◆−記憶のない彼−風柴流 (2002/12/1 19:07:05) No.23569
 ┣記憶のない彼〜アメリア・ルナ登場〜−風柴流 (2002/12/3 03:58:21) No.23592
 ┗記憶のない彼〜ゼルガディス登場〜−風柴流 (2002/12/13 01:23:11) No.23729


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23569記憶のない彼風柴流 E-mail 2002/12/1 19:07:05


初投稿です、どうぞご丁寧によろしくおねがいしますvvv
ついでにめちゃくちゃゼロリナファンです。
好きなキャラはフィブリゾですが・・・
それではぜひ呼んでくださいねvvv

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はぁっっ
高い塀に囲まれた大きな家の庭、体育すわりで座る青年は今日何度目かわからないため息をついた。深みのある紫の髪はなびくことなく青年の顔を隠していた。
「あら、どうしたの?」
後ろから声をかけられ、それでも彼は振りもこうとはせず、うつむいていた。
「ゼロス、何か悩み事があるんならいいなさい。相談にのるわよ?」
「姉さん・・・」
ゼロスというその青年が振り向くとそこにはブロンドっぽい金髪の美女が立っていた。そしてゼロスはまたはぁっっっとため息をつくと、
「僕のことをからかって遊ぼうと思っているでしょう」
・・・一瞬彼女が凍りついたような気がしたのは、おそらくゼロスの見間違いではなかっただろう。しかし彼女はすぐに笑顔を取り戻し、
「やーねぇゼロスってば、そんな事するわけないじゃないvvvv」
「そうですかぁ?僕には姉さんの目が異様に輝いて見えたんですけどねぇ」
―――――――沈黙―――――――それを破ったのは金髪の彼女のほうだった。
「本当にやーねぇ、人の不幸を楽しまずにどうしろっていうのかしら?」
「ほっといてくれればいいんですけど・・・」
「あら、わたくしがそんなことを許すと思って?それともわたくしに話せないような、やましいことでもあって?ゼロス」
「・・・・・・・・わかりました。話す以外選択権はないんでしょう?」
「んもうっ、わかってんならさっさといいなさいよっ。わたくしの暇つぶしvv」
彼女にはかなわない?いや・・・・ゼロスは苦笑した。もっとかなわない少女がいることを思い出したからだ。しかし・・・はぁっ・・誰の声にも届かないそのため息は、嘆いた本人すらもきずいてはいなかった。

――――時、同じくして――――
はぁっっ
車の行き交う音、高いビルに囲まれ、時間帯からかあまりひとけがない場所。そんな中にいる栗色の髪をした少女もまた、今日何度目かわからないため息をついていた。ルビーの瞳はまだあの事を覚えていた。まぁ、そんなすぐに忘れられたら人間苦労はしないのだろうが。ともかく、少女が考えるあの事とというのは昨日――バレンタインでの災難な告白――のことだった。少女は昨日告白をした。そして、あえなく玉砕したのだった。これだけなら別にやけ食いでもして勉強に専念・・・で終わるのだ。だが、少女が悩んでいる出来事はこのすぐ後に起こった。

