと描写してませんけど、このとき今まさにフィブリゾは『時を歪めた』制裁を銀色の魔王から受けている最中だったりします(笑) 時をあるべき方向へ戻し、あるべき方向へ導くのが銀色の魔王の役目ですから。




>よかった。彼は救われましたよ。
>今度こそ、幸せになって欲しい。ですね。

 救われたと、思いたいですよね(> <)
 彼は多分合成獣(キメラ)の魂を持っていたためにちゃんとした輪廻転生にのることが出来なかったでしょう。これで、多分大丈夫かと・・・・・・多分(おひ)



>
>とても面白かったです。
>こんな素敵なお話を読ませていただけて。ありがとうございました。

 ありがとうございます! こちらこそレスいただけてとても嬉しいです♪


>書きなぐりさんへ、レスさせていただくの、初めてでして。
>読みにくかったり、内容が変でしたら。ごめんなさい。

 はじめてだったのですね(> <) 記念すべき初レスを私の話などにつけて頂きありがとうございますv 読みにくいなど全然ありませんよ♪ 素敵なレスありがとうございますv



>では、毎日暑いですし、何やら台風が来ているようですか。
>お体に気を付けて。お元気で。

 ありがとうございます。実は私の地域、台風は今まさに上陸しております(笑)でもそのおかげで休校になったりしております(笑) 喜んじゃダメだよ私っっ(棒読み)
 では、猫楽者さんもお体にお気をつけてくださいね。


>では、失礼します。
>猫楽者でした。

 本当に感想をいただけて嬉しい限りでございます♪ ありがとうございました!! あんでぃでした。

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21212あんでぃさん発見!→尾行開始(待て)白河綜 E-mail URL2002/7/16 15:08:14
記事番号21200へのコメント

あんでぃさんは No.21200「あとがきというみにくいもの。」で書きました。

 初めまして。白河綜と申します(礼) 初っぱなから失礼極まりないタイトルでこんにちはなのです。
 ……すみませんっ!!(汗)
 何にしても『神様のお買い物』完結、おめでとうございますぅぅぅぅぅぅぅっ!!(どんどんぱちぱちぱふぱふっ!!)
 私もデュクリス氏好きだったので、ちょっと嬉しかったり(笑)

 『自由』。
 このコトバの定義って難しいですよね。自由=なんでもしていい、というわけでも無かったりしますし。誰にもやるべき道筋を決められていない状態って、なんとなくぬるま湯に浸かっているような……そんな頼りない感じです。
 このお話、最初のあたりでリナさんが悩んでるトコロはもう画面に向かって「うんうん、そうなのよ。うんっ」とかなんとか、コクコクと頷きながら読んでました(爆)

 そしてフィブリゾ。
 …………転んでもただでは起きないのねぼーや(爆)
 高位魔族の恐ろしさ再確認。自分で書く高位魔族はかなりギャグなヒトになってしまっているので、ちょっとうらやましかったり(爆)

> 永世中立国。奴隷制。独裁政治。
> …………きらーん☆

 スイス→古代ローマ→ヒトラー(絶対王政でも可)って感じでしょうか? 私も世界史が受験科目なのですが、いいですよね。ネタの宝庫です(待て)


 『神様のお買い物』、本当に共感することが多くて、読んでいるウチに不思議な感情が広がっていきました。悲しいんだけど、それだけじゃない、そんな感情です。文章にするのは難しいんですが……(^^;
 とにかく、デュクリス氏の次の人生に幸大からんことを祈って。

 白河綜でした。
 あんでぃさん。おつかれさまでしたv


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21214白河綜さんを補足、逆追跡!!(待っとけ)あんでぃ E-mail URL2002/7/17 13:05:32
記事番号21212へのコメント


> 初めまして。白河綜と申します(礼) 初っぱなから失礼極まりないタイトルでこんにちはなのです。
> ……すみませんっ!!(汗)

