◆−Mistletoe−エモーション (2002/11/30 23:49:02) No.23555 ┣Re:Mistletoe−D・S・ハイドラント (2002/12/1 16:54:15) No.23567 ┗Mistletoe 2 〜平成タイヤキ物語を聴きながら−エモーション (2002/12/2 22:54:24) No.23584 ┣Re:Mistletoe 2 〜平成タイヤキ物語を聴きながら−D・S・ハイドラント (2002/12/4 17:11:44) No.23610 ┃┗Re:Mistletoe 2 〜平成タイヤキ物語を聴きながら−エモーション (2002/12/4 20:45:22) No.23615 ┣毎日毎日僕らは鉄板の上で焼かれて嫌になっちゃうよ−Dirac (2002/12/10 22:57:06) No.23702 ┃┗魚好きの男とあんこ好きの女が協力してタイヤキを考えたのさ〜♪−エモーション (2002/12/11 20:53:33) No.23709 ┗遅くなりました。−猫楽者 (2002/12/12 00:07:54) No.23720 ┗ありがとうございます−エモーション (2002/12/12 22:22:51) No.23723
23555 | Mistletoe | エモーション E-mail | 2002/11/30 23:49:02 |
こんばんは。 普段、投稿は2の方に出没してますが、今回、1の方にも投稿してみました。 初めましての方は、初めまして。m(__)m この話は、突発的に書きました。そろそろ時期だからいいかあなと。 ……シリアスにするはずだったのだけど……。ご笑覧していただけると嬉しいです。 では、ご覧下さいませ。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「Mistletoe」 「わあ〜っ! リナさん、見てください。すごくキレイですよ!」 唐突に降ってきた雪のため、急いで近くの町へ入った途端、アメリアが 歓喜の声を上げる。 白く雪化粧されつつある町の中には、目にも鮮やかな常緑樹があちらこちらに 立っており、それらは全て綺麗な飾り付けが施されていた。 「ほんと……すごいわねぇ……。これって、この町の風習? あたしの故郷じゃ こんなことしなかったわよ」 アメリアほどではないが、リナも金や銀のモール、キラキラした星形の飾り といった、様々な飾り付けをしたものや、赤や青のリボンだけという、シンプルだが シックで品を感じさせる飾り付けの木々に目を奪われた。ふわふわと舞い降りる ような雪が、その光景をさらに引き立たせている。 それぞれの故郷にはない光景に目を輝かせているリナとアメリアに、 ゼルガディスが言う。 「何だ、知らなかったのか。 この辺りは毎年、新年までの一ヶ月間、常緑樹を飾り付ける習慣があるんだ。 だから、しばらくはどの町や村に行ってもこんな感じだろうな」 「そーいえば……このくらいの時期になると、俺の家でも木に飾りつけてたな」 「えっ! それじゃあ、ガウリイさんの故郷ってこの辺りなんですか?」 のんびりとそう呟くガウリイに、とっさにアメリアがそう訊ねる。何分、 ガウリイの昔の話など、滅多に聞けるものじゃない。 「いや、違うけど。ばーちゃんが飾ってたんだ。赤いリボン結ぶのが多かったな。 あと鈴つけたりな。俺の家以外では、どこもそんなことしてなかったから、 もしかしたらばーちゃんの故郷がこの辺なのかもな」 「へぇ……。でも、何で木に飾りをつけたりするのかしら? まあ、綺麗だから いいけど」 近くにある木にぶら下がっている鈴の飾りをつつきながら、ニコニコしながら リナがそう言う。こういった時だけは、リナも年相応の少女だ。とても凄腕の 魔道士で、しかも盗賊イジメが趣味にはみえない。 「『冬に常緑樹を飾ると、幸運が訪れる』……そう言う言い伝えがあるんですよ」 「ゼロスさん、良く知ってますね。魔族なのに」 「ほんと。あんたって時々みょーに、人間の風習とかに詳しいわよね。やっぱり、 亀の甲より年の功ってやつ?」 驚いているのか、呆れてるのか、感心しているのか、よく分からない口調で アメリアとリナが口々にそう言う。共通しているのは、2人とも悪気だけは 全くないと言うことだろうか。言われたゼロスは、人差し指で頬の辺りを かきながら、少し困ったような表情をした。 「年の功って……。その言い方はちょっと……。まあ、昔からある風習です からねぇ……」 「まあ、とりあえず宿を探すぞ。この天気だ。早く決めないと泊まれなく なるかもしれん」 常緑樹の飾りには興味がない、と言わんばかりにゼルガディスはさっさと 歩き始める。急に降ってきた雪のため、自分達以外にも慌ててこの町に入ってきた 者は多い。雪が降る中、野宿をする者はいないだろうから、早く宿を取った方が 賢明だ。 「え〜っ、それは確かにそうですけど……」 「少しくらい町の中を見たいわよね〜」 「そうですよ、ゼルガディスさん。もう少し、心に余裕を持ちませんと……」 「あのさ、ゼル。少しくらいなら見て回っても……」 「だーっ! やかましいっ!! 宿を決めてから見て回ればいいだろうがっ!!」 一瞬、自分が学生を引率する教師にでもなったような気がした、 ゼルガディスだった。 寒さは苦手だと公言しているのに、やはり楽しみがあると別なんだろうか。 普段ならがっちりと防寒対策を取っていても、「寒い寒い」と言って宿屋に 閉じこもっているのに、寒さをまるで気にせずに大喜びしているリナと アメリアを見て、ゼルガディスはそう思った。 今、リナ達が向かっているのは町の中央にあるという常緑樹の飾り…… ツリーだ。宿の主人から、中央の公園にはひときわ大きなツリーがあり、 そのツリーは夜になるとライティングを灯すので、さらに綺麗なのだと聞いて、 わざわざ見に来た……と言うわけである。もっとも、宿を決めてから見ればいいと 提案(?)