◆−何気にツリーが落ちてるので新規ツリーを作ります。−柚乃 (2003/2/11 16:04:35) No.24736 ┣Legacy of Lunatic Elf 〜白銀の遺産〜 3−柚乃 (2003/2/11 16:37:41) No.24737 ┃┣Re:Legacy of Lunatic Elf 〜白銀の遺産〜 3−エモーション (2003/2/11 22:11:12) No.24739 ┃┃┗本当はこんなに長くなる予定ではなかったのですが。−柚乃 (2003/2/12 18:18:22) No.24744 ┃┗リナさん〜っ!!?−奈月るり (2003/2/15 16:39:03) No.24787 ┃ ┗一度やってみたかったんです。こういうラスト(←オイ)−柚乃 (2003/2/15 18:28:37) No.24790 ┣Legacy of Lunatic Elf 〜白銀の遺産〜 4−柚乃 (2003/2/16 18:23:32) No.24810 ┃┣Re:Legacy of Lunatic Elf 〜白銀の遺産〜 4−エモーション (2003/2/16 21:43:25) No.24811 ┃┃┗前回に引き続いて早いレスありがとうございますv−柚乃 (2003/2/17 18:16:43) No.24818 ┃┗くぁっ!−奈月るり (2003/2/17 07:51:09) No.24816 ┃ ┗次はおそらく19日か20日になるかと。−柚乃 (2003/2/17 18:38:55) No.24819 ┃ ┗重ね重ね・・・(汗)−奈月るり (2003/2/19 17:11:19) No.24840 ┃ ┗レス返し返し(なんのことやら)ってはじめてですv−柚乃 (2003/2/19 18:45:44) No.24842 ┗Legacy of Lunatic Elf 〜白銀の遺産〜 5−柚乃 (2003/2/20 18:32:47) No.24859 ┣よかったぁ〜−奈月るり (2003/2/20 20:04:04) No.24860 ┃┗早いのは今回だけかも(汗)−柚乃 (2003/2/21 18:31:40) No.24882 ┗Re:Legacy of Lunatic Elf 〜白銀の遺産〜 5−エモーション (2003/2/20 22:41:24) No.24870 ┗迷言ですか(笑)−柚乃 (2003/2/21 18:44:47) No.24883
24736 | 何気にツリーが落ちてるので新規ツリーを作ります。 | 柚乃 | 2003/2/11 16:04:35 |
こんにちは。お久しぶりです、柚乃です。 一週間ほどネットから離れていたらさくっとツリーが落ちてました。前に見たときはまだずいぶん余裕ありそうに見えたんですけど………皆さん、投稿ペースが早いです。 とまあそんなわけで新規でツリーを作ってみました。 一つの話を二つ以上のツリーに分けるのってはじめてなのでちょっとどきどき。まあ長編書くのはこれがはじめてなので当たり前なのですが。 前のぶんは過去ログにあるので、『話が分からんっ』とか『話忘れたっ』という方はそちらの方を見てくださいねv(宣伝) ではでは。これからもお願いします♪ |
24737 | Legacy of Lunatic Elf 〜白銀の遺産〜 3 | 柚乃 | 2003/2/11 16:37:41 |
記事番号24736へのコメント こんにちは。 今回、前回の投稿から二週間以上あいだが空いてます。理由はまあいろいろとあるのですが………とりあえずそのうちの一つに『長い』というのがあります。 まじで長いです。 て言うかこの一話だけで楽に50KB越してるってどういうことですか柚乃さん。………これって一、二話の実に二倍近い文量だったりするんですね。 以前、人間やればできるものだとか書きましたが。世の中にはできる時とできない時が確かに存在するのだと私は今回はっきりと悟りました。 とにかく、そんなわけで今回はそうとう長いのでちょっと根性を入れて読んでもらえると助かります。 ではでは。本編にどうぞ〜。 $$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ 「何、これ………」 『それ』の前に立って、少女はぽつりと呟いた。 「この子、生きてる………のよね。でも、いったい何年………」 少女の目の前には透明なクリスタル・ケースの中―――淡い青色をした液体に、静かに浮かんだ一人の少年の姿があった。 いや―――少年、というのは語弊があるかもしれない。 見た目は七、八歳の綺麗な男の子だ。綺麗な白銀の髪に、ゆったりとした白い服。そして―――とがった耳。 とがった耳はエルフの血が流れている証。となれば見た目どおりの年齢ではあるまい。 ―――しかしそれでも、何十年何百年もの時の風化に耐えられるものではない。 この施設は――― おそらく数百年単位で放棄されていたものだと、少女はここに辿り着くまでに判断していた。 引き寄せられるようにクリスタル・ケースに近付き………少女の手が、わずかにそれに触れた。 ―――その時。 ゆっくりと―――少年の瞳が開いた。 しっかりと少女の眼を捉えたその瞳は、綺麗な―――あまりにも澄んだ、銀色だった。 ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** 「ねえ、リナ。それでいきなりお城に忍び込むの?」 「何よ。ちゃんと言ったでしょ? 文句あるなら宿で待ってれば良かったじゃない」 「やだよそんなの。リナが行くなら僕も行く」 夜である。いわゆる真夜中、というやつである。 今夜は新月らしく、空には星のみで月はない。 星明かりの下、あたしとゼナは塀の影に隠れてぼそぼそと小声で話していた。 ………と、今の会話だけ聞くと何やら誤解を招きそうなのであえてことわっておくが、あたしは悪人ではない。 まあ今はあたしもゼナも要所要所を動きやすいように革のベルトでまとめたゆったりとした黒い服を着て、とどめとばかりに黒い布で顔を隠す、という通りすがりの人に石を投げられても文句を言えないような格好をしているのだが。 しかし、しつこいようだがあたしは悪人ではない。 昼にヴェルスから聞いたことを確認するために城の内部をちょっとばかし調べようとしているだけである。 情報源がヴェルスの話だけ、というのは心許ないが、彼が嘘を言っているとも思えなかったし、ここのロードが最近傭兵やら何やらを雇っているというのは事実なのだ。 そして何より。あたしの勘がここのロードは怪しいと告げていた。 今の状況を、かつてともに旅をした仲間だったら『正義のため』と表現してくれたことだろう。たぶん。 とまあそれはさておき、あたしは周りを見回してなるべく入りやすそうなところを探す。 「んーむ………やっぱりいつもみたく上からかなぁ………」 それなりに警戒の厳重なところに忍び込む時には上空から、というのは王道である。 でもなあ……… 「魔道の研究をしてるってことは、魔道士もいるのよね………」 魔道士がいれば上空、というポイントも警戒していておかしくはない。 浮遊(レビテーション)でふよふよ行くのである。もしその時に攻撃など受けようものなら問答無用で撃墜されてしまう。 問題は上空を警戒しているか否か。確率は二分の一。 「………ま、いっか。考えてても仕方ないし。地上はかなり厳重に警備してて入り込めそうにないし……… ゼナ。もし攻撃受けたらお願いね」 「うん。まかせて」 こくんと頷くゼナに頷き返してあたしは抑えた声で呪文を唱える。 「浮遊(レビテーション)………!」 あたしとゼナはふよふよと一旦かなり高くまで上がり、やたらめったら広い敷地のはるか上空を越え、なるべく暗いところを選んでロードの城の屋根に着地する。 どうやら上空は無警戒だったらしい。無用心だぞ。助かったけど。 近くにあった窓からこっそりと中を覗き込む………暗い。 暗くてよくわからない。こんな時ガウリイがいればなー……… いないものは仕方がないが………むぅ。中の様子が分からないというのは痛い……… そんなことを考えてあたしが頭を悩ませていると。 「誰もいないよ。ベッドがあって机があって………客室みたいだけど」 「見えるの?」 驚いて尋ねるあたしにゼナはこともなげに頷く。 「うん。暗いのとか関係ないようにできてるから」 そういえばそんなことを言っていたような気も………いやいや今はそれよりも。 「じゃあいくつか部屋を見て回るから、中に何があるか教えてくれる?」 「うん。分かった」 あたしたちは屋根を伝って移動し、いくつかの窓の中を観察する。 そして判明したことは……… 「この辺って使ってないのかな?」 「そうみたいね。客室みたいだけど………」 見た部屋すべて真っ暗で人もいなかった。どうやらこの辺は今は使っていないらしい。 しかしそれなら好都合。上から見た感じだと建物は全部つながっていて内部で移動できるようだったし、人のいないところから入り込めばあとは中を移動すればオッケー!! ………ま、まあそれはそれでけっこうたいへんなような気はするが………かなり大きい建物のようだし。それに微妙に罠くさい気もするし。 しかしっ! こういう時はさくさく動いた方がいいのである。 思い立ったら即行動。あたしは今までそうやってきたのだ。でなければ五日待ってガウリイと合流してから行動を起こしている。 ふ………五日ものんびりと待つなんて………あたしには無理だって。 あたしは適当に一番近い窓の鍵を調べる。 たいして難しい鍵ではない。これくらいなら……… あたしはズボンのポケットから道具を取り出すと、ちょちょいっと鍵を開ける。 「気配は消しておいてね」 「うん」 ゼナが頷いたのを確認して、あたしは窓を開け、するりと中に滑り込んだ。 部屋の扉を薄く開けて外の様子をうかがうが………やっぱり誰もいない。 いくら使ってないとはいえ………いいのか? こんなことで……… なんとなくそんなことを考えてしまうが、ともあれあたしとゼナは廊下に出る。 廊下も明りはなく、暗い。本当なら明りが欲しいところだが………んなことすれば遠くからでもバレバレである。 仕方なくあたしは目がある程度暗さに慣れるまで待つ。 「じゃ、行きましょうか………」 目が暗さにある程度慣れ、一応ものの輪郭や影くらいは分かるようになってから、あたしは足音を忍ばせて廊下を歩き出した。 「人がいるね」 「………そうね」 ゼナの端的な言葉にあたしは通路の影に身を潜めながら疲れた声で頷いた。 建物に入り込み、あたしたちは人目を避けつつ地下へと向かっていた。何故地下か、と言うと答えは簡単。なんらかの実験をしているのなら、その施設があるのは地下だろうと当たりをつけたからである。 安直と言うなかれ。確かによくあるパターンではあるが、逆に言えばそういうことが多いからこそパターンなのである。 魔道の実験というものはけっこうな場所を使うものだし、もしヴェルスが言っていたように攫ってきた人間を使っているのなら、そう簡単に行ける場所にそんな施設があるはずはない。 となると広い場所がとれ、簡単には入り込めないところ。 そう考えると一番しっくりくるのが地下、ということである。 そうでなくとも地下というのは、換気さえしっかりしていれば一年中さして環境が変わらず、そういった実験には適しているのだ。 実際、今まで見てきた魔道実験の施設、というものはたいてい地下にあった。 そんなこんなであたしとゼナの二人は地下に行こうと降りてきたのだが……… 入り込んだのは五階。そこから四階、三階、二階と来て………そこまでは良かったのだが。 「なんでいきなりこんな大人数になるのよ………」 一階に下りてきたらいきなり警備がお出迎えである。それもびっしり、と言っていいくらいたくさん。二階まではほとんど人の気配などなかったというのに。 一応油断はせずにちゃんと気配を殺していたのが幸いして見つかってはいないが………このままでは先に進めそうにない。 どうやら地下に何かあるということを隠す気はないらしく、完璧にそこだけを徹底的に護っているようだ。 むぅ。いつまでもこうしているわけにもいかないし、かと言って出て行けばさすがに見つかるし、このまま帰っても意味ないし………でもじゃあどうするかとなると………どうしよう。 そんなふうにあたしが頭を悩ませていると。 「――――――え?」 視界の隅を、何かがかすめた。 「リナ?」 ゼナの訝しげな声が聞こえる。けれどあたしは応えない。 見間違いだろうか? でも――― ほんのかすかに目の端をかすめた色。薄暗いランプの炎の下でもはっきりと映える――― 金色。 「おーい。交代だとさ」 間違いない。この声は――― 声とともに通路の奥からあらわれたのは、燃えるような赤い髪と―――綺麗な金髪。 「ガウリイ!?」 かたん。 「誰だ!?」 一瞬動揺したのが悪かったのだろう。 