「・・・・やっぱふられちゃったか。ガウリイ先輩かぁっこいいもんなぁ〜。彼女がシルフィール先輩ってのも納得。けど、何で隠すんだろ?恥ずかしいからかなぁ。」
「教えてあげよっか?」
ガラッ
突然開く扉、現れたのは独り言を言っていた彼女より年下だと思われる少年。無邪気な笑顔は誰かさんを思わせる。少なくとも少女はそう思った。
「しかし、いまどき教室で告白する人がいるん・・・・」
「あんた、ゼロスの親戚!?」
「・・・は?」
「だーかーらー、学園でなぜか一番人気者のゼロスは知ってるでしょ!?」
「ああ・・・・親戚ではないけどね。なぜそう思ったんだい?」
「雰囲気が似てるからよ」
「雰囲気・・・・・・・!?」
彼は心底いやそうな顔をしたが、そんなことはどうでもいいという感じで話題を変えた。
「それより・・・・さ。単刀直入にいうけど、僕と付き合ってくれない?」
「いや、っていうか単刀直入すぎでしょ。そんなんじゃ女の子にもてないわよ?」
「じゃあ、ゼロス先輩みたいに愛想振りまく人のほうがリナはいいの?」
「何であたしの名前・・・・・ってあたりまえか。なんたってあたしはあんたの想い人ですもんね。それから前言撤回、あんな八方美人はごめんよ」
「そういうと思ったよ。それから、君が断ったらガウリイ先輩とシルフィール先輩の関係がうわさになるよ?それでもいいんだ」
「・・・・・はっはーん、なぁるほど?あたしを脅して付き合おうってわけ」
「そういうことになるかな?」
「そういうことにしかならないでしょうがぁぁぁっっって言うか、まずあんた誰!?」
「フィブリゾっていうんだけど、フィブでいいよ」
「OK、フィブね。でもってガウリイ先輩とシルフィール先輩が付き合ってる理由!!教えてくれるんでしょ!?」
「へぇ、きちんと聞いてたんだ?・・・・・リナ、きちんと聞いてね?あの2人は兄弟なんだ。だからばれたらまずい」
「何で!?あの2人は歳いっしょよ!?」
「母親が別々なんだ・・もしばれたらきっと一生あわせてもらえない。結ばれない運命なんだ」
「結ばれない・・・運命・・?」
「それで、返事はYES?NO?]
「そ、それは・・」
にっこり笑うフィブリゾ、悩むリナ。フィブリゾはきがついていた。扉の前にいる人に、だがリナはそれどころではなかった。
「っっっわかったわ。答えはYESよ」
「リナならそういってくれると思ったよ。じゃあ、明日は学校が休みだから明後日から登下校一緒にしようね。今日は僕、先に帰るから・・じゃあね、リナ」
ガラッ
フィブリゾは教室を出ると少し前までいたはずのゼロスがショックで帰ったのを確かめてから、アストラルサイドへとわたった。
「リナとゼロスの不の感情って転生してもかわらずいい味だなぁ。くすくす・・・それにリナの記憶も簡単に戻せそうだし。くすくす・・けど、こんなに簡単じゃあつまらないかな・・・・?」
アストラルサイドでは誰にも聞こえない悪魔の声が響いた・・。そのころ、ゼロスは自分の部屋に閉じこもっていた。手で耳をふさぎ、目を閉じ、すべてから逃げようとしていた。そして、残されたリナは1人でフィブリゾの言っていた結ばれない運命について考えていた・・・・・。

はあっ
リナは気晴らしに散歩に出かけたはずだったが、思うほか気分はよくなりそうにない。そろそろ帰ろうと顔を上げ・・・
「っっっっっ!!!」
声にならない叫び、目の前には居眠り運転の車、いつものリナならたやすく避けられたが・・・下を向いていたせいで反応が遅れた。やばい!!そう思ったが時すでに遅し。
きききぃぃぃっっ
周りから叫び声が聞こえる。リナは薄れ行く意識の中、悪魔の笑い声を聞いた気がした。












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23592記憶のない彼〜アメリア・ルナ登場〜風柴流 E-mail 2002/12/3 03:58:21
記事番号23569へのコメント

バタンッ
「ハアッハアッハアッッッッリナさんは!?」
「大丈夫みたいだけど?」
――――ゼロスとフィブの声?
「あなたは・・・」
「はじめましてかな?元獣神官ゼロス」
――――・・・・・・元?
「獣神官?何のことです。それよりリナさんは・・・」
「リナなら大丈夫だよ?ただ、頭を打ってまだ起きてないみたいだけど・・・まあリナならなんとか」
――――ちょっと、それどうゆう意味よ!ってそれより何であたし、声でないの!?っていうか体も動かないじゃないのっっ!!
カチャッ
「何を騒いでいるのかしら?」
「ちっ」
「あの、リナさんの容態は?」
「大丈夫よ。すぐ起きるわ」
――――んん?この声は確か・・・・・・。
「リナ、起きなさい。・・・またおしおきされたいの?」
ガバッ―――――――姉ちゃんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「ごめんなさいぃぃぃ、それだけは勘弁してぇぇぇぇぇぇぇ!!」
バタンッ
「リナさんっ!今の叫び声は何ですか!?」

