◆−神様の贈り物 ―FOUR―−雫石彼方 (2002/9/26 18:52:03) No.22243 ┣Re:神様の贈り物 ―FOUR―−ドラマ・スライム (2002/9/26 21:09:42) No.22250 ┃┗Re:神様の贈り物 ―FOUR―−雫石彼方 (2002/9/29 21:23:00) No.22309 ┗一人称の秘密。−桐生あきや (2002/9/27 20:07:48) No.22266 ┗その真実は・・・。−雫石彼方 (2002/9/29 21:51:36) No.22312
22243 | 神様の贈り物 ―FOUR― | 雫石彼方 E-mail URL | 2002/9/26 18:52:03 |
こんばんわ、雫石です。 今回はようやく『a』の登場、そしてゼルとの出逢いです。 やっとゼルアメらしくなってきたかしら・・・? ではでは、本編へどうぞ〜。 ********************************************* 神様の贈り物 ―FOUR― 夜の闇の中に溶け込むように、ひっそりと佇む少女。 黒い髪、黒い服。 その華奢な体をほとんど黒で覆われている分、肌の白さが際立って見える。 何故か靴は履いていなかった。 一瞬家出娘が迷い込んだか?とも思ったが、少女の放つ一種異様な、神秘的とも言える雰囲気がその考えを打ち消した。 ――――こいつが、“プロトタイプa(スモールエー)”・・・・・? 正直、想像していたものとは随分かけ離れた姿に戸惑った。禍々しい――――そう、もっと“らしい”雰囲気を纏ったものだと思っていたのだ。しかし今彼の目の前にいる少女からは邪悪なものは全く感じられず、むしろ神々しささえ感じる。 少女が、ゆっくりと振り返った。頭上に広がる夜空を映し込んだような深蒼の澄んだ瞳にひたと見つめられて、全てを見透かされるような錯覚に囚われゼルガディスははっと息を呑んだ。 「――――誰・・・・・?」 「・・・・え、あー、俺はここの社員だ。ゼルガディスという・・・・・」 「ゼルガディス、さん・・・・・・・」 「あんたは?」 その質問に、困惑した表情を浮かべて。 「ボク、は・・・・・・・・・」 言葉はそれ以上続かず、闇へと消えていった。 二人の間を、風が吹き抜ける。 ――――と、少女がふ、と空を見上げた。 それにつられてゼルガディスも空を仰ぐ。しかし、星が所々に見える意外はこれと言って変わったところはどこにもなく、彼はまたすぐに視線を少女に戻した。 ――――が。 ついさっきまで少女が立っていたはずのそこには、もう誰もいなかった。 「で?どうだったのよ?」 その後の作戦会議で顔を会わせるなり、リナはゼルガディスに会社内を捜索した結果を聞きたがった。それに、軽く肩をすくめて。 「ダメだな。例の地下3階の研究所も覗いてみたが、もぬけの殻だった」 さらっと言ったゼルガディスの答えにそっちもかと呟いて、リナはふてくされた顔でソファに身を投げ出した。どうやら祝賀会の方でも大した収穫はなかったらしい。 ・・・・・もっとも、そちらの方には端から期待などしていなかったが。 「敵さんも一筋縄ではいかないってことか」 「やっぱり、最初に目撃した女性社員の方が入った時点で侵入者の存在に気付いて、他の場所に移したと考えるのが妥当でしょうね」 「そうすると、その元社員の身の危険もより高く考えられるわけよね。そっちの警護はルーク達がやってくれてるんでしょ?」 「ああ、安全な場所に移した上でミリーナが常に行動を共にしてるみたいだから、特に心配ないだろ」 「ふーん。ルークが焼きもち妬いてなきゃいいけどね」 「女性相手にですか?」 「甘い!!あの男なら十分有り得るわ!!」 最初に発言したきり沈黙したゼルガディスをよそに、あーだこーだと意見を交わす3人。無口な彼が必要最低限のことしか言わず、専ら聞き役に回ることの方が多いことは皆わかっていたので、特に気にする者もいない。 しばらくはちょこちょこと寄り道しつつも一応真面目に捜査状況と今後の展望を話し合っていた彼らだったが、彼らの悪い癖でその後話はどんどん違う方向へと脱線していき、そのうち新人には必ず話して聞かせる慣例になっているという夜のビル内を徘徊する女の子の幽霊の話だとか、何々課長が風にかつらを飛ばされたところを目撃してしまった為にいびられるようになった社員の愚痴だとかいった、リナが祝賀会で入手してきたというくだらない情報へと話題は移っていった。 