したのは自分だし、確かに大きなツリーを見てみたいとも思ったので、 ゼルガディスは特に文句も言わずについてきている。 町に住む者でも同じようなことを考えるためだろうか。時刻の割に、 中央公園のツリーの周囲にはかなりの人がいる。 中央に生えている樅の木は、樹齢100年ほどだろうか。様々な飾りと 灯されたライティングの光の中、樅の木は人を惹きつける美しさと、樹齢の 長い木が持つ独特の不思議な風格を感じさせていた。 「月並み……だけどさ。すごい……よね、なんか……」 「そうですよね……それに、何だか見ているだけで楽しくなりませんか? リナさん」 「うん、なる」 「確かに、これはすごいよなあ」 「樹齢が長い上に、これほど見事な木もそうそうありませんしね。 ……ところで、いいんですか? リナさんたち、どんどんツリーの方へ 行っちゃってますけど」 ゼロスの指摘どおり、しばらくツリーに見とれていたリナとアメリアは、 もっと近くで見たくなったのか、どんどんツリーに近づいていく。 「それがどうかしたのか? 見物しに行っているだけなら、何の問題もないだろう」 さすがに木の見事さに感嘆しつつゼルガディスがそう答えると、ゼロスは ぼそりと呟くように言う。 「……本当にいいんですかあ? ガウリイさんは仕方がないとしても、 ゼルガディスさんはご存じでしょう? ツリーに絡んだもう一つの風習を。 あのツリー、ちゃんと飾ってありますよ。『a ball of mistletoe』が」 「ミスルトゥ……!? しまった……まずいっ……」 その単語を聴いた瞬間、ゼルガディスはガウリイを引きずるようにして、 リナ達の後を追いかけた。 「やっぱり、そうなりますよねぇ……」 ゼロスはくすくすと笑ってそう言うと、後についていった。 一方、男性陣のそんな会話を何も知らないリナ達は、思ったよりもすんなりと ツリーの下に来ていた。 「……リナさん。あれ、何でしょう? あの、赤いリボンのリース……」 アメリアが見上げた先に、まるでボールのように丸い形をした、黄色い枝に 白い実のついているリースがぶら下がっていた。 「えっ? ああ、あれね。多分、ヤドリギ……だと思うんだけど……何で ヤドリギでリースなんか作ってるんだろ?」 そんな会話をしていると、 「アメリア、リナ、それ以上ツリーの下に行くな」 そう言うゼルガディスの声がした。振り向くと、ゼルガディスは走って きたのか、息を切らしていた。しかも、ご丁寧にガウリイを引きずっている。 「ゼルガディスさん」 「ゼル! ……って、何でガウリイ、引きずってんの?」 「いや、俺は何が何だか、良く分からないんだが……」 リナの問いにのほほんと答えるガウリイと対照的に、ゼルガディスは妙に 慌てている。 「説明は後だ。とにかく、すぐにこっちに来てくれ」 不思議そうな面持ちのまま、素直にアメリアはゼルガディス達のいる方へ 戻って行く。リナはツリーの下でその様子を見ていたが、肩をすくめて同じように 戻りながらも、訊ねる。 「 ツリーから離れろって、どうしてよ?」 「理由をお教えしましょうか?」 いつの間にかリナの隣に来ていた……と言ってもゼロスは魔族なので、 このくらいはすんなりやってのけるが、ゼロスがそう聞いてきた。 「……いきなり現れないでよ。で、何で?」 「正確に言いますと、ツリーじゃなくてあのリース…… 『a ball of mistletoe』って言うんですけど、女性があのリースやあれが 飾ってあるツリーの下に立っていると……」 「立っていると?」 「わ゛ーーーっ! 馬鹿、やめろゼロスっ!」 「こうなるんですよ……ちゅ。」 不意にゼロスから頬にキスされ、リナは思考が停止し、ゼルガディスは 真っ青になり、アメリアは目を点にして硬直した。 ざしゅっ! 次の瞬間、軽快な音と同時に、ガウリイの剣が、ついさっきまでゼロスが いた場所に突き刺さった。 「あ、すまん、ゼロス。ついうっかり手が滑っちまった」 「いえいえ。僕なら無事ですからお気になさらずに」 どうがんばっても「ちっ、逃げられたか」と言っているようにしか聞こえない 口調のガウリイの言葉に対し、ゼロスはすんなりと避けた上に、にっこり 笑ってそう言葉を返している。誰がどう見ても一触即発な状況の中、リナは ……と言うと顔を真っ赤にしてその場に座り込んでいた。 「あの……今のって、一体……」 「ツリーのある時期は、ミスルトゥ……ヤドリギの下に立っている女性には、 誰でもキスしていいという風習があるんだ……ちなみに女性の方には拒否権はない」 「……それ、先に行ってくださあい……(涙)」 「俺もさっきまで忘れていた。すまん……」 呆然としつつ、アメリアとゼルガディスがそんな会話を交わす中、ツリー の下ではガウリイとゼロスの物騒な追いかけっこが始まっていた。 「……ガウリイさん、にこにこしてますけど、目が全然笑ってません……。 凄く怖いです……」 「ああ。アメリア、その気持ちは俺にもよーく分かる……。自分の事の様にな……。 とりあえず、我に返ったリナが暴れ出す前に、取り押さえるぞ」 「それは分かりましたが……ガウリイさんはどうするんですかあ?」 「……すまんが、今の旦那を止める手段は、俺には思いつかん(きっぱり)」 「はははははははっ、まてっ! こいつぅ(怒)」 「ほほほほっ、捕まえてごらんなさ〜い(笑)」 「……周囲の人達……避難させましょうね……」 「……賛成……」 この騒ぎは、ゼルガディスとアメリアに、無差別攻撃呪文だけはやめろと 必死の説得をされたリナが、烈閃槍(エルメキア・ランス)をゼロスに ぶつけるまで続いた。 ──Mistletoe 続く……かもしんない(笑)── ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ この時期でヤドリギって言ったら、このネタになるんですよねぇ……何故か。 わざとキスネタだけは外そうと思っていたのに……頭に浮かんだガウリイと ゼロスの追いかけっこがそれを阻みました……(遠い目) あの場面、台詞を声つきで脳内にイメージしちゃったのは秘密です(笑) 続く……かもしんないのは、今下書きしている話が、やっぱりミスルトゥネタ だからです。 ゼルで「平成△○△○物語(なんとなく伏せ字)」みたいなのやりたいなあと……。 では、読んでくださいましてありがとうございました。 |
