◆−Terrible Acerbic Memory−柚乃 (2002/12/26 20:55:56) No.24017
 ┣Re:Terrible Acerbic Memory−エモーション (2002/12/26 21:55:17) No.24028
 ┃┗ありがとうございますっ!−柚乃 (2002/12/27 21:36:03) No.24044
 ┣あ、新作v−羅琴みつき (2002/12/26 22:10:35) No.24029
 ┃┗ありがとうございますっ!−柚乃 (2002/12/27 21:43:39) No.24045
 ┣Re:Terrible Acerbic Memory−渚 (2002/12/27 17:29:01) No.24040
 ┃┗ありがとうございますっ!−柚乃 (2002/12/27 21:50:35) No.24047
 ┣Terrible Acerbic Memory 《前編》−柚乃 (2002/12/27 22:12:08) No.24049
 ┃┣Re:Terrible Acerbic Memory 《前編》−渚 (2002/12/27 23:03:53) No.24051
 ┃┃┗感謝ですv−柚乃 (2002/12/28 21:18:38) No.24068
 ┃┣Re:Terrible Acerbic Memory 《前編》−エモーション (2002/12/29 21:48:25) No.24101
 ┃┃┗感謝ですv−柚乃 (2002/12/30 21:07:01) No.24126
 ┃┗不憫な・・・−空の蒼 (2002/12/30 15:43:05) No.24118
 ┃ ┗感謝ですv−柚乃 (2002/12/30 21:23:12) No.24128
 ┣Terrible Acerbic Memory 《中編》−柚乃 (2002/12/30 21:46:50) No.24132
 ┃┣Re:Terrible Acerbic Memory 《中編》−渚 (2002/12/30 23:18:04) No.24138
 ┃┗続きが!!−羅琴みつき (2003/1/1 20:07:40) No.24173
 ┗Terrible Acerbic Memory 《後編》−柚乃 (2003/1/1 21:30:08) No.24174
  ┣Re:Terrible Acerbic Memory 《後編》−エモーション (2003/1/1 23:17:10) No.24180
  ┃┗こちらこそ今年もよろしくお願いしますv−柚乃 (2003/1/2 17:48:41) NEW No.24195
  ┣Re:Terrible Acerbic Memory 《後編》−渚 (2003/1/2 00:15:43) No.24184
  ┃┗良いお年を。−柚乃 (2003/1/2 18:00:01) NEW No.24196
  ┗読ませていただきましたっ!−にゅーよーく (2003/1/3 18:50:03) NEW No.24234
   ┗ありがとうございますっ!−柚乃 (2003/1/4 16:56:24) NEW No.24251


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24017Terrible Acerbic Memory柚乃 2002/12/26 20:55:56


 こんにちは。
 柚乃にしては珍しく、アニメ版です。
 ………まあ違うところと言ったらアメリアのしゃべり方と時間設定だけかもしれないですけど。
 それと最初にはっきり言っときます。ギャグです。


***********************************         
   《プロローグ》


「んっふっふ。あるわあるわ。やー。けっこう貯めこんでるわねー♪」
 そう言ってリナはにんまりと笑みを浮かべた。
 今日も今日とてやってきました盗賊いぢめ。盗賊たちはあらかた片付き、しばき倒した盗賊の一人に案内させたお宝部屋の中で、リナは一番の楽しみであるお宝の奪取―――もとい再建資金の没収に取りかかっていた。
 エルメキアの端というわりかし辺鄙な場所なため、たいして期待はできないだろうと思っていたリナは、予想以上のお宝にかなりご満悦の様子である。
 そのリナの後ろから無意味に元気な声が聞こえてきたのは、リナが手早くお宝を漁りはじめてしばらく経った頃だった。
「リナさんっ! 用事は終わりましたか?」
「はれ? アメリア、早いじゃない。もうお説教終わったの?」
「はいっ! 盗賊などというアコギな商売はやめて真人間の道を歩むと約束してくれましたっ! 盗賊さんたちも、わたしの心に熱く燃える正義の炎を分かってくれたのですっ!」
「あーそー良かったわね」
 こぶしを握りしめて力説するアメリアに、お宝を漁る手は休めぬままでリナは気のない返事を返した。
 そんなリナの様子を気にも留めず、アメリアは滔々と『正義とは………』と語りだした。おそらく盗賊相手にも同じことをしゃべっていたのだろう、えらく語り口が滑らかだったりする。
 リナはよく飽きないものだと思いつつ、それを聞き流していた。
 そもそもリナはアメリアを盗賊いぢめに連れてくるつもりなどなかったのだ。夜中にこっそり宿を抜け出したリナをアメリアがめざとく見つけ、自分も行く、と言ってついてきたのである。
 あまり騒いでガウリイたちが起きてきたら止められることは明らかだったし、まあいつものことかと思い、リナはアメリアと一緒に昼間情報を仕入れた盗賊団のアジトへと向かったのだ。
 そのあとはいつものとおり、盗賊たちをしばき倒し、リナはその中の一人にお宝部屋に案内させ、アメリアは残りの連中に正義を説き―――というところで冒頭につながる。
「んー………?」
 自分の世界に浸りきっているアメリアを無視してお宝漁りを続けていたリナだったが、奇妙なものを見つけてその手を止めた。
「何? この箱」
「何か面白いものでもありましたか?」
 リナの怪訝そうな声にアメリアも興味を引かれたのか、リナの手元を覗き込んだ。
 それは単なる箱だった。周りに金銀財宝が所狭しと置かれている中で、一つだけポツン、とみすぼらしい箱が置かれているのだ。これはある意味非常に目立つ。
 リナはひょいとその箱を持ち上げて軽く振ってみた。カタカタと音がする。どうやら中に何か入っているらしい。
 鍵などが掛かっている様子はない。リナは無造作に箱を開けた。
「ビン………ですね」
「そうね。何かの薬かしら?」
 中に入っていたのは、青い液体の入った一本のガラスビン。
「あ、本当は二本入ってたみたいですね。もう一本は割れちゃったみたいです」
 確かにそのようである。一応クッション材も一緒に入っているが、馬車の揺れ程度ならともかく、あまり大きな衝撃に耐え切れるとは思えない。
 そういう意味でいくと、残った方のビンが無事だったのはむしろ奇跡と言えるかもしれない。もう一本のビンの残骸とクッション材に包まれてなんとか無事にいられたらしい。
 リナはそのビンを目の高さまで持ち上げてしげしげと眺めた。
「珍しい色合いね………何かの魔法薬かしら。何にしてもちゃんと調べてみないとよく………」
「リナさんっ! 危ないですっ!」
「………っとわっ!?」
 ぱりん。
 やたら軽い音を立ててリナが手に持っていたビンが割れた。必然的に中に入っていた液体がおもいっきりリナにかかる。
 ああああああああ! 服が汚れるっ! てゆか汚れたっ! しかも濡れたしっ!
 飛んできた石を避けたままの体勢でリナは思わず頭を抱えかけた。
 おにょれ許さん! と心の中で叫びつつ、たった今リナが持っていたビンを叩き割った石が飛んできた方をリナがぎろりっ! と睨み付けると、そこではすでにアメリアが石を投げた男―――リナをこの部屋まで案内してきたやつである―――を蹴り倒していた。
 リナはなんとかまだ意識はあるらしい男に近付き、首根っこを掴んでにぃっこりと笑いかけた。しかし顔は笑っているが目は欠片も笑っていない。
「なぁぁぁんでこぉんなことをしてくれたのかなぁ? やーねー。濡れちゃったじゃなぁいぃ? しかもなんか服に染みできちゃうかもしれないし。どうしてくれるのかなー、これ」
「えと、あの、リナさん。なんかちょっと怖いんですけど………」
 アメリアの声音が何やらビクついているような気がするが、リナはそれを綺麗さっぱり無視した。
「へ、へっ! い、いつまでも言うこと聞いてると思うなよっ! 盗賊にだってなぁ………意地、ってもんがあるんでぃ!」
「ほほぉぉぉぉう。で、改めて聞くけど。なんでこんなことをしたのかなぁ?」
「正面からケンカしても勝てねぇから嫌がらせだっ!」
「情けないことを堂々と言うなぁぁぁぁぁぁ!!」
 狭い室内に、リナの絶叫が響き渡った。


「あーもー。本気で染みになっちゃうかもしれないなあ。なんか変な匂いもするし………まったく、泣いて謝るくらいなら最初っからするなってのよ」
 根性があるんだかないんだか分からない男を泣いて謝るまではり倒し、ばっちりお宝を接収して、宿に帰る道すがらリナはぶちぶちと呟いていた。
「えーと………あれだけやれば誰だって謝ると思いますけど………
 それより、特に身体に異常とかはないですよね? 何かよく分からない薬かぶっちゃいましたけど」
「んー………特になんともないわね。まああれが何なのかはよく分かんないけど、身体に害のあるようなものじゃなかったみたい」
「そうですか。なら良かったです」
「んじゃま、とっとと帰りましょうか。あんまし遅くなると明日の朝起きれなくなっちゃうし」
「そうですね」
 そんな会話をしながら、二人は足を速めた。
 このことで、後々けっこうな大ごとになるとは、二人は想像もしていなかった。
 ―――今は、まだ。


***********************************


 タイトルは、英文を見ると脳みそがバーストする作者が辞書を引きつつむりやりこじつけたのでたぶん正しくないです(待て)。
 それでもむりやり直訳すると………『ものごっつぅ苦い記憶』(←何故に関西弁)という感じの意味だと………思います。
 そう長くはしないつもりなので、温かい目でお付き合いしてくださいねv




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24028Re:Terrible Acerbic Memoryエモーション E-mail 2002/12/26 21:55:17
記事番号24017へのコメント

こんばんは。

連載……になるのでしょうか。
いつもどおりの盗賊いじめ、いつもどおりアメリアがついてきて……
で、不可解なビンの中身が何を引き起こすのか……。楽しみです。

>「正面からケンカしても勝てねぇから嫌がらせだっ!」
>「情けないことを堂々と言うなぁぁぁぁぁぁ!!」
> 狭い室内に、リナの絶叫が響き渡った。
ここ、面白かったです。でも、堂々と言わないだけで実際に、
こーゆーのする人、ほんとにいるよなあ……と思いました。
情けなさには変わりないですが。

> タイトルは、英文を見ると脳みそがバーストする作者が辞書を引きつつむりやりこじつけたのでたぶん正しくないです(待て)。
それは良くあることです。(大まじめ)←さらに待て。
ついでに英文じゃないですが、ついこの間、似たようなことしました、私。
まだ、こちらに投稿してない部分ですけど。
(……まじめに研究して書いている人が見たら、怒るだろーなー、あのアーヴ語……)

では、短いですがこの辺で失礼します。続きを楽しみにしています。

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24044ありがとうございますっ!柚乃 2002/12/27 21:36:03
記事番号24028へのコメント

 こんばんは。レスありがとうですっ!

