◆−――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:1話:冥王の空−D・S・ハイドラント (2003/3/5 15:43:37) No.25016
 ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:2話:覇王将軍の朝−D・S・ハイドラント (2003/3/7 18:22:10) No.25057
  ┣Re:――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:2話:覇王将軍の朝−ユア・ファンティン (2003/3/7 22:44:34) No.25062
  ┃┗Re:――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:2話:覇王将軍の朝−D・S・ハイドラント (2003/3/8 18:27:14) No.25080
  ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:3話:影に差す光とは・・・−D・S・ハイドラント (2003/3/9 18:50:26) No.25096
   ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:4話:幸せ家族計略−D・S・ハイドラント (2003/3/10 19:05:19) No.25117
    ┣Re:――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:4話:幸せ家族計略−ユア・ファンティン (2003/3/10 22:19:35) No.25121
    ┃┗Re:――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:4話:幸せ家族計略−D・S・ハイドラント (2003/3/10 22:41:18) No.25123
    ┣し、しあわせなんですね。−風碧 陽月 (2003/3/10 22:45:51) No.25124
    ┃┗Re:とある1人をのぞいては・・・−D・S・ハイドラント (2003/3/11 12:51:50) No.25130
    ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:5話:ウシャナ・クエスト−D・S・ハイドラント (2003/3/11 15:02:36) No.25132
     ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:6話:部下迷走しエ〜ン・ウェ〜ン−D・S・ハイドラント (2003/3/11 16:21:53) No.25133
      ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:7話:剣は三千の敵なり−D・S・ハイドラント (2003/3/12 16:01:03) No.25149
       ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:8話:レディ&ジェントルメン−D・S・ハイドラント (2003/3/13 12:53:05) No.25156
        ┣ナイスや!!−ユア・ファンティン (2003/3/13 21:37:42) No.25163
        ┃┗Re:ナイスや!!−D・S・ハイドラント (2003/3/14 11:41:41) No.25171
        ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:9話:黄昏を越えて−D・S・ハイドラント (2003/3/14 16:09:40) No.25172
         ┣・・・・・・・・・・・・(かなり複雑そうな顔−ユア・ファンティン (2003/3/14 20:29:37) No.25174
         ┃┗Re:・・・・・・・・・・・・(かなり複雑そうな顔−D・S・ハイドラント (2003/3/14 20:48:04) No.25175
         ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:10話:黄金色の急襲−D・S・ハイドラント (2003/3/15 11:31:44) No.25188
          ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:11話:黄昏と暁の狭間−D・S・ハイドラント (2003/3/15 14:11:55) No.25191
           ┗――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:12話:会議は端折る面倒だし(おい)−D・S・ハイドラント (2003/3/16 10:31:56) No.25211
            ┗改名表明−颪月夜ハイドラント (2003/3/18 12:34:23) No.25235


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25016――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:1話:冥王の空D・S・ハイドラント 2003/3/5 15:43:37


――魔王シャブラニグドゥ。

――その欠片を得て知力を得た人類。

――文明の発達は目まぐるしいものであった。

――だが人はその恩恵など知らずに、

――自らより力あるものとして魔ではなく神を崇めた。

――世界は平和だった。

――しかし新たな戦火の波は、

――いつか押し寄せるであろう。

――その狭間の平和な一時、

――魔のもの達は休息に何を思うか

――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――
 (降魔戦争編は本当に書くか分からない。)

――記念すべき第1話:冥王の空、もとい、冥王(ヘル・マスター)フィブリゾの少々気だるい午後に微かに降る透明色なちょっと血生臭いの追憶の雨――
 (タイトルを無意味に長くしているように見えるのは気のせいである・・・はず。)

――冥王妃シェイナ、

――冥宰相ライエル、

――等しくここに眠る。

「これでよし、と」
浮かべた笑顔は吹く風に容易く掻き消された。
後に残るのは流れもしない涙の兆し。
「・・・お休み、・・・2人とも。」
すでに枯れた哀しみの涙。
今は虚ろで感情だけがそこに残っている。
「・・・さよなら・・・」
巨大な樹、常闇の大樹の根元に煌く1つの石が立てられていた。
その声は、その石へと吸い込まれていく。
白い。
そう思えばすでに消えている。
寂しい冬の午後の一欠片。
すでに枯れた哀しみの涙。
少年の瞳は渇いているはず。
雨を求めて苦しんでいるはず。
(・・・フィブリゾ様。)
だが不意に言葉が届いた。
どんな声より優しい言葉。
どれだけ遥かな昔のそれか・・・。
「・・・シェイナ。」
雨は今降る。
微かに降る透明色なちょっと血生臭いの追憶の雨。
表情を曇らせて、今までの空虚な晴れを忘れて・・・。
(・・・あなたは・・・)
紡がれる声。
2人にだけ見える。
否、見えていた世界。
(・・・あなたは・・・強くなれましたか・・・)
少女の声は優しかった。
優しすぎた。
「・・・・・・。」
だから沈黙した。
未来を待って・・・。
(・・・私がいなくても大丈夫なくらい・・・)
言葉は必要なかった。
曇り空がそれを示していた。
微かに晴れた曇り空が・・・。
絶望が砕けていく様が・・・。
(・・・強くなれましたか?)
温かすぎた。
創った時よりも・・・。
雨は降っている。
空は曇っている。
それなのに、晴れている。
微かに晴れている。
「・・・・・・。」
沈黙だった。
だから静寂だった。
だけど抜けられなかった。
微かな晴れも、曇りも雨も・・・。
だから終わった。
それで終わってしまった。
・・・ような気がした。
・・・終わっている。
そしてそう悟り、後悔した。
しかしいかなる力があっても時は戻せない。
戻せるならば強くはなれない。
「分かったよ。」
強さだったのかも知れない。
小さくてもそうなのだろう。
「・・・今は無理だ。」
軋む心がより雄弁だ。
「・・・だけどいつか・・・」
言葉は必要なかったはずだが・・・。
言葉が光をくれるならば・・・。
「・・・いつか強くなるよ。」
前よりも強い。
すべて恒星でなくとも・・・。
「・・・君がいなくても大丈夫なくらいにね。」
輝いていた。
涙とともにその表情は・・・。
「・・・シェイナ。」
雨は弱まり、時折強まり。
笑顔を拒みそして支えた。
「・・・好きだったよ。」
もう返らない言葉。
なぜならそう思っているから。
骸も魂も存在しない。
1人の精神生命体はすでに滅びた。
少年の心、以外では・・・。
「・・・いつまでも覚えておくよ。」
激流が押し寄せる。
言葉は流されて消えた。
『君を思い出しても泣かなくなるまで、ずっと・・・』
硝子は砕けて強さを得た。
ほんの微かな・・・
・・・だけど本当の強さ。
輝きに満ちていた。
涙と笑顔と・・・
「もういくね。」
枷も容易く外した。
そんな少々気だるい午後。
冥王フィブリゾは2つで1つの墓標を後にした。
冥宰相ライエルは泣いていた。
だが泣き声は誰にも届かなかった。
偽りの泣き声なのだから・・・。

――墓標など人の真似をしただけに過ぎない。

静寂が戻って、
「ふふふっいっちゃったね。」
そして笑みが1つ生まれた。
白銀の髪、滄海の瞳、狭間の美貌を持つ存在。
「全く可愛い子だねえ。」
純白の衣服を身に着けていた。
「・・・君も思うだろ。」
囁きはその左手の漆黒の薔薇に・・・。
「・・・カルボナード。」
名を薔薇は拒絶した。
「・・・そう。」
その意味を知ってか溜息が生まれた。
やはり白い。
「・・・まあ良いや。フィブリゾ君は絶対に僕のものにする。」
ローザリア・ラ・トゥール・ポルテ。
その男女の手の中の薔薇は沈黙。
虚ろな溜息が聴こえた。
「・・・昔の恋人の真似作戦は絶対に成功する。そう絶対ね。」
邪悪な笑みを湛えつつ、元領主ポルテは姿を消した。


後書き
こんばんはラントです。
今回お届けしますのは、ハイドラント風大盛り神魔弁当以下略の本編終了後の短編です。
Moratoriumはまあ降魔戦争までの猶予期間ということで(ちなみにタイトルに英語使うの初かも知れない。)
第一話は冥王編。
・・・そぉいや第2話出るかな?
・・・これはシリアスかギャグか微妙。
・・・多分シリアスです。ギャグ面白くないし・・・。
次回はどこへいくのやら・・・。
またポルテ君が絡むかも・・・。
一応、
ルビー、ガーネット編
オリオン、ウシャナ編
海王、エレニア編
ガーヴ、シェーラ編
そして神族側にもスポットを・・・
よぉやく神と呼ばれる存在が増えてきました。
別にどこぞの神様を崇拝してるとか、
魔王の欠片で人が成長する辺りから見て、悪魔崇拝者なんじゃないとか、
そんなことは全然ないです。
が・・・何となく神はあんまり数いないと思ってます。
3人いて三権分立すればそれで充分(サンチーンミ教が出来たのもこんな感じから・・・)
まあどうでも良いですね。
それではこの辺りで・・・

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25057――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:2話:覇王将軍の朝D・S・ハイドラント 2003/3/7 18:22:10
記事番号25016へのコメント

 
 ――2話:覇王将軍の朝――

 風が静かに鳴った。
 梢が歌う。
 「良い天気だねえ。」
 巨大な樹の枝に影が1つ落ちている。
 白き吐息は宙を走って、闇の薔薇に吸い込まれてゆく。
 その繰り返しに意味など見とれない。
 「・・・全く、恥ずかしがりやさんだね。」
 沈黙の薔薇へ唇を進撃させれば、強き威圧の波紋が起こる。
 だが笑顔が掻き消し1つになった。
 紅葉が訪れる。
 だが不意に、
 「あっそうだ・・・」
 閃光が脳裏を駆け巡り、口付けの対象となる薔薇を外した。
 「ねえ、カルボーナード・・・。」
 どこか邪悪なその笑顔に薔薇が言葉を返す気配などない。
 「・・・ちょっと良いこと思いついたんだけど・・・」
 だが虚ろな吹雪はひどく冷たかった。
 「だって僕が、そんなこと出来るわけないだろ。」
 そして梢で薔薇を撫で回し、
 「・・・大丈夫、フィブリゾ君の他はルビーちゃんだけで良いから。」
 輝き強まり、
 「・・・何なら、ガーネットちゃんくらいはあげるよ。」
 沈黙の色が変わる。
 薔薇の冷たい溜息。
 「・・・じゃあ適当なタイミングにお願い。」
 投げ捨てた薔薇は虚空に消え去った。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
 混沌を旅する。無数の光景が近づいては遠ざかる世界。
 光と闇が織り成すそこに突如に響く規則音。
 不快なそれは世界を砕く、破壊の跡には翼が生まれる。
 数多の翼に引き揚げられ、恍惚の世界より抜け出してゆく。
 極限なまでの眩き光に包まれやがて、音のみが残る。
 遅れて現れたのは混濁する意識。
 閃光の中、閉じた眼をそっと開けば、
 「・・・朝・・・」
 呟いた言葉に似た光景。
 優しき陽射しが差し込む世界。
 白を基調とする、整った部屋。
 眠っていた身体は布団に包まれている。
 だが変わらないのは規則音。
 微かな頭痛が伴う中にその穴を広げる根源。
 「どなたですか・・・」
 精一杯に張り上げた声は小さく儚すぎた。
 「・・・俺だ。魔竜王(カオス・ドラゴン)ガーヴ。」
 だが確かに届き返る声、
 「・・・魔竜王様?・・・」
 少女の声である。
 儚く消えた後、声の主が指を鳴らせば・・・遅れて、扉が開いた。
 赤毛の大男、視線に入った姿はそれであった。
 少女は起き上がる。
 黒髪を背後で三つ編みにした少女である。
 「よう、シェーラ。」 
 吐き捨てるような声が掛かる。
 「あっはい、おはようございます・・・魔竜王様。」
 彼女シェーラは、戸惑いつつも返す。
 意識は鮮明だが眠気がまだ残っている。
 「・・・見舞いだ。」
 空間が歪む。
 バスケットが男の腕に圧し掛かるが、魔竜王ガーヴを屈することは出来まい。
 輝くのは、バナナとメロン。
 「・・・あっありがとうございます。」
 手渡されたそれを寝台脇の棚に乗せる。
 「・・・良いんだ。俺が見舞い役に回されたからな。」
 「・・・そうですか。」
 視線はガーヴとメロンを行き来している。
 会話に詰まり静寂が灯る。
 だがガーヴはそれを見逃さず、
 「・・・今度、剣の練習でも一緒にしねえか?」
 「えっ・・・あっ・・・あの。」
 シェーラなお震えが強まる。
 「俺もお前も剣使うだろうが、魔族とはいえ訓練欠かせちゃいけねえぜ。」
 安堵がそこにて生まれ・・・
 「・・・そういうことなら・・・」
 「他にどういうことがあるってんだ?」
 邪悪に笑えば、
 「・・・・・。」
 頬を燃やし沈黙する。
 「じゃあ俺は帰るぜ。」
 「あっそれではまた・・・」
 去りゆく巨大な背、頼もしき大剣。
 その様を見て彼女は寂しげに呟いた。