23567 | Re:Mistletoe | D・S・ハイドラント | 2002/12/1 16:54:15 |
記事番号23555へのコメント こんばんは〜。 ハイドラントです。 > アメリアほどではないが、リナも金や銀のモール、キラキラした星形の飾り >といった、様々な飾り付けをしたものや、赤や青のリボンだけという、シンプルだが >シックで品を感じさせる飾り付けの木々に目を奪われた。ふわふわと舞い降りる >ような雪が、その光景をさらに引き立たせている。 いいですねえ。 >「えっ! それじゃあ、ガウリイさんの故郷ってこの辺りなんですか?」 故郷は海じゃあ・・・。 > 驚いているのか、呆れてるのか、感心しているのか、よく分からない口調で >アメリアとリナが口々にそう言う。共通しているのは、2人とも悪気だけは >全くないと言うことだろうか。言われたゼロスは、人差し指で頬の辺りを >かきながら、少し困ったような表情をした。 悪気ありそうですが・・・ > 寒さは苦手だと公言しているのに、やはり楽しみがあると別なんだろうか。 > 普段ならがっちりと防寒対策を取っていても、「寒い寒い」と言って宿屋に >閉じこもっているのに、寒さをまるで気にせずに大喜びしているリナと >アメリアを見て、ゼルガディスはそう思った。 そーいやゼル暴の、ゼルの寂しいクリスマス編書こうと思ってたんだ(忘れてた) >提案(?)したのは自分だし、確かに大きなツリーを見てみたいとも思ったので、 ツリーというと別のそれが思い浮かぶ >「アメリア、リナ、それ以上ツリーの下に行くな」 下というのもまた・・・。 >「ツリーのある時期は、ミスルトゥ……ヤドリギの下に立っている女性には、 >誰でもキスしていいという風習があるんだ……ちなみに女性の方には拒否権はない」 へえ > ──Mistletoe 続く……かもしんない(笑)── 続けてください。 それでは〜 |
23584 | Mistletoe 2 〜平成タイヤキ物語を聴きながら | エモーション E-mail | 2002/12/2 22:54:24 |
記事番号23555へのコメント 続きました(爆) ……実際下書きしてましたしね……(苦笑) では、興味のある方、ご覧下さいませ。 ******************************************** 「Mistletoe 2 〜平成タイヤキ物語を聴きながら」 リナは半分むくれながら、宿の食堂でミルクティーを飲んでいた。宿に 戻ってから、ゼルガディスにこの時期のヤドリギツリーの風習を説明され、 理由は納得はしたものの、当然だが機嫌が直るわけはない。 「何も、そんなに怒ること無いじゃないですかあ」 全然悪びれた様子もなく、リナの機嫌を損ねた張本人がぼそりと呟く。 キレたリナの烈閃槍(エルメキア・ランス)が見事に誤爆して、2〜3日 寝込むのが決定したガウリイと違い、さすがに高位魔族だけあって、あれ ぐらいでは大したダメージにならない。リナからすれば、分かっていても それが余計に腹が立つ。 「あれを怒らないで、何を怒れって言うのよーっ!」 「わあああんっ! リナさん、落ち着いてくださーいっ! ゼロスさんも 余計なこと言わないでくださいよおっ!」 腰掛けていた椅子を掴んで振り上げたリナを、半泣きのアメリアが押さえる。 風習の説明をしたことで、リナから目一杯八つ当たりされてしまった不幸な ゼルガディスが、思いっきり剣呑な目つきでゼロスに言う。 「まったくだ。大体、説明すれば済むことだろうが」 「でも、リナさんの為にしたことですよ? 『ヤドリギの下にいるのに、 誰にもキスされない女性は結婚できない』って言われているんですから」 「……そーなの(ですか)?」 リナは椅子を振り上げたまま、アメリアはリナにしがみついたまま、目を きょとんとさせ、声まで揃って訊ねる。ゼロスではなくゼルガディスに、 なのは信頼性の差だろう。 「確かにそうは言うが……『翌年は』が抜けてるぞ、ゼロス」 「……アメリア、『崩霊裂(ラ・ティルト)』頼んでいい? あたし、 スリッパに魔皇霊斬(アストラル・ヴァイン)かけて殴るから」 「……いいえ、リナさん。それよりも『生命の讃歌』の方が効くと思います。 一緒に歌いましょう」 「ちょ、ちょっとそれはっ! そうは言いますけど、あの条件で男性に見向きも されなかったら、余程魅力がないってことに……わーーっ!」 いつの間にか口にメガホンを当てているアメリアから、思いっきり「生命 の讃歌」をフルコーラスで歌われ、ゼロスは真っ白になってテーブルに 突っ伏した。 端から見るとまるでお酒に酔っているように見えるかもしれない。沈没 したままのゼロスを余所に、多少は気が済んだのかリナは軽く息を吐く。 「それにしても、何だって、そんな風習が出来たんだろ」 そう言いながら、ミルクティーと一緒に頼んでいたお菓子を口に放り込んだ。 「確かにそうですよね。恋人同士なら格好の口実になりますけど、いくら 女性に拒否権はないって言っても、普通はそんなマネしたら嫌われるだけ ですよね」 リナとアメリアが口々にそう言っていると、不意にゼルガディスが話し出した。 「昔……俺がまだ子どもの頃、飾りに混じってたミスルトゥの事を聞いたときに、 レゾが言っていたな……」 目が見えないものの、レゾはまだ幼かったゼルガディスに渡された飾りを、 正確に木につけながら話した。 「昔々、神魔戦争よりもずっと昔の、ほとんど伝説の時代のことです。 ある国に1人の王子がいました。その王子は頭が良くて優しい、誰からも 好かれる人で、王や王妃は当然ですが、国中の民からも愛されていました。 