それを話半分に聞きながら、ゼルガディスは一人そっと溜息を付く。 ・・・・・何故だろう、咄嗟に少女の存在を隠してしまったのは。 自分でもわからなかった。 地下3階の研究所に何もなかったというのは本当だ。少女が消えた後、その行方を追って覗いてみたから。だから彼の言ったことは、あながち嘘ではない。 けれどどうしても、あの時出逢った少女のことを話す気になれなかった。 不可解な、自分の心。 「・・・・・全く、どうなっちまってるんだろうな」 「でっしょ!?かつらが飛んだのを見たってだけで評価落とされて減給なんて、信じらんないわよね!!」 ふと呟いたゼルガディスの言葉を自分達の話題に対するものだと思ったのか、リナが勢い込んで同意を求めてきた。それに素知らぬ顔で“ああ”と頷くと、彼女は満足そうな表情でまたガウリイ達との話題に戻っていく。 一癖も二癖もあるような連中だが、危険な仕事も共にこなしてきた信頼できる仲間達。 その彼らに隠し事をしてまで、あの少女を庇った。 ――――本当にどうなっちまってるんだろうな、俺は。 あの少女の姿が、声が、脳裏に焼き付いて離れない。 不思議な光を湛える、吸い込まれそうなほど深い蒼の瞳も。 漆黒の衣装の合間から覗く、淡雪のような真っ白な肌も。 モノトーン調の色彩の中でただ一つ、その存在を主張するかのような鮮やかな薄紅色の唇も。 心に直接響くような、澄んだ声も。 何もかもが衝撃的で、その鮮烈な印象で以ってゼルガディスの心をひどく揺さぶった。 ――――俺は何故、あの少女を庇った・・・・・・? 胸の内で飛び交う、幾つもの疑問符。それらに対する答えは、何一つとして見つからない。 けれどただ一つ、はっきりしているのは。 ――――もう一度、あの少女に逢いたい。 そう思っている、やはり不可解な自分の心だけだった。 |
22250 | Re:神様の贈り物 ―FOUR― | ドラマ・スライム | 2002/9/26 21:09:42 |
記事番号22243へのコメント 雫石彼方さんは No.22243「神様の贈り物 ―FOUR―」で書きました。 > >こんばんわ、雫石です。 >今回はようやく『a』の登場、そしてゼルとの出逢いです。 >やっとゼルアメらしくなってきたかしら・・・? >ではでは、本編へどうぞ〜。 > > >********************************************* > > >神様の贈り物 > >―FOUR― > > > 夜の闇の中に溶け込むように、ひっそりと佇む少女。 > 黒い髪、黒い服。 > その華奢な体をほとんど黒で覆われている分、肌の白さが際立って見える。 > 何故か靴は履いていなかった。 > 一瞬家出娘が迷い込んだか?とも思ったが、少女の放つ一種異様な、神秘的とも言える雰囲気がその考えを打ち消した。 > > > ――――こいつが、“プロトタイプa(スモールエー)”・・・・・? > > > 正直、想像していたものとは随分かけ離れた姿に戸惑った。禍々しい――――そう、もっと“らしい”雰囲気を纏ったものだと思っていたのだ。しかし今彼の目の前にいる少女からは邪悪なものは全く感じられず、むしろ神々しささえ感じる。 > 少女が、ゆっくりと振り返った。頭上に広がる夜空を映し込んだような深蒼の澄んだ瞳にひたと見つめられて、全てを見透かされるような錯覚に囚われゼルガディスははっと息を呑んだ。 >「――――誰・・・・・?」 >「・・・・え、あー、俺はここの社員だ。ゼルガディスという・・・・・」 >「ゼルガディス、さん・・・・・・・」 >「あんたは?」 > その質問に、困惑した表情を浮かべて。 >「ボク、は・・・・・・・・・」 > 言葉はそれ以上続かず、闇へと消えていった。 > 二人の間を、風が吹き抜ける。 > ――――と、少女がふ、と空を見上げた。 > それにつられてゼルガディスも空を仰ぐ。しかし、星が所々に見える意外はこれと言って変わったところはどこにもなく、彼はまたすぐに視線を少女に戻した。 > ――――が。 > > > ついさっきまで少女が立っていたはずのそこには、もう誰もいなかった。 > > > > > > > >「で?どうだったのよ?」 > その後の作戦会議で顔を会わせるなり、リナはゼルガディスに会社内を捜索した結果を聞きたがった。それに、軽く肩をすくめて。 >「ダメだな。例の地下3階の研究所も覗いてみたが、もぬけの殻だった」 > さらっと言ったゼルガディスの答えにそっちもかと呟いて、リナはふてくされた顔でソファに身を投げ出した。どうやら祝賀会の方でも大した収穫はなかったらしい。 > ・・・・・もっとも、そちらの方には端から期待などしていなかったが。 >「敵さんも一筋縄ではいかないってことか」 >「やっぱり、最初に目撃した女性社員の方が入った時点で侵入者の存在に気付いて、他の場所に移したと考えるのが妥当でしょうね」 >「そうすると、その元社員の身の危険もより高く考えられるわけよね。そっちの警護はルーク達がやってくれてるんでしょ?」 >「ああ、安全な場所に移した上でミリーナが常に行動を共にしてるみたいだから、特に心配ないだろ」 あれルーク達っていたっけ?(僕、バカクラゲ) >「ふーん。ルークが焼きもち妬いてなきゃいいけどね」 >「女性相手にですか?」 >「甘い!!あの男なら十分有り得るわ!!」 > 最初に発言したきり沈黙したゼルガディスをよそに、あーだこーだと意見を交わす3人。無口な彼が必要最低限のことしか言わず、専ら聞き役に回ることの方が多いことは皆わかっていたので、特に気にする者もいない。 > しばらくはちょこちょこと寄り道しつつも一応真面目に捜査状況と今後の展望を話し合っていた彼らだったが、彼らの悪い癖でその後話はどんどん違う方向へと脱線していき、そのうち新人には必ず話して聞かせる慣例になっているという夜のビル内を徘徊する女の子の幽霊の話だとか、何々課長が風にかつらを飛ばされたところを目撃してしまった為にいびられるようになった社員の愚痴だとかいった、リナが祝賀会で入手してきたというくだらない情報へと話題は移っていった。 > それを話半分に聞きながら、ゼルガディスは一人そっと溜息を付く。 > ・・・・・何故だろう、咄嗟に少女の存在を隠してしまったのは。 > 自分でもわからなかった。 > 地下3階の研究所に何もなかったというのは本当だ。少女が消えた後、その行方を追って覗いてみたから。だから彼の言ったことは、あながち嘘ではない。 > けれどどうしても、あの時出逢った少女のことを話す気になれなかった。 > 不可解な、自分の心。 >「・・・・・全く、どうなっちまってるんだろうな」 >「でっしょ!?かつらが飛んだのを見たってだけで評価落とされて減給なんて、信じらんないわよね!!」 > ふと呟いたゼルガディスの言葉を自分達の話題に対するものだと思ったのか、リナが勢い込んで同意を求めてきた。それに素知らぬ顔で“ああ”と頷くと、彼女は満足そうな表情でまたガウリイ達との話題に戻っていく。 > 一癖も二癖もあるような連中だが、危険な仕事も共にこなしてきた信頼できる仲間達。 > その彼らに隠し事をしてまで、あの少女を庇った。 > > > ――――本当にどうなっちまってるんだろうな、俺は。 > > > あの少女の姿が、声が、脳裏に焼き付いて離れない。 > 不思議な光を湛える、吸い込まれそうなほど深い蒼の瞳も。 > 漆黒の衣装の合間から覗く、淡雪のような真っ白な肌も。 > モノトーン調の色彩の中でただ一つ、その存在を主張するかのような鮮やかな薄紅色の唇も。 > 心に直接響くような、澄んだ声も。 > 何もかもが衝撃的で、その鮮烈な印象で以ってゼルガディスの心をひどく揺さぶった。 凄い凄すぎるマネできない > > > ――――俺は何故、あの少女を庇った・・・・・・? > > > 胸の内で飛び交う、幾つもの疑問符。それらに対する答えは、何一つとして見つからない。 > けれどただ一つ、はっきりしているのは。 > > > ――――もう一度、あの少女に逢いたい。 > > > そう思っている、やはり不可解な自分の心だけだった。 ほうほう > > > 面白かったですそれでは |
22309 | Re:神様の贈り物 ―FOUR― | 雫石彼方 E-mail URL | 2002/9/29 21:23:00 |