 後書き
 ・・・今回内容全然ねえ。
 ガーシェラ的にしたかったってところですけど内容なさすぎ・・・。
 後、これ、短編って言ってましたが、長編になりそうです。
 まあ短編感覚で最初が進みますけど・・・。
 やっぱり降魔は書かないと思います。
 その代わりMoratoriumが結構な話になりそうです。
 神魔弁当よりは遥かに短いと思いますけど・・・。
 それでは〜

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25062Re:――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:2話:覇王将軍の朝ユア・ファンティン 2003/3/7 22:44:34
記事番号25057へのコメント


> 「・・・大丈夫、フィブリゾ君の他はルビーちゃんだけで良いから。」
ユ:1人に決めましょう―よ。


>
> 後書き
> ・・・今回内容全然ねえ。
> ガーシェラ的にしたかったってところですけど内容なさすぎ・・・。
> 後、これ、短編って言ってましたが、長編になりそうです。

ユ:楽しみにしてます。

> まあ短編感覚で最初が進みますけど・・・。
> やっぱり降魔は書かないと思います。

ユ:人ぞれぞれだしねえ。

> その代わりMoratoriumが結構な話になりそうです。
> 神魔弁当よりは遥かに短いと思いますけど・・・。

ユ:楽しみにしています。
  それとディスティアの件ですが、
  私の貸したのは、うシャナ嬢以外は、ひどい目に合わせてOKです。
  シェイナ&部下も予定では、かなりひどい目に会いそうですし。
  あと、『風華』…ディスちゃん故郷のお話の本編この後入れますので、
  よろしかったら

> それでは〜

それでは・・・・・・・・・

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25080Re:――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:2話:覇王将軍の朝D・S・ハイドラント 2003/3/8 18:27:14
記事番号25062へのコメント


>
>> 「・・・大丈夫、フィブリゾ君の他はルビーちゃんだけで良いから。」
>ユ:1人に決めましょう―よ。
ポ:ぼっ僕に死ねというのかい?
・・・こいつにそれは無理かと思います。
>
>
>>
>> 後書き
>> ・・・今回内容全然ねえ。
ポ:本当にないね。
・・・お前の頭よりはあるはずだ。
>> ガーシェラ的にしたかったってところですけど内容なさすぎ・・・。
>> 後、これ、短編って言ってましたが、長編になりそうです。
>
>ユ:楽しみにしてます。
どうもです。
>
>> まあ短編感覚で最初が進みますけど・・・。
>> やっぱり降魔は書かないと思います。
>
>ユ:人ぞれぞれだしねえ。
降魔は書きどころがない。
ルビーとガーネットの面白い滅ぼし方も浮かばないので・・・
>
>> その代わりMoratoriumが結構な話になりそうです。
>> 神魔弁当よりは遥かに短いと思いますけど・・・。
>
>ユ:楽しみにしています。
>  それとディスティアの件ですが、
>  私の貸したのは、うシャナ嬢以外は、ひどい目に合わせてOKです。
分かりました
>  シェイナ&部下も予定では、かなりひどい目に会いそうですし。
>  あと、『風華』…ディスちゃん故郷のお話の本編この後入れますので、
ご苦労様です。
>  よろしかったら
>
>> それでは〜
>
>それでは・・・・・・・・・
>
それではレスありがとうございます。

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25096――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:3話:影に差す光とは・・・D・S・ハイドラント 2003/3/9 18:50:26
記事番号25057へのコメント


――ダイとノースト、お前達2人が力をあわせれば、覇王(ダイナスト)にもなれる。
そう思って付けた名だ(嘘)。

言葉1つは光を与えるのには充分だった。
光り輝く兄の姿を冷たき双眸は捉えていた。

――3話:影に差す光とは・・・――

淡き陽射しが届く。
覚醒を促がされた意識は混濁しつつに構成を始めた。
まず温かかった。だがすぐに冷めきった。
それとは別にあまりに乱れていた。
それは時間が修正を掛けるだろう。
ただ不快な冷気は昨夜より確実に沈殿していた。
まどろむ心が映した虚像がなお拍車を掛けたに違いない。
かぶりを振った。意識が揺れて軽い痛みを起こす。痛い以上に凄まじく不快だ。
白銀の氷柱の群れも同じように乱れたが、それに劣らぬ純白の腕がすぐに左右へ整えた。
色を宿さぬ双眸は常に虚空を眺めている。なお度々映る虚像が彼を悩ませていた。
それが激しくもどかしい・・・。
彼は白き布団を跳ね除け起き上がった。
その1つの仕草さえもすべてを惹き込むであるものの、誰も見はしない。
美しき旋律が単調に響き、その度に彼は寝台より遠ざかる。

暁の世界は静寂すぎた。
安らかすぎると思いつつも、それでも吹く風に身を任せた。
少々、肌寒い。
廊下の窓から覗く世界はひどく凍っている。
極寒を限りなく再現した空間だ。
忌々しげに舌打ちしつつ、意識を鮮明へと成した。
すると急激に殺意が生まれ出でて、そしてそれを越えた逆流が抵抗する。
(だが消してやる。)
そこで心の言葉を思いとどまった。
それを途切らせたのは恐怖。
「ふざけるな!」
虚ろな障壁に彼は憤慨した。
瞬間に空間は衝撃を浴びて震え上がる。
凄まじき爆音が伴われた。
だが終われば静かでしかない。
変わらぬ光景が広がっていた。

彼の右手に生まれ出でたのは一振りの剣。
三日月形に歪曲している白銀のそれ。
覇王将軍ノーストの剣、リュンヌ・ド・アルジャーンがそこにあった。
その持ち主ノーストは吐息を1つ上げた。
当然の如く白く染まり、そして消えてゆく。短き命。
雪の如くに・・・。雪の精の如くに・・・。
(グラウシェラー、私は貴様を許したわけではない。)
誰も見ぬ中、心で叫ぶ。
(いつか私がこの手で滅ぼしてくれる。)
白き美青年は激情を煮え滾らせる。無表情な仮面の内で・・・。

――やめて。

だが不意に響いた声がすべての情を凍りつかせた。
虚影に酷似しすぎたその声に・・・。

――もう・・・止めて・・・。

哀しげであり、それでありすぎた。
同時に確信が生まれる。
すべての思考を無視しての・・・。

「・・・姉上。」

震え、儚く、それでいて明白で、泣いて・・・笑っていた。

――ノースト。

声のみが鮮明に届く。
ノーストの視線に急激に大地が近づいた。
倒れ込み、笑い、そして雨を降らす。
輝きすぎていた。
「ちょっとノースト様。」
背後から声――だが今のノーストに聞こえはしまい。
「・・・ああ姉上、戻って来られたんですね。」
地より、そして天へ顔を向け美しき声を捧げた。
「ちょっとノースト様。朝から狂ってないで、さっさと消えてください。お掃除の邪魔ですわ。」
掃除係をやっている少女魔族の声など届かない。
「ああ姉上。」

――ノースト。

「・・・ノースト様、そこどけ!」
数多の感情が渦巻く中に、

――ノースト・・・こっちに来て・・・

姿は見えぬも声のその先は鮮明すぎた。
ノーストは地を蹴り風を切って、虚空へと飛び出す。
浮遊感から生まれるすべての恐怖は、すぐに消え去り、温暖な安堵へ・・・。
そして空間は歪みそこより現れし『姉上』の姿、それは・・・
「ノーストくぅ〜ん、好きだぁああああああ!」
美しき銀髪碧眼の男女。
――ローザリア・ラ・トゥール・ポルテの姿であった。
その微かな胸部の突起を持つ美青年へと抱き寄せられる瞬間に、
「ふざけるな!」
全力を振り絞り、手に持つ、銀の月(リュンヌ・ド・アルジャーン)を一閃させた。
「うああああああああああああ」
吹き飛ばされて消え去るポルテ。
「貴様のようなウジ虫如きが私に近寄るな。」
叫び歩き出すノーストの背を掃除係は確かに捉えていた。
だが不意にノーストは振り向き、
「リュリュ、このことは黙っていてくれ。さもないと私はお前の血が欲しくなる。」
「・・・分かりました。」

――今朝は概ね平和であった。

後書き
ノースト君話。
前回よりはマシだと思う。
でもポルテ君撃退は使いまわしすぎ。
まあお約束と言えばそんなところでしょうけど・・・。
結構普段は礼儀正しいらしいですけど、こんな場合は当然別です。
また今回はノースト君の武器が登場。
結構好きです武器考えるの・・・。
にしてもツリー結構落ちてきたな。
まあ良いけど・・・。
次回はオリオン×ウシャナ編かな・・・それか海王編のどちらか・・・。
・・・だと思います。

まあとにかくそれではこれでさようなら〜

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25117――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:4話:幸せ家族計略D・S・ハイドラント 2003/3/10 19:05:19
記事番号25096へのコメント

静寂は歌う。混沌の歌を・・・。
沈黙に微笑む。夜明けの悪魔は・・・。
暁に嘲笑う。常闇の悪魔は・・・。
光と闇、2つの魔が交錯する。
そんな中で巡る旋律は果てしなく不快でそして恐怖・・・。
睡魔と悪夢との葛藤は激しき。
均衡する中、ただ苦しむ。
のどかな朝の静寂はそこのみ途切れていた。
だが苦もやがて終わる・・・。

「オリオン〜起きてええええ!!!」

轟音が響く。天地を揺るがし、世界を戦慄させる凄まじき響きだ。
空間は軋み、弱きものは震え上がり、滅びの宴をそこに始める。
すべての魔は等しく彼より消え去った。
「うっうん・・・」
凍れる灰色の髪を揺らしつつ、深み森を映す視界を鮮明にしつつ、冷気を帯びた男は立ち上がる。
覚醒は確実に進んでいた。
憤りは残るものの、微かな笑みを浮かべて消し去る。
だがその瞬間に――。

「オリオ〜ン!!!」

再び響き渡る破魔の叫び。

「黙れ!」

静かな声だが、刃の如く、空を伝わり真の魔を撃つ。
「全く・・・朝から迷惑なガキだ。」
溜息は白く鮮明でそして儚く消え去った。
呟きの余韻もすでに残らぬ頃に、彼は立ち上がる。第三撃が・・・大惨劇が来ぬように・・・。

「オリオ・・」
「黙れ!」
部屋の扉を開けると、風が頬を撫でるに等しき速度で、素早く気配の元へ腕を伸ばす。
「んぬぬぬごごごご。」
口を塞がれ滑稽にうめく、その正体は1人の少女。
「騒音公害だ。二度とするな。」
冷たき視線にて凝視すれば、
「んむむ、んむむ。」
分からぬ声を放ち返す。
それに憤り、迷う後に、腕を離した。
「ふう。」
少女は活力に満ちた吐息を上げた。
広がりを見せた黒髪に、活ける自然の瞳を持った10半ばほどの少女である。
無闇に煌びやかな衣服を身に着けている。
「で、俺をこんな迷惑な方法で起こした理由は何なんだ?」
「んふふふふっ。」
さすれば少女は笑顔を湛える。
「・・・はっきり言わないと、一回殺すぞ。」
それに笑みを引き攣らせ、墜落へと向かってゆく。
そして凍りついた表情と化した瞬間に、
「あたし、オリオンの朝ごはん作ったの♪」
幼さを残した美貌は輝きで満たされていた。
「・・・そうか。」
反対に曇るのはオリオン。
「どうしたの?」
笑みを分け与えん如くに表情を近づけてゆく。
「いっいや・・・何でもない。」
空笑いを浮かべて、少女に返す。
「じゃあ、付いて来て・・・」
絶頂の高揚感を従えつつ少女はゆっくりと歩き出した。
「・・・その遅さは何とかならないのか?」
背後よりオリオンが透明な刃を飛ばせば、
「ん〜、なんない。」
容易く打ち落とす。

冷たい朝の食卓だった。
だがその部屋の温度に反して、卓上の世界は春を思わせた。
数多の色彩が駆け巡る楽園。
輝きに満ちて蠱惑を浮かべる。
重い腹部も急速に箍を外し、残るの眠気もすべて晴れた。
「・・・これか。」
「そうよ。あたしの初挑戦。」
桃源郷へとオリオンは近寄る。
魔性の香りに悩ませる中、それでも淡々と進んだ。
張り詰めた意識が遠のくほど・・・。
それでも踏み出しそして椅子へと腰掛けた。
「良いのか・・・。」
遠くの少女に彼は言葉を掛けた。
「・・・もちろん。」
微笑みを見て彼は静かにフォークへ手を伸ばす。
そして手近にあったサイコロステーキへと爪を立て――襲い掛かった。
宙を舞った獲物は凄まじき芳香を彼に浴びせる。
恍惚に意識が希薄になりつつもそれでも必死で近づけた。
そして運命の一瞬。
少女は神に望む未来を必死で祈った。
彼は肉を必死で噛み締めた。
そして審判は今下る。