 こんにちはです♪ そしてこちらでははじめましてです。あんでぃと申します! サイト開設おめでとうございますv (遅いよあんでぃさん) こそこそと遊びに行かせて頂いておりますv
 タイトル・・・・・・私もいいのかこれでというものですが(汗) 笑って許してやってくださいませっ




> 何にしても『神様のお買い物』完結、おめでとうございますぅぅぅぅぅぅぅっ!!(どんどんぱちぱちぱふぱふっ!!)
> 私もデュクリス氏好きだったので、ちょっと嬉しかったり(笑)

 ありがとうございますvv 私も無事に完結させることが出来て嬉しい限りでございます♪
 あああっ♪ デュクリス好きですよねっ! 好きですよねっっ♪ 同士ですね(きらり) 嬉しいです♪



> 『自由』。
> このコトバの定義って難しいですよね。自由=なんでもしていい、というわけでも無かったりしますし。誰にもやるべき道筋を決められていない状態って、なんとなくぬるま湯に浸かっているような……そんな頼りない感じです。


 抽象的な言葉ですよねぇ、『自由』って。
 自由ってすごく嬉しいものですけど、逆に何をしても良い、という状態だと困惑してしまったり。難しいですね。
 でもそういう困惑って、善悪の判断がつくからあるんだな、と好意的に私は受け取っております。後先考えずにやる分には悩みませんから。悩むからこそ人間です(こら)



> このお話、最初のあたりでリナさんが悩んでるトコロはもう画面に向かって「うんうん、そうなのよ。うんっ」とかなんとか、コクコクと頷きながら読んでました(爆)

 わかってくださって嬉しいですっ! 結構困惑するものなのですよねぇ(笑) 全体的に私の書くリナちゃんは思春期まっただなかな感じがしますねぇ、そんなリナちゃんが好き(笑)←おひ。



> …………転んでもただでは起きないのねぼーや(爆)

 転んでもタダで起きたら貧乏人ですから(笑)←何



> 高位魔族の恐ろしさ再確認。自分で書く高位魔族はかなりギャグなヒトになってしまっているので、ちょっとうらやましかったり(爆)

 私はギャグな感じでで書きたいです(> <) 一度目指した事はあったのですがあっさりと撃沈でした(笑) やっぱり向き不向きがあるんですねぇ、私下手すると話が暗い方向へ行きそうになる人間なので、ギャグにすごく憧れているのですよ♪



> スイス→古代ローマ→ヒトラー(絶対王政でも可)って感じでしょうか? 私も世界史が受験科目なのですが、いいですよね。ネタの宝庫です(待て)

 世界史はいいですよねぇv どうして三年の選択で世界史を取らなかったのかと、ものすごく後悔しております(泣) 昨年は必修科目だったのですが、すごい良いですねぇ、資料集とか見ているとネタが溢れんばかりですよね(笑) 昨年はいっぱいネタが出てきたんですけどねぇ・・・・今となっては記憶の彼方です(笑)



> 『神様のお買い物』、本当に共感することが多くて、読んでいるウチに不思議な感情が広がっていきました。悲しいんだけど、それだけじゃない、そんな感情です。文章にするのは難しいんですが……(^^;

 ありがとうございます(> <) そう言っていただけてすごく嬉しいです。
 結局フィブリゾやデュクリス達との戦いはなかったことになってしまったのですけれど、それでも決して無駄ではないんじゃないかなぁ、と思います。
 『自由』というものは儚いもので壊れやすく壊しやすい、でも無くてはならないものなのですよね。だから頑張れ日本(何故)




> とにかく、デュクリス氏の次の人生に幸大からんことを祈って。

 私も、彼の幸せを心から祈っております。ある意味スレイヤーズ史上誰よりも不幸な人でしたから・・・・・



> 白河綜でした。
> あんでぃさん。おつかれさまでしたv

 本当にレスありがとうございます♪
 サイトの運営大変な部分もあるかと思いますが、心より応援していますのでv これからもこそこそとお邪魔させていただきますね☆
 それでは、あんでぃでしたっ