そんなある日、王妃は恐ろしい夢を見ました。愛する我が子が殺されてしまう、 そんな夢を。ただの夢かもしれませんが、王妃は夢で未来を見る、予見の力 を持っていました。全てが現実になるとは限らなくても、母親としてはこれ が現実になったらと思うと、何もせずにはいられなかったんです。 そこで王妃は何日も何日も、神に祈願しました。空、水、炎、土、そこで生き、 育つ、あらゆる生物や鉱物、植物が、王子に危害を加えないように、と。 王妃の必死の祈願に、神は願いを聞き届けました。 誰からも愛される王子でしたが、敵国にとっては、王子の存在は邪魔でしか ありませんでした。ところが王妃の祈願のおかげで、何を使っても、王子を 殺すことは出来ません。何度も失敗していく中で、彼らはひとつだけ、王妃の 祈願の中に含まれなかったものを見つけたんです。 それが……ヤドリギ。空にも、地面にも、地中にも育たない存在だったので、 見落とされていたんですね。 彼らは盲目の子どもに弓と、ヤドリギで作った矢を与えて、自分たちの 言う方向へ矢を放つように頼みました。その方向に王子がいるとは知らない 子どもは、素直に矢を放ったので、王子はヤドリギが胸に刺さって死んで しまいました。 王妃は必死で王子を甦らせようと色々手を尽くして、3日目にやっと生き 返らせました。その時、王妃が流した涙がヤドリギの白い実になったんです。 王妃達は王子が甦った喜びから、ヤドリギの下を通る者、全てにキスを 贈ったそうです……」 そう言うと、レゾはミスルトゥを飾り付けて、見上げているゼルガディスに 微笑んだ。 「それ以来、ヤドリギの下では誰であれ、争いごとはしてはならない。 ただ、愛情に満ちたキスをすること。そんな決まりが出来た……それが、 あの風習の始まり……」 ここまで言い終えて、ゼルガディスは香茶を飲む。 「……とか、勝手にそんな話を想像をして、ツリーにミスルトゥを飾るんだ、と」 ……一瞬の間、沈黙が空間を支配した……。 「ちょっと待てぃ! 今の作り話?!」 「……感心して聞いていた私って一体……」 「ま、ヤドリギの下で争いごとをしてはいけない、キスだけをしろと言うのは、 ほんとに昔から伝わっている言い伝えだけどな。 今の話はレゾの『勝手に作った話』の中では、割合出来の良い話だ」 くすくすと笑いながら、ゼルガディスはそう言った。 「レゾって、一体……」 半分呆れつつも、リナは少しゼルガディスが変わってきたな、と思った。 それも、少しずつでも良い方へ。リナの知っているレゾは、魔王にほとんど心を 支配されていた状態のレゾだ。だから聖人君子な面との二面性の印象しかないが、 そうなる前のレゾは、血縁であるゼルガディスに、色々な面を見せていた のだろう。それこそ、家族にしか見せない面を。 レゾに関しては、憎悪以外感じさせなかったゼルガディスが、多少でも こんな事を口に出来るようになったのは、本人にとって良いことかもしれない。 憎まずにいるのは、無理だとしても。 「……今のお話……。『作り話』じゃないと思いますよ」 不意に、ゼロスがテーブルに突っ伏したまま、顔だけ上げてそう言った。 「……は?」 「僕も聞いたことがあります。そのお話は。確か、降魔戦争が起きる前に」 『ええええええええええっ?!』 思わず、リナ達は揃って声を上げた。 「ゼロス、それ本当?」 「本当ですよ。嘘ついても仕方ないですし。さすがに、話が本当かどうかは 知りませんけど」 「そ、それじゃあ、どうして赤法師さんは『勝手にそんな話を想像して』、 なんて言ったんでしょう?」 「さあ……? 適当に言ったことが、たまたま大当たりだったのでなければ、 単にからかわれたんじゃないんですか? ゼルガディスさん、からかうと 面白いですから」 「ああ! それは思いっきり同意するわ」 「……ちょっと待て。リナ、今何て言った?」 「やだあ、ゼルちゃん。怒らないで。」 「あのな(怒)」 「そ、それはともかく、案外他にもあるかもね。『勝手に想像した』ことに なってる話」 「……やりかねん……確かに、レゾなら冗談のためにそれぐらいするな……」 どこか引きつりつつ、ゼルガディスは呟いた。だが、不思議なことに腹は 立たず、むしろ、可笑しくて仕方がない。自分でも不思議だが。 ……ま、今日ぐらいはレゾに対して腹を立てるのはやめておこうか。 食堂に飾られているツリーに目をやり、さりげなく飾られたミスルトゥを 見つけて、ゼルガディスはそう思った。 ──Mistletoe 2 〜平成タイヤキ物語を聴きながら・終── ******************************************** この話、書いていて何となく、レゾがしゃしゃり出てきました(汗) 本当は、ゼルガディスが勝手にそう言う話をでっち上げるオチにしようと 思ってましたが。(だから「平成タイヤキ物語」がタイトルに……) 作中の話は本当にある伝説です。北欧神話のフリッグとバルデルのお話です。 そのままでは、スレの世界観に合わないので、登場人物を全員、人間にして、 少しだけ変えました。 mistletoeに書いた「冬に常緑樹を飾ると幸運が訪れる」は本来は キリスト教ではなく、ドイツの民間伝承で、風習だそうです。 ヨーロッパの元々の伝承や風習は、結構キリスト教に吸収されているんですね。 キリスト教の風習じゃないなら、スレ世界にあっても良いよね、と言うことで 今回使いました。 「平成タイヤキ物語」はブリーフ&トランクスというコンビの歌です。 これ書いている間のBGMでした。……よく考えつくと思います、この歌詞……。 では、読んでくださいまして、ありがとうございました。 |
23610 | Re:Mistletoe 2 〜平成タイヤキ物語を聴きながら | D・S・ハイドラント | 2002/12/4 17:11:44 |