>連載……になるのでしょうか。

 ええと………たぶん前後編か前中後編になる予定です。てかそうします。根性で。

>> タイトルは、英文を見ると脳みそがバーストする作者が辞書を引きつつむりやりこじつけたのでたぶん正しくないです(待て)。
>それは良くあることです。(大まじめ)←さらに待て。

 そうですよね! ありますよねっ! 私だけじゃなかったんだとちょっと安心しました(笑)

 
 ではでは。短いですけどこの辺で失礼しますです。
 なるべく早く続き書くのでぜひまたレスしてくださいねっ!!



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24029あ、新作v羅琴みつき E-mail 2002/12/26 22:10:35
記事番号24017へのコメント

こんばんは、2度目ましてのみっきーですvv

柚乃さんの新作だ!!ということで、はりきって読ませていただきました。
面白いです、続きが気になります!!
無論あの薬………じゃない液体?がただのものであるハズもなく。―これでただの液体だったら全身全霊を賭けたギャグとして、私は柚乃さんを拝みます。参拝します。六日ぐらい。うあ、そのオチはステキだ…☆←妄想続く

でもいいですねー。ギャグ書ける人は問答無用で尊敬してしまいます。
それでいて聖魂際のようなお話も書けるんですから、羨ましい限りです。どうかその文才をわけて下さい!!……………自分、最近文才の売買交渉ばっかりしているやうな…。

それでは、続き、楽しみに待ってますvv
短くてゴメンナサイ(>□<)!!

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24045ありがとうございますっ!柚乃 2002/12/27 21:43:39
記事番号24029へのコメント

 こんばんは。レスありがとうです!

 こちらこそ二度目ましてですっ。
 はうう。二度もレスしてくれるなんて感謝のしようもありませんです〜。

 ギャグ………目指すはSPのノリです。
 ちゃんとそうなってるかどうかはちと不安ですけども。


 ではでは。短いですけどこの辺で失礼しますです。
 なるべく早く続きを書くつもりなので、またレスしてもらえると本人とっても喜びますっ!!

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24040Re:Terrible Acerbic Memory2002/12/27 17:29:01
記事番号24017へのコメント

> こんにちは。

はじめまして、渚と申します。

>「はいっ! 盗賊などというアコギな商売はやめて真人間の道を歩むと約束してくれましたっ! 盗賊さんたちも、わたしの心に熱く燃える正義の炎を分かってくれたのですっ!」

うーむ、盗賊さんたちも災難・・・・。

> やたら軽い音を立ててリナが手に持っていたビンが割れた。必然的に中に入っていた液体がおもいっきりリナにかかる。

うおっ!リナ大丈夫か!?その液体でリナの災難がはじまリそーな。

> 根性があるんだかないんだか分からない男を泣いて謝るまではり倒し、ばっちりお宝を接収して、宿に帰る道すがらリナはぶちぶちと呟いていた。

いつものことながら、リナちゃん強いねー。

> そう長くはしないつもりなので、温かい目でお付き合いしてくださいねv

はい、続きを楽しみにしてますー!!
リナに一体どんな不幸が舞い降りるのか!?(決め付けてるし)
それでは。

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24047ありがとうございますっ!柚乃 2002/12/27 21:50:35
記事番号24040へのコメント

 こちらこそはじめまして。
 レスありがとうですっ!

 なんだか小説家さんや漫画家さんがファンレターが励みっていうの、すごく分かる気がします。嬉しいんですよ〜(感涙)。

 楽しみにしてる、と言ってもらえるとすっごい励みになります。


 ではでは。短いですが、この辺で失礼しますです。
 なるべく早く続き書くつもりなので、またレスしてもらえると本人とっても喜びますっ!!


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24049Terrible Acerbic Memory 《前編》柚乃 2002/12/27 22:12:08
記事番号24017へのコメント

 三人以上になると会話のバランスを取るのがたいへん。皆さん困ったことないですか? 私はいつもです(死)。
 今回もその被害に遭っている人物が約一名。あえて誰とは言いませんけど。
 リナなんかはよくしゃべるんですけどね。やっぱり愛の差でしょうか(笑)


***********************************



 異界の魔王『闇を撒くもの(ダーク・スター)』との戦いから数ヶ月。リナたち四人は外の世界から半島へと帰って来ていた。
 行きは海路だったから帰りは陸路で―――というなんとも安直な理由で砂漠を越える道を選び、四人は滅びの砂漠を越えて現在エルメキアの外れに位置する小さな町にいた。
 町としての規模はさほど大きくないものの、砂漠に近いことを利用して、砂漠でしか採れない植物を他の町に輸出することで、割合豊かな経済水準を保っている町である。
 そんな町にある一軒の宿。その一室に、かん高い少女の声が響き渡った。
「ええええぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ!?」
 ………訂正。宿全体に、響き渡った。
 その声に、その悲鳴の主である少女の連れである青年二人―――ガウリイとゼルガディスは顔を見合わせ―――示し合わせたように同時に剣を持って部屋を飛び出した。
 そして隣の部屋の前に行くと、どんどんと扉を叩いて中に呼びかけた。
「おい! アメリア! 何かあったのか!?」
「ゼルガディスさんっ!? ええええええとあのそのリナさんが………いえとにかく入ってきてくださいぃぃぃぃ」
「ってちょっと人の部屋に何勝手に他人入れようとしてるのよあなたっ!?」
「………………? まあとにかく………入るぞ?」
 アメリアの泣きそうな声と、そのあと聞こえたリナの声に怪訝な顔をしつつ、ゼルガディスは扉を開けた。
 扉には鍵はかかっていなかった。リナはいつも寝る前に鍵をかけるから、おそらく朝起きてからアメリアがいったん部屋の外に出たのだろう。
 それはさておき、ガウリイとゼルガディスが部屋に入ると、ベッドに座ったリナと、その横に泣きそうな顔で床に座り込んでいるアメリアがいた。
「おいアメリア、いったい何が………」
 しかしその言葉を最後まで言い切るより早く。リナの怒鳴り声が部屋に響いた。
「ちょっとあなたたちっ! 女の子の部屋に勝手に入ってくるなんてどういう神経してるのよっ!? だいたいなんなのよあなたたちっ! 朝起きたらなんか知らない人がいるし、いきなり叫んだかと思ったらまた別の人が来るしっ!! ………ってちょっとっ! 聞いてるの!?」
 リナの言葉に一瞬固まってしまったガウリイとゼルガディスに不審気な表情を向けるリナからアメリアにぎぎぃっとぎこちない動作で視線を移し、ガウリイがやっとのことで声を出した。
「………………アメリア………?」
 アメリアも似たような動作でぎぎぃっと二人の方を向き、その大きな眼に涙すら浮かべて、決定的な一言を放った。
「リナさんが………記憶喪失ですぅぅぅっ!」
 ぴしっ。
 その言葉に。ガウリイとゼルガディスは完全に―――凍りついた。


 その日の朝アメリアが目を覚ますと、リナはまだ起きていなかった。
昨日はけっこう遅くまで起きていたし、むりやり起こすとひじょーに危険………もとい機嫌が悪くなるため、アメリアはリナを起こすことはしないでひとまず身支度を整えた。
 そのあといったんトイレに行き―――戻ってきてもリナはまだ起きていなかった。
 さすがにもうそろそろ起こさないと朝食が遅くなってしまうと思い、アメリアはリナを起こしたのだが………
「リナさん、起きてくださいっ。朝ですよっ」
「うみゅう………」
 まだぼーっとした感じで目を開けたリナだったが―――その眼がアメリアを捉えた瞬間、不審気なものに変わった。
 そして一言。
「あなた―――誰よ?」
「………は?」
 えーと………? リナの言葉に戸惑うアメリアを余所に、リナはきょろきょろと部屋を見回しながら、
「何であなた、あたしの部屋にいるの? ………その様子だとあたしを倒して名を売ろう、ってやつらとは違うみたいだけど。それともナーガの知り合い? ってそういえばナーガのやつ何処に………」
 えーとえーとえーと。
 アメリアは頭の中が真っ白になりかけながらも必死で考えをまとめようとしていた。
 リナの言葉を反芻する。
 さらに反芻する。
 出した結論は。
 それはつまり。
「ええええぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ!?」
 アメリアは思わず、宿中に響き渡るような叫び声をあげていた。


「………というわけです」
『…………………………………』
 部屋を沈黙が包み込んだ。
 ちなみに今三人がいるのはガウリイとゼルガディスの部屋。リナとアメリアの部屋の隣である。何故部屋を移動したかと言うと、リナに『着替えるから出てけ』と言われたためである。
 そしてリナが着替えている間にアメリアから簡単な説明を聞いて―――ガウリイとゼルガディスは沈黙した。
「あー………つまり………」
 沈黙を破ったのはガウリイだった。
「朝、リナが起きたらいきなり記憶喪失になってた、と。そういうことか?」
「ええまあ簡単に言えばそうです」
「なんと言うか………あいつはトラブルを呼び込まんと気がすまんのか………?」
 頭痛をこらえるような表情でゼルガディスが言う。
 アメリアはそれに沈痛な表情で頷き、
「でもそれがリナさんですから………」
 それで通じてしまうことがある意味恐ろしい。ついでに言うと、ガウリイとゼルガディスもその言葉に『確かに』と思ってしまったあたり、救いようがない。
 それ以上考えるとどつぼにはまりそうな予感がしたため、ゼルガディスはひとまず現実のことを考えることにした。
「………アメリア。リナのやつはまだ状況をさっぱり理解していないんだな?」
「え? は、はい。なんか自分が記憶喪失って自覚がないみたいで………」
「と、なると………まずは自分の置かれている状況を認識させんといかんわけか………」
「そうですね」
 まだパニックから完全には抜け切っていないアメリアと、考えるのは自分の役目ではない、と最初から考えるのを放棄しているガウリイ。必然的に事態の収拾に向けてゼルガディスが頭を悩ませることになる。
 とりあえず目下の問題はリナにどう説明するか。いきなり『あなたは記憶喪失なんです』などと言っても胡散臭がられることは必死である。なんと言っても相手は『あの』リナなのだし。
 しかしどうあれ、なんとかリナが着替えているうちに当面の対応を考えなくてはいけないのだが。
 くらくらするのをこらえながらゼルガディスが必死で頭を回転させていると、
「うにょええぇぇぇぇえぇぇ!?」
 先程のアメリアの声ほどではないが、やはり大きなかん高い声が隣の部屋から響いてきた。