「・・・ぐふっ。」

口の中で広がる肉汁のその腐敗の色は彼の心を激しく切り裂いた。

――海王将軍オリオンはそのサイコロステーキに・・・一回殺された。

「ふふっ殺人料理は成功のようだわ。」
1人微笑む海王神官ウシャナには純なる邪気が蠢いている。

後書き
こんばんはラントです。
オリオン、ウシャナ編でございます。
そろそろ神側も書きたいです。
にしても今回はポルテ君の出ない回でした。
次回はどうだろ・・・。
ところで、現在書き溜め中の新作・・・ダメだこりゃ。
ちょうどネタ考えている時期に猛烈にはまっていた『武官弁護士エル・ウィン』に似すぎてる。・・・設定が・・・。
まあストーリーは結構違うはずですけど・・・。
しかも『虎を描きて狗に類す』ような駄文。
気付けば、普通にお茶入れるシーンまでしっかり書いてましたし。
私が平々凡々な場面を書くとやたら引っ張ってしまう癖が・・・そのくせ戦闘シーンとか短いし・・・。
まあ何とかがんばってみます。

それでは〜

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25121Re:――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:4話:幸せ家族計略ユア・ファンティン 2003/3/10 22:19:35
記事番号25117へのコメント


>静寂は歌う。混沌の歌を・・・。
>沈黙に微笑む。夜明けの悪魔は・・・。
>暁に嘲笑う。常闇の悪魔は・・・。
>光と闇、2つの魔が交錯する。
>そんな中で巡る旋律は果てしなく不快でそして恐怖・・・。
>睡魔と悪夢との葛藤は激しき。
>均衡する中、ただ苦しむ。
>のどかな朝の静寂はそこのみ途切れていた。
>だが苦もやがて終わる・・・。

ユ:今の時期起きるのきついよねえ
風:ユアさん、ずれてます。

>
>「オリオン〜起きてええええ!!!」
>
>轟音が響く。天地を揺るがし、世界を戦慄させる凄まじき響きだ。
>空間は軋み、弱きものは震え上がり、滅びの宴をそこに始める。
>すべての魔は等しく彼より消え去った。
>「うっうん・・・」
>凍れる灰色の髪を揺らしつつ、深み森を映す視界を鮮明にしつつ、冷気を帯びた男は立ち上がる。
>覚醒は確実に進んでいた。
>憤りは残るものの、微かな笑みを浮かべて消し去る。
>だがその瞬間に――。
>
>「オリオ〜ン!!!」
>
>再び響き渡る破魔の叫び。
>
>「黙れ!」
>
>静かな声だが、刃の如く、空を伝わり真の魔を撃つ。
>「全く・・・朝から迷惑なガキだ。」
>溜息は白く鮮明でそして儚く消え去った。
>呟きの余韻もすでに残らぬ頃に、彼は立ち上がる。第三撃が・・・大惨劇が来ぬように・・・。

ユ:・・・・・・・・・(笑いを堪えている)

>
>「オリオ・・」
>「黙れ!」
>部屋の扉を開けると、風が頬を撫でるに等しき速度で、素早く気配の元へ腕を伸ばす。
>「んぬぬぬごごごご。」
>口を塞がれ滑稽にうめく、その正体は1人の少女。
>「騒音公害だ。二度とするな。」
>冷たき視線にて凝視すれば、
>「んむむ、んむむ。」
>分からぬ声を放ち返す。
>それに憤り、迷う後に、腕を離した。
>「ふう。」
>少女は活力に満ちた吐息を上げた。
>広がりを見せた黒髪に、活ける自然の瞳を持った10半ばほどの少女である。
>無闇に煌びやかな衣服を身に着けている。

ユ:ウシャナ嬢
ク:僕の元・妹だね。

>「で、俺をこんな迷惑な方法で起こした理由は何なんだ?」
>「んふふふふっ。」
>さすれば少女は笑顔を湛える。
>「・・・はっきり言わないと、一回殺すぞ。」
>それに笑みを引き攣らせ、墜落へと向かってゆく。
>そして凍りついた表情と化した瞬間に、
>「あたし、オリオンの朝ごはん作ったの♪」
>幼さを残した美貌は輝きで満たされていた。

ユ:犬が雨に打たれててそれを覗き込んでキュンキュン泣かれたような感じだな。
風:(要約:断れない状況)

>「・・・そうか。」
>反対に曇るのはオリオン。
>「どうしたの?」
>笑みを分け与えん如くに表情を近づけてゆく。
>「いっいや・・・何でもない。」
>空笑いを浮かべて、少女に返す。
>「じゃあ、付いて来て・・・」
>絶頂の高揚感を従えつつ少女はゆっくりと歩き出した。
>「・・・その遅さは何とかならないのか?」
>背後よりオリオンが透明な刃を飛ばせば、
>「ん〜、なんない。」
>容易く打ち落とす。

ユ:強いんですねえ。
  創った親が言う台詞じゃないけど

>
>冷たい朝の食卓だった。
>だがその部屋の温度に反して、卓上の世界は春を思わせた。
>数多の色彩が駆け巡る楽園。
>輝きに満ちて蠱惑を浮かべる。
>重い腹部も急速に箍を外し、残るの眠気もすべて晴れた。
>「・・・これか。」
>「そうよ。あたしの初挑戦。」
>桃源郷へとオリオンは近寄る。
>魔性の香りに悩ませる中、それでも淡々と進んだ。
>張り詰めた意識が遠のくほど・・・。
>それでも踏み出しそして椅子へと腰掛けた。
>「良いのか・・・。」
>遠くの少女に彼は言葉を掛けた。
>「・・・もちろん。」
>微笑みを見て彼は静かにフォークへ手を伸ばす。
>そして手近にあったサイコロステーキへと爪を立て――襲い掛かった。
>宙を舞った獲物は凄まじき芳香を彼に浴びせる。
>恍惚に意識が希薄になりつつもそれでも必死で近づけた。
>そして運命の一瞬。
>少女は神に望む未来を必死で祈った。
>彼は肉を必死で噛み締めた。
>そして審判は今下る。

ユ:耐えてこそ、男だ(自分の父にもおくった言葉)

>
>「・・・ぐふっ。」
>
>口の中で広がる肉汁のその腐敗の色は彼の心を激しく切り裂いた。
>
>――海王将軍オリオンはそのサイコロステーキに・・・一回殺された。
>
>「ふふっ殺人料理は成功のようだわ。」
>1人微笑む海王神官ウシャナには純なる邪気が蠢いている。

ユ:あははっははっはっはははっはっはっはっはは(堪え切れなくなったらしい)

>
>後書き
>こんばんはラントです。
>オリオン、ウシャナ編でございます。

笑わさせていただきました。

>そろそろ神側も書きたいです。
>にしても今回はポルテ君の出ない回でした。
>次回はどうだろ・・・。
>ところで、現在書き溜め中の新作・・・ダメだこりゃ。
>ちょうどネタ考えている時期に猛烈にはまっていた『武官弁護士エル・ウィン』に似すぎてる。・・・設定が・・・。

確かに、効果が。

>まあストーリーは結構違うはずですけど・・・。
>しかも『虎を描きて狗に類す』ような駄文。
>気付けば、普通にお茶入れるシーンまでしっかり書いてましたし。
>私が平々凡々な場面を書くとやたら引っ張ってしまう癖が・・・そのくせ戦闘シーンとか短いし・・・。
>まあ何とかがんばってみます。

がんばってください
>
>それでは〜

風華新しいのはいってます。
それでは・・・・・・

>

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25123Re:――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:4話:幸せ家族計略D・S・ハイドラント 2003/3/10 22:41:18
記事番号25121へのコメント

こんばんはレスどうもです。
>
>>静寂は歌う。混沌の歌を・・・。
>>沈黙に微笑む。夜明けの悪魔は・・・。
>>暁に嘲笑う。常闇の悪魔は・・・。
>>光と闇、2つの魔が交錯する。
>>そんな中で巡る旋律は果てしなく不快でそして恐怖・・・。
>>睡魔と悪夢との葛藤は激しき。
>>均衡する中、ただ苦しむ。
>>のどかな朝の静寂はそこのみ途切れていた。
>>だが苦もやがて終わる・・・。
>
>ユ:今の時期起きるのきついよねえ
>風:ユアさん、ずれてます。
分かりますよ滅茶苦茶つらい。
>
>>
>>「オリオン〜起きてええええ!!!」
>>
>>轟音が響く。天地を揺るがし、世界を戦慄させる凄まじき響きだ。
>>空間は軋み、弱きものは震え上がり、滅びの宴をそこに始める。
>>すべての魔は等しく彼より消え去った。
>>「うっうん・・・」
>>凍れる灰色の髪を揺らしつつ、深み森を映す視界を鮮明にしつつ、冷気を帯びた男は立ち上がる。
>>覚醒は確実に進んでいた。
>>憤りは残るものの、微かな笑みを浮かべて消し去る。
>>だがその瞬間に――。
>>
>>「オリオ〜ン!!!」
>>
>>再び響き渡る破魔の叫び。
>>
>>「黙れ!」
>>
>>静かな声だが、刃の如く、空を伝わり真の魔を撃つ。
>>「全く・・・朝から迷惑なガキだ。」
>>溜息は白く鮮明でそして儚く消え去った。
>>呟きの余韻もすでに残らぬ頃に、彼は立ち上がる。第三撃が・・・大惨劇が来ぬように・・・。
>
>ユ:・・・・・・・・・(笑いを堪えている)
最初にだいさんげきと打って大惨劇と出たから使ったネタです。
でも普通に文章としても通るはず。
>
>>
>>「オリオ・・」
>>「黙れ!」
>>部屋の扉を開けると、風が頬を撫でるに等しき速度で、素早く気配の元へ腕を伸ばす。
>>「んぬぬぬごごごご。」
>>口を塞がれ滑稽にうめく、その正体は1人の少女。
>>「騒音公害だ。二度とするな。」
>>冷たき視線にて凝視すれば、
>>「んむむ、んむむ。」
>>分からぬ声を放ち返す。
>>それに憤り、迷う後に、腕を離した。
>>「ふう。」
>>少女は活力に満ちた吐息を上げた。
>>広がりを見せた黒髪に、活ける自然の瞳を持った10半ばほどの少女である。
>>無闇に煌びやかな衣服を身に着けている。
>
>ユ:ウシャナ嬢
>ク:僕の元・妹だね。
クさん・・・どちら様でしょうか。
>
>>「で、俺をこんな迷惑な方法で起こした理由は何なんだ?」
>>「んふふふふっ。」
>>さすれば少女は笑顔を湛える。
>>「・・・はっきり言わないと、一回殺すぞ。」
>>それに笑みを引き攣らせ、墜落へと向かってゆく。
>>そして凍りついた表情と化した瞬間に、
>>「あたし、オリオンの朝ごはん作ったの♪」
>>幼さを残した美貌は輝きで満たされていた。
>
>ユ:犬が雨に打たれててそれを覗き込んでキュンキュン泣かれたような感じだな。
>風:(要約:断れない状況)
まあ・・・。
>
>>「・・・そうか。」
>>反対に曇るのはオリオン。
>>「どうしたの?」
>>笑みを分け与えん如くに表情を近づけてゆく。
>>「いっいや・・・何でもない。」
>>空笑いを浮かべて、少女に返す。
>>「じゃあ、付いて来て・・・」
>>絶頂の高揚感を従えつつ少女はゆっくりと歩き出した。
>>「・・・その遅さは何とかならないのか?」
>>背後よりオリオンが透明な刃を飛ばせば、
>>「ん〜、なんない。」
>>容易く打ち落とす。
>
>ユ:強いんですねえ。
>  創った親が言う台詞じゃないけど
思慮深いラルタークとともに神魔戦争時無傷だった方。(いや冥王親衛隊も無傷でしたけど)
>
>>
>>冷たい朝の食卓だった。
>>だがその部屋の温度に反して、卓上の世界は春を思わせた。
>>数多の色彩が駆け巡る楽園。
>>輝きに満ちて蠱惑を浮かべる。
>>重い腹部も急速に箍を外し、残るの眠気もすべて晴れた。
>>「・・・これか。」
>>「そうよ。あたしの初挑戦。」
>>桃源郷へとオリオンは近寄る。
>>魔性の香りに悩ませる中、それでも淡々と進んだ。
>>張り詰めた意識が遠のくほど・・・。
>>それでも踏み出しそして椅子へと腰掛けた。
>>「良いのか・・・。」
>>遠くの少女に彼は言葉を掛けた。
>>「・・・もちろん。」
>>微笑みを見て彼は静かにフォークへ手を伸ばす。
>>そして手近にあったサイコロステーキへと爪を立て――襲い掛かった。
>>宙を舞った獲物は凄まじき芳香を彼に浴びせる。
>>恍惚に意識が希薄になりつつもそれでも必死で近づけた。
>>そして運命の一瞬。
>>少女は神に望む未来を必死で祈った。
>>彼は肉を必死で噛み締めた。
>>そして審判は今下る。
>
>ユ:耐えてこそ、男だ(自分の父にもおくった言葉)
・・・耐えない男・・・それは私。
>
>>
>>「・・・ぐふっ。」
>>
>>口の中で広がる肉汁のその腐敗の色は彼の心を激しく切り裂いた。
>>
>>――海王将軍オリオンはそのサイコロステーキに・・・一回殺された。
>>
>>「ふふっ殺人料理は成功のようだわ。」
>>1人微笑む海王神官ウシャナには純なる邪気が蠢いている。
>
>ユ:あははっははっはっはははっはっはっはっはは(堪え切れなくなったらしい)
実験台ということですね。
海王軍一の常識人なオリオン君受難。
陽月様すみませぬ。
>
>>
>>後書き
>>こんばんはラントです。
>>オリオン、ウシャナ編でございます。
>
>笑わさせていただきました。
今回はギャグ・・・まあギャグでしばらくいくと思います。
>
>>そろそろ神側も書きたいです。
>>にしても今回はポルテ君の出ない回でした。
>>次回はどうだろ・・・。
>>ところで、現在書き溜め中の新作・・・ダメだこりゃ。
>>ちょうどネタ考えている時期に猛烈にはまっていた『武官弁護士エル・ウィン』に似すぎてる。・・・設定が・・・。
>
>確かに、効果が。
えっ、まだどこにも見せてないやつ・・・。
まさか例の双子パワーで(待て)
某巨大組織と違うようで似てるかも知れないものが登場しますし・・・。
>
>>まあストーリーは結構違うはずですけど・・・。
>>しかも『虎を描きて狗に類す』ような駄文。
>>気付けば、普通にお茶入れるシーンまでしっかり書いてましたし。
>>私が平々凡々な場面を書くとやたら引っ張ってしまう癖が・・・そのくせ戦闘シーンとか短いし・・・。
>>まあ何とかがんばってみます。
>
>がんばってください
分かりました。
>>
>>それでは〜
>
>風華新しいのはいってます。
レスしてきました。
>それでは・・・・・・
どうもありがとうございます。
>
>>
>