ここ、インバース病院の513号室、日当たりもよく、時間は3時くらいであろうか・・声と共に入ってきたのは、ショートカットで黒髪の瞳がぱっちりとした、なんともかわいらしい女の子。高校の制服を着てはいるが、それよりはずいぶんと幼く見える。そして、この部屋の主であろう、ベットで上半身を起こしている、少女リナは何が何やら分からずに混乱している様子。それを、愛しげに見つめているのは、青年ゼロス。その隣に立つのは虚空を睨みつける看護婦。その視線の先には、ついさっきまでいたはずの少年フィブリゾが姿を消していた。
「ねえ、アメリア。ここ、何処よ」
ドアの近くにいた、黒髪の少女に聞くリナ。
「病院です。覚えていないんですか?リナさん、車にひかれたんですよ。」
「ふうーん・・・・・で、車って何?」
「「ええっっ!?」」
はもるゼロスとアメリア。
「ど、どうしたのよ。あたし、何か変な事言った?」
本気で訳がわからないといった感じのリナを目の前に、ゼロスとアメリアは顔を見合わせ、
「言いました!リナさん、頭おかしくなったんじゃないですか!?」
「どーゆー意味よ、それはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!」
どちらかが叫んだ言葉・・それを、悪い意味だと受け取ったリナ。そこへ、それまでその光景を黙って見ていた看護婦が口をはさんだ。
「静かにしなさい。リナ」
途端に静まる病室。アメリアは尊敬、ゼロスは不安、リナはおびえを含んだ瞳で看護婦を見る。
「じゃあ、ちょっと検査してみるから、悪いんだけど、今日はもう帰ってもらえる?」
検査というのは、言うまでもなくリナの頭の事だ。
「分かりました!邪魔になっては大変ですから、さっさとかえりましょう!ゼロスさん」
「はあ・・・・・」
半ば強引に連れ去られていくゼロス。2人が去っていったのを見届けると、看護婦は壁に向かい、
「冥王フィブリゾ、どういう事か説明してもらえるんでしょうねえ」
「・・・・・・・・元だよ。まあ、力はあるけどね・・君と似たようなもんだろう?スィフィード・ナイト・・・・ルナ」
突如虚空から現れたフィブリゾ。とっても怖い笑顔でにらみ合う2人、リナはただ漠然としていた。何故ゼロスから瘴気を感じなかったのか、何故自分のわからない文化があるのか、何故冥王フィブリゾがいるのか、そして・・・
「一体全体、ここは何処なのよぉぉぉっっっっっ!!」
いきなり叫んだリナのおかげで、その場のムードが崩れたのは、良い事なのか、はたまた悪いことだったのか、少なくともいらいらしているリナにとってはどうでもいい事だった。――――――苦労してるんだなあ―――――フィブリゾの哀れみの声に、気づいたものは誰1人としていなかった。






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23729記憶のない彼〜ゼルガディス登場〜風柴流 E-mail 2002/12/13 01:23:11
記事番号23569へのコメント

リナは夕焼け色に染まった窓を見てぼーっとしてた。
先ほど前世での姉、現世では赤の他人であるルナの突拍子もない説明を受けて起きているだけでも随分と度胸が据わっているほうだろう。
リナは取り合えず、今分かっている事を頭の中で整理していた。
―――リナ=インバース―――
転生して平凡に暮らしていたが、事故と見せかけたフィブリゾの陰謀で前世の記憶が蘇った。
その時ちょっとした手違いで現世の記憶をどっかに落っことしてしまった。
フィブリゾと付き合っている。これは信用ならないので証人のゼロスに後日聞いたほうが良いだろう。
―――冥王フィブリゾ―――
転生したが以前の記憶が残っている。
人間として生まれたので魔族としての力は余りなく、アストラル・サイドに渡るぐらいしかできない。
その事に気付かず記憶を左右すると言う大掛かりな魔法を使おうとしたが失敗した。
―――ルナ=インバース―――
リナが滅びてからの何千年も生きてきたらしい。
今はウェイトレスではなく看護婦をやっている。
残念ながらリナとは赤の他人。敵に回すと怖いタイプ。
フィブリゾがリナに魔法を使った理由を知っているらしいが教えてはくれない。ゼロスの姉と仲が良いらしい。
―――ゼロス=メタリオム―――
転生後は記憶を無くし普通の人間として暮らしている。
フィブリゾとリナが恋人だと言う事を唯一知っている人物。ルナの事は一切知らない。
姉には逆らえなく、精神が弱い所が変わってない。
リナにぞっこんLOVEらしいが、本当にはた迷惑な話である。
―――アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン―――
転生し、またまたお金持ちの家に生まれてきた。
相変わらず正義一直線の性格で、リナのクラスメートかつ親友。
ゼロスの事をあまり好きではないが、ゼロスの姉には可愛がられている。前世の記憶はない。
フィブリゾの事を弟のように可愛がっている。

