◆−「生誕祭」再掲示につき、ご挨拶(のようなもの)−あごん (2002/9/9 00:10:15) No.21752 ┗生誕祭(序章)−あごん (2002/9/9 00:17:49) No.21753 ┣お待ち申し上げておりましたvv−白河綜 (2002/9/9 01:03:47) No.21754 ┃┗ありがとうございますvvvv−あごん (2002/9/11 02:37:37) No.21793 ┣Re:きゃぁあああああああっっ!!vv−みい (2002/9/9 17:57:58) No.21763 ┃┗お久しぶりですvvv−あごん (2002/9/11 02:43:58) No.21794 ┗生誕祭(1)−あごん (2002/9/13 01:13:03) No.21815
21752 | 「生誕祭」再掲示につき、ご挨拶(のようなもの) | あごん URL | 2002/9/9 00:10:15 |
初めまして&お久しぶりですvvのあごんと云う物です。 今回は「生誕祭」という小説を投稿するために参りました次第でございます。 多分殆どの方がご存知ないと思いますが(笑・・・えん)、あごんは書き殴り様におきまして小説を投稿しておりました。 長編も長編、いまだ未完結の小説、それが今回の投稿にして再掲示とさせて頂きます「生誕祭」でございます。 一応著者別リストにはあるのですが、一年も二年も空けておいていきなり「生誕祭(19)」は無いよなぁ、と思い至り、いっそのこと再掲示とさせていただこうかと。読み返せばかなり誤字脱字も多いですし。 そんなわけであごんのおそらく最後の長編となる予定であります「生誕祭」を、もしお時間があればお読みくださいませv なんとかして今年以内には終わらせようと画策しております。 ええ、そうなんです。画策だけは一人前なんです(爆)。 多分、「生誕祭」が終わるまでは他の小説は・・・・・書きますな、きっと(笑) 仕事などもありますから次から次へとアップというわけにはいきませんが、努力はしたいと思います。 それでは随分と長くなってしまいましたが、よろしければお付き合いくださいませ。 一度お読みくださった方々も、以前の投稿とどこが変わったのか間違い探しをするつもりでお願いします(待て)。 それではまずは序章でございます。 |
21753 | 生誕祭(序章) | あごん URL | 2002/9/9 00:17:49 |
記事番号21752へのコメント 待ってる。 私は貴方を。 焦がれている。 貴方に会う日を。 この音無き世界で。 この光見えぬ世界で。 きっと近い。その日は。 感じるわ。運命の流れを。 優しく響く空気が教えるの。 私を解放してくれる貴方の事。 待っているわ。 けたたましい幾つもの音が、宿屋の一階にある食堂兼酒場に響く。 その響きにかぶさるようにして、男達の怒号が聞こえた。 「くっ! このガキっ!!」 「ふざけやがって………っ!!」 床に散らばる幾つもの皿だったもの。なんとか原型を留める事ができたカップ。まるでテーブル自身が流している涙のようにも見える酒。そして先ほどまでは「おいしい」と形容されていた食べ物。 それらが全て所在無さ気に床に投げ出されていた。 「ふざける? まさか」 男達の声に応えて倒れたテーブルの陰から現れたのは、可愛いと言うには毒があり、美しいと言うにはまだ幼すぎる子供だった。 烏羽玉の髪は黒黒と艶を持って、肩に届く前に切り揃えられている。 肌は子供には独特の柔らかさと張りが見られる。白いが病的なそれは感じさせず、清楚なイメージを人に持たせた。 しなやかな四肢は細くどこか頼りない。だが妙な力強さもある。おそらくそれは子供の全てが持つ強さなのだろう。目に映る全てが新しく、日々が発見の連続である子供には必要な強さだ。 なによりその子供の持つ目は異彩を放っていた。 大きな黒真珠のようなその瞳。 それを縁取るように長いまつ毛が天を仰ぐ。 挑戦的で傷付く事を恐れないその視線。 男達は一瞬その目に呑まれかけた。 しかし周りに溢れつつある嘲笑に、彼らは我れに返った。 当たり前だ。 いい年齢をした男達がまだ年端もいかない子供に喧嘩を売られ、その上その子供に呑まれかけたのだ。 