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25124し、しあわせなんですね。風碧 陽月 E-mail URL2003/3/10 22:45:51
記事番号25117へのコメント


タイトルがふざけてます(汗)。
こんばんは陽月です。


>「オリオン〜起きてええええ!!!」
>
>轟音が響く。天地を揺るがし、世界を戦慄させる凄まじき響きだ。
普通の目覚ましで起きれない私には丁度いいかもしれないです(ヲイ)。
最近はMDプレーヤーのタイマーセットで起きてますが…って関係ないですねこれ。


>「オリオ〜ン!!!」
>
>再び響き渡る破魔の叫び。
>
>「黙れ!」
うあ即答! 流石です(謎)


>背後よりオリオンが透明な刃を飛ばせば、
をを。いい比喩ですね。


>恍惚に意識が希薄になりつつもそれでも必死で近づけた。
頑張ってくれぃ……それしか言えないっす。


>そして運命の一瞬。
>少女は神に望む未来を必死で祈った。
>彼は肉を必死で噛み締めた。
>そして審判は今下る。
>
>「・・・ぐふっ。」
『ぐふっ。』なんですね!?『ぐふっ。』!!(笑←かなりツボだったらしい)


>――海王将軍オリオンはそのサイコロステーキに・・・一回殺された。
ここを読んでしばらくパソの前で爆笑してました。
不幸なキャラ(笑)。いえ、私のキャラっすけど。


>「ふふっ殺人料理は成功のようだわ。」
>1人微笑む海王神官ウシャナには純なる邪気が蠢いている。
こちらは大成功で幸せですね。
……ということは、幸せ家族『計略』…………。
計画してましたね……。


>オリオン、ウシャナ編でございます。
爆笑させて頂きました。


>そろそろ神側も書きたいです。
>にしても今回はポルテ君の出ない回でした。
あ、そう言えば……(←笑いのツボにはまってて気づかなかったらしい)


>気付けば、普通にお茶入れるシーンまでしっかり書いてましたし。
こぽこぽ……と。
いや、これは日本茶っすね(汗)


>私が平々凡々な場面を書くとやたら引っ張ってしまう癖が・・・そのくせ戦闘シーンとか短いし・・・。
>まあ何とかがんばってみます。
頑張って下さい。


>それでは〜
はいです。
では短いですがこれで失礼します。では〜

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25130Re:とある1人をのぞいては・・・D・S・ハイドラント 2003/3/11 12:51:50
記事番号25124へのコメント


>
>タイトルがふざけてます(汗)。
>こんばんは陽月です。
こんばんはラントです。
>
>
>>「オリオン〜起きてええええ!!!」
>>
>>轟音が響く。天地を揺るがし、世界を戦慄させる凄まじき響きだ。
>普通の目覚ましで起きれない私には丁度いいかもしれないです(ヲイ)。
>最近はMDプレーヤーのタイマーセットで起きてますが…って関係ないですねこれ。
私は携帯のアラームです。
>
>
>>「オリオ〜ン!!!」
>>
>>再び響き渡る破魔の叫び。
>>
>>「黙れ!」
>うあ即答! 流石です(謎)
伊達に海王将軍(つまり相方)やってるわけじゃないです。
>
>
>>背後よりオリオンが透明な刃を飛ばせば、
>をを。いい比喩ですね。
これは・・・隠喩かな?諷喩になるのかな?
小説に比喩が必要なのかは定かではありませんが・・・。
>
>
>>恍惚に意識が希薄になりつつもそれでも必死で近づけた。
>頑張ってくれぃ……それしか言えないっす。
むしろこの時点では良い匂いというか異常なほど良すぎる匂いですけど・・・。
>
>
>>そして運命の一瞬。
>>少女は神に望む未来を必死で祈った。
>>彼は肉を必死で噛み締めた。
>>そして審判は今下る。
>>
>>「・・・ぐふっ。」
>『ぐふっ。』なんですね!?『ぐふっ。』!!(笑←かなりツボだったらしい)
ぐふっ。です。
RPGのボスキャラが使いそうな・・・
>
>
>>――海王将軍オリオンはそのサイコロステーキに・・・一回殺された。
>ここを読んでしばらくパソの前で爆笑してました。
>不幸なキャラ(笑)。いえ、私のキャラっすけど。
すみません。こうなりました。
にしても相当なダメージ・・・高位魔族を『殺す』とは・・・。
母様の直伝か?
>
>
>>「ふふっ殺人料理は成功のようだわ。」
>>1人微笑む海王神官ウシャナには純なる邪気が蠢いている。
>こちらは大成功で幸せですね。
>……ということは、幸せ家族『計略』…………。
>計画してましたね……。
家族を入院させることで冷たい家庭を円満にする計略?
>
>
>>オリオン、ウシャナ編でございます。
>爆笑させて頂きました。
どうもです。
>
>
>>そろそろ神側も書きたいです。
>>にしても今回はポルテ君の出ない回でした。
>あ、そう言えば……(←笑いのツボにはまってて気づかなかったらしい)
この話では多分重要なキャラですし毎回出したかったけど、面倒でしたのでやめました。
でもオリオン君をひそかに狙ってるかも(恐)
>
>
>>気付けば、普通にお茶入れるシーンまでしっかり書いてましたし。
>こぽこぽ……と。
>いや、これは日本茶っすね(汗)
魔法で湯沸かすポットがあるような世界です。
また魔法文明の世界になるかと・・・。
>
>
>>私が平々凡々な場面を書くとやたら引っ張ってしまう癖が・・・そのくせ戦闘シーンとか短いし・・・。
>>まあ何とかがんばってみます。
>頑張って下さい。
どうにかがんばります。
>
>
>>それでは〜
>はいです。
>では短いですがこれで失礼します。では〜
いえ私の方が短いですし・・・。
それではどうもありがとうございます。

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25132――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:5話:ウシャナ・クエストD・S・ハイドラント 2003/3/11 15:02:36
記事番号25117へのコメント

虚像が光り、そして消えてゆく。
一瞬一瞬のそのすべてが明白で、やがて白へと還っていった。
光に晒された両眼は、色彩を失いやがて枯れる。
翼が天へと導いた。

「・・・ン。」

だが不意にその脚を掴む虚ろな腕。
見えぬその力は昇る身体を引き降ろそうとしていた。
だが振り払い、輝きの元へ昇ってゆく。
もうけして落ちはしない。
光が纏われ、いつしか笑みを浮かべいていた。

「・・オン。」

だが声はそれを打ち砕く。深き闇へと誘い込む。
それでも昇る循環の果てに、光を掴む時が来た。

 「だめえええオリオン〜!!」

だが絶頂の轟音が世界を崩し光を掻き消した。
身体は混沌へと飲まれてゆく。
凄まじき恐怖が渦巻いていた。
だが・・・そこで終わって光を取り戻した。
現実的な淡き光を・・・。

「・・・大丈夫?」
雫が落ちる。温もりを感じた。
「まあな・・・」
呟いて揺らめく視界を整える。
寝台に倒れ込んでいる自分。
そして1人の少女の姿。
「って貴様ぁ!」
必死で声を張り上げる。
だが同時に激しき吐気をもよおした。
「えへ。」
それを見て微笑む少女・・・まさしく彼オリオンに殺人料理を食べさせたウシャナ。
「へっ変なもの・・・喰わせやがって・・・ぐふっ!」
・・・次なる声は断末魔へと連なっていた。
「あああっオリオ〜ン。」
倒れ伏したオリオンを必死に揺らすウシャナの細腕。
「・・・オリオーン〜!」
だがむなしく眠るまま。
さらに冷気を帯びてゆくのが明らかに見えた。
「ああどうしよう〜」
ついに嘆きを放てば・・・その瞬間に、
「あらどうしたの?」
不意に生まれし声。優しき刃がウシャナに突き刺さり、
「かかかかかかかかかかかかかかかか・・・海王様!」
振り向く緑黄の世界には、漆黒を纏った美女の姿。
「おはよう、ね・・・オリオンちゃんを殺しちゃったウシャナちゃん♪」
無垢なる笑顔が凄まじき気を発している。
「・・・すっすみません!」
「あっ・・・別に怒ってはないわ。」
だが向けられたのは、明らかな普遍の慈愛の視線であった。
「えっ・・・」
「良いのよ。ちょっと地上の精神地獄と呼ばれるデモンズ・ハンター山のどこかに生えている神切草を煎じて飲ませば助かるはずよ。」
淡々と語り太陽の笑みを向けた。
「・・・それはまさか・・・」
熱を失ってゆく表情・・・
「ふふっ・・・いってらっしゃい。」
そして凍りついた。

絶望的なほどに白き世界は、数多の恐怖を具現させ、滅びを誘う。
天より舞う銀光はまさしく死霊の魂魄であり、恨み憎みそして呪う。
「さむぅぅぅ〜い。」
崩れゆく大地を踏み締めて、それでも確実に歩を進めた。
「こぉぉんなことぉぉならぁああ、殺人料理なんかぁあああああ」
怨嗟の叫びを繰り返して身を焼きつつ確実に進む。
すでに蝕まれし精神は、転移どころかその子心を温めることも不可能だった。
「うわあああああああああ、あたしの馬鹿〜」
叫びを上げた。それは凄まじき轟音となり、天地を揺るがす。
音が・・・止んだ。
静寂が戻る。
雪も等しく消え去った。
・・・だが不意に近寄る恐怖のその音。
「きゃああああああああああああああ」
眼前に流れる雪の大河。魔族といえども弱った今は生身に等しき。
心のみなため、すべてを激しく感じてしまう。
魔を狩る(デモンズ・ハンター)山に相応しき名。
「きゃあああああああああ」
白き獣達に蹂躙され流されゆくウシャナのその身。

「・・・ふう。」
光が強く焼いていた。
希望に心を躍らせて、躊躇いつつもそれを受け入れた。
やはりは銀世界。だが吹雪は止み、光に満たされている。
優しき静寂が歌う空間。
いくつもの木々に囲まれている。
(・・・麓まで落とされたのかな。)
そっと身を起こす。冷えたといえども精神の身体はけして濡れぬ。
颯爽と歩を出す。
だがその途端に・・・冥き気配。
神よりも悪しきその気を探る。
容易きことだ・・・。
微笑みを軽く浮かべてその元へと歩き出す。

