-花さそふ 嵐の庭の 雪ならで・・・-鷹見 葉月(4/25-13:42)No.2440
 ┣〜酒>sake.utage<宴〜    <前編>-鷹見 葉月(4/25-14:01)No.2441
 ┃┣〜酒>sake.utage<宴〜    <後編>-鷹見 葉月(4/25-14:22)No.2442
 ┃┃┗Re:〜酒>sake.utage<宴〜    <後編>-さぼてん(4/25-21:18)No.2456
 ┃┗Re:〜酒>sake.utage<宴〜    <前編>-さぼてん(4/25-20:32)No.2454
 ┣SAKURA  〜PART1〜-鷹見 葉月(4/25-14:39)No.2443
 ┃┗SAKURA  〜PART2〜-鷹見 葉月(4/25-14:48)No.2444
 ┃ ┗SAKURA  〜PART3〜-鷹見 葉月(4/25-14:59)No.2445
 ┣Re:花さそふ 嵐の庭の 雪ならで・・・-さぼてん(4/25-19:55)No.2450
 ┃┗さぼてんちゃんへ♪-鷹見 葉月(4/26-14:43)No.2468
 ┣Re:花さそふ 嵐の庭の 雪ならで・・・-松原ぼたん(4/25-20:48)No.2455
 ┃┗松原さまへ♪-鷹見 葉月(4/26-14:52)No.2469
 ┗Re:花さそふ 嵐の庭の 雪ならで・・・-一姫 都(4/26-21:41)No.2483


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2440花さそふ 嵐の庭の 雪ならで・・・鷹見 葉月 E-mail 4/25-13:42

こんにちは〜。
最近全然ここに顔をだしていなかったので、はじめましての方が多いかも・・・。
では、改めて自己紹介。
私がここに小説載せると、何故か毎回のように○日でツリーに問題が起こるという疫病神です。
とは言っても・・・ここには一編を何回も入れていただけですけど・・・。
今回はその問題作の『酒宴』と、『SAKURA』を載せさせて頂こうと思っています。

『酒宴』のほうは、おちてしまったので再掲示・・・に近いです。
一応一編書き直して、簡単に直しましたが・・・。
某所で『一回読んでもらった人にももう一度楽しんでもらえるようにたくさん直すつもりです♪』なんて言いましたが・・・。
有言・・・不実行・・・かな?(笑)
笑ってすませられる問題ではありませんね。
ごめんなさい、時間と力量不足でした。m(_ _)m

『SAKURA』のほうはオリジナルです。
いいんでしょうかね〜ここ一応スレイのページなのに・・・。
生徒会の機関誌を作っている時に、暇つぶしとして作った「投稿コーナー」に原稿が集まらなくて、部下や友人達にひ
たすら描かせたのですが、そのうち一枚が無駄になってしまって、そのお詫びにと部下178のサークルにあげるという
約束で書き始めたものです。
ちなみに私は同人活動は爬虫類よりお近付きになりたくなかったのですが・・・(泣)
あ、嫌いではないですし、否定派でもないです。
ただ自分が関わりたくなかっただけで・・・。
友人曰く『わけわからん上に、テーマがずれている』というモノです。
しかも、『あ、最後は○○○○○○○ね』ってあっさり・・・(泣)
実は7章構成で、全部読み終わると詩が一編できるという妙な小説の第一章です。
つまり、続きがある・・・と。
でも気がついたら↑の『酒宴』と同じぐらいながくなっていたです・・・(^^;;;

あ、すっごいすっごい余談なんですけど、どなたか聞いてください。
知り合いが『ジュニア小説講座』というシロモノのチラシを持って来たんです。
テキスト制作に折原みとさんとか・・・まぁ、俗に言う少年少女が読むような感じの人がいたようなのなんですけど・・・。
その講座のなかに、書いた小説を添削して送ってくれるということも含まれていたんです。
『それにすごい同性愛の小説を送ったら、どんなコメントが返ってくるか?』
それがうけまくってしまって、皆でやろうという話になりかけたんですが・・・3万円近くしたので挫折しました。
でも、あとから考えてみて、皆でアイディアを出しあっても書くのは私だという事に気がついて、やめてよかったと思い
ましたが・・・。
さて・・・実行に移していたら、どんなことになっていたでしょうねぇ・・・。(笑)
はうっ・・・なんだか超余談でした。
でも聞いてほしかったんですよう・・・。(涙)


まだこのコメントのタイトルも、どこからどこまでを区切って載せようかも決めていないのですが(おい)・・・。
というか・・・まだWordも起動していない・・・。( ~^)⌒〇☆(×_×)
この改行に合うように直してから載せたいな・・・とか思ってます。
だから、結構時間がかかるかもしれません。
今日中にはなんとかしますけど・・・。

なんだか脇道にそれてしまいましたが・・・これから小説を読んでくださるという方へ。
まだ少し早いですが、心よりお礼を申し上げます。
この話を読んでくださったすべての方々に、この話を捧げます。
あと、毎度のことですが、メールや私書箱に直接配布します。
ファイル形式など、ある程度までは調整できると思うので(なんと雑誌についていたCD−ROMにそういうソフトが入って
いた)気軽にメールや私書箱の方に連絡ください。(もちろんテキストでもいいです)


件名は百人一首から好きなものを選んで来ました。
『花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり』
綺麗な・・・でも少し悲しい感じがしますよね。


ではでは。




鷹見 葉月







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2441〜酒>sake.utage<宴〜 <前編>鷹見 葉月 E-mail 4/25-14:01
記事番号2440へのコメント


〜酒>sake.utage<宴〜




コーヒーを一口すすると、彼はため息をついた。
「どうしたの、ゼロス?
辛気臭い顔して…」
栗色の髪の魔道士が、彼の前の席に腰掛けながら尋ねた。
「疲れがたまってしまったようです」
彼はリナに向かって苦笑した。
事実、彼は疲れていた。
彼が彼の上司から受けた命は体を壊してもおかしくないほどの激務であった。
だが、親愛なる上司様の御手を煩わせる訳にもいかず、日々こうやって頑張っているわけなのだが…。
(誰かから強引に『負』の感情をいただきましょうか…?)
こんな考えが自然と心に浮かんでくるほど、彼は疲れていた。
リナがいなければおそらく実行に移していたであろうその考えを、彼は強引に振り払った。
(今、余計な不信感を持たれるわけにはいきませんからね…特にリナさんには…)
そう考えると、彼は再びため息をついた。
そんな彼の様子を眺めていたリナだが、何を思ったのか突然大声を張り上げる。
「おっちゃ〜ん、お酒ふたつ〜」
しばらくして運ばれてきた二つのカップを指差しながら、彼はリナに尋ねた。
「…二つも飲むのですか?」
「なぁに言ってるのよ。
あなたも飲むのよ」
少し呆れ気味にそう言って、リナはカップを彼の手に押し付けた。
「すみませんが、今はそういう気分では・・・」
「悩み事があるときは、ぱぁっとお酒でも飲んで寝るのが一番よ」
リナは彼の言葉を遮ってこう言うと、パチンと片目をつぶってみせた。
(それは人間だけなのでは…)
という言葉を彼は喉元近くで押し返した。
(反論するだけ疲れるだけですよね)
そう思うと、彼はカップを一つ手に取った。
「乾杯〜」
二つのカップが触れ合って、軽い音をたてる。
そして、片方のカップの中身はほとんどリナの口の中に消える……はずだった。
「おや、リナさん…。
お酒、飲まないのですか?」
彼はリナが自ら注文した酒に少し口をつけただけの理由を尋ねた。
「のむわよっ」
リナはいやにムキになって反論をしてくる。
(もしかして…)
まるで子供の悪戯を見つけた親のように、彼は微笑んだ。
「お酒…苦手なんですか?」
「人の好意を踏みにじるような事を言うんじゃないわよ」
少しすねた顔がいつもにも増して可愛らしく思えて、彼はまた微笑んだ。
(そういえば…今朝もこんな顔をしてましたっけ…)
お酒を口に含みながら、彼はぼんやりと思い出した。


『なぁ、リナ…』
『なぁに、ガウリイ?
食べている途中に…』
三つ目のチキンソテーセットの最後の一口を飲み下してから、リナは顔をあげた。
『お前のねーちゃんって…胸大きいのか?』
『な…なななななっなにっっ?!
何をいきなりっ?!』
口に食べ物が入っていたら間違いなく吹き出していたであろう勢いで、リナは驚いた。
『いや…お前のムネが小さいのは、親譲りかと…』
『な、なんだ…そんなこと。
わたしのムネが小さいのは…小さい?!』
リナの瞳に殺意の炎が宿る。
『あなた、わたしに喧嘩売っているの?』
『いや…ちょっと興味を・・・』
『売られた喧嘩は…買わないと失礼よね…』
リナはガウリイの言葉を遮ってこう言うと、呪文を唱えはじめた。
『黄昏よりも暗きもの…。
血の流れよりも紅きもの…』
『うわっ、ちょ、ちょっと待て、リナ!!』
『時の流れにうずもれし…。
偉大なる汝の名において…』
『俺が言いたいのはな…』
『我、ここに闇に誓わん…。
我らが前に立ちふさがりし、すべての愚かなる者に…』
『だ…・だから、最後まで人の話を聞けっ!!』
『我と汝の力もて・・・』
『リナ、お前の…』
『等しく滅びを与えんことを!!』
『胸が小さくて、何が悪いんだよっ!!』
『悪いわよっ!!
悪党どもに『ぺチャパイ』だの『胸無し』だの言われるしっ…!!
それに、女の子にとって、胸がないのがどんだけ辛いのか…あんたにはわからないでしょうね!!』
ガウリイの意外な言葉に、おもわず呪文を中断して言い立てるリナ。
『それの何が悪いんだ?』
『だからっ…』
『胸が小さいからと言って、誰かに嫌われた事でもあるのか?』
リナの言葉を遮って、あっさりと言うガウリイ。
『…ないわよ』
『なら、いいじゃないか』
『悪いわよっ』
リナの言葉を無視して、ガウリイは続ける。
『少なくとも、俺はお前の胸が小さいからって、保護者やめたりはしないよ』
『う…うるさいっ!
そんなことどうでもいいわよっ!!』
こころもちが顔を赤らめて、そっぽを向くリナ。


(この時もこんな顔してましたっけ…。)
そんな事を思い出しながら、彼はまた一口お酒を口に含んだ。
(でも…同じような顔でも…含まれている感情は違いますね。)
ガウリイさんの場合は、嬉しさとも呼べる感情をを紛らわすためわざと反対の行動をとったのに少し感情が表に出ている顔。
僕の時は、自分の気持ちを美化してとられそうになったのを照れている顔。
前者は、特別な感情を持っている故の顔ですね。
後者は…僕の場合は、ただ照れただけですね。
特別な感情…人が『恋』や『愛』と呼ぶものでしょうか…?
そうなると、リナさんはガウリイさんに恋愛感情を持っている事に…。
そこまで分析すると、彼はくすっと笑みを洩らした。
(何を考えているのでしょうね、一体。
これではまるで、ガウリイさんにやきもちを焼いているようではないですか…)
「なに一人でにやにやしてるのよ?」
からかうようなリナの声に、さらに笑いが込み上げてくる。
「いえ…リナさんはガウリイさんの事をどう思っているのかな…と」
「なによ、いきなり?」
突然思いもよらないことを言われて、少し間が抜けた返事を返すリナ。
彼は笑みを消すと同じ事を、再びリナに問いかける。
「リナさんは、ガウリイさんのことをどう思っているのですか?」
「別に…なにも」
無関心な声で、リナは答える。
(どうやら自分でも気付いていないようですね…)
そう踏んだ上で、さらに彼は問いかけた。
「では、嫌いですか?」
リナは彼から少し視線をずらして、酒を口に含む。
「嫌いな人と一緒に旅が出来るほど、わたしは寛大じゃないわ」
「じゃあ、僕の事も嫌いではないのですね?」
彼の問いにリナは視線を元に戻すと…つまり、彼に合わせるとこう答えた。
「少なくとも、一緒にいて嫌悪感を感じるこをはないわ。
でも…嫌いじゃないから好きだというのは少し短絡的じゃない?」
リナの言葉に、彼は頷いた。
しかし、引き続き問いかける。
「では、ガウリイさんの事も『嫌いではない』ですね」
「そうよ」
「では…僕と同じように、『嫌いではない』というだけですか?」
彼はリナの瞳をのぞきこむように見つめた。
「それは…」
「違うでしょう?」
リナに確認するように、彼は尋ねた。
リナは数瞬考え込むと、小さく頷く。
「それは、ガウリイさんが特別『好き』なのですか?
それとも、僕が特別『嫌い』なのですか?」
「それは…」
続ける言葉を見つけられなくて言葉に詰まるリナ。
そんなリナを見つめながら、彼は思った。
(『好き』だから…その事実を認めたくないのでしょうか?
僕には…魔族には理解できない感情ですね…)
そう考えると、彼はリナにこう言った。
「答えたくないのならばいいですよ、リナさん。
でも、自分の問題です。
いつかきちんと見つめてみて下さいね」
リナからは返事がない。
(おやおや…ついに無視されてしまいましたか)
彼は苦笑した。
そして、再び酒を一口口に含むと、彼の事を一度も無視したことのない人物を思い出した。
(あの御方は…今ごろどうなさっているのでしょうか?)
彼は、彼の上司と最後に会ったときのことを思い出した。


『ゼラス様…お呼びでしょうか?』
私室に現れた彼は、寝椅子に寝転がりながら頬杖をついて酒を飲んでいるゼラスを見て、少し首をかしげた。
(ゼラス様が、お酒を飲んでいらっしゃる…?)
彼の上司は酒があまり好きではないはずだった。
しかし、もう血のような色のワインは瓶の半分ほどに減っている。
『ゼロス…もっと近くに来てくださいな』
『…わかりました』
彼は寝椅子の近くまで歩いてから、跪く。
『もっと近くに、です』
少々不機嫌なゼラスの声に応じて、彼は寝椅子の足元まで移動した。
『もっと、近くに』
もっとを強調して言ったゼラスに、ゼロスは言葉を選びながら応じた。
『お言葉を返すようですが…ゼラス様。
これ以上近くにはよることができません』
彼の言葉を聞くと、ゼラスはグラスを放り投げた。
カシャン。
グラスは軽い音をたてて割れる。
シャラン。
身につけたアクセサリーを鳴らして、ゼラスは立ち上がった。
長い衣の裾を引きずっているのにも構わず、彼の後ろまで歩み寄った。
そして、彼の腕をつかむと…。
『立って下さいな、ゼロス』
彼が立ち上がると、ゼラスは彼を自分と向かい合わせる。
そして、にっこりと微笑んだ。
『獣王様…あの…』
どんっ。
ゼラスが彼を思いっきり突き飛ばした。
彼は反動で寝椅子に転がる。
ゼラスは彼の膝に乗るようにして、寝椅子に座る。
『ゼラス様・・・?
あの…酔っていらっしゃるのでは?』
彼はゼラスのあまりにも日頃とかけ離れた行動に、思わずこう尋ねた。
『いえ…酔ってはいませんよ』
その言葉に、彼はゼラスに気を配りながら座り直すと、理由を尋ねる。
『では、一体どうなさったのですか?』
シャラン。
ゼラスが腕を上げた。
つけられたいくつもの腕輪がお互いにぶつかり合って、美しいが無機質な音をたてる。
シャラン。
ゼラスは彼の首に手を回した。
『行ってしまうのですね、ゼロス…』
ゼラスは彼の瞳を見つめた。
『ええ…貴女の命令ですから…』
彼はためらいがちに頷いた。
『体に気をつけて…。
私のもとへ、必ず帰ってきてくださいね』
『帰ってまいります、ゼラス様。
何があろうとも、必ずゼラス様のもとへ帰ってまいります。』
ゼラスは彼の肩に顔を押し付けた。
『もし…もしあの時のように怪我をしてしまったらと思うと…私は怖くてたまりません』
『ゼラス様…。』
彼はゼラスの肩に手を回した。
彼にはそうすることしか思い付かなかった。
肩を少し震わせて泣くゼラスを抱きながら、彼は自分の中にある矛盾を再確認していた。
彼にこれだけの力がなければ、ゼラスもこのような命をだすことはなかったであろう。
しかし、これだけの力があるからこそ…自分に限りなく近い者だからこそ、ゼラスは彼のことをとても大切に思っているのである。
『ゼラス様…』
彼は再びゼラスに呼びかけた。
ゼラスは涙に濡れた顔を上げる。
彼は、ゼラスの涙を拭うとこう言った。
『泣かないで下さい、ゼラス様。
ゼラス様がお泣きになると、このゼロスも悲しくなります』
『…そう…でしたね、ゼロス。
大丈夫…もう泣きませんよ』
一瞬の間を置いて答えたゼラスの形の良い唇に、かすかに微笑みが浮かんだ。
つられて彼も微笑んだ。
『そうだ…ゼロス、お守りをあげましょう』
突然ゼラスが手を叩いて言った。
『お守り…ですか、ゼラス様?』
『そう、お守りです。』
ゼラスはにっこりと微笑む。
そして立ち上がると、少し屈んでゼロスに顔を近づける。
『目を閉じて下さいな』
彼が目を閉じると、ゼラスは彼の前髪をそっとかきあげて額に口付けた。
『お守り…ですよ』
目を開くと、ゼラスが微笑んでいた…。


「うっ…」
リナのうめき声で彼は我に返った。
リナから流れ込んでくる、微量の『負』の感情…。
(これは…『痛み』ですね…。)
「リナさん、どうかしましたか?」
「ん…?
大丈夫…ちょっと舌を噛んでしまっただけ…」
(あのリナさんが舌を噛んだだけで、うめき声を…?)
少し疑問を感じて彼はリナを見た。
「本当に、大丈夫ですか?」
『本当に』の部分を強調して彼は聞いた。
「大丈夫だって…」
手をはたはたと振ってリナは言った。
(こんなに冷や汗をかいて…。
まぁ、本人が大丈夫と言っているのですから、しばらく様子をみましょうか…)
彼はまた酒を一口口に含んだ。
もう、酒はカップの半分ほどに減っている。
一方のリナはというと、まだ一口口と付けたぐらいにしか減っていない。
「リナさん…お酒…」
「飲むわよっ!」
彼の言葉を遮って、リナは断言した。
(何をそんなにムキになっているのだか…。
まぁ…いいですけどね、僕には関係ありませんし)
そう思って、彼はこれ以上口を出すのをやめた。
すると、会話が途絶えて沈黙が訪れる。
(沈黙…リナさんと一緒にいて沈黙が訪れるなんて、何回目でしょうかね…?)
そんなことを思っていると、彼は旅のメンバーの中で唯一沈黙が似合う人物とのある出来事を思い出した。


『本当にあれには俺を元に戻す方法は書いてなかったのだな?』
『ええ、もちろんですとも』
刺すようなゼルガディスの視線を、彼はさらりと受け流す。
『なら…いいが…。
しかし…何故『あれ』を焼いた?
それに、あの少女・・・プラムは…』
『それは秘密です』
ゼルガディスの言葉を遮って、彼はこう言った。
(こう言えば、ゼルガディスさんはもうこれ以上聞いてこないでしょう)
彼の予想通り、ゼルガディスはそれ以上追求をしてこなかった。
(やれやれ…リナさんもこうだと助かるのですけどね…)
ゼルガディスの後ろ姿を見送りながら、彼はこう考えて少し肩をすくめた。
『崩霊裂!!!』
(おやおや…)
振り向きざまにゼルガディスが放った魔法ををかわしながら、彼は少しあきれていた。
(ゼルガディスさんまで、こんなに熱くなってしまって…)
『お前は一体何者だ?』
『何者と言われても…ただの謎の神官です』
彼は苦笑した。
本当にだたの神官である。
ただし、五人の腹心の一人である獣王、セラス=メタリオムの。
『崩霊裂を軽々とかわす奴が、ただの神官だと?
笑わせるな』
『おや、そんなにおもしろかったですか?
いやぁ、ゼルガディスさんにおもしろがって頂けるなんて光栄です』
『ほざくなっ!
プラムの蘇生、クレアバイブルの抹消、崩霊烈さえも余裕でかわす技量…一体何者だ?!』
『だから、ただの謎の神官ですってば』
彼の言葉に応えるように、ゼルガディスは剣を抜いた。
『おやおや、怖いですねぇ…』
彼は大げさに肩をすくめた。
(これがアメリアさんだったら、さすらいの正義の戦士ですとか言って誤魔化せるのですけど…)
『今回はそういう訳にもいきませんね』
そうつぶやくと、彼はゼルガディスと向かい合った。
『そんなに僕が怪しいならば、僕を切ってみてください。
抵抗しませんから』
彼は両手を広げて抵抗しないことを示す。
『何が言いたい?』
剣を構えたままゼルガディスは問う。
『だって、僕を切りたいのでしょう?
だったら抵抗しないって…』
『切られても大丈夫な自信でもあるのか?』
彼の言葉はまた遮られた。
(普通の剣で…でしたらね)
そう心の中でつぶやきながら、彼はゼルガディスに近づいていく。
『切られて大丈夫なわけないじゃないですか』
ゼルガディスの目前までたどり着くと、彼はにっこりと微笑んで言った。
『切られたら血も出ますし…ね』
言葉が終わるか終わらないかのうちに、彼はゼルガディスの剣を握り締めた。
刃の部分を、である。
『なにを…?』
自分の剣をつたう紅い血をゼルガディスは呆然と眺めていた。
『ほら…ちゃんと血もでるでしょう?』
ゼルガディスは彼の手を強引に引き離した。
そして剣を振って血を払うと、きびすを返す。
『もういい』
それだけ言うと、彼は歩き去った。
しかし、彼は気付いただろうか?
自分の剣から振り払われた血はすべて黒い霧となって消えていることを…。
(やっぱりゼルガディスさんもまだまだですね)
彼は一人で納得し、微笑んだ。


(しかし…沈黙もここまで続くと怪しいものがありますね)
リナを眺めながら、彼はどうやって話を切り出そうか悩んでいた。
「リナさん…お腹を抑えて何をしているのですか?
お腹でも痛いのですか?」
リナが左手で腹部抑えていることに気付いて、彼はこう声をかけた。
「うん…まぁ…ね」
(これは…?!)
「リナさん、そんなに痛いのですか?!」
リナから流れ込んでくる『負』の感情の多さに気がついて、彼はおもわず席を立った。
「あ…ばれた?」
リナは苦笑いをした。
「痛くて眠れないからお酒…飲みに来たんだけど…。
もっと痛くなって…きちゃって…」
その言葉に、彼はため息をついた。
「当たり前です」
彼は、リナの前にあったお酒のカップを取り上げた。
そして、店員を呼び止めると香茶を一つ頼む。
「何故もっと早く言ってくれないのです?
眠れないのなら、僕が薬草をあげたのに…」
リナを自分のマントで包みながら、彼は珍しく思ったことをそのまま口にだしていた。
そうである、今リナになにかあったら困るのである。
(今彼女に何かあったら…すべての計画は水の泡です)
リナを包み終わると、彼は席をリナの隣に移した。
彼女の変化をより早く察知できるように、である。
少し赤く染まったリナの横顔を見つめていたら、彼はふとある人物を思い出した。
(あの方とはじめて会ったのはいつでしたっけ?)
彼は記憶の糸をたどっていく。
(そう…あれは確か僕が生まれて間もないころ…)