外はもう暗い。 この食堂兼酒場は今は酒場としての機能しか働いていないのだ。 居るのは酒を飲みにきた大人しかいない。 この余興は酒のみには格好のツマミにしかなりえないであろう。 結末はわかっていたが、彼らはそこまでの経由を楽しみにしていた。 「くそガキが。どうやら大人に対する礼儀を知らんらしいな」 「礼儀? おやおや。そんなハイソな言葉を知ってたのか」 いかにも意外と言った感で子供は言った。 「子供には手をあげないのがオトナのルールだと思ってるのか?」 もう一人の男が頬を引き攣らせながら子供を睨み付ける。 「………やってみるがいいだろう」 大人びた口調で子供が薄笑いを浮かべそう言った。 それは男達を暴力的な方向へと誘うには十分すぎた言葉だった。 「………なめやがって!」 「糞餓鬼がっ!」 男達はいきりたちながら腕を子供に向かい振り上げた。 「風牙斬!」 少し離れたテーブルから投げられた言葉と共に小さな疾風が走り、 「ブレイク!」 その言葉と同時に男達の目前で弾けた。 声もなく男達は後方に吹っ飛び、更にもう一つテーブルを破壊した。 「………ぐっ!」 「誰だ! 邪魔しやがるのは!!」 怒りをむき出したそのままで男達は、先ほど声の聞こえた方向へと首を巡らした。 視線の先には二つの影。 一人はまだ二十歳には手が届かないであろう少女だった。 栗色の長い髪と、少し赤みがかった瞳は目の前の子供同様に、いやそれ以上に挑戦的なものだった。 格好から魔道士だと見てとれた。 そしてもう一人は、その後ろにたたずむようにしている傭兵だった。 長い金髪をさらりと揺らし、青い瞳は穏やかな海の色だった。 「あたし達の連れに何か用なの?」 少女がまず口を開いた。 それを見た子供はどこか厭そうにため息を漏らす。 その表情はうんざりとしたものだった。 「ほほう。お前らの連れか、このガキは」 「そうよ」 「へへ………。じゃああんたらに責任を取ってもらおうかな?」 「………………………」 下卑た笑いを口に乗せる男達を無視して、金髪の男が子供に目を向ける。 「アリーンか? ディトか? どっちだ?」 「………………アリーンだ」 子供が無愛想に応える。 「じゃあアリーン。なにをやらかしたんだ?」 「別に。ただ単にこの男共がチンケなナンパをしてたんでね。それでこの女性を助けただけだ」 肩をすくめつつ、アリーンと呼ばれた子供は転倒したテーブルの陰にいる女性を顎で指し示した。 服装から見て、この店の従業員らしい女性だった。 「オーケー。じゃあこっちは何も悪くないってコトね」 栗色の髪に女魔道士が明るい声でそう言った。 「ふざけんじゃあねぇ! このガキ、いきなり俺らに酒を引っかけた上にテーブルを料理ごとひっくり返しやがったんだぞ!?」 男の言葉に女魔道士は眉を跳ね上げ、 「こらっ! アリーン!」 子供に向かいそう怒鳴りつけた。 「…………なんだ? リナ」 ぞんざいな口調で返答する子供――アリーン――に魔道士――リナ――はますます眉を跳ね上げる。 「なんだ?じゃないいぃぃぃっ! 食べ物を粗末にするなっていっつも言ってんでしょーがっ!」 「………………こんな安っぽい人間に食われる方が可哀相だと判断しただけだ」 「こらこらアリーン。人間に安いも高いもないぞ」 「そうかな? 私はあると思うが? ガウリイ」 アリーンはリナと傭兵――ガウリイ――を見比べながらそう言った。 すっかり置いてけぼりになった男達が再び怒号する。 「てめぇら! 無視してんじゃあねぇ!」 「こっちの弁償してもらうぜっ!」 しかし、それへの返答は一つだった。 「浄水結!」 冷たい水が男達の頭上へと降り注いだのだった。 「まー、頭を冷やしてろってコトだろうな」 ガウリイがあっけらかんと男達にそう言った。 勿論、それで引っ込むような輩ではない。 「………なめやがって!」 舌打ちと共にガウリイに向け地を蹴った。 やれやれと、ガウリイはまだ口喧嘩を展開中の二人の連れに目をくれてから、鞘ごと腰に差した剣を抜いた。 そして。 向かい来る男達の間を滑るようにして駆けたかと思うと、その一瞬後には二人の男は床に崩れ落ちた。 周りにいる他の客には何が起こったのかわからなかったであろうガウリイの剣技であった。 そして、ガウリイはちらりと窓の目を走らせる。 窓の向こうに見える夜空は果てしない程の闇だった。 まるでそこに穴が開いているかのように、月が輝く。 「………三日月、か」 つぶやくようにガウリイが言う。 後ろから聞こえる口喧嘩を聞きながら、 「どっちにしろ、後始末が大変だよなー」 などと言いながら、床に倒れる男達と、床に散らばる幾つもの残骸を見たのだった。 運命はこうして廻る。 |