「・・・うむ。これほど狩れば病気の人間どもは助かるまい。」
歩の音は鮮明に見えて、どこか違和感。
そう踏み締めた足跡は残らず。
「さてと、これで帰るか。」
銀髪銀目、銀の髭、白き肌に銀の衣服身に着けた40ほどの美中年。
その手に抱えられた篭には、数多の緑で占められていた。
(・・・あれは神切草。)
茂みに潜み、気配を消したウシャナはそれを確実に捉えていた。
「こちら、T区−0−4365。ただいま帰還する。」
(あれはまさか・・・)
その思考とともにウシャナは飛び出していた。
「うわっ。」
不意の衝撃に吹き飛ぶその男。
「・・・あんた邪神・・ね。」
「なっ何なんだ・・・お前は・・・」
ウシャナの形相は一変していた。
まさしくすべてを欺き、滅ぼす。魔なるそれに・・・。
「あたしは通りすがりの海王神官・・・あんたの命と、その神切草をもらっていくわ。」
「かっかっ海王神官だと・・・」
凄まじき威圧はその男を震え上がらせた。
「そうよ。・・・あんたみたいな雑魚なんて一秒あれば消せるわよ。」
「ひっひえええええええええ」
声と同時に薄まるその姿。
「・・・逃げられるとでも思ったの!」
だが消え去るよりも素早く、ウシャナの細き腕はその『邪神』を掴みあげていた。
「・・・ふふっあたしのムカツキをすべてあんたで晴らしてやるわ。」
半ば笑みさえ浮かべている。
狂気に満ちたその少女に対し、美中年は震えるのみだった。
「うふふふふ。ふふふふふ」
「・・・・・・・・・・・。」

――死刑執行中。

――砂時計が果てて
「・・・ああすっきりしたあ」
神の骸を背に、両手を伸ばし、天を仰ぐ。
その腕には神切草の束。
「にしてもセコイ邪神だったわねえ。」
言いつつ、その身は薄れ、消え去った。
静寂の中、微かに風が吹いた。

「やはり・・・あれでは力不足か。」

どこからか呟きが漏れる。

――エピローグ

「ただいま〜」
辛き冒険を果て、ついに帰還した輝く故郷。
「きゃああああああああああああああああああああああああお帰りぃいいいいいいいいい」
戻ると同時に飛び掛る海王。
「か・・・い・・・おう・・・さま・・・くるひい。」
視界が暗転してゆく。
だが視線は変わらず優しき。
それが憎らしきほどに・・・。

――オリオンはすぐに息を吹き返した。

――平和な日々は取り戻された。

「・・・で、あたし邪神を倒したのよ。」
「・・・へえ、凄いのねウシャナちゃん。私なら悲鳴上げて逃げちゃうわ。」
「・・・えっ・・そうなんですか」
「うん、だって邪神って総じて変態が多いみたいだし・・・」

――邪神・・・人を欺く偽りの魔。

後書き
つっつっついに・・・話が進展したぞおおおおおーーーーー。
やっとのことで邪神を出せた。
まだ何ものなのか秘密ですけど、すでに分かるかも知れないです。
謎の声さんも登場しましたし・・・。
ここから物語は急速に進展・・・はまだ早いっす。
にしてもそうだとすればこのモラトリアムも相当な長編になるかも知れない。
神魔弁当越えたりして・・・はははっ・・・
今回はウシャナ編。
・・・すみませぬ。『やや』被害者でございます。
まあディスティアはこの程度じゃないですし・・・(待て)
またまたポルテ君の出ない回。
というかこの後、出ないかも知れませぬ。
それでは〜

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25133――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:6話:部下迷走しエ〜ン・ウェ〜ンD・S・ハイドラント 2003/3/11 16:21:53
記事番号25132へのコメント

冥き空間。
集まる影。
湛えられていた静寂は・・・

「お姉様・・・鼻毛が出ていますわ。」
「何っ!どこだどの辺だ?」
「あら、そんなの嘘に決まってますわ。魔族が鼻毛出すわけないってことくらいあなたのような思考回路の破滅した方でも、それくらいはお分かりになると思ってましたけど・・・。」
「黙れ!魔族が平気で嘘を付くな!」

すでに声達が喰らい尽くしていた。

「貴様やる気か!」
「お姉様こそ、そろそろ廃棄処分寸前なのにこの若々しい私にかなうと思ってるんですか。・・・はあ、これだから旧型は・・・」

「うるさい2人とも!!」

そして、その響きがすべてを掻き消した。
「「ディスティア様」」
声は不思議と共鳴した。
「全く・・・年少3人まで静かにしてるのに・・・」
「「・・・すみません。」」
姉妹の容貌は曇り空。
「ふふっルビー起こられちゃったわね。」
銀色の女ダイヤモンドの囁きを受け、
「・・・死ぬか?」
ルビーは怒り湛えた眼光を放つ。
「・・・ごめんなさい。」
冥王親衛隊最強にして、冥将軍を務めるルビーの威圧に容易く屈する最年長ダイヤモンド。
「ところで〜今日はなんなんですか〜」
緑の少女である最年少ベリルの不鮮明な声に、
「冥王・・・様が来るっぽい。」
親衛隊をまとめる元冥王ディスティアは返した。
「・・・っぽい、んですか?ディスティア様。」
幼き青緑の慎ましやかな少女オパールの声にも、
「・・・そう・・・っぽいんだ。」
即座に返した。
「・・・冥王様ってあのボケ王子のことよね。」
「・・・オニキス、あたしにタメ口禁止。」
冷たき太陽の輝きに、
「・・・ごめんなさい。ディス様。」
黒き髪と目に純白の肌を持つオニキスの声も枯れてゆく。
「あっそろそろ来る。」
ディスティアは自らの腕に視線を走らした。
途端に現れた腕時計は15:31分を示している。

(全く大事な場所であんなに感情的になるなんて、人間以下ですわ。)
(うるさい黙れ、テレパシー使うな。)
魔力を飛ばせ、乗り込むガーネットにルビーはなおも怒りを生んでいた。
(あらお姉様の野獣じみた咆哮ほどうるさくないと思いますが・・・)
(お前・・・本当に1度死んでみるか?)
沈黙の中で、送られる声のみが凄まじき焔を放っていた。
(まあ、死ねだの殺すだの、全く野蛮な民族は嫌ですわ。お姉様の場合はそれに変態さが加わってますし・・・犬の方がよっぽどあなたより魔族らしいですわ。)
(貴様ぁ!)

「・・・テレパシーも禁止。」
ディスティアの刃は2人を繋ぐ、禍々しき糸を一瞬にして断ち切った。
「まあお姉様方、テレパシーを使っていたなんて・・・」
「ガーネット姉様最低。あたしのルビー姉様を密かに落としてるなんて・・・」
「誰がお前のだ!」
逃さずルビーは凄まじき視線を放てば、
「そうよ、ルビーは私のもの♪」
「違うわ〜!!」
即座に湧き出る害獣を素早く叩き伏せた。
「・・・ふふふオニキス。誰が最低ですって・・・」
「やだなガーネット姉様・・・」
ガーネットもまた冥神官であり、ルビーに並ぶ実力者。後退り始めるオニキスは脅えに満ちていた。
「ダイヤ・・・今日こそ貴様の根性を叩き直してやる。」
「やだルビーちゃん恐い。」
燃える紅玉(ルビー)と震える金剛石(ダイヤモンド)。
「オニキス・・・滅びっていうのがどんな感覚か知ってます?」
「・・・しっ知らない・・・よ・・・」
狩る柘榴石(ガーネット)と狩られる縞瑪瑙(オニキス)。
「お姉様方がんばってください。」
「がんばってください〜」
ただ応援する蛋白石(オパール)と緑柱石(ベリル)。

「・・・はあ。」
ディスティアは混沌の中で溜息を漏らす。
(あたしって舐められているのかな。)
闇が押し寄せる。
「・・・私が片付けましょうか?」
だが不意に光が訪れる。
どこか昏き光であったが・・・。
「・・・サファイア・・・頼む。」

「「「「「「・・・ごめんなさいディスティア様。ごめんなさい・・・サファイア(お姉様/姉様)。」」」」」」
6人は等しくそして沈黙へ・・・
その瞬間に光は差した。

「・・・みんな〜おはよ〜」
すべての闇を打ち砕く光輝く晴れた声。
小さき影が光との境界に浮かび上がり、やがて大きくなり鮮明に・・・。
「冥王・・・・・・・・・・・・様。」
「おはようディスティア。」
昏きディスティアに対し、現れた少年フィブリゾは爽やかだ。
「・・・あれ?」
想像絶するほどに沈黙だ。
誰もが望んだその無音。
「・・・おはよう。」
だが返るのはそれぞれの色の瞳の刃のみ。
「・・・静かだね。」
フィブリゾはディスティアにその視線を向けた。
「・・・。」
だが彼女も沈黙だった。
「・・・ふうん。」
それにフィブリゾは微かな輝きを浮かべて消した。
視線が多少の緩み見せたその瞬間に・・・。
「これは僕からの提案で命令ではないんだけど・・・僕の部下になって♪」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
だが声はむなしく静寂に喰われた。
「・・・給料2倍。」
衝撃。
「・・・全員豪華な個室にバスルーム付き。」
激震。
「・・・毎日超豪華ホテルディナー。」
鳴動。
「・・・年5回の大型家族旅行。来月は地上の南国巡り・・・。」
そして奔流・・・。
「「「「「よろしくお願いいたします。・・・フィブリゾ様♪」」」」」
一斉に上がる輝いた声。
「じゃあ、そこの銀の子と黒い子と金色の子と緑の子と青緑の子は決定ね。」
・・・それでも沈黙を続けたのは、ルビー、サファイヤ、ディスティアの3人。
「君達はどうかな。」
残る3人にも声を掛ければ、
「・・・・・・・。」
返るのは沈黙。
「分かったよ。無理強いはしないから。」
「ねえフィブリゾさまぁ〜早くいきましょ〜」
「そうだね。」

◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
「あああ、分裂しちゃった。」
遥かを観る眼差しはそれでもどこか微笑んでいた。
「ふふっカルボナードはどう動くかな。」
ローザリア・ラ・トゥール・ポルテはすべてを観ていた。

――破滅への道は第一歩を刻まれた。

後書き
こんばんはラントです。
タイトルは7巻が手に入らなくて困っている『武官弁護士エル・ウィン』から・・・。
今日は2連続でいきました。
にしてもダイヤモンド・・・アダマスにするべきだったか。
某硬玉の元后と同じになるけど・・・。
・・・『サウザント・メイジ』、読む前から親衛隊は出来ていました。
宝石の名前使うようになったのとは関係ないです。
というかあれのために少々控えようかと思ったりもした。
まあこの辺りで・・・。

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25149――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:7話:剣は三千の敵なりD・S・ハイドラント 2003/3/12 16:01:03
記事番号25133へのコメント

 「うおりゃあああ」
 凄まじき衝撃波が放たれる。
 「ぐっ・・・」
 それが向かうのは銀の長髪の1人の青年。
 強き赤の瞳を持って、背には漆黒の翼が生えている。
 その青年の白衣に纏われた胸部は赤く濡れていた。
 「へへっ、俺に手を出すからだ。」
 嘲笑う男は絶対の捕食者だ。
 「せけえ野郎はせけえ仕事だけしてりゃ良いんだよ。」
 そこで1つの物語は儚く幕を閉じた。
 ・・・かに見えた。

 絶望に覆われた大樹海の一画。
 黒く染まった大地には凄惨な虚像が映っていた。
 赤き焔と邪悪な刃にて蹂躙される邪なるもの達。
 「・・・所詮は狩られるものでしかないか。」
 昏き声。聞くものを凍りつかすが如し。
 その一点を眺め続けていた真紅の瞳は急に優しさを持ち出して、
 「・・・貴様等に最後の慈悲を与えてやる。」
 病的なほどに白き細腕を翳した。

 「我が混沌の名に置いて命ずる 
 死せしもの 果てしもの
 三世を繋ぐ環より外れて
 業に嘆きて 怨嗟に笑え」

 嘲笑うかの如き笑みとともに邪なる詠唱を始め・・・終えた・・・。
 黒き光が・・・闇の波動が放たれて・・・世界を漆黒に彩った。
 「・・・魔族よ。すべて等しく滅びるが良い。」
 黒衣を纏った男は、黄金色の髪を靡かせ、梢の影へと消え去った。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
 荒涼とした風が立ちはだかる。
 荒い吐息をすべて背後へ吹き飛ばしていった。
 それでも銀の刃は眼前の虚ろな獣を仕留め続けた。
 果てもなく繰り返される素振りだった。
 銀の刃が爽やかな天光を受けて煌いている。
 だが気にも留めずに繰り返される風の調べ。

