◆−戦争1〜身を守るための戦い〜−春祭あられ (2002/7/25 19:11:59) No.21259
 ┗戦争2〜身を守るための戦い〜−春祭あられ (2002/7/26 12:48:25) No.21264
  ┗戦争3〜身を守るための戦い〜−春祭あられ (2002/7/29 18:22:56) No.21279
   ┗戦争4〜身を守るための戦い〜−春祭あられ (2002/7/30 12:47:21) No.21284
    ┣見過ごしているものを前面化。−白河綜 (2002/7/30 22:40:52) No.21291
    ┃┗それでもここまで酷くないような・・・−春祭あられ (2002/8/1 13:55:23) No.21299
    ┣ぷきゅうぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・(沈んでいるらしい)−藤原清貫 (2002/7/31 16:54:25) No.21296
    ┃┗せっせっ(引き上げているらしい)−春祭あられ (2002/8/1 14:06:16) No.21300
    ┗戦争5〜身を守るための戦い〜−春祭あられ (2002/8/5 22:03:23) No.21335
     ┗戦争6〜身を守るための戦い〜−春祭あられ (2002/8/6 00:14:02) No.21340
      ┗はじめまして♪−璃緒 (2002/8/6 01:26:18) No.21341
       ┗こちらこそはじめましてvv−春祭あられ (2002/8/7 01:27:54) No.21353


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21259戦争1〜身を守るための戦い〜春祭あられ E-mail URL2002/7/25 19:11:59


なんだかとてつもなく久しぶりにここにきました。
こんにちは。春祭です。
パソコンが壊れてもう投稿できないかとも思っていましたが、何とか頑張ってできるようになりました。
良かった良かった。
今回もまたオリジナルです。
しかも果てしなく暗い気がします。
舞台は学校。テーマはいじめ。
そして、なんだか事が大げさになっていきそうな予感です。だってほら、題名が戦争だし。
さて、どうなっていくのやら。たまにはシリアスに優しい小説が書いてみたいとつくづく思う今日この頃。






□■□■□■□





何かが狂っていた。
彼らは。

「あはっ、なぁ見ろよあれ。なっさけねー姿」

その目に宿るのは鉛のような光で。

「くっさーい。近づかないでよ、生ゴミ」

人を見下すその笑顔は。
喜びが悦びに変わっていて。

「同じ空気を吸うだけでこっちが侵される。あーあー、早く死んでくんないかなー」

何かが狂っていた。
すでにそこにあるのは人間の弱さだけ。
どうしようもなく愚かな、そして可哀想な人たち。
彼らは。
歯の取れかけた歯車を回しながら。
もがくことなく。
何かが狂っていた。






風が吹くままに彼女は髪をなびかせていた。
春先の暖かい風が吹き抜けていく。
暖かくても、やはり水に濡れた身体にはきつかった。
風が来るたびに彼女は震えた。
「寒さ感じる余裕なんてあんの?」
数人の笑い声と共に彼女の身体は床に叩きつけられた。
腹に感じる痛み。顔に感じる痛み。あちこちに感じる痛みが、だんだんと増えてくる。
蹴られて、殴られて、ぼろぼろにされて。
もう、泣く余裕さえなかった。
声を上げる気力さえなかった。
痛くて、痛くて、痛くて。
助けて。
でも叫べない。ここに仲間は一人もいない。
負けたくない。負けたくない。例え一人でも。
そう思っていた。そのためか、目の色は死んでなかった。痛みのためにいくら涙を流そうとも。
「いこ。しばらく動けないでしょ、こいつも。凍え死ねばいいわ」
誰かが笑って言った。
丁度チャイムが鳴っていた。
先生の、成績の前でだけは優等生な彼らは。
そのまま校舎内に入っていく。彼女をぼろ雑巾のようにそこに残して。
けれどもリーダー格の少女が一人戻ってきて、ポリバケツいっぱいの水をさらにかけてきた。
動けない。
それをいいことに、少女は顔を力強く踏みつけるとあざ笑い、
「いい気味ね」
一言残して去っていった。
春は陽気だが、ここまでくれば凍え死ぬこともありえるというのに、笑っていた。
彼女を残して。
「・・・・・・死にたくない」
彼女は呟いた。当たり前のことを。人間としての感情を。
ただ小声で、精一杯の力で言った。
誰の助けも得られず、一人で、ただ朽ちていきたくはない。
助けて欲しかった。
例え自分が一人でも、負けたくない。
それでも、やはり助けが欲しかった。
彼女は、ただ静かに泣いた。






「またやってるのか、あいつらは」
彼が、その様子を見ながら呆れたように呟いていた。
「甲斐田。まだ手出しはいかんで」
他の男子が彼に声をかけた。
それを聞いて、舌打ちしながら浮かしていた腰を落とす。
「俺らはあくまでも中立や。輝(かぐ)でもなければ闇(くら)でもない。今動けば、必ずどちらかに移る事になるさかい」
「だからって、見殺しにしろってか?目の前で事が起きているのに?!」
「まだお前が動くときじゃないんや。あれくらいじゃ人間まだ死ねへんやろ。凍え死にそうやったらその直前に助け出せば良い。動いちゃいかんで。今は」
「お前、あの女子の名前ぐらいもう調べはついてんだろ?言えよ」
彼が、怒りに顔を歪めながら聞く。
その男子がポケットから丸められた紙切れを取り出して投げ渡してやった。
「あのこは輝じゃない。けども輝しか見たことがないようやで」
広げた紙には、走り書きのように名前とクラスが記されていた。
「屋代舞華、2−4か。赤崎のやつと同じクラスじゃねーか」
「せや。だから一番残酷で、俺らも簡単には手が出せへん。闇の連中も」
がしゃんっ
フェンスの音が鳴る。彼が、甲斐田が力任せに何度も何度もフェンスを殴っていた。
「甲斐田・・・・・・俺らは、中立や。だが、いずれ起こる。いや、俺らが起こす。赤崎に思い知らせてやるんや。身を守るための争いで。・・・・・・俺たちの戦争で」






この日本では戦争は起きない。そういわれていた。
でも、何時何処で戦争が起こるか分からない。
彼らはいずれ立ち上がる。身を守るために。
本当の、平和のために。心の平穏のために。
戦争を、起こす。






□■□■□■□


誰か私に関西弁を教えてください。
下手すぎ(汗)


では、また皆様に会えることを祈って。
 春祭あられ

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21264戦争2〜身を守るための戦い〜春祭あられ E-mail URL2002/7/26 12:48:25
記事番号21259へのコメント

第二段です。
なんか、自分でも良くここまで酷いのかけるなー・・・・・・って思いますよ。
ひたすら主人公可哀想ですよね。(汗)