21754 | お待ち申し上げておりましたvv | 白河綜 E-mail URL | 2002/9/9 01:03:47 |
記事番号21753へのコメント こちらでは初めましてv 白河綜と申しますvv いつかのチャットではお世話になりましたvv お話できて感動でしたっ! というわけで(?)予備校のテストが明日(正確には今日)あるにも関わらす現実逃避中(待て)に再掲示発見っ!! ああっv これも羽根うさのお導き♪(激しく待て) やはりアリーンもディトも可愛いですvv ああ、これからが楽しみです〜♪ ではでは。 短いですが、今回はこのあたりで。 白河綜でしたvv |
21793 | ありがとうございますvvvv | あごん URL | 2002/9/11 02:37:37 |
記事番号21754へのコメント > こちらでは初めましてv 白河綜と申しますvv > いつかのチャットではお世話になりましたvv お話できて感動でしたっ! こちらでは初めましてですねvvあごんでございますv 私も白河さんとお話できて嬉しかったですvv > というわけで(?)予備校のテストが明日(正確には今日)あるにも関わらす現実逃避中(待て)に再掲示発見っ!! > ああっv これも羽根うさのお導き♪(激しく待て) ああっこれも私が必死でネット上に甘栗を撒いたからですわねっvv > やはりアリーンもディトも可愛いですvv > ああ、これからが楽しみです〜♪ そう言っていただけると光栄ですvv可愛げのないお子様たちですが、宜しければお付き合いくださいませv > ではでは。 > 短いですが、今回はこのあたりで。 > > 白河綜でしたvv 本当にありがとうございますvv 白河さんの小説、私とっても大好きなんですv いつまでも追っかけしていきますvv あ、でもストーカーで訴えないでくださいねvv ではではあごんでしたv |
21763 | Re:きゃぁあああああああっっ!!vv | みい | 2002/9/9 17:57:58 |
記事番号21753へのコメント どーも!お久しぶりです!みいですっ! 再掲示っ!携帯はやっぱり読みづらい(笑)ってなことはともかく。これからはちょくちょく来なくてはっ! ところで。実は、転校致しまして。 元気にやってます!と、言いたい所なんですが…。あぁ、もうっ!ウチの両親、なんだか仲が悪いのです。次から次へと… 家の中ピリピリしてて、勉強所じゃないっす。(泣)受験生なのに…。。。 ではでは、心配ばっかりかけてますが、この辺で。 みいでしたっ! |
21794 | お久しぶりですvvv | あごん URL | 2002/9/11 02:43:58 |
記事番号21763へのコメント >どーも!お久しぶりです!みいですっ! お久しぶりでございますvあごんですぅvvv >再掲示っ!携帯はやっぱり読みづらい(笑)ってなことはともかく。これからはちょくちょく来なくてはっ! ああ、携帯からですか。大変そうですねぇ。私は携帯でHPとか見たことないんですよね。今度挑戦してみようかしらv >ところで。実は、転校致しまして。 >元気にやってます!と、言いたい所なんですが…。あぁ、もうっ!ウチの両親、なんだか仲が悪いのです。次から次へと… >家の中ピリピリしてて、勉強所じゃないっす。(泣)受験生なのに…。。。 転校なさったんですね。 色々と大変みたいですが、負けないでくださいねv もし私なんかで良かったらご相談に乗りますよ。解決できるなんてうぬぼれてませんが、話せることでスっとするかもですよ。 ところでもう三年生なんですね、早いですねぇ。 >ではでは、心配ばっかりかけてますが、この辺で。 >みいでしたっ! とんでもないですvv レス本当にありがとうございましたvvv あごんでしたv |