 「・・・魔竜王様。」
 そこに1つの声が加わった。
 すでに枯れ果てた声だがどこか気高さを誇っている。
 風とともに入ったそれに、素振りを続けていた男は振り返り、
 「・・・ラルタークか。」
 白髪に無数の皺、風化した如くに崩れた容貌を眺める。
 だがそれでもやはり気品を持ち、身体に纏う漆黒の鎧もまた違和感を与えない。
 「・・・ラーシャートの野郎はどうだ?」
 男は――魔竜王ガーヴは笑顔を浮かべた。
 「ええ、確実に快方に向かっておりますわ。」
 「そうか・・・。」
 天を仰ぐ、映るのは勇ましき将軍。
 だが雄々しき姿はやがて――。
 「っ!」
 生まれた像をかぶりを振って掻き消した。
 (ふざけんじゃねえ。)
 胸中にて叫び散らす。
 「どうしました・・・魔竜王様。」
 震えが全身に伝わり、激しき衝撃を生んだ。
 「なっ・・・なんでもねえよ。」
 熱された心を急速に落ち着けた。
 (そういやあの手紙に書いた日付・・・明日だったな。)

 魔族の世界に時間による変化など存在しない。
 だが凝り性である彼らは、時間による世界の変化を生み出した。
 神の墜つる黄昏、蘇る暁のその繰り返し。
 闇が覆い、光が消して、時は動く。
 そして――砂時計は満ちた。

 「ここだな。」
 まだ眠る世界。
 淡き光が濡れた草木を輝かせ、宝玉よりも美しき朝を提供していた。
 冷たき世界では風は温かく、静かに頬を撫でて来る。
 弱き草達を踏み締める音はむしろ心地良い。
 不意に立ち止まる。眼前には巨大な大木。
 「・・・この辺で良いか」
 魔竜王ガーヴの言葉は静寂に流れて消された。
 真紅の瞳を鋭く細める。小さき世界に映る一点。
 見据えるままに腕は静かに空を切って・・・。
 それが終わった瞬間に・・・激しき風の音。
 同時に聳える大木は、眠るままに崩れ去る。
 激しき音は一瞬のみだった。
 「ふっ・・・」
 白き息を漏らして、抜き放っていた大剣を背の鞘に素早く戻した。
 やはり魔族は凝り性である。

 風が流れてゆく。草が樹が歌いだす。
 だが単調で結局は不変。
 「早かったか?」
 切り株に座ったガーヴは何度も言葉を発して、煮え滾る心を冷ましたが、それでも収まらぬ憤り。
 「・・・遅え。」
 放つ言葉は絶望を生む。
 だがかぶりを振って掻き消して、
 「そうだ。俺が早かったんだ。」
 ガーヴは何度も言い聞かせる。
 だが変わらない感情。
 虚ろな魔との静かな葛藤。
 幾千もの吐息が天に昇って儚く消えた。

 時とともに希望が生まれ、それより強き絶望を生む。
 飛輪は絶頂に、静かな世界を照らし出す。
 「腹減ったな。」
 そう思った瞬間には虚空より、ビーフステーキ10億分の1サイズ圧縮版が生まれ出でていた。魔族の世界の牛は途方もない巨体を持つ。
 その球状の物体を口に放り込む。
 大河が口内で奔流し、優しき旋律を奏で出す。多重音はすべての味覚を激しく刺激し、荒んだ心を癒し始めた。
 「ふう。」
 流れが止んでガーヴは恍惚の表情を消してゆく。
 だがそれでも笑顔は耐えずに、
 「次は酒だ酒。」
 1人、沈黙を破って輝く声を放ち出した。
 瞬間に生まれ出す酒瓶。
 酒に飢えた魔竜は薄黄金に輝くそれを瓶ごと喰らい尽くした。
 「ふわああああああああああああ」
 そして至福の咆哮が響き渡る。 
 それは暗き森を音にて照らした。
 だがそれは・・・。
 「こっちか・・・。」
 突如に小さき声を生み出した。
 「なっ何だぁ?」
 酔いには至らないも、心地良さを手に入れたガーヴは浮いた声にて呟いた。
 途端に茂みが揺れる。激しき音だ。
 そしてそれは禍々しき気配。
 魔でもなく聖を名乗る神でもない。
 ガーヴの意識は覚醒を始める。
 (・・・どこの馬鹿だ?) 
 そして剣を抜き放った。
 煌きは世界を覆う。その速さは大木を落とした時の比になるまい。
 疾風迅雷、凄まじき速度で風の刃が空を翔けた。
 「くたばりやがれ!」
 同時に空いた左手より、赤き焔が打ち出される。
 気配の元は焼き尽くされ、『邪神』は跡形もなく消え去ったはず。
 ガーヴは嘲笑を浮かべつつ、内で密かに安堵した。
 だが――。
 焦りが不意に彼の心を占めていた。
 それが現実化する。
 ――破壊の後より生まれし黒き翼の青年。
 白銀の長い髪、真紅の瞳、白衣を身に纏ったその姿は・・・。
 「てめえ、まさか・・・」
 驚愕がそして押し寄せた。
 「そうだ。俺は誇り高き邪神――サーティアス。貴様に殺された男だ。」
 蘇る浅き記憶。
 「・・・そうか。」
 呟いたガーヴはどこか曇っていた。
 暗き表情。凝視する視線には哀れみがこもっている。
 「・・・死に損なったか。」
 「なっ・・・」
 サーティアスと名乗る邪神は驚愕と憤慨に満たされていた。憎悪ではなく・・・。
 「誰がやったか知らねえが慈悲として、てめえには一番無惨な死を遂げさせてやるよ。」
 「貴様・・・」
 だが声を出した後に覗き込んだ表情は――いかなるものより悪しき形相。
 「・・・とっとと死ね。」
 気付いた時には、すでに剣は眼前に至っていた。空間転移は間に合わない。
 サーティアスの思考を混沌が占める。
 「ぐおおおおおおおおおおおおおおおお」
 恐怖から叫んだ。再び死すことへの恐怖から・・・。
 「なっ何だてめ・・・」
 だがそれに驚くはガーヴの方。
 叫びとともに生まれた衝撃波はガーヴを吹き飛ばしていた。
 そして大地に打ち付けられる。
 だが転移しそしてサーティアスの眼前へ・・・同時に肘を放った。
 「ぐっ・・・」
 一撃は容易く邪神を吹き飛ばす。
 「うりゃあ!」
 倒れるより速くガーヴは焔を放った。
 「うおおおおおおおおおお」
 衝撃波が吹き消すものの、そこにてガーヴは転移をこなしていた。
 それに気付きサーティアスも転移。
 だが魔竜王の力は伊達でなく、素早く青年を追い詰めた。
 脅えが身体を強張らせる。
 そして激痛が走り吹き飛ばされていた。
 「・・・これで終わりだな。」
 倒れたサーティアスにガーヴは歩み寄る。
 「・・・馬鹿な・・・。」
 サーティアスの表情は脅えではなく恐怖でもなく・・・それは確かな驚愕であった。
 「・・・ル様の力を使いこなせていないというのか・・・」
 「何だ?かりもんの力かよ。竜の頃から変わらねえもんだな。」
 青年の死神は歩み寄る。
 だが死への恐怖はまるで取れない。
 そしてガーヴが絶頂に近づいた時。
 「・・・魔竜王よ。」
 サーティアスは声を上げていた。
 「何だ?」
 笑みを浮かべてまでいたガーヴ。
 「・・・勝負は預けた。また会おう。」
 言葉と同時に、ガーヴは剣を振り下ろしていた。
 サーティアスは同時に消滅する。
 そしてガーヴより出でたのは舌打ちだった。
 「・・・逃げられた、か。」
 ガーヴは自らの剣を眺めた。

 ドラゴン・スレイヤー――数多の竜を喰らった魔剣。

 ――その前日。
 「ねえ、シェーラ。」
 「・・・はっはい何でしょうか?」
 少年と少女・・・その空間には2人がいた。
 「・・・君、何か僕に隠してない?」
 「・・・えっ・・・」
 言葉に詰まる少女に少年は無邪気な笑顔で、
 「例えばガーヴからのラブレターとかさ。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 
 後書き
 こんばんはラントです。
 ・・・またネタ浮かんじゃったよ。
 スレイヤーズってネタ浮かびやすいなあ。
 今度は和風(?)な感じ。
 神やら鬼やら出るけど、全部オリジナル。
 キャラの名前だけ作ってみたけど・・・。
 リナが璃納でゼルが絶流でL様が恵瑠。
 後は牙雨裏威(ガウリイ)とか霊蔵(レゾ)とか是螺守(ゼラス)とか是露守(ゼロス)とか重守(エス←部下S)とかほとんど変な当て字な状態。
 HPにいずれ載せるかも知れません。
 それでは〜

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25156――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:8話:レディ&ジェントルメンD・S・ハイドラント 2003/3/13 12:53:05
記事番号25149へのコメント

冥王次宮――冥王に与せぬものの住まう宮殿。
実質、冥王位を剥奪されたに等しいディスティアの巨城。

足音は静かにこだまする。
光も入らぬ闇の世界。
ディスティアは歩みを進めていた。
緩慢でもなく迅速でもない。
淡々と、その呼吸に等しく連ねてゆくのみだ。
表情は疲労と安堵で晴れ渡っている。
音が止んだ。静寂が飲み込んだ。
吐息を1つ流す。微かな笑顔が生まれた。
一瞬の暗闇が晴れる。
光が差し込んだ。
そこで疑問が生まれ出す。
突如に開いた扉に疑問を抱きつつ慎重に内部へ向かった。

「お帰りなさいませ。」
声は唐突であった。
驚き、胸部が激しく揺さぶられる。
驚愕に満たされた双眸がそして映し出したのは・・・
「あなた誰?」
右方向、扉のノブを持つ1人の男の姿があった。
「私は・・・紳士です。」
美しき少女は呆れ顔が溜息を吐いた。
「どうしました?ディスティア嬢。」
左右に分かれた長き前髪はまさしく光沢もない漆黒。対照的な細身の白肌に黒く輝く双眸。タキシードの白と黒の対比は気高さ強く持つ。
 歳は20過ぎ、背丈は、長身のディスティアを包み込むほどに巨体。
 「あの・・・」
 「どうしました?そんなに戸惑うことでもないと思いますが・・・」
 むしろ彼が疑問を抱くほどに思える。
 「何で・・・あたしの部屋にいるんですか。」
 声を振り絞り、ディスティアは言い放った。

 赤で刻まれた幾何学模様の絨毯を敷き詰めた部屋、奥にはいくつかの棚。左脇の窓辺には天蓋付きの寝台。
 その比較的広い部屋に沈黙は走る。
 すでに長き時。不変の時間は緩慢すぎた。
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 その対峙に生まれる既視感。
 それでもやはり張り詰めた水面に変化はない。
 と思う瞬間に・・・。
 「・・・紳士ですから。」
 突如にその男から声が流れる。
 確かに人・・・否、魔族を惹き付ける魅力を持っているが、それでも不快感の募ったディスティアは、
 「・・・あなたの言う紳士はストーカーと同義語?」
 憤慨を込めて言葉を飛ばす。
 「まあそう怒らないでください。」
 微笑みを浴びせた。
 暗黒の双眸は極光を放つが如くにも思えるほど・・・。
 それに怒りを強め唸るも・・・いつしかそれが消えていることに気付く。
 「どうしました?お怒りになられたのならば好きなだけ私を吹き飛ばせば良いでしょう。」
 笑顔を微かに近づける。
 「なら・・・そうする。」
 男の容貌に向けて手を翳し、そして放ち出す闇の弾丸。
 無明の根源が宙を疾駆した。
 だが同時にディスティアに生まれたのは・・・躊躇い、そして後悔。
 歯を食い縛り、心から掻き消す。
 闇は男に着弾し、その身を蝕んだ・・・・・・かに思えた。
 だが闇が晴れて視界が戻っても平然と立つ男、笑顔も変わらない。
 「・・・・・・。」
 動揺を生んだが・・・確かにそれを越える安堵。
 どちらにしても震えが浸食しディスティアは自らの動きを失った。
 ようやくノブを放し、扉を閉ざした男は、ディスティアの方へ踏み出した。
 拒む気持ちは少なからずあれど凍った身体には反映されぬ。
 そして拒絶を越えた虚ろの感情。
 その正体は・・・
 「改めまして、私はカルボナードというものです。・・・よろしくお願いいたします。ディスティア嬢。」
 そしてその細き腕は伸びて・・・その容貌が見下ろせるほどとなる。
 瞬間に熱が激しく駆け巡った。
 跪いたカルボナードは、ディスティアのその手に口づけを放っていた。
 彼女に湧き上がる焔。