記事番号23584へのコメント >キレたリナの烈閃槍(エルメキア・ランス)が見事に誤爆して、2〜3日 >寝込むのが決定したガウリイと違い、 えっそんなに威力ありましたっけ >「確かにそうは言うが……『翌年は』が抜けてるぞ、ゼロス」 ならば問題なし、と >「……アメリア、『崩霊裂(ラ・ティルト)』頼んでいい? あたし、 >スリッパに魔皇霊斬(アストラル・ヴァイン)かけて殴るから」 ・・・スリッパ >「……とか、勝手にそんな話を想像をして、ツリーにミスルトゥを飾るんだ、と」 えっ作り話? >「僕も聞いたことがあります。そのお話は。確か、降魔戦争が起きる前に」 へえ。 >作中の話は本当にある伝説です。北欧神話のフリッグとバルデルのお話です。 >そのままでは、スレの世界観に合わないので、登場人物を全員、人間にして、 >少しだけ変えました。 そうなんですか。 それでは〜ストーブの音を聞きながら、さようなら〜 |
23615 | Re:Mistletoe 2 〜平成タイヤキ物語を聴きながら | エモーション E-mail | 2002/12/4 20:45:22 |
記事番号23610へのコメント こんばんは。 コメントありがとうございます。 >>キレたリナの烈閃槍(エルメキア・ランス)が見事に誤爆して、2〜3日 >>寝込むのが決定したガウリイと違い、 >えっそんなに威力ありましたっけ 案外威力あるんですよ〜、あれ。人間の場合はしばらく精神衰弱を起こして 寝込みます。(これはSP1巻でちゃんと書かれてます) それが2〜3日ですむのはガウリイだからです(笑) ちなみに裂閃咆(エルメキア・フレイム)が人間に直撃すると、死なないけど、 精神が完璧に崩壊するそうです。(「えんさいくろぺでぃあスレイヤーズ」参照) >>「確かにそうは言うが……『翌年は』が抜けてるぞ、ゼロス」 >ならば問題なし、と ついでに言うと、恋人同士の場合は「婚約」の意味になるそうです。 >>「……アメリア、『崩霊裂(ラ・ティルト)』頼んでいい? あたし、 >>スリッパに魔皇霊斬(アストラル・ヴァイン)かけて殴るから」 >・・・スリッパ リナはスリッパでしょう。リナがゼロスをスリッパでボコる場面を書き忘れた……。 >>「僕も聞いたことがあります。そのお話は。確か、降魔戦争が起きる前に」 >へえ。 さらにここからネタが浮かびました。問題は今月中に書き上がるかどうか(爆) >>作中の話は本当にある伝説です。北欧神話のフリッグとバルデルのお話です。 >>そのままでは、スレの世界観に合わないので、登場人物を全員、人間にして、 >>少しだけ変えました。 >そうなんですか。 そうなんです〜。完璧に作り話にしたかった……。流用したから早く書けたのだけど。 >それでは〜ストーブの音を聞きながら、さようなら〜 では、また。 |
23702 | 毎日毎日僕らは鉄板の上で焼かれて嫌になっちゃうよ | Dirac E-mail URL | 2002/12/10 22:57:06 |
記事番号23584へのコメント 現在小説(と研究)が煮詰まり気味のDiracです。 平成タイヤキ物語ってどんな歌なんでしょうか?(タイトルのようなのではないことは確か) >「そ、それじゃあ、どうして赤法師さんは『勝手にそんな話を想像して』、 >なんて言ったんでしょう?」 >「さあ……? 適当に言ったことが、たまたま大当たりだったのでなければ、 >単にからかわれたんじゃないんですか? ゼルガディスさん、からかうと >面白いですから」 まさにその通りです。 一度彼をおちょくる愉しみを知ってしまうと、もう止められません。 今まで一体何度彼を破壊したことか……。(自称ゼルパロディスト) >「……やりかねん……確かに、レゾなら冗談のためにそれぐらいするな……」 そういう人物設定にしたのですか。 いや〜、『レゾなら冗談のためにそれぐらい』のセリフに、思わずどこかの丘の金色の竜の群れの最長老が、頭の中をグルグル去来しました。 もしかして、ゼルのキメラ化も冗談!? それはともかく。 どんなに鬱蒼とした気持ちを抱えていても、心を痛ませつつもそれにしっかりと対峙できる日は来ますよね。 石の上にも三年ってやつでしょうか。 相変わらず感想文が妙ですが、それでは。 |
23709 | 魚好きの男とあんこ好きの女が協力してタイヤキを考えたのさ〜♪ | エモーション E-mail | 2002/12/11 20:53:33 |
記事番号23702へのコメント こんばんは。コメントありがとうございますm(__)m > 平成タイヤキ物語ってどんな歌なんでしょうか?(タイトルのようなのではないことは確か) タイトルの出だしで始まる歌です。タイヤキの創生期(笑)から、たこ焼きに 一時人気を奪われ、それを憂いたタイヤキ協会の会長は……と、涙と感動の タイヤキの歴史(?)を切々と……すべて想像で創作し、歌っている歌です(爆) >>「そ、それじゃあ、どうして赤法師さんは『勝手にそんな話を想像して』、 >>なんて言ったんでしょう?」 >>「さあ……? 適当に言ったことが、たまたま大当たりだったのでなければ、 >>単にからかわれたんじゃないんですか? ゼルガディスさん、からかうと >>面白いですから」 > > まさにその通りです。 > 一度彼をおちょくる愉しみを知ってしまうと、もう止められません。 > 今まで一体何度彼を破壊したことか……。(自称ゼルパロディスト) アニメでもCDドラマでも散々やられてますしねぇ……(ほのぼの) ラジオドラマ「愛しの根性なし」の夢オチなんか特に(笑) >>「……やりかねん……確かに、レゾなら冗談のためにそれぐらいするな……」 > > そういう人物設定にしたのですか。 何事にも手抜きしない人と設定してますので(笑) > どんなに鬱蒼とした気持ちを抱えていても、心を痛ませつつもそれにしっかりと対峙できる日は来ますよね。 > 石の上にも三年ってやつでしょうか。 そんな感じです。それに何となくですが、ゼルはレゾを本当のところでは、 嫌いにはなれないんだろうと思います。肉親ですし、キメラにされる前は それなりに信頼や尊敬があったのでしょうから。だから憎むのだろうなあと。 ある程度、客観視出来るようになって、以前よりは酷くない、という状態にしました。 > 相変わらず感想文が妙ですが、それでは。 いえ、ありがとうございました〜。 |
