◆−聖魂祭−柚乃 (2002/12/14 22:40:33) No.23759 ┣Re:聖魂祭−エモーション (2002/12/15 22:08:19) No.23785 ┃┗Re:聖魂祭−柚乃 (2002/12/16 21:08:07) No.23797 ┗はじめましてv−羅琴みつき (2002/12/21 00:37:58) No.23890 ┗ありがとうございますっ!−柚乃 (2002/12/21 21:14:23) No.23908
23759 | 聖魂祭 | 柚乃 | 2002/12/14 22:40:33 |
最初に注意。これはリナメインですが、カップリングはガウリナでもゼルリナでもゼロリナでもルークリナですらない、ど!マイナーなカップリングです。そんなもん許さんっ!! とゆー方は読まない方が良いでしょう。 それでも良いわv とゆー心の広い方のみ読んでくださいませ。 ではどーぞ。 ********************************************************************** 聖魂祭 迷える魂の導きの炎とならんことを 傷ついた魂に安らぎをもたらさんことを 夜の闇を渡る風が森の木々を揺らしざわり、と音をたてる。 何処かで虫が鳴いている。 遠く響く獣の声は伴侶と巡り会った喜びか、戦いの雄叫びか。 空に輝く満天の星空が照らす―――けれど深い闇に覆われた森の中を、リナは一人、歩いていた。 目的は盗賊いじめ―――ではない。 リナは黙々と歩き、やがて森を抜け―――出たのはそれなりに大きな湖。 リナは水辺まで行くと、持っていた袋から何かを取り出した。 リナが袋から取り出したのは、両手にすっぽりと納まるくらいの大きさの蔦で編まれたかごと何本かの木の枝、そして一本の白いキャンドル。 リナは呪文を唱え、木の枝に火をつけた。ある程度燃えたところで火を吹き消す。あたりに木の枝からのぼる良い香りが漂った。次いでそのあたりの木から何枚か葉っぱを取り、かごに敷く。そしてその中に木の枝を入れ、最後に真ん中にキャンドルを立てる。 それが終わるとリナは呪文を唱え――― 「浮遊(レビテーション)」 力ある言葉とともに、リナはふわり、と浮き上がった。 ゆっくりと岸から離れ、だいたい湖の中心あたりに辿り着くと、リナは持っていたかごをそっと水面に下ろした。 そしてぶつぶつと呪文を唱え、キャンドルに火をつける。 そのままかごの中でゆらゆらと揺れるキャンドルをしばし見ていたが―――ほどなく岸に引き返した。 岸に降り立つと、リナは振り向いて再びキャンドルを見つめた。その唇がかすかに動く。 「………迷える魂の導きの炎とならんことを………」 呟きは風に溶け―――風がわずかに水面を揺らした。 *********************************** その町に着いたのは日もとっぷりと暮れた頃だった。 もっとも、それなりに大きい町に辿り着けたのは幸運だったと言えよう。現在リナたちは急いでマインの村近くまで戻るため、なるたけ近道をしようと裏街道を進んでいるところなのだ。 前日は野宿だったし、その前の日は野宿ではないが小さな村で、宿もあまり良い宿とは言えなかった。そう考えると、ちょうど主街道と交差するところにぶち当たり、ちょっと大きい町に出られたのはそうとうな幸運と言えるだろう。 リナたちは宿をとり、食事をして―――かなりの強行軍のため、早々に休もうと部屋のある二階に上がりかけた時。リナは覚えのある香りを嗅いだ。 「あれ? ねえ、おばちゃん。この匂いって………」 「ん? ああ。これだよ。いい匂いだろう? このあたりで採れる香木なんだ。燃やすといい香りがするし、この香りには精神を安定させる効果もあるんだよ。部屋にも一本ずつ置いてあるから、お客さんたちも試してみてね。よく眠れるから」 「へえ。そうなんですか? ぜひ試してみます」 感心したように頷くアメリア。しかしリナは何か考え込むように口元に手をあてて宿の女将に尋ねる。 「………でもこれって水辺に生える木よね? この辺に川とかあったっけ?」 「おや。よく知ってるねぇ。 確かにこの辺に川はないけどね、近くに湖があるのさ。けっこう大きな湖でね。お客さんたちは森を抜けて来たんだろう? 来る途中に見えなかったかい?」 「へえ………そうなの………」 そう呟いてリナは何ごとか考え込むように黙った。 「リナ、どうかしたのか?」 ガウリイの怪訝そうな声にリナがふっと顔を上げると、怪訝そうな表情のガウリイと目が合った。見ると、アメリアとゼルガディスも似たような表情をリナに向けている。 「あ………なんでもない。………あたし、ちょっと買い物しなきゃいけないの思い出しちゃった。