□■□■□■□






「赤崎、どうした?」
一人の男子が、屋上を睨みつける少女に聞いた。
「いないわ」
「・・・・・・は?」
「屋代の奴が居ない。あれで動くほどの気力があるはず無いのに」
「・・・・・・今度は何したんだ?」
男子は興味津々に顔を輝かせる。眼だけは鉛色に。
赤崎と呼ばれる少女はにやりと笑った。
「水浸しにしてから散々いたぶってやったわ。裏庭の井戸水だからまだ冷たくてね・・・・・・ほんと、蒼白な顔なんて見物だったわよ」
「おいおい、そんな面白そうなこと女子だけでやったのかよ」
男子の苦笑。
赤崎は不敵に笑い、男子を見上げる。
「安心して。とっておきのをやらしてやるわ」









舞華は、やっと身体の感覚が戻ってきたのを確認し、おもむろに体を起こした。
張り付く制服がまだ濡れていて、風が吹くたびに強烈に寒くなる。
そして、いくら身体の感覚が戻ってきたといっても起き上がるだけがやっとだった。
こんなことが何時まで続くのか。
何処までエスカレートしていくのか。
そんなことはわからない。
それでも絶望して、自らの死を選ぶようなことはしたくなかった。
「なんか、とてつもなく寒そうだな」
ふと後ろからの声。
その声に舞華は驚き、振り返った。また何をされるのか・・・
とっさに身構える。
「まあ、そんなに身構えるなよ。俺もあんたにとっては敵なわけ?」
目の前の男子は“何もしません”のジェスチャーなのか、両手を軽く上げて肩をすくめていた。
「・・・・・・誰?」
舞華にとっては見たことの無い顔だった。だが、上履きの色は自分と同じ色。
つまり、同じ学年だということを表していた。
「俺、1組の甲斐田俊。あー、あんたのことは知ってるよ?4組の屋代舞華ちゃんだろ?」
「どーして・・・・・・」
「大変だよな、主犯は赤崎だろ?あいつのクラスは、皆あいつの仲間だしな。・・・・・・というより、学校のほとんどがあいつの仲間だよなー」
実際のところ、こんな直球の会話を当の本人、赤崎百合子に聞かれたら、きっと自分も甲斐田もただではすまない。
どうして、甲斐田はここまで直球に言えるのか舞華は不思議に思った。
「貴方は・・・?赤崎の仲間なの?」
「そう言って欲しい?」
「・・・・・・」
「仲間だと思いたいのなら思えば良いし、違うと思うのならそう思えば良い」
なんとも彼はあいまいだった。
「貴方なら、赤崎に対抗できるの?」
仲間が欲しかった。もう一人は淋しくて、辛くて。
彼が違っていて欲しい。
「さあ?」
だけれども、そんなに甘くは無い。
現実は。









彼の名前は志摩総一郎と言った。
裏庭の、さらに奥に隠れるようにひそむ石塚。
その石には、しっかりとはしてないが一生懸命文字を彫った跡があった。
“高瀬信司、ここに称える。我々の絆よ、永遠なれ。”
その石塚を見下ろし、彼は苦悩していた。
「高瀬。俺、お前の考えは正しいと思う。でも、何でかなぁ・・・・・・勇気がねぇよ。こえーよ。こんな歳でまだ死にたくねーし・・・・・・でも、でもさ。また、始まってる、地獄が。止めなきゃ。分かってるのに、分かってるのに」
彼は苦悩していた。
すなわちそれは、
「輝には属するつもりはねぇ。ぜってーに。だけど闇に属すのは命がけ・・・・・・なぁ高瀬、中立の奴らがついに動き出すみたいだぜ。近々、必ず戦争がおこる。でも俺は・・・・・・俺はどうすれば良い?!」
すなわちそれは。









甲斐田は舞華の横に腰を落とすと、空を見上げた。
「憎いか、赤崎が」
淡々とした声。それに答えて、舞華も淡々としていた。
「憎いわ」
自嘲気味に、彼女は笑う。
「我が隣人を愛せよ・・・・・・悪いけど、私はキリストのように心が馬鹿でかくないからこうまでされれば当然憎いわ。でも、同情する部分もある」
「ほう?奴らに同情なんてもったいない事してやるんだ」
「権力の強い者の配下になって自らも朽ちていくことしか出来ないなんて同情に値することでしょう?」
甲斐田の片眉が面白そうに上がる。
「そういうふうに考えるか、お前は」
どうやら、甲斐田自身はそんなことを考えたことは無いらしい。
くっくっくっと、一人空を見上げて笑っていた。
そんな時・・・
ぽつ。
ぽつ。
青空なのに雨が降ってくる。お天気雨。
「あ、狐のお嫁入りだ・・・・・・」
舞華が呟いた。
天気のよい日に雨が降ると、狐がお嫁入りしているのだよ、と昔誰かが言っていた。
古い言い伝えらしい。
「私好きよ、お天気雨。まるで自分が洗い流されていくみたい」
次第に強くなっていく雨の中、甲斐田も舞華もその場に佇み雨にただ濡られている。
「何を洗い流す?」
「憎しみを。すっきりとした綺麗な天気に降る雨は、やっぱり綺麗で、きっとそれのシャワーは罪や憎しみを洗い流してくれるわ。そう信じてる」
「それで消えるほど簡単なものではないだろう」
「気分的な問題よ。気分一新できればそれでいい。また今日も頑張って生きていこうと思えるから」
生きていこう。
今日も、明日も、その先も。
何があったとしても、負けたくは無いから。
「強いなあ、屋代は」
甲斐田は、少し悲しそうに、でも本当に感心するように言った。









赤崎は生徒会室の鍵を根岸雅夫に渡した。
「何に使うんだよ」
根岸は、4組では男子のリーダー格だ。
「言ったでしょ、とっておきのをやらしてやるって。男子ここに連れてきて、屋代連れてきなさいよ」
「・・・・・・そんで?」
「決まってるじゃない。あの憎たらしいプライド高い奴を落とすには・・・・・・ねえ?」
根岸の顔がきょとんととまり、やがて満面の笑みに変わる。
「面白いな、それ。いいじゃん。さすが赤崎」
「でしょ?あは、あたしもその様子を嬉々として見学させてもらうわ」
「うっわ、えげつねぇ」
顔を見合わせて、本当におかしそうに二人が笑う。声を上げて、狂ったように。
狂ったように。






□■□■□■□


なんかもう、春祭自身が結構暗い性格してるのが丸分かりな小説ですよね、これって。
これから先明るくなっていけばいいなぁ・・・(願望)

では、また会えることを祈って。
 春祭あられ

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21279戦争3〜身を守るための戦い〜春祭あられ E-mail URL2002/7/29 18:22:56
記事番号21264へのコメント

なんかホームページ先が間違っていたみたいです。上のがちゃんとしたアドレス。
良かったら来て見て下さい♪

それにしても、出てくる人物が多いと、性格設定が大変ですね。(汗)