記事番号22250へのコメント いつも素早いレスですね。 それなのにお返事遅くなってすみません。 >> あの少女の姿が、声が、脳裏に焼き付いて離れない。 >> 不思議な光を湛える、吸い込まれそうなほど深い蒼の瞳も。 >> 漆黒の衣装の合間から覗く、淡雪のような真っ白な肌も。 >> モノトーン調の色彩の中でただ一つ、その存在を主張するかのような鮮やかな薄紅色の唇も。 >> 心に直接響くような、澄んだ声も。 >> 何もかもが衝撃的で、その鮮烈な印象で以ってゼルガディスの心をひどく揺さぶった。 >凄い凄すぎるマネできない そこまで誉められると照れてしまいますね; お恥ずかしいです。 >面白かったですそれでは ありがとうございましたー。 |
22266 | 一人称の秘密。 | 桐生あきや URL | 2002/9/27 20:07:48 |
記事番号22243へのコメント こんばんは、雫ちゃん♪ ひょろっと来てみたら続きがでていて、小躍りしながら読ませてもらいました。 なんというか、読みながら、ああ雫ちゃんのお話だぁ(><)と思いました。リナやゼルたちを含めたキャラの会話や文体が、すごく雫ちゃんらしくて、ますます続きが読みたくなります。ツリーも上のほうにきたから、携帯からでもチェックできるようになりましたぜ☆(ニヤリ) カツラを目撃したために減給された社員さんも気になるんだけど、いちばんの謎は「ボク」だすよ「ボク」! 一人称が「ボク」の女の子って姫に限らず新鮮……。いや、姫だとますます新鮮かも……(笑)。一人称が「オレ」の女の子は後輩に一人いたんだけどね(笑) そういうわけで、タイトルが「一人称の秘密」なのでした。 私的に裸足なのがポイント高かったりします(爆)。全身真っ黒で、手足と顔だけほの白いなんて、印象ばっちりですわ姫(笑)。 ごめんー、暴走中かも(^^;) では、早く二人が再会できるのを楽しみにしておりますv それでは。また。 桐生あきや 拝 |
22312 | その真実は・・・。 | 雫石彼方 E-mail URL | 2002/9/29 21:51:36 |
記事番号22266へのコメント わ〜い、桐ちゃん感想どうもありがと〜vv > こんばんは、雫ちゃん♪ ・・・あり?なんか桐ちゃんに『雫ちゃん』と言われるとちょっとびっくり。今まで『彼方ちゃん』だったから・・・。 いや、私はどっちでも構わないんだけど。ていうか私のHN、『彼方』の部分はもしかしていらないんじゃないかと密かに思ってる今日この頃だったりするし(^^;)『雫ちゃん』で全然おっけーですv > なんというか、読みながら、ああ雫ちゃんのお話だぁ(><)と思いました。リナやゼルたちを含めたキャラの会話や文体が、すごく雫ちゃんらしくて、ますます続きが読みたくなります。ツリーも上のほうにきたから、携帯からでもチェックできるようになりましたぜ☆(ニヤリ) そ、そうかな、私っぽい?やっぱり書いてるとクセが出てくるのかねー。なんか恥ずかしい・・・・キャ☆(殴) ツリー、上の方に来たのも束の間で、あっという間に下がってきました(^^;) 携帯でチェックできてる間に次がアップできればいいんだけど・・・・・どうも無理っぽいι 一応書いてはあるんだけどね。ストック分がある程度ないと投稿できない小心者なのデス(^^;) > カツラを目撃したために減給された社員さんも気になるんだけど、いちばんの謎は「ボク」だすよ「ボク」! > 一人称が「ボク」の女の子って姫に限らず新鮮……。いや、姫だとますます新鮮かも……(笑)。一人称が「オレ」の女の子は後輩に一人いたんだけどね(笑) > そういうわけで、タイトルが「一人称の秘密」なのでした。 「ボク」についてはそのうち種明かしするんだけど・・・・・知らない方が幸せかもしれない(笑) あまりのふざけた真実に腰抜かされないか心配です(笑) > 私的に裸足なのがポイント高かったりします(爆)。全身真っ黒で、手足と顔だけほの白いなんて、印象ばっちりですわ姫(笑)。 > ごめんー、暴走中かも(^^;) そう、色白姫の真っ黒衣装!!しかも裸足!!ビジュアル的にすごく好きなんだよねーv もう趣味大爆発(笑) > では、早く二人が再会できるのを楽しみにしておりますv > それでは。また。 二人の再会かー。まあ、そんなに遠くはないでしょう♪ ではでは、どうもありがとうでしたー!! |