 リナはううむ、と考え込んでいた。部屋をざっと見渡してみる。
 ベッドが二つ。これはいい。昨日は部屋が空いてないから、とナーガと二人部屋をとった。しかし朝起きてみると、いたのはナーガではなく見知らぬ女の子。
 ベッドサイドの卓に着替え。見覚えのない服である。自分が寝ていたベッドのすぐ横に置いてあるからには自分用なのだろうが。
 今度は自分の身体を見下ろしてみる。昨日寝る前と同じ格好―――ではない。パジャマではあるが、少なくとも見覚えはない。
 リナはむぅ、と再び唸り声をあげた。
 朝起きてみたら見知らぬ人間がいて、昨日寝る前と違う服を着ている。
 これで変に思わない人間がいたらお目にかかりたいものである。………まあナーガあたりだとあっさりその場に順応してしまうかもしれないが。
 ともあれ、いつまでもパジャマのままでいるわけにもいかない。先程部屋から追い出した人たちにも着替えるから、と言ったことだし。
 リナは身支度を整えながら、ふと。自分が彼らのことをまったく警戒していないことに気付いて首を傾げた。
 リナは別に自分が会う人すべてに対して警戒しまくっているなどとは思っていない。しかし、である。こんなよく分からない状況で、そこにいた人間に警戒心をまったく抱かないというのは―――
 しばし首を傾げて考えていたが―――ま、悪人には見えなかったし。と納得し、そこで思考を打ち切った。
 着替え終わり、身支度をきちんと整えると、リナはなんとなく外の空気が吸いたくなって窓に近付いた。
 ぱたん、と窓を開け外を見て―――リナはその場に硬直した。
 宿の二階の窓。あまり高い建物がないため、けっこう遠くまで視界が通る。
 そこでリナの眼に飛び込んできたのは、すでにけっこうたくさんの人が行き来する町並みと、その向こうに見える―――砂漠。
 砂漠と言えばエルメキアやゼフィーリアの東に位置する滅びの砂漠しかないわけでということはつまりここは滅びの砂漠のあたりということででもあたしは今はラルティーグにいるはずで………
 えーと。
 えーとえーとえーと。
 ええええええええええええええとぉぉぉぉ。
 状況をちょっとばかり認識―――とすら言えないかもしれないが―――した瞬間。
「うにょええぇぇぇぇえぇぇ!?」
 リナはおもいっきり叫んでいた。


 リナの叫びに慌てて隣の部屋に駆け込んだ三人は、全開にした窓の前で硬直しているリナを発見した。
 三人はなんとなく珍しいものを見るような心地で、しばし生暖かい目でそれを見ていたが、いつまでもそうしているわけにはいかない。
「………どうかしたか?」
 とりあえず訊いてみたガウリイの声に、リナはパッと振り向き、そのまま一番近くにいたガウリイのえりくびを引っつかんでがっくんがっくん揺さぶりつつ、
「どうっていろいろ訊きたいことはあるしいろいろ言いたいこともあるけどそれより何よりとりあえずっ!」
 言ってずびしぃっ! と窓の外を指差すと、一言。
「ここ何処よっ!?」
「………エルメキアの端、フィオストロ・シティだ。すぐそこに滅びの砂漠もある」
「エルメキアっ!? やっぱしっ!? てゆーかなんで!? あたし昨日までラルティーグにいたはずなのよ!?」
 ゼルガディスの言葉にリナはかなりパニクった様子で訊き返す。
 その様子を見てゼルガディスははあ、と溜め息を吐いて、
「………その辺はこれから説明する。とりあえず………ガウリイの旦那を放してやってくれるか? そのままだと死ぬぞ。まじで」
「あ」
 リナは興奮していて気付かなかったが―――手加減の欠片もない力で揺さぶられたガウリイは、半分呼吸困難にすら陥っていた。


「つまり………」
 三人から簡単に事情を聞いて―――といっても本当に簡単に、だが―――しばし考え込んだあと、リナが口を開いた。
「あたしは今、本当は十七歳で………あなたたちと一緒に旅をしていて………んでもって今現在、あなたたちから見るとあたしは記憶喪失だと。そーゆーわけね?」
「………信じるのか?」
 意外そうな面持ちの三人を見て、リナはふうぅぅぅと溜め息を吐いた。
 はっきり言って胡散臭い。これ以上ないってくらい胡散臭い。
 だいたい昨日食べた夕食のメニューだってはっきり覚えているのだ。記憶喪失などというものになったことはない―――いやまあ今実際になってるらしいのだが―――からよくは分からないが、普通そんなものは分からないのではないか、と思う。
 しかし。
「まーねー。はっきし言って胡散臭いとは思うけど………なんつーか、状況からいって信じざるを得ないんじゃない? あなたたちが嘘言ってるようにも見えないし」
「当たり前ですっ! 嘘を吐くなんて正義じゃないじゃないですかっ!」
「それはともかく。あたしが昨日までいた………と思ってるところはラルティーグ王国の西なのよ。そっからここ………滅びの砂漠の一歩手前まで、どんなに急いだって一ヶ月以上かかるわ。
 例えば眠らせておいて、その間に移動したとしても、そしたら身体がもっとなまってるはずよね。でもそんなこと全然ないし。
 季節は冬だったはずなのにいきなり夏になってるし。
 この辺のこと全部きっちり納得できる説明ってあたしには無理だわ。
ならどんなに胡散臭かろーが信じるっきゃないんじゃないの?」
 エキサイトするアメリアをさらっと無視してリナは冷静に分析する。
 そのリナに、ゼルガディスは感心していた。こんな状況でよくこれだけ落ち着いていられるものだと思う。さすがリナ、というところだろうか。
 ………実際のところ、こういったわけの分からない事態に慣れている、ということもあるが、リナが落ち着いている理由の半分くらいは、現実逃避に近かったりするのだが。
 要するに、あまりにわけが分からん状況に、考えることを放棄したのだ。
 そしてふ、と思いついたようにリナが顔を上げた。
「………そーいえばあたし、あなたたちの名前聞いてないわ。名前分かんないと不便だし、教えてくれる?」
「あ、ああ、そうだな………俺はゼルガディスだ」
「ガウリイ=ガブリエフだ。ガウリイでいい」
「アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンです」
「………セイルーン?」
 ぴくり、とリナの眉が上がる。
 視線をあさっての方に向けて、しばしなにやら考えているようだったが―――やがておそるおそる、といった感じでアメリアに向けて尋ねた。
「………えーと………もしかしてもしかしなくてもセイルーンってセイルーン王国よね………」
「え、まあ一応王族ですけど………」
「………じゃああなた、もしかしなくても第一王位継承者さんの親族か何かかしら………?」
「は? 第一王位………ああ! 父さんです!」
 ぴきし。アメリアの言葉にリナは硬直した。
 そのリナにさらに追い討ちをかけるようにガウリイがぽん、と手を打った。
「おお! そーいえばリナ、フィルさんと知り合いだって言ってたな!」
「う………嘘よぉぉぉぉぉ! あなたがあのフィルさんの娘なんてっ………まあ子供がいてもおかしくはないけどっ………! 全っ然似てないっ! 詐欺だわこれはむしろっ!」
「そこまで言うか………」
「わたしとしてもなんか複雑なんですけど………」
 下手をすれば不敬罪で捕まりかねないことを叫ぶリナに、ぼそり、と突っ込むゼルガディスと、なにやらぶつぶつ呟くアメリア。
「だってだって! あの黙ってれば野盗の親分みたいな人が第一王位継承者ってだけでも驚きなのにっ! アメリア………だっけ? みたいな娘がいるなんて信じられないわよっ!」
「人の父さんのことひどい言い方しないでくださいっ!」
「しかし、俺たちの言うことは信じて、アメリアがフィルさんの娘だというのは信じられんというのは………普通逆じゃないのか?」
「何言ってんのよ!? 世の中には常識では計り知れないよーなことがまだまだいっぱいあるのよ!? 火炎球(ファイヤー・ボール)くらっても一瞬で復活する人外な生物とかハイソサエティとやらを追求してる吸血鬼(ヴァンパイア)とか人望だけで植物を操る人間とか魔王竜(ディモス・ドラゴン)をペットにしてる純魔族とかっ!! 
 ………でもそう考えるとアメリアがフィルさんの娘、っていうのもまあそんなこともあるかも、と思えないこともないかもしれないわね………」
 リナのあまりと言えばあまりなセリフに三人が汗ジトで『いったいどういうやつらを見てきたのだろーか?』と心の中で呟いたのは―――まあ当然と言えるかもしれない。
 そんな三人の様子に気付かず―――あるいはあえて無視して―――リナは納得したようにうんうんと頷いた。
「ん。まあいいわ。一応納得しといてあげる。………で、改めて確認しとくけど。アメリア、ガウリイ、ゼルディガス、だっけ?」
『ゼルガディスだ(です)』
 三人の声が見事にハモった。



***********************************

 一度やってみたかったんです記憶喪失ネタ。
 と言ってもこの場合、退行性記憶喪失っていうんでしょうか。
 何はともあれ続きます。
 
 ガウリイくん。ほとんどしゃべってません(爆)
 ガウリイファンの方。すみません……… 



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24051Re:Terrible Acerbic Memory 《前編》2002/12/27 23:03:53
記事番号24049へのコメント

>「おい! アメリア! 何かあったのか!?」
>「ゼルガディスさんっ!? ええええええとあのそのリナさんが………いえとにかく入ってきてくださいぃぃぃぃ」

リナが一体!?

>「ちょっとあなたたちっ! 女の子の部屋に勝手に入ってくるなんてどういう神経してるのよっ!? だいたいなんなのよあなたたちっ! 朝起きたらなんか知らない人がいるし、いきなり叫んだかと思ったらまた別の人が来るしっ!! ………ってちょっとっ! 聞いてるの!?」

知らない人・・・・?リナ、もしかして・・・・。

>「何であなた、あたしの部屋にいるの? ………その様子だとあたしを倒して名を売ろう、ってやつらとは違うみたいだけど。それともナーガの知り合い? ってそういえばナーガのやつ何処に………」

ナーガのことは知っている・・・・という事は、
過去の記憶はあることということですね。

>「でもそれがリナさんですから………」

リナと一緒にいることは、おまけにトラブルもついてきますからね。

> リナのあまりと言えばあまりなセリフに三人が汗ジトで『いったいどういうやつらを見てきたのだろーか?』と心の中で呟いたのは―――まあ当然と言えるかもしれない。

当然だな。

>「ん。まあいいわ。一応納得しといてあげる。………で、改めて確認しとくけど。アメリア、ガウリイ、ゼルディガス、だっけ?」
>『ゼルガディスだ(です)』
> 三人の声が見事にハモった。

おおっ!呼び名が初期に戻ってしまった。

さーて、これからどうなるのか楽しみです。

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24068感謝ですv柚乃 2002/12/28 21:18:38
記事番号24051へのコメント

 レスありがとうです〜………ってしかも二度目だし!! 感謝のしようもありませんですっ!


>>「でもそれがリナさんですから………」
>
>リナと一緒にいることは、おまけにトラブルもついてきますからね。

 それがリナですから(笑)

>>「ん。まあいいわ。一応納得しといてあげる。………で、改めて確認しとくけど。アメリア、ガウリイ、ゼルディガス、だっけ?」
>>『ゼルガディスだ(です)』
>> 三人の声が見事にハモった。
>
>おおっ!呼び名が初期に戻ってしまった。

 お約束その2(笑) ちなみにその1は親子にびっくり。


 続きを楽しみにしてる、と言ってもらえるとすごい励みになります。
 ぜひまた感想とかレスしてくださいねっ!
 