□■□■□■□


真っ赤に、燃えているような夕陽が窓に映っているのを、甲斐田はただ呆然と見ていた。
教室には誰も残っていない。
そう思っていたところに、急に肩をたたかれた。
「・・・・・・話がある。理科棟の屋上に来れるか?」
振り返るそこには、かつての親友真田裕也。
真田は、その言葉だけを耳元でぼそぼそと呟くと、去っていった。
今の彼らは公に話すことが出来ない。いや、しようと思ったらできるだろうが、はばかられる。
指定された理科棟の屋上は、かつて甲斐田がつるんでいた仲間しか入ることの出来ない場所だった。
屋上には鍵がついているのだが、以前その鍵を拾ったことがあり、合鍵を作っておいたのだ。
「今更何の話があるんだ・・・」
顔をしかめ、その重い腰を上げて彼は理科棟に向かって教室を出た。






放課後、濡らされた制服がようやく乾き、帰ろうと教室に舞華は戻ってきた。
もうだいぶ遅い時間帯だ。
教室には一人も残っていなかった。
机にかけられていた鞄を取り、中に教科書などを詰め込んでいく。その教科書たちは、すでに他人の手によってかかれたいたずら書きでぼろぼろだった。
舞華はふと思い出した。自分が初めてここに来たときのことを。
転校生として2年になってから来た舞華は、始めは歓迎されていた。
それに、一番最初に仲良くなったのは、隣の席の赤崎百合子だった。
『私ね、赤崎百合子っていうの。宜しくね』
笑顔の可愛い、印象の良い子だった。
そう、最初はとてもいい子だったのだ。
確か、この学校の生徒会長が不慮の事故で亡くなった辺りからだ。舞華が彼らにいじめを受けるようになったのは・・・・・・
一体何がいけなかったのだろうか。
どうしてこんな事をされなくてはいけなかったのだろうか。
それが、未だに分からない。
多分、一生分からないような気がする。
「屋代さん」
教室の入り口で誰かに呼ばれた。
クラスメイトの男子の声。
急の出来事に、彼女は身をすくませた。
「屋代さんさあ、もう帰るの?俺、ちょっと屋代さんに用事があるんだよね。生徒会室まで一緒にきてくんない?」
教室の入り口で、鉛色の瞳で笑ってる。
「す、すいません。今日はもう用事があるので帰らなくちゃ・・・・・・」
今度は何をされるの?!
恐怖で足がすくむ。
それでも、逃げるように反対側の入り口に向かって走った。
帰りたい。
もう、今日は帰りたい。
「おっと。いいじゃんちょっと付き合ってよ」
その入り口にも、また他の男子がいた。
慌てて、その走る足を止める。
「・・・・・・いや」
「すぐ終わるって」
「いやっ」
「こいっつってんだろっ?!」
逃げ道は塞がれていた。
何時の間にか男子が5人くらいに増えている。
輪のように囲まれて、身動きはもう取れない。
「・・・・・・誰か、助けてっ」
誰にも聞こえないようなか細い声で、彼女は呟いた。






その屋上には、真田以外にも同じくかつての親友、結城真吾と雨宮悟がすでにいた。
「何だよ、話しって」
甲斐田は何時になく不機嫌だった。
彼らは所詮“かつて”の親友だ。今は敵に近い。
「甲斐田・・・・・・輝にこい。今ならまだ間に合う」
真田がまじめな顔でそう言った。
「ふざけんな。何で俺が好き好んで赤崎の配下にならなきゃいけないんだよ。真っ平ごめんだね」
「甲斐田っ・・・・・・俺らはお前の身を心配してっ」
「余計なお世話だよ!!お前らは何で輝に居て平気なんだよ!悔しくないのかよ?!憎くないのかよ?!」
「俺らは心まで輝になったつもりは無い!保身のためだ!!」
泣きそうな顔をして結城が叫んだ。
「憎いよ、そりゃあ・・・・・・でも中立でも闇でも身の上が危険なのは代わりは無いんだ」
「お前は、命が惜しくは無いのか?」
結城や雨宮は、本当に苦しげだった。
その苦しさが甲斐田にも分かり、彼は罵る言葉を無くした。
分かってるんだ。皆、どんな気持ちなのか。
その時、すぐ後ろの扉が開いた。
「・・・・・・三浦・・・・・・お前も呼ばれたのか?」
「なんや。甲斐田もか。このメンバーやったら、大体の話は想像できんな」
反吐が出るような話やろ?
あざ笑うかのように三浦は笑った。
「それはそうと、動くなっつーに接触したやろ、甲斐田」
「・・・・・・誰に?」
「きまっとるやんけ。屋代舞華にや」
ちっ、ばれてたのか・・・・・・
甲斐田は、顔をしかめて三浦から目をそらした。
「屋代と、仲は良いのか?」
「なんや真田。今のこと、赤崎に報告するんか?」
「いや、そういうわけでは・・・」
「かまへんで。そのかわり俺はお前らを一生人間として最低なヤローやて見下してやるさかいに」
「聞けよっ、人の話!」
普段は大人しいはずの真田が、声を張り上げたことに多少驚いて目を見張る。
三浦も、ばつが悪そうに口を閉じた。
「甲斐田、屋代は、いい子だろ?」
真田は悲しそうに言う。
それに、甲斐田は肯いた。
そう、優しくて、強い子だ。
「急げ、生徒会室だ」
「―――は?」
「本当は、今日はこのことを言いたくて呼び出したんだよ。お前が相変わらず輝に属する意思が無くてよかった。もう、赤崎はエスカレートしすぎて暴走してる。二人目の被害者は、見たくない」
「・・・・・・生徒会室で何が起こって・・・?」
「急げ、甲斐田。まだ間に合う」



「性的暴力が始まる前にっ」



□■□■□■□


物凄い科白かもしれませんが、あまり考え込まないでくれると嬉しいです。
っていうか、考えこまれると困るんで。(滝汗)
なんだか急に人が増えました。
これからもどんどん増えていきます。
覚悟して置いてください。(誰が?・・・・・あ、私が、か)
それでは、また皆様に会えることを祈って。
 春祭あられ

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21284戦争4〜身を守るための戦い〜春祭あられ E-mail URL2002/7/30 12:47:21
記事番号21279へのコメント

こんにちは。春祭です。
このくらーいお話も、やっと展開を見せてくれそうです。
それにしても、一生懸命伏線はろうとしても、なかなかはれない自分が悲しい。



□■□■□■□



その瞬間、何かがはじけた気がした。

「性的暴力が始まる前にっ」

何?なんだそれ?
わからない。でも・・・でも・・・
そうだ。危険じゃないかそれは。危険じゃないかっ!!
甲斐田は相手に一言も言わずその場から駆け出していった。
その様子を、四人が見やる。
「なんや、惚れたんかあれは」
三浦がポツリと呟いた。
「そうでなくても人間として、行かなきゃならないだろ、こういうのは」
結城が、呆れたように言う。
「でもさ、あいつがあんな焦るところ見たの初めてな気がする」
「無理も無い。西野の二の舞は見たくないのは誰だって同じさ。そして、俺たちは高瀬の二の舞も出したくない」
真田の瞳が、意思を持って空を見上げた。
鉛色ではない、強い意志を持った瞳。
「開戦だ」