わずかな物音を立ててしまったあたしを見逃してくれるほど、ガウリイもクレウスも甘い相手ではなかった。 「ゼナ! 逃げるわよっ!!」 言ってあたしはゼナの手を取ってダッシュでその場を駆け出した。 「待て!」 声とともに後ろから追ってくる気配がする。 その場には幸い魔道士はいなかったらしく、呪文攻撃がこないのが唯一の救いだが………しかし数が多い。 ここまで来て逃げるのは悔しいが、ガウリイがいる以上何処かに隠れてやり過ごす、というわけにもいかない。はっきり言ってガウリイの野生の勘をやり過ごす自信はあたしにはない。ガウリイ一人だけなら事情を説明して………ということもできるが、この状況ではそういうわけにもいかないし。 あたしとゼナはダッシュで階段を上り、呪文を唱えつつ一番近い部屋に飛び込む。 「封錠(ロック)」 扉を閉めると同時に術で扉が開かないようにする。これで少しは凌げるだろう。すぐに破られるだろうが………今は呪文を唱える時間さえあればいい。 あたしは再び呪文を唱え、窓を開けてゼナとともに宙に身を躍らせ――― 「リナっ!!」 焦ったようなゼナの声とともに、窓から身を乗り出していたあたしの身体が後ろに引かれ、入れ替わるようにゼナが前に出る。 そして――― どぅんっ! 飛び来た光球を素手で払ったゼナの身体が爆風に押されて部屋の壁に叩きつけられる。 「ゼナ!?」 あたしは思わず呪文を中断してゼナに駆け寄った。ちなみにあたし自身はゼナに引き倒されていたせいでまったくの無傷である。 まったく無茶をする………! 確かに呪文攻撃はまかせたとは言ったけど、衝撃は殺せないでしょうがっ!! そうは思うものの、今はそれより逃げることが最優先。すでにドアの外には人が集まり、破られるのも時間の問題。 ゼナの身体を抱え起こすと、今度は周りに注意しつつ窓の外に身を躍らせる! 「翔封界(レイ・ウイング)!」 さっきの光球はおそらく火炎球(ファイアー・ボール)。しかも外から来た。ということは外の警備の連中が撃ったのだろう。 となると、あまり低いところを行くとまた呪文攻撃がくるだろうし、スピードは落ちるがなるべく高度をとって……… 「っとわぅお!?」 屋根を越すくらいの高度をとって、さあれっつごー、というまさにその時。地面から迫りきた魔力弾にあたしは慌てて術を制御し身をかわす。 間を置かずに第二撃。続いて三、四、五………って早ッ! あたしはそれらもなんとかかわすが―――慌てたせいか呪文の制御を失い、城の屋根にぼて落ちる。 屋根の上というかなり不安定な場所ではあるが、あたしもゼナもなんとか滑り落ちずに取っ掛かりに掴まっていた。 ………まだ屋根の上で良かった。ほとんど距離もなかったから怪我もないし、何より下は警備の兵士の真っ只中なのだから。 何はともあれ、今はそんなことを言っている場合ではない。 「ゼナ! 移動するわよ! んでもって今度はもう全力で逃げるっ!!」 「移動するって………どっちに?」 「屋根の反対側っ!」 言いながらもあたしは屋根の上を駆ける。 さっきちらっと見たとき、地上の兵士たちは城の表側に集まってきているようだった。となれば裏の方に回ってそこから今度こそ翔封界(レイ・ウイング)で逃げる! ぐるっと回らなければいけない地上より、まっすぐ行けるあたしたちの方が早いはずっ! 「とにかく今は逃げること! ゼナにも協力してもらうから………」 「―――こっちに」 屋根の中心までもうすぐ、というあたりで。突然かけられた声にあたしは思わず足を止めた。 そのまま有無を言わさずにすぐ傍の窓から伸びた手に腕を掴まれ、問答無用で引っ張り込まれる。 「何す―――!」 文句を言おうとして。あたしは一瞬自分の目を疑った。 「や。こんばんは、だね。こんなところで会うとは思わなかったけど」 あたしとゼナを部屋の中に引っ張り込み、悪戯っぽい笑みを浮かべて緊張感の欠片もない挨拶をかましてくれたのは、今日の昼に会い、ここのロードの情報をいろいろ教えてくれた当人であるヴェルスだった。 「………で。あなたはなんでこんなところにいるのよ」 ひとまず騒ぎは落ち着いたようで、さっきまでとは打って変わって静かな城の一室で。あたしはヴェルスに尋ねた。 「リナちゃん、機嫌悪そうだね………」 当たり前である。 かなり強引に部屋に引っ張り込んだ―――まではまあいいとしよう。しかし問題はそのあとである。 隠れても気配を隠し切る自信がない、と言うあたしに問答無用で眠り(スリーピング)の術をかけてくれやがったのだ。この男は。 確かに眠ってしまえば気配を殺す必要もなくなるが、いきなりそんなことをされれば誰だって不機嫌になろうというものである。 「まあいいじゃない。リナだってこのまま何もせずに逃げるのは悔しかったんでしょ?」 「まあ………そりゃあ……… ………分かったわよ。いいわ。とりあえずヴェルスに対する報復はあとでするとして」 「………あとでするわけ?」 「改めて訊くけど、あなたはなんでこんなところにいるの?」 困ったように呟くゼナを無視してあたしはヴェルスに正面から向き直った。 ちなみにヴェルスの格好はあたしやゼナとほぼ同じ。ゆったりとした黒い服に、黒い布で顔を隠した全身黒ずくめ。 はっきり言ってこんな格好の三人が暗い部屋で固まってぼそぼそと話をしているというのはかなり怖い光景である。 ただしゼナだけはさっきの火炎球(ファイアー・ボール)のせいで服の右袖が肩から燃え落ちて腕があらわになっているが。 それはさておき。 ヴェルスはあたしの問いに苦笑すると、 「それはむしろ僕のセリフなんだけど………まあいいや。 昼にも言ったろう? ここのロードのことをいろいろ調べてるって。で、ここ数日はもっぱら城の内部調査をしてるんだ。 今もこっそり忍び込んで探ってたんだけど、なかなか隙がなくて。 そうしてたらなんだか騒ぎが起こったみたいだからちょっと見にきてみたら、リナちゃんたちが追われてたから。 ………それで、リナちゃんたちこそ何してたわけ?」 「まあ………あたしたちもロードが何をしてるのか探りに来たのよ。 他にも方法はいろいろあるんでしょうけど、城に忍び込むのが一番手っ取り早いから」 「なんでまた?」 「なんとなく何やってるのか気になったし、それに向こうからちょっかいかけてくるかもしれないってヴェルスも言ってたでしょ? なら先手必勝。備えあれば憂いなしって言うじゃない」 「………備えでロードの城に忍び込むんだ………らしいと言えばらしいけど、たぶん世間一般から見るとそうとうむちゃくちゃだよそれ………」 「やっぱりそう思う? やっぱりそうだよね。そう思うのって僕だけじゃないんだ」 「あたしの郷里じゃあ普通よっ!」 『………………………………』 あたしの言葉にそろって沈黙したのは賛同したからだと思っておこう。うん。 「で? 何か分かったことはあるの? 今日以外にも何度か忍び込んでたんでしょ?」 「んー。まあね。今まではなかなか隙を見せてくれなくてかなり八方塞がりだったんだけど、さっきの騒ぎでちょっとした発見があったよ。 騒ぎに驚いたのか地下から魔道士が何人か顔を見せてね。普通にある地下への階段じゃないところにも通路があるみたいなんだ。そこなら他よりは警備が少ないと思う」 さらっと話題を変えたあたしに、ヴェルスもさほどこだわらずに乗ってくる。 しかし、それってかなり重要な発見なんじゃなかろうか………? そんなものをちょっとした発見、って……… さほど意外でもないが大物である。 「で? それって何処にあるの?」 「中庭のすみ」 「………訊いといてこんなこと言うのもなんだけど。あっさり言っちゃっていいの?」 「どうせむりやりにでも聞き出すつもりだったんだろう? なら最初から言っちゃった方が早いし」 ………まあ確かにそうだけど。 もし言わない、とか言ったらそこを発見できたのはあたしたちが騒ぎを起こしたおかげ、とかなんとか言って聞き出すつもりでいたし。 しかしむりやりとは人聞きが悪い。あくまでも正当な権利として、である。 「それにまあ………リナちゃんには恩があるしね」 「は?」 ぽそり、と呟いた言葉に―――たぶんあたしに聞かせるつもりはなかったのだろうが―――あたしは眉をひそめた。 しかしヴェルスはそんなことはさらりと無視して、 「んじゃま、こんな騒ぎがあってすぐに来るとは思ってないだろうし、来るなって言ってもどうせ聞かないんだろうし、さっそくみんなで行こうか」 「微妙に気になる言い方ではあるけど………そうね。行きましょうか」 そう言って。あたしはこくんと頷いた。 「よ………っと」 すとん。 あたしは軽い音を立てて床に降り立った。次いでゼナも上から飛び降りてくる。 ここはヴェルスが発見した地下への入り口………の中。つまりはもうすでに地下に来ているのである。 入り込むのはめちゃめちゃ簡単だった。 全員が知っている入り口というわけではないようで、見張りはこっそりとほんの数人。見回りも時々来るが、それはだいたい三十分おきくらい。 となれば、見回りが過ぎたときを見計らって見張りを倒して潜入して、三十分以内に出てくれば良いのである。 三十分でいろいろと調べまわる、というのはかなりきついが、まあ不可能ではない。いざとなれば暴れてとんずらする、という手もある。それはあくまでも最終手段だが。 ちなみに見張りはヴェルスがあっさりと気絶させた。 ………正直に言おう。あたしはヴェルスが何をしたのかさっぱり分からなかった。 ヴェルスは気配を殺して暗がりに潜む見張りに音も気配もなく近付き―――次の瞬間には見張りはぱたぱたと倒れていた。 見張りは一応気配を殺しており、あたしも気配は読める方だがそれでもいるということが分かるくらいで、どこに何人、と正確に言うことはできなかった。 それをあっさりと見切り、一瞬で気絶させたのだ。しかも素手で。魔法も使わずに。その実力たるや驚くべきものである。 もしあたしとゼナだけだったらこの入り口を発見してもこうも簡単には入り込めなかっただろう。 あたしは心底ヴェルスが敵でなくて良かったと思ったものである。 それはさておき。 「明るいね。外はあんなに薄暗かったのに」 「そうね。でもこれじゃあ暗がりに身を潜めながら………ってぇのは無理ね」 「まあそれは仕方ないんじゃない? それにそんなのんびりこそこそしている時間の余裕はないし」 あたしたちは抑えた声でぼそぼそと話しながらそこかしこに明り(ライティング)が灯った通廊を歩いていた。 そんなふうに声を抑えるくらいならしゃべるな、と思う人はたぶんいるだろうが、そこはそれである。 思ったことは口に出したくなる年頃なのだ。 ………ツッコミは入れないように。 しかし確かにヴェルスが言うとおりそうそうのんびりはしていられない。入り口の見張りを排除するのにたいした時間を取られなかったため時間はけっこうあるが、余裕というほどでもない。 まあ中の連中はここに侵入を許すとは欠片も思ってないだろうから、変に隠してあるということはないだろうが、なんぞあるところには人がいるだろうし、バレないように、というのはかなり至難の業のような気がする。 「ストップ」 そんなことを考えながら歩いていると、ヴェルスがストップをかけて立ち止まった。その声にあたしとゼナも思考を中断して立ち止まる。 少し先にはT字路。特に気配は感じられないが………? 「T字路の先………右側にかなりの人が集まってる。たぶん大きい部屋があるんだと思う。左側には人の気配が………三つ。 リナちゃんはどっちに行くべきだと思う?」 T字路の先の部屋、って………けっこう遠いと思うのだが………そんな気配まで分かるのか………? んなことガウリイでも無理なんじゃあ……… ………まあいい。 人がたくさんいるところにはやっぱり何か重要なものがあるだろうということは予想がつく。しかしバレずに入り込むというのはまず無理だろう。 となると……… 「やっぱり左、かしらね。 たいしたものはないかもしれないけど、でも人がいるってことは何かあるってことだわ。なんならそこにいるやつを締め上げるっていうのも手だし。 なんにしろ人が少ない方がやりやすいでしょうしね」 「ん。僕も同意見。じゃあ行こうか」 ヴェルスはあっさり答えると、特に警戒した様子もなく左に曲がる。 あたしとゼナはそのあとに続き―――ほどなく扉に突き当たった。 曲がる時、ちらりと右の方を見ると、少し行ったところにかなり大きい扉があり、その先はまた延々通廊が続いていた。 ドアの取っ手に手をかけて中の様子をうかがうヴェルス。 今ならあたしにも中の気配が分かる。さっきのヴェルスの言葉を疑っていたわけではないが、確かに三人である。 気配を殺している様子もないし………たいした使い手ではないようだ。 そう思い、あたしが口の中で小さく呪文を唱えはじめるのとほとんど同時にヴェルスが振り返った。 「開けるよ」 言うとあたしの答えも待たずにドアを開ける。 部屋の中には、いきなり開いた扉とそこからあらわれた(自分で言うのもなんだが)死ぬほど怪しい黒ずくめに驚く三人の魔道士。