21815 | 生誕祭(1) | あごん URL | 2002/9/13 01:13:03 |
記事番号21753へのコメント そんなわけで(1)です。 この辺はあんまりいじってません(てへv) 十話前後からすっごい変わってくる予定でありんす。 なにはともあれ、お暇があればお読みくださいませv 「リナ、ガウリイさん。中央神殿都市(セントラル)へ行きなさい」 リナがガウリイと共に故郷のゼフィール・シティへと足を踏み入れてから、丁度一ヶ月が経過したその日。 仕事を終え帰宅したリナの姉であるルナ=インバースは、二人を呼びつけるなりそう言った。 「中央神殿都市(セントラル)? なんでまた?」 リナは小さく眉をひそめつつ姉にそう尋ねた。 ―――中央神殿都市(セントラル)。 リナは記憶の片隅にあるその名称とその特徴、いや、属性を急いで思い起こした。 エルメキア帝国とゼフィーリア王国の狭間にある小さな都市。 しかし只の都市とは違う。 中央神殿都市――一別名を独立自治都市というその都市は、その名の通りどこの国にも属さない都市であった。 赤の竜神を祀る神殿としては現存する中では最古といわれる大神殿がある。 そして、千年前の降魔戦争にて力尽き倒れた水竜王が墜ちた場所ともいわれる。 この都市は何者からの干渉も受けず、何者にも干渉しない完全自由都市と云う三つ目の名も持つ。 勿論、国王などはおらず、治めるのは市民から選ばれた者達で運営される「元老院」という名の治政団体。 そしてこの都市の頂上に立つ者は、この都市の象徴といわれる一人の女性だった。 千年の昔より一つの家系から代々のその女性が選ばれた。 その女性は『神々に愛された少女(ブレッセニス・レディ)』と呼ばれ、人々の信仰を神の代理として一身に受けていた。 受けていた、というのは多少穿った言葉だが、しかし真実でもある。 現在はブレッセニス・レディと同格以上といわれる存在が中央神殿都市にいる。 『高貴なる血統のその最も高貴なる血(ノーブル・ユニネアリスト・ブルーブラッド)』と呼ばれるその者は、『神々に愛された少女(ブレッセニス・レディ)』が産み落とした者である。 しかし、ただ『神々に愛された少女(ブレッセニス・レディ)』が産んだだけならばそのような名称は与えられなかったであろう。 ブレッセニス・レディはその名が示す通り、神々に愛された少女である。 その為、彼女らはその人生の全てを神に捧げる。 そう。その処女性さえも。 つまり『高貴なる血統のその最も高貴なる血(ノーブル・ユニネアリスト・ブルーブラッド)』は処女から産まれた者なのだ。 そして、初代の『高貴なる血統のその最も高貴なる血(ノーブル・ユニネアリスト・ブルーブラッド)』が産まれたのは今から約五十年前になる。 初代―――そう。代々の『高貴なる血統のその最も高貴なる血(ノーブル・ユニネアリスト・ブルーブラッド)』は、代々の『神々に愛された少女(ブレッセニス・レディ)』が崩御する時に共に逝き、同時に次代の『神々に愛された少女(ブレッセニス・レディ)』の胎内へと転生するのだ。 真実を確かめる術は今のリナ達にはないが、代々の『高貴なる血統のその最も高貴なる血(ノーブル・ユニネアリスト・ブルーブラッド)』はなんと、全て同じ顔で産まれるらしい。 つまり、五十前より代々の『神々に愛された少女(ブレッセニス・レディ)』は、全てが処女受胎をし、全てが同じ者を産み落とすのだ。 当然の事ながら、『高貴なる血統のその最も高貴なる血(ノーブル・ユニネアリスト・ブルーブラッド)』は神の子とされた。 今、中央神殿都市にいるブレッセニス・レディは第四十八代目になる。 この数字を聞くと、幾人かはおや? と思うかも知れない。 たかが千年の歴史で、四十八度も世代交代が起こるのは不自然ではないか、と。 その通りなのだ。 しかし、この異常な数字はつい最近になってから見られるものだった。 そう。五十年前を堺に、『神々に愛された少女(ブレッセニス・レディ)』の寿命が急激に短いものとなった。 それまでは、一人当たりの寿命――ただし冠名してからの話だが――は四十年以上であった。 しかし、五十年前からは長くて五年。短い者だと三年にも満たないのだ。 