◆−朧桜−奏雅 峰希 (2002/9/25 12:07:33) No.22213 ┗Re:朧桜−ドラマ・スライム (2002/9/25 17:34:15) No.22219
22213 | 朧桜 | 奏雅 峰希 E-mail | 2002/9/25 12:07:33 |
初めまして、奏雅です。 皆さんの小説に感化され、ほとんど勢いOnlyで書いてます(笑)。 それでは、大した前書きではありませんので、 こんなトコさっさと読み飛ばして、本文を楽しんで下さい…。 *********************************** 「………ルーク。いい加減、拗ねるのは止めたら?」 そう言って溜め息を吐いたのは、銀髪、長身、おまけに美人と天からニ物も三物も与えられた『俺の』愛しいミリーナだ。 「春とは言え、このままでは風邪を引くし、それで出発が遅れるのは困るわ。早く立って」 いつもなら、その美声の繰り出すつれない一言に落ち込みながらもすぐさま従う俺だが、今日はそういうわけにはいかない。 今俺は、ミリーナと喧嘩中なのだ。 発端は…まぁ、いつもの如く照れ屋なミリーナが、俺の愛の叫びに冷やかな突っ込みを入れた事から始まったんだと思う。 俺はそんな程度じゃめげないが、その後が悪かった。 事もあろうか、ミリーナをナンパしたクソ野郎がいたのだ。 しかも、こんな奴、と俺の事をこけおろしやがった。 ちょっと凹んでいた俺は、憂さ晴らしも兼ねて、即座にそいつを叩きのめしたのだが… 『そこまでする必要は無いでしょう』 『貴方は、私に声をかける人全てを叩きのめすつもりですか』 ミリーナは不快そうに眉を寄せた。 俺は――多少、自分の為でもあるが――ミリーナが不快だろうと思ってやったのに… ミリーナは、俺のその行動こそを不快に思ったらしい。 「じゃあミリーナは、こいつにナンパされんのが嬉しいのかよ!?」 「誰もそんな事は言ってないでしょう」 「俺という者がありながら…」 「それとこれとは関係無いでしょう」 「俺はお前が好きなのに、関係無いって!?」 …てな感じで。 まさに、売り言葉に買い言葉。 俺はそのままここに座り込み、不貞腐れている、というわけだ。 「ルーク」 座り込んでから、何十度目かの呼びかけにも答えず、俺はそっぽを向いた。 ミリーナの姿が視界から消える。たったそれだけで悲しくて、不安なのに。 何で俺達、喧嘩なんかしてんだろ…。 「ルーク」 「……………」 「貴方が動かないなら、私は貴方を置いて、宿屋へ戻ります」 「……………」 ミリーナが本気なのは声で分かる。 だてに長い間、一緒に旅してたわけじゃない。 でも俺は動かなかった。 「………ふぅ」 ミリーナの、これもまた何十度目かの溜め息が聞こえた。 そのまま、彼女の気配が遠ざかっていく。 一歩。二歩。三歩…… 足音も残さず、彼女は去った。 それでも俺は動かなかった。…動けなかった。 「……ミリーナ………」 彼女の気配が捕らえられないほど離れた時、俺は、昔以上に自分の中が空虚になったのを感じた。 ミリーナが傍に居ない。 ミリーナが居ない。 たったそれだけで、俺はもう動けない。 ミリーナは俺にとって全てだから。 ミリーナが俺の全てだから。 ミリーナが居なくちゃ、俺は一歩も動けないんだ…。 心が虚無に支配されていく。 赤い光が、俺を導いている。 安息はここにある、と。 それが嘘だと、俺は知っている。 ミリーナが居なければ、安息なんてどこにも無いと同じだ。 しかし俺は、そちらへと意識が傾いていくのを、止めない。 どうでもいい事だから。 ミリーナが傍に居ないんだ。 ミリーナが傍に居ないんだ。 ミリーナが―――― パサッ 「うおっ!?な、なんだぁ!?!?」 虚ろに囚われかけていた俺の視界を、突然、布が覆った。 よくよく見ればそれは、宿屋にあったもこもこふかふかの毛布で。 気が付けば、背後には、愛しい人の気配。 「風邪ひくわよ」 短い言葉。 俺と背中合わせで座り込む。 毛布越しに伝わる、微かな温もり。 それが嬉しくて。 俺はほんの少しだけ、泣いた。 