ちょっと出かけてくるわね」 そう言うと、女将に今の時間でもやっているだろう雑貨屋の場所を訊いて、三人が問う間もなくリナは宿を出た。 残された三人は顔を見合わせた。リナは何を考えているのか。 なんとなく気になって三人はリナが帰ってくるのをそのまま食堂で待った。盗賊いじめに行ったわけでもあるまいし、すぐに帰ってくるだろうという思いもあった。 その予想は違わず、ほどなく帰ってきたリナの手には、先程女将と話していた香木が何本かと、蔦で編んだかご、そして白いキャンドルがあった。 *********************************** かさり。 木の枝を踏み砕く音にリナは振り向いた。 「………ガウリイ………? いつからいたの?」 驚いた顔で言うリナに、ガウリイは困ったように頬を掻いた。 「いや………たった今だけど」 嘘ではない。 リナが夜中にこっそり宿を抜け出したことに、ガウリイは気付いていた。しかし、もうパジャマに着替えていたため、着替えて部屋を出る頃にはリナの姿は見えなくなっていた。 そのため、リナが向かったと思われる方―――森を探し、やっと見つけたのだ。 これが盗賊いじめだったらもっと騒ぎが起きて分かりやすかったのだろうが……… 「………何してるんだ?」 ガウリイがリナを見つけた時、リナは遠く、湖の上に浮かんだキャンドルの火をじっと見つめていた。 静かに―――ただ、どこか張り詰めた感じで。 その様子があまりにも静謐で、ガウリイは一瞬声をかけるのをためらった。そしてだからこそ、足元から注意が逸れて音をたててしまった。 邪魔をするつもりは、なかったのだけれど……… ガウリイの言葉に、リナは何ごとか迷うような素振りを見せたが―――すぐに柔らかく微笑むと湖に浮かぶキャンドルに目を戻した。 風向きが変わり、リナとガウリイのもとへ、穏やかな香りを届けた。 「………ゼフィーリアにはね、『聖魂祭』っていうお祭があるの」 「…………………………」 ガウリイは何も言わない。突然のリナの言葉を黙って聞いている。 「一年に一回行われるお祭でね。………郷里にいた頃はあたし、参加したこと一回もなかった」 「………なんでだ?」 「参加する人は決まっているから」 要領を得ないリナの答えにガウリイは眉をひそめた。 基本的にリナは祭などのイベントが好きだ。そのうえ郷里で毎年行われているということは、おそらく十年ほどは参加できる状態にあったはずだ。 そんなガウリイの様子を見てリナは苦笑した。 「そのお祭はね、親しい友人とか家族とか、そういう人を送るお祭なの―――死んだ、人を。それに参加するのは過去一年以内に親しい家族や友人を亡くした人。 あたしは幸いそんなことに会ったことがなかったから………郷里にいる頃は参加したことなかったわ」 『参加したことがなかった』それは過去形で………意味するところはつまり。 「………今、は?」 「聖魂祭では、キャンドルを灯して、香木を燃やして………それを入れたかごを川に流すの。 キャンドルの炎は魂が迷わず黄泉路を辿れるように、香木の香りは安らかに眠れるように、っていう意味らしいわ」 ガウリイの問いには答えずに、リナは言葉を継ぐ。 「本当はかごもちゃんとそれ用の目の細かい物があるんだけどね。さすがにそれはなかったからなるべく目の細かいかごに葉っぱを敷いて代用したけど。 川も近くにないから代わりに湖。 季節もちょっと外れてるしね。本当は秋にやるものだから」 明確な答えではなかったが、その言葉が意味するところは明らかで。 「ねえ」 湖に向けた目はそのままで。ぽつり、とリナが呟いた。 「………なんでデュクリスはあたしたちにアジトの場所を教えてくれたのかしら」 「お前さんを気に入ったから、って言ってただろ?」 迷うことなく答えたガウリイに、リナはくすくすと笑った。 「あんたでも覚えてたんだ? ………そうね。そう言ってたわ。でも、なんで? あたしがデュクリスと話したのはあの時以前に一回だけ。それもほんのちょこっとよ? あたしたちがアジトの場所を知ったら絶対潰しに行くってことも分かってたはずなのよ? なのになんで教えてくれたの?」 「理屈じゃないんじゃないか?」 「………え?」 リナは目を瞬いてガウリイを見つめた。 「デュクリスがリナにアジトの場所を教えたことが、さ。 感情なんて理屈で割り切れるもんじゃない。デュクリスはリナにアジトの場所を教えたいと思った。だから教えた。 ………それだけだ。そうだろ?」 リナは再び目を瞬いた。 「だいたい、お前さんがそんなことを思うことだって理屈じゃない。 そうだろ? 敵さんのアジトを教えてもらって。なんでそんなことを教えてくれたのか、なんて本来考える必要なんざない。………ま、疑ってるとかなら別だけど、な。そういうことはなさそうだし。 ―――なんでお前さんはそんなことを気にしてるんだ?」 