『へぇ…君がゼラスの神官?』
可愛らしい少年の姿をした魔族は彼を一目見たとたんにこう言った。
『ゼロス…とお呼び下さい』
一応彼の上司と同格なので、彼はうやうやしい態度をとった。
『ゼロス…ねぇ…』
少年は意味ありげにつぶやき、返事を催促するかのように彼に視線を送る。
『…何か?』
『いや』
意地の悪い笑みを浮かべて少年は首を振った。
そして、ぴょんと玉座から降りると、彼のそばまでやってくる。
『これも…ゼラスの趣味か?』
少年は彼のマントをつまみあげた。
『こんな趣味をしているとは気付かなかったなぁ。
あの美人なお姉さんは、いつも意外な行動にでる』
ゼラスのことを『美人なお姉さん』と称してみたのが気に入ったのか、少年はくすりと笑みをもらした。
『ねぇ、将軍のほうはどんな姿をしているの?』
少年は彼の顔を覗き込んだ。
『僕が…将軍も兼ねています』
『へぇ〜。
あの噂は本当なんだ』
少年はすっと浮かび上がった。
『ゼラスが一人ぼっちじゃ寂しいからって、自分の情人を作ったって…』
『フィブリゾ様』
彼の険悪な声が冥王フィブリゾを制す。
『冗談だよ、冗談』
フィブリゾはお腹を抱えて笑い転げている。
一方の彼は、彼の主君をけなされて不機嫌もいいところである。
『それでは、僕はこれで…』
精神世界に消えようとする彼の腕をフィブリゾはつかんだ。
『ここで君が帰ったら、噂は本当だって証明しているようなものだよ』
フィブリゾはにっこりと微笑んだ。
『それに、ぼくはもっと君と遊びたいな。
覇王のところの将軍よりおもしろいよ、きみは』
その言葉で、彼の中に小さな疑問がうまれた。
(覇将軍もこうやってからかわれたんでしょうか?)
『うん、覇将軍もおもいっきりからかったよ』
彼の意識を読んだのか、フィブリゾは楽しそうにこう答えた。
どうやらこの様子だと、『冥王は最近暇なので、自分の部下のみならず他人の部下までからかって遊んでいる』という噂は事実のようである。
その噂の主は、浮かび上がったまま振り向いた。
『ところで…ゼロス。
ゼラスは優しくしてくれるかい?』
『冥王様よりは優しく接していただいています』
皮肉をこめた彼の返事にフィブリゾは頷いた。
『そうだよねぇ…たった一人の腹心だもんねぇ…』
彼はフィブリゾの意図を読みかねてきた。
『あの…』
『じゃあさ、どれぐらいスキンシップをとってくれるの?』
彼の言葉を遮って、フィブリゾはこう聞いた。
『スキンシップ…ですか?』
彼は本来彼がフィブリゾにぶつけるつもりだった疑問も忘れて聞き返した。
『そう、スキンシップ』
フィブリゾは大仰に頷いた。
『抱きしめる、とか手を握る、とかさ』
とん、と彼の目の前に降りると、フィブリゾは彼に抱きついた。
『ゼラスなら、スキンシップも大切にしてくれるだろう?』
『フィブリゾ…様…?』
自分に抱きついたままのフィブリゾを、彼は理解できなくなってきていた。
最初はそれなりに理解しているつもりだったのだが…今は…。
フィブリゾは、ちょっと背伸びをすると、彼の唇に自分のを軽く重ねた。
『こんなこともしてくれたり?』
言い終わると、ぱっと彼から離れて飛び上がる。
(この方は一体なにを?!)
笑い転げているフィブリゾを見ると、さっきよりもわずかながら血色がよい。
そこで、彼は気付いた。
『冥王様…僕の『負』の感情を召し上がるのは…あまりにも酷いのではないですか?』
『あ、気付いた?
覇王のところの将軍もそれを知ると怒って怒って…』
引き続き笑い転げるフィブリゾ。
『まぁまぁ、そう怒らないでよ。
これから長い付き合いになるんだから、さ』


(確か、これがはじめての出会いでしたね…)
彼はまたお酒を口に含もうとした。
しかし、自分のカップが空になっていることに気付く。
(おやおや、僕としたことが…)
そこで、先程頼んだ香茶が運ばれてくる。
「リナさん、香茶ですよ」
返事はない。
「リナさん…リナさん?!」
リナは腹部を抑えたまま、うめき声を発するだけである。
彼はリナを抱き上げると、店員に休めるようなところがないか尋ねる。
そして、リナがとった部屋の場所を聞き出すと、代金を払って酒場をでた。
ここは一階が酒場、2階が宿屋という至極平凡な造りになっているようで、リナの部屋は2階の東側の部屋だった。
両手が使えないので、周りに人がいないことを確認してから手を使わずにドアを開ける。
そしてリナをそっとベッドに横たえると、ドアを今度は手を使って閉めた。
「リナさん、大丈夫ですか?
リナさん?」
返事はない。
(今あせってもしょうがありませんし…。
とりあえず、様子をみましょうか)
そう考えて、彼は椅子をベッドの近くまで移動させて座る。
(アメリアさん達に伝えたほうがいいでしょうかね…?)
一瞬そんな考えも頭をよぎるが、すぐに打ち消される。
(自体を余計ややこしくするだけでですね…)
あの正義が好きなお姫様は、今ごろどのような夢を見ているのでしょうかね…。
そう思うと、彼は一つの出来事を思い出した。


日の光がさんさんと降り注ぐ、平和な午後…。
木陰で休んでいる一組の男女…。
双方とも相手が気になるらしく、何気なしに相手に視線をおくっている。
しかし、視線が合うと慌ててそらす。
そして、また何気なく視線をおくり合う…。
そんなことが何度も続く。
まるで恋愛小説の中の一シーンのような光景である。
『あの…』
『なぁ…』
何度目にかに視線が合ったとき、意を決して二人とも同時に相手に話しかける。
『あ、なんだ、アメリア?』
『いいえ、あの、ゼルガディスさんこそなんですか?』
ゼルガディスは軽く首を振る。
『いや、たいした用じゃない。
アメリアから話せ』
『いえ、私もたいした用ではないので…。
ゼルガディスさんからどうぞ』
お互いに譲り合って、どちらも用件を話さない。
『いや、別にたいしたことではないので、もういい』
数回の譲り合いのすえ、ゼルガディスはこう断った。
アメリアも同様に断る。
『わ、私ももういいです』
アメリアがそう言うと、二人とも視線をもとに戻した。
しばらくして、ゼルガディスは本を取り出して読みはじめる。
しかし、アメリアは視線を送るのをやめない。
『アメリア、何か用か?』
『い、いえ、別に…』
アメリアは真っ赤になって否定する。
あきらかに怪しいその態度を、ゼルガディスはあっさりと受け流す。
『そうか…』
再びあたりに沈黙が戻る。
それでもアメリアはゼルガディスが気になるらしく、ついつい視線がゼルガディスのほうに向かってしまう。
『アメリア…』
『ゼルガディスさん…』
再び二人は同時に呼びかけた。
『な、なんですか、ゼルガディスさん…』
少々慌ててアメリアは問う。
『アメリアこそなんだ?
さっきから妙に見られているような感じがするのだが…』
『え…え〜っとですね』
ゼルガディスに聞かれて言葉につまるアメリア。
『あ…あの…ゼルガディスさん』
『なんだ?』
顔を真っ赤にしているアメリアの呼びかけに無愛想に応えるゼルガディス。
『一つ…一つ聞いてもいいですか?』
ゼルガディスの返事を待たずにアメリアは続ける。
『あの…ゼルガディスさんには…その…。
こ、恋人…みたいな人っていますか?』
アメリアの言葉を聞くと、ゼルガディスは笑みを浮かべた。
『なんだ…そんなことか…』
『え…?』
予想外の反応に、アメリアは少し目を見開いた。
『恋人…か…。
今はいない。
それどころか、お前達以外に俺を人間扱いしてくれる奴も…な』
ゼルガディスは自嘲気味に笑った。
『ゼルガディスさん…』
アメリアはかけるべき言葉を見つけられなかった。
ゼルガディスが自分の体のことをこんなに気にしているなんて、すっかり忘れていたようだ。
困った顔のアメリアにゼルガディスは微笑んだ。
『だが…今はこれでいいさ』
『え?』
ゼルガディスの微笑みと、予想外の言葉に驚くアメリア。
『たとえわずかであっても、こんな姿の俺を認めてくれる奴らがいる…。
それに、この体も戻らないと決まったわけではないからな…』
ゼルガディスはどこか遠くを見つめるような目をした。
『そう…ですね』
アメリアはそうつぶやくと、ゼルガディスに向かって微笑んだ。


(あのお姫様は今ごろゼルガディスさんの夢でもみているのでしょうか…)
「う…」
リナが寝返りをうつ。
乱れた布団を直しながら、彼は苦笑した。
(これではまるで親子か夫婦のようですね)
そう思いながらも、彼はリナの額の汗を拭ってやる。
(バンダナだけでもはずしてあげましょうか…)
彼はリナの前髪にそっと手をかけた。
「ん…」
リナがまた寝返りをうつ。
しかし。彼はそんな事には構わずにバンダナに手をかけた。
バンダナをはずすと、小さな宝石が落ちる。
(へぇ…こんなものをつけていたんですね)
彼はバンダナと共にそれをサイドテーブルに置いた。
そして、またリナに布団をかけ直してあげる。
(リナさんと結婚する人は、さぞかし気が利く人でないといけませんね)
彼はまた苦笑した。
「でないと、彼女はすぐ体を壊してしまいますね」
理由を口に出して言ってみると、さらに笑えてきた。
彼は微笑みながらある事について考え始めた。
(僕とリナさんが結婚したらどうなるでしょうねぇ…)


『リナさん、起きてくださいよ。
リナさん、もう朝ですよ』
僕ははリナさんを起こそうと、もう数十分もベッドの前で四苦八苦していた。
『リナさん!
朝食が冷めてしまいますよ』
『ん…?
もうちょっと…』
リナさんは寝返りをうつ。
『もう…しょうがありませんね』
僕ははリナさんを仰向けにさせるため、彼女をベッドの上で転がす。
『ほら、起きて下さい』
僕はリナさんの鼻をつまんだ。
リナさんが口を小さく開けて呼吸をはじめるのを確認すると、僕は次の行動に移った。
『リナさん、起きて下さい。
ほんっとに起きないんですね。
じゃあ、起こしますよ。
いいですね?』
行動に移る前に警告をする。
リナさんから返事がないのを確かめると、僕はリナさんにくちづけた。
(1…2…3…4…5…6…7…)
『うわぁっ!!』
僕が心の中で正確に7秒数えた時、リナさんは飛び起きた。
反動で、僕は尻餅をつく。
『ちょっと、ゼロス!!
あんたわたしのこと殺す気?!』
肩を激しく上下させながら、リナさんは僕をにらんだ。
僕はゆっくりと立ち上がると、微笑んだ。
『やっと起きましたね、リナさん』
スパコーン。
スリッパが僕の顔を直撃する。
『昨夜はあんたの所為で疲れたんだからねっ!
もうちょっと寝かせてくれてもいいでしょう!!』
そう言い捨てると、リナさんは反対方向を向いてふて寝をしてしまう。
『リナさん…昨日のことは僕が悪かったですから…』
リナさんの様子をうかがうが、返事どころか反応もない。
『ほら、朝食も作りましたし…』
リナさんはピクリとも動かない。
『じゃあ、今日はどこかおいしい所へ食べに行きましょうか?』
リナさんからはまだ返事がない。
『あれ、食べに行きたくないんですか?
珍しいですねぇ…』
(こころもちか体が動いたような気が…もうヒトオシですね)
そう考えると、僕はきびすを返した。
『あ、ならいいですよ。
その方が家計の節約になりますしね』
『わかったわよっ』
投げやりなリナさんの声とともに、布団を撥ね除ける音がする。
僕は振り向くと、にっこりと微笑んだ。
『おはようございます、リナさん』
『おはよう………ゼロス?』


想像の中のリナが自分を呼ぶ声がひどく不安げに聞こえたような気がして、彼はふっと目の前で寝ているリナのほうに目をやった。
「…ゼロス?」
うっすらと目を開いたリナが彼のことを見つめていた。
「おや、起きましたか?
具合はどうです、リナさん。
その様子だとさっきよりは調子がよさそうですね」
リナは数瞬の間をおいて、小さく頷いた。
「そうですか…」
彼は安堵のため、小さくため息をついた。
(これで最悪の事態はまぬがれることが出来ましたね)
そう思うと、彼はリナの額に手を置いた。
これ以上何かあれば、それこそ一大事である。
それだけは未然に防いでおかないといけない。
「熱は…ないようですね。
お腹の他に痛いところはありませんか?」
彼の問いに、リナは小さく首を振って答えた。
「じゃあ、とりあえずベルトなどの体を締め付けるものをはずしてください」
「え?」
リナは小声で聞き返した。
「体を締め付けるものがあると、苦しいでしょう?
こういう時は少しでも楽にした方がいいですからね」
彼は少し微笑むと、リナを助け起こすために手を差し出した。
「いいですか、起こしますよ」
リナに確認してから、背中にも手を添えて助け起こす。
リナの髪の毛が彼の手にかかる。
(長い髪…彼女とは対照的ですね…)
リナの作業を手伝いながら、彼は今ごろ夢の中を漂っているであろう少女のことを再び思い起こした。
(彼女は、もう忘れているでしょうね…『あのこと』を…)


『127…あれ、128でしたっけ?』
彼は指を折って数え始める。
『え〜っと、殺したのは127ですね。
でも、叩き落としたのは128でしたね』
そういうと、彼はまた無造作に数を数えはじめた。
『128……129……130っと』
数を一つ数えるたびに、彼は色々なところを指差す。
そのたびに、彼が座っている木のまわりを飛んでいる鳥が落ちていくのであった。
『198…199……。
200』
かなりの時間をかけて200羽の鳥を地に叩き付けると、彼は自分の手を握ったり開いたりした。
『もう大丈夫そうですね』
あるところで受けた精神ダメージはもう回復したようである。
そのために、199羽の鳥がもう二度と空へ舞い上がることはできなくなったが…。
ばさっ。
かすかに鳥のはばたく音が聞こえたため、彼は顔を上げた。
するとあの少女のおかげで一命をとりとめた小鳥が、すぐそばの湖に向かって飛んでいくのが見える。
彼は、ふっと水浴びをしている少女に目をやった。
少女は、彼がいることにまったく気付いていないようだった。
もし気付いていたら、今ごろこのあたりには攻撃呪文の花が咲いているはずである。
一つ断っておくが、彼はけっして俗に言う『のぞき』をしているわけではない。
ただ、彼がここでダメージを回復している間に、少女がやって来て水浴びをはじめただけなのである。
わざわざ移動するのもめんどくさいので、彼もそのままにしておいたのだ。
(用事もすみましたし、精神世界を通ってリナさんをからかいにでも行きましょうか?)
そう思って腰を上げかけたとたん、彼の耳に少女の声が入ってきた。
『うわぁ、もう大丈夫なんですね』
見ると、小鳥が少女の肩に止まっている。
『落ちて来た時は、どうしようかと思いましたよ。
直ってよかったですね』
遠目にも、少女がにっこりと微笑むのが見える。
(アメリアさん…らしいですね)
彼は少し苦笑した。
もしアメリアが彼が小鳥を落としたことをし知ったら、『正義』という言葉を連発しながら彼に罰を与えようとするかもしれない。
ある意味、かなりうっとおしい人物である。
『アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン…』
アメリアの名前を彼は小声でつぶやいた。
セイルーン第一王位継承者の第二王女…。
現在も父を助けて、政務についている。
姉の第一王女が失踪中により、現在もっとも王位を継ぐ可能性が高い…。
(ふぅむ…お姉さんが帰ってこなければ、いずれは女王さまですか…)
聖王都の王位など今まで考えてみたこともなかった彼だが、あらためて確認してみると大きな切り札となりえる可能性に気付く。
(もし、聖王都の女王を、味方に引き入れることが出来たら…)
珍しく真面目な顔をして、彼は考え込んだ。
考えれば考えるほど、利点がみえてくる。
(もし、これらの利点がすべて水の泡となったとしても…失われるのは僕の労力だけ、ということになりますね)
しばらく考え込んだ末、彼はこう結論を出した。
彼は立ち上がると、軽く枝を蹴って飛び上がった。
そして、精神世界を通ってアメリアの目の前に移動する。
『こんにちは、アメリアさん』
『ぜ…ぜ、ぜ、ぜ、ぜぜぜぜぜ…ゼロスさん?!』
文字どおり彼女は目を皿のようにして驚いた。
そして、体に巻いていたタオルをさらに引き上げて、水の中に肩まで沈む。
『の…のぞいていたんですか?!』
顔を真っ赤にしながらアメリアは彼に尋ねた。
彼は答えない。
『ゼロスさんっ?!』
アメリアは彼にに返事を求める。
彼は、わずかに目を細める。
『ええ…ずっと見てましたよ…。
貴方のことを…』
答えながら、彼は小さな丸薬を指でつぶした。
辺りに形容しがたい香りがひろがる。
『ゼロス…さん?』
アメリアの瞳から、力強い光が消えてゆく。
(どうやら薬が効いてきたようですね…)
彼はにっこりと微笑んだ。
『岸まで歩いていただけますね、アメリアさん』
アメリアは小さく頷くと、岸に向かって歩きはじめる。
後ろから彼が宙を歩いてついてゆく。
岸にたどり着くと、アメリアは立ち止まった。
『上がってください』
彼は次の命令を与える。
そして、アメリアはまた彼の言葉に従った。
岸に着くと、彼はアメリアに彼の座っていた木の根本に座るよう指示する。
(とりあえず、今回は『印』だけということにしておきましょう…)
あまりにもあっさり人形と化してしまったアメリアを見て、彼はそう考えた。
チャンスはいくらでもあるということに気付いたのである。
続きは、彼の上司に伺いを立ててからでもいいと判断したのであろう。
彼はアメリアの前に膝をついた。
そして、品定めをするようにあちらこちらをながめていた。
どこが一番『印』をつけるのに都合がいいか、考えているのである。
悩んだ末、彼はアメリアの左肩にくちづけた。
衝撃で、アメリアの体がびくんと跳ね上がる。
(もし起きていたら、痛いでしょうね…)
そう思いながら彼が顔を離すと、アメリアの左肩に魔族のみが見ることのできる『印』があるのが確認できた。


「はい、終わりましたよ」
彼は、リナの上に布団を掛け終えると、リナに声をかけた。
「ありがと、ゼロス」
「いえいえ…これぐらい…」
彼はリナの言葉に、少し照れたふりをした。
「さぁ…眠って下さい。
寝付くまで側にいますから…」







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2442〜酒>sake.utage<宴〜 <後編>鷹見 葉月 E-mail 4/25-14:22
記事番号2441へのコメント
「さぁ…眠って下さい。
寝付くまで側にいますから…」
彼はベッドの縁に腰掛けた。
しがらく沈黙が続く。
「子守り歌でも歌いましょうか?」
まだ寝付けないリナを見て、彼はこう切り出した。
「それとも、おとぎばなしでもしましょうか?」
リナは、そのどちらにも首を振って拒否をした。
また沈黙が続く。
「ねぇ、ゼロス…」
今度はリナが切り出した。
「何ですか、リナさん?」
「やっぱり、何か話して…」
リナの言葉に、彼は少し戸惑いを覚えた。
(リナさんがこんなに素直でいいのでしょうか…?)
しかし、彼はリナの願いを断るなどということはしなかった。
「そうですね…昔話でもしましょうか…」
「昔…話…?」
リナの問いに、彼はにっこりと微笑んで頷いた。
「そう、昔話です」
 
   『命がくだりました』

「そう…僕は人間と旅をするのはこれがはじめてではないんですよ」

   『「魔器を回収せよ」とのことです』

「そうなの?」
「そうですよ」
彼はベッドに座り直した。
「そうですね…たしかあれは400年ほど前のお話です…」

   『私を殺すの?』

「僕は、とある人間の女性と旅をしていました。
出会ったときはたしか今のリナさんより2つ歳下で…美しい人でした」

   『必要であれば、殺します』

語りながら、彼はその人を殺したときのことを思い出す。
「その人も、重破斬を使えたの?」
リナの問いに、彼は小さく首を振って答えた。
「彼女は…『魔器』を持っていたのです」

   『これがそんなに大切なの?』

「『魔器』?」
はじめて聞いた言葉を、リナは聞き返す。
「そうです、『魔器』です。
一言で言ってしまえば、古代の遺産ですね。
現在では考えられないぐらいの技術で作られた道具…それを彼女は持っていました」

   『ええ、大切ですよ。
   使い方次第では、大きな脅威となりますからね』

「僕は、リナさんのときと同じように『謎の神官』として彼女に近づきました」
彼はどこか遠くを見つめるような瞳をした。
そんな彼を、リナは静かに見守っていた。
彼はリナの方を見てにっこりと微笑むと、話を続けた。
「2年ほど、二人で旅をしました。
彼女は僕が魔族だということを知ってからも、一緒に旅を続けようと言いました。
それから、さらに8年ほど旅をしました」

   『これは渡せない』

「二人で色々な所へ行きました。
今は崩れゆく城が建てられる所をみたり、歴史上の人物に会ったり…。
少しの間、他の人と旅をすることもありましたが…ずっと二人だけでした」

   『死にたいのですか?』

「そして、ちょうど出会って10年が経った日…僕はある命令を受けました」
そこで、彼は言葉を止めた。
辺りに沈黙が流れる。
「『彼女の魔器を回収せよ』…ただそれだけの命でした」

   『私はまだ死ねない』

「そして、僕は知っていました。
その命が意味していることは…」

   『もう一度だけ言います。
   渡さないのならば…殺します』

「彼女を殺せ、ということであったのを」
リナが小さく息を飲む音が聞こえる。

   『でも…あなたに殺されるのならば、それもまた一興ね』

彼は立ち上がると、窓のカーテンを開けた。
月明かりが、部屋の中に降り注ぐ。

   『それに…あなたに会ったときから、わかっていたわ』

窓の外を眺めながら、彼は話を続けた。
「彼女は、僕に殺されることは前からわかっていたと言いました」
   
   『では、何故僕と旅をしたのですか?』

「僕は彼女に何故僕と旅をしたのかと尋ねました。
そうしたら、彼女はこう答えました」

   『遅かれ早かれ、私はいつか死ぬ…。  
   だったら、好きな人に殺されたいと思ったの』

「『遅かれ早かれ、私はいつか死ぬ…。だったら、好きな人に殺されたいと思ったの』と」
彼は振り向いた。
逆光でリナからは彼の表情は読み取れない。
「それが彼女の残した最後の言葉でした」
彼の口調は淡々としていた。
「わたしも、いつか殺すの?」
押しつぶされるような沈黙を破ってリナは聞いた。
「今はまだ…。
でも、命令がくだれば殺します」
ためらいもなく彼は言い切った。
「…僕を追い出しますか?」
彼はリナに尋ねた。
「そんなことをしても無駄よ。
殺される時は殺されるし…あなたを追い出したところで何も変わらないわ」