事実この五十年の間の世代交代は実に十三回にも昇る。 これに『高貴なる血統のその最も高貴なる血(ノーブル・ユニネアリスト・ブルーブラッド)』との因果があるのかはわからない。 しかし、あるだろうことは予想できることだ。 これらの事実はつまり。 『高貴なる血統のその最も高貴なる血(ノーブル・ユニネアリスト・ブルーブラッド)』も五十年の間に、十三度転生を繰り返したことになるのだ。 『神々に愛された少女』と『高貴なる血統のその最も高貴なる血を持つ者』が統治する都市。 それが中央神殿都市―――セントラルであった。 各国各地の赤の竜神を祀る神殿は、この都市を聖地とも呼ぶ。 これらの情報がリナの頭を忙しく駆け巡る。 「行けばいいのよ、とにかく」 リナの思考が姉の言葉によって停止させられた。 「え〜〜と。行けばいいって言われても………」 「赤の竜神騎士としての私の勘よ。あなた達二人は中央神殿都市に行くべきだわ」 ルナの言葉は感情の一切を遮断したかのように固い。 しかし冷徹さは不思議と感じさせない。 リナは少しこめかみを押さえ、考え込んだ。 彼女の姉は巫女ではないから、神託を受けることなどはない。 だが昔から、 「勘よ」 の一言で、誰もが知り得ぬ事を先見することがしばしばあった事をリナは思い出す。 先見と云うには語弊があるが、それでも姉が気になると言った事はなにかしらの形を持って現れた。 何事が起こるのかはわからない。 だが何かが起こる。 それがルナの勘であった。 「………わかったわ。姉ちゃんがそう言うんだったら、行ってみないとね」 大きな瞳に全幅の信頼を覗かせる妹に、姉は少し眉根を寄せた。 「辛い事があるかも知れないわ………」 その言葉にリナは勝ち気な目を輝かせて、悪戯っぽく笑う。 「それも赤の竜神騎士の勘?」 「いいえ。これは姉としての勘よ」 口の端を少し和ませて言うと、ルナはガウリイへと視線を移す。 「そしてこれは女としての勘だけど。ガウリイさん。貴方が鍵を握っているのかもしれないわ」 「………俺が?」 ガウリイは青いその瞳を少し細めて、ルナの瞳を見つめ返した。 ルナは無言でこくりと首を縦に振ったのだった。 窓の外の夜はなお昏い。 今宵の月は。 満月から少し欠けた形をしていた。 いびつな円は楕円にもまだ手が届かない。 旅立ちは明後日にする、とリナが言う。 ルナはゆっくりと笑い、 「そうね。じゃあ、明日はご馳走にしましょ」 リナとガウリイ、二人の頬に順にくちづけた。 「旅に備えてもう寝なさいな。二人とも」 半ば追い出すようにして、二人を部屋から送り出した。 二人の気配が消えたのを確認してから。 「………見てるわね。傲岸不遜な進入者」 空の一点を見据え、瞳に殺気さえ宿しながら呟く。 「何処にいるかまではわからないけど、あなたが書いた脚本だとしたら忠告をしてあげるわ」 自信たっぷりと表現するよりも、嘲笑うかのような笑顔で、 「あの二人を甘く見ない方がいいわよ。赤の竜神騎士が認めたあの二人を、ね」 吐き捨てるようにして、部屋を後にした。 旅立ちの朝は快晴だった。 「それにしても、姉ちゃんの言葉は気になるわね。」 故郷ゼフィール・シティを発ち、外門をくぐるとリナは傍らのガウリイへと目を向けた。 「ん〜。まぁ確かに気にはなる……けど」 「今考えたってわかるワケじゃなし、考えるのはやめとこう、でしょ?」 「………正解」 両手を上げて降参の意思表示をしながら、ガウリイは優しく笑った。 「あんたの言う科白くらい、簡単に想像できるのよ」 「長い付き合いだし………?」 上げていた手をリナの頭に下ろし、彼は彼女の瞳を覗き込むようにして尋ねた。 くしゃりっと髪を一撫でされて、リナはやや上気しながらうなずく。 「そーゆーこと!」 言ってその手を振り払うようにして、リナは駆け出した。 「ガウリーイ! あの木まで競争ねっ! 負けた方が次のご飯代を持つっ!!」 「えっ! おいっ! んな急に言われても!」 慌てながらガウリイがリナの後を追う。 「やかましいっ! 勝負の世界はキビシイのよ!! と言いつつ翔封界!」 「こらーーー!! 魔法を使うなぁぁぁぁっ!!」 穏やかな春の日差しの中。 ガウリイの叫びが澄んだ空気を震わせたのだった。 