 ではでは。
 次はたぶん明日か明後日にはUPするつもりなのでよろしくです!!



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24101Re:Terrible Acerbic Memory 《前編》エモーション E-mail 2002/12/29 21:48:25
記事番号24049へのコメント

こんばんは。

昨日(正確には昨夜)は自分の方で手一杯でした。
ということで、ようやくレスできます。

> 三人以上になると会話のバランスを取るのがたいへん。皆さん困ったことないですか? 私はいつもです(死)。
私もです。さらに暴走する悪魔神官(笑)がいるので……。

> 今回もその被害に遭っている人物が約一名。あえて誰とは言いませんけど。
> リナなんかはよくしゃべるんですけどね。やっぱり愛の差でしょうか(笑)
あとは、書き手との相性でしょう。好き嫌いに関係なく、どうしても
動かしやすいキャラと、そうでないキャラがいますよ。何ででしょうね。

>「リナさんが………記憶喪失ですぅぅぅっ!」
> ぴしっ。
> その言葉に。ガウリイとゼルガディスは完全に―――凍りついた。
ちょ……長期シリーズには付き物と言われる伝説の病魔が?!
リナから見れば「スキップ」したようなものですね。気がついたら数年後……。
それは混乱します……。現実逃避でも何でも、一通り冷静に考える辺りは
さすがというか、すごいというか……。

>「ん。まあいいわ。一応納得しといてあげる。………で、改めて確認しとくけど。アメリア、ガウリイ、ゼルディガス、だっけ?」
>『ゼルガディスだ(です)』
> 三人の声が見事にハモった。
ゼルはやっぱり、最初は名前を間違えられるんですね(笑)

> ガウリイくん。ほとんどしゃべってません(爆)
> ガウリイファンの方。すみません……… 
この辺りは、実はガウリイもパニック起こしている、と勝手に判断しました(笑)

面白かったです。
まず、ビンの中身が原因と思うのですが……一体、何なのか楽しみです。
では、拙いコメントですがこの辺で失礼します。
続きを楽しみにしています。

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24126感謝ですv柚乃 2002/12/30 21:07:01
記事番号24101へのコメント

 こんばんは。
 レスありがとうですっ!


>あとは、書き手との相性でしょう。好き嫌いに関係なく、どうしても
>動かしやすいキャラと、そうでないキャラがいますよ。何ででしょうね。

 それは確かかも。リナとかは性格も分かりやすいんですけど、ガウリイって微妙に性格が分かりにくくて………どうも苦手です。
 あとはミリーナなんかもともと無口なせいかほとんどしゃべってくれなかったり。
 同じ無口………というかクール(?)でも、ゼルなんかはけっこう動かしやすいんですけども。

>昨日(正確には昨夜)は自分の方で手一杯でした。
>ということで、ようやくレスできます。

 あああああそんなっ! レスをしてくれるだけでもこちらとしてはめっちゃ嬉しいですっ!!

>ゼルはやっぱり、最初は名前を間違えられるんですね(笑)

 基本でしょう(笑)なんの基本かはともかくとして。


 ではでは。この辺で失礼します。
 またぜひとも感想くださいねっ! 本人すっごい喜びます!!




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24118不憫な・・・空の蒼 2002/12/30 15:43:05
記事番号24049へのコメント

こんにちは、空の蒼です。
最近パソコンに触れていないので、お久しぶり・・・ということになるのでしょうか。


> 三人以上になると会話のバランスを取るのがたいへん。皆さん困ったことないですか? 私はいつもです(死)。
> 今回もその被害に遭っている人物が約一名。あえて誰とは言いませんけど。
> リナなんかはよくしゃべるんですけどね。やっぱり愛の差でしょうか(笑)
やはり、登場人物が多いと大変です。
それでも、この人数がもれなく(約一名は除く)均等に話しているのは、私から見れば充分凄い。
それに、たとえリナさんが少々セリフが多かったとしても、そこはそれ。
『主人公だから』の一言でバッチリ解決☆間違い無しです(笑)


>「おい! アメリア! 何かあったのか!?」
>「ゼルガディスさんっ!? ええええええとあのそのリナさんが………いえとにかく入ってきてくださいぃぃぃぃ」
あ、事件発生!
アメリアさんの悲鳴+『リナさんが・・・』の言葉だけで推測すると、リナさん、幼児化してしまった・・・とか?
等々考えていましたら・・・


>「リナさんが………記憶喪失ですぅぅぅっ!」
なるほど。記憶喪失ですか。
大変な事になりました・・・。
特にゼルガディスさん。その理由は勿論、他に頭脳労働をキッチリこなせる人がいないから(笑)
・・・でも、一言に記憶喪失といっても、一体どんな状態なのでしょう・・・って、そんなこと考えてもしょうがないですね。
大人しく先へと読み進んでいきます。


>「何であなた、あたしの部屋にいるの? ………その様子だとあたしを倒して名を売ろう、ってやつらとは違うみたいだけど。それともナーガの知り合い? ってそういえばナーガのやつ何処に………」
ナーガさんの名前が出てきた・・・ということは、リナさんの只今の記憶は原作でいくと、すぺしゃるの辺りまでですか。
さすがに彼女のことはインパクトがありすぎて忘れられなかった・・・とか(笑)


>「アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンです」
>「………セイルーン?」
> ぴくり、とリナの眉が上がる。
> 視線をあさっての方に向けて、しばしなにやら考えているようだったが―――やがておそるおそる、といった感じでアメリアに向けて尋ねた。
>「………えーと………もしかしてもしかしなくてもセイルーンってセイルーン王国よね………」
>「え、まあ一応王族ですけど………」
>「………じゃああなた、もしかしなくても第一王位継承者さんの親族か何かかしら………?」
そっか。
記憶が昔に戻っている、ということはとりもなおさず、このある意味理不尽な事実を再び突きつけられる、ということですものね。
リナさん・・・二度もこんな体験をしなければならないなんて・・・不憫な・・・。


>「何言ってんのよ!? 世の中には常識では計り知れないよーなことがまだまだいっぱいあるのよ!? 火炎球(ファイヤー・ボール)くらっても一瞬で復活する人外な生物とかハイソサエティとやらを追求してる吸血鬼(ヴァンパイア)とか人望だけで植物を操る人間とか魔王竜(ディモス・ドラゴン)をペットにしてる純魔族とかっ!!
このセリフだけでも、リナさんの歩いてきたもの凄い人生を垣間見ることができますね(笑)
もしも、話がゼフィーリアまで及んでいたとしたら・・・さらに未知の世界が体験できそうです。 


> 一度やってみたかったんです記憶喪失ネタ。
> と言ってもこの場合、退行性記憶喪失っていうんでしょうか。
> 何はともあれ続きます。
はい〜♪
楽しみに待たせて頂きます。


> ガウリイくん。ほとんどしゃべってません(爆)
> ガウリイファンの方。すみません……… 
・・・あ、あれ?
私はてっきり、彼はあまりしゃべらない方だと思っておりました(爆)
いつも何も考えてなさそう(っていうか考えてない?)なので・・・。

それでは、今回はこの辺りで失礼します。


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24128感謝ですv柚乃 2002/12/30 21:23:12
記事番号24118へのコメント

 こんばんは。
 レスありがとうです〜v


>大変な事になりました・・・。
>特にゼルガディスさん。その理由は勿論、他に頭脳労働をキッチリこなせる人がいないから(笑)

 思いっきりそのとおりです(笑) ゼルやんたいへん。

>このセリフだけでも、リナさんの歩いてきたもの凄い人生を垣間見ることができますね(笑)
>もしも、話がゼフィーリアまで及んでいたとしたら・・・さらに未知の世界が体験できそうです。 

 実はそれもちょっと考えてたんですけど………『世の中にはすりこぎやら麺棒やらで純魔族をどつきまわしたり包丁一本で雷撃竜(プラズマ・ドラゴン)をしとめられる人とか風とともにあらわれて息子の悪口言うやつにトゲ付きハンマーをぶちかます面妖なおばはんとかっ!!』みたいな感じで。
 でもまあ郷里の姉ちゃんネタは次に出すつもりだったので却下しました。

>・・・あ、あれ?
>私はてっきり、彼はあまりしゃべらない方だと思っておりました(爆)
>いつも何も考えてなさそう(っていうか考えてない?)なので・・・。

 まあ確かにそうですが………わたしの場合それに輪をかけてしゃべらない。存在感薄ッとか言われても仕方ないくらいなので………
 うう。苦手なんです………ガウリイ。嫌いではないんですけど………


 ではでは。この辺で失礼します。
 ぜひまた感想とかレスしてくださいねっ! 本人すっごく喜びますので!!



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24132Terrible Acerbic Memory 《中編》柚乃 2002/12/30 21:46:50
記事番号24017へのコメント