   『好きな人に殺されたいと思ったの』

彼女の言葉が彼の頭の中で響いた。
「それに…わたしは無抵抗で殺されたりはしない」
月が雲に隠れたのか、急に部屋の中が薄暗くなる。
リナの瞳に、珍しく微笑んでない彼の顔が映った。
「わたしは精いっぱい抗ってみせる。
たしかに、彼女のような生き方もある…。
でも、私の人生は自分で決めるわ。
たとえ好きな人にだって、殺されるのはまっぴらよ」
「死して幸せを得ても?」
リナはぎこちないけれども、微笑んだ。
「わたしはまだ人生そんなに生きていないから、『死して得る幸せ』がどんなものかなんて知らない。
知っているのは、『生きて得る幸せ』だけ。
今のわたしには、『死して得る幸せ』よりも『生きて得る幸せ』の方が重要だわ」
彼は満足げに頷いた。
「貴方は彼女とは違う『強さ』を持っていますね。
そして、彼女は貴方とは違う『強さ』を持っていました。
しかし、双方とも僕には理解できない『強さ』ですね。
でもきっと…それが人間の『強さ』なのでしょうね」
そこまで言うと、彼はリナに駆け寄った。
「おや、駄目じゃないですか、起き上がったら。
ほら、またこんなに冷や汗をかいて…具合が悪くなったらどうするのですか?」
リナの肩を抱えるようにして、また寝かせようとする。
しかし、リナは再び寝る気はないようだった。
「リナさん、ほら」
一回手を離して、説得しようとする。
「リナさん、さらにひどくなったらどうするのですか?」
リナの顔を覗き込む。
「ちゃんとおとなしくしていてください。
ね、リナさん」
リナからはまったく反応がない。
「じゃあ、せめて薬を飲んで下さい。
いいですね、リナさん?」
リナの返事を待たずに、彼はドアへと歩き出す。
そして、ドアを開けるとリナの方を振り向いた。
窓からさぁっと月明かりが入ってきて、リナを背後から照らした。


ピィー----------。
草笛の音が月の光に溶け込んだ。
(満月…滅びの予感がしますね)
彼は再び草を唇に当てた。
すると、前触れもなく月光が遮られる。
『近所迷惑よ、ゼロス』
ふと見上げると、小さな荷物を抱えたリナが立っていた。
『あなたが木の根本に座り込んで草笛を吹いているなんて…なにかあったの、一体?』
『強いて言えば、リナさんが相手をしてくれないので寂しいです』
彼は微笑んだ。
『わたしに何の相手をしてほしいの?』
リナは肩の荷物を背負い直した。
『それは…』
『「秘密です」』
彼の言葉をリナは続けた。
しかし、彼はさらに言葉を続ける。
『と言いたいところですが、今夜は特別に教えてあげましょう』
彼は意地が悪いともとれる笑みを口元に浮かべた。
そして、リナに自分の隣を指差してそこに座るよう示す。
『なによ…一体?』
彼の隣に腰掛けると、リナは尋ねた。
『何でしょうね、一体?』
彼はリナの髪に自分の指を絡めた。
月明かりに照らされたリナの髪は美しい。
少なくとも、彼にはそう思えた。
『だから…何の相手なの?』
再度リナは尋ねた。
彼は微笑むと、指に絡めたリナの髪を口元まで持ってゆく。
『奇麗ですね…リナさんの髪』
自らがくちづけた髪を見つめながら、彼は独り言の様に囁いた。
ばさっ。
軽く頭を振ってリナは彼の指から自分の髪を開放した。
『からかっていて、楽しいの?』
リナはじっと彼の瞳を見つめた。
リナのその紅い瞳にも、月明かりがいつもにはない美しさを添えている。
『少しだけ…ですけど、楽しいですよ』
彼は微笑んだ。
そして、また指に一房の髪をからませる。
『「また」盗賊いじめをしてきたのですか?』
彼は不意に話題を変えた。
半分は意図的に、そして半分はリナの髪が一房焦げていたのを見つけたからである。
『故郷のお姉さんに、乱暴なことは慎めと言われませんでしたか?』
『姉ちゃんはわたしよりずっと乱暴よ』
リナは即答した。
『それに、自分を棚に上げて人に命令するようなことはしないわ』
そして、再び頭を軽く振った。
『言いたいことがあるなら、さっさと言って。
言う気がないのなら、帰って寝るから』
なお本題に入ろうとしない彼に向かって、リナは言い放った。
『リナさんは時間は循環しているものだと思いますか?
それとも、まっすぐ流れているものだとおもいますか?』
リナの言葉を無視して、彼は新たな質問を彼女にぶつけた。
『唯一神を「信じている」方々はだいたいまっすぐ流れている方を選ぶそうです。
リナさんはどちらが正しいと思いますか?』
彼はリナの瞳をじっと見つめた。
『わたしには、時間がどう流れているかなんて関係ない。
ただ『今』、『時間が流れている』ということだけがわたしにとって大切だわ』
『リナさんらしいですね』
彼は微笑んだ。
すっとリナが立ち上がった。
マントの埃をはらい、再び月を背に彼と向かい合った。
『おやおや、もう行ってしまうのですか?』
『あなたの相手をするのにも、もう疲れたわ』
リナは少し肩をすくめた。
『それに、ここにいてもからかわれるだけだしね』
そしてリナはきびすを返すと、歩きはじめた。
『リナさん』
少しリナが歩いたところで、彼が呼び止める。
『「運命」ってあると思いますか?』
彼はいつものように微笑んではいなかった。
『定められた「運命」…。
リナさんはそれを信じますか?』
その言葉に、リナは肩越しに振り向いた。
『別に…。
わたしはわたしの生きたい道を行くだけ…。
たとえそれが「運命」とやらに、沿うものであろうとなかろうと…わたしには自分の道を変える気はないわ』
それだけ言うと、リナはまた歩きはじめた。
彼からは、まるでリナが月に向かって歩いてるように見えた…。


「いいですか、リナさん。
おとなしくしていてくださいよ。
いいですね。」
一方的にそれだけ言うと、彼はドアを閉めた。
(薬湯より香茶を貰ってきて、薬を溶かした方がいいですね…)
階段を降りながら、彼はそんなことを考えていた。
下の酒場に着くと、さっきより人が減っているのに気付く。
(そういえば、もう夜中でしたね…)
あらためてそんな事を確認しながらも、彼は店員を呼びとめ、香茶を部屋に運んでくれるよう頼む。
再び階段を上がり、リナの部屋まで戻る。
そして、そっと扉を開けると、出てきたときと同じ体勢でリナがベッドの上に座っていた。
部屋の中にすべりこむと、彼は後手でドアを閉めた。
「寒くないですか、リナさん」
すぐそばまで近づくと、彼はリナに声をかけた。
彼は再び自分のマントをとると、リナの肩にかけた。
「温かい香茶を頼んでおきましたから…。
聞いていますか?」
あまりにも反応がないので、彼はおもわずリナに聞いているかどうか確認をする。
リナはしっかり見ていないとわからないぐらい小さく頷いた。
(これだったら、痛いと泣きすがってくるほうがまだいいですね)
彼はリナの隣に腰掛けると、リナの肩を抱いた。
少しでも安心させてあげようという配慮のようである。
(何を…しているのでしょうね、一体…)
彼は苦笑した。
あまりにも人間らしい行動をとっていることに気付いたのである。
(この四人組と旅をするようになってから…でしょうかね?
こんなに人間らしくなってしまったのは…)


『いい天気ね…・』
太陽に手をかざして、リナは言った。
『そうですね、リナさん』
いつもと変らぬ4人組+1の旅の風景。
『リナ〜飯まだか?』
『うるさいわね、ガウリイ。
貴方にはこの美しい日を楽しむという心はないの?!』
と言いながら、リナは懐からビスケットを出して口に放り込む。
『…説得力ないですね、リナさん…』
隣でぼそっと呟くように告げたアメリアにちょっときつめの視線を送ると、リナは再び空を見上げた。
『本当にいい天気ですよね…』
純粋にその天気を楽しんでいるようなリナに、彼は同意の声をかけた。
ただ彼は別にその天気を楽しんでいるわけではなかったのだが…。
『…確かに天気だけはいいな…』
ゼルガディスの言葉にリナは頷いた。
『なんだか…この天気に似合わないような奴等が付いてきているみたいだけど』
リナは振り返って腰に手をあてると言い放った。
『出ていらっしゃいよ…さっきからつけてきているのはわかっているのだから』
『ばれちゃあ仕方ねぇな…』
がさごそと茂みから出てきたのは、それぞれ違う色のローブをまとった4人の人相の悪い男達。
『リナ・インバースだな…?』
リナがリアクションを返す前に、青いローブを着た男は片手を上げた。
『恨みはないが…さる御方のご命令だ…。』
男が手を振り下ろすと、17、8等のレッサー・デーモンが姿を現わす。
『死ねっ!!』
『崩霊裂!!』
『覇王氷河裂』
男の言葉と共に、リナとアメリアは手近なデーモンに呪文を浴びせる。
『青魔烈弾波!!』
3人の魔法に、デーモンはどんどん数を減らしてゆく。
『光よ!!』
ガウリイがリナに向って飛んできた炎の矢を切り払った。
リナはガウリイに庇われるような体勢で呪文を唱え続ける。
『餓竜咬!!』
リナの影が竜に変化し、デーモン達を咬み裂く。
『…ありがと、ガウリイ』
リナの言葉に、ガウリイは少し照れたように笑った。
『氷の槍!』
アメリアの術で凍り付いたデーモンをゼルガディスが叩き割った。
『次行くぞっ!!』
『はいっ!』
一方の彼はというと…。
数匹のデーモンに追われて逃げ惑っていた。
そしてかなりの数のデーモンが倒されたころ、彼は茂みに転がり込んでそのままの体勢で空間転移した。
『いやぁ…奇襲とはまたパターン通りなことをなさいましたね』
移動先で数歩歩くと、彼は空から戦局を見守っていた一人の魔族に彼は声をかけた。
『誰だ、貴様は…?』
いきなり後ろから声をかけてきた彼に、その魔族は振り返った。
『ああ…貴方ぐらいの低級魔族ともなると、僕に会ったこともないんでしたよね』
彼は魔族の鼻先に錫杖を突きつけた。
『獣王・ゼラス=メタリオムの部下、ゼロスと申します。
黄泉の旅路に名前ぐらいは覚えて頂ければ幸いです』
彼が微笑すると、錫杖で触れられたところからその魔族は崩れるように滅びていった。
『…さてと、これでゼラスさまの用事は終了ですね。
あとは覇王さまと海王さまのお使いだけですね』
指を折って残りの仕事を数え上げると、彼は下を見下ろした。
デーモンがすべて倒された今、もうすでに戦いは決着がつきつつある。
二人の男達はもうすでに倒され、もう一人も今ゼルガディスに当て身をくらって倒れたところだ。
『さぁ…誰に頼まれたか話してもらいましょうか…』
残った白いローブの男にリナは詰め寄った。
『くっ…』
男は歯噛みすると、一歩後退した。
『逃げられんぞ…』
後ろからゼルガディスに声をかけられ、逃げ場がないことを悟ると、男は短剣を抜いた。
『…馬鹿ですね』
その様子を空から見ていた彼は、その男を指差した。
すると、男が自分の意志とは裏腹に自分の喉に短剣をあてた。
『なっ…?!』
自分で自分を制御できぬうちに、男は自分の喉を短剣で掻き切った。
『…どういうこと?』
返り血を指の腹で拭うと、リナは呟いた。
『つまりはこういうことですよ』
彼は微笑すると、先程転がり込んだ茂みへとまた空間転移をした。
言い訳は…そう気絶していたとでも言いましょうか…。
その呟きは風に乗って美しく晴れ渡った空に虚しく流れた。


(でも…この4人組と旅をしていても、やはり僕は魔族ですよね…)
『コンコン』
ノックの音が部屋の中に響く。
彼は立ち上がると、静かにドアを開けた。
「香茶です…」
「ありがとうございます」
彼はにっこり微笑むと、香茶を受け取った。
片手でドアを閉めると、彼はベッドに腰掛けた。
「睡眠効果のある薬草だけでいいですか、リナさん?」
サイドテーブルにカップを置くと、彼は小さな袋から幾つかの紙包みを取り出した。
「あと、痛み止めもちょっと入れておきましょうか…。
即効性のあるやつがいいですよね…」
一人で話しながら薬包紙に包んだ薬を、彼は少しづつ香茶に入れてゆく。
数種類の薬を混ぜると、彼はリナの方を向いた。
「リナさん、できましたよ」
カップをリナの手に持たせる。
「飲めますか?」
リナは小さく頷いた。
そしてほんのわずかだが、香茶を口に含む。
しばらく間を置いてから、もう一口香茶を飲んだ。
「飲み終わったら寝て下さいね」
「…ありがとう、ゼロス」
リナは口元にほんの少しだけ笑みを浮かべた。
彼もにっこりと微笑み返す。
(珍しい構図ですね…。
リナさんと微笑みを交わす僕…)
彼の心に、何かがひっかかった。
(『リナさん』と微笑みを交わす『僕』…)
彼は香茶を飲んでいるリナを見つめ直す。
『リナさん』 = 『リナ=インバース』 = 『重破斬を操れる人』…。
(では、『僕』は…?)
『ゼロス』 = 『獣神官』 = 『ゼラス=メタリオムの部下』…。


彼の手からは血が滴っていた。
髪も、顔も、足も、服も血で汚れていないところはなかった。
『何が…望みだ…?』
『僕らの望みは、すべての滅びです』
彼はそれに死を与えた。
その死体を踏みつけて、次の場所へ移動する。
その姿を皆に見せるために…より多くの恐怖を生み出すように…。
『何者だ…』
『何が望みだ…』
『何故我らを殺す…』
『何をしたというのだ、我等が…』
『何をしてもいいから、この子だけは…』
『何の故あって我等を殺した…』
『何故神の御心に逆らう…』
『何をしたいのですか…』
『何故ここにいる…』
『何者だ…』
『何が望みだ…』
『何故我等を殺す…』
『何をしたというのだ、我等が…』
『何をしてもいいかた、この子だけは…』
『何の故あって我等を殺した…』
『何故神の御心に逆らう…』
『何をしたいのですか…』
『何故ここにいる…』
『何者だ…』
『何が望みだ…』
『何故我等を殺す…』

   『お前の名は…?』

『…何故そのようなことを聞くのですか?』
今までなかった問いに、彼は振り上げた手を宙で止めた。
『自分を殺す奴の名前ぐらいは知っておきたくてな』
わずかに風が吹き、彼の髪から紅い滴が滴った。
『ゼロス…と呼ばれています』
彼は少し間を空けて、名乗った。
すると、『それ』は自称気味に笑った。
『誰につけられた?』
『僕を作り出してくれた方がつけてくださいました』
彼は手を静かに下ろした。
殺戮者である自分に不思議な質問をぶつけてきた『それ』に興味をもったらしい。
『なぁ…お前は自分が本当に『ゼロス』だと思うか?』
蒼い瞳が彼のことを見つめていた。
『他の者が…そして僕の上司様が僕を『ゼロス』と呼ぶ限り、僕は『ゼロス』です』
彼は迷うことなく答えた。
『それに、僕はゼロスでなくともいいのです。
どう呼ばれ、どういう立場にあろうとも…今僕が存在しているという事実さえあれば…』
ぐっと彼の胸に鈍い痛みが走る。
『いいのか…自分の存在を否定するようなことを言って…?』
『いけませんね…本当に…』
彼は錫杖を振り下ろした。
わずかな返り血と、その数倍の「負」の感情を彼は受け取った。
『僕は一体…何なのでしょうね?』
彼は自分の手のひらを見つめながらつぶやいた。
もし、彼の上司の気持ちが少し違っていたら、彼は『ゼロス』と呼ばれていなかったかもしれない…。
もしそうであったら、『今』、『ここ』にいることはなかったかもしれない…。
(『僕』の中の要素が一つでも欠けたら、『僕』は今の『僕』ではなかったかもしれませんね…)
彼は錫杖を地面についた。
辺りにはもう動くものはなかった。
彼は足元の球体を爪先で軽く触れて転がした。
『僕は一体誰なのでしょうね…?』
自らにもう一度問いかけてみる。
ゼロス…?
獣王の神官…?
それとも…殺戮者…?
蒼い瞳は、まだ彼のことを見つめていた…。


「……一体『何』なのでしょうね、僕は…?」
彼は窓越しに月を見つめた。
「……僕は、一体…?」
「ゼロス…?」
彼の不可解な言葉に、リナは彼の名前を呼んだ。
そして、彼はその呼びかけに応えるように、視線をリナの元へと移した。
二人の視線が絡み合う。
(紅い…瞳…)
彼の中で、何かがはじけた。
(紅い…紅い……血の色…?)
無意識のうちに、彼はリナに向かって手を伸ばしていた。
(………滅ぼしたい…この人を…)
何かを壊したくなったのかもしれない…。
それとも、彼女を…。
「…ゼロス?」
だいぶ薬が効いてきたのか、リナの声にいつもの「はり」がでてきた。
そして、その声は彼の不可解な言葉のあとの行動に向かっての微量の疑問が込められていた。
しかし、彼はそのままリナの手首を掴む。
中身のほとんどなくなったカップが床に転がって、硬い音をたてた。
「カップ…落ちたわよ」
言外に、手を離せとリナは言った。
その言葉に応えるように、彼は手首を掴んでいる手に少し力を込める。
それ以上力を込めなかったのは、リナの手首が予想以上に細かったからかもしれない。
「…痛い」
「……すぐ楽にしてあげますよ」
まるで、恋人に愛を囁くような口調で彼はそう告げると、リナの首に手をかけた。
「離して」
険悪なリナの言葉にも彼は手をゆるめなかった。
「離しっ…」
首が絞まって、それ以上言葉を続けることができない。
リナはつかまれていない方の手で、彼の手をつかんだ。
しかし彼も離す気はないらしく、二人はしばらくもみ合う。
そのうち、彼の方がわずかに力が強かったのか、それとも彼が与えた睡眠薬の所為か、リナは彼に首を絞められたまま押し倒された。
彼は、もう一方の手も首に添えた。
「…くっ…」
リナはわずかに体を動かして逃れようとする。
しかし、押さえつけられてそれすらもも出来ない。
リナは微かに唇を動かし始める。
最初はかすれて声にもならないが、そのうちに声が呪文を紡いでゆく。
「……し…かいの…闇を……す…べる……王……なんじの………」
淡く輝き始めた魔王血を見て、彼は我に返った。
そして、慌てて手を離す。
「……リナさん…」
(あの体勢で、呪文を唱えるなんて…。)
激しく咳き込むリナを見つめながら、彼は呆然としていた。
「……それだけ『生きたい』と思ったから…ですか…」
まるで誰かに問いかけるように、彼はつぶやいた。
「……そう…よ…。
わたしは…まだ…死ねない……」
彼の言葉に、リナは激しく方を上下させながら答えた。
「…すいません、僕どうかしてました。
大丈夫…ですか?」
「自分…でやっておい…て、大丈夫はないん…じゃない?」
リナのもっともな言葉に、彼は再び謝罪する。
「本当に、どう謝ったらいいのか…。
すいませんでした、リナさん」
彼の少し困った顔を見て、リナは無造作に髪をかきあげると苦笑した。
「呪符を外さ…なかったのは…ラッキーだったわね。
これがなければ、間違いなく…あの世行きだったわ」
そんなリナの様子に、彼は疑問を覚える。
リナが息を整えるのを待って、彼はこう切り出した。
「何故……そんなに簡単に許せるのですか?」
「何故って…助かったから、それでいいじゃない」
いつものようにあっさりとリナは言った。
「はぐらかさないでください」
「はぐらかすって…何を?」
いつもより幾分かきつい口調の彼に、リナは少々引け目を感じながら問い返した。
「本当にそう思っているのですか?
人間の感情はそんなに単純ですか?」
珍しく詰問調で彼はリナに詰め寄った。
「そうだったら…いいでしょうね。」
「ならば…何故…?」
リナはふっと視線を彼からそらした。
「強いて言えば…複雑だからよ…。
その複雑さを隠すために単純に見せかけている…納得しようとしているのよ」
まるで降るようにしてしばしの間沈黙が訪れる。
「それで…いいのですか?」
ゆっくりと問いかけた彼にリナは微笑んだ。
「そうね…。
私はそれでいいと思っているわ。
だからこそ、そうしている…それで納得している」
そこで一度言葉を区切ると、リナは小さくため息をついた。
「過去は…変わらない。
たとえ貴方を許さなくても…おきてしまったことに変わりはない…。
だから、今回はなかったことにしてあげる…それで終りにしましょう」
リナの真剣な瞳から彼はわずかに目をそらした。
「……わかりませんね。
何故自分を誤魔化してまでして生きる価値があるというのです?
生にしがみつく必要があるというのです?」
手をきつく握り締めると彼は吐き捨てるように言った。
「魔族の貴方にはわからないでしょうね」
リナは静かに答えた。
「それにわたしも理解できないわ…。
世界の…自らの滅びを願いながら、仲間割れや無駄な争いを繰り返す貴方達が…。
自らの滅びを望む貴方達が未だ存在し続けている訳を…」
「僕たちは滅びを望んでいる訳ではありませんよ」
彼は即座にリナの言葉を否定した。
「滅ぼすために…滅ぶために存在しているのです」
彼は皮肉っぽく口元を歪めた。
「そのために『作られた』のです」
「でも、貴方達は無駄なことばかり繰り返している…。
結局は存在し続けることにある種の執着を覚えているのよ」
リナは彼の言葉を否定した。
「私達だってそうよ…。
生まれたその瞬間から『死』へと歩み始めているのに、生への執着を持つ…。
いつかは死ぬのよ…この体は朽ちるの。
大きな矛盾を抱えているのよ…でも、『生きたい』と願う…」
リナはそこで言葉をきると、自らの手をゼロスに見せるように差し出した。
「私の体は止まることはないわ…。
『生きている』限り、常に動き続ける…。
止まってしまったら終りなのよ…その瞬間にすべてが終ってしまうの。
たとえ自分が死んだあとも世界が続こうと…自分が死んでしまったら世界は終りなの。
きっと、だから『死』が怖いのね…。
失ってしまうのが怖いのよ」
彼はリナの手に自らの手を重ねた。
「僕たちだって失うのは怖いんです。
だからすべてを滅ぼしたいのかもしれません。
失う怖さから本当に逃れるために…その恐怖からすべてを救うために…」
重ね合せた手を見つめている彼にリナは断言した。
「私達はそんな救いなど望んでいないわ」
リナの言葉に彼は苦笑した。
「別に僕たちは喜んでもらおうと思って救いたいのではありませんよ」
「では何のために救うの?」
リナの問いに彼は微笑んだ。
「自分たちのためです」
重ねた手とその微笑みの温度があまりにもかけ離れているのを、リナは再び認識せざるをえなかった。
「…そんなのただの自己満足じゃない」
リナは彼の手から自分の手を逃がした。
「『救った』と思って自己満足に溺れるだけだわ」
彼は膝をついてリナと視線を合わせた。
「すべてを滅ぼしてしまったら、自己満足に浸る暇などありませんよ」
「では、これから救うと思って浸るのよ。
その優越感に溺れるのよ」
彼の言葉にリナは即座に反論をした。
「リナさん…『救う』というのは適切な言葉ではなかったようですね…」
彼はゆっくりと話しはじめた。
「僕たちは終わらせるためにいるのです…。
すこしづつずれていく世界を正しく始め直すために…すべての母が望む世界を維持するために…」
彼は優しげな微笑を唇に浮かべた。
「そのように作られているのです、僕たちは。
疑問一つ持てないように…ただそれだけを思っていられるように…」
「だからといって…生きたいと思うもの達の生命を奪う権利はないはずよ。
たとえそれがロード・オブ・ナイトメアの望みであったとしても…」
リナは微かに下唇を噛んだあと、頬杖をついた。
「…軽々しくその名前を口にしないでください」
彼は声を低くしてリナをたしなめた。
「それに、貴方にそんなことを言われたくはありませんね」
「…どういうこと…?」
いぶがしげに聞き返したリナに、彼は少し肩をすくめた。
「気付いていないのですか…?
いえ、そんな訳ではないでしょう?
隠したって事実は変りませんよ」
「私が不当に命を奪っているといいたいの?
確かに…私は命あるものを食べて生きているわ…。
でも、それが不当だとは言われたくはないわね」
「そんなことではありませんよ」
彼は立ち上がると、服の裾を払った。
「随分人間らしくなってきたじゃない、貴方も」
「リナさんに誉めて頂けるとは、頑張った甲斐がありましたね」
彼はにっこりと微笑んだ。
「ドラゴンもまたいで通るリナさんに誉めて頂けるなんて、身に余る光栄ですよ」
「……私も偉くなったものね。
獣王の神官を誉めて喜ばれるなんて」
リナは頬杖をつくのをやめると、彼を見あげた。
「でも、何故貴方がドラゴンもまたいで通るぐらいの悪名ですんでいるかわかりますか?
何故重罪犯として、討伐隊がでないのか…その話が笑い話として人々の噂になるのか…。
仮にも町をつぶしたり、著しい被害を与えた人物が…ですよ」
リナの顔に一瞬あせりとも呼べる感情が走った。
「…何を言っているの?」
いつもの余裕たっぷりの表情に戻ると、リナは聞き返した。
しかし、声が少し緊張しているのが彼には一目瞭然だった。
「町に金品を置いて去るぐらいならば、竜破斬なんて放たなければいいんですよ。
ねぇ、リナ・インバースさん?」
リナの顔が凍り付いた。
「貴方はきっと自分がそういう人物だと思い込むために…他人に再確認させるためにそういうことをしているのでしょう?
そこまでして、『自分』というイメージを保とうとしている…。
作り上げた『自分』であろうとする…。
でも、結局は自分が作ったイメージに自分自身が振り回されているんですよ。
作り上げた自分に本当の自分が否定されてしまうかもしれないのが怖いのでしょうか…?
いえ…今まで積み重ねてきたものに否定されるのが怖いのかもしれませんね…。
そして、その怖さから逃げるために他人を傷付けてしまう……。
でも、途中で怖くなって…自分の力で人が傷つくのが怖くなってそういうことをするのでしょう?」
リナはうつむいたまま、答えない。
「その資金のために、『悪人に人権はない』と自分に言い聞かせて盗賊を襲う…。
確かに盗賊を襲っても、良心は痛みませんよね。
盗賊にも盗賊でなければいけなかった理由があったかもしれないなんて考えなければ」
彼は勝ち誇ったように微笑んだ。
「そんなことを繰り返して…どうしたいのですか、貴方は?
何のために生きているのですか?
何故そこまでして生に執着するのですか?」
「……違うわよ…私はそんなことしていない」
リナはうつむいたまま呟いた。
「そんなことしていない…嘘よ」
「…そう思いたいのならば、別に構いませんけどね」
彼は足元のカップを爪先で転がした。
「僕に害があるわけでもないですしね」
カップの取っ手が床に当たって硬質の音をたてた。
「……今、私の『負』の感情食べているでしょう?」
リナが静かに聞いた。
「いえ…」
彼は微かに首を振る。
「頂いていませんよ」
「なら…何故そんな事言うの?」
リナの問いに彼は微笑んだ。
「きっと貴方にはわかりませんよ、リナさん」