23720 | 遅くなりました。 | 猫楽者 E-mail | 2002/12/12 00:07:54 |
記事番号23584へのコメント > こんばんは。 こんばんは、エモーションさん。 お元気ですか、猫楽者です。 遅くなってしまいましたが、感想を書かせて頂きました。 > 近くにある木にぶら下がっている鈴の飾りをつつきながら、ニコニコしながら >リナがそう言う。こういった時だけは、リナも年相応の少女だ。とても凄腕の >魔道士で、しかも盗賊イジメが趣味にはみえない。 クリスマス♪は、人を優しい気持ちにしてくれるのかも知れませんね。 飾りに楽しそうに触っているリナさんを、ガウリイさんは優しい目で見つめているのでしょうね。 >「ほんと。あんたって時々みょーに、人間の風習とかに詳しいわよね。やっぱり、 >亀の甲より年の功ってやつ?」 > 驚いているのか、呆れてるのか、感心しているのか、よく分からない口調で >アメリアとリナが口々にそう言う。共通しているのは、2人とも悪気だけは >全くないと言うことだろうか。言われたゼロスは、人差し指で頬の辺りを >かきながら、少し困ったような表情をした。 >「年の功って……。その言い方はちょっと……。まあ、昔からある風習です >からねぇ……」 ゼロスさん、少なくとも数千年は生きているのでしょう(笑) 魔族さんですし、リナさん達に素直に感心されても困ってしまうでしょうね。 >「え〜っ、それは確かにそうですけど……」 >「少しくらい町の中を見たいわよね〜」 >「そうですよ、ゼルガディスさん。もう少し、心に余裕を持ちませんと……」 >「あのさ、ゼル。少しくらいなら見て回っても……」 >「だーっ! やかましいっ!! 宿を決めてから見て回ればいいだろうがっ!!」 > 一瞬、自分が学生を引率する教師にでもなったような気がした、 >ゼルガディスだった。 ゼルガディスさんが先生、きっと生徒さん思いの良い先生でしょうね。 ま・・・まあ、『可愛い生徒たち』が・・・・・このメンバーでは(汗) 毎日々々が、とても新鮮で楽しい・・・・反面・・・いろんなことが起こって大変そう・・・ですが(笑) > 中央に生えている樅の木は、樹齢100年ほどだろうか。様々な飾りと >灯されたライティングの光の中、樅の木は人を惹きつける美しさと、樹齢の >長い木が持つ独特の不思議な風格を感じさせていた。 大きな樹に、ライティングされて、たくさんの飾りが光り輝いて♪ 凄く素敵でしょうね、本当に綺麗ですね♪ 今まで見た一番大きなツリーは、東京ディズニーランドのツリーだったように思います。 >「……本当にいいんですかあ? ガウリイさんは仕方がないとしても、 >ゼルガディスさんはご存じでしょう? ツリーに絡んだもう一つの風習を。 >あのツリー、ちゃんと飾ってありますよ。『a ball of mistletoe』が」 >「ミスルトゥ……!? > しまった……まずいっ……」 > その単語を聴いた瞬間、ゼルガディスはガウリイを引きずるようにして、 >リナ達の後を追いかけた。 >「やっぱり、そうなりますよねぇ……」 > ゼロスはくすくすと笑ってそう言うと、後についていった。 ゼロスさんが、楽しそうにしていて。あのゼルガディスさんが慌てている。 ガウリイさんは、引きずられてますし(笑) いったい・・・・・・何が? >「正確に言いますと、ツリーじゃなくてあのリース…… >『a ball of mistletoe』って言うんですけど、女性があのリースやあれが >飾ってあるツリーの下に立っていると……」 >「立っていると?」 >「わ゛ーーーっ! 馬鹿、やめろゼロスっ!」 >「こうなるんですよ……ちゅ・」 > 不意にゼロスから頬にキスされ、リナは思考が停止し、ゼルガディスは >真っ青になり、アメリアは目を点にして硬直した。 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ・・・・・・・。 ゼ・・・・ゼロスさん・・・・何てことを(汗) リ・・リナさんと、ガウリイさんに、どんな目に遭わされるか(滝汗) > ざしゅっ! > > 次の瞬間、軽快な音と同時に、ガウリイの剣が、ついさっきまでゼロスが >いた場所に突き刺さった。 >「あ、すまん、ゼロス。ついうっかり手が滑っちまった」 >「いえいえ。僕なら無事ですからお気になさらずに」 > どうがんばっても「ちっ、逃げられたか」と言っているようにしか聞こえない >口調のガウリイの言葉に対し、ゼロスはすんなりと避けた上に、にっこり >笑ってそう言葉を返している。誰がどう見ても一触即発な状況の中、リナは >……と言うと顔を真っ赤にしてその場に座り込んでいた。 ガ・・・・ガウリイさん・・・・・怖いです。 ゼロスさん、皆さんの負の感情を、美味しく御食事中なのでしょうか。 >「あの……今のって、一体……」 >「ツリーのある時期は、ミスルトゥ……ヤドリギの下に立っている女性には、 >誰でもキスしていいという風習があるんだ……ちなみに女性の方には拒否権はない」 そういう習慣があるのを初めて知りました。 ゼロスさんは、完全に楽しんでいるのですね。 >「……ガウリイさん、にこにこしてますけど、目が全然笑ってません……。 >凄く怖いです……」 >「ああ。アメリア、その気持ちは俺にもよーく分かる……。自分の事の様にな……。 > とりあえず、我に返ったリナが暴れ出す前に、取り押さえるぞ」 >「それは分かりましたが……ガウリイさんはどうするんですかあ?」 >「……すまんが、今の旦那を止める手段は、俺には思いつかん(きっぱり)」 ゼルガディスさんでも、今の状態のガウリイさん・・・・・止められないですよね(汗) >「はははははははっ、まてっ! こいつぅ(怒)」 >「ほほほほっ、捕まえてごらんなさ〜い(笑)」 完全にプッツンと、どこかが切れてしまったガウリイさんと、思いっきり楽しそうなゼロスさん。 