 こんばんは。中編です。
 なんだか思ってたほど進まなかった………次で本当に終われるかちょっと不安だったり。

***********************************



「ところでちょっと疑問に思ったんだけど………」
 気付いてみれば太陽もかなり高く昇っており、起きてずいぶん経っているしで―――つまりはお腹が空いた、ということで、リナたち四人は少々遅めの朝食を食べていた。
 周りに客はほとんどおらず、まだ食事をしているのはリナたちしかいない。
「なんであたしこんなとこにいるの?」
「えーと、なんでって………」
「つまりね。ここってすぐそこが砂漠、ってぇところでしょ? 話のタネにしたってあたしが好き好んでこんなとこ来るとはあんまし思えないわ。あたし暑いの嫌いだし」
「ああそういう………」
 アメリアは納得したように頷いた。
 余談だが、リナが三人に何かを訊く際、たいていアメリアに話しかける。ガウリイに何か訊くのははっきり言って無駄だといち早く察したリナは、ガウリイに何ぞ訊くことはほとんどない。ではゼルガディスとアメリアのどちらに話しかけるか―――となるわけだが、やはり同じ女性同士、近い年の頃ということでアメリアの方がゼルガディスよりも気安いらしい。本当に余談だが。
 もっとも、アメリアが答えに窮するとゼルガディスに助けを求めるため、結局リナとゼルガディスとの会話になることも多いのだが。
 閑話休題。
「ええっと。わたしたち、ついこの間外の世界から帰ってきたんです。それで砂漠を越えてきたのでこうして砂漠近くにいるんです」
「外………って………この半島の外ってこと? 行けるの!?」
「え、あ、はい。以前は行けなかったんですけど、いろいろあって最近行けるようになったんです」
 その原因の一部―――というかむしろ大部分―――はリナにあるのだが。
 もちろん今のリナはそんなことを覚えていないため純粋に驚いている。
 しかし、アメリアもまた驚いていた。神封じの結界―――という名前を今のリナが知っているかはともかく―――によって今までこの半島の外と行き来ができなかった、という事実は世間ではあまり知られていないことなのだ。
「へえぇぇぇ………そうなんだぁ………昔、郷里の姉ちゃんがこの半島の外には出れないって言ってたけど………行けるようになったんだ。
 ………んでも何しに行ったわけ? まあ確かに行ってみたいかなーとは思わないでもないけど」
「えっと………」
「外の世界から来た黄金竜(ゴールド・ドラゴン)の巫女に頼まれて異界の魔王『闇を撒くもの(ダーク・スター)』を倒しに行ったんだ」
「………………………めちゃめちゃ胡散臭いわねー………」
 アメリアの視線を受けてゼルガディスがごくごくあっさりと説明する。
 どうやらどう言っても胡散臭がられることは必死、とさらっと言ってしまうことにしたようだ。
 そしてやはりと言うべきか、リナは半眼でぼそりと呟いた。まったく信じていないらしい。
 まあ当然か、と一種悟りの境地でゼルガディスは静かに頷いた。
「だが事実だ。あんたが信じようが信じまいがそれは変わらん」
「………まあそれが事実として………魔王とかいうのはあんまし信じられないけど………何らかの強い存在を半島の外にわざわざ倒しに行ったわけ………? あたしが………?
 うわっ。うさんくさっ。」
「わたしたちは嘘は言ってませんっ! そんなの正義じゃないですからっ!」
「ああ。オレたちは嘘なんか言ってないぞ」
 リナの言葉に反発するアメリアとガウリイにリナは苦笑すると、手に持ったフォークをぴこぴこと揺らしながら、
「だからね、あたしが一番信じられないって言ってるのは、何らかの強い力を持った存在を倒した、とかそーゆーことじゃあなくって。あたしがわざわざそんなもんを倒しに半島の外に出た、ってぇことなのよ」
「………どういう意味です?」
「だって面倒臭そうじゃない。そりゃまあ売られたケンカは買うし、やられたら百万倍にして返してやるけど、わざわざ自分からケンカ売りに行くような趣味はないわよ、あたし。巫女、ってあたりで依頼料も少なそうだし」
「でも世界の危機だったんですよっ!」
「そう言われてもねー………」
「………そういえば最初、リナはあんまり乗り気じゃなさそうだったな」
「そーいえばそうだな。なんだっけ………そうそう。なんかフィリアが手紙持ってて………それを見てやるって言い出したんだよな」
「そういえば………そうですね。リナさんのお姉さんからの手紙で、確か内容は………『いいからやんなさい』でしたっけ?」
「………………………………………え゛?」
 アメリアのセリフを聞いて、リナが微妙に顔色を青白くした。
「………今、なんて言った?」
「え? ですから、フィリアさんがリナさんのお姉さんからの手紙を預かってて、内容は………」
「あああああああ! 分かったわっ! それ以上言わなくてオッケーっ! 納得っ! 信じるっ! 信じるからそれ以上言わないでお願いだからっ!!」
 いきなり叫んだリナにアメリアが目を瞬いた。ガウリイとゼルガディスもきょとん、とした顔でリナを見つめる。
「そ、そぉ。あの人絡みなの………それはなんつーか………断るなんて言語道断だわね………」
「…………………………あの………リナさんのお姉さんって………いったい………?」
「訊かないで。お願い。それだけは」
『…………………………………………』
 瞳に恐怖を宿らせてきっぱり言うリナに、三人は沈黙した。


 食事も終わり、のんびりと食後の香茶など飲みながら。四人は今後のことを話し合っていた。
「さてと。あたしとしてはあんまし記憶喪失なんて気がしないし、あんまし困ってないんだけど、あなたたちとしてはやっぱ困ってるわけよね?」
「ええと………まあ、そうですね。いつ何があるか分かりませんし………」
「そう言うあんたは困っていないと言うが、もしかしてそのままでも別にいいと思っているのか?」
「思ってないわよそんなこと」
「何故だ? 困っていないのだろう? なら何故わざわざ面倒なことをしようとする?」
 ゼルガディスの問いにリナはむっとしたように顔をしかめた。
 そしてぴっと一本指を立てると、
「いーこと。あたし今十五なの………って本当は十七らしいけど。この十五や十六って言ったら人生の中で一番楽しい時じゃないっ! それを『気付いたら二年経ってました』で済ませられると思う!? もったいないっ! 時は金なりって言うでしょ!? まさしくそのとーりよっ! そうでしょっ!?」
「………金に置き換えるあたりすごくリナらしいな」
「やかましーわよ」
 ぼそりと呟くガウリイをじろりと睨み付けてドスの効いた声で突っ込むリナ。
 そのやりとりにゼルガディスは苦笑した。
 変わらない。何年前だろうとリナはリナだ。それをゼルガディスは実感した。
「………そうだな。となると………まずは原因だな。昨日何か変わったことは―――と言っても覚えてないか………」
「アメリアってあたしと同室だったんでしょ? なんか覚えてない?」
「えっと………昨日の夜は遅くに近くの盗賊退治に行って………」
「………お前、また盗賊いぢめに行ったのか………?」
「いや覚えてないけど………何か問題でもある? 悪人倒して収入あり。一般市民の人たちには感謝されるし、楽しいし。悪いことなんかないじゃない」
「……………………………………」
 はっきしきっぱし断言されてガウリイは沈黙した。
 言いたいことは山ほどあったが、今のリナはガウリイが知っているリナ以上に何を言っても無駄なような気がしたのでガウリイは何も言わなかった。
「………アメリアも一緒に行ったのか?」
「はい。夜中に目が覚めたらリナさんがいなくって。きっと悪人退治に向かったんだろうと思って追いかけたんです。この町からすこし離れたところですけど………あ!
 そうです! きっとあれです!
 そこでリナさん、正体不明の謎の魔法薬をかぶってしまったんですっ! それが原因に違いありませんっ!
 その時は特に何も起こらなかったのでそのままにしてたんですけど………まさか一夜明けて効果が表れるとは………! こんなの正義じゃありませんっ!」 
 盗賊って時点で正義じゃないし。
 リナとゼルガディスは同時にそう思ったが、言っても無駄なような気がしたのであえて突っ込むことはしない。
「………まあとにかく………確かにそれが最有力候補だな。だがそんな薬は聞いたことがないな」
「そうね。あたしもないわ。でもまあ他に思い当たる節もなさそうだし………で、アメリア。それってどんな薬だったの?」
「ええっと………ビンに入ってて、透明な青い薬でした。見たことのない、すごく綺麗な色合いだったんですけど」
「むぅ………それじゃよく分かんないわね………」
「とりあえず一度この町の魔法道具屋(マジック・ショップ)に行ってみるか。何か分かるかもしれん」
「そうね。じゃあさっそく行きましょうか」
 言ってリナはくいっと残っていた香茶を飲み干すと立ち上がった。
 

「透明な青い色の薬、ねぇ………」
 訪れた魔法道具屋で。リナたちの『透明な珍しい青い色の魔法薬、と聞いて何か思いつくものはないか』とゆーとてつもなく曖昧かつ抽象的な問いに、やはりと言うかなんと言うか、店の主人は困ったように呟いた。
「そう言われてもなぁ………青い色の薬ならけっこうたくさんあるから………他にないのかい? 何か特徴とか………」
 言われてリナたちは顔を見合わせた。その薬が原因である可能性が一番高いとは言え、それが原因だとはっきり分かったわけではないのだ。
 どうしようか、とお互いに視線を交わしていると―――
 のーてんきな声がその場の空気をぶち破った。
「いやぁ。なんかリナ………こいつが記憶喪失になっちまったみたいでな。その原因がその薬かもしれないらしいんだ」
 言ってガウリイはぺぽん、とリナの頭に手を置く。
 あまりにあっさりと言ってくれたガウリイに、リナは即座に『正直さんかっ!? おのれはっ!?』とかなんとか叫びつつスリッパで突っ込みを入れようとして―――
「ほう。そいつぁ………譲ちゃん。ちょっと訊いていいか?」
「ほへっ?」
 自分に向けられた店主の声に懐に伸ばしかけた手を止めて間の抜けた声を出した。
「ああ。心当たりがないでもないんでな。
 で、だ。譲ちゃん。自分の名前は分かるか?」
「へ? あ、うん。リナ=インバースよ」
「家族構成は? 故郷は? 年齢は?」
「両親と姉、郷里はゼフィーリア、年は十五………あ、本当は十七らしいけど」
「記憶喪失だってのは何時からだ?」
「今日の朝から、らしいわ」
「じゃあ昨日のこと………あ、いや………譲ちゃんが昨日のことだと思ってること、思い出せるか?」
「え、と。うん。そりゃもうくっきりと。昨日食べたごはんのメニューまで覚えてるし」
 だからこそ余計にまったく実感が湧かないのだが。
「ふむ………で、次はお連れさんに訊くが………昨日、この譲ちゃんはその薬を食べたか飲んだかしたのか?」
「あ、いや………そうじゃなくて、その薬が身体にかかったらしいんだが」
「ほう。それはまた………」
 興味深そうにリナをまじまじと見つめる。
 リナは居心地悪そうに三人を振り返るが、三人としてもどうとも言えずに黙って店主の様子を見守った。
「あのさ。おっちゃん。心当たりあるんならとっとと言って欲しいんだけど」
「ああ、すまんすまん。
 で、だ。端的に言うと心当たりはある。だがそいつは普通飲み薬として使うんだな。身体にかかってもそんな効果が出るんだと思ってな………ちと感心したよ。
 ………っと、ちょっと待ってな」
 そう言うと、店主は奥に引っ込んだ。そしてしばらくして戻ってくると、ことん、とカウンターの上に一本の小ビンを置いた。
 そのビンの中身を見て、アメリアが息を呑んだ。
「それ………!」
「こいつだろ? その譲ちゃんがかぶったってのは」
「そう、それです! 間違いありません!」
 勢い込んで言うアメリア。
 深い青。確かにアメリアが見たことのない色だと言ったのも頷ける。
「この薬は『過去視の薬』と言ってな、記憶を特定の年月戻すための薬だ」
「はあ? 何それ。そんなんあるの?」
「ああ。このあたりでしか採れない花から作る薬でな。花自体も珍しいし、薬はもっと珍しい。作れるやつは少なくとも俺が知ってる中では一人だけだしな。
 ま、特産品みたいなもんだ」
「………でもそんなもんいったい何に使うんだ?」
「んー。まあたいていは記憶喪失の治療用だな。
 たとえばン年前から記憶がないとするだろう? そういう時にこの薬で記憶がなくなる前まで戻せばどうなる?」
「あ………」
「そーゆーこった。でもま、けっこう値が張るからあんまり買おうってなやつはいないけどな」
 店主はそう言って肩をすくめると、薬の入ったビンを近くの棚にひょいと置いた。
 原因がはっきりしたことで、リナたちの間にややホッとした空気が流れる。しかし、今この時重要なことは―――
「………で。もとに戻せるのか?」
「………できると言えばできるが、できないと言えばできないな」
「どういうこと?」
 怪訝そうなリナの言葉に店主は困ったようにポリポリと頬を掻きながら、
「まあ普通、過去視の薬の効果を消す時は特殊な中和薬を使うんだが………今は在庫切れ中でな………ないんだな、これが」
「はっ!? 在庫切れっ!?」
「珍しい薬だって言ったろ? 原料に過去視の薬は青い花を、中和薬の方はそれとは別の赤い花を使うんだが………両方とも砂漠にしか生えないんだ。
 さほどたくさん生えてるってわけでもないし、砂漠にはけっこう危険な怪物なんかが出たりするからな。つまりは稀少なんだよ。
 ついこないだまではあったんだが………ほんの一ヶ月ばか前に売れちまったんだ。
 それに………」
「それに?」
「譲ちゃんは薬を飲んだんじゃなくて薬をひっかぶってそうなったんだろ? そんなことははじめてだからなあ………普通に中和薬で戻るかどうか保証はできないな」
「うにゅうぅぅぅぅうぅぅぅ」
 店主の言葉にリナは唸った。
 それは困る。かなり困る。
 リナとしては記憶がないという感覚があまりないためさほど困らないが………それはあくまでも旅をする上では、である。郷里に帰って、二年分すっぱり記憶がないなんぞということが郷里の姉ちゃんにバレようものなら指差して笑われること請け合いである。
 それははっきり言って遠慮したい。
 とゆーか絶対に阻止せねば。命を賭してでも。
「そうだ。じゃあ俺の知ってるその薬を作れるやつを紹介するよ。
 ウチには在庫はないが、もしかしたらあっちには在庫あるかもしれないし、あの薬に関してはあいつが一番詳しいから、何か良い方法を思いつくかもしれないし」
 リナが俯いて郷里―――むしろ姉かもしれないが―――に思いを馳せていたのを落ち込んでしまったと思ったのか、店主が慰めるように提案した。
 リナたちとしても何もできずにうじうじしているよりは、可能性が低かろうがなんだろうが何かをしていた方がいい。
 四人はありがたくその提案を受けてその魔道士の住んでいるところを詳しく聞くと、礼を言って魔法道具屋を出た。