   『ゼロス…この世に存在するものは、すべては同じ物であると同時に、まったく異質のものなのですよ』

彼の脳裏に上司の言葉が響いた。
(あの方は…いつこれを僕に教えてくださったんでしたっけ…?)
彼は軽く目を閉じて、思いだそうとした。
(遠い昔であったような…つい最近のことであったような…)
「リナさん、『この世に存在するものは、すべては同じ物であると同時に、まったく異質のものなのですよ』」
上司の言葉をそのまま、彼はリナに言った。
「どういうこと…?」
リナは少し顔を上げて、彼と視線を合わせた。
「それはですね…この世のすべてのものは、存在したという時点で『存在する』ということで同じ物なのです。
でも…存在した時点で他とは交われない…全く異質のものとなるのです」
「…当たり前じゃない」
リナは少し呆れ気味に言った。
「その当たり前のことに気付けないときもあるんですよ」
彼は静かに微笑んだ。
そして窓の外に視線を移すと、さも驚いたように声をあげた。
「おや…もうこんな時間ですよ。
寝ないと明日に響きますよ、リナさん。
睡眠薬も結構効いてきて、眠いでしょう?」
彼はリナが押し倒されたときに落ちてしまったマントを拾い上げると、リナが寝やすいように布団や枕を整えた。
「さぁ…ゆっくり休んでください。」
リナがベッドに横たわると、彼はベッドの縁に腰掛けた。
しばらく沈黙が続く。
何度目かの寝返りをうったリナに、彼は問いかけた。
「眠れないのですか…?」
「…まぁね」
リナは曖昧に返事をした。
「子守り歌でも歌ってあげましょうか?」
彼のからかうような言葉にリナは苦笑した。
「いいわよ…別に」
「まぁ…遠慮せずに。
歌についてはちょっと自信があるんです。
いつも獣王様から誉めていただいているんですよ」
疑わしそうな視線を向けたリナに微笑むと、彼は窓際まで歩いていった。
少し窓の外を眺めると、何の前触れもなしに彼は口を開いた。
『風わたり、雲なびく…。
 空高く…ふと、君を思う。
   陽を感じる様に、君を感じたい。
    ふと疑問を感じ、問いかけてみる。
     太陽よ…何を望み、我等を照らす?
      汝に如何程の利があるという?
       太陽は答えぬ…しかし、太陽は我等を照らし、恵みをもたらす。
爪先で風が投げかけた波紋を少し崩す…。
 そのまま水に足を滑り込ませ、故郷を思う。
  帰るところはもうないが、故郷の水も同じように冷たかった。
   ふと疑問を感じ、問いかけてみる。
    水よ…何を思い、我等を潤す?
     汝冷たきものではないのであろうか?
      水は答えぬ…しかし、水は我等を潤し、明日への生をつなぐ。
突然目の前が白くなる…。
 雪の様に、降りゆく花に身を埋め…。
  一輪の花に友を思う。
   ふと疑問を感じ、問いかけてみる。
    風よ…何の為に我等に吹く?
     汝に愛するものはいないのか?
      風は答えぬ…しかし、風は我等に変化を運び、今を作り変えてゆく。
足元の地面を蹴り上げた…。
 自分を抱きしめた腕は少し地面の香りがした。
  舞い上がった土に母を思う。
   ふと疑問を感じ、問いかけてみる。
    大地よ…何故我等を育む?
     汝が我等の母であろうか?
      大地は答えぬ…しかし、大地は我等を育み、我等はそこへ帰る。
神よ、最低の施政者よ。
 奇跡の羽を身に纏い、血塗れた歴史を築いた者よ。
  汝一度たりとも、真に立場弱気者の助けとなり得たか?
   汝の名の下に築かれた死骸の山はいずれ天への道となろう。
    奇跡を起こして逃げるがよい。
     奪い取った財に、吸い取った血潮…神の名とはそれ程にも価値があるのか……?』
少しづつ転調をしながら、彼は歌った。
歌いながら、彼も問いかけた。
何故…今歌うことになったのか…今ここにいるのか…。
誰も答えてはくれなかった…しかし、彼はすこし答えに近づいたような気がした。
歌い終わると、彼はリナの方を振り向いた。
「どうです、リナさん…。
と、もう寝てますね」
彼は苦笑するとリナに布団を掛け直した。
マントを羽織ると、彼はリナの寝顔に顔を近づけた。
親指の先で、軽くあごをなぞる。
「…すべては同じ物なのですよね」
彼は静かに呟くと、リナの額にくちづけた。
「おやすみなさい…リナさん」
リナの耳元でそう囁くと、彼は窓際まで再び歩いた。
「久しぶりに…ゼラス様のところに帰りましょうか…」
帰ってお酒でも酌み交わしましょうか、と彼はつぶやいた。
そして月の光に微かに目を細めると、その光に溶け込むように消えた。
辺りは何事もなかったように静まり返った。
ただ、少し不自然に乱れたシーツのあとだけが彼のいた事を示していた。



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2456Re:〜酒>sake.utage<宴〜 <後編>さぼてん 4/25-21:18
記事番号2442へのコメント

 葉月ちゃん後編のレスです。
ちょっとレス付けるのは難しかったですが・・・・
まぁところどころ引用しつつ書きました。

>「そうですね…たしかあれは400年ほど前のお話です…」
長く生きてる(?)ゼロスのは400年なんて短い物なんでしょうか?

>   『でも…あなたに殺されるのならば、それもまた一興ね』

>   『それに…あなたに会ったときから、わかっていたわ』
>
>窓の外を眺めながら、彼は話を続けた。
>「彼女は、僕に殺されることは前からわかっていたと言いました」
>   
>   『では、何故僕と旅をしたのですか?』
>
>「僕は彼女に何故僕と旅をしたのかと尋ねました。
>そうしたら、彼女はこう答えました」
>
>   『遅かれ早かれ、私はいつか死ぬ…。  
>   だったら、好きな人に殺されたいと思ったの』
ゼロスさまかっこいいもいんね。(そーゆー問題じゃないって)


>「わたしはまだ人生そんなに生きていないから、『死して得る幸せ』がどんなものかなんて知らない。
>知っているのは、『生きて得る幸せ』だけ。
>今のわたしには、『死して得る幸せ』よりも『生きて得る幸せ』の方が重要だわ」
私も「生きて得る幸せ」の方が重要だな。
でも今の状態は満足してないけど。

>「貴方は彼女とは違う『強さ』を持っていますね。
>そして、彼女は貴方とは違う『強さ』を持っていました。
>しかし、双方とも僕には理解できない『強さ』ですね。
>でもきっと…それが人間の『強さ』なのでしょうね」

そうなんでしょうなねぇ・・・でも完璧に理解できませんね。

>『からかっていて、楽しいの?』
>リナはじっと彼の瞳を見つめた。
>リナのその紅い瞳にも、月明かりがいつもにはない美しさを添えている。
>『少しだけ…ですけど、楽しいですよ』
>彼は微笑んだ。
>そして、また指に一房の髪をからませる。
前編のフィブリゾみたい。(笑)

>(でも…この4人組と旅をしていても、やはり僕は魔族ですよね…)
らしくなったと言うだけですからねぇ・・・

>   『ゼロス…この世に存在するものは、すべては同じ物であると同時に、まったく異質のものなのですよ』
>
>彼の脳裏に上司の言葉が響いた。
>(あの方は…いつこれを僕に教えてくださったんでしたっけ…?)
>彼は軽く目を閉じて、思いだそうとした。
>(遠い昔であったような…つい最近のことであったような…)
>「リナさん、『この世に存在するものは、すべては同じ物であると同時に、まったく異質のものなのですよ』」
>上司の言葉をそのまま、彼はリナに言った。
>「どういうこと…?」
>リナは少し顔を上げて、彼と視線を合わせた。
>「それはですね…この世のすべてのものは、存在したという時点で『存在する』ということで同じ物なのです。
>でも…存在した時点で他とは交われない…全く異質のものとなるのです」
うみゅ難しいです。
考えれば考えるほど分かんなくなります。

>そして月の光に微かに目を細めると、その光に溶け込むように消えた。
>辺りは何事もなかったように静まり返った。
>ただ、少し不自然に乱れたシーツのあとだけが彼のいた事を示していた。

なんか終わりという感じがしませんね。
それになんか話がムズかしくって・・・・
なんかいろいろ考えさせられますね。感じ的にはエヴァという感じですか?
「interesting」(スペル間違ってるかも)って感じです。
いろいろ矛盾することがあるんだなぁって・・・・
ほんとに面白かったです。
ではまた。






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2454Re:〜酒>sake.utage<宴〜 <前編>さぼてん 4/25-20:32
記事番号2441へのコメント

>「おっちゃ〜ん、お酒ふたつ〜」
>しばらくして運ばれてきた二つのカップを指差しながら、彼はリナに尋ねた。
>「…二つも飲むのですか?」
二つもって一つでもやばいんじゃないか?

>「悩み事があるときは、ぱぁっとお酒でも飲んで寝るのが一番よ」
>リナは彼の言葉を遮ってこう言うと、パチンと片目をつぶってみせた。
>(それは人間だけなのでは…)
そうかもしんない。(笑)





…)
>彼はまた酒を一口口に含んだ。
>もう、酒はカップの半分ほどに減っている。
>一方のリナはというと、まだ一口口と付けたぐらいにしか減っていない。
一口口に・・・一口口とのとこ四角だからえ?とか思いましたよ。(笑)

>それだけ言うと、彼は歩き去った。
>しかし、彼は気付いただろうか?
>自分の剣から振り払われた血はすべて黒い霧となって消えていることを…。
ふつーは気付かんとおもうなぁ・・・少なくとも私は
痛くないのかなぁ・・・

>『これも…ゼラスの趣味か?』
>少年は彼のマントをつまみあげた。
>『こんな趣味をしているとは気付かなかったなぁ。
>あの美人なお姉さんは、いつも意外な行動にでる』
趣味って・・・?服装とかのこと?

>(この方は一体なにを?!)
普通の人から見たら変な趣味持ってると思われるよねきっと(笑)


>『あれ、食べに行きたくないんですか?
>珍しいですねぇ…』
>(こころもちか体が動いたような気が…もうヒトオシですね)
>そう考えると、僕はきびすを返した。
>『あ、ならいいですよ。
>その方が家計の節約になりますしね』
確かに節約になるわ。

これ読んでると、ゼロスさまっていつもこんな事考えてるのかなぁっ思えましたよ。
実際はどうなんでしょうねぇ・・・・
後編読みに行きます。
ではっ


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2443SAKURA  〜PART1〜鷹見 葉月 E-mail 4/25-14:39
記事番号2440へのコメント
             
     
                   SAKURA




          『貴方がいなければ、生きてゆけない』


                > chapter1 <


「東宮さくら様でいらっしゃいますね?」
その呼びかけに応えて振り返ったのは、黒髪の美しい少女だった。
彼女の動きに合わせて、無造作に垂らした黒髪が微かに風を含んで宙を流れた。
「SAKURA財閥総帥の命を受けてお迎えに参りました」


巨大なディスプレイを見つめていた青年は小さく笑い声をたてた。
「『SAKURA』が使いと接触した」
まだ少し幼さが残るその横顔を見つめていた天使はふわりと微笑んだ。
「何がおかしい…蓮?」
俗に言う『天使の微笑み』をそのまま美しい顔にたたえた少年―――蓮は少し首をかしげると、久しぶりに言葉を話そうと形の良い唇を動かした。
「健が珍しく嬉しそうだからだよ」
静かに開かれた扉の音に蓮は再び口をつぐんだ。


フレームレスの眼鏡を片手でそっと外すと、さくらは唇に艶やかな笑みを浮かべた。
「知らない人にはついて行かないように教えられているの、私」
「いい心がけやな」
突然後ろからかかった声に少し目を見開いた。
「だが…知らん奴やないで」
ゆっくりと振り返ったさくらの視線の先には、背の高いスーツ姿の青年が立っていた。
青年はサングラスをとると、皮肉っぽく微笑んだ。
「一応親戚や…かなり遠縁やけどな」
その言葉にさくらは大げさに肩をすくめた。
「私の親戚に大阪弁の人が居るなんて知らなかったわ」
「言葉で人間差別したらあかんで」
わざとらしく青年がたてた笑い声がおさまるのを待って、さくらは真顔で問いかけた。
「で、貴方誰?」


「総帥、ヘリコプターの準備が整いました」
うやうやしく跪いた黒服の男を一瞥すると、健は事務的に答えた。
「わかった…すぐ飛べるように準備しておけ」
「はっ」
深く頭を下げて部下が出て行くのを確認すると。健は蓮に視線を移した。
「……来るか?」
「行く…。
僕も『SAKURA』を見てみたいから」
蓮は天使の様な顔に妖艶な笑みを浮かべた。


    『SAKURASAKURASAKURASAKURASAKURASAKURASAKURASAKURA』


「出してっ…出しなさい!!」
広いリムジンの車内でさくらは青年に詰め寄った。
「まぁまぁ…家まで送ったるってゆうとるがな…」
「頼んでないわよっ!」
叫んださくらの鼻先に青年はカップを突きつけた。
「紅茶…好きやろ?」
にっこりと微笑んだ青年に、さくらは形の良い眉を跳ね上げた。
「…んなことを言っているんじゃないわよ…」
さくらは青年の胸倉をつかみあげた。
「最近周りの様子がおかしくてイライラしているときにっ…イキナリ現れて親戚ですって…?!
冗談じゃないわよ!!
桜財閥だかなんだか知らないけどっ…私に関わらないで!!」


薄い金の髪がNEWYORKの空になびいた。
「蓮…落ちるぞ」
背のなかばあたりまである髪を片手で抑えながら蓮は振り向いた。
この世のものとは思えないほど美しく微笑した蓮に、健は手を差し出した。
「約束だろう?」
蓮はもう一度高層ビルのふちから下を眺め下ろすと、すぐ後ろまで歩いてきた健の手を取った。
そっと抱きしめられた蓮の頬を一筋の涙がつたった。


重い沈黙を破ったのは突然笑い出した青年の笑い声だった。
「何が可笑しいのよ?!」
「いや…おもろい娘さんやなぁ…と…」
目に涙を浮かべながら青年は言った。
「何ですって?!」
青年は自分の胸倉を掴みあげている手を片方づつ外すと、さくらを無理矢理隣に座らせた。
「小野…今どこや?」
「新宿の西のほうですが…」
最初にさくらに声をかけた男はおずおずと答えた。
「新宿の第3ビルの方に車を回せ」
「ちょっと…待ちなさいよ」
その会話を聞いてさくらは身を乗り出した。
「どこに連れて行く気よ?!」
「新宿の第3ビルや」
青年はさらりと答えた。
「うちに連れていってくれるんじゃないの?!」
おもわず席を立ったさくらを押し戻すと、青年は微笑した。
「さくらの苦労はこれからや…その前に予備知識だけでもつけたる」
「苦労…?」
少し眉をひそめたさくらの額を青年は軽く指ではじいた。
「そうや…最近何故周りの様子がおかしいか…何故お前が追われる羽目になったのか…。
全部教えたる…」
さくらは真実を確かめるように青年の瞳を覗きこんだ。


5機の軍用ヘリが高層ビルの間を擦り抜けるようにして飛んでいった。
「あとどれぐらいで着く?」
「5分程でございます」
健の問いにオペレーターはうやうやしく答えた。
腕の中で静かな寝息を立てている天使の髪に軽く指を絡めると、健は窓の外に視線を移した。
「『SAKURA』…今ミツルはどこにいる?」
そのままの体勢で呟くように問いかけた健に電子的な声が答えた。
『Third building in SINJUKU, Ken』
「裏切ったね…」
瞳を閉じたまま蓮は呟いた。
「決め付けるのは、まだ早い…」
優しく髪を撫でながら、健は蓮の言葉をたしなめた。
「雷…聞こえるか?」
『はい』
どこかに取り付けられているマイクから無機質な声が流れた。
「ミツルの行動を追え」
『はい』
「必要なら消して」
横から口を挟んだ蓮はまだ一見すると寝ているようである。
「以上だ」
軽く手を振ってマイクを切らせると、健は蓮の髪にくちづけた。
「我が天使は自分の身内までお殺しになられるようだ…」
長い睫毛の下から深緑の瞳をのぞかせると、天使は無邪気に微笑した。
その笑みに応えるように、健は天使にくちづけた。


「やっと動いたようですね」
長い髪をゆるく一つに束ねた女性はディスプレイを見つめながらくすりと笑みを洩らした。
「『SAKURA』…取り戻して見せますよ、我が手に…」
国宝級とも言われている着物の袖を返して立ち上がると、彼女は狂ったように笑いはじめた。


後手に扉を閉めると、青年はさくらに歩み寄った。
「好きなところに座ってええで」
その言葉に応えて、さくらは無言で自分から一番近いところにあったソファーに腰を下ろす。
青年がさくらと机をはさんで向かい合うように座るのを待って、さくらは切り出した。
「で……貴方、誰?」
「加納ミツル、17歳。
成城高校2年…ってトコやな」
ミツルは内ポケットから学生証を取り出すと、さくらに手渡した。
「成城…ねぇ…」
超一流校の名を呟きながら、さくらは疑わしそうに学生証を眺めた。
「ちゃんと試験受けて入ったで」
ミツルは苦笑しながら弁解をした。
「一応英才教育受けてきた身やからな」
少し伸ばした髪を指先でこうるさげに払うと、ミツルはポケットから小さな黒い機械を取り出してテーブルに置いた。
「……何?」
「スタンガン…電気銃とも言うわな。
武器はこれしか持ってないで安心しとき」
整った顔に意地の悪そうな笑みを浮かべると、ミツルは指先でスタンガンをはじいた。


   『SAKURASAKURASAKURASAKURASAKURASAKURASAKURA……KILL』


「やっ………」
長い金髪が宙を流れた。
固い空港の床に倒れた蓮に、人の良さそうな老人が手を差し出した。
「Excuse me...are you all right?」
蓮からは返事がない。
なかなか立ち上がらない蓮を案じて、老人は蓮の肩に手をかけた。
「Is anything wrong, ma...」
顔を上げた蓮と目が合って、老人は絶句した。
絹糸のような髪の下からのぞく深緑の瞳…抜けるように白い肌と恐ろしいほど整った顔…。
まるで聖書にでてくる天使のような蓮に目を奪われてしまったのであろう。
そして、蓮は天使のような顔に優しげな笑みを浮かべた。
「Hands up!」
数人の男達が老人の頭に銃を押し付ける。
「天間…来て」
健に抱きかかえられるようにして立ち上がると、蓮は腹心の名を呼んだ。
黒いスーツに身を包んだ男が自分の前に膝をつくと、蓮は抑揚のない声で命じた。
「コート…新しいの持ってきて」
天間が頭を下げて立ち去ると、蓮は老人を見下ろして言った。
「Sorry, I don't like to be touched by others...」
天間が持ってきたコートに袖を通すと、蓮は再び健と歩き始めた。
「やはり直接移動した方がよかったな…」
健の呟きに、蓮はくすりと笑みを洩らした。
「いいよ…楽しかったから」
銃声が彼らの後方から響いた。