「なんで………って………」 逆に問い返されて、リナは口ごもった。 戸惑ったまま目を再び湖に向けると―――リナの視線の先で、ちょうどキャンドルの炎が消えた。話をしているうちに燃え尽きたのだろう。 あたりに香木の芳香が漂う。 静寂の中で、リナは思い出していた。デュクリスのことを。 『おっちゃんはな………ちょっとおっかない顔してるからな………』 そう言った、寂しげな声。 『デュクリスだ。また会おうな!』 もう二度と、会いたくなどなかった。今度会ったらきっと戦うことになるだろうと、分かっていたから。 『もう俺には、ここの他に行くところなんてねえのさ―――』 哀しげにそう、呟いた。 『気をつけな………グロウヅの………ザナッファーは………俺よりも………』 最期まで他人の心配をしていた。自分を殺した相手なのに。 「………そうね。自分でも分かんない。そういうもんなのかもね」 「だろ?」 ぽつり、と呟いたリナに、ガウリイは軽い口調で相槌を打つ。 戦いたくなどなかった。殺したくなどなかった。死んで欲しくなかった。戦いながらも―――心の何処かでそう思っていた気がする。 もしかしたら、好きだったのかもしれない。 恋などしたことがないから、これが本当に恋なのかは分からないけれど。 でも―――もう戻らない。戻せない。 振り返ることはできない。立ち止まることはできない。前に進んで行くしかない。 だからせめて。 彼が、デュクリスが、苦しまないようにと―――願いたい。 「―――迷える魂の導きの炎とならんことを 傷ついた魂に安らぎをもたらさんことを いつか すべてが癒され 大いなる母の御許へ還り 新たなる生を与えられんことを―――」 「なんだ? そりゃ」 「祈りの言葉よ。聖魂祭の最後には、みんなでこうして祈りを捧げるの」 答えると、リナはにぱっとガウリイに笑いかけた。苦いところのない、透明な笑顔だった。 「んじゃ、宿に戻りましょーか。明日も一日歩き詰めになるでしょーし。ちゃんと休んどかないとね」 「………そうだな」 応えて、ガウリイはぽん、ぽん、とリナの頭に軽く手を弾ませた。 リナはわずかに顔をしかめたが、何も言わなかった。 穏やかな風が吹いて、芳香が空高く、大気に溶けた。 リナは部屋に戻るとパジャマに着替え、ぼふん、とベッドに座り込んだ。 ベッドサイドの机を見ると、陶製の器に香木が一本。 この香木は、水辺に生え、春になると甘やかな香りの白い花を咲かせる。花言葉は『再生』 強い魂はいつかこの世界に再び生を受けることがあるという。この香木はその手助けをするのだと―――聞いたことがある。 デュクリスも………いつか、またこの世界に生を受けるのだろうか。 迷える魂の導きの炎とならんことを 傷ついた魂に安らぎをもたらさんことを いつか すべてが癒され 大いなる母の御許へ還り 新たなる生を与えられんことを―――― リナは香木を手に取って―――ほんの少しだけ、泣いた。 END ********************************************************************** お付き合いくださりありがとーございましたっ。 こんにちは。ってゆーか今の時間はこんばんはですけど柚乃ですっ。 はい。デュクリス×リナでした。………てゆーかむしろリナ→デュクリス? スレイヤーズを本編、SPともに一巻から全部読み返していたらなんとなく思いついて………ほとんど衝動書きしてしまいました。 執筆時間、ちなみに半日。早っ!! まあたまにはこんな珍しいカップリングもアリかな、と……… 何はともあれ、こんなところまで読んでくださった方に大感謝!! ですっ! ではではっ。 |
23785 | Re:聖魂祭 | エモーション E-mail | 2002/12/15 22:08:19 |
記事番号23759へのコメント はじめまして、こんばんは。 多分、「はじめまして」で良いと思うのですが……。 しんみりとしつつ、感動して読ませていただきました。 亡くした人を思い、魂を帰るべき場所へ送るための祭り……。 しなくて済むのなら幸いな、でも、生者と死者、どちらにも必要なおまつりですね。 デュクリスのために、ひとり、故郷の「祭り」を行ったリナ。 友情とも恋愛とも分類できない感情からなんだろうと思いますし、 本編の、大人になりつつあるリナじゃなければ、こういうことはしない だろうとも思います。 ちなみに私はデュクリス←リナ←ガウリイと読みました。 最後に > 迷える魂の導きの炎とならんことを > 傷ついた魂に安らぎをもたらさんことを > いつか すべてが癒され 大いなる母の御許へ還り > 新たなる生を与えられんことを―――― この祈りの言葉……普通にそれらしい「祈りの言葉」にも思えますが、 L様の存在を分かっている人が作ったような気がします。 この手のものって、ずーっと昔から伝わってきているものですから、 案外、リナ達の世界でも、ずっと昔の人間はL様の存在を普通に知っていたの かもしれませんね。 では、拙いコメントですみませんが、これで失礼します。 |