どさぁっ
無理やりに床に叩きつけられる。
出したくも無い悲鳴が口から漏れた。
「さーて、はじめようか屋代さん」
鉛色の瞳が複数。
たくさん舞華の周りを囲んでいた。
「何・・・何をはじめるって言うの」
「決まってるじゃない。女として屈辱的なことよ」
男子の輪の外から、からかい半分の声が聞こえた。
その声に聞き覚えがある。
忘れるはずが無い。
「赤、崎」
このいじめの張本人。ボス。全ての悪。
見た目は、自分と同じただの17歳なのに・・・・・・
「はあい、舞華。どぉ?今から子供から“女”になる気分は」
はきけがするような笑いが見える。
足を組んで、高らかから見守る女王を、睨みつけた。
「最悪よ。そんなことにまでエスカレートさせるなんて」
「あんたがなかなか泣かないから。もっと虐めてやりたくなるの」
クスクスと笑うその顔に同調するかのように周りの男子も怪しく笑い始めた。
狂ってる。
はっきり言って狂ってる。
人間として、病んでいる。
「精神科にでもお世話になったら?おかしいわよ、あんた達」
・・・はじめな。
赤崎の言葉と共に男子達はまるでおもちゃのスイッチを急にオンにしたかのように動き始めた。
様々な方向から身体が押さえつけられる。
完璧に逃げられなかった。
「泣き叫んで、私の奴隷になるなら助けてあげても良いわよ?」
赤崎の声が、遠くに、それでもはっきりと聞こえる。
それだけは絶対に嫌だ、と舞華は思った。認めるわけにはいかないのだ。
ある男子の手が伸びて、首筋をつかまれた。
苦しさに呼吸が出来ない。
助けてっ
誰か助けてっ

がらっ

「てめーらいいかげんにしやがれっ」
急に部屋の扉が開き、その近くに居た男子が後ろからの衝撃にのけぞって倒れた。
全員の目が、乱入者に向けられる。
まだ意思のある瞳、まっすぐな黒髪、聞き覚えのある声。
その姿を認めて、赤崎はわずかに舌を鳴らして、微笑んだ。
「来ることは予想していたけど・・・まあずいぶんと早かったわね。それに、まさかあんたが来るとは、ね。俊」
「俺に向かって呼び捨てとは、いい度胸だな。赤崎百合子」
その乱入者の存在に信じられずに、目を見開く舞華。その大きな瞳から、恐怖のあまりに出てこなかった涙が溢れてくる。
「舞華を離しな」
キッと目がつりあがり、その場の男子全員に威嚇する。
その凄さに、舞華を押さえつけていた力が緩んだ。
その瞬間を見過ごさずに、彼女は腕の数々を振り切ると、自力で甲斐田の方へ向かった。そして、かばわれるように彼の背後にまわる。
「あんたはその子をかばうの?」
冷ややかな目で、赤崎は甲斐田を見る。
「人間としてやっていい事と悪いことがあるだろ」
その目を、睨み返した。
「舞華が、あんたに何かしたわけ?何でかばうのよ」
「何かなきゃかばっちゃいけねーのかよ」
「当たり前でしょ。あんただって私の同類だもの。チャリティー精神なんて持ち合わせてるわけがない」
「・・・・・・なるほど。確かにな。なら今理由を作ってやるよ。こいつは俺の女だ。手、出すんじゃねーよ」
その言葉に、舞華が驚いて甲斐田の顔を見上げる。
相変わらず赤崎を見たままのその顔は不敵に微笑んでいた。
「楯突くというの?あんたが私に?!」
それがどういう意味になるんだか判ってるんでしょ?!
赤崎が、切れかかった顔で叫ぶ。いや、すでに切れていた。
「知ってるさ。俺にも学習能力ってものがあってなぁ。宣言する。今から俺は闇に属した人間だ」
「馬鹿?!分かってて行なうそれは馬鹿の極み?!」
「判っているから、する行為もある」
教室より外の、廊下からまた声がした。
後から追いかけてきた真田達だ。その横には三浦も居た。そしてもう一人、全体的に色素の薄い少年も居た。
「今から俺ら三浦、真田、結城、雨宮の四人も闇の人間や」
「そして、闇代表として僕も、それを認めます」
少年が赤崎を睨みつけながら、高らかに告げた。
「今より、輝と闇の全面戦争の開戦を宣言します!」






志摩は裏庭から聞いていた。
「全面戦争の開戦を宣言します!」
高らかに、誇り高く聞こえるその声。
聞きながら、彼は石塚を見やった。
―――高瀬、俺はやっぱりお前の仇がとりたいのかもしれない。




□■□■□■□


やっと、やっと戦争の開始です。
題名の、戦争がはじまります。
ちょっとこれからが太変だなぁ・・・とかおもう今日この頃。(爆)
BGMはアヴリル・ラヴィーンのコンプリケイテッドで。

ではまた皆様に会えるのを祈って。
春祭あられ

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21291見過ごしているものを前面化。白河綜 E-mail URL2002/7/30 22:40:52
記事番号21284へのコメント

春祭あられさんは No.21284「戦争4〜身を守るための戦い〜」で書きました。


 ぷきゅっv
 こんにちは(初めまして?)、白河綜なのですっ! 取り敢えず夏期講習が一段落したので早速読ませていただきましたv

 なんていうか……怖いなぁ(爆)
 学校ていう閉鎖的な空間の、その裏の裏では多分当たり前のように行われている「いじめ」の前面化作品ですね。実際にあり得るだろう話なだけに、読んでて思わず眉を寄せてしまいました(爆)

 主人公の舞華さん、とても強いお人なのですね。でも、それ故に周りを頼るコトを知らない、自分ひとりで抱え込んでしまっている脆い「強さ」。いじめに負けないためには必要な「強さ」だとは思いますが、なんだかとても危うい感じがします。どうなっちゃうのでしょう?(はらはらっ)

 では。
 短いですが、今回はこのあたりで。
 パソの不調&部活+文化祭の準備と大変そうですが、あまり無理をなさらず、体調第一で頑張ってください。

 白河綜でしたっv


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21299それでもここまで酷くないような・・・春祭あられ E-mail URL2002/8/1 13:55:23
記事番号21291へのコメント

白河綜さんは No.21291「見過ごしているものを前面化。」で書きました。
>
> ぷきゅっv
ぷきゅにょv

> こんにちは(初めまして?)、白河綜なのですっ! 取り敢えず夏期講習が一段落したので早速読ませていただきましたv
忙しいのにわざわざ有難うございます!