そして部屋の壁にびっしりと並んだクリスタル・ケース。 「………眠り(スリーピング)っ………!」 声を上げかけたのをぎりぎりで押し留めて、あたしは唱えた呪文を解き放つ。 盛り上がりも何もなくぱたぱたと倒れる魔道士たち。 しかしあたしにとってはそんなことはどうでも良かった。そして、ゼナにとっても。 壁際にずらりと並んだ無数のクリスタル・ケース。 そのほぼすべてに『ひと』が入っていた。男、女、子供、老人………性別も年齢もさまざまだ。ただし………あるものは半ば獣と化し、あるものは身体の大部分を銀色の鎧のようなものと同化させたものを人と呼べるのなら、だが。 それらのすべてに共通しているのは、生命の水の中でたゆたう綺麗な白銀の髪と、それとはやや趣が違う、やはり銀色の瞳。 ―――ゼナとまったく同じ色。 ただし、その瞳はゼナのそれとは違いまったく意思というものが感じられない。硝子玉のように、ただ虚ろを映すのみ。 「なんで………こんなもの………」 あたしはこれとよく似たものを見たことがあった。 ―――ほんの一ヶ月ほど前に。 しかしそこにはこれほどたくさんはなかった。 思い出す。 壁際に並んだいくつかのクリスタル・ケースの中、淡い青色の液体に浮かぶ『ひと』。 ただただ虚ろにこちらを見つめる意思の感じられない深い銀色の瞳。 「コピー・ホムンクルス………ではなさそうだね………何人かはそうかもしれないけど………でもこんなにたくさんとはね………」 あたしとゼナが呆然と立ちすくんでいる間にも、ヴェルスは行動を開始していた。 立ち並ぶクリスタル・ケースを順番に調べ、冷静に判断を下していく。 それを見ながら、あたしの中に沸々と怒りが湧いてきた。ヴェルスに対して、ではない。ここのロードに対して、である。 あたしはここのロードが何をしているのかを理解した。こともあろうに、数百年前に狂気の中で身を滅ぼしたエルフと同じことをしようとしているのだ。しかも、それだけの実力もなしに。 この部屋はたぶん倉庫のようなもの。そしてここにあるのはおそらく………『失敗作』たち。 後悔しない、のがあたしの信条だ。でも……… 「リナのせいじゃないよ。僕が壊さなくていいって言ったんだから」 あたしの心情を読み取ったようにゼナが言う。 あたしがゼナを見ると、ゼナはまるで感情がなくなってしまったかのように無表情だ。 けれど。その手は何かを必死でこらえるようにあたしの服の袖を強く握り締めている。 「こんなこと………止めさせるわよ。絶対に」 あたしがそう言うと。ゼナは驚いたようにあたしの顔を見上げ―――かすかに笑って頷いた。 「………うん。そうだね」 後悔はしない。過ぎたことは悔やまない。 だから。あたしはあたしにできること、するべきことをする。 そして今すべきことはこの部屋を調べることだ。あたしはさっきからずっと部屋を調べているヴェルスに近寄って話しかけた。 「これって十分な証拠になるわよね?」 「………そうだね………全部はとても調べきれないけど、少なくとも僕が調べたいくつかは間違いなく………」 「そこで何をしてる!!」 唐突に聞こえた声にはっと振り向いたその先には―――部屋の奥、気付かなかったが開いたドアと、そこからあらわれた数人の男たちが立っていた。 「逃げるよっ!」 言うなりダッシュで駆け出すヴェルス。一瞬遅れてあたしとゼナもそれに続く。 「待ちやがれ!」 言われて待つバカはいない。さっきも似たような状況になっていた気がするが、さっきよりも出口が遠いぶんきついっ! だが文句を言っている場合ではない。あたしたちは猛ダッシュで通廊を走る。 きゅききゅうぅいっ! T字路を曲がった直後、背中をかすめて魔力弾が過ぎる。 あ………あぶなーっ! 今の当たったらまじで死ぬぞ!? どうやらここまで入り込んだからには生きて返す気はさらさらないらしい。 しかしあたしとてこんなところで死ぬ気なんぞまったくないっ! そんなことを思ううちにも出口は近付き―――ふと。嫌な予感がしてあたしは口の中で呪文を唱えはじめた。 やがて地上が見えるところまで辿り着き――― 『火炎球(ファイアー・ボール)!』 オレンジ色の光球が一斉に解き放たれる! なるほどっ! 確かにこれなら侵入者を一網打尽にできる! しかしっ! 「風魔咆烈弾(ボム・ディ・ウィン)!」 あたしは唱えておいた呪文を地下の入り口すぐのところで炸裂させる。 炸裂した風に押され流され、通廊の外で、火炎球(ファイアー・ボール)が誘爆する。 こんなこともあろうかと呪文を唱えておいたのだが、正解だったらしい。 「浮遊(レビテーション)」 風と炎がある程度収まってからヴェルスが呪文を解き放ち、あたしとゼナを連れて地上へと上がる。 げ。 中庭に出ると、そこには兵士、傭兵取り揃えて数十人が勢ぞろいしていた。 考えてみたら地上への出口はここだけじゃあないし、かなり長い距離を走ってきたんだから………その間に人を集めていてもおかしくはない。 「………っとぉう!」 切りかかってきた兵士の剣をあたしはとっさに後ろに下がって避ける。 兵士たちも腕は決して悪くない。あたしも剣は使える方だが、一対一ならともかくこの人数を相手にするのははっきり言ってちときつい。 ヴェルスの方も、あたし以上の数を相手にしており決して楽そうではない。 これは逃げるだけでもかなりきついかも。翔封界(レイ・ウイング)を唱えられるだけの余裕もないし、仮に唱えられたとしても飛び上がった直後に撃墜されかねない。 となれば……… 「ゼナ。魔力はどれくらい?」 「満杯ってわけには………全力でやったら三十分くらい」 「全力じゃなくてもいいわ。とりあえず………っ!」 話をしている隙に切りかかってくる兵士その一! 剣を抜く暇はないっ! そんな悠長に考えたわけではないが、あたしはとっさにその剣を右手首で受け止めていた。 きいぃぃぃんっ! 鋼が打ち合うような音が響く。 やばかった―………もう少しずれてたら手首から先がなくなるところだった……… しかし、剣は止めても衝撃が殺しきれない。あたしは地面にしりもちをついた。 「リナっ!」 倒れ込んだあたしの前にゼナが出る。そして切りかかってくる兵士その一の剣をゼナは素手で受け止める! その勢いで剣を弾き飛ばし、驚く兵士の横腹に蹴りを入れる。 「大丈夫っ!?」 鈍い音とともに倒れ込む兵士その一を無視してゼナはあたしに訊いてくる。 それにあたしはぱたぱたと手を振って、 「大丈夫よ。腕輪で受けたから。ちょっとまだ腕がじんじんするけど」 そんなふうにちょっとばかし和んでしまったのがいけなかったのだろう。 ほんの一瞬。 反応が遅れた。 「―――ゼナっ!」 死角からいつの間にか近付いていた傭兵の一人が、ゼナに切りかかる! あたしの声にとっさに身を引いたゼナの髪が数本切られて宙に舞った。ゼナが驚いた顔をする。 相手の得物が単なる剣だったらあたしはまったく心配しなかったろう。 しかし。 男の持っている剣を、あたしは知っていた。 斬妖剣(ブラスト・ソード)――― 魔王竜(ディモス・ドラゴン)さえ切り裂くという強力な魔法剣である。そのあまりに非常識な切れ味のために今は知り合いの黄金竜(ゴールデン・ドラゴン)に切れ味を抑える呪紋を描いてもらっているが、それでもそれなりの使い手が使えば石でもさっくり切れるくらいの切れ味を誇る。 これの持ち主は現在別行動中のあたしの連れだったりするのだが………なんで当の持ち主じゃないやつが持ってるんだか……… ………って今はそんなことを考えている場合ではない。 いくらゼナでも斬妖剣(ブラスト・ソード)が相手では……… 「ゼナっ! 下がって!!」 あたしの言葉に男が驚いたような表情をする。そしてあたしも、その男をはじめて真正面から見て………一瞬思考が停止した。 そして。 男は左足を起点にして即座に身体の向きを変え、あたしの方に踏み込んでくる! あたしは後ろに跳んでかわすが―――かわしきれないっ! 「…………………………!」 「リナっ!」 ゼナの声と。 「リナちゃんっ!」 ヴェルスの声が。 やけに遠くに聞こえる。 「油断大敵、だな。お譲ちゃん?」 あたしの前で感情の読み取れない笑いを浮かべる男の、燃えるような赤い髪が夜の風に吹かれて揺れた。 あたしはこらえきれずに片膝を地面につく。 切り裂かれたお腹の傷から溢れる血は、止まりそうになかった。 「リナっ!!」 遠のく意識に、呼びかける声。 声のする方に顔を向けると、ゼナの泣きそうな顔とぶつかった。 「リナっ! しっかりしてっ!!」 よく見れば何ヶ所か服が切り裂かれ、顔を隠していた布も破れ落ちている。 ―――大丈夫よ――― そう言おうとして。喉に込みあげてきた不快感に、言葉にならず咳き込む。 ………まじで………やばいかも……… 「リ………!」 「ゼナくんどいてっ!!」 声とともに、地面に倒れこみそうになったあたしの身体を誰かが受け止めた。 意識が混濁する。視界がかすむ。 闇に沈もうとする意識をあたしは必死でつなぎとめる。 いけない―――今、気を失ったら――― 「………………さない………」 ―――え―――? 「許さない………」 消えようとする意識の中。かすかに聞こえた声に、あたしはなんとかかすむ目を向ける。 その先にはゼナ。その普段は透明すぎるくらいに澄んだ銀色の瞳が、今は憎悪の色に染まっている。 ゼナの周りの空気が、気のせいではなく揺らぐ。 右手が熱い。ゼナと共鳴し、漏れ零れる魔力に腕がしびれる。 ………ゼナ………ダメ………! 声を出そうとするも言葉にはならず――― ぼやけた視界に映るゼナの横顔を最後に―――あたしの意識は、闇に沈んだ。 $$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ ………自分で言うのもなんですが………ものすごく極道な終わり方しているような(汗) でも、次は今回のように二週間以上あいだが空く、というようなことはない、と思うので、突っ込まないでやってください……… そして今回の話を書いていて思ったことを少し。 リナとゼナとヴェルスの三人で話してると、ゼナとヴェルスのしゃべり方がほとんど同じで見分けがつかなかったり………すみません。私のミス&力不足です。 でも今さらしゃべり方変えるわけにいかないので、なんとか区別するしかないのです。区別のポイントとしてはリナに対する呼び方。ゼナは『リナ』、ヴェルスは『リナちゃん』。それと、なるべく誰のセリフか明記するようにはしています。 そして。やっぱりガウリイ出てきません。いえ、一応ちらっとは出てきましたけど。 次はもうちょっとまともに出る予定です。たぶん。 ではでは。また近いうちに会えることを願って(て言うか書け。早く)! 柚乃でした〜。 |
24739 | Re:Legacy of Lunatic Elf 〜白銀の遺産〜 3 | エモーション E-mail | 2003/2/11 22:11:12 |
記事番号24737へのコメント こんばんは。 続きお待ちしていました。この内容と文章量ですと、確かに2週間掛かっても おかしくないですよ。 ツリーは落ちるときは凄い早いですよね。容量の問題ですから、落ちるときは 本当に早いです。ここ2〜3日は特に早かったのかも。 ……私もその原因の1人ですが(汗)←普段から投稿記事の容量多い奴。 リナはゼナくんの正体を知っているんですね。ただでさえソラリアの件といい、 この手のものには嫌悪しか感じないのに(当然ですが)、ゼナくんと一緒にいて、 それがどんなに酷いことなのか、嫌と言うほど分かってしまうのでしょうから。 普段のゼナくんが本当に可愛いから、余計に腹立たしいでしょうね。 リナが傷つけられたことで、完璧にブチキレちゃっているゼナくん。 どうなってしまうのでしょう。 また、ヴェルスさん……何者でしょう、この方……。 あのガウリイを越える勘の良さとは……(笑) 本当に人間なのでしょうか? でも、ゼフィーリア辺りにはごろごろいそうですよね、こーゆー人……。 多分、上手く言い含められてるだろうガウリイ、彼はどう行動するんでしょうか。 それ以前に何故ブラスト・ソードをクレウスが持っているのか……。 普通、剣士なら愛用の剣はよっぽどのことがない限り、他人には使わせない ですよね……。 続きが本当に楽しみです。 では、拙いコメントですがこれで失礼します。 |
24744 | 本当はこんなに長くなる予定ではなかったのですが。 | 柚乃 | 2003/2/12 18:18:22 |