「ここが東京…か」
サングラスをかけた女性は髪をかきあげた。
「来たわよ…ミツル」
飛行機は摩天楼の上空をまだ飛んでいた。
帰る場所を探す小鳥のように…。


「さくら…『SAKURA財閥』って知っとるか?」
さくらは小さく頷いた。
「名前だけは…戦後までかなりの力を持っていた財閥の一つよね?」
「表向きはな…」
ミツルは声を少し低くした。
「確かに戦後までは力が強かった…だが、今は力が強いなんてものやない…」
そこで一息つくと、ミツルは一気に続けた。
「すべてのトップに立っている…裏のな。
世界の政治、経済、人々…すべてを裏から牛耳ってとるんや…」
「小説のような設定ね」
さくらは冷静にそう評した。
「で…それと私とどう関係があるの?
まさか名前が一緒だから…とは言わないわよね?」
「『SAKURA財閥』を実質的に動かしているのは一台のスーパーコンピューターや…。
人工知能とプログラム『SAKURA』を搭載したコンピューター…俺達はプログラム名から『SAKURA』と呼んでるけどな…」
さくらは少し眉をひそめた。
「冗談を言っているの?」
ミツルは真顔でさくらを見つめると、その言葉を否定した。
「本気やで…信じる信じないはあんたの自由やけどな…」
その迫力に押されて、さくらは小さくため息をついた。
「続けて…」
「『SAKURA』の特性は機械ならば大抵なんでも操れるというところにある…。
しかし、その『SAKURA』を操れるのは限られた人間だけや」
張りつめたような空気の中、二人の視線が絡み合う。
「『SAKURA』のプログラマー、ラルフ=バークリーの妻、櫻の血を引くものだけや…」
ミツルは自らの手へ視線を落とした。
「私がそうだと言いたいの?」
冷静な声でさくらは確認した。
「そうともいうわな…」
ミツルは言葉を濁した。
「ラルフは知らへんかったんやけど…櫻には一卵性双生児の妹がおったんや…。
一卵性らから、遺伝子の構造も同じや。
だからその血筋の者も『SAKURA』を操れる…『使役』できるんや」
「それが、私?」
ミツルは小さく頷いた。
「だったら…何故今ごろになって…」
「『SAKURA』は最近使役者についての最終決定を下した…。
次代の使役者は使役者同士の婚姻からのみ生まれると断定したんや」
ミツルはさくらの言葉を遮って言った。
「それに…『SAKURA』は複数の使役者が同時に命令を発した場合、血筋の濃い方の命令を受け付けるというプログラムが組み込まれとる…」
さくらは少し下唇を噛んだ。
「俺達は…櫻から数えて4代目なんや…だがお前は3代目や…。
その結果、お前の使役力は俺達を上回った…」
「それが何になるというの?」
さくらは感情のない声で問いかけた。
「そんな事知らないわよ…。
何故私まで巻き込むのよ…?」
「『SAKURA財閥』総帥はまだ17や…。
けれど、その命令は絶対や」
ミツルはさくらを刺すような目で見つめた。
「総帥は…あいつはさくらを妻に迎えると決めた…。
さくらはもう逃げられへん…『SAKURA』の呪いから…」


ホテルのスイートルームと見間違うほど豪華に整えられた飛行機の室内で健はパソコンのディスプレイに神経を集中させていた。
次々と入ってくる情報に合わせて、次の命令を出す…。
そんな健を横目で眺めていた蓮だが、机にそっと置かれたコーヒーが冷めたのを見て、不機嫌そうに口を開いた。
「ねぇ…健……」
「今、忙しい」
ミもフタもない健の物言いに、蓮は可愛らしく首をかしげた。
「キス……して」
自他ともに認める愛らしい微笑みを上目遣いまでつけて、健に振りまく。
「今忙しいと言っている」
ちらっと蓮に視線を移すと、健は小さくため息をついた。
「あとで好きなだけかまってやるから、あっちに行っていろ」
蓮は右手で頬杖をつくと、少し不機嫌そうに健に語りかけた。
「へぇ…僕にそんなこと言うんだ…。
知らなかったな…そんなに健が僕の事嫌いだったなんて…」
健からは返事がない。
蓮は可愛らしく頬をふくらませると、無造作に手を突き出して命じた。
「天間…電話」
そっと手渡された携帯電話を手慣れた手つきで操作すると、蓮は軽く髪を払って耳元に運んだ。
「『SAKURA』…聞こえる?」
その言葉に健が顔を上げる。
「僕が10数えたらこの飛行機落として」
『Yes, REN.
Please start the countdown』
「蓮…」
険悪な目つきで睨んできた健に意地の悪そうな笑みを浮かべてみせると、蓮は静かにカウントダウンを始めた。
「…dix…neuf…huit…」
「蓮……」
携帯電話を無理矢理奪い取ろうとした健の手を天間が止める。
「天間…放せ!
雷、柳蘭…蓮を止めろ」
健の言葉にコクピットの方から飛び出して来た二人は、すぐに蓮に容易に近づけない事を悟る。
「蓮様…銃をお収めください」
雷の言葉を無視して蓮は微笑むと、軽く目を閉じた。
「…duex………un…」
その瞬間、健は急に身を沈めて右手を掴んでいた手を振り払うと、蓮の肩に手を伸ばす。
同時に雷が銃身をねじりあげるようにして引き寄せた。
そして、反動で倒れた蓮の手から滑り落ちた携帯電話を柳蘭が拾い上げる。
雷が小さくため息をついた時には、蓮は健の腕の中で放心していた。
倒れ込む寸前に、健が蓮を自分の方に抱き寄せたのである。
「………泣くな」
健のその言葉に蓮は初めて自分が涙をこぼしているのに気がついたかのように、濡れた手の甲を見た。
「…健……僕…」
そっと顔を抱き寄せられて、蓮は小さな子供のように泣きはじめた。
そんな蓮の細い肩を健はそっと抱き寄せた。
「…ご…めんなさい…。
でも…でも……」
健は蓮の額にくちづけた。
続いて、瞼や頬や髪にも…。
「…気付いてやれなくて、悪かった」
耳元で囁かれて、蓮は目に涙を溜めたまま動けなくなってしまった。
「お前に対しての『SAKURA』の干渉はもうそんなにないだろうと踏んでいた。
脳内のチップはもう取り除いたのだし…目覚めてからもう2年近く経った。
時間が解決したと…それで片づけようとしていた」
健は蓮の涙を指の腹で拭った。
「…また怖い夢を観たのか…?
それとも、何か聞こえたのか?」
蓮は小さく首を振った。
「なら、休むといい…。
天間に薬を持ってこさせよう」
蓮は再び小さく首を振った。
「…悪夢は…終ることはないよ…。
起きていても…寝ていても…僕の悪夢は終ったりしない…」
「蓮…」
蓮はぎゅっと健の手を握り締めた。
「健……僕らは桜に…殺される」
健は無言で蓮を抱きしめた。


「大層なお出迎えね」
飛行場に降り立った女性は腰に手を当てて、言い放った。
「櫻守家のお嬢様がわざわざ出向いてくるなんて」
「馨子様…口が過ぎますよ」
着物を着た女性の側に控えている青年が馨子をたしなめた。
「すいませんね…何しろ育ちが悪いものですから」
馨子は無造作にサングラスを外して胸のポケットにしまう。
「馨子殿…御健勝のことなによりです。
ざっと…3年ぶりでしょうか?」
束ねていた長い髪を垂らしたその女性は、先程とは打って変わって優しげに微笑んだ。
「ええ…北京でしたか、最後にお合いしたのは?」
馨子はなお警戒を解かずに応じた。
「その時はお兄様とご一緒でしたね」
女性は軽く首をかしげた。
「そうだったかもしれませんね…」
可愛らしく微笑むと、女性は側近目配せをした。
「馨子様…立ち話も何ですし…久しぶりに本邸の方にいらしてはいかがでしょう?
櫻蘭様との積もる話もおありになるでしょうし…」
慇懃無礼をそのまま形にした様な口調で青年は告げた。
櫻蘭と呼ばれたその女性は馨子を一瞥すると歩きはじめた。
ついて来ないとは思ってもいないようであった。
そして出会ったときと違い、馨子もついて行くことに利点を見出していた。


さくらはミツルを睨み返した。
二人は時間がしばらくの間止まってしまったかのように動かなかった。
「『あいつ』ということは知り合いなの?
それに、『呪い』というのは大袈裟ではないかしら?」
最初に『静』から『動』の状態に戻ったのはさくらだった。
「仮にも21世紀を目前に控えたこの日本で、『呪い』なんて言葉を小説以外で聞くことはないと思っていたわ」
ミツルはその言葉に意地の悪い笑みを取り戻した。
「小説の主人公になった気分やろ?」
「そうね…そうとも言えるような気がするわ」
ミツルの言葉をさくらはあやふやに肯定した。
「『呪い』言うもんわな…作るのは超越的な存在でも霊魂や宇宙人でもない…。
人の『思い』や…。
怨んだり、憎んだり、愛したり…その時々に違うと思うけど、『思い』には違いあらへん…。
『SAKURA』に集まった『思い』は相当のものやで…覚悟しとき」
ミツルは真面目な顔でそれだけ告げると、自分の腕時計に視線を移した。
「もうこんな時間やんか」
わざとらしく大声をあげたミツルを、さくらは恨めしそうに睨んだ。
「気がつかなかったとは言わせない…」
「さくら送ってかなあかんな。
園原…さくら送ったって」
さくらの言葉を遮ってミツルが部下の名前を呼ぶと、降ってわいたように一人の男がさくらの背後に現れた。
「…………………………誰?」
思いっきり疑わしそうな視線を向けてきたさくらに、ミツルはさわやかに微笑んだ。
「俺の部下。
さっきの小野なんかとは格が違うぐらいしっかりした奴やから、絶対さくらを家まで無事に送ってくれるわ」
さくらは園原のほうに向き直った。
「さくらの家までの障害物をとことん破壊するぐらいは、朝飯前やし」
さくらと目が合うと、園原は目礼して部屋を退室した。
「……一つだけ聞いていい?」
さくらは振り返らずにミツルに問いかけた。
「あの人…日本語通じる?」


   『KILLSAKURAKILLSAKURAKILLSAKURAKILLSAKURAKILLSAKURAKILL』


隣で静かな寝息を立てている蓮の髪に、健はそっと指を絡ませた。
「…さくらに殺される…か…。
…俺達では…あの少女を手中に収めきれないということか…」
自嘲気味に呟いた健に、雷は上着を差し出した。
無言でそれを着込みながら、健は側で控えていた天間に視線を移した。
「あとは任せる、天間」
「…はい」
雷は天間にありったけの殺意のこもった視線を向けると、健に従って隣室に移った。
二人が去ったるのを確認すると、天間は蓮の眠っているベッドの側に跪いて項垂れた。
「蓮様…申し訳ありません…」
その言葉は天間以外の誰の耳にも届かず、虚しく響いただけだった。


車内電話を置くと、青年は櫻蘭に耳打ちをした。
「そうですか…」
櫻蘭は静かに呟いた。
そして馨子のほうに向き直ると、にっこりと微笑んだ。
「馨子殿…不思議な報せがはいりましたよ」
馨子からは返事がない。
しかし、馨子は言葉ではなく視線で続きを催促した。
「蓮殿がまた不思議な『予言』をしたそうです…」
「蓮君が…?」
馨子が少し身を乗り出した。
「どういうことを、言ったの?」
櫻蘭は軽く目を閉じると、報告そのままに繰り返した。
「『…僕らは桜に…殺される』…」
「僕らは…櫻に殺される…?」
噛み締めるように馨子は呟いた。
「殺される…櫻に…?
まさか…亡霊に取り殺されるとでもいうの…?」
「馨子殿…どうかいたしましたか?」
尋常でない馨子の様子に、櫻蘭は声をかけた。
「気分でも悪いのですか…?」
馨子は小さく首を振って否定した。
そして、櫻蘭をしっかりと見つめると、一つの要求を突き付けようと口を開いた。


「小野さん…だっけ?」
さくらに呼びかけられて、助手席に座っていた男が振り向いた。
「何…でしょう…?」
園原の険悪な視線に少々の戸惑いを感じながら、小野は聞き返した。
「貴方、年収いくら?」
「年収……ですか?」
いきなり突拍子もないことを聞かれて、小野は情けない声を出した。
「はぁ…私は…そうですね…年に4500万円ほど頂いておりますが…。
それが、何か…?」
「この人ね…」
さくらは園原を指差した。
「給料もらってないって言うのよ。
でも、少なくても貴方よりは偉そうだから、貴方はいくらぐらい給料もらっているのかな…と思っただけだから」
「はぁ……」
さくらの摩訶不思議な発言に、小野はもう完全に度肝を抜かれていた。
「よかったわね、園原さん。
貴方、年収4500万の人より偉いみたいよ」
さくらは満足げに園原の肩を叩いた。
そして、再び黙ってシートに背を預けると、小さな声で呟いた。
「でも…その人を手足のように使うあいつは…何者…?」


「…雷…どうした?」
健に呼ばれて、雷は書類整理をしていた手を一旦止めて、姿勢を正した。
「何でしょうか…健様」
「…いや…お前が何かに噛み付きそうな目をしているのが気になっただけだ。
何か不満だ…?」
押し黙ってしまった雷に、健は苦笑した。
「聞くまでもないな…天間のことか?」
いつもは寡黙な健だが、この同い年の側近といる時だけは普通の青年…少年の顔に戻る。
「…健様、何故あのような行いをした者を罰しないのですか?」
「蓮を扱えるのは天間だけだ」
健は即答した。
「でもっ…あいつは健様に手を挙げました。
そんな奴の側で知らぬ顔していることなど…」
「言うな…雷」
少し興奮気味の雷を健は静かに諭した。
「今、『SAKURA』のマスターは俺じゃない…蓮だ…。
あいつの意見が最優先されるのは当たり前のことだ」
健は視線を手元の書類へ移した。
「蓮の精神状態はひどく不安定だ…。
極端なことを言えば、あの日以来…精神的には成長していない。
15歳の体を持った5歳児となんら変わりはない…」
健は自嘲気味に笑った。
「そして…その蓮を創ったのは俺だ…。
あいつが未だに悪夢で苦しむのも…本当の笑顔を奪ってしまったのも…身体の状態を悪化させているのも…すべて俺だ…」
「健様…」
雷はかけるべき言葉を失ってしまった。
慰めの言葉など、彼の主は必要としないだろう。
しかし、他にかけるべき言葉があるのだろうか?
「…健様の所為ではありません…。
…健様はあれほどにも蓮様のことを大切にしているではないですか…」
雷の紡いだつたない言葉に、健は微笑した。
「…ありがとう、雷」


閑静な住宅が立ち並ぶ中、一台のロールスロイスが周りの他の家より二まわりほど大きな家の前で静かに止まった。
「…どうぞ」
軽やかに車から降りたさくらは、園原の方を振り向いて笑った。
「荷物…返して。
うちの父より年収の多い人に荷物持ちなんかさせられないわ」
差し出されたバッグを無造作に肩にかけると、さくらは軽く手を振った。
「じゃあね…園原さん」
園原が一礼して車に乗り込むと、さくらは玄関に向って歩き出した。
「…ただいま、母さん」





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2444SAKURA  〜PART2〜鷹見 葉月 E-mail 4/25-14:48
記事番号2443へのコメント


「ミツル様…お客様がいらっしゃいましたが…」
おずおずと話し掛けた女性にミツルは親しげな笑みをうかべた。
「どこに?」
「2階の応接間の方に…」
キーを幾つか叩いてノートパソコンの電源を切ると、ミツルは立ち上がって伸びをした。
「待たせたな。
さて…案内してもらおうか」
女性の肩をぽんぽんと叩くと、ミツルは扉の方に視線を移した。
「いや…その必要はあらへんようやな…」
「ミツルっ…!!」
扉を壊しそうな勢いで開けたのは、うしろに櫻蘭を従えた馨子だった。
「なんや…馨かいな…。
久しぶりやな。
うしろにいらっしゃるのは…櫻守家の姫君やないか」
「御久しぶりです、ミツル殿」
櫻蘭は優雅に微笑むと、会釈をした。
「せっかく来てあげたのに、その態度はなに?」
ミツルは怒りを含んだ馨子の言葉には反応せず、側で呆然としていた女性に帰るように指示している。
「ちょっと…ミツル?!」
今度は櫻蘭に椅子を勧めはじめたミツルに、馨子は声を荒げた。
その言葉にも応じずミツルは部屋の扉を閉めると、振り向いて少し肩をすくめた。
「相変わらず気が短いな、馨は」
「ロンドンから呼びつけておいて、そのセリフは何?」
その言葉にミツルは吹き出した。
「何が可笑しいのよ?!」
噛み付きそうな勢いで怒った馨子に駆け寄ると、ミツルは彼女を抱きしめた。
「待ってた…」
そのミツルの言葉に、馨子は彼の腕の中で少し悲しげに微笑した。


ゆったりとした部屋着に着替えたさくらは、テーブルの上に用意してある夕食をつまんで口に放り込んだ。
「さくら…つまみ食いは駄目だって言っているでしょう」
苦笑いを浮かべて言った母親に、さくらは微笑んだ。
「お腹すいたの…色々あってね」
「もう、用意できているわ…頂きましょう」
母親の言葉に、さくらは席についた。
「いただきます…」
行儀よく手を合わせると、さくらは箸を手に取った。
「何があったの…今日?」
そう早くはないが、確実に目の前の皿を空にしていく娘に、母は問いかけた。
「ん…色々と…」
手の動きは止めずに、さくらは曖昧に答えた。
「何が色々なの…?」
いつもとは違いいまいちはっきりしないさくらに母親は少し首をかしげて、問いただした。
「…変な人にからまれたの」
今ごろ変な人扱いをされたミツルはくしゃみの一つでもしているのだろうか、などと思いながら、さくらは目の前の皿に一つだけ残っていた春巻を口へ運んだ。
「…その人が言うにはね、自分は大きな財閥の使いで、私を迎えに来たっていうのよ」
口の中を空にすると、さくらは今日あったことの要点をまとめて母親に伝えた。
それを聞いたとたん母の動きが止まってしまったことを、さくらはたいして気にしていなかった。
「桜財閥っていうの…知ってる?」
さくらの問いに、母親は箸を手放してしまった。
しかし、それを拾おうともせず無言でうつむいている母親にさくらは言葉を継げずにいた。
「…ま…まさか…そんな…」
常に冷静沈着であった自分の母がそんな言葉を口走るのを見て、さくらはかろうじて一言母親に問いかけた。
「…知っているのね?」
「……さくら…大丈夫、何もされなかったの?
さくらにまで近づいてくるなんて…あんな奴等死んでしまえばいいのに…!!」
今までとは打って変わって聞き返す間もなく自分に話しはじめた母親に対して、さくらは困惑の色を隠せなかった。
そして、生まれて初めて聞いた母親の他人に対しての呪詛の言葉…。
「あなたまで狙われるなんてことはないわよね?
そうよね、さくら?」
同意を求められて、さくらは反射的に頷いた。
「あんな奴等に関わったらだめ…狂っているわ、奴等は…」


微かな衣擦れの音に、天間は顔を上げた。
「お目覚めですか、蓮様…」
自分の主人がけだるそうに起き上がるのに手を貸そうと、天間は蓮に近づいた。
薬でまだ朦朧としている頭を片手で抑えると、蓮は天間に視線を送った。
「何かお持ちしましょうか?」
多少辛そうな蓮に、天間は事務的に声をかけた。
「…ロシアンティーが飲みたい…」
蓮の唇から零れた言葉に、天間は頷いた。
「かしこまりました、すぐにお持ちしましょう」
天間がつい先程沸かしたお湯と、すでにポットに入っている葉が無駄にならなかったため、蓮の望みはすぐに果たされた。
紅茶に少し口をつけると、蓮は小さくため息をついた。
「…どなたかいらっしゃったようですよ」
いち早く気配を察して、天間が蓮に声をかけた。
天間の言うとおり、数瞬後小さなノックの音が部屋に響いた。
「…入るぞ」
返事を待たずに入ってきた無礼な入室者に蓮は微笑した。
「健…仕事はもういいの?」
「別に…」
その返事に、また雷に押し付けてきたんだなと蓮は苦笑した。
「何がおかしい?」
健の問いに蓮は小さく首を振って答えた。
「なにも…」
隣に腰掛けた健の肩にそっと頬を寄せると、蓮は嬉しそうに微笑んだ。
「で、どう…さくら?」
一転して感情のない声で問いかける。
「特に異常無しとミツルからは連絡が入ったが…」
そこで言葉をきると、軽く目を閉じた。
「母君が激昂状態で大変のようだ」
「ふ〜ん…」
蓮は目を伏せて少し考え込むような仕種をした。
「どうかしたのか…?」
しばらく無言になってしまった蓮に、健は声をかけた。
「健…やっぱりデイジーもあったほうがいいと思う」
「薔薇だけでは駄目なのか?」
蓮の言葉を確認するために、健は聞き返した。
「デイジーか…向日葵を用意して…」
一歩も引かない蓮の言葉に、健は小さくため息をついた。
「…荷物が重くなるな」
そして、蓮をそっと抱き寄せた。


「『SAKURA』に殺される?
確かにそう言うたんか、蓮が?」
櫻蘭の言葉に、ミツルは少し声を高めた。
「私の情報によりますと…」
櫻蘭が物怖じせずに答えた。
「やっと…というべきか…。
ついに…の方が正しいかもしれんな…」
噛み締めるようにミツルは呟いた。
馨子に袖を少し引っ張られて、ミツルはいつもの口調に戻る。
「まぁ…あとは蓮に直接会って聞くことにしとこう」
お得意の皮肉っぽい笑みを浮かべると、ミツルは向かい合って座っている櫻蘭に問いかけた。
「で…何が知りたいんや?
お姫さんの知らん事なんて、あるかどうかわからんけど」
櫻蘭は艶やかに微笑むと、ゆっくりと切り出した。
「貴方がNYを去ることになった理由…お聞かせ願えますね?」
「………蓮に追い出された」
数瞬の間を置いてから、ミツルはきっぱりと答えた。
「どういう理由ででしょうか?」
櫻蘭は不思議そうに問い返した。
「…あいつの自尊心を…傷つけた…」
その時のことを思い出して、ミツルは少し悔しそうな目をした。
「…もしかして…?」
隣で聞いていた馨子が目を見開いた。
「…ミツル殿も苦労なさいますね」
櫻蘭が少し目を伏せた。
長い睫毛が頬に影を作る。
「さて…もうすぐ兄も帰ってくることですし…。
私は帰らせて頂きます」
立ち上がる櫻蘭に手を貸すと、ミツルは櫻蘭に言付けた。
「兄上に『明日の予定は変更しておいてくれ』と伝えてくれんか?
電話で言い忘れてしもた」
櫻蘭は返事のかわりに軽く会釈をした。


やっと落ち着いて眠りに引き込まれた母親にそっと毛布をかけると、さくらは窓に近づいた。
「……どういうこと…?
あの母さんが取り乱すなんて…SAKURA財閥との間に何が…?」
さくらは窓にそっと手を当てて、外をぼんやりと眺めた。
隣の家は団欒の真っ最中である。
「…父さんがいてくれたなら…」
無理な願いだとわかっていても、呟かずにはいられなかった。
今ごろはどの愛人のところにいるのであろうか、とさくらはその呟きを打ち消すように考えた。
「にゃあー」
さくらは足元に擦り寄ってきた黒猫を抱き上げると、その首筋に顔を埋めた。
「…HOPE…どうしよう…?」
希望の名を冠した黒猫は、ぺろぺろとさくらの涙を舐めた。


   『KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILKILL』


「おはようさん♪」
さくらが玄関の門を出た途端、リムジンから身を乗り出してミツルが声をかけた。
「あら…昨日の変人さん」
その言葉に、ミツルは脱力した。
「変人ってなぁ…どういう意味やねん?」
「文字どおりの意味よ」
そのまま歩き去ろうとしたさくらのそでを、ミツルはぎゅっと掴んだ。
「…何?」
眉をひそめたさくらを、ミツルは上目遣いで見つめた。
「送ってたる」
「嫌」
またもや脱力したミツルに、さくらはため息をついた。
「また変なところに連れて行かれたのでは、たまらないわ。
それに、今日全校朝礼があるのだけど…」
袖を掴んでいるミツルの手がまだ離れないのを見て、さくらは言った。
「離してくれると嬉しいわ」
「今日は俺の一存やないから無理やろ、それは」
ミツルは深いため息をついた。
「一時間、なんとしてでも足止めせいちゅう命令やからな…」
「サボらせる気…?」
さくらの少々怒りを含んだ声に、ミツルはうんざりと頷いた。
「俺もさぼっとるから、我慢してくれ」
「じょうだんじゃないわよっ!」
振り払おうとするが、やはり訓練を積んだミツルに勝てるわけがなく、無理矢理車の中に押し込まれてしまった。
抵抗を試みたが、あっさりとミツルに押さえられてしまう。
「そのかわり、一時間たったらなんでも好きな乗り物で学校まで送ったる」
「いいからはなしてっ…」
ミツルの言葉も、腕をねじり上げられた状態では何の意味も持たなかった。
「はなしてってばっ!」
「悪い…」
ぱっと放したミツルに、さくらは半ば唸るように言った。
「だったら、一番早い乗り物で連れて行って」
ミツルは余裕の笑みを浮かべて頷いた。