> なんていうか……怖いなぁ(爆)
怖いですね(汗)私もそう思ってます。

> 学校ていう閉鎖的な空間の、その裏の裏では多分当たり前のように行われている「いじめ」の前面化作品ですね。実際にあり得るだろう話なだけに、読んでて思わず眉を寄せてしまいました(爆)
実際ここまでやってたら犯罪の域です。
私こんな学校に通うのイヤ。(爆)

> 主人公の舞華さん、とても強いお人なのですね。でも、それ故に周りを頼るコトを知らない、自分ひとりで抱え込んでしまっている脆い「強さ」。いじめに負けないためには必要な「強さ」だとは思いますが、なんだかとても危うい感じがします。どうなっちゃうのでしょう?(はらはらっ)
・・・・・彼女はきっと大丈夫です。
恋人できそうですよなんか。(自分ができないからってせめてものウサ晴らし)

> では。
> 短いですが、今回はこのあたりで。
> パソの不調&部活+文化祭の準備と大変そうですが、あまり無理をなさらず、体調第一で頑張ってください。
気にしてくださって有難うございました。
大丈夫です。
小説を書く気力ならまだあまってます!!
と言うわけで、私もここいらにて。
こっちも短くてごめんなさい。

> 白河綜でしたっv
あられんでしたv(爆)

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21296ぷきゅうぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・(沈んでいるらしい)藤原清貫 2002/7/31 16:54:25
記事番号21284へのコメント

 こんにちは。藤原清貫です。
 え〜っと、いじめネタですよね・・・。
 こういうお話は、実は大変興味があったりします。
 主人公(と思われる)舞華さん、いじめに決して屈しない強い心を持っていますね。
 けど、あまりに凄惨ないじめを受け続けていたため、人を信じる事ができず、周り全てが敵に見えているような気がするのです。特に第二話での甲斐田さんとのからみのシーンから。
 自分自身の心もまたすさんできているため、敵でない相手にも敵意を剥き出しにして、結果としてより多くの敵を作ってしまう。そんな悪循環に陥ってしまっているような気がしてなりません。
 ですから、舞華さんには誰か味方になってくれる人がいて欲しいのです。彼女の敵意をも包み込んでしまうような、器量の大きな人が。
 幸いにして甲斐田さんは味方になってくれたようで、よかったです。
 戦争って言いますけど、決してそういう表現は大げさではないと思うのですよ。
 人間には一度はそういう大きな試練が立ちはだかると思うのです。それを乗り越えられるかどうかで、大人になれるかどうかを決めるという。
 私もこういったお話しを読むと励まされます。舞華さんにはぜひ頑張って乗り越えてほしいのです。
 甲斐田さんや、他の人の活躍も期待しています。
 そしてそして。実はいじめっ子側の赤崎さんのことも気になるのです。なぜ、彼女がいじめを始めたのか。
 いじめって、加害者が被害者に、またその逆にもなりやすいって言います。ですから、赤崎さんもかつての親友にいじめを働くようになったのは、何か深い理由があるかも知れないのです。
 そのあたりのことが、とても気になるのです。
 性格暗いっておっしゃってましたけど・・・大丈夫ですっ!私もじゅーぶんネクラですからっ!(自分と比べるな)
 暗いお話っていうのは、無闇やたらに暗いのではなく、その暗さから目をそらさず、暗闇の向こうにある光に向かって歩み始めるためのものだと信じています。
 伏線の貼り方だって、決してへたくそじゃありませんよ〜。
 これからお話がどう進んで行くのか、「闇」と「輝」とは何のことなのか。とても気になります。
 ではでは、続きを期待して待っています。
 またです〜♪

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21300せっせっ(引き上げているらしい)春祭あられ E-mail URL2002/8/1 14:06:16
記事番号21296へのコメント

藤原清貫さんは No.21296「ぷきゅうぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・(沈んでいるらしい)」で書きました。
>
> こんにちは。藤原清貫です。
こんにちは。藤原さん。毎度毎度有難うございますv

> え〜っと、いじめネタですよね・・・。
いじめです。怖いです。(自分で言うな)

> こういうお話は、実は大変興味があったりします。
> 主人公(と思われる)舞華さん、いじめに決して屈しない強い心を持っていますね。
これくらいなきゃすぐにへろっちゃって物語になりませんしね。(爆)

> けど、あまりに凄惨ないじめを受け続けていたため、人を信じる事ができず、周り全てが敵に見えているような気がするのです。特に第二話での甲斐田さんとのからみのシーンから。
最初は拒否しましたもんね。
ずっとああいうこと受けつづければ、人を信じられなくもなるだろうなぁと思って。

> 自分自身の心もまたすさんできているため、敵でない相手にも敵意を剥き出しにして、結果としてより多くの敵を作ってしまう。そんな悪循環に陥ってしまっているような気がしてなりません。
そうですね。心に傷がついて、敵対心剥き出しの子にはおおらかな人がついて上げなくてはいけませんね。

> ですから、舞華さんには誰か味方になってくれる人がいて欲しいのです。彼女の敵意をも包み込んでしまうような、器量の大きな人が。
うん。おおらかなひと。
のほほん系の人でも可。

> 幸いにして甲斐田さんは味方になってくれたようで、よかったです。
彼にも傷がありますから。

> 戦争って言いますけど、決してそういう表現は大げさではないと思うのですよ。
そ、そうですかねぇ?
なんか私としては大げさかなぁ・・・なんて思ってたんですけど。

> 人間には一度はそういう大きな試練が立ちはだかると思うのです。それを乗り越えられるかどうかで、大人になれるかどうかを決めるという。
試練の大きさは人によってまちまちだということですね。

> 私もこういったお話しを読むと励まされます。舞華さんにはぜひ頑張って乗り越えてほしいのです。
私もそう願っています。
頑張れ舞華!

> 甲斐田さんや、他の人の活躍も期待しています。
まるでおまけのような扱いだな(爆)

> そしてそして。実はいじめっ子側の赤崎さんのことも気になるのです。なぜ、彼女がいじめを始めたのか。
・・・・・・・・・・・。(実は考えて無かったとは言い出しにくい)

> いじめって、加害者が被害者に、またその逆にもなりやすいって言います。ですから、赤崎さんもかつての親友にいじめを働くようになったのは、何か深い理由があるかも知れないのです。
たぶん被害者にはなってません。
しょっちゅう出てくる“権力”がありますから。

> そのあたりのことが、とても気になるのです。
気にしていてください。いつか出します。

> 性格暗いっておっしゃってましたけど・・・大丈夫ですっ!私もじゅーぶんネクラですからっ!(自分と比べるな)
自分で言ってちゃ世話ないです(自分もだろ)

> 暗いお話っていうのは、無闇やたらに暗いのではなく、その暗さから目をそらさず、暗闇の向こうにある光に向かって歩み始めるためのものだと信じています。
なんかそこまでいわれると暗闇万歳なきぶんになってきた・・・(滝汗)

> 伏線の貼り方だって、決してへたくそじゃありませんよ〜。
> これからお話がどう進んで行くのか、「闇」と「輝」とは何のことなのか。とても気になります。
ふふふ。これから、です。これから。

> ではでは、続きを期待して待っています。
> またです〜♪

どうも有り難うございました。
続きもなるべく早く出すように努力します。
では。

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21335戦争5〜身を守るための戦い〜春祭あられ E-mail URL2002/8/5 22:03:23
記事番号21284へのコメント

さて。開戦宣言したのは良いけど、この先考えてなかったなぁー(爆)
なんてちょっと馬鹿なことをしていた私。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さて、これからどんな展開にしようかな。(滝汗)