***********************************

 続きます………次で終わります。というか終わらせます。根性で。
 というか半分くらいはもう書いてるんですけど、かーなーり長くなりそうなのでむりやり削りまくってます。
 それにプロット段階では、小ネタというほど小さくもないエピソードがあったんですけども。それを入れたら絶対に次では終わらないのですっぱり没にしてみたり。
 あとは小ネタをどれだけ削れるかにかかってるんですよね………



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24138Re:Terrible Acerbic Memory 《中編》2002/12/30 23:18:04
記事番号24132へのコメント

> こんばんは。中編です。

こんばんはです。

>「なんであたしこんなとこにいるの?」

それはちょっとですか!?

> その原因の一部―――というかむしろ大部分―――はリナにあるのだが。

というか原因そのものかも・・・・リナが冥王倒しちゃったから・・・・。
まあ、リナにのりうつった金色の王だけど・・・・。

>「外の世界から来た黄金竜(ゴールド・ドラゴン)の巫女に頼まれて異界の魔王『闇を撒くもの(ダーク・スター)』を倒しに行ったんだ」
>「………………………めちゃめちゃ胡散臭いわねー………」

確かに、それだけ聞くと・・・・リナはそう思うよね。

>「そ、そぉ。あの人絡みなの………それはなんつーか………断るなんて言語道断だわね………」
>「…………………………あの………リナさんのお姉さんって………いったい………?」
>「訊かないで。お願い。それだけは」
>『…………………………………………』
> 瞳に恐怖を宿らせてきっぱり言うリナに、三人は沈黙した。

あうっ、なんだかテレビでのリナがピラミッドを造って埋まるシーンを思い出してしまった・・・・!!
あれは、もうとにかく笑けたし。

>「はっ!? 在庫切れっ!?」

そ、それじゃあしばらくこのまま!?

> 四人はありがたくその提案を受けてその魔道士の住んでいるところを詳しく聞くと、礼を言って魔法道具屋を出た。

有力情報ありがと!おっちゃん。

> あとは小ネタをどれだけ削れるかにかかってるんですよね………

削るんですか!うわー、残念です。
それでは、次で最後という事で、がんばってください!!

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24173続きが!!羅琴みつき E-mail 2003/1/1 20:07:40
記事番号24132へのコメント

あけましてvことしもよろしくですv

ちょっと見ない間にこんなに進んでる!!

あの薬は記憶喪失になる―本来は違うけど―ものだったんですね。
私も記憶喪失モノには憧れます。やってみたいなぁ。

記憶を無くしてもやっぱりリナはリナなんですね。
もうアメリア達ともうち解けた、というか自然で。
そして姉ちゃんの最強さが光ってて!!リナには悪いけど、いやむしろ恐ろしいけど、笑えます。

続きが楽しみです☆
でも小ネタも楽しみだから削るのはもったいないですよう>□<。

では、短くてごめんなさい!!

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24174Terrible Acerbic Memory 《後編》柚乃 2003/1/1 21:30:08
記事番号24017へのコメント

 こんにちは〜。
 そしてあけましておめでとうございます。
 続きです。これがラスト。
 ふふふ。終わりましたっ! しかも前とたいして変わらない文量ですっ!
 人間やればできるものだなあと実感してみたり。
 それから、渚さん、羅琴みつきさん! レスありがとうございます! ていうかレス返せなくて申し訳ありませんでした………
 ではではどうぞです。

***********************************



 町の外れのそれなりに立派な屋敷。そこが魔法道具屋(マジック・ショップ)の主人が教えてくれた『過去視の薬』を作れる人物が住むという屋敷だった。
 ごげ。ごげ。ごげ。
 なかなかに愉快な音のするノッカーを鳴らして待つことしばし。
 ………返事なし。
 ややあってもう一度リナがノッカーに手を伸ばそうとした時。
「………はー………い」
 妙にくぐもった声とともにがちゃりと扉が開く。
「どち………けほっ。ら………さま、ですか?」
『………………………………』
 リナたちは思わず沈黙した。
 まあ当然だろう。ノックして出てきた女性が炭のごとくコゲていたら普通は驚く。
 しかもよくよく見れば料理でもしていたのかエプロンをつけていたりする。もっともその下にはかなり重装備の革鎧なんぞを着ていたりするのだが。
 リナは一瞬来てはいけないところに来てしまったような気がしたが、まあ来てしまったものは仕方がない。突っ込むところはそれこそいくらでもあるような気はするが、その辺はひとまず脇に除けておくことにする。
「………あの………あたしたち、ルナンドさんって魔道士がここに住んでるって聞いて来たんだけど………」
「あ、師匠さまのお客さまですか? ええと………ちょっと待っててください。師匠さまに知らせてきますから」
 言ってぱたぱたと足音を響かせて屋敷の奥へと消えて行く後ろ姿を見送ると、その場に微妙な沈黙が落ちた。
「なあ、リナ………」
 その沈黙を破ったのはガウリイだった。
「何よ………? ガウリイ………?」
「あの人、なんでコゲてたんだろうな?」
「………知らないわよ………そんなこと………」
「………なんででしょうね………? ゼルガディスさん………?」
「訊くな………頼むから………」
 こめかみに押さえながら呻くゼルガディス。
 そんなこんなでアホな会話をしていると、またもやぱたぱたと足音を響かせてコゲた女性が戻ってきた。
「師匠さまが会うそうです。案内しますからついて来てください」
 

