-異界黙示録伝《水の書》その8-魔沙羅  萌(4/26-20:23)No.2481
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2481異界黙示録伝《水の書》その8魔沙羅 萌 4/26-20:23

今回は《水の書》の最終回。つぎは《風の書》さ。
ちなみに、今回の一人称はエマさんです。

「ねえエマ、本当にこっちであってるの?」
リナはジト目であたしに聞いてくる。あたしに聞かれても困るような気もするけど。
「玻璃ちゃん、どうなの?」
「まちがいないよ、リナンちゃん。
萌ちゃんはあそこにいる。あと……瑪瑙兄ちゃんもだよ!」
瑪瑙兄ちゃんっていうと……
「瑪瑙君も?!」
「俺にはよくわからないがはやく行こうぜ!」


螢の光


萌は森の中でその景色と同化しているかのようにあたしには見えた。
石の精霊の進化けいである瑪瑙君の方が浮いて見えるほどだった。
森の碧が『萌』といることによってより一層萌えている様に見えた。
「萌……」
水輝ちゃんの一言によって萌はあたし達の存在に気付いたようだ。
「水輝ちゃん……みんな……どうしたの、いったい?」
ずがしゃっ。
威勢の良い音をたててリナとガウリイ君がこけてみせる。
ゼロス君の顔は引き攣ってるし。
どうして?
「萌…アンタねえ、あたし達にさんざん心配させといて、『どうしたの、いったい?』じゃないわよ!」
「どうして?わたしは言った通り食べ物とりにきただけだよ。ほら」
萌はそういってリナのまえに果物でいっぱいのかごを突き出してみせた。
「アンタねえ……」
リナは呆れた目で萌をみている。
「ねえ萌、いろいろ悪いこといってごめんね!
あたし、知らなかったの!あんな事あったなんて!あたし……」
泣き出す水輝ちゃんに萌はおろおろしながらこう答えた。
「水輝ちゃん、わたしね、怒ってなんてないよ。
水輝ちゃんが言ったこと、うそは言ってないもん。
わたしね、いろいろここで考えてたんだけど、わたしにもココにいる意味があるからこんなわたしでも存在していられるんだって。
わたしのせいで死んじゃった人たちに『生きて』おわびしなきゃいけないって。
みんなのためにがんばらなくっちゃいけないって」
萌は水輝ちゃんにそういって笑顔を見せた。
あたしの頭の片隅にこんな事が思い出された。

――13年前、刻の森。
あたし達は森にある秘密の隠れ家で遊んでいた。
メンバーはレニちゃん、逢魔くん、そして、ただいま行方不明なジーブリール=アウロラ…ジーブ君だ。
その日はジーブ君にあたし達の将来をきいていた。彼の占いはよく当たるから。
「なあジーブ、おれのみらいはどうなるんだ?」
逢魔君がそうジーブ君に聞いた時だった。彼が妙なことを言ったのは。
「そうだなあ……ちかぢか妹が2人できるよ。
そのとき、きみのお母さんのすきな名前をつけるんだ」
「どうして?」
問うあたしに彼はこういった。
「そうしないとたいへんなことになるから。
ただ、きをつけてね。名前をつけるとき、はんたいにつけちゃいけないよ。
ココが……ううん、せかいがたいへんなことになるから。
いまのボクにはそれしかいえないや」

彼はそのことばを言ってから1ヶ月後、行方不明になってしまった……

「あっ、雨がやんだよ、りんちゃん」
萌のその一言であたしは現実に引き戻された。
「エマ、フェアリー・ソウルよ。螢の光みたい」
「おや、そういえば萌さん、『雨の精霊の歌』とは何だったんでしょうか?」
ゼロス君が萌にそう問い掛けた。確かに玉髄たちには聞きづらいだろうし。
「あのね、『リラ』ではね、すべての精霊が歌をもっているの。
『哀しみの記憶 悲劇の星 身代わりの月よ
ヒトにより創られた ヒトの大地 ヒトの海よ
ヒトの宇宙 ヒトにより作られたヒトよ
哀しみの地となりて 哀しみの伝説とならん』
これが雨の精霊さんたちの歌。
今は水の精霊さんあっちが歌ってるよ。
『いつしか哀しみは 血だまりと共に去り
清浄なる水と 黙示のもと
現れる真実 希望の海
水輝きし時 呪は 古き水と共に去らん』ってね」
……そう歌ってたんだ……
あたしには精霊の声は聞こえない。
だから今まで知らなかった。
これは黙示の歌……。
あたしにはこれを聞ける萌みたいな人間がいっぱいいる方がこの地のためになると思う。
フェアリー・ソウルが飛び交う中、あたし達はいつまでもその光景を見つめていた。

〔続く〕

《水の書》の副題は『英雄〜時を統べる者〜』でした。
《風の書》ではどうなるでしょうか。
ちなみに、次回の一人称はゼルガディス君になると思います。

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2499Re:異界黙示録伝《水の書》その8松原ぼたん E-mail 4/27-18:14
記事番号2481へのコメント
 面白かったです。

>「どうして?わたしは言った通り食べ物とりにきただけだよ。ほら」
>萌はそういってリナのまえに果物でいっぱいのかごを突き出してみせた。
 ・・・・やっぱけっこう脳天気かも。
>「そうしないとたいへんなことになるから。
>ただ、きをつけてね。名前をつけるとき、はんたいにつけちゃいけないよ。
>ココが……ううん、せかいがたいへんなことになるから。
>いまのボクにはそれしかいえないや」
 意味深ですねぇ。
>あたしにはこれを聞ける萌みたいな人間がいっぱいいる方がこの地のためになると思う。
 そうかもしれませんね。

 本当に面白かったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。