□■□■□■□



ことっ。
マグカップを置く音が、耳の中にやけに響いた。
ふわりと、コーヒー独特の香りが漂い始める。
その様子を感じながら、舞華は今自分の身に起こっている事をまるで他人事のように見ながら聞いた。
「これは、一体どういうこと、なんですか?」
コーヒーをくれた少年―――あの色素の薄い少年―――は、ああ、と一人肯いて、微笑んだ。
「そういえば、初めて会うんだよね僕とは。僕は佐々木純也。俊と同じ一組の人間だよ」
「あの、私は―――」
「うん。君の名前は僕も知ってるから。屋代舞華ちゃんで良いんだよね?」
「・・・・・・どうして、皆私の名前を知ってるんですか?転校生だからといって、名前まで広まってるわけじゃないし」
そう。
何故甲斐田も、佐々木も、自分の名前を知ってるんだ?
それが、妙なしこりと共に疑問に残る。
悲しそうな顔をして、佐々木は舞華の隣に座った。
「君がそれだけ有名だって事だよ。赤崎さんの今度の標的(えもの)だから」
「今度・・・?」
前にも一度同じことがあったのか?
「長い話になるけれど、君には聞いてもらいたいことがあるんだ。いい?」
あまりの深刻な表情に、彼女は無言で肯いた。
「そう。有難う。まずは・・・・・そうだね、この学校には三つのグループが存在しているのは知ってる?
一つは赤崎百合子をリーダーとして成り立つ輝というグループ。
一つは輝に歯向かい、常に影として行動する闇というグループ。
一つは輝にも闇にも属さない中立として行動する者のグループ。
今のところ輝に属する連中が約70パーセント。もちろん教師たちを含めて。僕ら闇は25パーセント。中立が5パーセント」
「何で学校が綺麗に三つに分かれたんですか・・・?」
「・・・・・・元々こんな所ではなかった。ごく普通の学校だったんだよ。でも、もう一年も前になるかな・・・君に似たような子が、生まれたんだ。赤崎さんが面白半分にいじめを始めて・・・・・・」















日直日誌に今日も一日問題はありませんでしたと書く手が震えていた。
彼女にとって、毎日が地獄に変化しつつあった。
赤崎百合子の豹変。
周りの人間も、最初のうちは彼女に罪悪感を持ちながらも、いじめてきていた。
ごめんね、香織。
ごめんね、香織。
そんな言葉が囁かれているのを知っている。
誰も逆らえない。逆らうだけの力がないのだ。あの、たった一人の娘一人に。教師とて、例外じゃない。
「あら面白い。今日も何も問題なかったんだ」
背後から覗かれる感覚。耳元で、赤崎の声がした。
震えて動かなくなった身体を、一見優しく赤崎が包み込む。
「ねえ、寒いの?こんなに震えちゃって。なんなら私が暖めてあげましょうか」
必死で首を振る。
声がまともに喉の奥から出てこない。出そうとしてもひゅーと空気の漏れる音だけだった。
「遠慮しなくて良いのよ?ほらこうしたら誰よりも暖かいでしょ?」
かちっ
音がして、赤崎の持っていたライターの炎が彼女の制服に移った。
すぐに燃え出すことは無いものの、ちりちりと確かに燃え出す。
「やっ・・・あつっ」
立ち上がり、必死で手を払って火を消そうとする。
その様子を見て赤崎はくすくすと本当に楽しそうに笑った。
「やーねー。感謝してくれても良いじゃない。香織のためにやってあげたんだから」
悪魔の笑いに、彼女は教室から走って逃げ出した。



香織が生徒会室に駆け込むと、そこには一人残って仕事をしている男の子の姿があった。
がらっと開けて、生徒会室に駆け込む。
彼女にとって、そこだけが誰にもいじめられない、神聖な場所だった。
「あれ、どうしたの香織・・・・・・何その焦げ跡っ?!」
「信司、もうやだっ。私百合子が怖いっ」
泣きながらしがみついてくる彼女に、彼は優しく抱いて、頭をなでてやることしか出来なかった。
かける言葉が無い。
どうにか、この不条理ないじめから香織を救ってあげたいが、権力が邪魔をする。
泣き止まない香織を抱きしめてどれくらいたったのだろうか、しばらくしてから再びがらっと扉が開いた。
「ラブラブだな、お二人さん」
「会長・・・・・・///」
「俺が居ることも忘れんなよ」
二人の男子に彼は苦笑して顔を上げない香織に話し掛けた。
「ほら、志摩先輩と甲斐田がきたからちょっと離れよう?」
それでも、彼女は顔を上げない。
「香織・・・?」
抵抗の無い香織の顔を上げると、すー・・・とわずかな寝息がもれた。
「・・・・・・寝てる」
「可愛い寝顔だな、おい」
「甲斐田には見せない」
彼はむっとしながら彼女の身体を抱き寄せた。
以前、甲斐田が香織を好きだったことを彼は知っているのだ。
それに、彼女の寝顔を他の人に見られるのは、少し癪だったようだ。
「高瀬、西田さんの制服が少し焦げているようだけど・・・・・・やっぱり、またか?」
志摩の言葉に、彼は無言で肯く。
皆黙った。
自分達にできることが無いのが、本当に悔しかった。
「だんだんと、エスカレートしてるんです。火なんか使って・・・もっと燃えていたら、香織自身の命だって危ない。そう考えると・・・・・・」
「でも俺らは、止めることが出来ねぇ。たかが生徒会長に、それほどの権力は無い」
「でも、助けてあげたい」
再び無言になる部屋。
すぐ外で、からすが一言、かあっ、と鳴いた。



「会長、俺、決めましたよ」
次の日、放課後の生徒会室。
彼は共に生徒会の仕事をしていた志摩に向かっていった。
「赤崎の反対勢力を作ります」
「それ、無謀なことだと分かってていってるのか?」
「例え数は少なくても、無意味なことではないと思う。この学園内に赤崎に反感を持つ生徒は必ずいる。個々としての活動でなく、まとまってやった方が遥かに機能的だ」
真剣な眼をして話す彼に、志摩は思わず惹かれた。
そう、自分だって赤崎に反感がある。
何とかしたい。なんとか元の平和だと言える学園に戻したい。
「誰がリーダーを務める?」
「言い出しっぺは僕ですからね。僕がリーダーとして指揮を取らせていただきます」
「それだけの器量があるのは皆も承知だろうさ。誰も文句は言わねーよ」
微笑むと、照れたように顔を赤くして返された。
「本当は会長の方が良いと思ったんですけど・・・・・・それじゃあ責任の押し付けかなって」
「はっ、確かに。俺に頼んでたら間違えなくやんねーさ」
「でしょ?」

「それで、やっぱり勢力に名前はつき物だろ?何にする?」

「赤崎の勢力は学校全体に広がっていて、表に出ている。光に当たる部分だとすれば、僕らはそれに反抗する影の部分。向こうは輝いているから輝(かぐ)。僕らは暗い闇ということで闇(くら)と言うことでどうですか?」