記事番号24739へのコメント こんにちはv レスありがとうございます〜。 >続きお待ちしていました。この内容と文章量ですと、確かに2週間掛かっても >おかしくないですよ。 ………長いですよね。やっぱり。 一度は途中で切ろうかとも考えたんですけど………この書き出しでこの最後まで一気に行ってしまいたかったので……… て言うか。この長さだと、何気にスレイヤーズSP一話分(今は前後編に分かれてるから半分、てことになりますか)に匹敵してたりします。 とりあえず、ここまで長くなることはもうない………と思います。 >また、ヴェルスさん……何者でしょう、この方……。 >あのガウリイを越える勘の良さとは……(笑) >本当に人間なのでしょうか? >でも、ゼフィーリア辺りにはごろごろいそうですよね、こーゆー人……。 普通の人です(笑)。 いや、すごく強いですけど。 ちなみにどれくらい強いかと言うと………ガウリイと一対一で戦ったら、たぶんヴェルスさんが勝つでしょう。魔法も使えますし。ただし、ガウリイの得物が普通の剣なら、という注釈付きですが。 出身は………何処なんでしょう(オイ)。 ともあれ、こんなに長くなってすみませんでした。 次はこれほど長くはならない予定(………)ですし、なるべく早く投稿するつもりなのでのんびりと待ってやっていてくださいませ。 ではでは。柚乃でした〜。 |
24787 | リナさん〜っ!!? | 奈月るり E-mail URL | 2003/2/15 16:39:03 |
記事番号24737へのコメント こんにちは柚乃さん。 題名からもおわかりかと思いますが、私は今、相当焦ってます。はい。 リナさんが!リナさんがぁあぁぁっ!(←はい。五月蠅い五月蠅い) こほん・・・失礼しました。また(?)一人で暴走を・・・・・・ > まじで長いです。 いや。もう、どれだけ長くてもO.K.ですよ。読み応えがあるのは大好きなのですv(←私情を入れるな) 一話だったかの最初の方を読んだときに『あれ?』と思っていたのですが、やっぱりリナさんのつけていた銀の腕輪は、ゼナ君に関係した品だったんですね。ゼナ君の魔力に共鳴してますし。 リナさんとゼナ君との関係は、すり込み(笑)というか、姉弟みたいにお互いを意識していると言うことでしたが、それでオッケーです。はい♪私は恋愛とかよくわかんないので、もう、相手を大切に思ってると言うことだけで相手を好きと言うことにしております。(←自分が基準かよ) と、いうわけで。ゼナ君が切れちゃったのは私好みの展開だったりv(ぇ > リナとゼナとヴェルスの三人で話してると、ゼナとヴェルスのしゃべり方がほとんど同じで見分けがつかなかったり………すみません。私のミス&力不足です。 え?ちゃんと見分け(読み分け?)つきますよ。 力不足なんて全然嘘で、私は柚乃さんの人を引きつけるお話とその書き方が大好きです♪ > ではでは。また近いうちに会えることを願って はい。今回は出遅れちゃったみたいですが、次は一番乗りを目指します! それでは♪ 【奈月るり】 |
24790 | 一度やってみたかったんです。こういうラスト(←オイ) | 柚乃 | 2003/2/15 18:28:37 |
記事番号24787へのコメント 奈月るりさん、こんにちは。そしてレスありがとうございます♪ > いや。もう、どれだけ長くてもO.K.ですよ。読み応えがあるのは大好きなのですv(←私情を入れるな) そう言っていただけると助かりますv て言うか、Wordからコピペして、ざっと誤字脱字や文法の間違いなんかがないか確認………という作業に30分近くかかったあたり(待て)、長すぎだろ、とか自分で思ったもので……… まあ、私のキーボード入力の速度が遅いというのもありますけど(←精進しろよ) > 一話だったかの最初の方を読んだときに『あれ?』と思っていたのですが、やっぱりリナさんのつけていた銀の腕輪は、ゼナ君に関係した品だったんですね。ゼナ君の魔力に共鳴してますし。 これに関してはこの話を書きはじめたときから………と言うかむしろこの話を書きはじめる前から決めてた設定なので、やっと少し出せたっ! という感じなのです(汗) 詳しいことはこれから出すつもり………つもり………つもり………予定なので(予定は未定とも言いますねv)、もうしばらくお付き合いくださいね♪ >> リナとゼナとヴェルスの三人で話してると、ゼナとヴェルスのしゃべり方がほとんど同じで見分けがつかなかったり………すみません。私のミス&力不足です。 > え?ちゃんと見分け(読み分け?)つきますよ。 そ、そうですか? それなら良いのですが……… と言うか、今後もちゃんと分かるように鋭意努力いたしますっ! たぶん次とその次はけっこうすぐに投稿できると思います。 それでは。柚乃でした〜♪ |
24810 | Legacy of Lunatic Elf 〜白銀の遺産〜 4 | 柚乃 | 2003/2/16 18:23:32 |
記事番号24736へのコメント 業務連絡業務連絡。 過去ログに落ちていたプロローグから第二話までを著者別に登録しました。まだ読んでない人はぜひともそちらから読んでくださいねv 業務連絡終了。というわけで改めまして……… こんにちは。柚乃です。 今回は前回の投稿から一週間経たずにできました♪ それと、前回の前書きについてちょっと訂正(?)を。 前回、50KB超えてる、と書きましたが………いえ実際超えてるんですけど。改めて確認したら、60KB超えてました(爆) て言うか長すぎですっ! まじでっ! と言っても実は今回も50KB近くいってるんですけどっ! ……………………………気にしないでください。 それはさておき(待て)、今回から書き方がちょっと………と言うかかなり変則的になっています。リナの一人称になったり三人称になったりリナの一人称になったり三人称になったり。 読みにくいかもしれませんが、そこはそれ、とさらっと流してもらえるとありがたいです。 ではでは。本編にどうぞ〜。 $$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ 「どうする? 全部ぶっ壊しちゃう? やろうと思えばまあ………できないこともないと思うけど?」 「………ううん、いい。でも………もう誰も入れないようにってできる?」 「そうね………じゃあ………ちょっと協力してくれる?」 言って少女は少年に簡単な指示を出し、片手で少年の手を握ると、反対側の手に持った棒杖(ワンド)に意識を集中してぶつぶつと呪文を唱え始めた。 やがて呪文が終わり――― ぶぅん……… 空気を震わせるような音とともに一瞬で周りの風景が変わった―――天井、壁、床、すべてが、つるりとした材質のものからひかり苔の生えたごつごつとした岩肌へと。 それを確認して少女はホッと息を吐いた。 「これでまず大丈夫。幻影(イリュージョン)をかけ直しておいたから、これを解かない限りは入れないし、そう簡単に解けるもんでもないしね」 そう言うと、少女は棒杖(ワンド)をくるんと回して、にっと少年に笑いかけた。 ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** 最初に目に飛び込んできたのは、鮮やかなあか。 ゼナにとって赤はリナの色だ。燃え立つ炎のような………生命(いのち)のいろ。 けれど。 その赤が、死の象徴として、今、ゼナの目の前にあった。 「―――リナっ!」 リナがお腹から血を流しながら、がくんと膝をついた。 地面に血溜まりが広がっていく。 ゼナは泣き出しそうになるのを必死でこらえてリナに駆け寄った。 途中、思い出したように切りかかってくるやつらもいたが、所詮はただの剣。服や顔を隠した布を裂くのみで、ゼナの身体には傷をつけることすらできない。 「リナっ! しっかりしてっ!!」 必死で呼びかけると、リナはかすかに笑みを浮かべた。その唇が動き―――しかし声は出ず、代わりに咳き込んで赤い塊を吐き出した。 恐怖がゼナの精神を支配した。 リナが死ぬかもしれないという恐怖。 リナを失うかもしれないという恐怖。 はじめて『自分』を見てくれたひと。 はじめて自分に名前をくれたひと。 誰よりも何よりも大切で………誰も何も決して彼女の代わりにはなれない。 はじめて見た時から惹かれた。そのいのちの輝きに。 「リ………!」 「ゼナくんどいてっ!!」 地面に倒れ込みそうになったリナを、いつの間に近付いていたのかヴェルスが支えた。 ヴェルスもまた焦っていた。 リナの傷は命にかかわる。すぐに治療しなければいけないが―――周りがそれを許してくれるとは思えない。 それでもヴェルスはリナの傷口に手を当てて早口で復活(リザレクション)を唱えはじめる。 (せめて………出血だけでも止められれば………!) 「………許さない」 小さな呟きの―――その中に含まれた凍りついた炎のような危うい響きに。 ヴェルスは息を呑んで顔を上げた。 「許さない………リナを………傷つけたっ………!」 その銀色の瞳には燃えるような、あるいは凍るような怒り。 今はリナを助ける方が先決だと、ゼナにも分かっていた。放っておけばリナは確実に死ぬ。それはあってはならないことだ。 けれど――― 抑えられない怒りがゼナの精神から溢れる。 制御の効かなくなった魔力が空気を揺るがせる。 視線の先には右手に赤く染まった抜き身の剣をぶら下げた赤毛の男。 リナの唇がかすかに動き………しかしそれは言葉にならず。おそらくほとんど焦点もあっていなかっただろう瞳が閉じられ、リナの身体から完全に力が抜けた。 しかし、ゼナはそれを見ていなかった。 瞳に映るのはただ一つ、憎むべき『敵』の姿。 ぱきぃん……… ゼナの中で。何かが砕け散る音がした。 ゼナの身体が変化していく。ハーフ・エルフの少年から―――深い銀色の瞳と白銀の毛並みを持つ、美しい獣へと。 るうぅおおぉぉぉぉおぉん! 驚きに目を瞠るヴェルスの目の前で―――白銀の狼は空高く咆哮をあげた。 「な………」 ヴェルスは思わず呪文の詠唱を止めて呟いた。 ゼナが単なるハーフ・エルフではないことは気付いていた。 最初にここのロードの話をした時や城の地下を調べた時のリナたちの様子から、何か関係があるとは思っていた。 しかし――― いきなりこれでは驚かないはずがない。 美しい白銀。深い銀色。それらはすべてゼナが持っていた色彩だ。 そして首にかけた金の鎖と、その先で揺れる深紅の宝石。それはいつもゼナが身に着けていたものだ。その事実が―――間違いなくこの銀狼がゼナなのだと、嫌でもヴェルスに納得させた。 怒りに満ちた瞳が三人―――二人と一匹―――を取り囲む兵士たちに向けられる。 白銀の毛並みが風に揺れ、首にかけた金の鎖がちゃり、と軽い音を立てた。 そして――― ざざざざざんっ! じゃぎぅん! ゼナの身体から生まれ出た数本のムチのようなものが取り囲む兵士たちをまとめてなぎ払い、一条の銀光が辺りの木々もろとも別の方にいる数人の兵士を灼く! 銀光が走ったあと、残ったのはわずかに黒ずんだ大地のみ。そこにいたはずの者たちは―――塵すら残さずに、消滅した。 「あ………?」 誰が発したものだろうか。かすれた呻きが風に流れる。 それをきっかけに。 『うわあぁぁぁあぁぁ!?』 呆然としていた兵士たちが悲鳴とともに我先にと逃げはじめた。 おそらくは―――本能的に悟ったのだろう。殺される、と。 しかしそれを許すつもりはゼナにはない。銀狼は大地を蹴って跳躍した! 最初こそ驚いたが、驚きから立ち直ったあとのヴェルスは冷静だった。 今のゼナの状態は、決して安全なものではない。暴走、と言っても良い状態である。………いや、実際暴走しているのだろう。 怒りに我を忘れ、能力の制御もまともにできなくなっている。そんな感じがする。 原因はもちろん……… ヴェルスは気を失った少女の血の気のない顔を見下ろした。 その原因がリナが怪我を負ったせいなら、まともに能力を制御できなくなっていてもリナに危害を加えるようなことはない………と信じたいが。 『うわあぁぁぁあぁぁ!?』 ヴェルスが素早く考えていると、悲鳴とともに周りの兵士たちが散っていく。そしてそれを追うように銀狼が大地を蹴る! どうやらゼナの怒りは一応の指向性を持っているらしい。 つまりは『リナを傷つけた連中』に対して、ということだ。リナを直接傷つけたのは一人なのだが、そこまでは意識が行っていないのだろう。 周りがみんな自分のことに手一杯で、他人のことなどかまっていないのを確認して、ヴェルスはリナを地面に静かに横たえると、周りの雑音を完全に遮断して、復活(リザレクション)の呪文を唱えるのに集中することにした。 周りで間断なく悲鳴が聞こえてきていたりするが………ヴェルスにはその悲鳴の主たちを助ける義務もつもりもまったくなかった。 そもそも、もとの原因を作ったのは本人たちなのだから、自業自得である。 しかし―――この城の人間だけならともかく、街まで出たりしたら大事である。そうなる前に、ゼナを止めなければいけないとは思う。 それができるかとなると、甚だ疑問ではあるのだけれど。 ………どおおぉぉぉぉぉん……… 「………なんだ?」 遠くから響いてきた爆発音に夜の街を歩いていたガウリイは足を止めた。 思わず腰に手をあてて―――チッと舌打ちする。 手をあてた先にはもちろん剣を佩いている。