専用機でVIP用の搭乗口に乗り付けた蓮は、小さな伸びをした。
「久しぶりの日本だね、健」
振り返って楽しそうにそう告げると、蓮は羽が生えた様に軽やかに歩き出す。
「…蓮様、大丈夫そうですね」
「まさか…フリだけだ」
耳元にそっと囁いた雷に、健は言い切った。
先刻蓮が飲んだ薬の種類を思い浮かべながら、健はため息をついた。
「……やはり連れて来るべきではなかったな」
健は自嘲気味に呟くと、自分を待っている蓮に向って歩き出した。
嬉しそうに健に駆け寄って腕を絡めると、蓮は健にしか聞こえないように言った。
「僕なら大丈夫だから…。
昨日の事は気にしないで…」
健は無言で頷くと、蓮を促して歩きはじめた。


さくらはその乗り物を眺めた。
「…これ?」
「どうや、これなら速いやろ?」
ミツルが嬉しそうに指差したのは、一機の戦闘機。
今二人が立っているガラス張りの部屋のすぐ外で、整備中である。
「音速超えるで〜」
すごく楽しそうに言うミツルを横目に、さくらは呟いた。
「どこに降りる気?」
「その質問を待っとたで、俺は」
すぐ後ろのテーブルに地図を広げると、ミツルは赤いペンで一個所に丸をつけた。
「ここがさくらの学校や」
さくらは頷く。
「で、ここに高速道路が通っとるやろ?」
その丸のすぐ側の道をペンで示す。
「もしかして…」
「ここの車を止めて、ここに降りる」
きっぱりと断言したミツルに、さくらは呆れた視線を向けた。
「…そのためにわざわざこんなところまで来たの?」
すでにさくらの誘拐もどき事件が発生から55分が経過していた。
ここ…自衛隊の基地まではヘリコプターで来たのである。
「そう…やけど…」
「………馬鹿?」
さくらの問いに、ミツルは首を縦に振った。
「さくらの望みなら何でも叶えたろうと思ってる、ただの馬鹿や」
さわやかに微笑すると、ミツルは机に置いてある電話の受話器を手に取った。
「ヘリならええやろ?
迷惑もかけへんし…校庭に降りられるからな」
さくらが小さく頷くと、ミツルは受話器に向って話しはじめた。
突然鳴り始めた小さな電子音に、さくらはポケットベルを取り出した。
「『SAKURA KILL』…?」
送られてきたメッセージに、さくらは眉をひそめた。
ミツルは受話器を置くと、さくらの手元を覗き込んだ。
「…なんや…これ?」
「…送信者不明…逆探できる?」
さくらの問いに、ミツルは首を振った。
「ここの設備じゃ無理や…。
本社にある、SAKURAのサブ・コンピューターまで行かんと…」
「そう…」
さくらは残念そうに目を伏せた。
そんなさくらを見つめていたミツルだが、自分の鞄からノートパソコンを取り出し、起動させた。
「試すだけ、試してみる…」
ミツルはさくらと視線を合わせると、挑むような目つきで問いかけた。
「アシスト…してくれるやろ?」
「…出来ることなら、なんでも」
さくらは頷いた。
ミツルは携帯電話をパソコンに繋いだ。
それを手早くダイヤルすると、キーをいくつか叩いた。
「さくら…お前を『SAKURA』に使役者として仮登録するけど、ええか?」
ミツルはさくらに携帯電話を差し出した。
「どういうこと…?」
電話を受けとりながら、さくらは問いかけた。
「そのままや…。
さくらが一回だけ『SAKURA』を使えるようにする…」
「私に対しての以後の拘束は?」
さくらの問いかけに、ミツルは数瞬考え込んだ。
「これからも、さくらのデータは『SAKURA』に知られることになるけど…。
それはどちらにしろやし…健たちに知られたところで害があるわけでもあらへんし…」
少々自信なさげに答えるミツルに対して、さくらは確認した。
「ない、ということね?」
ミツルは頬杖をついた。
「まぁ、そう言うてもええわな」
さくらは受話器を耳にあてた。
ミツルは片手でキーをいくつか叩くと、さくらに視線を移した。
「『SAKURA』とオンラインや…。
命令してええで」
「…もしもし?」
いきなり言われて、思わず間抜けなことを言ってしまうさくら。
ミツルがくすっと笑みを洩らしたのを目で牽制すると、さくらは再度話しかけた。
「SA…KURA…?
聞こえる?」
『Yes,SAKURA』
無機質な女性の声に、さくらは少し目を見開いた。
「あの…私のポケベルに入ったメッセージの発信元…わかる?」
『Now start searching』
『SAKURA』の声を合図に、ミツルのパソコンの画面が目まぐるしく動きはじめる。
珍しく真顔に戻ったミツルが、その画面に目を通している。
頬杖はついたままだったが…。
『Searching…finish』
30秒ぐらい経ったころ、『SAKURA』が検索終了を告げた。
「で…どうなの?」
「見事に撒かれてしまったわ」
『SAKURA』が答える前に、ミツルが告げた。
『Sorry,searching object LOST.
Saerching object LOST.』
「Jesus…!!」
ミツルがディスプレイに向って吐き捨てた。


蓮はリモコンを使って、テレビを消した。
「くだらない…楽しみにしていたのに…」
残念そうにそう呟くと、蓮はぱたっと後ろに倒れた。
「何がくだらないんだ?」
いつのまにか現れた健に顔を覗き込まれて、蓮は微笑んだ。
「テレビ…久しぶりの日本のテレビだったのに…。
なんだかゲイノウジン…っていうの…そんなののプライバシーばかり…。
こんな国だった、日本って?」
「お前が大人になっただけだろう」
健はベッドの縁に腰掛けると、紙袋から色々な本やCDを取り出した。
「あ、覚えていてくれたの?」
嬉しそうに起き上がると、蓮は健に近づいた。
「日本で売れている本とかCDだよね?」
一冊を手にとってぱらぱらとめくりながら、蓮は尋ねた。
「一応そう言って買いに行かせた」
紙袋を足元に置くと、健も持ってきたものを物色し始めた。
「あ…この人さっきテレビにでてた。
紅い目に、白い髪の…ナントカっていうバンドのボーカルと付き合っているとかいないとか…」
青いカバーの本を指差すと、蓮はそれを手に取った。
「誰が…?」
「この本の作者だよ」
ぱらぱらと本をめくりながら、蓮は答えた。
「えっと…あおてんでら…あい?」
あとがきを読みながら、蓮は名前を読み上げた。
「…貸してみろ。
…『そうてんじ らん』だろう、これは…」
蓮から本を取り上げると、健は名前を読み上げた。
一瞬考え込んだのち、蓮は小さく頷いた。
「さっきテレビでそう言ってた。
奇麗な人だったよ…日本人の割には背も高くて、顔の彫りも深くて…。
でも…あの人女かな…男のような気もするけど…」
蓮は首をかしげた。
「どっちだろう…?」
「知りたいのか?」
蓮は本を閉じると、ふるふると首を振った。
「…知らないでおく。
イメージが崩れそうだから…もしわかったら…」
ここで僕が知りたいなんて言ったら、健はこの人を連れて来るだろうな…と思いながら蓮はCDの包装紙を取った。
「『Only Wanted to Love You』…?」
蓮は小さな声で英語で書かれた詩を読み上げた。
「『From the sky, from the earth.
I'm always looking for you, just to love you.
From the sea, from the land.
Searching, just want to see you』…」
「聞くか?」
ポータブル・CDプレイヤーを差し出しながら健は聞いた。
「うん…でも、もう時間だよ」
「そうだな…」
健は何かに思いを馳せる様に、視線を空に這わせた。


その言葉に、パイロットは絶句した。
「あの…校庭に…ですか?」
「そうや」
かろうじて聞き返したパイロットに向って、ミツルはあっさりと言い放った。
「じょ…冗談でしょう…?」
熟練のパイロットは恐る恐るミツルに確認した。
しかし、ミツルはあっさりと首を振った。
「む…無理ですよ、あんなところ。
今だって、高度を保っているのが精いっぱいなんですよ!!」
パイロットの悲壮な声にさくらは振り向いた。
「今更帰るわけにもいかないでしょう?」
ため息交じりに言ったさくらに、ミツルは頷いた。
再び高層ビルの観察に乗り出したさくらに、パイロットは救いを求めようとしたが、この状況ではそれも不可能であった。
私立光蘭学園・東京校舎。
都心の一等地に建てられた三つの高層ビルによって構成されており、室内の運動場やプールなども持つ最新鋭の学校。
さくらは学校の一般的なイメージを思い出して、またため息をついた。
どうやら、高層ビルの合間からかい間見える学校への道は、まだ遠いようである。


「馨子殿、お茶でもいかかですか?」
「ありがとう…そこに置いておいて」
徹夜明けで眠い目を擦りながら、馨子は応じた。
「論文…ですか?」
熱いお茶を置きながら、櫻蘭は馨子に尋ねた。
「ええ…締切がもうすぐなの」
ノートパソコンから視線を外さずに、馨子は答えた。
「やはり大変なのですね…。
あ、これ…もしよろしければお食事のかわりにと思いまして…」
「え…私に…?
ありがとう…今こういうものが食べたかったの」
まだ暖かいおにぎりと漬物を見て、馨子は感謝の声をあげた。
昨夜からずっとつけっぱなしにしていたノートパソコンの電源を切ると、馨子は櫻蘭と向かい合う位置に座り直した。
「…頂きます」
軽く櫻蘭に頭を下げてから、馨子はおにぎりを手に取った。


「波瀾万丈を身をもって体験した気分だわ…」
校庭に降りたったさくらは小さな声で呟いた。
「何か言うたか?」
すぐあとにヘリから降りてきたミツルはさくらに尋ねた。
さくらは軽く首を振ると、苦笑した。
「なんでもない…」
「それならええけど…。
……さくら…今何時間目の授業や?」
ミツルの言葉に、さくらは腕時計で時間を確認した。
「今休み時間……だけど…」
さくらが視線を合わせると、ミツルは小さく頷いた。
「…それにしては静かすぎると思わんか?」
確かに辺りは静まり返っていた。
学校特有のあの活気はまったくなく、あたりには校外の音が虚しく響いていた。
さくらは校舎を見上げると、眩しさに少し目を細めた。
「…誰も廊下を…歩いていない…?」
さくらの呟きに、少し考え込んでいたミツルははっと顔を上げた。
「さくらっ…今は本当に『休み時間』なんやな?」
「え…ええ…」
ミツルの剣幕に、さくらは少し戸惑いながら答えた。
「Damn!」
ミツルは悔しそうに瞳を閉じた。
「…一時間…確かに充分やな…」
天を仰いでミツルは呟いた。
そんなミツルを見つめていたさくらだが、急に身を翻すと、教室に向かって早足で歩き始めた。
途中誰ともすれ違わないのを不審に思いながらも、いつもの慣れ親しんだ教室のドアを開けると、そこにはクラスメート達がいつもと変わらぬ姿でさくらを見つめていた。
さくらは小さく安堵のため息をつくと、微笑んだ。
「おはよう」
しかし、誰一人として答えない。
皆さくらに注目しているというのに…。
「遅刻…よね…。
やっぱり先生に謝らなきゃ駄目かしら?」
「あの…職員室なら2階ですよ…」
さくらの言葉に、おずおずと一人の女子生徒が発言した。
「何言っているの、山本さん?」
少し眉をひそめて聞き返したさくらに、その女子生徒は再び言った。
「転校生なら…まず2階の職員室に行った方がいいと思いますよ」
「何…馬鹿にしているの?」
焦りを隠しながらさくらが言い放つと、教室が急にざわついた。
「ねぇ…何の真似?」
「真似も何も…からかっているのはそっちの方だろう?」
一人の男子生徒が前に進み出て言った。
「うちのクラスに転校生が来るなんていう連絡は入っていない。
他のクラスと間違えているんじゃないか?」
他の生徒からも同意の声があがる。
さくらは唇を噛み締めた。
「からかっているのならいい加減にして。
私は…私がからかわれるのを好きじゃないのは知っているでしょう?」
非好意的なクラスメートの視線に耐え切れずに、さくらは少し視線を下に落とした。
「俺達は貴方なんて知らない。
そちらこそからかうのはいい加減にしてくれ」
代表格の男子生徒にそう言われて、さくらはきっと顔を上げた。
「私はっ…」
「やめとけ」
ミツルに後ろから肩を掴まれて、さくらは振り返った。
「あいつらはさくらの事なんて覚えとらへん」
真摯なミツルの瞳に、さくらは黙り込んだ。
「今日は全校集会やって言うたな?」
ミツルはさくらのクラスメートを見渡した。
「もし…その時に集団暗示をかけたら…」
ミツルの瞳がある一点で止まった。
小さくため息をつくと、ミツルは続けた。
「人の記憶なんて案外曖昧なもんや。
結構…すぐ忘れてしまうものやな、なぁ…聖香」
ミツルはつかつと教室に踏み込むと、一人の女子生徒に歩み寄った。
長い髪のその少女は無表情でミツルを見上げると、口を開いた。
「なんのことでしょうか?」
「俺が聞きたいぐらいやっ…。
聖香、お前…!」
ショートカットの少女がその間に割り込んで、ミツルを睨み付けた。
「ちょっと…さくらに何するの?!」
「…夕紀…さん…?」
その少女の行動に、さくらは目を見開いた。
「俺はそいつに用があるんや」
「イキナリ入ってきて、何…あなたたち?
さくらをどうする気?」
ミツルは夕紀という少女を押しのけるようにして聖香に近づくと、腕を掴み上げた。
「健か…蓮か…こんな手口を使うのは?
…俺の専売特許やで、これは…」
「貴方には関係ない事です」
ミツルは投げ捨てるようにして掴んでいた手を放すと、さくらに歩み寄った。
「帰る…」
「…何を…」
聞き返したさくらの手を掴むと、ミツルは歩き始めた。
「ちょっと…待って…」
引きずられる様にして歩くさくらは、ミツルに抗議の声を上げた。
ミツルは急に足を止めると、さくらにむかって呟いた。
「帰らんと…やばいかもしれん」
さくらはミツルの手を無造作に振り払った。


黒い手袋のベルトをぎゅっと締めてもらうと、蓮は振り返った。
さりげなく足元のショートブーツとコーディネートされた手袋は、蓮には少しアンバランスだった。
「蓮…一つ聞いていいか?」
「何、健?」
可愛らしく微笑んだ蓮に、健は少しうんざりとした口調で問いかけた。
「何故わざわざ迷彩服など着る必要があるんだ?」
柱に寄りかかって立っている健の服装はジーンズに白いセーターといたってカジュアル。
それとは対象的に、迷彩服で身を固めた蓮は何かの雑誌のモデルのような不思議な雰囲気を作り上げている。
「だって…やっぱりムードが必要かなって…」
少し上を見上げながらそう答えた蓮に、健は小さくため息をついた。
「Let's go...Ren」
少し手招きをすると、蓮は嬉しそうに健に駆け寄った。
「OK...Ken.
Let's...go」




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2445SAKURA  〜PART3〜鷹見 葉月 E-mail 4/25-14:59
記事番号2444へのコメント


どたばたと廊下を走る音に、腰を上げかけた櫻蘭は眉をしかめた。
「おっ…櫻蘭様!!」
走り込んできた部下に厳しい視線を向けると、櫻蘭は座り直した。
「申し上げますっ…。
け…健様が特殊部隊50人あまりを率いて、東宮家に向かわれております」
「何ですって?!」
馨子が声を荒げた。
「さくらを殺す気?!」
「…聖香や雷は…?」
静かに問いかけた櫻蘭に、部下は更に頭を下げて答えた。
「そ…それが、もうすでに全員それぞれ人員を引き連れて行動に移っております」
「もういいです、車の用意を」
櫻蘭の冷めた言葉に、男は額を床にこすり付けるようにしてお詫びの言葉を述べると、また廊下を騒々しく走っていった。
「…さくらは渡せません」
噛み締めるように呟くと、櫻蘭は立ち上がった。


「どういうこと…あれは?」
ミツルが捕まえたタクシーの中で、さくらは尋ねた。
「今日…全校朝礼だったやろ…。
そこで聖香…あの髪の長い女が…暗示を…ある種の…そう、催眠術を全校生徒にかけたんや…」
途切れ途切れにミツルは答えた。
「それで…そのお陰で、皆は聖香のことをさくらやと思ってるはずや…。
『東宮さくら』は…あの学校の中では聖香や…」
ミツルは手を力一杯握り締めた。
そして、さくらをしっかりと見つめると、申し訳なさそうに言った。
「俺…の所為だ…。
悪かった…言い訳がましいけど…まさかあんなことが起こるとは思わんかった…」
「貴方の所為ではないと思うわ…。
確かに足止めしたのは貴方だけど、それは貴方ではなくても誰かがやっていたと思うわ」
さくらは微笑した。
「それより…皆の記憶は元には…」
「戻る。
解き方さえわかれば…それは俺がなんとかしたる」
ミツルの頼もしい言葉に、さくらは少しため息をついた。
「期待している。
夕紀さんにまで…忘れられてしまっていたのでは、少し悲しいから…」
さくらは窓の外に視線を移した。
そして、窓ガラスにそっと手を触れると、再びため息をついた。
そんなさくらを見つめていたミツルだが、突然バックからノートパソコンを取り出すと起動させた。
「さくら…今のうちに機密情報洩らしたる」
「え…?」
意外そうな表情で振り返ったさくらに、ミツルはにやっと笑ってみせた。
「敵…やないけど、まず相手を知っておいた方がええやろ」
そして、さくらに近寄るとディスプレイを見せながら説明を始めた。
「まず…SAKURA財閥の総帥…。
櫻守 健…」
ミツルは幾つかのキーを叩いて、健の写真を画面にピックアップした。
「17歳やから…俺と同い年やな、当たり前やけど。
使役者の本家である櫻守家の若きご当主や。
使役力はさくらの約半分強…といったところやな
愛想無し、手加減なし、恋人なしのないないそろった奴やけど、実は一つだけ好き嫌いがあったりするんだな…」
「やけに詳しいじゃない」
さくらの言葉に、ミツルはあっさりと答えた。
「俗に言う幼なじみだから」
その言葉に、さくらは小さく首を振った。
「次…行って」
「…次は…蓮・マリア・バークリー」
またキーを幾つか叩いて、今度は蓮の写真をピックアップする。
「奇麗な女の子…」
思わずさくらが洩らした呟きに、ミツルは心底嫌そうな顔をした。
「顔だけは奇麗やな…。
これでも、正真正銘の男やで」
「………この子が…男?」
聞き返したさくらに、ミツルは頷いた。
「俺の従兄弟…今15歳…だったと思う」
「従兄弟って…金髪に緑の目…よ?」
ディスプレイを見つめながら、さくらは呟いた。
「蓮の母上はフランス人と日本人のハーフ、父上はアメリカ人や。
俺の母と蓮の母君が兄弟だったんやな。
一応俺もクオーターなんやけど…やはり東洋人の特色は強いみたいやな」
ミツルは画像を切り替えた。
今より少し髪の長い蓮が健の横で微笑んでいる。
「使役力はさくらの10分の8から9あたり…。
現在の『SAKURA』のマスター…最高使役者や」
さくらはディスプレイに顔を近づけた。
「本当に奇麗な子ね…。
人形って人が理想とする人を作り出したものだと思っていたけど…その人形より奇麗な子がいるなんて、神様は人間より面食いね」
「そうやな……」
ミツルはさくらに同意した。
すべての愛を一身に集める蓮への少しばかりの嫉妬もこめて…。


健と共に姿を現わした蓮に、訓練された兵士たちが少しざわついた。
「今から…作戦を実行に移す」
しかし、よく通る声で健が兵士達に告げると、辺りは急に静まった。
「作戦は事前に連絡したとおりだ。
変更はない。
では、各自持ち場に移れ」
兵士達は敬礼をすると、小走りにそれぞれの持ち場へと散っていった。
蓮は健の袖をちょっと引っ張ると、健を見上げて問いかけた。
「さくらの家までどれぐらい…?」
「30分…というところだな…」
蓮は嬉しそうに微笑んだ。
「30分…30分後にはさくらに会えるんだよね?」
「ああ…そうだな」
蓮は健に何かを耳打ちすると、軽快な足取りで自分が行くべき場所へと向かった。


「次は…っと」
「…………着いたみたいよ」
窓の外に視線を移したさくらが、緊張した口調でミツルに告げた。
「おるなぁ…やっぱり…」
ミツルはさくらの家の周りに配備されている人物を発見すると、少し面倒そうな口調で呟いた。
そして、バックからごそごそとマイクの付いた小型のイヤホーンを取り出すとそれを装着する。
次にポケットに入っている定期や学生証を鞄に移して、代わりに携帯電話を入れる。
最後に懐から例のスタンガンを取り出すと、さくらに手渡した。
「俺はちゃんと武器あるから…さくらはこれ持っておけ」
さくらはそれを受け取ると、ブレザーのポケットに仕舞い込んだ。
「使い方はわからないけど…とりあえず借りておくわ」
ミツルは小さく頷くと、車のドアを開けて外に出た。
さくらもそれに続く。
そのままさくらの家に入ろうとしたミツルに対して、もちろん警備の人物は非難の声を上げた。
「困りますっ…勝手に入られたら…」
ミツルはさくらに肩越しに振り向いて微笑むと、片手を上げた。
「『SAKURA』…Give him a little sleep, or else ...death!」
ミツルが手をその男に向かって振り下ろすと、その男は一度大きく痙攣して倒れた。
「……何…?」
さくらの問いにミツルは振り向かずに答えた。
「『SAKURA』を使って、あいつの足元の電気をすべて逆流させた…」
ミツルはマイクの位置を調整しながら、振り向いた。
少し悲しげに微笑すると、ミツルはさくらを手招きした。
「行こう…さくら。
ここで止まっていても何も始まらん…」
「待って…」
玄関に向かって歩き出したミツルをさくらは呼び止めた。
「貴方も…『SAKURA』の使役者なの……?」
ミツルは立ち止まると、足元の土を蹴った。
「現在存在が確認されている使役者は4人…。
健・蓮・さくら…そして俺だけだ…」
再び歩き始めたミツルの後をさくらは急いで追った。


