-異界黙示録伝《水の書》その5-魔沙羅 萌(4/20-21:31)No.2369
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2369異界黙示録伝《水の書》その5魔沙羅 萌 4/20-21:31

今回はリナさんの一人称プラス三人称単数です(た、単数って?)。はい(汗)。

――昔、その地には一匹の雌の竜が住んでいたという。
その竜は一人の人間の少女を拾って育てた……。
どうやら人間に捨てられた子どものようだった。
その竜は少女に色々なことを教えたという。
《リラ》のこと、森のこと、スィーフィードのこと、そして人間のことを。
その竜はもうこの世にはいなかった……。
すべては3年前の事件……それのせいだった……。
そう……すべての真実はそこにあった………。


英雄B〜名付けられた葉は〜


「そろそろ……真実を話さなくちゃいけない時期なのね……」
エマはぽつんとそう呟いた。無論それを聞き逃すあたしじゃない。
「エマ、どういうことなの、それ?あなた、何か知ってるの?」
「……おれも…姉貴も玻璃も真実を知ってはいるさ……。
知ってはいるけど……萌自身にそれを語るのは止められていた……」
玉髄は感情を押しつぶした声でそう呟いた。
きっと水輝に……否、あたし達に怒鳴りつけたかったんだと思う。
「どういうことなんだ、玉髄。聞かせてくれないか?」
ガウリイが玉髄にそう問い掛ける。どうせきちんとはおぼえられないくせに。
「……すべては3年前起きた出来事よ……。
でも…私は萌が悪いなんて思わないわ。
だって萌は何もしてないもの。…ううん、むしろあの子は被害者よ。
人間に捨てられた……可哀相な子ども。
人間なのに人間とは認められなかった可哀相な子どもなのよ」
「そう……螢姉ちゃんの言った通りなの。彼女が生まれた時から他人と違っていた……未熟児だったから」
未熟児……?
それがなにに関係あることなの?
「リナ、ここでの未熟児は単に人間として育ちきってないまま生まれてきた子どものことを指す言葉じゃないわ」
どうやらエマに隠し事は無用の様である。
あの子は本当にあたしのただの幼なじみなのだろうか?カンだったらもしかするとガウリイとためはれるかもしれないし……。
まあ、あたしがわかりやすいだけという説もあるのだが。
「確かこちらの世界での未熟児とは人間になりきってないまま胎児が生まれてしまうこと。つまりはほとんど精霊に近い状態で生まれてきてしまうことでしたよね、エマさん」
「ええそうよ、ゼロス君。彼女が生まれたのは12年前……あたしがまだこの村にいた頃だったわ……」

――12年前、神魔の村……。
「お母さん、逢魔くんに妹ができたんだって!それも二人も!」
リバース家ではいつものようにエマの明るい声が響いていた。
逢魔というのはエマの親友の一人だ。彼女の親友は3人。逢魔君とレニちゃんとあともう一人だった。後の一人は現在(エマ17歳時)行方不明になってしまっていた。
そんな親友の中の一人、逢魔に妹ができたのだ。彼女はそのことを無条件で喜んだ。彼女も妹が欲しかった……しかし今となってはそんなことどうでもよかった。トモダチに妹ができる……彼女にとってはその方が嬉しかったからである。
そんな彼女を見て彼女の母、エリアはこういった。
「逢魔君とお母様におめでとうを言いに行きましょう」と。

そこは地獄の様だった……。かわいそうに……元々からだの弱かった逢魔の母は、双子を産み、そのまま力尽きてしまったのだ。
エマが逢魔の家に入って最初に見たものは母親の亡骸顔を埋め泣きじゃくる逢魔と顔を伏せた逢魔の父。それから元気に産声を上げる一人の赤ん坊とそして……姿が霞んで見え、鳴き声さえ上げていない赤ん坊だった。
エマにもエリアにもその光景はこう目にうつっていた。『まるで地獄だ』と。

その双子の赤ん坊はこう名付けられた。『嶺』と『萌』……。逢魔の母は刻の森をこよなく愛していた……だから姉の方に『嶺』、妹の方に『萌』と名付けたのだ。
しかし、人のくだした判断は残酷だった……。生まれたばかりの萌を捨てようとしたのだ。常磐の座に。理由は極めて簡単だった。彼らには未熟児である萌を育てていく術が無かったからだった。エマはそれがとてつもなく気に入らなかった。彼女もリナ=インバースと同じく『まがったこと』が大嫌いだったからだ。
「何で萌ちゃんが捨てられなくちゃいけないの!」
エマの声だけが虚しく過ぎて行く。
「萌ちゃんは何も悪いことなんてしてないんだよ!」
大人達は顔を伏せたまま何も言おうとはしない。
「誰かこたえてよ!」
かえってきたのは重い沈黙のみだった……。

その当時5歳だったリナン=エマ=リバースがその村を立ち、スィーフィード世界にあるゼフィーリア郊外に越していったのはそれから1週間ほど後の事だった。

〔続く〕

言い訳その1:長くなって本当にごめんなさい。どうも書きたいこと増えていくもので。(やっぱ子どもだか)←何が?
言い訳その2:なんだかいい加減なところで終わってしまってごめんなさい。次、続き書きます。
読んで頂けた方、実にありがとうございます。

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2382Re:異界黙示録伝《水の書》その5松原ぼたん E-mail 4/21-18:18
記事番号2369へのコメント
 面白かったです。
>「確かこちらの世界での未熟児とは人間になりきってないまま胎児が生まれてしまうこと。つまりはほとんど精霊に近い状態で生まれてきてしまうことでしたよね、エマさん」
 ほえ? ピンとこない。
> そこは地獄の様だった……。かわいそうに……元々からだの弱かった逢魔の母は、双子を産み、そのまま力尽きてしまったのだ。
> エマが逢魔の家に入って最初に見たものは母親の亡骸顔を埋め泣きじゃくる逢魔と顔を伏せた逢魔の父。それから元気に産声を上げる一人の赤ん坊とそして……姿が霞んで見え、鳴き声さえ上げていない赤ん坊だった。
>エマにもエリアにもその光景はこう目にうつっていた。『まるで地獄だ』と。
 ・・・・確かにそうかも。
> しかし、人のくだした判断は残酷だった……。生まれたばかりの萌を捨てようとしたのだ。常磐の座に。理由は極めて簡単だった。彼らには未熟児である萌を育てていく術が無かったからだった。エマはそれがとてつもなく気に入らなかった。彼女もリナ=インバースと同じく『まがったこと』が大嫌いだったからだ。
 無責任なとゆーか、なんというか・・・・、難しいといえば難しいですね。

 本当に面白かったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。