「あの………ちょっと訊きたいんだけど………」
「はい? なんですか?」
 屋敷の奥に案内されながらおそるおそる口を開いたリナに、女性―――シャルロと名乗った―――はごくごく普通に訊き返す。
「………あなた、なんでその………なんてゆーか………そんな格好してるの………?」
「ああ、ちょっと今、料理してまして………」
『料理………』
 シャルロの言葉に四人はそろって呻く。
「ええ。得意なんですよ? ただ、危険だからあんまり料理はするなって師匠さまには言われてますけど」
 『危険』と称される料理のプロセスっていったい………?
 四人はまったく同じ感想を持った。訊くとコワいような気がしたためあえて口には出さないが。
 ほどなくついたのはそれなりに立派な扉。
「ここが師匠さまのお部屋です。―――師匠さま。お客さまを連れてきました」
「―――ああ。入っていいぞ」
 中から聞こえてきたのはやや渋い男性の声。
 その声を受けてシャルロが開けた扉から四人が部屋に入ると、そこにいたのは年の頃四十代半ば。どう考えても放っておいたら伸びた、といった感のある黒髪を後ろでまとめたなかなかに渋い中年男性が一人。
 その男性―――ルナンドが、部屋に入った五人の方を向き、シャルロに目を止めて―――
「………………………………」
 沈黙した。
「………………シャルロ」
「はい? なんですか、師匠さま」
 こめかみを押さえながら声を搾り出すルナンドに、シャルロはきょとんと問い返す。
「お前また料理………いや、いい。………とにかく、着替えてこい」
「はーい。分かりました。着替えてきます」
 明るく応えてぱたぱたと去って行く足音を見送り―――ルナンドはリナたちの方を向くと、何事もなかったように微笑んだ。
「………ああ、お客人。彼女のことは気にしなくていいから。………で、なんの用かな?」
『いや気にしなくていいと言われても』
 即座に突っ込む四人。
 そのツッコミにもまったく臆さず、むしろ朗らかに、
「はっはっは。この程度のことをいちいち気にしていたら彼女と付き合ってはいられないよ。………で、何の用かな?」
「………ちょっと訊きたいことがあって。
 魔法道具屋のおっちゃんに聞いたんだけど、あなたが『過去視の薬』作ってるんですよね?」
 いち早く立ち直ったのはやはりと言うべきか、日頃からこういった事態に耐性ができまくっているリナだった。なんというか………もぉ『気にしない』ことにしてとっとと本題に入ることにする。
 他の三人はまだ立ち直りきっていないようだが、この際それは無視。
「ああ。そうだよ。何か問題でも起きたのかな?」
「ええまあそんな感じで。実は………」
 リナはざっと状況を説明した。説明の途中でシャルロが部屋に戻ってきたが、リナもルナンドもそちらをちらりと見ただけで気にせず話を続ける。
「………とゆーわけで、とりあえず中和薬が欲しいのと、それで本当に治るかどうかルナンドさんの意見が聞きたいんだけど」
「ほほぉぉう。それはなかなか興味深い話だな。そんな症例は私もはじめてだ」
 リナの説明に興味津々でこくこくと頷くルナンドに、苛立たしそうな声を上げたのはゼルガディスだった。
「で、中和薬とやらはあるのか?」
「ああ………中和薬なら………」
「あるのか!?」
「ない」
 あっさり返された答えに四人はがくぅっと脱力した。
「しかし、私の方から魔法道具屋に渡す時はともかく、魔法道具屋から出荷する時は必ず過去視の薬とその中和薬、セットになっているはずだが。一緒になかったか?」
「え………さあ………アメリア、どうだったの?」
「ええと………そういえば、ビンの入ってた箱にもう一本ビンが入ってた跡がありましたけど………割れちゃってて………」
「はっはっは。それは残念だったなぁ」
 笑いごとかい。
 思わず入れそうになったツッコミをリナはぐっとこらえる。一応この状況をなんとかできるかもしれない唯一の人物なのだ。機嫌を損ねるのはマズイ。
 ………まあこの程度で機嫌を損ねるような人間ではないような気がするが。なんとなく。
「………じゃあとりあえず話を変えるけど………中和薬で治ると思う?」
「そうだな………」
 のーてんきな笑いを収め、顔つきをまじめなものに変える。こうしていると、先程までのアホっぽさが嘘のようにまともである。
 ややあってルナンドは顔をアメリアの方へ向けると、
「お嬢さんに訊くが、その薬をどれくらいの量かぶった?」
「んと………これくらいの………」
 言ってアメリアは手で大きさを示す。
「大きさのビンにいっぱい入ってて、そのほとんどを被りました」
「色の濃さはどれくらいだった?」
「え? えーと………あんまり考えたことなかったですけど………魔法道具屋で見せてもらったのとそっくりでしたけど」
「と、なると………量から考えても原液だな。
 しかしそうすると、二年分しか記憶が戻ってないってのはやっぱ効力が薄れてるんだろうな」
「どういうこと?」
「記憶を戻す時にはな、薬の濃度と量でどれだけ戻るか決まる。お嬢さんが被った分を少なく見積もったとしても、完全に薬の効果が出てれば二、三十年分戻ってるはずなんだ。
 この薬は体内に吸収して働く薬だから………たぶんお嬢さんの場合、皮膚から吸収したんだろう。まあ普通は直接飲むんだが。
 とにかく、そのせいで薬の効き目が弱まったんだろうな」
「はあ、そうなの………」
「で、本題だが。ま、たぶん中和薬で治せると思う。吸収した分以上の中和薬を体内に吸収する―――ま、つまりは飲むってことだな。そっちのお嬢さんがどのくらいかかったかは覚えてるようだし、それ以上飲めばまあ確実に治るだろう」
「それ以上飲めば………って、そんな余分に飲んじゃって大丈夫なんですか?」
「ああ、中和薬自体は本当に効き目を中和するためだけのものだからな。体内に過去視の薬がなければ苦いだけで無害だ」
「………………苦い?」
「うむ。そうとう苦いらしいな。私はコワくて飲んだことはないが。
 前に試しにシャルロに飲ませてみたらあまりの苦さに倒れたが………まあたいしたことはない」
『待て』
 リナとアメリア、ゼルガディスの声がハモった。
 ちなみにガウリイはと言えば、話についてこれていないのかひたすらぼ―――っとしていたりする。
「それの何処がっ!! たいしたことがないのよっ!?」
「身体に害はないから心配はいらないが? シャルロも一日寝込んだが次の日には全快したし」
「………あの時は本気で死ぬかと思いましたが」
 ぼそり、と呟くシャルロにリナは恐ろしげな視線を送る。
「で、でも今は中和薬ないのよね? じゃあ治すのは無理ってことで………」
「確かに今はないが………原料さえあれば一日で作れるが? 原料に関してはいつも魔法道具屋で仕入れているから、そこで訊いてみるといい。
 砂漠に年中自生している植物だから、探すのは大変だろうが、見つけるのは不可能ではないだろう」
 頬に一筋の汗を流しつつ固まっているリナの肩をぽん、と誰かが叩いた。リナがゆるゆるとそちらを振り向くと、アメリアの悟ったような笑顔とぶつかった。
「リナさん………諦めてください。これも正義のためです」
「リナ。諦めろ。まあ死ぬことはないだろう」
「よく分からんが………まあ頑張れ」
「あんたらはぁぁぁぁぁ!! 他人事だと思ってぇぇぇぇぇぇ!!」
 リナはかなり本気で絶叫した。
「ああ、そうだ。
 最低必要な量はだいたい大きめのを五、六本。でもあればあるだけ採ってきてもらえるかな。余分に採ってきた分だけ代金を負けてあげよう」
 のほほーんとしたその言葉に。
 リナはもはや突っ込む元気もなかった。


 その日。
 リナはひたすら不機嫌だった。
 と、いうよりは、ここ数日リナはずっと不機嫌だった。
 理由はもちろん、死ヌほど苦いという薬を飲まなくてはいけないからだ。
 その話を聞いてからリナはめっきりやる気をなくし、かと言って姉のことを考えるとこのままというわけにもいかず。
 ひらたく言うと、リナは完璧にくさっていた。
 数日前、ルナンドの屋敷を出た四人はその足で魔法道具屋に向かい、薬の原料となる植物のことを詳しく聞き、その次の日から三日ほどかけてガウリイとゼルガディスの二人が砂漠で植物の採集をした。
 ちなみにリナとアメリアは留守番である。
 くさりまくっているリナとしては、自分からくそ苦い薬を作る手助けなどしたいと思うはずもなく―――リナは植物の採集には絶対行かない、と言い張り、その間リナを一人にしておくわけにもいかないだろうとアメリアも町に残り―――
 結果として、リナとアメリアが町で留守番、ガウリイとゼルガディスが砂漠で植物採集、という二組に分かれることになったのだ。
 そして今日。
 昨日渡した―――三日でこれだけ集められるとは、とずいぶん驚いていたらしいが。まあその辺はガウリイの野生の勘の賜物と言うかなんと言うか―――材料から苦〜い中和薬ができるはずなのだ。
 そのことを思うだにリナの憂鬱さは朝から増していくばかりである。
 はああぁぁぁぁぁ………
 リナは本日何度目か分からない溜め息を吐いた。
 と、その時。ひたすら元気な―――しかし今のリナにとっては余計に気が滅入るだけの―――声が宿に響き渡った。
「リナさ―――ん!! 中和薬受け取ってきました―――っ!」
 ここ数日聞き慣れた―――しかし今は一番聞きたくない声と言葉に。
 リナは思わず机に突っ伏した。
 ばたばたばたっ、という音とともに人が近付いてくる気配がする。ほどなくどばたんっ! という景気の良い音とともに部屋のドアが開き―――
「………リナさん、なにやってるんですか?」
「逃げよーとしてんのよっ! 悪いっ!?」
 窓枠に足をかけたままの姿勢でリナはアメリアに怒鳴り返す。
 その様子をアメリアから少し遅れて部屋に入ってきたゼルガディスとガウリイが呆れたように見ていた。
「………今さらだろう。だいたいもう諦めたんじゃなかったのか?」
「やっぱりヤなもんは嫌なのよっ!! あたしまだ死にたくないしっ!!」
「………その気持ちは分からんでもないが………仕方ないだろうが。
 それにまあ、たいした量じゃないから一息に飲めばそれほどは………」
「ゼルガディスさんの言うとおりですっ! こんなもの正義の心さえあれば一息にぐびぐびぐびっといけちゃいますっ!!」
「死ぬわけじゃないんだろ? ならいいじゃねーか」
 一応同情は示しているが言動そのものはおもいっきり他人事のゼルガディスに無責任な発破をかけるアメリア、何も考えていないのがまる分かりなガウリイ。
 三人のセリフにリナが一瞬殺意にも似たものを感じてしまったとしても―――誰にも責められはしないだろう。


「………で、これを飲まなきゃいけないわけなのよね………」
 結局逃げるのは諦め―――死ヌほど苦い薬を飲むか、郷里の姉ちゃんに指差して笑われるか。リナは迷わず前者を取った。………それでも逃げようとしていたあたり、リナの嫌さ加減がうかがえるが―――それはさておき。
 リナはコップに入った液体をじっと見つめていた。
 綺麗な赤い色。
 原料となった花も鮮やかな深紅だったが、今コップに入っている液体はそれよりもさらに澄んで鮮やかな深紅を見せている。
 魔法道具屋で見た青い色の薬と並べたら深い青と深い赤でさぞや綺麗に映えるだろう。
 しかし、である。
 どんなものでも、その時の気分やら何やらで受け取る印象が180°変わってしまうという典型が今このときのリナであった。
 今からこの薬を飲まなくてはならず、なおかつ、それがひたすら苦いことを知っているリナとしては、どんな綺麗な赤色も、毒々しく苦そうな警戒色、としか思えない。
「リナさん。飲まないんですか?」
「………飲むわよ………ただちょっとなんていうか心の準備が………」
「何を言うんですっ!? さくっと飲んでしまえばいいじゃないですかっ!」
「………じゃああんた飲んでみる………?」
「う゛………………」
 ジト目で呟いたリナの言葉に、アメリアが呻いてふぃっと視線を逸らす。ガウリイとゼルガディスも視線を合わさないようにそっぽを向いている。
 それをリナはちょっとばかし据わった目で眺め―――はあぁぁ、と溜め息を吐いて再びコップに視線を落とした。
「………しかし、アメリアのセリフじゃあないが、いつまでもそうしているわけにもいかんだろう」
 そのとおりである。ゼルガディスの言葉はまったく、一分の狂いもなく正論である。
 ………うしっ。覚悟を決めた。
 リナは心の中で自分に渇を入れると、コップに入った液体をいっきに呷った!
『おおおおおおおお!』
 三人の感嘆の声をBGMにリナは薬を飲み干し―――次の瞬間。
「はうっ。」
 リナはあまりの苦さに卒倒した。


「あうあうあうぅぅぅぅぅ。きぃもぉちぃわぁるぅいいぃぃぃぃ」
 今日もリナはベッドの上で呻いていた。
 リナは記憶を失くしていた数日間をまったく覚えていなかった。後でルナンドに聞いたところによると、中和薬は過去視の薬を飲む―――リナの場合はかぶる―――前の状態にリセットするわけで、それは当たり前―――らしい。
 そのため、リナとしては十日ほど記憶が綺麗さっぱりなく、何故か突然めちゃめちゃ苦いものを飲んだかのような―――実際そのとおりなのだが―――気持ち悪さを味わっているのである。
 ちなみにリナは三日ほど寝込んでいた。
 そしてやっと目が覚めたのが昨日。それからずっとこの調子である。
 アメリアとゼルガディスも最初こそ心配していたが、気持ち悪いだけでそれ以外は本当に全然害がないことが判明すると、それからはほとんど心配もしなくなった。ただガウリイだけはそれでも一応心配してリナの側について話し相手になったりしているが。
 余談だが、ゼルガディスが聞いたところによると、以前シャルロが試しに飲んだのはお猪口に一杯程度。それで一日寝込んだのだから、今回コップ一杯分飲んだリナは………
 リナの耳に入れたらそれはもう恐ろしいことになるような気がしたのでゼルガディスはそのことはリナには―――いつぽろっと言うか知れないのでガウリイにも―――知らせていない。
 リナにその間の記憶はまったくないが、それでも三人からだいたいの説明はされ、状況は把握していた。
 しかしそれが分かったからといって気持ち悪さがなくなるわけではまったくなく―――
「もぉ嫌〜〜〜〜。なんであたしがこんなメに合わなきゃなんないのよ〜〜〜〜〜」
 リナはひたすら泣きそうな声で呻きまくっているのだった。