櫻蘭は馨子と目が合うと、微笑した。
「論文の方はよろしいのですか、馨子殿?」
「これが片付いたら聖香を攫って帰る事にするわ」
本気とも冗談ともとれる答えに、櫻蘭は微笑んだ。
「…まだ貴方が中学生だなんて信じられないわ…。
その落ち着き方は仙人の域に達してるわね」
櫻蘭は少し首をかしげると、馨子に会釈した。
「お褒めの言葉と受け取っておきます」
そして真剣な面持ちで馨子に告げた。
「私としては、さくらを渡すわけには参りません。
そのためにはどんな手段でも使う事をお忘れなきよう…」
「…わかっている…」
馨子は櫻蘭の視線から目をそらすように、窓の外を眺めた。
もうさくらの家からそう遠くないところまで来ていることに気付いて、馨子は小さくため息をついた。
「『…僕らは桜に…殺される』…」
蓮の言葉を誰にも聞こえないぐらい小さな声で呟くと、櫻蘭は微笑した。
「さくらに殺された者達を踏み越えてでも、私は…」
小さな声で何かを呟く櫻蘭を不思議に思った馨子と目が合って、櫻蘭は言葉を打ち切った。


「母さんっ…!」
さくらがリビングに駆け込むと、そこには呆然と座り込む母の姿があった。
四人目の見張りをあっさりと地に這わせると、ミツルはさくらを駆け足で追った。
「…東宮…沙樹さん…やな?」
さくらが抱き着いている女性に、ミツルはそう声をかけた。
「…あなたは…?」
呆然として問い返したさくらの母に、ミツルは会釈した。
「加納ミツル…です。
『SAKURA』財閥の…」
「いやぁぁぁっ!!」
ミツルが『SAKURA』財閥の名を告げた途端に、沙樹は頭を抱えてうずくまった。
「母さん…」
「来ないで…来ないでっ…。
私からさくらまで奪わないでっ…!!」
さくらは母親をぎゅっと抱きしめた。
「…すまない…」
ミツルはさくらに短くお詫びの言葉を述べた。
さくらは母親を一層強く抱き寄せると、ミツルの方を向いた。
「どういう……こと?」
さくらの強い視線から、ミツルは少し視線をそらした。
「…どういうこと?」
少し口調を強めてさくらは繰り返した。
「……さくらと同じや」
ミツルはきまりが悪そうに言った。
「私と…?」
「その…母上も強い使役力を持っていて…。
先代の櫻守家当主が……その人を……誘拐…したんや」
ミツルはまださくらと視線を合わせない。
さくらはミツルを探るように見つめた。
「…………それだけ?」
さくらの問いにミツルは小さく首を振った。
「詳しくは知らへんけど…色々酷い事されたみたい…や」
ミツルは大きくため息をつくと、沙樹に歩み寄った。
そして、無理矢理左腕を掴みあげると、袖を捲りあげた。
「この傷…たぶん火箸かなにかで付けられた火傷の痕だと思う…。
体中に傷があるじゃないか、母上には……?」
さくらは答えるかわりに、ミツルを射るような目つきで睨み付けた。
「離してっ…」
沙樹はミツルの手を振り払った。
「すいませんでした、悪気はなかったのですが…」
「帰って…いいから帰ってっ!!」
ミツルはさくらに目配せをした。
さくらは一瞬軽蔑したような視線をミツルに送ったが、母親の背を優しくなで始めた。
「大丈夫…私はここにいるわ…。
この人は母さんを攫ったりしない…」
さくらは苦笑した。
そして、ミツルと視線を合わせると、小声で尋ねた。
「私は…どこにも行かないわよね?」
ミツルは小さく頷いた。
「そうやと…ええな」


   『SAKURASAKURASAKURASAKURASAKURASAKURASAKURASAKURA』


「さくら…行ってしまうの…?」
ミツルのその言葉に、沙樹は顔を上げた。
「また私に辛い思いをさせるの?
また私から何か奪うの?」
「…何を言って…?」
戸惑うさくらに、沙樹は追い討ちをかけるように言い立てた。
「さくらなんていう名前までつけたのに…。
それでも行ってしまうの…裏切るの?」
母親の思いがけない言葉に、さくらは目を見開いた。
「私は…裏切るなんて…」
「そう…あなたはいつも私から大切なものを奪っていくのね…」
さくらは母親の顔を覗き込んだ。
「最初から私は母さんのものではないわ…。
この世に生み落とされた瞬間から私達は他人よ」
冷たいさくらの言葉に、母親は絶句した。
「でも、他人なのに、何故この歳まで母さんと一緒にいたと思うの?
何故まだ一緒にいると思うの?」
さくらは唇を噛んだ。
乾いた唇を疎ましく思いながら、さくらは母親の肩をしっかり掴んだ。
「母さんが好きだから…一緒にいたいからよ。
私は母さんを嫌ったりしていない」
さくらは悲しげに微笑した。
「櫻守はもうそれ程無法な行動はとらない。
さくらを同意なしに連れ去ったりすることはないはずだ」
ミツルはイヤホーンを片手で押さえながら言った。
さくらはミツルと視線を合わせると小さく頷いた。
「超自然現象や異星人…人々は何故もっと身近なものの不思議に気がつかないのだろう?」
「不思議ということでひとくくりにされてブラックボックスに放り込まれたものは、そういう興味しかうけつけないようになっている…。
人々が作り出した娯楽の一つやないか…」
ミツルは意味不明な答え方をした。
「そうね…でも、本当は気付いていても触れたくないのかもしれない…」
さくらはどこか遠くを見つめるような表情をした。
「いくら奇麗な言葉で飾り立てても、醜いものだもの…愛なんて」
「思い込みの究極形かもな…」
ミツルはさくらと同じ方向に視線を送った。
そして、壁にかけられている写真に目を止める。
幸せそうに微笑んでいる沙樹と若い男が立っているのは、まだ建てたばかりのこの家の前だった。
沙樹の身につけている白いワンピースが妙に印象に残る。
「幻想かもしれない…でも、そういうものにすがりたい時もあるわ…」
さくらは写真を見つめながら言った。
「自分が…自分の存在が何によって生み出されたか考える時とか…ね。
少しでも綺麗な方がいいもの、やっぱり」
さくらは苦笑すると首を振った。
「母さん…母さんは何があっても私の母親よ。
その事実だけはこれからも変わらないわ…。
父親がいなくても…母さんがいたから今までやってこれた…。
二人きりの家族よ」
柄にもなく優しい言葉を母親にかけると、さくらは微笑んだ。
しかし、沙樹はそんなさくらを突き飛ばした。
「そうよ…あなたさえいなければっ…。
あの人もまだ私の物だったのに…。
あなたさえ生まれてこなければっ…!!」


「Ken...look at this!」
「Ren...be careful」
ヘリから身を乗り出した蓮を、健は引き戻した。
「I know, I know」
蓮はさっきまで自分が居た場所…大型のレーザーガン『デイジー』の側に座り込んだ。
武器に花の名前をつけるのは悪趣味だとミツルがさんざん言っていたことを思い出して、蓮がくすりと笑みを洩らした。
しかし真面目な顔に戻ると、スコープを覗き込み、最終調整を行う。
「いつ見ても不思議ですね、この光景は…」
雷が健に耳打ちした。
『SAKURA』のマスターである蓮には、レーザーガンを見えないところに打ち込むなど造作もない事であった。
『SAKURA』は脳波を伝えるヘッドギアを装着した蓮の意志を確実に実行してゆく。
独りでに接続されるコードや勝手に方向調整を行う銃口…。
それは端から見ると、蓮がまるで魔法使いのように機械を動かしているように見えた。
「『SAKURA』...Ready?」
蓮は小声で呟く。
そして引き金に細い指をかけた。


「…そう思っているんやったら、何でさくらを愛した?
何で最初から突き放さなかったんや?!」
沙樹の言葉に、ミツルは激昂した。
「何故さくらを愛した…?
今更そんなこと言うてもしょうがないやんかっ!
貴方の夫は…どちみち貴方の側に居るべき人やなかった…。
それだけの話やないか…何故さくらにそのことまでぶつける?!
確かにさくらの能力の所為で貴方はたくさんの物を失っている…。
でも、最後に手元に残ったさくらまで捨てるつもりか?!」
沙樹の瞳から涙が溢れた。
さくらはその涙を拭うと、母親を抱きしめた。
「何故…そんなことを言うなら、何故最初から冷たくしてくれなかったの?
そうすれば失う物もなかったのに…」
「…何度も殺そうと思った…。
でも…愛さずにはいられなかったの…。
貴方は私の…」


「Fire!」
蓮は言葉と同時に細い指に力を込めた。
細身の銃口が一筋の光を生む。
「Look at this, Ken!
My shooting skills are equally well as yours」
「Ren...」
健の厳しい口調に、蓮は少し肩をすくめた。
「Don't worry, I remember....」
蓮はヘッドギアについたマイクを口元に近づけると、小さく深呼吸をした。
「Everyone...ready?」
数瞬待って返事が無いのを確かめると、蓮は自らも下に降りるための梯子に足をかけた。
「GO!!」
蓮の声に応えて、5機のヘリコプターからそれぞれ兵士達が飛び降りはじめた。
蓮は地上の部隊も包囲を開始していることを確かめて、屋根の上に軽々と飛び降りた。
そして、小型の銃を構え直すと、さくらの方へと駆け出した。


さくらもミツルも、継ぐ言葉を見つけられなかった。
血は流れていなかった。
ただ、つい数秒前まで生きていたものが死んだだけだった。
高エネルギー反応に気付いてミツルがさくらを突き飛ばしたのと同時に、沙樹の頭部は蒸発した。
先刻までさくら達が座り込んでいた場所は、真っ黒に焦げていた。
「ミツル!!」
大きな音をたてて、馨子が駆け込んで来た。
「ど…どういう…こと…?」
その状態を見て馨子が発した言葉は、いつもの彼女だったら間抜けだと嘲笑ったであろう類の言葉であった。
「……手後れでしたか…」
馨子のあとからやってきた櫻蘭は、静かに呟いた。
「この際仕方ありません…。
さくら殿、御同行願います」
呆然と母親の死体を見つめているさくらに歩み寄って、櫻蘭は彼女を無理矢理立たせようとした。
「…連れていかれたら困るんだけど」
その言葉と共に、蓮が天井から飛び降りて来た。
体勢を立て直して微笑むと、蓮は櫻蘭に銃を向けた。
「聖香…さくらを…。
櫻蘭、久しぶりだね…。
君にさくらは渡せないよ、彼女は君には過ぎたモノだからね」
「蓮殿…相変わらずですね。
しかし、私もここで引くわけには参りません」
先程の制服姿から一転して戦闘服姿に着替えた聖香は、さくらに歩み寄った。
「聖香…」
「どいてください」
ミツルの呼びかけをあっさりと一蹴すると、聖香はさくらと目線の位置を合わせた。
その聖香を見て、ミツルは立ち上がると蓮に歩み寄った。
「久しぶり、ミツル」
「元気に…しとったか?」
満面に笑みをたたえた蓮の頭をぽんぽんと叩くと、ミツルは少し不自然に微笑した。
「…なんで聖香を止めなかったの?」
少し声を低くして問いかけた蓮に、ミツルは肩をすくめた。
「あいつには借りがあるし…無理矢理に止められる相手でもないしな」
その言葉に、聖香が少し振り向いた。
ミツルは小さく頷くと、口をつぐんだ。
「…いいですか、さくら…。
貴方のお母様を殺したのは…櫻蘭です。
貴方も見たでしょう…櫻蘭がやって来て母親を殺すのを…。
…いいですか…貴方の母親は櫻蘭に殺されたんです」
聖香はさくらの瞳を見つめながらそう諭した。
それを幾度か繰り返しているうちに、さくらがその言葉に頷き始めた。
5回目にその言葉を言い終わると、聖香は蓮に歩み寄った。
「完了しました」
蓮はマイクを口元に近づけると、無表情に命令した。
「SAKURA is in our hand.
Operation finish, now start the settlement」
その言葉に、櫻蘭は一瞬蓮を睨み付けると、袖を返して早足で歩き去った。
蓮は自我を喪失しているさくらに歩み寄るとさくらと目線を合わせるために膝をついた。
「さくら…誰なの、こんな酷い事したのは…?
でも…僕達が来たからには、もう大丈夫。
さくらだけは…僕が守ってあげるよ」
蓮はさくらをぎゅっと抱きしめた。
さくらの瞳から涙が一筋零れた。


蓮が少し目を開けたのに、健は誰よりも早く気付いた。
「起きたのか?」
蓮は数回瞬きをすると、少し伸びをした。
そして、上半身を起こすと健に微笑んだ。
「おはよう…って、まだ夜中だね」
ワインを机に置いて歩み寄って来た健と軽く唇を重ねると、蓮は少し眉をしかめた。
「お酒…飲みすぎ…」
「たまにはな」
健は蓮の隣にこしかけた。
蓮は健にぴとっと身を寄せると、目を軽く閉じた。
「…何かあったの?」
健は答えない。
蓮は小さくため息をつくと、再び問いかけた。
「さくら…?」
「……ああ」
健は数瞬の間を置いて、頷いた。
「検査でも異常はなし…。
本人も少々の記憶障害が残っているがそれ以外は大丈夫だと言っているそうだ」
「『SAKURA』のマスターの件は?」
蓮はさくらに付き添っているはずの従兄弟の顔を思い浮かべながら聞いた。
「それが…意外にも簡単に了承したらしい…。
これ以上他人に迷惑をかけたくないから…と」
健は話しながら嫌そうな顔をした。
蓮はくすっと笑みを洩らすと、大きなエメラルドのような瞳で健を見上げた。
「何が不満なの?
普通喜ぶべきじゃない?」
健は返事のかわりに蓮の額にくちづけた。
「…そうだね…。
『SAKURA』の実権を健が握れなくなってしまうものね…」
蓮は少し目を伏せた。
健は指先で蓮の顎を上向かせると、再びくちづけた。
「ねぇ…健…」
キスの合間に蓮が囁いた。
「僕、あの子…さくらが気に入ったよ」
「…あれはそう簡単にあげられるようなモノではないな」
健の言葉に、蓮は微笑した。
「実力で奪ってみせるよ」
「楽しみにしている」
健は苦笑すると、蓮の髪を指先で軽く払った。


「…これで、ここに手を当てると使役者として…『SAKURA』のマスターとして登録されるよ」
蓮が静かにさくらに告げた。
さくらが母親を失ってから、すでに一週間が経過していた。
櫻守本家にある『SAKURA』のサブコンピューターの前に4人は立っていた。
「本当に…ええんやな?」
ミツルの問いに小さく頷くと、さくらは蓮が指し示した小さな半透明の板に手を軽く乗せた。
『Contract admitted.
From now on, SAKURA will be the master』
『SAKURA』の事務的な声に、ミツルは小さくため息をついた。
さくらも手を板に乗せたまま、凍ったように立ち尽くしている。
「…景気づけに何か命令してみたらどうや?」
ミツルが虚ろな明るさで提案した。
さくらは目を軽く閉じると、深呼吸をした。
「『SAKURA』…」
『Yes, SAKURA』
蓮と健が軽く顔を見合わせた。
「……殺して…」
その言葉に、全員がさくらに注目した。
「…私を…殺してっ……」
さくらの瞳から涙が溢れ出した。
「…お願いっ…殺してよ…。
もう、生きている意味も…ないわ…」
『Sorry, SAKURA.
That command is not allowed to accept』
さくらはその場に崩れ落ちた。
今まで張り詰めていたようなものが切れてしまったように、さくらは泣き続けた。
蓮が小声で何か呟くと、『SAKURA』の画面がすべて日本語に移り変わる。
『標準言語を日本語に設定しました』
その声もさくらには届かなかったようで、さくらはまだ泣き続けている。
「…愛する人も、住むべき場所も、唯一の肉親も、存在理由さえも否定されてしまった少女は…」
誰にも聞こえないような小さな声でそう呟くと、蓮は窓の外に視線を移した。
もう桜は散りかけていた…。



               > † <


       『私の命は貴方だけのものだから』






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2450Re:花さそふ 嵐の庭の 雪ならで・・・さぼてん 4/25-19:55
記事番号2440へのコメント
>こんにちは〜。
>最近全然ここに顔をだしていなかったので、はじめましての方が多いかも・・・。
んっふっふっふっ掲示板でも私書箱でも会っているから忘れるわけなくてよっ(あうっ都ちゃんの影響が・・・)

>では、改めて自己紹介。
>私がここに小説載せると、何故か毎回のように○日でツリーに問題が起こるという疫病神です。
そうなんですかぁ!?
では今回も・・・・いや、考えるのはよそう(笑)まぁ何事もないことを祈ってますよ。

>『SAKURA』のほうはオリジナルです。
>いいんでしょうかね〜ここ一応スレイのページなのに・・・。
いーんじゃないですか?読まれる方いるでしょうし。(私)

>生徒会の機関誌を作っている時に、暇つぶしとして作った「投稿コーナー」に原稿が集まらなくて、部下や友人達にひ
>たすら描かせたのですが、そのうち一枚が無駄になってしまって、そのお詫びにと部下178のサークルにあげるという
>約束で書き始めたものです。
機関誌に小説を!?
いーですねぇ・・・葉月ちゃんの学校いってみたいなぁ・・・

>あ、すっごいすっごい余談なんですけど、どなたか聞いてください。
聞きますよんっ

>知り合いが『ジュニア小説講座』というシロモノのチラシを持って来たんです。
知ってますぅっ。それアニメ関係の雑誌なんかにも載ってますよ。

>その講座のなかに、書いた小説を添削して送ってくれるということも含まれていたんです。
>『それにすごい同性愛の小説を送ったら、どんなコメントが返ってくるか?』
どっ同性愛っ?

>それがうけまくってしまって、皆でやろうという話になりかけたんですが・・・3万円近くしたので挫折しました。
>でも、あとから考えてみて、皆でアイディアを出しあっても書くのは私だという事に気がついて、やめてよかったと思い
>ましたが・・・。
はははっ良かったですね。

>さて・・・実行に移していたら、どんなことになっていたでしょうねぇ・・・。(笑)
>はうっ・・・なんだか超余談でした。
>でも聞いてほしかったんですよう・・・。(涙)
わかったわっ。でもちゃんと読んでるから安心してねっ。

>まだこのコメントのタイトルも、どこからどこまでを区切って載せようかも決めていないのですが(おい)・・・。
>というか・・・まだWordも起動していない・・・。( ~^)⌒〇☆(×_×)
なんの事やらわけ分かりませんが・・・・まぁいーですわっ。

>なんだか脇道にそれてしまいましたが・・・これから小説を読んでくださるという方へ。
>まだ少し早いですが、心よりお礼を申し上げます。
ここまで読んで読まなかったらどうします?(そんなことしませんけど。)

>この話を読んでくださったすべての方々に、この話を捧げます。
>あと、毎度のことですが、メールや私書箱に直接配布します。
>ファイル形式など、ある程度までは調整できると思うので(なんと雑誌についていたCD−ROMにそういうソフトが入って
>いた)気軽にメールや私書箱の方に連絡ください。(もちろんテキストでもいいです)
あら?いーものもってんじゃないっ
でも私はもういただいたから。3つ目はなんか わけわからんことになってるけど・・・

>件名は百人一首から好きなものを選んで来ました。
> 『花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり』
>綺麗な・・・でも少し悲しい感じがしますよね。
えっとぉそれは入道前太政大臣=藤原公経の作品ですね。

歳、とりたくないですよねぇ。でも、だんだん歳とってくんですよね。
いやだなぁ・・・10年後もこうやってここに通ってたらどーしよう・・・

ではっ

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2468さぼてんちゃんへ♪鷹見 葉月 E-mail 4/26-14:43
記事番号2450へのコメント
今回は少し趣向を変えて、3つ一度にレスをつけてみました。
なので、長いです(^^;;
区切りはとくにないので、適当に読み流してください。


>二つもって一つでもやばいんじゃないか?
ははは〜。
酒飲みの私から言わせてもらうと、ビール系のものならジョッキの一杯や二杯なら全然OKです♪
さすがにワインや日本酒がそれだけあると酔いますけど…。

>そうかもしんない。(笑)
魔族が酒飲んでひっくり返っていたら、ある意味怖いですよね。

>>一方のリナはというと、まだ一口口と付けたぐらいにしか減っていない。
>一口口に・・・一口口とのとこ四角だからえ?とか思いましたよ。(笑)
間違えました。
………・一口口とじゃなくて、口をです…。
でも、私も読んでいて違和感がありました。

>>自分の剣から振り払われた血はすべて黒い霧となって消えていることを…。
>ふつーは気付かんとおもうなぁ・・・少なくとも私は
>痛くないのかなぁ・・・
個人の意見として、ゼルには気付いて欲しかったです。
痛くは…ないと思いますよ。
精神世界のほうには干渉してませんから。

>趣味って・・・?服装とかのこと?
この場合はマントのことです。

>>(この方は一体なにを?!)
>普通の人から見たら変な趣味持ってると思われるよねきっと(笑)
そういえば、『フィブリゾ様を変態にしないで〜(泣)』と私に泣き付いて来た奴が一人いました。

>>『あ、ならいいですよ。
>>その方が家計の節約になりますしね』
>確かに節約になるわ。
外食は家計の敵!です。
でも、たまにはおいしいものも食べたいというのが人情というもの。(笑)

>これ読んでると、ゼロスさまっていつもこんな事考えてるのかなぁっ思えましたよ。
>実際はどうなんでしょうねぇ・・・・
さぁ・・・でも、魔族がこんなこと考えていたら滅びそうですよね(笑)




>ちょっとレス付けるのは難しかったですが・・・・
>まぁところどころ引用しつつ書きました。
そんなに難しかったですか?
無理しなくてもよかったんですけど…。

>>「そうですね…たしかあれは400年ほど前のお話です…」
>長く生きてる(?)ゼロスのは400年なんて短い物なんでしょうか?
でも、たしか千+α歳だったと思うので、それなりに昔なのではないのでしょうか?