周りで見ていて・・・・・ものすご〜く怖いですね。 >「……周囲の人達……避難させましょうね……」 >「……賛成……」 > この騒ぎは、ゼルガディスとアメリアに、無差別攻撃呪文だけはやめろと >必死の説得をされたリナが、烈閃槍(エルメキア・ランス)をゼロスに >ぶつけるまで続いた。 ドラ・スレを使われるよりは・・・・平和なような気がします(汗) >この時期でヤドリギって言ったら、このネタになるんですよねぇ……何故か。 >わざとキスネタだけは外そうと思っていたのに……頭に浮かんだガウリイと >ゼロスの追いかけっこがそれを阻みました……(遠い目) >あの場面、台詞を声つきで脳内にイメージしちゃったのは秘密です(笑) 追いかけっこのシーン、想像してしまいました(笑) >キレたリナの烈閃槍(エルメキア・ランス)が見事に誤爆して、2〜3日 >寝込むのが決定したガウリイと違い、さすがに高位魔族だけあって、あれ >ぐらいでは大したダメージにならない。リナからすれば、分かっていても >それが余計に腹が立つ。 ガウリイさん・・・・・不幸ですね。 リナさん、可愛そうなガウリイさんを優しく看病してあげてください。 >「あれを怒らないで、何を怒れって言うのよーっ!」 >「わあああんっ! リナさん、落ち着いてくださーいっ! ゼロスさんも >余計なこと言わないでくださいよおっ!」 > 腰掛けていた椅子を掴んで振り上げたリナを、半泣きのアメリアが押さえる。 >風習の説明をしたことで、リナから目一杯八つ当たりされてしまった不幸な >ゼルガディスが、思いっきり剣呑な目つきでゼロスに言う。 >「まったくだ。大体、説明すれば済むことだろうが」 ゼロスさん、また御食事しているような。 ゼルガディスさん、アメリアさん。苦労しますね。 >「でも、リナさんの為にしたことですよ? 『ヤドリギの下にいるのに、 >誰にもキスされない女性は結婚できない』って言われているんですから」 >「……そーなの(ですか)?」 > リナは椅子を振り上げたまま、アメリアはリナにしがみついたまま、目を >きょとんとさせ、声まで揃って訊ねる。ゼロスではなくゼルガディスに、 >なのは信頼性の差だろう。 信頼・・・・・ゼロスさんの普段の行動を考えますと・・・・(笑) 魔族というのを忘れそうになりますが、やはりゼロスさんを信頼するのは難しいのでしょうね。 >「確かにそうは言うが……『翌年は』が抜けてるぞ、ゼロス」 >「……アメリア、『崩霊裂(ラ・ティルト)』頼んでいい? あたし、 >スリッパに魔皇霊斬(アストラル・ヴァイン)かけて殴るから」 >「……いいえ、リナさん。それよりも『生命の讃歌』の方が効くと思います。 >一緒に歌いましょう」 >「ちょ、ちょっとそれはっ! そうは言いますけど、あの条件で男性に見向きも >されなかったら、余程魅力がないってことに……わーーっ!」 > いつの間にか口にメガホンを当てているアメリアから、思いっきり「生命 >の讃歌」をフルコーラスで歌われ、ゼロスは真っ白になってテーブルに >突っ伏した。 ゼロスさん、真っ白になりましたか(笑) 真っ白い灰だったら、あとは風に吹かれて消えて行くのでしょうね♪ >「昔……俺がまだ子どもの頃、飾りに混じってたミスルトゥの事を聞いたときに、 >レゾが言っていたな……」 > 目が見えないものの、レゾはまだ幼かったゼルガディスに渡された飾りを、 >正確に木につけながら話した。 >「昔々、神魔戦争よりもずっと昔の、ほとんど伝説の時代のことです。 > ある国に1人の王子がいました。その王子は頭が良くて優しい、誰からも >好かれる人で、王や王妃は当然ですが、国中の民からも愛されていました。 > そんなある日、王妃は恐ろしい夢を見ました。愛する我が子が殺されてしまう、 >そんな夢を。ただの夢かもしれませんが、王妃は夢で未来を見る、予見の力 >を持っていました。全てが現実になるとは限らなくても、母親としてはこれ >が現実になったらと思うと、何もせずにはいられなかったんです。 > そこで王妃は何日も何日も、神に祈願しました。空、水、炎、土、そこで生き、 >育つ、あらゆる生物や鉱物、植物が、王子に危害を加えないように、と。 >王妃の必死の祈願に、神は願いを聞き届けました。 > 誰からも愛される王子でしたが、敵国にとっては、王子の存在は邪魔でしか >ありませんでした。ところが王妃の祈願のおかげで、何を使っても、王子を >殺すことは出来ません。何度も失敗していく中で、彼らはひとつだけ、王妃の >祈願の中に含まれなかったものを見つけたんです。 > それが……ヤドリギ。空にも、地面にも、地中にも育たない存在だったので、 >見落とされていたんですね。 > 彼らは盲目の子どもに弓と、ヤドリギで作った矢を与えて、自分たちの >言う方向へ矢を放つように頼みました。その方向に王子がいるとは知らない >子どもは、素直に矢を放ったので、王子はヤドリギが胸に刺さって死んで >しまいました。 > 王妃は必死で王子を甦らせようと色々手を尽くして、3日目にやっと生き >返らせました。その時、王妃が流した涙がヤドリギの白い実になったんです。 >王妃達は王子が甦った喜びから、ヤドリギの下を通る者、全てにキスを >贈ったそうです……」 > そう言うと、レゾはミスルトゥを飾り付けて、見上げているゼルガディスに >微笑んだ。 >「それ以来、ヤドリギの下では誰であれ、争いごとはしてはならない。 >ただ、愛情に満ちたキスをすること。そんな決まりが出来た……それが、 >あの風習の始まり……」 > ここまで言い終えて、ゼルガディスは香茶を飲む。 とても良いお話ですね。 子を思わない親はいません。自分よりも子供が先に逝ってしまうなんて・・・考えたくも無いです。 王子様が生き返って、本当に良かったです。 