しかしそこにあるのは使い慣れた自分の剣ではなく、ただの長剣(ロング・ソード)。 自分の剣が手元にないことでなんとなく落ち着かないが、持っていないものは仕方がない。 ………どうぅぅぅん……… そんなことを思っているガウリイの耳に再び爆発音が届いた。 音が聞こえてきた方向や距離を考えると……… 「城………か?」 ぽつりとガウリイは呟いた。 今ガウリイがいるのは城からだいぶ離れた街の中。数時間前には城にいたが、城に忍び込んだ怪しげな黒ずくめの捜索のために、街に出てきたのだ。 と言っても、ガウリイも本気で見つけるつもりはない。布で顔を隠していて顔も分からないし、まだあんな死ぬほど怪しい格好をしているとは思えない。 城の人間たちも逃げられたあとはさほど必死で探そうとはせず、一応ガウリイ以外にも街を捜索している者はいるが、ほとんどは城に残って警護を続けている。 ならば何故ガウリイは街に出てきたかと言うと………なんのことはない。ここ半月ほどずっと城の敷地内にいたので、久しぶりに街に出てみようと思ったのだ。 城は街の真ん中にあるし、放射線状に道があるおかげで、迷うこともない。 そんなわけで、ガウリイは城から離れていたわけなのだが………今しがた聞こえた爆発音は、どうもその城から聞こえてきたような気がする。 ということは、曲者はまだ城の中に潜伏しており、なんらかの行動を起こした―――と考えるのが妥当である。 そこまで悠長に考えたわけではないが。 ガウリイはだんっと地面を蹴って走り出していた。 「う………ん………」 あたしは薄く目を開けた。周りが妙にぼやけている。かろうじて誰かが上から見下ろしているのは分かるが……… そこまで考えて。あたしは目の焦点があっていないことに気が付いた。 以前にも同じことを経験したことがある。二年半ほど前にサイラーグで。ナイフでお腹を刺されて、シルフィールに復活(リザレクション)をかけてもらったとき……… そこであたしははたと気付いた。 ということは、あたしは怪我をして誰かに復活(リザレクション)をかけられているのだろうか………? 記憶がかなり曖昧である。まだぼうっとした頭で記憶を掘り起こす。 えーと………あたしは確かゼナと二人でロードの城に忍び込んで………そこでヴェルスに会って………地下に潜入したら見つかって、地上に出てきたところで……… あたしは一気に覚醒した。 「ゼナっ………!?」 すぐさま起き上がろうとして―――身体に力が入らずに断念する。 あう………情けない……… 「まだ動かないで」 「………ヴェルス………?」 「おしゃべりもまだダメ」 呟いたあたしの言葉ににべもなく応えると、ヴェルスは再び呪文の詠唱を続ける。 なんとか焦点の戻ってきた視界にヴェルスの長い黒髪が映る。 暗いのになんで黒髪がはっきりと分かるんだろう………ぼんやりとそんなことを考えてみる。どうもいまいち頭が働いていない。 どぅぅぅん……… 遠くで何かが爆発するような音がした。 ………………………? すぐ近く、というわけではないが、すごく遠いというわけでもなさそうな感じがしたが……… あたしは思うように動かない身体を首だけ動かして周りを見る。 城の中庭………? ということはあたしが気を失ってから場所を動いていないのか。 しかし周りにたくさんいたはずの兵士たちが今は一人も見当たらない。いるのはあたしとヴェルス……… ………………………………… ゼナがいない。 どぉぉぉん……… 再び遠くから爆発音が聞こえてきた。そして夜空に一瞬閃光が走る。 ………まさか………いやまさかと言うよりも即座にそのとおりだろとか思ったりはするのだが。 まともに働かない頭にイライラしながら視線を移すと、すぐそばに、芝生が綺麗さっぱりなくなり、黒く灼け焦げた地面。 ………間違いない。 「ヴェルスっ! ゼナはっ!?」 いつの間にやら完全にとはいかないが、それでも一応動かせるようになった身体を起こし、あたしはヴェルスに訊く。 「なんとか動けるくらいまでは回復したみたいだね。良かった。 ………ゼナくんなら暴れまくってるよ。今はまだ城の敷地内にいるみたいだからまだ大丈夫だけど、そろそろ止めないといけないだろうね。街に出ちゃうかもしれないし」 今度はさっきのように止めずにホッと息を吐いて答えるヴェルス。 しかしえらく冷たい言い方である。まるで街にさえ行かなければ城はどうなってもかまわないとでも思っているようだ。 まあ、あたしとしても、ここのロードに同情なんぞ欠片もしていないが……… 何はともあれ、止めないといけないというのは同意見である。ただし、あたしとしては城やら街やらのためというよりはむしろ――― 「そうね………ゼナを………止めないと」 ゼナのために。 『止める』ことができるのはたぶん―――あたしだけだから。 「な………」 ガウリイは城に到着するなり絶句した。 それまでにも音は断続的に聞こえていたし、走りながら見えた城の様子から城で何か騒ぎが起こっているのは間違いないとは思っていた。が――― 今、目の前にある光景は、ガウリイの想像を超えていた。 生きている人間はいない。 あるのは身体の半分、あるいはほとんどが消失した死体やらあちこち灼け焦げた地面とところどころ破壊された城壁。数時間前までは庭木があったはずの場所にも、黒ずんだ跡が残るのみ。 完全に炭化した木の破片が数えられる程度残っていることから、なくなった庭木がどうなったのかは推して知るべし。 どうぅぅぅん……… わぁぁぁぁ……… そして今も断続的に聞こえる爆発音と―――ここまでくれば聞こえる、悲鳴。時折夜空に映る銀色の閃光。 何はともあれ、いつまでも呆然としているわけにはいかない。 別に自ら望んで、というわけではないにせよ、今はこの街のロードに雇われている身なのだ。騒ぎを放っておくわけにもいかない。 しかし――― 「どうせならあと四日待ってくれればいいのになっ………!」 ガウリイは城の敷地内を走りながら苦々しく吐き捨てる。 もともとここのロードの護衛は最初の約束ではする予定ではなかったのだ。ただ予定外の事態で最初の約束が無効になってしまったため、その代わりにと、この城の警護を手伝っているだけなのである。 なんで傭兵なんぞを雇っているのかとか、ロードがいったい何をしているのかとか、そういったことにはガウリイは興味はない。 ガウリイにとって重要なのは、自分の仕事がこの城の警護をすること、そしてその期間があと三日間だということだ。 ………まあリナならそうは思わないのかもしれないが。 ここ二年半ほど一緒に旅をしている少女のことを思ってガウリイは苦笑した。リナがもしこの場にいれば、興味津々でロードが何をしているか探っていたかもしれない。 しかし、そのリナは今はガウリイのそばにはいない。一ヶ月ほど前から別行動中である。 きっと今頃はガウリイがいないのをこれ幸いと盗賊いじめでもしているのだろうか。それともまたぞろ何か騒ぎを起こしているかもしれない。リナはちょっと目を離すととんでもないことを引き起こす体質だから……… リナが聞いたらそんなことしか思いつかんのかっ! と思いっきり突っ込まれそうなことを考えながら、ガウリイは中庭を突っ切り、騒ぎが起こっているらしい裏庭に抜け――― 「………え………?」 見慣れた―――しかしここ一ヶ月は見ていなかった栗色が、暗い中でもはっきりと、ガウリイの人一倍いい目に映った。 「? ヴェルス、どうしたの?」 あたしを抱えて空を飛びながら後ろ―――というか下―――を怪訝そうな表情で気にするヴェルスにあたしは問いかけた。 「なんとなく視線を感じた気がするんだけど………この暗さじゃあよく分からないな。 まあ気のせいだと思うけど………それにそんなことより急がないとね」 「そうね」 視線、ということはまだ行動している人間もいるということだ。しかし今はそんなことより、ヴェルスが言うとおり急がなければいけない。 だいたいこの城の敷地が広すぎるのがいけないのだ。城自体はそれほど大きいものではないが、敷地そのものがやたらめったら広い。前庭と中庭、さらに裏庭があり、裏庭にはけっこう大きめの池とこんもりとした林(森というほどの規模ではない)まであったりするのである。 今はその裏庭を翔封界(レイ・ウイング)で飛翔中だ。 ちなみに術を使っているのはヴェルスである。失血のせいでまだ頭はふらふらするし、身体はめちゃめちゃだるくて動くのもやっととは言え、呪文が使えないというほどではないのだが、今は少しでも魔力と体力とついでに気力も温存しておきたいのだ。 ヴェルスに聞いたところによるとあたしが気を失ってからだいたい十五分くらい経っているらしい。 しかしあたしの負った傷はほとんど致命傷だったはずである。それをたったの十五分―――今で十五分だから実際は十五分未満―――で、完全にとはとても言えないが、それでもなんとか動けるくらいまで回復させるというのはたいしたウデである。 サイラーグでシルフィールがあたしの怪我を治してくれた時、なんとか動けるくらいまで治療するのに三十分以上かかったと言えば、それがどれくらいすごいことか少しは分かっていただけるだろうか。 それはさておき。 十五分、といえば、ゼナが本気になって冷静に全力でやればこのくらいの規模の街なら全滅させるくらいのことはできる時間である。 それを望んでいたわけではまったくないが、それが未だに城の敷地内にいるというのはやはりそうとう冷静さを欠いている―――と言うよりも完璧に暴走しているのだろう。 まったく………世話の焼ける……… 思わず溜め息を吐きたくなりながら、あたしはふと、ヴェルスの端正な顔を見た。 「………ねえ」 「何?」 「………なんで一緒に来てくれるの?」 「リナちゃんを一人で放っとくわけにもいかないだろ?」 なんとなく気になって訊いたあたしに、あっさりと答えるヴェルス。しかしあたしが言いたいのはそういうことではなく……… 「危険だってのは分かってるんでしょ? なのになんで逃げないの?」 「それはこっちのセリフだね。散々止めるのも聞かずに飛び出そうとしたのはリナちゃんの方だろう」 「…………………………」 確かにそれはそうである。しかし、止めても無駄だと悟ると、それ以上は何も言わずに運搬役を引き受けてくれたのだ。 自分で術を使わなくていいのは助かるが、下手すれば命にかかわるのだ。別に無理強いするつもりなんかないし、身体を回復させてくれただけでもありがたいのだ。じゃああとは頑張ってね、とさよならしてもそれは普通の反応だと思う。 あたし自身は絶対大丈夫な自信はあるが、あたし以外の人間の安全はまったく保証できない。そのことは言ってあるし……… だいたい運搬役はヴェルスの方から言い出したんだし。 「それにリナちゃんには恩があるから。その恩返しも兼ねて、かな」 「………恩………?」 さっきもそんなようなことを言っていたような気がする。その時はさらっと流したが、いったいなんのことなのだろうか? 「リナちゃんは良くも悪くも他人にすごく影響を与えてるってことだよ。たぶん自分が思ってる以上にね」 「あたし、ヴェルスに会ったの今日………あ、昨日か………とにかく、昨日がはじめてだと思うけど………?」 「僕自身のことじゃないからね。 それよりなんかさっきからずいぶんと静かじゃない?」 そういえば。 ついさっきまで断続的に聞こえてきていた悲鳴やら爆音やらが今は聞こえない。 何やらまたごまかされたような気はするが、まあそのことはあとで追求することにしよう。 ともあれ、物音がなくなったということは………城の人間が全部いなくなってしまったのだろうか。 もしそうなら街に出て行ってしまうかもしれない。いやもう行ってしまったかも……… しかしそれとはまったく違う―――むしろ逆の考えもまたあたしの脳裏をかすめる。 普通なら、有り得ないと一蹴できるが、今はゼナを傷つけることのできる武器―――斬妖剣(ブラスト・ソード)が存在するのである。まあそれでも簡単にやられるようなゼナではないけれど。 それでも――― 「―――いたっ!」 一瞬自分の思考に沈みかけたあたしを浮上させたのは、ヴェルスの声だった。 いったい何故こんなところまで入り込んだのだろうか。 裏庭の片隅にあるこんもりとした林。その奥。 辺りの木々は黒く焼かれ、林の中に広い何もない空間ができている。 周りには動くものはない。 ゼナはその空間のほぼ真ん中に佇んでいた。 身体のあちこちを朱色に染め。 風にその美しい白銀の毛並みを揺らし。 深い銀色の瞳に静謐な光をたたえて――― あたしはヴェルスが術を解き、地面に降り立つのと同時に―――叫んだ。 「―――ゼナっ!!」 $$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ やぁぁぁぁっとガウリイが出てきました! でもちょっとだけ(笑)。 ………別にガウリイファンにケンカを売っているつもりはないんですけど(汗) それと人称ですが。ずっとリナの一人称だと、リナが気を失っている間にいったい何があったんだぁぁぁぁぁ! ということになってしまうための苦肉の策です。 最初っから三人称にしておけば良かったんでしょうが………書きはじめたときは、リナの一人称が一番書きやすいしー。とか思って、何も考えずに書きはじめてしまったのですね(待て)。 またいきなり全部三人称になる、とかいうことがないとも限りませんが………とりあえず当分はこの方式でいくつもりです。 次もたぶんそう遅くはならないと思います。 ではでは。柚乃でした〜。 |