23797 | Re:聖魂祭 | 柚乃 | 2002/12/16 21:08:07 |
記事番号23785へのコメント こんにちは………もといこんばんは。 レスありがとうです!! >ちなみに私はデュクリス←リナ←ガウリイと読みました。 あ………まあ柚乃は基本的にガウリイ×リナなので。無意識にそうなってしまうんですね。デュクリスに関しては………彼の場合死んでますからね―……… >この祈りの言葉……普通にそれらしい「祈りの言葉」にも思えますが、 >L様の存在を分かっている人が作ったような気がします。 >この手のものって、ずーっと昔から伝わってきているものですから、 >案外、リナ達の世界でも、ずっと昔の人間はL様の存在を普通に知っていたの >かもしれませんね。 ものすごくL様意識しまくってます。 なんとゆーか、ゼフィーリアってそうとう特殊な土地柄っぽいので、民間伝承レベルで『あの御方』のことが知られててもおかしくないかなー、なんて思ったりして………。 まあ『彼女』に関する正確な知識はさすがに伝わってはいないでしょうけど。 ではでは。なんだかよく分からないレスになってしまいましたが。 こんな文を読んでくださってありがとうございましたっ!! |
23890 | はじめましてv | 羅琴みつき E-mail | 2002/12/21 00:37:58 |
記事番号23759へのコメント はじめましてですよね?羅琴のみっきーと名乗るロウスピード小説書きです。以後よろしくお願いします。 読ませていただきました。最初はど!マイナーと聞いて興味を持ったのですが、もお完全に魅せられました。ステキです!! 最初しばらくデュクリスって誰?状態で、あまつさえオリキャラかなあとまで思ったスレファン失格者なのは内緒です(大暴露)。 >「………ゼフィーリアにはね、『聖魂祭』っていうお祭があるの」 聖魂際……(一発変換『生根菜』)何かホントにありそうですよね。 郷里の話に触れるお話ってあんまり見かけないので、良かったです。 郷里の伝統的なものとか、お祭り、そういうのって良いですー。 何か勝手に妄想しちゃいました。 >「一年に一回行われるお祭でね。………郷里にいた頃はあたし、参加したこと一回もなかった」 >「………なんでだ?」 >「参加する人は決まっているから」 うあーー!!ツボつきまくりですよ!! >「そのお祭はね、親しい友人とか家族とか、そういう人を送るお祭なの―――死んだ、人を。それに参加するのは過去一年以内に親しい家族や友人を亡くした人。 > あたしは幸いそんなことに会ったことがなかったから………郷里にいる頃は参加したことなかったわ」 過去一年以内、ということは、連続で亡くさない限り、参加を続けるということはないんですよね?灯籠流しとは違って。 >「本当はかごもちゃんとそれ用の目の細かい物があるんだけどね。さすがにそれはなかったからなるべく目の細かいかごに葉っぱを敷いて代用したけど。 > 川も近くにないから代わりに湖。 > 季節もちょっと外れてるしね。本当は秋にやるものだから」 > 明確な答えではなかったが、その言葉が意味するところは明らかで。 切ない……。話し続けるリナが痛いです。 初めて見るカップリングでしたけど、自然に入ってきて、すごい気に入りました。 祈りのお言葉もL様ちっくでさすがゼフィーリア!? 次のお話も楽しみにしてます。 ではではっ。 |
23908 | ありがとうございますっ! | 柚乃 | 2002/12/21 21:14:23 |
記事番号23890へのコメント はじめまして〜。 レスありがとうですっ! >聖魂際……(一発変換『生根菜』)何かホントにありそうですよね。 何を隠そう私も一発変換『生根菜』でした(笑) >初めて見るカップリングでしたけど、自然に入ってきて、すごい気に入りました。 気に入っていただければ幸いですっ。 私は基本はガウリナなのですが(あとはゼルアメ、ルクミリも)けっこー無節操にその他の○○リナって好きなのです。 ゼルリナとか。ゼロリナとか。ルークリナとか。 ただし、ほとんど仲間としての友情(?)ものとか、単なるかけ合い(馴れ合いですらないし)になってしまうのですが。私だと。 その点デュクリスだともう死んでますから………あんまし深く考えずに書けて書きやすかったりします。 これを機にマイナーカップリングにはまってくれると嬉しいです(笑) ではではっ。 読んでくださって大感謝!! ですっ! |