 後書き
 謎の人物カルボナード登場編。
 どこかで見た名前だと思った方はこのシリーズの読み返しを・・・せぬとも構いませぬ。
 もろポルテ君の持ってた黒い薔薇の名前っす。
 こいつは人型になるのはずっと前から考えてました。
 最初は冷酷非情で冷静沈着な男の予定でしたけど、自称紳士のよく分からん男に・・・。
 実はポルテ君の配下(?)は全部で3人います。
 まだ名前しか決まってないやつもいますけど・・・。
 カルボナードは確か黒ダイヤのはず。
 にしても今回短いですね。すみません。
 でも昔の標準ですし・・・。
 
 それではこれで・・・。

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25163ナイスや!!ユア・ファンティン 2003/3/13 21:37:42
記事番号25156へのコメント


>冥王次宮――冥王に与せぬものの住まう宮殿。
>実質、冥王位を剥奪されたに等しいディスティアの巨城。

ユ:そう言えば,そうですね。(←オイ)

>
>足音は静かにこだまする。
>光も入らぬ闇の世界。
>ディスティアは歩みを進めていた。
>緩慢でもなく迅速でもない。
>淡々と、その呼吸に等しく連ねてゆくのみだ。
>表情は疲労と安堵で晴れ渡っている。
>音が止んだ。静寂が飲み込んだ。
>吐息を1つ流す。微かな笑顔が生まれた。
>一瞬の暗闇が晴れる。
>光が差し込んだ。
>そこで疑問が生まれ出す。
>突如に開いた扉に疑問を抱きつつ慎重に内部へ向かった。


ユ:かっこいいですね。

>
>「お帰りなさいませ。」
>声は唐突であった。
>驚き、胸部が激しく揺さぶられる。
>驚愕に満たされた双眸がそして映し出したのは・・・
>「あなた誰?」
>右方向、扉のノブを持つ1人の男の姿があった。

ユ:・・・・・・・・・(あきれつつも笑いを堪えている。)

>「私は・・・紳士です。」
>美しき少女は呆れ顔が溜息を吐いた。
>「どうしました?ディスティア嬢。」
>左右に分かれた長き前髪はまさしく光沢もない漆黒。対照的な細身の白肌に黒く輝く双眸。タキシードの白と黒の対比は気高さ強く持つ。
> 歳は20過ぎ、背丈は、長身のディスティアを包み込むほどに巨体。

ユ;とすると2メートル強ぐらいか・・・・・・

> 「あの・・・」
> 「どうしました?そんなに戸惑うことでもないと思いますが・・・」
> むしろ彼が疑問を抱くほどに思える。
> 「何で・・・あたしの部屋にいるんですか。」
> 声を振り絞り、ディスティアは言い放った。

ユ:それは必然な質問だねえ

>
> 赤で刻まれた幾何学模様の絨毯を敷き詰めた部屋、奥にはいくつかの棚。左脇の窓辺には天蓋付きの寝台。
> その比較的広い部屋に沈黙は走る。
> すでに長き時。不変の時間は緩慢すぎた。
> 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
> 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
> その対峙に生まれる既視感。
> それでもやはり張り詰めた水面に変化はない。
> と思う瞬間に・・・。
> 「・・・紳士ですから。」

ユ:はふ?

> 突如にその男から声が流れる。
> 確かに人・・・否、魔族を惹き付ける魅力を持っているが、それでも不快感の募ったディスティアは、
> 「・・・あなたの言う紳士はストーカーと同義語?」
> 憤慨を込めて言葉を飛ばす。
> 「まあそう怒らないでください。」
> 微笑みを浴びせた。
> 暗黒の双眸は極光を放つが如くにも思えるほど・・・。
> それに怒りを強め唸るも・・・いつしかそれが消えていることに気付く。
> 「どうしました?お怒りになられたのならば好きなだけ私を吹き飛ばせば良いでしょう。」

ディ:じゃ,お言葉に甘えて
ユ:スットプ,最後までいってから決めようね。

> 笑顔を微かに近づける。
> 「なら・・・そうする。」
> 男の容貌に向けて手を翳し、そして放ち出す闇の弾丸。
> 無明の根源が宙を疾駆した。
> だが同時にディスティアに生まれたのは・・・躊躇い、そして後悔。
> 歯を食い縛り、心から掻き消す。
> 闇は男に着弾し、その身を蝕んだ・・・・・・かに思えた。
> だが闇が晴れて視界が戻っても平然と立つ男、笑顔も変わらない。
> 「・・・・・・。」
> 動揺を生んだが・・・確かにそれを越える安堵。
> どちらにしても震えが浸食しディスティアは自らの動きを失った。
> ようやくノブを放し、扉を閉ざした男は、ディスティアの方へ踏み出した。
> 拒む気持ちは少なからずあれど凍った身体には反映されぬ。
> そして拒絶を越えた虚ろの感情。
> その正体は・・・
> 「改めまして、私はカルボナードというものです。・・・よろしくお願いいたします。ディスティア嬢。」

ユ:ポルテの部下その一?

> そしてその細き腕は伸びて・・・その容貌が見下ろせるほどとなる。
> 瞬間に熱が激しく駆け巡った。
> 跪いたカルボナードは、ディスティアのその手に口づけを放っていた。
> 彼女に湧き上がる焔。


ユ:・・・・。アプロス(もしくはセレス)命なのにねえ。

>
> 後書き
> 謎の人物カルボナード登場編。
> どこかで見た名前だと思った方はこのシリーズの読み返しを・・・せぬとも構いませぬ。
> もろポルテ君の持ってた黒い薔薇の名前っす。
> こいつは人型になるのはずっと前から考えてました。
> 最初は冷酷非情で冷静沈着な男の予定でしたけど、自称紳士のよく分からん男に・・・。
> 実はポルテ君の配下(?)は全部で3人います。
> まだ名前しか決まってないやつもいますけど・・・。
> カルボナードは確か黒ダイヤのはず。

ユ:カルボ君、貸してもらえませんか?
  ポルテと同階級で使いたいので。


> にしても今回短いですね。すみません。

ユ:面白いから良し
> でも昔の標準ですし・・・。
> 
> それではこれで・・・。

それでは・・・・・・
風華、新稿入ってます。

>

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25171Re:ナイスや!!D・S・ハイドラント 2003/3/14 11:41:41
記事番号25163へのコメント


>
>>冥王次宮――冥王に与せぬものの住まう宮殿。
>>実質、冥王位を剥奪されたに等しいディスティアの巨城。
>
>ユ:そう言えば,そうですね。(←オイ)
それに関する詳しいことは次回にでも明らかになるかと・・・。
>
>>
>>足音は静かにこだまする。
>>光も入らぬ闇の世界。
>>ディスティアは歩みを進めていた。
>>緩慢でもなく迅速でもない。
>>淡々と、その呼吸に等しく連ねてゆくのみだ。
>>表情は疲労と安堵で晴れ渡っている。
>>音が止んだ。静寂が飲み込んだ。
>>吐息を1つ流す。微かな笑顔が生まれた。
>>一瞬の暗闇が晴れる。
>>光が差し込んだ。
>>そこで疑問が生まれ出す。
>>突如に開いた扉に疑問を抱きつつ慎重に内部へ向かった。
>
>
>ユ:かっこいいですね。
ラ:かっこいいですか?
>
>>
>>「お帰りなさいませ。」
>>声は唐突であった。
>>驚き、胸部が激しく揺さぶられる。
>>驚愕に満たされた双眸がそして映し出したのは・・・
>>「あなた誰?」
>>右方向、扉のノブを持つ1人の男の姿があった。
>
>ユ:・・・・・・・・・(あきれつつも笑いを堪えている。)
謎の人物さん登場。
>
>>「私は・・・紳士です。」
>>美しき少女は呆れ顔が溜息を吐いた。
>>「どうしました?ディスティア嬢。」
>>左右に分かれた長き前髪はまさしく光沢もない漆黒。対照的な細身の白肌に黒く輝く双眸。タキシードの白と黒の対比は気高さ強く持つ。
>> 歳は20過ぎ、背丈は、長身のディスティアを包み込むほどに巨体。
>
>ユ;とすると2メートル強ぐらいか・・・・・・
かなり背の高い野郎です。
>
>> 「あの・・・」
>> 「どうしました?そんなに戸惑うことでもないと思いますが・・・」
>> むしろ彼が疑問を抱くほどに思える。
>> 「何で・・・あたしの部屋にいるんですか。」
>> 声を振り絞り、ディスティアは言い放った。
>
>ユ:それは必然な質問だねえ
まあそりゃあ。
>
>>
>> 赤で刻まれた幾何学模様の絨毯を敷き詰めた部屋、奥にはいくつかの棚。左脇の窓辺には天蓋付きの寝台。
>> その比較的広い部屋に沈黙は走る。
>> すでに長き時。不変の時間は緩慢すぎた。
>> 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
>> 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
>> その対峙に生まれる既視感。
>> それでもやはり張り詰めた水面に変化はない。
>> と思う瞬間に・・・。
>> 「・・・紳士ですから。」
>
>ユ:はふ?
必死に考えた結果の答え。
>
>> 突如にその男から声が流れる。
>> 確かに人・・・否、魔族を惹き付ける魅力を持っているが、それでも不快感の募ったディスティアは、
>> 「・・・あなたの言う紳士はストーカーと同義語?」
>> 憤慨を込めて言葉を飛ばす。
>> 「まあそう怒らないでください。」
>> 微笑みを浴びせた。
>> 暗黒の双眸は極光を放つが如くにも思えるほど・・・。
>> それに怒りを強め唸るも・・・いつしかそれが消えていることに気付く。
>> 「どうしました?お怒りになられたのならば好きなだけ私を吹き飛ばせば良いでしょう。」
>
>ディ:じゃ,お言葉に甘えて
>ユ:スットプ,最後までいってから決めようね。
まあこういう馬鹿は早めにトドメを刺しておくべきです。
>
>> 笑顔を微かに近づける。
>> 「なら・・・そうする。」
>> 男の容貌に向けて手を翳し、そして放ち出す闇の弾丸。
>> 無明の根源が宙を疾駆した。
>> だが同時にディスティアに生まれたのは・・・躊躇い、そして後悔。
>> 歯を食い縛り、心から掻き消す。
>> 闇は男に着弾し、その身を蝕んだ・・・・・・かに思えた。
>> だが闇が晴れて視界が戻っても平然と立つ男、笑顔も変わらない。
>> 「・・・・・・。」
>> 動揺を生んだが・・・確かにそれを越える安堵。
>> どちらにしても震えが浸食しディスティアは自らの動きを失った。
>> ようやくノブを放し、扉を閉ざした男は、ディスティアの方へ踏み出した。
>> 拒む気持ちは少なからずあれど凍った身体には反映されぬ。
>> そして拒絶を越えた虚ろの感情。
>> その正体は・・・
>> 「改めまして、私はカルボナードというものです。・・・よろしくお願いいたします。ディスティア嬢。」
>
>ユ:ポルテの部下その一?
そうなりますね。
冥王とかより遥かに強い可能性あり(ああ、戦闘力バランスの取れた世界を描きたいのに・・・)
>
>> そしてその細き腕は伸びて・・・その容貌が見下ろせるほどとなる。
>> 瞬間に熱が激しく駆け巡った。
>> 跪いたカルボナードは、ディスティアのその手に口づけを放っていた。
>> 彼女に湧き上がる焔。
>
>
>ユ:・・・・。アプロス(もしくはセレス)命なのにねえ。
まあ故ですし・・・。
そーいやアプロスには墓がない(いやむしろ魔族社会で墓つくる方が間違ってるかも知れませんけど)
>
>>
>> 後書き
>> 謎の人物カルボナード登場編。
>> どこかで見た名前だと思った方はこのシリーズの読み返しを・・・せぬとも構いませぬ。
>> もろポルテ君の持ってた黒い薔薇の名前っす。
>> こいつは人型になるのはずっと前から考えてました。
>> 最初は冷酷非情で冷静沈着な男の予定でしたけど、自称紳士のよく分からん男に・・・。
>> 実はポルテ君の配下(?)は全部で3人います。
>> まだ名前しか決まってないやつもいますけど・・・。
>> カルボナードは確か黒ダイヤのはず。
>
>ユ:カルボ君、貸してもらえませんか?
>  ポルテと同階級で使いたいので。
ええですよ(何)
>
>
>> にしても今回短いですね。すみません。
>
>ユ:面白いから良し
そうですか?
今回は今1つ物足りなかった気がするんですけど・・・。
>> でも昔の標準ですし・・・。
>> 
>> それではこれで・・・。
>
>それでは・・・・・・
>風華、新稿入ってます。
ではそちらにカルボナード君を入れておきます。
>
>>
>
それではどうもありがとうございます。

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25172――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:9話:黄昏を越えてD・S・ハイドラント 2003/3/14 16:09:40
記事番号25156へのコメント