レゾさんも、とても優しく微笑みながらゼルガディスさんへお話したのでしょうね。 >「……とか、勝手にそんな話を想像をして、ツリーにミスルトゥを飾るんだ、と」 > > ……一瞬の間、沈黙が空間を支配した……。 >「ちょっと待てぃ! 今の作り話?!」 >「……感心して聞いていた私って一体……」 >「ま、ヤドリギの下で争いごとをしてはいけない、キスだけをしろと言うのは、 >ほんとに昔から伝わっている言い伝えだけどな。 > 今の話はレゾの『勝手に作った話』の中では、割合出来の良い話だ」 > くすくすと笑いながら、ゼルガディスはそう言った。 >「レゾって、一体……」 さ・・・・流石は、『赤法師さま』・・・・・とても素敵な『勝手に作ったお話』でした。 >「……今のお話……。『作り話』じゃないと思いますよ」 > 不意に、ゼロスがテーブルに突っ伏したまま、顔だけ上げてそう言った。 >「……は?」 >「僕も聞いたことがあります。そのお話は。確か、降魔戦争が起きる前に」 > 『ええええええええええっ?!』 > 思わず、リナ達は揃って声を上げた。 >「ゼロス、それ本当?」 >「本当ですよ。嘘ついても仕方ないですし。さすがに、話が本当かどうかは >知りませんけど」 ゼロスさん、だてに長生きしていないのですね。 降魔戦争の前、ってことは・・・・・1000年以上前のことですね。 >「そ、それじゃあ、どうして赤法師さんは『勝手にそんな話を想像して』、 >なんて言ったんでしょう?」 >「さあ……? 適当に言ったことが、たまたま大当たりだったのでなければ、 >単にからかわれたんじゃないんですか? ゼルガディスさん、からかうと >面白いですから」 >「ああ! それは思いっきり同意するわ」 >「……ちょっと待て。リナ、今何て言った?」 >「やだあ、ゼルちゃん。怒らないで・」 >「あのな(怒)」 ゼロスさん、ご本人を前に・・・その台詞は(汗) リナさんも同意・・・・しかも思いっきり同意してますし・・・・・。 止めとばかりに・・・・ゼルちゃんと言ってますし(笑) >「そ、それはともかく、案外他にもあるかもね。『勝手に想像した』ことに >なってる話」 >「……やりかねん……確かに、レゾなら冗談のためにそれぐらいするな……」 冗談に、そこまでの情熱を傾ける・・・・・・レゾさんて・・・いったい。 ゼルガディスさんがお茶目なのは、そのレゾさんの血を引いていからでしたか。 >作中の話は本当にある伝説です。北欧神話のフリッグとバルデルのお話です。 >そのままでは、スレの世界観に合わないので、登場人物を全員、人間にして、 >少しだけ変えました。 >mistletoeに書いた「冬に常緑樹を飾ると幸運が訪れる」は本来は >キリスト教ではなく、ドイツの民間伝承で、風習だそうです。 >ヨーロッパの元々の伝承や風習は、結構キリスト教に吸収されているんですね。 >キリスト教の風習じゃないなら、スレ世界にあっても良いよね、と言うことで >今回使いました。 面白かったです〜。 素敵なクリスマスのお話でした。 不完全燃焼で寝込んでしまった・・・・・・ガウリイさんは不幸でしたね。 > では、読んでくださいまして、ありがとうございました。 こちらの方こそ、楽しいお話をありがとうございました。 金曜日に、お休みを頂いてツリーを見に行くことにしました。 寒くなって参りました、お体にお気をつけて、お元気で。 では、失礼します。 |
23723 | ありがとうございます | エモーション E-mail | 2002/12/12 22:22:51 |
記事番号23720へのコメント わざわざ、コメントをありがとうございますm(__)m それもとてもご丁寧な……。(うるうる) 実は2の方は結構書き忘れ部分があるんです。機種依存の「はーとまーく」の 修正も忘れてますしね。(これは1の方も)「リナがスリッパでどついてる 場面」とか、ゼロスの台詞も1つ入力しないままでした。……まあ、あの台詞は 伏せたままの方がいいのかも……。 うちのガウリイ君は多少まともな分、不幸です(笑) 原作のガウリイを「天然」+「意図的に」=「見事にくらげ」という認識で 見てますので、うちのガウリイは「意図的に」をしない分、不幸なんですよ(爆笑) まあ、書かなかっただけで、連日リナちゃんに付きっきりで看病して もらえますので、それで我慢してもらいます。 オールキャラで書いたつもりで……どちらかと言えばゼルが中心に近い話に なりました。 そして相変わらず、1人、作中で幅を利かせているゼロス……。いつになったら、 私はゼロスの手綱を取れるのか……。出てこない話を書くしかないんだろう なあ……。(←それは最初から手綱を取ってない(笑)) レゾはひたすら「何事にも手を抜かない人」という設定にしています。当然、 冗談にすら……(笑)何気にゼルにも気質は伝わっている、と(笑) 性格は環境や個人の努力で、どうとでもなりますが、気質は遺伝ですから。 (気質を性格でカバーするから「親子兄弟姉妹、似た部分もあるけれど、 でも違う性格」になるのだとか。逆に全くそっくりにもなるけど) 北欧神話は、ギリシャ神話などに比べると、それほど馴染みやすいものじゃ ないので知らない方は多いと思います。私自身、それほど詳しくないです。 大雑把な関係図と話を知っているくらいで、細かい部分はさすがに……。 作中の話に使ったフリッグとバルデルの話は、おそらく冬至に合わせた 伝説です。バルデルは夏の太陽の神なので、彼が死ぬことで冬が訪れ、そして 冬至の日に復活することで、それ以後、日の出る時間が長くなる……と。 フリッグがバルデルのために、全てのものに、危害を加えないように頼んで 回る辺りは(作中は人間にしたので、神へ祈願した事になってますが)、 本当に母親の一念だと思います。神も人間も母親の思いは同じなんですね。 (多神教の神様は、かなり人間臭い部分がありますけど) それでは、本当に丁寧なコメント、ありがとうございました。 |