24811 | Re:Legacy of Lunatic Elf 〜白銀の遺産〜 4 | エモーション E-mail | 2003/2/16 21:43:25 |
記事番号24810へのコメント こんばんは。 ゼナちゃん、完全暴走モード……(汗) しかも狼さんにメタモルフォーゼ。 もの凄い威力で城を破壊しまくるゼナちゃん。リナも止めるのが大変なのでは? ……ところで元凶のクレウスさんはどうなったのでしょう? 何かやたらと要領良さそうなので、ちゃっかり生きてそうに思えますが。 ヴェルスさんもほんとに謎ですね。リザレクションまで使うんですか? 一体何者なんでしょう? でも好みだから許す!(笑) ガウリイも驚いたでしょうね。何故かリナが男付きで(笑)城の中 文字通り飛び回っているんですから。 一人称と三人称は特に気になりませんでしたよ。 すんなり切り替えられていたと思います。 では、短めですがこれで失礼します。 続きを楽しみにしていますね。 |
24818 | 前回に引き続いて早いレスありがとうございますv | 柚乃 | 2003/2/17 18:16:43 |
記事番号24811へのコメント エモーションさん、こんにちは。レスありがとうです♪ >一人称と三人称は特に気になりませんでしたよ。 >すんなり切り替えられていたと思います。 それは良かったです〜。 当分はこれでいこうと―――と言っても比率はどうなるか分かりませんけど―――思っているので、読みにくかったらどうしようかと思っていたのです(汗)。 なので安心しました。 次は、話の内容的に今回からあまり間を空けたくないので、明後日か明々後日には投稿する予定ですっ! ではでは。これからもよろしくお願いします。 短くて申し訳ありませんが。柚乃でした〜。 |
24816 | くぁっ! | 奈月るり E-mail URL | 2003/2/17 07:51:09 |
記事番号24810へのコメント 最近、なんか変な題名のレスで済みません。(↓ぺこ↓ぺこ) 早速四話登場で、うはうは(死語)の奈月です♪ ゼナ君暴走ですか!? リナさん〜はやく止めてぇえぇぇっ!(←やかましい) ガウリイ、お前とろいんじゃ!!(ケンカ売ってるワケじゃありません。ごめんなさい、ごめんなさい) ヴェルスさん、もう目立ちまくり♪かっこいいですvちょっとヴェルスさんの正体に心当たりが出来てしまいましたです(汗)。 >「リナちゃんは良くも悪くも他人にすごく影響を与えてるってことだよ。たぶん自分が思ってる以上にね」 >「あたし、ヴェルスに会ったの今日………あ、昨日か………とにかく、昨日がはじめてだと思うけど………?」 >「僕自身のことじゃないからね」 ↑ここです。ここであれ?って思って。 ゼナ君の真の姿(?)・・・ > ゼナの身体が変化していく。ハーフ・エルフの少年から―――深い銀色の瞳と白銀の毛並みを持つ、美しい獣へと。 > るうぅおおぉぉぉぉおぉん! > 驚きに目を瞠るヴェルスの目の前で―――白銀の狼は空高く咆哮をあげた。 まさか、ゼナ君の名前のゼナというのは、やはり某光の勇者やら美少女魔道師の操る虚無の刃でにプチ倒されたり、どこぞの金魚のフンのごとく高笑いをあげるエルフのまとった変な白い鎧からきてるんですか!?(←いや。言い方遠回しすぎ) それはともかく。 ゼナ君に暴走して欲しいvなんて思ってたのは私ですが、はやくリナさんとめてぇえぇぇっ!というのが今のところの本音です。(←わがまま〜) それでは、自分勝手な感想でした♪(←おい) 【奈月るり】 |
24819 | 次はおそらく19日か20日になるかと。 | 柚乃 | 2003/2/17 18:38:55 |
記事番号24816へのコメント 奈月るりさん、こんにちは。レスありがとうございますv >ヴェルスさん、もう目立ちまくり♪かっこいいですvちょっとヴェルスさんの正体に心当たりが出来てしまいましたです(汗)。 > >>「リナちゃんは良くも悪くも他人にすごく影響を与えてるってことだよ。たぶん自分が思ってる以上にね」 >>「あたし、ヴェルスに会ったの今日………あ、昨日か………とにかく、昨日がはじめてだと思うけど………?」 >>「僕自身のことじゃないからね」 > >↑ここです。ここであれ?って思って。 にゅうぅぅぅ。この段階で心当たりとは………すごいです。ほとんどヒントやらまだ何にも出してないのに(オイ)。 そもそも、『ヴェルスの息子』の年齢だってかなり適当ですし。リナと五歳違い。うん、そんなもんかなー、と(待て)。 それに見た目も性格も似てないですねー。………まあ、目的のためには手段を選ばなさそうなところなんかは似てますけど。 > まさか、ゼナ君の名前のゼナというのは、やはり某光の勇者やら美少女魔道師の操る虚無の刃でにプチ倒されたり、どこぞの金魚のフンのごとく高笑いをあげるエルフのまとった変な白い鎧からきてるんですか!?(←いや。言い方遠回しすぎ) ………まあいいか。 そのとおりです。実は、第一話を投稿してから、『ゼナ』だと、リナと語呂合わせ………もとい、韻を踏んでいるみたいでちょっとアレだなーと思い、名前、『ゼファ』の方が良かったかなーとか思ったりもしました。 しかしどこぞの金魚のフンのごとく高笑いをあげるエルフ………いえそのとおりなんですけど、思わず笑ってしまいました(笑) けっこう半端な終わり方をしてるので、次もさくさく投稿するつもりです。 と言うか。もう半分くらいは書き終わってるので、残り半分とっとと書け、という感じなのですが(汗)。 ではでは。これからもよろしくですv 柚乃でした〜。 |
24840 | 重ね重ね・・・(汗) | 奈月るり E-mail URL | 2003/2/19 17:11:19 |
記事番号24819へのコメント 柚乃さん。横にレスをのばしてしまって済みません(↓ぺこ↓ぺこ)。 いや。本当にごめんなさい(汗)。 ただ、ヴェルスさんの正体の予想を、前のレスで書き込むのを忘れていたもので・・・(←あほ) 深い意味はなくて、ただ、ヴェルスさんの正体が誤解だったら、違う方向で思い込みしてて失礼だなぁって思ったりしたもので。違ったら、また考える楽しみもありますし♪ ここだと、まだヴェルスさんの正体に気がついていない人が読んでしまう可能性があるので、頭文字だけ・・・(←いや。それでもわかると思うが) ひょっとしてヴェルスさんは、Gさんのお父さん?それだったら、二十三才くらいというのにも当てはまりそうですし。ただ、『目的のためには手段を選ばなさそう』・・・それだと思い浮かんでしまうのは、某合成獣のZさんなんですよね。(←アニメの影響で)血縁の方が髪の毛黒だったから、きっと本人も人間の時は黒かったはず。ヴェルスさんの髪も黒いし。と言う考えもあるのです。魔法の才能があるとゆうことでは、両方当てはまりそうですよね。Zさんの方は言うまでもなく、一応Gさんの方は本人使いませんがエルフの血が混ざってるようですし。(←映画より) こんなところで答えられるかぁっ!と言う場合は、メールでも大丈夫ですので。(←他人に迷惑をかけることしか思いつかんのか!)ノーコメントも可ですのでご安心を♪(何 以上、どうでもいい雑談(!?)でしたv それでは、小説の続き楽しみに待ってますので。ではでは♪ 【奈月るり】 |
24842 | レス返し返し(なんのことやら)ってはじめてですv | 柚乃 | 2003/2/19 18:45:44 |
記事番号24840へのコメント 奈月るりさん、こんにちは。 題名にも書いたとおり、レス返しにレスを返してもらったのってはじめてです。なんだか『おおっ!』とか思ってしまいました(笑)。 それはさておき。 さすがにまんま答えるのは私もまずいと思うので(笑)私も頭文字のみで。 少なくともGさんではないです。Zさん………ではないとは言いません(びみょー)。 Zさん。私も黒髪推奨ですね♪ で、瞳の色は青緑を推奨しております。別に青でも緑でもいいんでしょうが………アニメでは緑でしたし。そこはこだわり、というやつです。趣味とも言う。 何と言うか………微妙な色合いって好きなんです。青でも緑でもないという。 ちなみに、最後まで『ヴェルスさんは○○のお父さんだよっ』ということを書くつもりはないです。でも絶対に分かる、ような書き方はするつもりですが………っていうかすでにばれてるし(笑)。 まあそれも続きを書かないとどうしようもないんですけど。 と、とりあえず、第五話は今日中は無理っぽいです……… ではではっ。柚乃でした〜。 |
24859 | Legacy of Lunatic Elf 〜白銀の遺産〜 5 | 柚乃 | 2003/2/20 18:32:47 |
記事番号24736へのコメント こんにちは。柚乃です。 てへ。結局20日でした。 でもまあ前回からさほど時間経っていないので。 それと先に言っておきますが………私はリナファンです。なんだか毎回たいへんな目に遭っているような気がしないでもないですけど(汗)。 愛ゆえに?(待て) それはさておき。 さっそく本編にどうぞ〜。 $$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ 「手、出して」 「うに? 何するの?」 疑問の声をあげつつも、少女は言われたままに片手を差し出す………その途端。 ぎゅるうぃっ! 少年の腕から生まれた銀色のムチのようなものが少女の手首に巻きついた。 「うにゃわっ!? ………って何これ?」 「それは僕の端末になってるんだ。それと、僕の主人(マスター)だっていう証でもある。 それを身に着けてる相手の居場所なら分かるし、身に着けてれば僕に命令ができる。それに、端末自体にも少し能力が付加してるから、精神世界面(アストラル・サイド)から気配を隠すくらいのことはできるし。 ………でもその代わり、僕の魔力が足りなくなると端末から直接魔力を吸い上げちゃうから、気を付けないといけないんだけど………」 「要するに………これはあんたの一部ってわけね? で、あんたの魔力が不足するとこれを通じてあたしから魔力を吸収する、と。 ん。大丈夫。あたし魔力容量(キャパシティ)には自信あるし、日頃から魔力をちゃんと補ってれば問題ないんでしょ?」 そう言って笑う少女の右腕で、銀色の腕輪がしゃらん………と軽やかな音を立てた。 ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** 「―――ゼナっ!」 あたしの声にゼナがゆるり、とこちらを向いた。 降りた場所がゼナのすぐ近くだったため、あたしとゼナとがほとんど間近で見つめあう形になる。 新たな敵と判断したのか、あたしに向かって跳躍しようとして―――顔をしかめて後ろに下がった。 そしてしゃがみこんで苦しそうにぐるぐると唸る。 ―――リナ。 ゼナと会って間もない頃のゼナの言葉がよみがえる。 ―――他に方法がなくなったら、その時は……… しないしさせない。そんなことは―――絶対に。 ゼナを止める―――今ならまだ、止められる! あらわにした右手を前に突き出す。手首には二つのリングを絡み合わせたような意匠の銀色の腕輪。 腕を上げた勢いでしゃらん、と軽やかな音を立てた腕輪が、あたしの意思に応えて鈍い銀色の光を放つ。 一度深呼吸をして全意識を集中する………大丈夫。やれるっ! 「全能力封印(オール・シールド)っ! ゼナっ! もうやめなさいっ!!」 瞬間。 圧倒的な魔力が、腕輪を通してゼナから流れ込んできた。 「―――ゼナっ!」 術が解かれるのを待ちかねたようにリナが叫ぶ。 ヴェルスが術を解いたのは銀狼のほぼ目の前。相手がリナたちを殺すつもりなら即座に殺せる距離である。 リナの声に反応してか銀狼がゆるり、とこちらを向き……… ―――殺られる………!? こちらに向かって跳躍する気配を見せた銀狼にヴェルスは一瞬緊張したが………後ろに下がった銀狼を見て、すぐに緊張を解いた。 銀狼は苦しそうな様子で地面にしゃがみこんでいる。 ―――まるで、何かに耐えるように。 「全能力封印(オール・シールド)っ! ゼナっ! もうやめなさいっ!!」 間を置かず、ヴェルスのすぐそばでリナの声が響く。 右腕に嵌められた銀色の腕輪が強い輝きを放ち――― ごおぉうっ! ほとんど物理的な力すら持った魔力がリナとゼナの間に吹き荒れる! 勢いに抗しきれずによろめくリナの身体をヴェルスは慌てて支えた。 