ソレヲ覆イ隠ス様ニ舞ッタ、淡イ桜ノ花ビラヲ 彼女ハ、『美シイ』ト言ッタ。 儚ゲナソノ声ガ、俺ハ、『美シイ』ト思ッタ。 *********************************** 俺の幸せは、ここにある。 そう感じさせてくれるたのは、彼女だけだった。 でも、彼女はもう居ない。 「…ありがとな」 ぽつりと呟き、頭上を見上げた。 一本の桜の木が、あの時と同じ、淡い花びらを散らせている。 俺はそれを瞬時にこの空間から消し去った。 ここは、『俺』が作り上げた空間だ。こんな事は、造作も無い。 「さて、もうそろそろだな」 ほんの数分後に、『俺』は居ないかも知れない。 けれど、どうでもいいんだ。 俺は人が、世界が、憎いから。 ミリーナの、最後の願いを叶えてやれないから。 足元に落ちていた消しきれなかった一枚の花びらをそっと手に取り、握り潰す。 …もう、どうでもいいんだ…………… 夢を見ていた。 ずっと昔の。 まだ。 全てがお前だけだった。 あの頃の 夢。 〜fin〜 *********************************** ここまでお読み下さった方、本当に有難うございます! 基本的にルクミリ大好き人間なので、また次に書く事があったら…… やっぱり暗いかもしれませんが(汗)。 それでもめげずに、頑張ってみようと思います。ので。お怒りメール等いくらでも受け付けますので、どぞ感想でも送ってやって下さい(笑)。 それでは。 本当に本当に、ヘタレな文を読んで下さって、有難うございました――――。 |
22219 | Re:朧桜 | ドラマ・スライム | 2002/9/25 17:34:15 |
記事番号22213へのコメント 奏雅 峰希さんは No.22213「朧桜」で書きました。 > >初めまして、奏雅です。 >皆さんの小説に感化され、ほとんど勢いOnlyで書いてます(笑)。 >それでは、大した前書きではありませんので、 >こんなトコさっさと読み飛ばして、本文を楽しんで下さい…。 > >*********************************** > > >「………ルーク。いい加減、拗ねるのは止めたら?」 > そう言って溜め息を吐いたのは、銀髪、長身、おまけに美人と天からニ物も三物も与えられた『俺の』愛しいミリーナだ。 >「春とは言え、このままでは風邪を引くし、それで出発が遅れるのは困るわ。早く立って」 > いつもなら、その美声の繰り出すつれない一言に落ち込みながらもすぐさま従う俺だが、今日はそういうわけにはいかない。 > > 今俺は、ミリーナと喧嘩中なのだ。 > > 発端は…まぁ、いつもの如く照れ屋なミリーナが、俺の愛の叫びに冷やかな突っ込みを入れた事から始まったんだと思う。 > 俺はそんな程度じゃめげないが、その後が悪かった。 > 事もあろうか、ミリーナをナンパしたクソ野郎がいたのだ。 > しかも、こんな奴、と俺の事をこけおろしやがった。 > ちょっと凹んでいた俺は、憂さ晴らしも兼ねて、即座にそいつを叩きのめしたのだが… おいおい > >『そこまでする必要は無いでしょう』 > >『貴方は、私に声をかける人全てを叩きのめすつもりですか』 > > ミリーナは不快そうに眉を寄せた。 > 俺は――多少、自分の為でもあるが――ミリーナが不快だろうと思ってやったのに… > ミリーナは、俺のその行動こそを不快に思ったらしい。 >「じゃあミリーナは、こいつにナンパされんのが嬉しいのかよ!?」 >「誰もそんな事は言ってないでしょう」 >「俺という者がありながら…」 >「それとこれとは関係無いでしょう」 >「俺はお前が好きなのに、関係無いって!?」 > > …てな感じで。 > まさに、売り言葉に買い言葉。 > 俺はそのままここに座り込み、不貞腐れている、というわけだ。 >「ルーク」 > 座り込んでから、何十度目かの呼びかけにも答えず、俺はそっぽを向いた。 > ミリーナの姿が視界から消える。たったそれだけで悲しくて、不安なのに。 > 何で俺達、喧嘩なんかしてんだろ…。 >「ルーク」 >「……………」 >「貴方が動かないなら、私は貴方を置いて、宿屋へ戻ります」 >「……………」 > ミリーナが本気なのは声で分かる。 > だてに長い間、一緒に旅してたわけじゃない。 > > でも俺は動かなかった。 > >「………ふぅ」 > ミリーナの、これもまた何十度目かの溜め息が聞こえた。 > そのまま、彼女の気配が遠ざかっていく。 > 一歩。二歩。三歩…… > > 足音も残さず、彼女は去った。 > それでも俺は動かなかった。…動けなかった。 >「……ミリーナ………」 > 彼女の気配が捕らえられないほど離れた時、俺は、昔以上に自分の中が空虚になったのを感じた。 > ミリーナが傍に居ない。 > ミリーナが居ない。 > たったそれだけで、俺はもう動けない。 > ミリーナは俺にとって全てだから。 > ミリーナが俺の全てだから。 > ミリーナが居なくちゃ、俺は一歩も動けないんだ…。 > > 心が虚無に支配されていく。 > 赤い光が、俺を導いている。 > 安息はここにある、と。 > それが嘘だと、俺は知っている。 > ミリーナが居なければ、安息なんてどこにも無いと同じだ。 > しかし俺は、そちらへと意識が傾いていくのを、止めない。 > どうでもいい事だから。 おお > > ミリーナが傍に居ないんだ。 > > ミリーナが傍に居ないんだ。 > > ミリーナが―――― > > > パサッ >「うおっ!?な、なんだぁ!?!?」 > 虚ろに囚われかけていた俺の視界を、突然、布が覆った。 > よくよく見ればそれは、宿屋にあったもこもこふかふかの毛布で。 > 気が付けば、背後には、愛しい人の気配。 おおおっ > >「風邪ひくわよ」 > > 短い言葉。 > 俺と背中合わせで座り込む。 > 毛布越しに伝わる、微かな温もり。 > それが嬉しくて。 > 俺はほんの少しだけ、泣いた。 > > > ソレヲ覆イ隠ス様ニ舞ッタ、淡イ桜ノ花ビラヲ > > 彼女ハ、『美シイ』ト言ッタ。 > > 儚ゲナソノ声ガ、俺ハ、『美シイ』ト思ッタ。 おおおおおっ > > >*********************************** > > > 俺の幸せは、ここにある。 > そう感じさせてくれるたのは、彼女だけだった。 > > でも、彼女はもう居ない。 > > >「…ありがとな」 > ぽつりと呟き、頭上を見上げた。 > 一本の桜の木が、あの時と同じ、淡い花びらを散らせている。 > 俺はそれを瞬時にこの空間から消し去った。 > ここは、『俺』が作り上げた空間だ。こんな事は、造作も無い。 >「さて、もうそろそろだな」 > ほんの数分後に、『俺』は居ないかも知れない。 > けれど、どうでもいいんだ。 > 俺は人が、世界が、憎いから。 > ミリーナの、最後の願いを叶えてやれないから。 > 足元に落ちていた消しきれなかった一枚の花びらをそっと手に取り、握り潰す。 > > > …もう、どうでもいいんだ…………… > > > > > > > > > > 夢を見ていた。 > > ずっと昔の。 > > まだ。 > > 全てがお前だけだった。 > > あの頃の 夢。 うおーーーーーーーーーーーーーー > > > > > 〜fin〜 > > >*********************************** > > ここまでお読み下さった方、本当に有難うございます! > 基本的にルクミリ大好き人間なので、また次に書く事があったら…… > やっぱり暗いかもしれませんが(汗)。 > それでもめげずに、頑張ってみようと思います。ので。お怒りメール等いくらでも受け付けますので、どぞ感想でも送ってやって下さい(笑)。 感想が言葉にならないです。 > > それでは。 >本当に本当に、ヘタレな文を読んで下さって、有難うございました――――。 これでへタレなら僕の作品は一体(悲涙) それではこのような素晴らしい作品をいやそれ以上の作品をどんどん創り上げていってください。 > > > > > > > |