「・・・・・・決まりだな。知人を当たって早速メンバー集めといこうか」



□■□■□■□


どうしようか悩んだ末過去話。
駄目だろ、自分。逃げてちゃ。
さぁて。本当にどうしようものかしら・・・

また皆様に会えることを祈って。
 春祭あられ



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21340戦争6〜身を守るための戦い〜春祭あられ E-mail URL2002/8/6 00:14:02
記事番号21335へのコメント

うみゅ。また過去話だ。
でも重要っぽいかもしんないから我慢ください。(汗)


□■□■□■□


RRRRR・・・・・・
RRRRR・・・・・・
『はい、もしもし』
「お前の携帯に電話すんのも久しぶりだな」
甲斐田は壁にもたれながら自嘲気味に言った。
『なんのようだ?』
女の声が、憎々しげに告げる。
「本当に最後の忠告だ。もう終わりにしようぜ、赤崎。こんな事をして何の意味がある」
『・・・・・・余計な世話だぜ、俊。俺はお前が憎いんだ』






本当は、これはちょっと以上だが、とても可愛らしい恋だった。
最初は。



「百合子、お弁当食べよ」
可愛らしく笑う香織に、顔の筋肉がほぐれるかのようにつられて赤崎も笑った。
「そうだね。今日は何処で食べる?」
赤崎は笑いながら、心の中はとても熱くて、とても冷めていた。
百合子は香織が好きだった。それは友情としての好きではなく、恋愛感情。
だから一緒にいられるだけで嬉しくて熱かった。
でも。
香織が自分の正体に気付いたらどうなってしまうだろう。
自分が、香織のことが好きだと知れたら。
自分が、“男”だと知れたら・・・・・・
その日は結局屋上で食べることになった。
とてもいい天気だというのに、雨が午前中まで降っていたせいか誰もいない。
まるで二人の貸切。
いつもは人でいっぱいのため、香織はその珍しい光景に嬉しそうに笑った。
(なんて可愛いんだろう)
眩しいその笑顔を見ながら、あらかじめ用意していたレジャーシートをひいてお弁当を広げる。
幸せの時間。
二人の時間。
その時間が、この日突然崩された。
「百合子。私ね、高瀬君と付き合うことになったの」
顔を赤らめて本当に嬉しそうに。

ツキアウコトニナッタノ・・・・・・

ぷっつんと、赤崎の何かが切れた。






「何がしたいんだ、いじめなんか続けて」
『はっ、知ってるくせに』
「お前が、西田のこと好きだったことしかしらねーよ。だいたい、西田は死んだ。何故標的をわざわざ移す必要がある」
甲斐田の質問に、赤崎は電話の向こうからけらけらと笑った。
『関係ないんだよ、そんなことはもう。全てが俺に向けば良い。世界が俺中心に廻ればいい』
「勝手に自己中な事言ってんじゃねー!」
『うるさい!お前に何がわかる!父さんにも、御爺様にも振り向いてもらえたお前に何がわかる!俺だって、俺だって立派な子供じゃないか!!』
「・・・・・・ふざけんなよ・・・俺だって好きで後継ぎになるわけじゃない」
『はん、良く言うぜ。所詮心の中で笑ってんだろう?!俺は、少なくともお前より頭はいいはずだし、それなりに頑張ってきているつもりだ。なのに根本的なものが邪魔をする。何故性別が“女”だといけないんだ?!好きで女に生まれてきたわけじゃない!むしろ俺は男だ!!』
激しく叫び、はぁ。はぁ。と荒れた息が聞こえる気がした。
「知ってるよ」
甲斐田は、全て知っていた。
赤崎が、性同一性障害であることを。
彼女の体は、性別は女でありながら心はいつも男だった。
「俺は、お前は愛されていると思うぜ。俺は単なる道具に過ぎない。あの親父の息子が、俺しかいないからだ」
『俺だって男だ』
「・・・・・・知ってるよ」






本当に好きだった女の子は、自分に向けてこんな事を言った。
「もし百合子が男の子だったら絶対好きになったのになぁ」
むごい言葉だけど、少し嬉しい。
だけど、むごい。痛い。
「ふーん。じゃあ、私がもし男だったらどんな名前になってたのかな。流石に百合子そのままじゃどう考えても女の子だし」
「うーん、そうだねー・・・・・・恵志(けいし)かな?」






『なぁ、俊。俺のこと呼んでくれよ』
「んだよ、百合子」
『違う、俺の本当の、男としての名前だ』
「――――――恵志」
『やっぱ、いいねぇその名前。そうおもわねー?“赤崎”俊君?』



□■□■□■□


赤崎です。
甲斐田君の本名は実は赤崎俊君だったのです。(爆)
どう思いますかこの展開。(聞くな)
私も今回かいてて思いついたばかりだからちょっと予想外な気が・・・(おい?!)
では、また皆様に会えることを祈って。
 春祭あられ


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21341はじめまして♪璃緒 E-mail 2002/8/6 01:26:18
記事番号21340へのコメント