当たり前である。 ほんの十五分前には生死の境を彷徨っていたのだ。今だってお世辞にも本調子とは言えない。急いでいたこともあり、完全に回復するまでには至っていないのだから。 だいたい、リナがゼナを止めると言ったときも、やり方を聞いてヴェルスはかなり必死で止めたのだ。無茶だ、と。 しかしリナの答えは、『無茶でも何でもやるしかないでしょ! でもってやるからにはあたしは失敗する気はまったくないっ!』と、こうである。 リナがこうと言い出したら止められるはずもない。 だから一人で行かせるよりは、とこうしてヴェルスも一緒に来ているのだが……… 実際にその場を目の当たりにして。支えがなければ吹き荒れる魔力に抗しきることもできない身体を支えながら――― ヴェルスの心には一片の不安もなかった。 絶対に大丈夫だと、不思議な確信があった。 リナは諦めていない。やるしかない、やるからには失敗しない。そう言い切った言葉は心の底から真実で……… 諦めることに慣れてしまった精神を叱咤し、どんな絶望的な局面でも自身は決して諦めない。この毅さは、彼にとってどれほどの衝撃だっただろう。 自分にはできなかったことをしてくれたこの少女を――― ヴェルスは信じた。 だから――― 圧倒されるほどの魔力にさらされながら、ヴェルスはリナが集中できるよう、その小さな身体を支え続けた。 膨大な魔力が、あたしの精神に直接流れ込んでくる。いや………流れ込んでくる、というよりむしろ叩きつけられる、と言った方がいいかもしれない。 吹き飛ばされそうになる意識を気合でこらえる。 身体の方は心配ない。ヴェルスが支えてくれている。だからあたしは完全に精神を集中することができた。 いつもこういう時―――要するに切羽詰った時―――そばにいてくれるガウリイはいないが、あたしはヴェルスに対してガウリイに感じるのとは少し違う安心感を抱いていた。 だから………大丈夫。 ゼナを止めるために、今のあたしが知っていてなおかつできる方法は一つ。 すべての能力をいったん封印するのだ。 基本的にゼナはそこにいるだけで魔力を消費する。そのため普段はもっとも魔力の消費が少ないハーフ・エルフの少年の姿をとっており、魔力の消耗がもっとも激しい現在の姿をとることはできないように形態変化(チェンジ・フォーム)の能力は封印してある。 ちなみにそれは最終的な安全弁という意味合いもあったりする。今はその封印は自力でぶち破ってしまったようだが。 他にも魔力の増幅やら部分変化(トランスフォーム)やらもろもろの能力はあるのだが、その辺は封印はせずにゼナの意思に任せてある。能力を使えば魔力を余分に消費する。それはゼナも分かっているため、とりたてて注意する必要などないからだ。 それに、ゼナの意思を無視してまでむりやり抑えつけようとは思わないし。 だが今はそんなことを言っていられる状況ではない。 まともな準備もないこの状況で、部分的に能力を封印するというまねは言いたくないが不可能である。だからむりやりでも強制的にでもいったんすべて封印して、ゼナが暴走させまくっている能力を抑え込まなくてはいけない。 しかし。 それには大きな問題があった。 今のゼナの状態である。 今のゼナは制御できていない膨大な魔力を放出し続けている。そんな状態ではたとえ命令したところでゼナのもとまで命令が届かないだろう。 となるとあたし自身の魔力でゼナが無制限に放出している魔力を押さえつけなくてはいけないのだが………これがきつい。 今、あたしとゼナとはゼナの能力によって精神世界面(アストラル・サイド)を介して精神がつながっている―――だからこそ直接魔力で魔力を押さえるなどというまねもできるのだが―――そして、ゼナの魔力はあたしよりもずっと大きいのだ。叩きつけられる魔力に意地と根性で耐えているが、はっきり言って普通の人間なら精神崩壊を起こしていてもおかしくないくらいのプレッシャーなのである。 ゼナの能力を借りれば魔力の増幅・集中などもできるが………そのゼナを止めようとしているこの状況でンなことを言っても無駄以外の何物でもない。 ぎりぃっ………と奥歯を噛みしめて気合を入れる。 ふと、背中を支えているヴェルスとの会話を思い出した。 あたしがゼナを止める、と言うとヴェルスはもちろんどうやって止めるかと聞いてきたのだが………簡単に説明すると―――ゼナが暴走させている能力をいったんすべて封印する、ただしその時にゼナが暴走させている魔力をあたし自身の魔力で押さえつけることになるから魔力と意地と根性と気合の勝負になる、という程度―――散々止められた。まだ本調子には程遠いのだから無茶だ、と。 そう言うヴェルスにあたしは、無茶だろうと何だろうとやるしかない、そしてやるからには失敗はしない―――そう言ったのだ。 そう、だった。無茶は承知の上だったのだ――― 自分で言っておきながら、ほんの一時とはいえ忘れていたらしい。 あたしは一度目を閉じ、深く息を吸って――― 「………ゼナっ! いいかげんに………しなさいっ!!」 叫びとともに一気に魔力を叩きつける! それがどうやら決め手になったらしく、ふぅっと周りに渦巻いていた魔力のプレッシャーが消えた。 ………あ―………いかん………今ので魔力完璧に使い切った……… いつもと同じ、銀色の髪と瞳の少年が困惑したような表情を浮かべるのを見て―――安心して気が抜けたのだろう。あたしは意識を失った。 ―――ゼナっ! 聞こえたのは、呼び声。 空間を切り裂いて、あらゆる障害を飛び越えて。それは届いた。 ―――いいかげんに………しなさいっ!! 言葉はきついけれど、その叱咤の中に含まれた意思は毅く………そしてひどく優しかった。 その声の主を自分は知っている………知っている、はずだ。 (リナ………?) 縋るように少女の名を呼ぶ。 そして――― かきん。 何かがはまるような音が精神に響いた―――瞬間。 世界が開けた。 「いいかげんに………しなさいっ!!」 リナの叫びが響き―――音もなく。周りに渦巻いていた魔力が消えた。 プレッシャーが消えたことで一瞬抜きかけた気をヴェルスはすぐ引き締めたが、すぐにそれは必要ないことだと悟った。 目の前と言って差し支えないところに、銀色の瞳に困惑の色を浮かべた少年の姿を認めて。 リナとゼナの視線が絡み合う。 鈍い銀色の光を放っていた腕輪が輝きを失くし、重力に任せて下ろされた腕に合わせてしゃらん、と揺れた。 リナがわずかに安堵したような笑みを浮かべて―――その身体がくたり、とくずおれた。 それを慌てて受け止め、呼吸を確認する。 大丈夫。呼吸は浅いがしっかりしている。 それを確認してヴェルスはホッと息を吐いた。 「リナは………?」 「大丈夫。寝てるだけ。………まあ無茶したからね」 魔力、体力、気力ともに使い切ってしまったのだろう。今のリナは、たとえ間近でバンドフルコーラスをしていても起きないくらいの完全熟睡態勢に入っている。 「ともあれ………いったん宿に戻ろう。早くリナちゃんをきちんと休ませてあげないといけないからね」 「う、うん………あ、ちょっと待って。ペンダントが………」 ゼナは大部分の心配とわずかな戸惑いを見せながらも素直に頷きかけたが、胸元に手を当てた途端に慌てた様子で辺りをきょろきょろと見回した。 ぐったりとしたリナを抱き上げつつ、ヴェルスが改めてゼナを見ると、確かにいつも胸元にあるはずの紅い宝石がない。おそらく暴れまわっているうちに何処かに落としたのだろう。 しかし、この暗さと広さでは見つけるのはまず不可能である。 「ゼナくん、諦めなさい。探してる余裕はない」 「でも………あれ、リナがくれたのに………」 なんとなくヴェルスは納得した。 探してあげたいのはやまやまだが、ここに長居するのはまずい。少なくとも今は。 「今はリナちゃんをきちんと休ませるのが先だよ。この暗さじゃあ他の人が先に見つけちゃうってこともないだろうし、見たとこ魔法の品だったろう? それならリナちゃんが目を覚ましてから探した方が早い。 だから今は諦めなさい」 「………うん。分かった」 「はいよろしい。じゃあ………」 「リナ!?」 唐突にかけられた声にヴェルスとゼナがそちらを振り向くと、そこには傭兵らしい格好をした金髪の青年が立っていた。 「リナ!?」 見間違いかと思っていた。 中庭を抜けた時にかすかに見えた栗色。それはここにいるはずのない少女の色だったから。 しかし……… それがどこに向かったのか分からず、どうしようかと思っているときに感じた妙な空気の方にガウリイが行ってみると――― リナがいた。意識を失っているらしく、ぐったりと瞳を閉じて。 そして、身に着けたゆったりとした黒い服のところどころをべっとりとその身体に張りつかせていた。おそらくは―――血で。 「リナに何をした!?」 考えるよりも早く。ガウリイはリナを抱きかかえた黒髪の男に向かって叫んでいた。 しかしヴェルスが言葉を返すより早く。ゼナがリナをかばうように前に出た。 ガウリイは驚いた。七、八歳にしか見えない少年がこんなところにいる―――そういう意味ではリナもそうだが―――ことはもちろんだが、それよりも、ガウリイを睨みつけるその銀色の眼に宿った敵意と気迫に―――圧された。 「またリナを………っ!」 「………君は? リナちゃんの知り合いかい?」 敵意に任せてゼナが叩きつけようとした言葉を、ヴェルスは静かに遮った。 しかし、言い方こそ穏やかだが、警戒の度合いという意味でははっきり言ってゼナと大差はない。下手をしたらゼナ以上である。 ガウリイはその静かに向けられる視線に気圧されながらも、その場から少しも動かなかった。 譲れないものが、ある。 「オレは………リナの保護者、だ」 ふ、とヴェルスは眉をひそめ………合点がいったような表情で頷いた。 「ガウリイ=ガブリエフ?」 「………オレを知ってるのか?」 「ま、ね。ふぅん………リナちゃんと一緒にいなかったからどうしたのかと思ったらこんなところにいたんだ………」 掴みどころのない声音で言うヴェルスに苛つきながらもガウリイはすうっと足をわずかに滑らせた。 目の前にいる二人がリナに危害を加えるとはあまり思えなかったが………それでも万が一ということがある。しかし、リナが相手の手のうちにいる以上、下手に動くことはできない。 それに何より―――ガウリイは目の前にいる男が、並々ならぬ実力の持ち主だと気付いていた。リナを抱きかかえて両手がふさがっており、なおかつ足手まとい―――ゼナをよく知らないガウリイはゼナのことをそう思った―――がいるにも関わらず、隙がまったくないのだ。 「もう一度訊く………リナに何をした?」 リナの身体に張り付いた血。その量を見ればどれほどひどい怪我だったか伺える。かすかに胸が上下しているのが見えるため、生きていることは間違いないが、だからと言って無事だとは限らない。 しかし、ガウリイのその言葉に――― それまでの比較的―――あくまでも比較的、だが―――穏やかだったヴェルスの表情が、一転して冷ややかなものに変わった。 「何をした、ね………したのは君たちの方だろう。 それにそうだね。今はリナちゃんをもっと静かなところできちんと休ませてあげたいんでね。君の相手をしている暇はない」 「何を………!?」 声をあげかけたガウリイを無視して、ヴェルスは怪訝そうな顔でヴェルスとガウリイを見比べていたゼナをちょいちょいと招き寄せると、呪文を唱えはじめた。 ゼナが下がり、ヴェルスの服の袖を掴むのを見て―――ガウリイは剣を抜いて地を蹴った! 呪文を唱えながらヴェルスはわずかに身を捻り、あっさりとその一撃をかわす。 驚きながらも刃を返し、もう一撃――― 「………………っ!」 剣の進路上にいきなり突き出されたゼナの腕に、ガウリイは当たる寸前で剣を止めた。 が、ゼナは止めた剣に自ら腕を当て、弾く! ぎいぃぃぃん! 甲高い音がして。へし折れた剣が宙に舞った。 あまりのことに眼を瞠るガウリイの目の前で呪文が完成した。 「翔封界(レイ・ウイング)!」 「しまっ………」 間近で生まれた風の結界に押され、なんとか受身はとったものの弾き飛ばされる。 「リナ………!」 ガウリイが身体を起こした時には………三人の姿はもはやそこにはなかった。 男は足元に転がったペンダントをひょいと拾い上げた。 中に魔方陣の浮かんだ深紅の宝石。純度の高いそれは一目で値打ちものと分かる。惜しむらくはペンダントの鎖が途中でちぎれてしまっていることだろう。 しかし男はそんなことは気にした様子もなく、ペンダントを指で弄ぶ。 目の高さまで持ち上げると、金の鎖がちゃり、と音を立てた。 「………いいもん拾った、かな」 呟いて、男はくっくっと喉を鳴らした。風が吹いて男の真紅の髪を揺らす。 夜が明けようとしていた。 ゼナとヴェルス、そして気を失ったリナの三人が宿に戻ってからもう半日以上が経っていた。 宿に戻ってきたときは夜が明けかけていたが、今ではすでに日が沈みかけている。 リナはまだ目覚めない。 