>>   『遅かれ早かれ、私はいつか死ぬ…。  
>>   だったら、好きな人に殺されたいと思ったの』
>ゼロスさまかっこいいもいんね。(そーゆー問題じゃないって)
どうせならカッコイイ人に殺されたい…と…。
…リジェスタはそんな子ではないと思います。

>私も「生きて得る幸せ」の方が重要だな。
>でも今の状態は満足してないけど。
今の私には『死して得る幸せ』の方が大事です。
そのためには、今の生を捨てても構わないと思っています。
だから、現状には満足もなければ不満もない…そういう奴もいるんですよ。

>>でもきっと…それが人間の『強さ』なのでしょうね」
>そうなんでしょうなねぇ・・・でも完璧に理解できませんね。
それは少し無理があるでしょう。
魔族・人間という以前に、一人一人が個々の存在ですからね。
完璧という言葉があるとすれば・・・ですけどね。

>前編のフィブリゾみたい。(笑)
変態度が高い(笑)
私は人をからかうのがすごく好きなので、ついつい話のなかでもからかってしまいます。

>>「それはですね…この世のすべてのものは、存在したという時点で『存在する』ということで同じ物なのです。
>>でも…存在した時点で他とは交われない…全く異質のものとなるのです」
>うみゅ難しいです。
>考えれば考えるほど分かんなくなります。
結論にたどり着いたと思っても、またそこから道が見えて…。
解のない方程式を解いているような気分になります。
でも、きっと現時点での私の考えがこういうことなのではないかな…と思っています。

>>ただ、少し不自然に乱れたシーツのあとだけが彼のいた事を示していた。
>なんか終わりという感じがしませんね。
>それになんか話がムズかしくって・・・・
>なんかいろいろ考えさせられますね。感じ的にはエヴァという感じですか?
>「interesting」(スペル間違ってるかも)って感じです。
>いろいろ矛盾することがあるんだなぁって・・・・
>ほんとに面白かったです。
私の話は「終わり〜!!」という感じの終りかたはまずないです。
「これからも続く」とか、「これからまたはじまる」とかが主なので…。
そんなにエヴァっぽいですか?(笑)
私としては、京極堂が入っているな〜と思うのですが…。
この時期だと、魍魎あたりですね。
エヴァのほうが名が知れているからでしょうかね〜。




>んっふっふっふっ掲示板でも私書箱でも会っているから忘れるわけなくてよっ(あうっ都ちゃんの影響が・・・)
そ…そおですか。
はぁ…まぁ…。

>>私がここに小説載せると、何故か毎回のように○日でツリーに問題が起こるという疫病神です。
>そうなんですかぁ!?
>では今回も・・・・いや、考えるのはよそう(笑)まぁ何事もないことを祈ってますよ。
一週間持ったら奇跡ですね。(苦笑)

>>『SAKURA』のほうはオリジナルです。
>>いいんでしょうかね〜ここ一応スレイのページなのに・・・。
>いーんじゃないですか?読まれる方いるでしょうし。(私)
さぼてんちゃんにそういってもらえると心強いです。

>>生徒会の機関誌を作っている時に、暇つぶしとして作った「投稿コーナー」に原稿が集まらなくて、部下や友人達にひ
>>たすら描かせたのですが、そのうち一枚が無駄になってしまって、そのお詫びにと部下178のサークルにあげるという
>>約束で書き始めたものです。
>機関誌に小説を!?
>いーですねぇ・・・葉月ちゃんの学校いってみたいなぁ・・・
機関誌に載せたのはイラストです(笑)
SAKURAはサークル誌に書き下ろしたんです。
流石に生徒会役員の端くれとして、小説は載せられなかったです。
でも皆々趣味に走ってくれてなかなか面白かったですよ、投稿コーナー(内輪ネタ多し)

>>知り合いが『ジュニア小説講座』というシロモノのチラシを持って来たんです。
>知ってますぅっ。それアニメ関係の雑誌なんかにも載ってますよ。
先月(?)のWingsにも載ってましたし。

>>その講座のなかに、書いた小説を添削して送ってくれるということも含まれていたんです。
>>『それにすごい同性愛の小説を送ったら、どんなコメントが返ってくるか?』
>どっ同性愛っ?
いや…ようするにや○い小説なんですけどね。
18禁になるようなのを書いて送ったらどうなるか…と。

>>それがうけまくってしまって、皆でやろうという話になりかけたんですが・・・3万円近くしたので挫折しました。
>>でも、あとから考えてみて、皆でアイディアを出しあっても書くのは私だという事に気がついて、
>>やめてよかったと思いましたが・・・。
>はははっ良かったですね。
よかったと言うべきでしょう、たぶん。

>>さて・・・実行に移していたら、どんなことになっていたでしょうねぇ・・・。(笑)
>>はうっ・・・なんだか超余談でした。
>>でも聞いてほしかったんですよう・・・。(涙)
>わかったわっ。でもちゃんと読んでるから安心してねっ。
安心しましたわっっ♪

>>まだこのコメントのタイトルも、どこからどこまでを区切って載せようかも決めていないのですが(おい)・・・。
>>というか・・・まだWordも起動していない・・・。( ~^)⌒〇☆(×_×)
>なんの事やらわけ分かりませんが・・・・まぁいーですわっ。
ようするにですね…。
小説載せる気あるのか、お前っ!!ということです。

>>なんだか脇道にそれてしまいましたが・・・これから小説を読んでくださるという方へ。
>>まだ少し早いですが、心よりお礼を申し上げます。
>ここまで読んで読まなかったらどうします?(そんなことしませんけど。)
ふふふふふふふふふふふふふふふ…。

>>この話を読んでくださったすべての方々に、この話を捧げます。
>>あと、毎度のことですが、メールや私書箱に直接配布します。
>>ファイル形式など、ある程度までは調整できると思うので(なんと雑誌についていたCD−ROMにそういうソフトが入って
>>いた)気軽にメールや私書箱の方に連絡ください。(もちろんテキストでもいいです)
>あら?いーものもってんじゃないっ
>でも私はもういただいたから。3つ目はなんか わけわからんことになってるけど・・・
あ、私書箱のメッセージ受け取りました。
今回も×です(;;)
何ででしょうね…?

>>件名は百人一首から好きなものを選んで来ました。
>> 『花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり』
>>綺麗な・・・でも少し悲しい感じがしますよね。
>えっとぉそれは入道前太政大臣=藤原公経の作品ですね。
私はまだ作者は覚えていないです。
というか…百人一首も先回の冬休みに急いで覚えたばっかりです。

>歳、とりたくないですよねぇ。でも、だんだん歳とってくんですよね。
>いやだなぁ・・・10年後もこうやってここに通ってたらどーしよう・・・
だったら、私もきっといますね。
10年後…生きていたら不思議ですね…。
(実は自殺願望がすごく強い)



3つまとめてレスしてしまいましたが、いかがなものでしょうか?
でも、なんだか画面内にスクロールするカーソルがないので文章チェックしにくいです。
さぼてんちゃん、いつもありがとうございます♪
これからもよろしくお願いしますね。
ではでは。









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2455Re:花さそふ 嵐の庭の 雪ならで・・・松原ぼたん E-mail 4/25-20:48
記事番号2440へのコメント
>こんにちは〜。
 こんばんはー(笑)。
>私がここに小説載せると、何故か毎回のように○日でツリーに問題が起こるという疫病神です。
 関係ないでしょうが(笑)。
>知り合いが『ジュニア小説講座』というシロモノのチラシを持って来たんです。
 ・・・・持ってる(爆)。とある作家の先生につられた(核爆)。
>さて・・・実行に移していたら、どんなことになっていたでしょうねぇ・・・。(笑)
 あ、確かにちょっと興味あるかも・・・・それをジュニア小説というかどうかはとにかく(笑)。
>綺麗な・・・でも少し悲しい感じがしますよね。
 たしかに・・・・。
>〜酒>sake.utage<宴〜
 読んだの何回目でしょうね(笑)。やっぱり面白かったです。
>                   SAKURA
 面白かったです。
 なっ、なんか壮大な話ですねぇ。
 続きがあるんですね、楽しみにしてます。

 ではまた、ご縁がありましたなら。

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2469松原さまへ♪鷹見 葉月 E-mail 4/26-14:52
記事番号2455へのコメント
こんにちはです。

>関係ないでしょうが(笑)。
でも、本当に毎回のように問題が起こると、疑いたくもなります。

>>知り合いが『ジュニア小説講座』というシロモノのチラシを持って来たんです。
>・ ・・・持ってる(爆)。とある作家の先生につられた(核爆)。
でも、あの三万円は法外な値段だと思います。

>>さて・・・実行に移していたら、どんなことになっていたでしょうねぇ・・・。(笑)
>あ、確かにちょっと興味あるかも・・・・それをジュニア小説というかどうかはとにかく(笑)。
某ティーンズハートみたいな小説が並ぶ中で、18禁レベルのやおい小説とかあったらすごく目立つでしょうね。
でも、確かにそれはジュニア小説ではないですね。

> >〜酒>sake.utage<宴〜
>読んだの何回目でしょうね(笑)。やっぱり面白かったです。
再掲示するたびにコメントを頂いているような気がします。
いつもありがとうございます。m(_ _)m

>>SAKURA
>面白かったです。
>なっ、なんか壮大な話ですねぇ。
>続きがあるんですね、楽しみにしてます。
話を壮大にしてしまうのは私の得意技です。
でも内容がついていかない…(泣)
続き…ですか…。
書いても絶対ここには載せられません(断言)
だって…今回は伏せて書きましたけど、それなりにそれなりなシーン(なんという表現?!)が多いんですよう(涙)
えぐえぐ・・・。
でも、個人的にはすごく書きたいです。
う〜ん・・・読みたいという方がたくさんいらしたら書きます。

>ではまた、ご縁がありましたなら。
いつもありがとうございます。
ご縁がきれないことを願って。
ではでは。





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2483Re:花さそふ 嵐の庭の 雪ならで・・・一姫 都 4/26-21:41
記事番号2440へのコメント
葉月ちゃん

>こんにちは〜。
こんにちはっっ、一姫都でーすっっ

>私がここに小説載せると、何故か毎回のように○日でツリーに問題が起こるという疫病 >神です。
そうだったの?

>件名は百人一首から好きなものを選んで来ました。
>『花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり』
>綺麗な・・・でも少し悲しい感じがしますよね。
ををうっっ、んぢゃあ都も対抗して……
「君がため をしからざりし命さへ ながくもがなと おもひけぬる哉」
…って、やっぱし恋愛絡みの歌でしゅね(笑)


〜酒>sake.utage<宴〜のレス

>彼が彼の上司から受けた命は体を壊してもおかしくないほどの激務であった。
>だが、親愛なる上司様の御手を煩わせる訳にもいかず、日々こうやって頑張っているわ >けなのだが…。
ふむふむ、そうだったのでしゅかぁ。それに、将軍がいないぶんも……ですしねぇ。

>「人の好意を踏みにじるような事を言うんじゃないわよ」
>少しすねた顔がいつもにも増して可愛らしく思えて、彼はまた微笑んだ。
きゃぁぁぁぁっっっ(はぁと)ちょっちゼロリナーーーーっっっっ

>『お前のねーちゃんって…胸大きいのか?』
ぶはぅぅっっっ……
いきなしその質問とわ……、さすががうりぃぃぃっっっ

>『胸が小さくて、何が悪いんだよっ!!』
う゛……、ど、どうだろう……?都にはまだよくわかんないけど……(汗)

>『少なくとも、俺はお前の胸が小さいからって、保護者やめたりはしないよ』
>『う…うるさいっ!
>そんなことどうでもいいわよっ!!』
>こころもちが顔を赤らめて、そっぽを向くリナ。
うーん、リナかわいいでしゅ。
でもきっと、そんなこと言ってくれたのは、ガウリィが初めてでしょうね。

>(何を考えているのでしょうね、一体。
>これではまるで、ガウリイさんにやきもちを焼いているようではないですか…)
ええっっ、ゼロスくんガウリィにやきもちでしゅかぁ?
ふふふふふふふ、なぁんか嬉しいでしゅねぇ…。

>「答えたくないのならばいいですよ、リナさん。
>でも、自分の問題です。
>いつかきちんと見つめてみて下さいね」
うーん、ゼロス様ってば、人間の扱いが上手すぎ…(汗)
それにしても、良いこといってましゅねぇぇっっゼロス様っっ(はぁと)

>彼の上司は酒があまり好きではないはずだった。
……うちのゼラス様とは正反対でしゅね(笑)

>『ゼラス様・・・?
>あの…酔っていらっしゃるのでは?』
都もそう思うでしゅ。…なんか、いつもとは違う感じがするです、ゼラス様。

>『ええ…貴女の命令ですから…』
ゼラス様の命令は絶対ですものね…。

>『体に気をつけて…。
>私のもとへ、必ず帰ってきてくださいね』
>『帰ってまいります、ゼラス様。
>何があろうとも、必ずゼラス様のもとへ帰ってまいります。』
ををうっっ、ゼラゼロでしゅか!?(笑)

>彼が目を閉じると、ゼラスは彼の前髪をそっとかきあげて額に口付けた。
うきゃぅぅぅっっっ!??

>「うっ…」
>リナのうめき声で彼は我に返った。
をよよよよ???
リナちゃんどうしたの?(汗)

>『それは秘密です』
>(こう言えば、ゼルガディスさんはもうこれ以上聞いてこないでしょう)
う゛っっ、ずるいなあゼロス様っっっ

>.彼は苦笑した。
>本当にだたの神官である。
>ただし、五人の腹心の一人である獣王、セラス=メタリオムの
い…いやあ、まあ嘘ぢゃあないんだろうケド……、ねぇ。

>『ほざくなっ!
>プラムの蘇生、クレアバイブルの抹消、崩霊烈さえも余裕でかわす技量…一体何者 >だ?!』
確かに(笑)でも、ここまで解ってるんなら、気が付いてもいいようなもんでしゅけど
ねぇ、ゼル?

>『そんなに僕が怪しいならば、僕を切ってみてください。
>抵抗しませんから』
え゛っっ!?
やっやめてぇぇぇっっっっ(泣)

>『ほら…ちゃんと血もでるでしょう?』
え゛………?
な…なして?(汗)

>自分の剣から振り払われた血はすべて黒い霧となって消えていることを…。
ふむ、そういう事かぁ。

>リナから流れ込んでくる『負』の感情の多さに気がついて、彼はおもわず席を立った。
あ、ゼロス様無意識のうちにリナちゃんの心配してる…のかな?
席たったってことわ。

>リナを自分のマントで包みながら、彼は珍しく思ったことをそのまま口にだしていた。
をよよ?
マント…取ったのでしゅか?

>そうである、今リナになにかあったら困るのである。
>(今彼女に何かあったら…すべての計画は水の泡です)
うにゃゃ?
そ…そういう心配なの?

>『へぇ…君がゼラスの神官?』
>可愛らしい少年の姿をした魔族は彼を一目見たとたんにこう言った。
ををう、フィブリゾ様でしゅね。

>『こんな趣味をしているとは気付かなかったなぁ。
>あの美人なお姉さんは、いつも意外な行動にでる』
美人のおねえさん………でしゅか(笑)

>『ゼラスが一人ぼっちじゃ寂しいからって、自分の情人を作ったって…』
え゛え゛、……そうなのぉ?(汗)

>『それに、ぼくはもっと君と遊びたいな。
>覇王のところの将軍よりおもしろいよ、きみは』
あ、ゼロスくん気に入られてましゅね。
覇王のとこの将軍……、シェーラちゃんですか(笑)

>フィブリゾは、ちょっと背伸びをすると、彼の唇に自分のを軽く重ねた。
う゛………をう?(汗)

>『冥王様…僕の『負』の感情を召し上がるのは…あまりにも酷いのではないですか?』
フィ…フィブってば、……遊びと食事を一緒くたに行うなんて…、なんて合理的な
事を…(汗)

>(確か、これがはじめての出会いでしたね…)
凄まじい出会いだねぇ…(汗)

>リナは腹部を抑えたまま、うめき声を発するだけである。
え゛え゛――っっっ

>両手が使えないので、周りに人がいないことを確認してから手を使わずにドアを開ける。
便利やねぇ。

>『あの…ゼルガディスさんには…その…。
>こ、恋人…みたいな人っていますか?』
な…なんか、この二人の会話、聞いててめちゃめちゃ恥ずかしいんだけどぉ(笑)

>(これではまるで親子か夫婦のようですね)
>そう思いながらも、彼はリナの額の汗を拭ってやる。
きゃぁぁぁぁうっっ、うーんと、どっちかっていうと後者のがいいな(はぁと)

>(リナさんと結婚する人は、さぞかし気が利く人でないといけませんね)
ゼロス様がいいです…ぽそ……。

>(僕とリナさんが結婚したらどうなるでしょうねぇ…)
どうでしょう……?
わくわくわくわくわくわくわくわく……

>リナさんから返事がないのを確かめると、僕はリナさんにくちづけた。
わはははははははははは(笑)、さっすがゼロスさまっっ(はぁと)

>スパコーン。
>スリッパが僕の顔を直撃する。
す…すりっぱ…、一体何処から飛び出してきたのっっ??

>『あ、ならいいですよ。
>その方が家計の節約になりますしね』
>『わかったわよっ』
食事でつられるところが…またなんとも……(笑)
リナちゃんらしくってかわいいでしゅけど。

>(長い髪…彼女とは対照的ですね…)
え゛っっ、彼女!?
だ…だれだろう……?(汗)

>彼は、ふっと水浴びをしている少女に目をやった。
え゛……み…みずあび…?

>(用事もすみましたし、精神世界を通ってリナさんをからかいにでも行きましょうか?)
娯楽の一種みたいなものですか、ゼロス様?(笑)

>ある意味、かなりうっとおしい人物である。
ゼロスにとっては、リナよりなにより大変な人間なんじゃあ?

>『の…のぞいていたんですか?!』
>顔を真っ赤にしながらアメリアは彼に尋ねた。
アメリアちゃんかわいいでしゅ(はぁと)
でも、やっぱしのぞきでしゅよねぇ、してたことは。

>そう思いながら彼が顔を離すと、アメリアの左肩に魔族のみが見ることのできる『印』 >があるのが確認できた。
印…?
何の印なの?


〜酒>sake.utage<宴〜 <後編>

>(リナさんがこんなに素直でいいのでしょうか…?)
あははははははははは(爆笑)、普段が普段だからねぇ。

>「そう…僕は人間と旅をするのはこれがはじめてではないんですよ」
え、そうだったの?

>「2年ほど、二人で旅をしました。
>彼女は僕が魔族だということを知ってからも、一緒に旅を続けようと言いました。
>それから、さらに8年ほど旅をしました」
う…、この人ゼロス様の事好きでしゅね。それにしても…8年とわ…うらやましい。

>「二人で色々な所へ行きました。
>今は崩れゆく城が建てられる所をみたり、歴史上の人物に会ったり…。
>少しの間、他の人と旅をすることもありましたが…ずっと二人だけでした」
うーん……、でも、やっぱし目的は魔器なんですよね…ゼロス様…?

>「僕は彼女に何故僕と旅をしたのかと尋ねました。
>そうしたら、彼女はこう答えました」

   >『遅かれ早かれ、私はいつか死ぬ…。  
   >だったら、好きな人に殺されたいと思ったの』
……切ないです。でも、この人は本当にゼロスくんの事を好きだったんですね。

>「わたしも、いつか殺すの?」
>押しつぶされるような沈黙を破ってリナは聞いた。
>「今はまだ…。
>でも、命令がくだれば殺します」
>ためらいもなく彼は言い切った。
…ゼロス様、やっぱしリナちゃんも…なのでしゅか……。

>「そんなことをしても無駄よ。
>殺される時は殺されるし…あなたを追い出したところで何も変わらないわ」
ををうっっ、リナちゃんさすがでしゅ。

>「わたしは精いっぱい抗ってみせる。
>たしかに、彼女のような生き方もある…。
>でも、私の人生は自分で決めるわ。
>たとえ好きな人にだって、殺されるのはまっぴらよ」
ふーむ、リナちゃんの考えって…どこまでも前向きでしゅよね、凄い。

>知っているのは、『生きて得る幸せ』だけ。
>今のわたしには、『死して得る幸せ』よりも『生きて得る幸せ』の方が重要だわ」
都もそう思うでしゅね。やっぱし、死は死でしゅし。
死ぬよりも生きていた方が、絶対に良いことが待ってるに決まってますから。

>(満月…滅びの予感がしますね)
滅びの予感…ですか。なんだか素敵ですね。

>『からかっていて、楽しいの?』
たぶん…楽しいんぢゃないでしょうか?(笑)

>『故郷のお姉さんに、乱暴なことは慎めと言われませんでしたか?』
>『姉ちゃんはわたしよりずっと乱暴よ』
>リナは即答した。
わはははははははははははははは(笑)それもそうでしゅ。

>『リナさんは時間は循環しているものだと思いますか?
>それとも、まっすぐ流れているものだとおもいますか?』
ををう……・、なにやらむつかしい問題が…。

>『わたしには、時間がどう流れているかなんて関係ない。
>ただ『今』、『時間が流れている』ということだけがわたしにとって大切だわ』
>『リナさんらしいですね』
そうでしゅね。きっとこの答えはリナにしか出せないかもしんない。

>『定められた「運命」…。
>リナさんはそれを信じますか?』
運命…ですか。珍しいですね、ゼロス様がこんな言葉を口にするなんて。

>彼はリナの隣に腰掛けると、リナの肩を抱いた。
>少しでも安心させてあげようという配慮のようである。
あにゃゃ?
ゼロス様優しいでしゅぅぅぅっっっ(泣)

>あまりにも人間らしい行動をとっていることに気付いたのである。
>(この四人組と旅をするようになってから…でしょうかね?
>こんなに人間らしくなってしまったのは…)
人間らしい…かぁ、そうでしゅねぇ、ゼロス様って人間に近い魔族ですよね?

>がさごそと茂みから出てきたのは、それぞれ違う色のローブをまとった4人の人相の悪 >い男達。
やっばし、この人達は旅にかかせない者の一つですよね(笑)

>『獣王・ゼラス=メタリオムの部下、ゼロスと申します。
>黄泉の旅路に名前ぐらいは覚えて頂ければ幸いです』
>彼が微笑すると、錫杖で触れられたところからその魔族は崩れるように滅びていった。
うーむ…つおいなぁ…ゼロスくん。忘れてたケド、高位魔族なんだよね(笑)

>『…さてと、これでゼラスさまの用事は終了ですね。
>あとは覇王さまと海王さまのお使いだけですね』
おやおや、覇王様と海王様からも頼まれてるの?

>(珍しい構図ですね…。
>リナさんと微笑みを交わす僕…)
うーん、そうだったっけ?(汗)

>『僕は一体…何なのでしょうね?』
う゛……、ゼロス様はゼロス様でしゅよう……(泣)

>(………滅ぼしたい…この人を…)
どっしゃゃゃぁぁぁぁっっっっ(汗)
なにぃぃっっっ、なんでいきなりそうなるのぉぉぉぉっっっ

>「……すぐ楽にしてあげますよ」
>まるで、恋人に愛を囁くような口調で彼はそう告げると、リナの首に手をかけた。
えええええええっっ、殺しちゃうのぉぉぉ?(泣)

>「……そう…よ…。
>わたしは…まだ…死ねない……」
ふぅぅぅ、よかったです。それにしても…リナちゃんの生命力は凄いですね。
尊敬に値するです。

>「何故……そんなに簡単に許せるのですか?」
>「何故って…助かったから、それでいいじゃない」
>いつものようにあっさりとリナは言った。
うーん、さすがリナちゃん、いい女でしゅねぇっっ(はぁと)

>「過去は…変わらない。
>たとえ貴方を許さなくても…おきてしまったことに変わりはない…。
>だから、今回はなかったことにしてあげる…それで終りにしましょう」
そうですよね。いつまでも過去を気にしていたら、先には進めないですからね。

>「滅ぼすために…滅ぶために存在しているのです」
>彼は皮肉っぽく口元を歪めた。
>「そのために『作られた』のです」
……はじめから、そう創られた者……なんですよね。

>「リナさんに誉めて頂けるとは、頑張った甲斐がありましたね」
>彼はにっこりと微笑んだ。
が…がんばったって…なにを?

>「その資金のために、『悪人に人権はない』と自分に言い聞かせて盗賊を襲う…。
>確かに盗賊を襲っても、良心は痛みませんよね。
>盗賊にも盗賊でなければいけなかった理由があったかもしれないなんて考えなければ」
>彼は勝ち誇ったように微笑んだ。
…ぜ…ゼロス様、きっついでしゅねぇ…(汗)

「子守り歌でも歌ってあげましょうか?」
彼のからかうような言葉にリナは苦笑した。
いいなあリナちゃん、歌って欲しいなあ、都(笑)

>歌についてはちょっと自信があるんです。
>いつも獣王様から誉めていただいているんですよ」
そ…そうだったのでしゅか?
アルバムを聞いているかぎりでは……(笑)

>彼は静かに呟くと、リナの額にくちづけた。
やっぱしやったか(笑)


………、長いレスぢゃあっっ。
うーんっっ、それにしても、ほんとに、素晴らしいでしゅ。
葉月ちゃん、ほんとーに感動したでしゅーーーーーっっっ
凄いです、はい。
と…とりあえず、まだ色々書きたかったでしゅが、今日はこのへんで…
まとめてでこめんねぇーーっっっ
(じ…じかんがないでしゅ・汗)
それでは……
      
         1998*4*26* ミヤコ・イチヒメ