 数日後。
 リナが回復し、とっとと出発しよう、というリナの強い要望もあって、四人はそろって町を出た。
 そして町を出るリナの荷物の中には―――
 深い赤色をした液体の入ったビンがこっそりと入っていた。
 それをリナが何処でどういうふうに使うつもりなのかは―――
 世の中には知らない方が良いこともある、ということであろう。


                              END

***********************************

 終わりました〜。
 ここまで読んでくれた方には感謝! ですv
 前でも言いましたけど、だいぶ削ってます。
 えーと。プロットの段階ではリナは、数日後にまたもや記憶を失くして七歳まで退行してしまう予定でした。
 んでもって見知らぬ三人と部屋を見て『さては誘拐っ!? あたしを攫ってもうちは身代金なんか出さないわよっ! まじでっ!!』と騒ぎまくる。
 まあこれは完璧に趣味で………というかこの話自体趣味みたいなものですけど。リナの子供時代って想像すると楽しいような気がしたので。きっと全然変わってないんだろうなー、と。 
 でもそのエピソードを入れたらひたすら長くなる気がひしひしとしたので没。
 あと、削った小ネタとしてはガウリイとゼルが花探しに行っている間のリナとアメリアはどうしていたか。
 考えていたものとして、リナとアメリアは呪文の相互干渉の研究を二人でしまくっていたとか、シャルロさんの爆発料理は某SF(?)小説のミ○ィのごとくめちゃめちゃ美味しいとか、いったいどうやって作っているのかと実際の料理現場に潜入(笑)したアメリアが大破壊(?)に巻き込まれるも持ち前の超合金さで即時復活したとか。
 その辺のこと全部書いたら楽勝で後編が上下編以上に分かれそうだったのでまとめて没にしました。
 シャルロさんに関しては没にしたところでけっこう出てくる予定だったので、いっそのこと存在ごと抹消してしまおうかとも思ったんですけど。一応SPのノリを目指していたので、一話に一人は『変な』キャラを出しておこう、という思いから存在抹消は免れました(笑)
 とまあ削ったところはこんな感じです。
 けっこう削りまくってますね………
 どなたかこの辺の削ったネタをちまちまっと書いてみたりしませんか?(←オイ)

 は。気付いてみたらあとがきがめちゃくちゃ長くなってるし。
 こんなところまで読んでくれている奇特な方。ありがとうございます。
 感想などいただけると本人すっごい喜びます!!
 ではではっ。



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24180Re:Terrible Acerbic Memory 《後編》エモーション E-mail 2003/1/1 23:17:10
記事番号24174へのコメント

こんばんは。
旧年中はお世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。m(__)m

2日ほど開いたあいだに、中編と後編が……。一気読みしました。
中編、「姉ちゃんの命令」ですべて納得するリナが、面白かったです。
また、忘れていてもガウリイとのやりとりなどは変わらないのも良かったなと
思いました。一応ガウリナ推奨派なので。

後編、シャルロさんはやっぱりミ○ィですか!(爆笑)
お話のカットされた部分は残念ですが、その分それを妄想してました。
そして苦い記憶……。「良薬、口に苦し」と言いますしね(笑)
気分としては「2日酔いのかなり酷いもの」が近いのかも。
目が覚めたら数日経っていて、その状態……。リナちゃん、今回は不運でしたね。
……リナに付き添っているガウリイ……愛ですね、愛です!
そしてラスト、一応の説明は受けたのでしょうけれど、残った薬をどうするのか、
色々想像してしまいました。

楽しく読ませていただきました。
削った部分、番外などの形で読みたいです。

次の作品を楽しみにしています。
では、拙いコメントですがこれで失礼します。

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24195こちらこそ今年もよろしくお願いしますv柚乃 2003/1/2 17:48:41
記事番号24180へのコメント

 こんにちは。レスありがとうございますv

 
>中編、「姉ちゃんの命令」ですべて納得するリナが、面白かったです。

 納得するほかないでしょう。これに関しては(笑)

>後編、シャルロさんはやっぱりミ○ィですか!(爆笑)
>お話のカットされた部分は残念ですが、その分それを妄想してました。

 それは正しい態度です(オイ)
 カットした部分に関してはこんなこともあったんだーと想像していただければ、と思っていたので。

>そして苦い記憶……。「良薬、口に苦し」と言いますしね(笑)
>気分としては「2日酔いのかなり酷いもの」が近いのかも。
>目が覚めたら数日経っていて、その状態……。リナちゃん、今回は不運でしたね。

 二日酔いのかなりひどいもの………というレベルではないと思います。たぶん。なんと言いますか………それこそ言葉では言い表せないくらい、とか?
 スレイヤーズの中ではリナが一番好きなんですけどねー。何故かリナが不幸になってる。何故でしょう(笑)
 よく気に入ったキャラが不幸に見舞われる、と言いますが………本当にそうかも、とか思ってみたり。

>そしてラスト、一応の説明は受けたのでしょうけれど、残った薬をどうするのか、
>色々想像してしまいました。

 とりあえず一番ありそうなものとしては『あんたらも飲んでみろ』とか言って他の三人に飲ませる、とかやりそうですね。リナのことだから。

>削った部分、番外などの形で読みたいです。

 番外編………書いてみたい気もしないでもないですけど………どうでしょう。


 ではではっ。この辺で失礼します。
 またよろしくお願いします!



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24184Re:Terrible Acerbic Memory 《後編》2003/1/2 00:15:43
記事番号24174へのコメント

> そしてあけましておめでとうございます。

あけましておめでとうございます。

> しかもよくよく見れば料理でもしていたのかエプロンをつけていたりする。
>もっともその下にはかなり重装備の革鎧なんぞを着ていたりするのだが。

料理で炭まみれ・・・・?
しかも鎧を着て・・・・いったいどんな料理を作るんだ!!

>「ええ。得意なんですよ? 
>ただ、危険だからあんまり料理はするなって師匠さまには言われてますけど」
> 『危険』と称される料理のプロセスっていったい………?

得意だけど、危険・・・・。う〜む・・・・またもや頭を悩ませる・・・・。

>「………ああ、お客人。彼女のことは気にしなくていいから。………で、なんの用かな?」
>『いや気にしなくていいと言われても』

気になります!!

> いち早く立ち直ったのはやはりと言うべきか、日頃からこういった事態に耐性ができまくっているリナだった。

耐性ができていて、うれしいのやらなんのやら。

>「はっはっは。それは残念だったなぁ」
> 笑いごとかい。

まるっきり人事だな。

>「記憶を戻す時にはな、薬の濃度と量でどれだけ戻るか決まる。お嬢さんが被った分を少なく見積もったとしても、完全に薬の効果が出てれば二、三十年分戻ってるはずなんだ。

二、三十年だったら、リナ生まれてないけど・・・・。

>「うむ。そうとう苦いらしいな。私はコワくて飲んだことはないが。
> 前に試しにシャルロに飲ませてみたらあまりの苦さに倒れたが………まあたいしたことはない」

倒れたって・・・・そんなに苦いのか・・・・。
リナ我慢できるかなー。

>まあその辺はガウリイの野生の勘の賜物と言うかなんと言うか―――
野生の勘・・・・侮りがたし!!

>「はうっ。」
> リナはあまりの苦さに卒倒した。

リナでもやっぱ倒れたか・・・・。ちーん。

>シャルロさんの爆発料理は某SF(?)小説のミ○ィのごとくめちゃめちゃ美味しいとか、

確かに、ミ○ィ見たいに毎回爆発させてたら、危険っていうレッテル貼られますね。

> こんなところまで読んでくれている奇特な方。ありがとうございます。

おもしろかったですー。
リナが最後あの薬をどう使うかは、いろいろと想像してしまいました。
それでは、良いお年を。

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24196良いお年を。柚乃 2003/1/2 18:00:01
記事番号24184へのコメント

 こんにちは。レスありがとうですv
 しかもなんと全編にわたってレスをいただけるとは………! 感動しきりです。
 
 今回の話は完璧に趣味に走った話だったので、面白かったと言っていただけるととっても嬉しかったり。
 最後のあの薬についても、その後どうなったの? 的な終わり方をして、読んでる方にいろいろ想像してもらう、っていうのを一回やってみたかったので入れたんですし。

 ではではっ。
 またそのうち投稿すると思うので、またその時もよろしくお願いしますね♪
 それではこの辺で失礼します。



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24234読ませていただきましたっ!にゅーよーく E-mail 2003/1/3 18:50:03
記事番号24174へのコメント

はじめまして。
にゅーよーくといいます☆

始めにリナがヘンな物かぶった時何もおこらなかったので
「あれ?」
と思ったのですが…。
まさか夜が明けてから効果が出るとはッ!
恐るべしッ!
私の頭には超新鮮な展開でした…♪(まて)
シャルロさんには驚かされました。
出てきたときまさかミ○ィ?などと本気で思いました。
すいません…バカで。
リナの記憶を戻すための薬…。
よく飲みましたね(^_^;)
数日後というのが実際に何日間だったのが気になります。(そこかい)

それでは。
ノリがよくておもしろいお話でしたv
妙な感想な上の短くてすみません…。(TT)
がんばってくださいなにゅーよーくでした☆

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24251ありがとうございますっ!柚乃 2003/1/4 16:56:24
記事番号24234へのコメント

 はじめましてこんにちはっ!
 レスありがとうございますv


>始めにリナがヘンな物かぶった時何もおこらなかったので
>「あれ?」
>と思ったのですが…。
>まさか夜が明けてから効果が出るとはッ!
>恐るべしッ!
>私の頭には超新鮮な展開でした…♪(まて)

 朝起きたら見知らぬ人が! リナちゃんびっくり。という展開のをやってみたくてそうしたので、自分的に満足していたりします(笑)

>ノリがよくておもしろいお話でしたv

 そう言っていただけると………! 感動です〜!
 一応SPのノリを目指してみたんですけども。成功しているでしょうか………?

>がんばってくださいなにゅーよーくでした☆

 ありがとうございます〜。
 いろいろと書きたいネタはあるんですけどね。なんだかやたら長くなりそうなのが………
 しかも最初と最後、あとは途中のエピソードいくつか、という感じでなんというか………つなぎが苦手なため途中で詰まりそうな予感(オイ)

 でもでも。がんばってと言われるととっても励みになりますv
 今度何か書いたときもぜひともまたレスしてくださいね!

 ではでは。この辺で失礼します。