復活(リザレクション)で傷は完全に治したし、失った血を作り出すためと、ほぼ完全に使い切ってしまった魔力を回復するためだろうから心配はいらない、とヴェルスは言っていたが、それでもゼナは心配だった。 だから、というわけでもないが、ゼナは宿に戻ってからずっとリナの傍を離れようとしなかった。 昏々と眠り続けるリナの傍らでじっと椅子に座っている。 そんなゼナにヴェルスは何も言わない。ただ時々様子を見に来るだけ。 こんこんとノックの音がし、返事も待たずにかちゃりとドアが開く。 「リナちゃんの様子どう? 何か変わったことはない?」 ちょうどこんなふうに。 「うん………まだ起きない………」 「そっか」 それだけ聞いてすぐに出て行くかと思いきや、ヴェルスはぱたんとドアを閉めると部屋に入ってきた。 「そろそろ晩ごはんの時間だよ。ゼナくんはここを離れないだろうからまたここに持ってくるけど、何か食べたいものはある?」 「………なんでもいい」 「そう」 朝も昼もそうだった。ヴェルスはわざわざ部屋に持ってくるのである。しかも、答えは分かっているだろうに、律儀に何か食べたいものはあるかと訊いてくるのだ。 ゼナははっきり言って食事などしたくなかったのだが、ヴェルスの、『リナちゃんが目を覚ました時にずっと食事をしてなかったなんてことがバレたら怒られるよ』という言葉に確かにそのとおりだと思ったし、何より昨夜(今朝)のことでずいぶんと魔力を消耗してしまったのだ。今何も食べずにいて、もし魔力が尽きでもしたら、それこそリナが危なくなる。 だから本当はその心遣いはありがたいと思うのだが、今のゼナにはそれにお礼を言う余裕すらなかった。 ヴェルスはそんなゼナの素っ気ない様子にも気を悪くしたふうはなく、リナが穏やかな寝息を立てているのを確認して部屋から出ようとドアに手をかけ……… 「………ん………」 かすかに聞こえたリナの声にその動きがぴたりと止まった。 「リナ………?」 おそるおそる、という様子でゼナが声をかけると、リナがわずかに身じろぎ―――ふっとその目が開いた。 「リナっ。目が覚めたんだ。良かった………ねえ、僕が分かる?」 「………何言ってんの………? ゼナ………?」 まだぼうっとしている様子のリナに、それでもきちんと答えが返ってきたことにゼナは安堵の息を吐いた。 「………ここ………あたしの部屋………?」 「うん。宿のリナの部屋。お城から戻ってきてからリナ、ずっと起きないんだもん。心配したよ」 「ああ………そっか。 ………ゼナ、ちゃんと元気みたいね。良かった………」 「僕のことより自分のこと心配してよっ! 本当にこのまま目が覚めなかったらどうしようって思ったんだからっ!!」 「あはは………ごめんごめん………」 「はいはいそこまで。ゼナくん、あんまり大声出さない。リナちゃんは病人………じゃないけど………なんだから。 それにリナちゃんも。大丈夫だとは思うけど、まだまだ全然本調子じゃないんだから。 なんだったらもう少し寝てたほうがいい」 「………うん………そうする………」 ささやくようにそう言って………リナは安心したように微笑むと、再び眠りについた。 それを見て、ゼナもやっと安心したように表情を緩めた。 「ね? 大丈夫だって言っただろう? 今はリナちゃんは寝てるだけだから、明日になれば元気になるよ。 ………じゃあ晩ごはん持ってくるから。何でもいいんだよね?」 「あ、待って!」 「何?」 「えっと………」 脳裏によみがえったのはリナの言葉。 ―――『ありがとう』と『ごめんなさい』は絶対に言えないとダメよ――― 「心配かけてごめんなさい。それと………ごはん、部屋までわざわざ持ってきてくれて、ありがとう」 ヴェルスはぱちくりと目を瞬いたが、ゼナの言った言葉を理解するとくすくすと笑って、了解、と答えた。 「えらいなあ、ゼナくんは。 じゃあえらいついでにもう一つ。食事運んだら僕ちょっと出かけてくるから、リナちゃんのことお願いね。 目が覚めたときにそばに誰もいないっていうのは………寂しいからね」 それだけ言うと、ひらひらと手を振ってヴェルスは部屋を出た。 部屋には、きょとんとしたゼナと静かな寝息を立てているリナの二人だけが残された。 日も沈み、空はわずかな太陽の残照と藍色に染まっていた。 窓枠に身体を預けて、ガウリイは苛つきを隠そうともせずにその空を眺めていた。 昨夜の怪しげな二人組みの城への侵入からはじまった一連の騒ぎ。その騒ぎで少なくとも二十人以上の兵士や傭兵が死んでいた。何故正確な数字ではないかというと、遺体がまったく残っていない場合もあるからだ。 仮にいなくなった全員が死んだとすると、死者は軽く四十人を超す。 そんな中でリナは何をしていたのか。そしてリナと一緒にいた黒髪の男や銀髪の少年は何者なのか。 特に銀髪の少年は素手で剣をへし折ってみせた。あれはいったい――― そういったことを考えるだにガウリイの苛立ちは募っていく。 そもそもガウリイはあまり考えることは得意ではない。特にリナと一緒に旅をするようになってからは、考えるのはリナの仕事、と物事を自分で考えることがほとんどなくなっていた。 そのツケと言ってしまえばそれまでだが、それで困ったことなど今までめったになかったから、別にそれでもいいと思っていたのだ。 ぴくんっ。 ガウリイは眉を小さく跳ね上げた。 窓枠から身体を離し、腰に佩いた剣に手をかける。 今そこにあるのは使い慣れた自分の剣―――斬妖剣(ブラスト・ソード)。 きんきききんききん! わずかな風を切る気配に、振り向きざまに剣を一閃させる! 「そういう勘はきちんと働くみたいだね。ガウリイ=ガブリエフ」 いつからそこにいたのか。並のウデではあっさりと死んでいただろう、微妙にタイミングをずらして放たれた数本の短剣すべてを叩き落されたことに欠片の驚きも見せず、静かに宙に浮かびながらヴェルスは言い放った。 $$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ またもニアミス。リナとガウリイ。 そろそろ本気でどうやって合流するか考えないと………て言うか考えてないんですか柚乃さん。 なんかこのまま行ったら、下手したらガウリイの見せ場なくて終わってしまいますよっ!? ………さすがにそれはまずい(と言うかガウリイファンにケンカ売ってるし、それ)ので、そうはならないと思いますけども。 ところでゼナのことですが………別にどっちが本来の姿―――というわけではなく、どっちとも本当の姿なんです。自分の好きなように姿を変える、ということもできませんし。 私的には、普段の姿を省エネモード(………)、狼さんの姿を戦闘モードと呼んでおります。 また近いうちに会えると良いですね(オイ)。 ではでは。柚乃でした〜。 |
24860 | よかったぁ〜 | 奈月るり E-mail URL | 2003/2/20 20:04:04 |
記事番号24859へのコメント こんにちは、柚乃さん。 投稿ペースがとても速くて羨ましいのです♪ まず、最初に祝言を。 リナさんのつけている腕輪の説明ができたようで、おめでとうございます♪予定の内一つをクリアですね♪ では、(なってない)感想を・・・ よかった・・・ゼナ君の暴走を止められて、本当によかったです。 リナさん無茶しすぎ!でも、まあそれが、リナさんがリナさんたる所以ということですが。 ヴェルスさんもおいしいとこ取りでした(笑)。でも、格好いいから許しますv(←ミーハーな) 本当にガウリイさんはニアミスですね。このまま出番なしで終わったら、ガウリイさん指さして笑ってやろうと思ってましたが(注:ケンカ売ってるワケではありません)・・・なんだかヴェルスさんがケンカを売りに行ったようなので、それはなさそうです。ガウリイさん、よかったですね♪(←おい。あーたケンカって・・・) ゼナ君、ちゃんとリナさんからの言いつけ守れて偉いです♪リナさんが元気になるまで、傍にいてあげて下さいv(元気なってからも一緒に決まってるけど) ・・・は!しまった!各キャラへのメッセージになってる!? 失礼しましたです(汗)。 気を取り直して。 あぁあぁぁっ!? ゼナ君の大切なペンダントが、クレウスさん(?)に拾われてしまいました!もしかしなくても、これが新たな騒ぎの原因に!? ・・・ここだけの話、ぢつは、クレウスさんの名前を思い出せなくて、過去のお話をあさって発掘してきましたです(汗)。クレウスさんごめんなさぃいぃぃっ!許してぇ!(←だからやかましいって!) それでは相変わらず暴走しっぱなしの奈月ですが、この辺りで・・・ 続き楽しみにしています♪それでは。 【奈月るり】 |
24882 | 早いのは今回だけかも(汗) | 柚乃 | 2003/2/21 18:31:40 |
記事番号24860へのコメント 奈月るりさん、こんにちは♪ レスありがとうございます。 >まず、最初に祝言を。 >リナさんのつけている腕輪の説明ができたようで、おめでとうございます♪予定の内一つをクリアですね♪ 実は………いろいろと設定は作っていて(設定とか、ネタを考えるのは好きなのです〜。それを使うかはともかくとして………)、それをどう出そうかなーと考えていたのですが………本編中で出すのはなんだか無理なんじゃなかろうか、とか思ってしまいまして。 ………なので、これからも裏設定じゃねぇかよこんちくしょう的な書き出しが多くなるっぽいです。 >本当にガウリイさんはニアミスですね。このまま出番なしで終わったら、ガウリイさん指さして笑ってやろうと思ってましたが(注:ケンカ売ってるワケではありません)・・・なんだかヴェルスさんがケンカを売りに行ったようなので、それはなさそうです。ガウリイさん、よかったですね♪(←おい。あーたケンカって・・・) ケンカ売りに行ったわけではないんですけどね(笑)。別にヴェルスさん、ガウリイくんのことを嫌ってるわけではないですし。どちらかと言えば好意的に見てはいるのですが……… あえて言うとすれば、喝を入れに行った、という感じです。情けない、もっとしっかりしろ、と。 >・・・ここだけの話、ぢつは、クレウスさんの名前を思い出せなくて、過去のお話をあさって発掘してきましたです(汗)。クレウスさんごめんなさぃいぃぃっ!許してぇ!(←だからやかましいって!) いいですよー。あんなやつのことぐらいいくらでも忘れて(笑)。 ではでは。続きがいつになるか自分でもわかりませんが(待て)。ガウリイが指差して笑われないようにがんばります(笑)。 柚乃でした〜。 |
24870 | Re:Legacy of Lunatic Elf 〜白銀の遺産〜 5 | エモーション E-mail | 2003/2/20 22:41:24 |
記事番号24859へのコメント こんばんは。 お待ちしていました、5話! > それと先に言っておきますが………私はリナファンです。なんだか毎回たいへんな目に遭っているような気がしないでもないですけど(汗)。 ……「主役はいじめてこそ花」という迷言もありますね(笑) リナちゃん、かなり無茶しましたね。 でも助かって、尚かつゼナくんの暴走が収まって良かったです。 うん、やっぱり格好いいです、ヴェルスさん。 今回、ガウリイは滅茶苦茶悔しかったでしょうね。 リナは血だらけで倒れていて、やたらと強い妙な男が一緒にいるわ、 剣をへし折るお子さまはいるわ、一番の問題は事態がよく分からんと言う事実(爆) ……やっぱり少しは考えよう、ガウリイ。このままでは本気で保護者が ヴェルスさんになっちゃいます(爆笑) さて、ガウリイと接触しに行ったヴェルスさん。 どう行動するのかな。それ以前にガウリイ、冷静に話を聞くと良いのですが。 続きを楽しみにしています。 では、これで失礼します。 |
24883 | 迷言ですか(笑) | 柚乃 | 2003/2/21 18:44:47 |
記事番号24870へのコメント エモーションさん、こんにちは。レスありがとうございます。 >……「主役はいじめてこそ花」という迷言もありますね(笑) 迷言………それこそ名言です。 >……やっぱり少しは考えよう、ガウリイ。 私もそう思います(爆)。 て言うか………ガウリイの場合考えられないんじゃなくて考えなくていいから考えない、んじゃないかなーと思うので。実際リナと一緒に行動してればたいていはリナがさくさく考えますからね……… でも、まじで自分もちったあ考えろよ、とときどき突っ込んでみたくなったり。 >続きを楽しみにしています。 毎回思うのですが………こう言ってもらえるとすごく嬉しいですvv 何と言うか………読んでくれてる人もいるんだなー、と再確認できる感じでv 続きを待ってくれている人がいると思うと、くぅっ! 話がつまったぜぃっ! ………というときに、よっしゃ書こう! という気になります♪ まあそんなわけで、がんばって話を書きますので、ゆったりと見守っててくださいねv ではではっ。柚乃でした〜。 |