出会いが運命で。 別離は必然。 ならば。 私は何の為に居るの? 誰の為の存在だと言うの? 「やーーーっ! ごっそさん♪ ガウリイ」 「……………お前なー」 ゼフィール・シティの隣にあるディリキ・タウン。 この町で二人は昼食を摂った。 どうやら勝負に負けたガウリイのオゴリであるらしい。 「大体まほーを使うなんて卑怯だろーがっ!」 「まーまー。済んだ事をとやかく言ってもしょーがないわ」 言いながら、口の周りの汚れをナプキンで拭き取るリナ。 「ったく。こんなのはフェアじゃないぞ。次のメシ代はリナだからな」 まだ不満があるのか、ぶつぶつと文句を垂れ流すガウリイ。 その時だった。 つん、と彼の髪が後ろから引かれたのだ。 「?」 不審に思いガウリイが振り返ると、そこには年端もいかない子供の姿があった。 年齢は十歳になったかどうかに見える。 黒い美しい髪を持った子供だった。 肩に届く前に切り揃えられたその髪型が、子供らしさを出そうとしているように見えるがしかし、その意志の強そうな瞳と、整い過ぎた顔が台無しにしていた。 「? どーしたんだ? お嬢ちゃん。迷子か?」 「なに? どったの?」 リナが椅子から立ち上がり、ガウリイの側へと歩み寄る。 「いや、この子が………」 ガウリイが視線で、未だ彼の髪を掴んだままの子供を示す。 「ありゃ。迷子なの? 坊や」 困り顔で子供に声を掛けるリナに、ガウリイは眉をひそめた。 「………女の子だろ、どー見ても」 「………男の子でしょーが。どー見ても」 二人は顔を見合わせ、その子供に再び視線を戻す。 「女の子だよな?」 「男の子よね?」 そして二人同時に口を開けたのだった。 子供は涼し気な表情で、 「男も女も関係ないだろう。私はアリーンだ。それ以下も以上もない」 子供には余りにも似つかわしくない口調でそう言った。 呆気にとられる二人を知っているのかいないのか。 更に子供――アリーンは言葉を続ける。 「君達を雇いたい。報酬なら存分に取らせよう。中央神殿都市まで私を連れていってほしい」 そして更に呆気に取られた二人であった。 「え〜と、アリーン? なんでまたあたし達に声を掛けたの?」 「運命を感じたから」 「は?」 「とでも言えば信じるのか?」 リナは軽くこめかみを押さえた。 小さな頭痛でも起こっているのかもしれない。 「あのねぇ、あたしが聞いてるのは、なんであたし達をこの群衆の中から選んだのかってことよ」 言ってリナは町の大通りを両手で示した。 たしかに通りには幾つかの傭兵や、魔道士の姿が見える。 「人は結婚相手や恋人や友人を選ぶじゃないか。腐る程の人間の中から」 相変わらずの無表情でアリーンは言う。 「そんなものだろう? 人間とは」 にべもないその口調に、リナとガウリイは顔を再び見合わせた。 結局依頼は受けることにした。 実際アリーンは大金を所持していたし、断る理由も二人にはなかった。 なにより、中央神殿都市へと向かう理由に心を動かされた。 「母に会うためだ」 ぞんざいな口調はおそらく大金を持っていたことからも、金持ちの子供ゆえなのだろうと結論付けた。 なぜ母親と離れているのか、その理由は話してくれなかったが。 その日はディリキ・タウンで一泊することになった。 その夜だった。 月は昨日よりも更に欠け、星は不気味なほど少なかった。 三人はとりあえず同じ部屋で眠ることになった。 個室はひとつも空いていないため、四人用の大部屋だった。 「やっと寝たわね」 囁くようにリナが言う。 ガウリイはかるくうなずいただけだった。 「さて、じゃああたし達も寝よっか」 そうリナが言った時だった。 唐突にアリーンが目を開け、がばりと身を起こした。 二人が何か言うよりも早く、アリーンはガウリイを見つめると、 「やっと見つけた! 私の運命!!」 明るくほがらかな声でガウリイの首に抱きついたのだった。 「え!? え!? アリーン!!?」 「……って、どーしたのよ、いきなし!!」 慌てふためく二人を交互に見やると、 「アリーンなんかじゃあないよ。………ディトだよ!」 無邪気に、実に子供らしく笑ったのだった。 先ほどのアリーンとは同じ顔で同じ声だったが、全くの別人のそれらであった。 もう止められない。 廻り始めた運命は。 |