はじめまして♪
璃緒と申します。以後お見知りおきを♪
えと、1話から読ませていただいていたのですが、感想をかくのは今回からです。
すみませんι

>うみゅ。また過去話だ。
>でも重要っぽいかもしんないから我慢ください。(汗)
>
>□■□■□■□
>
>
>RRRRR・・・・・・
>RRRRR・・・・・・
>『はい、もしもし』
>「お前の携帯に電話すんのも久しぶりだな」
>甲斐田は壁にもたれながら自嘲気味に言った。
>『なんのようだ?』
>女の声が、憎々しげに告げる。
>「本当に最後の忠告だ。もう終わりにしようぜ、赤崎。こんな事をして何の意味がある」
ううう…本当、いじめなんてやめましょうよお…。
>『・・・・・・余計な世話だぜ、俊。俺はお前が憎いんだ』
>
>
>
>
>本当は、これはちょっと以上だが、とても可愛らしい恋だった。
>最初は。
>
>
>
>「百合子、お弁当食べよ」
>可愛らしく笑う香織に、顔の筋肉がほぐれるかのようにつられて赤崎も笑った。
>「そうだね。今日は何処で食べる?」
>赤崎は笑いながら、心の中はとても熱くて、とても冷めていた。
>百合子は香織が好きだった。それは友情としての好きではなく、恋愛感情。
>だから一緒にいられるだけで嬉しくて熱かった。
>でも。
>香織が自分の正体に気付いたらどうなってしまうだろう。
>自分が、香織のことが好きだと知れたら。
>自分が、“男”だと知れたら・・・・・・
>その日は結局屋上で食べることになった。
>とてもいい天気だというのに、雨が午前中まで降っていたせいか誰もいない。
>まるで二人の貸切。
>いつもは人でいっぱいのため、香織はその珍しい光景に嬉しそうに笑った。
>(なんて可愛いんだろう)
>眩しいその笑顔を見ながら、あらかじめ用意していたレジャーシートをひいてお弁当を広げる。
>幸せの時間。
>二人の時間。
>その時間が、この日突然崩された。
>「百合子。私ね、高瀬君と付き合うことになったの」
>顔を赤らめて本当に嬉しそうに。
>
>ツキアウコトニナッタノ・・・・・・
>
>ぷっつんと、赤崎の何かが切れた。
もしやいじめの原因はこれ!?
>
>
>
>
>
>「何がしたいんだ、いじめなんか続けて」
>『はっ、知ってるくせに』
>「お前が、西田のこと好きだったことしかしらねーよ。だいたい、西田は死んだ。何故標的をわざわざ移す必要がある」
>甲斐田の質問に、赤崎は電話の向こうからけらけらと笑った。
>『関係ないんだよ、そんなことはもう。全てが俺に向けば良い。世界が俺中心に廻ればいい』
>「勝手に自己中な事言ってんじゃねー!」
うんうん。
>『うるさい!お前に何がわかる!父さんにも、御爺様にも振り向いてもらえたお前に何がわかる!俺だって、俺だって立派な子供じゃないか!!』
あ…その気持ち痛いほどよくわかる。どんなに頑張っても相手にされないって、とってもつらいですよね。
>「・・・・・・ふざけんなよ・・・俺だって好きで後継ぎになるわけじゃない」
>『はん、良く言うぜ。所詮心の中で笑ってんだろう?!俺は、少なくともお前より頭はいいはずだし、それなりに頑張ってきているつもりだ。なのに根本的なものが邪魔をする。何故性別が“女”だといけないんだ?!好きで女に生まれてきたわけじゃない!むしろ俺は男だ!!』
>激しく叫び、はぁ。はぁ。と荒れた息が聞こえる気がした。
>「知ってるよ」
>甲斐田は、全て知っていた。
>赤崎が、性同一性障害であることを。
!!??…そうだったのか…。
>彼女の体は、性別は女でありながら心はいつも男だった。
>「俺は、お前は愛されていると思うぜ。俺は単なる道具に過ぎない。あの親父の息子が、俺しかいないからだ」
>『俺だって男だ』
>「・・・・・・知ってるよ」
>
>
>
>
>
>
>本当に好きだった女の子は、自分に向けてこんな事を言った。
>「もし百合子が男の子だったら絶対好きになったのになぁ」
>むごい言葉だけど、少し嬉しい。
>だけど、むごい。痛い。
>「ふーん。じゃあ、私がもし男だったらどんな名前になってたのかな。流石に百合子そのままじゃどう考えても女の子だし」
>「うーん、そうだねー・・・・・・恵志(けいし)かな?」
>
>
>
>
>
>
>『なぁ、俊。俺のこと呼んでくれよ』
>「んだよ、百合子」
>『違う、俺の本当の、男としての名前だ』
>「――――――恵志」
>『やっぱ、いいねぇその名前。そうおもわねー?“赤崎”俊君?』
なんですとっ!?(どこの人やねん)
新事実発覚!!
>
>
>
>□■□■□■□
>
>
>赤崎です。
>甲斐田君の本名は実は赤崎俊君だったのです。(爆)
>どう思いますかこの展開。(聞くな)
思いっきり意表を突かれました。
>私も今回かいてて思いついたばかりだからちょっと予想外な気が・・・(おい?!)
いえ、予想外だからこそ良いのです。(←なにをえらそうに)
今後の展開が気になって今夜は眠れないかも…!?
>では、また皆様に会えることを祈って。
私も祈っておりますゆえ…。
> 春祭あられ
初めましてなのに妙な感想をお送りしてしまい申し訳ございません…。
では、失礼いたします。

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21353こちらこそはじめましてvv春祭あられ E-mail URL2002/8/7 01:27:54
記事番号21341へのコメント

璃緒さんは No.21341「はじめまして♪」で書きました。
>
>はじめまして♪
>璃緒と申します。以後お見知りおきを♪
>えと、1話から読ませていただいていたのですが、感想をかくのは今回からです。
>すみませんι
はじめまして、璃緒さん。
読んで下さって、なおかつレス下さって有難うございますv

>>「本当に最後の忠告だ。もう終わりにしようぜ、赤崎。こんな事をして何の意味がある」
>ううう…本当、いじめなんてやめましょうよお…。
まったくです。私も、いじめ大っ嫌いです。

>>「百合子。私ね、高瀬君と付き合うことになったの」
>>顔を赤らめて本当に嬉しそうに。
>>
>>ツキアウコトニナッタノ・・・・・・
>>
>>ぷっつんと、赤崎の何かが切れた。
>もしやいじめの原因はこれ!?
うーん・・・・・・多分、そうです。(なんだこの自信なさげな態度は)
ここから始まってることだと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わ、私にもわかんない(爆)

>>『関係ないんだよ、そんなことはもう。全てが俺に向けば良い。世界が俺中心に廻ればいい』
>>「勝手に自己中な事言ってんじゃねー!」
>うんうん。
>>『うるさい!お前に何がわかる!父さんにも、御爺様にも振り向いてもらえたお前に何がわかる!俺だって、俺だって立派な子供じゃないか!!』
>あ…その気持ち痛いほどよくわかる。どんなに頑張っても相手にされないって、とってもつらいですよね。
認めて欲しい相手に認められないのが、子供にとってどれほど苦痛か・・・
と世間一般に言われているようなので取り入れてみました。
何故か知りませんが、私は認められなくても「ま、いっか」と思ってしまう性質があるようです。(汗)

>>「知ってるよ」
>>甲斐田は、全て知っていた。
>>赤崎が、性同一性障害であることを。
>!!??…そうだったのか…。
はい。そうでした(笑)
いじめという現代で問題になってる部分をやっているので、某T○S番組、金○先生でも取り上げられていたこの障害についても現代問題として取り入れてみました。
その代わり、かなりダークな話しですけど(滝汗)

>>『なぁ、俊。俺のこと呼んでくれよ』
>>「んだよ、百合子」
>>『違う、俺の本当の、男としての名前だ』
>>「――――――恵志」
>>『やっぱ、いいねぇその名前。そうおもわねー?“赤崎”俊君?』
>なんですとっ!?(どこの人やねん)
>新事実発覚!!
新事実です。
聞いて驚け、見て笑え!!(違)

>>赤崎です。
>>甲斐田君の本名は実は赤崎俊君だったのです。(爆)
>>どう思いますかこの展開。(聞くな)
>思いっきり意表を突かれました。
ふふふ。私もです。(おい)

>>私も今回かいてて思いついたばかりだからちょっと予想外な気が・・・(おい?!)
>いえ、予想外だからこそ良いのです。(←なにをえらそうに)
え、そうですか?
良かったー、同意してもらえてv

>今後の展開が気になって今夜は眠れないかも…!?
いや、ゆっくり眠ってください。(笑)
もう一日以上たっちゃってますが・・・(更新遅くてすいません)

>>では、また皆様に会えることを祈って。
>私も祈っておりますゆえ…。
>> 春祭あられ
>初めましてなのに妙な感想をお送りしてしまい申し訳ございません…。
>では、失礼いたします。
しばらく春祭は旅に出ますので、次回はきっと新しいツリーになっていることでしょう。
そのときも、またよろしければ読んでやってください。
どうも有難うございました!
 春祭あられ