クス・・・・、リナはどこか悲しみの含まれる笑みをした。
随分と科学の進んだ世界、その代わりに空気が汚れている事にここの住人は気付いているのだろうか?
ふうっ
「そろそろかなっ」
リナは大きく背伸びをすると、そのまま部屋を飛び出し駐車場とかいう所に向かって走り出した。
ルナの車に向かって。

―――次の日―――
「リナ、さっさとしろ」
「はいはい・・・・・・っとに何であたしがあんたの言う事を聞かなきゃなんないのよ・・・」
リナは先日、家に帰り玄関を開けた瞬間・・絶句した。
なんで・・・なんで・・・・。
(なんでヴァルガーブがあたしの兄ちゃんなのよぅぅぅ。あたしの平和?的な日常がぁぁぁぁ)
そんなリナの隣にはエメラルド色の髪がつんつんしている何処か怖い男性。機嫌が悪いときは『何ガン飛ばしとるんじゃワレ』とでも言いたくなるような人が居た。(リナの場合)
「ほら、いくぞ」
悲しみ+怒りに浸っていたリナの手を引っ張るヴァルガーブ。
今日は学校にいくらしい。魔法は勉強しないみたいだけでど。
「にしてもリナが記憶喪失とは・・・・・・・・・・・・・・世の中、生きてりゃ良い事もあるもんだ」
「よくなぁぁぁぁぁぁいっっっ」
うんうん、と1人で納得しているヴァルガーブに持っていたかばんを叩き付けるが、あっさりとかわされる。
そしてリナはイライラしながら学校へと向かった。

『記憶喪失ぅぅぅぅぅぅぅ!?』
その頃、教室では見事にアメリアとゼロスの声がハモっていた。
『本当ですか!?フィブリゾさん!!』
勢い良く身を乗り出して来る2人に一歩、後ずさる。
「こ、こんな事で嘘ついてどうするのさ」
柄にもなく、焦るフィブリゾ。
ガラガラッッ
そんな中、教室の騒ぎを物ともせずに入ってきたのは半透明な水色っぽい髪をしていて顔の整った何ともクールな青年。
そしてアメリア、ゼロス、フィブリゾを見渡してふうっとため息を吐いた。
「おはようございます、ゼルガディスさん。それより大変なんです!」
「今日はまた何を騒いでいるんだ・・・?」
ゼルガディスと呼ばれた青年は心底、嫌そうな顔をして呟いた。
するとアメリアが、はっとしてまた一歩フィブリゾに近づく。
そしてフィブリゾの瞳を、じっと見たかと思うといきなりゼルガディスに振り返った。
「大丈夫です。フィブリゾさんは嘘は吐いてません。相手の目を見れば分かると、この間手に入れた『必見 正義の雄叫び 9月号』に載っていましたから!」
「何なんですか。その本は・・・・」
「そういうのを掘り当てる辺り、ある意味すごいよね・・・・・・・・」
「その前に今、9月じゃないだろう・・?」
その会話を聞いたアメリアは窓の外を指差して、
「リナさんのお兄さんのヴァルガーブさんに譲って頂きました!」
『いや、ちょっと待て』
その場で話を聞いていた者、全員のツッコミがハモった。
そして、その後ヴァルガーブについての討論会が開かれたのは当然の成り行きと言えるだろう・・・・・。
ついでに、その話はリナが来て記憶喪失の話を皆が思い出すまで続いた。

キーんコーンカーンコーン・・
ガタンッ
「お昼よアメリア!」
ガタンッ
「食堂へ行きましょう!」
ダダダダダダダダ・・
「リナさーん、待ってくださいよぅ」
「相変わらず騒がしい奴等だ・・・」
「・・・・・僕も同感だね・・・・」
あの後ホームルームが終わってからの話し合いでリナの面倒はアメリアが見ることになった。
フィブリゾの恋人疑惑はゼロスの
「それは秘密です」
で収集がついた。
実際はリナが無理矢理押し包めたのだが・・・・。
ついでにヴァルガーブの件はリナがショックを受けるといけないと言う事で誰も口にしなかった。
記憶がどうであろうと、あまり変化のないリナの日常だった・・・。