「では・・・私はこれで」
熱に侵されたディスティアに反し、冷静なままのカルボナードは漆黒の細腕を静かに彼女へ差し出した。
ディスティアの震える腕は迷いつつも上昇してゆく。
そして熱が伝わりあった。
表情が熱い激流に浸食された瞬間に、カルボナードは消えていた。
溜息を吐く。
熱の余韻が寂しく消えてゆく。
曇り始めた。ディスティアは一時の休息を前にして、寂しさに包まれている。
息の音のみがその世界を揺らしている。

混沌が崩壊を始めている。
光が差し込んでいる。
彼女は目蓋を静かに開いた。
「・・・。」
睡魔の誘惑は不思議となく、布団を剥がしたディスティアは
静かな光が差し込んで、優しさに満たされている空間。
だが広い中、ただ孤独で静寂の音しか聴こえて来ない。
溜息の漏らした。安らかに晴れていた表情に雲が掛かる。
急激に重みを持った身体を引きずり、緩慢な速度で歩き始めた。
何かを待つが如くに・・・。
その思考を妨げる心はすでに希薄だった。

静かすぎた。
淡々と無機質な音のみが響く空間。
卓を囲う3人の表情はどれも一様に靄が掛かっていた。
空いた6つの席。虚像が見え隠れする。
「・・・ディスティア様・・・」
儚き静かな声・・・冷たい美声は蒸気を冷やしディスティアを濡らす。
寝耳に水――心に衝撃波を受けたディスティアは振動を止めると、昏き声にて、
「・・・何だ?」
静かに返した。
「・・・いえ・・・」
サファイヤはそれにて口を閉ざす。
ルビーはただ遠慮がちに箸を進めている。
静寂の時はひどく重かった。

その一歩とともに蘇る。
言葉達は鮮明だった。
むしろ輝きがあって届かない今にして最も強く生まれて来る。
振り払う。だが無限に続いて強き外壁もやがて崩れて来る。

――遡る時

「ディスティア様って半分神族なんだって」
「え〜それマジぃ?」
平和の陰には闇があった。
平和公園――解放された施設。階級に関わらず安らげる憩いの場にて・・・一組のカップルと思える男女の囁き合いが彼女には聴こえた。
「うんマジ、マジだよ。」
刃が彼女を抉ってゆく。
害意を持たぬ虚ろの刃が・・・。
「それでさあ、アプロス様が滅びたのも、ディスティア様の呪いじゃないかって・・・」
「へえええ。
そして――その言葉は・・・ディスティアを闇の淵に沈めた。
「でさあ、ディスティア様ってどうするのかなあ?」
「何が?」
脅えに微動した。
だが無情にも・・・。
「だってアプロス様のこと好きだったんだろ。滅びちゃって独り寂しいんじゃない?」
「さあ、あの馬鹿王子と一緒になるんじゃないの?」
「確かに姿は似てるからね。」
「アプロス様似なら誰も良いってね。」
嘲笑う。世界のすべてが自らを嘲笑っている。
無数の囁きはすべて自らを侮蔑するもの。

――それ以来ディスティアは光を嫌った。
――闇の中での宝玉達の優しさが彼女の支えだった。
――だが去った5つの輝き。
――巨大な喪失の中で得た輝きは・・・
――けして手放したくない輝き。

邪の浸食に耐えつつ一歩一歩進んでいった。

「正直言って、君の評判悪いんじゃない?」
「なっ・・・」
込めた怒りはそこで散った。邪悪な冷気に妨げられ、
「暴言暴力は禁止だよ。」
冷酷な笑みだった。
すでに闇に囚われていた。
以前の彼とは思えぬその形相に・・・。
「それで、僕に冥王位を譲って欲しいんだけど・・・神族のことは何とかするからさ・・・。」
邪悪な獣。
すべてを奪うもの。
彼女にはそう思えた。

記憶が途切れる。浅き過去であるのだが遠い果て・・・。
それ薄れていって悲痛が走る。
だが歯を食い縛り耐える。
暗黒の波を抑えつつ、いつしか扉のその前にいた。
緩慢に伸ばしてゆく細き腕。
希望と絶望への恐れが混ざり、希薄の激しき旋律が巻き起こる。
激しく刻まれる鼓動のみを訊いて、幻想の光と闇を見て、静かにそのノブへ手を伸ばした。
冷たき感触が手をつたう。
そして強く握り締め・・・た瞬間。
焦りが生まれる。
風――そして恐怖感。
飛び立つ鳥の如き。だが翼はない。
大地が近寄る。
体勢を崩し、光の中へ投げ出された。
だが終点は固き地ではなく、優しき熱の伝わる闇。
「・・・大丈夫ですか・・」
そこですべての疑問は氷解した。
「・・・カルボナード・・・さん・・・。」
扉が音を立てて閉まる。
2人の世界、冷たい美貌は限りなく熱を持っていた。
「僕がいなくてそんなに寂しいですか?」
その黒き瞳は慈愛に満ちている。冷たき笑顔も彼女を誘う。
だがそれ以上に心まで届く温もりがあった。
虚ろで伝えられぬ秘めた温もりのその光源に彼女は惹かれていた。
張り詰めた表情が自然に緩んでいく。
「分かりますよ。私のような優しい紳士を失ってしまうのは辛い。」
「なっ・・・」
軽い怒りが彼女を癒す。
「大丈夫ですよ。私はどこにもいきません。」
「・・・・・。」
沈黙のままその陽射しを浴びているのみ。
自然と笑顔が沸き起こる。
「・・・私があなたを護ってあげますから安心してください。」
漣(さざなみ)の如く静かで、太陽の如く巨大で優しいその姿。
「・・・私はいつでも現れますから・・・。」
そして彼女は夢から覚めた。
甘い現実というその夢から・・・。
そこには輝きが残っていた。
闇は不思議と晴れていた。

後書き
ディスティア編再び。
すっかり →カルボナード に・・・。
まあこれで良いんですよ。これで・・・。
次は冥王編かも知れない。
そろそろ本格的になっていくかも・・・。
結構ネタは決まってたりしますし後はそれを構築していけば・・・。
そういや名字変えるかも知れません。
それでは・・・

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25174・・・・・・・・・・・・(かなり複雑そうな顔ユア・ファンティン 2003/3/14 20:29:37
記事番号25172へのコメント


>「では・・・私はこれで」
>熱に侵されたディスティアに反し、冷静なままのカルボナードは漆黒の細腕を静かに彼女へ差し出した。
>ディスティアの震える腕は迷いつつも上昇してゆく。
>そして熱が伝わりあった。
>表情が熱い激流に浸食された瞬間に、カルボナードは消えていた。
>溜息を吐く。
>熱の余韻が寂しく消えてゆく。
>曇り始めた。ディスティアは一時の休息を前にして、寂しさに包まれている。
>息の音のみがその世界を揺らしている。

ユ:あああああああああああああああ(自壊気味)
セ:訳しますと『ディスティア、書く人違うのにこんなになんで似ているの?』だそうです。

>
>
>静かすぎた。
>淡々と無機質な音のみが響く空間。
>卓を囲う3人の表情はどれも一様に靄が掛かっていた。
>空いた6つの席。虚像が見え隠れする。

ユ:ああ、寝返った馬鹿ね
セ:それは、失礼なのでは?
  まあ私の子供達は、1人以外、フィブに逆らって滅ぼされてますが、
  生き残った子も、復讐が・・・フィブを殺すのが目的らしいですが・・・・
 (私は、望んでいませんが・・・・・)
ユ:そのために偽の忠誠を誓えるのは凄いと思うけど

>
>その一歩とともに蘇る。
>言葉達は鮮明だった。
>むしろ輝きがあって届かない今にして最も強く生まれて来る。
>振り払う。だが無限に続いて強き外壁もやがて崩れて来る。
>
>――遡る時
>
>「ディスティア様って半分神族なんだって」
>「え〜それマジぃ?」
>平和の陰には闇があった。
>平和公園――解放された施設。階級に関わらず安らげる憩いの場にて・・・一組のカップルと思える男女の囁き合いが彼女には聴こえた。
>「うんマジ、マジだよ。」
>刃が彼女を抉ってゆく。
>害意を持たぬ虚ろの刃が・・・。

ユ:言葉の刃か・・・・・・・

>「それでさあ、アプロス様が滅びたのも、ディスティア様の呪いじゃないかって・・・」

ユ:のろいで、基本的に人を(人じゃないけど)殺せないよ。

>「へえええ。
>そして――その言葉は・・・ディスティアを闇の淵に沈めた。
>「でさあ、ディスティア様ってどうするのかなあ?」
>「何が?」
>脅えに微動した。
>だが無情にも・・・。
>「だってアプロス様のこと好きだったんだろ。滅びちゃって独り寂しいんじゃない?」
>「さあ、あの馬鹿王子と一緒になるんじゃないの?」
>「確かに姿は似てるからね。」
>「アプロス様似なら誰も良いってね。」

ディ:貴様ら、あの馬鹿・・いや愚劣な奴とアプロス(セレス)のどこが似ている。

>嘲笑う。世界のすべてが自らを嘲笑っている。
>無数の囁きはすべて自らを侮蔑するもの。
>
>――それ以来ディスティアは光を嫌った。
>――闇の中での宝玉達の優しさが彼女の支えだった。
>――だが去った5つの輝き。
>――巨大な喪失の中で得た輝きは・・・
>――けして手放したくない輝き。


ユ:うちのディスの場合ケイトなんだけど、寂しい時にはあえない・・・・・・・
  セレス(人形)に会った時なんかは辛いから
  そこに来たカルボ・・・・・近くの光を手放したくないって感じの予定

>
>
>記憶が途切れる。浅き過去であるのだが遠い果て・・・。

ディ:あの人が逝ったのは遠くても記憶は薄れはしない
   だから痛むのか・・・・・・

>それ薄れていって悲痛が走る。
>だが歯を食い縛り耐える。
>暗黒の波を抑えつつ、いつしか扉のその前にいた。
>緩慢に伸ばしてゆく細き腕。
>希望と絶望への恐れが混ざり、希薄の激しき旋律が巻き起こる。
>激しく刻まれる鼓動のみを訊いて、幻想の光と闇を見て、静かにそのノブへ手を伸ばした。
>冷たき感触が手をつたう。
>そして強く握り締め・・・た瞬間。
>焦りが生まれる。
>風――そして恐怖感。
>飛び立つ鳥の如き。だが翼はない。
>大地が近寄る。
>体勢を崩し、光の中へ投げ出された。
>だが終点は固き地ではなく、優しき熱の伝わる闇。
>「・・・大丈夫ですか・・」
>そこですべての疑問は氷解した。
>「・・・カルボナード・・・さん・・・。」
>扉が音を立てて閉まる。
>2人の世界、冷たい美貌は限りなく熱を持っていた。
>「僕がいなくてそんなに寂しいですか?」
>その黒き瞳は慈愛に満ちている。冷たき笑顔も彼女を誘う。

ユ:(複雑そうな顔)・・・・・・・・

>だがそれ以上に心まで届く温もりがあった。
>虚ろで伝えられぬ秘めた温もりのその光源に彼女は惹かれていた。
>張り詰めた表情が自然に緩んでいく。
>「分かりますよ。私のような優しい紳士を失ってしまうのは辛い。」
>「なっ・・・」
>軽い怒りが彼女を癒す。
>「大丈夫ですよ。私はどこにもいきません。」
>「・・・・・。」
>沈黙のままその陽射しを浴びているのみ。
>自然と笑顔が沸き起こる。
>「・・・私があなたを護ってあげますから安心してください。」
>漣(さざなみ)の如く静かで、太陽の如く巨大で優しいその姿。
>「・・・私はいつでも現れますから・・・。」
>そして彼女は夢から覚めた。
>甘い現実というその夢から・・・。
>そこには輝きが残っていた。
>闇は不思議と晴れていた。

ユ:(さらに複雑な顔)・・・・・・・・・

>
>後書き
>ディスティア編再び。

ユ:ありがとうございます。

>すっかり →カルボナード に・・・。
>まあこれで良いんですよ。これで・・・。

ユ:昨日。ここレスした後、まとめたセレス(人形)に会ったディスティア編。
  大まかな所に過ぎ
  ・・・・ディスがショックで、寝込んでいる時現れたソラス(カルボに似た人)君が・・ディスの拠りどころみたくなって・・。
  →ソラスになってたり。
  偶然って、面白いってな感じですね

>それでは・・・


ユ:それと、ポルテ&カルボ・ママに一つお願い
  2人に『○○の君』の○○の称号を入れてください
  お願いします。
  それでは・・・・・・・

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25175Re:・・・・・・・・・・・・(かなり複雑そうな顔D・S・ハイドラント 2003/3/14 20:48:04
記事番号25174へのコメント

こんばんは
>
>>「では・・・私はこれで」
>>熱に侵されたディスティアに反し、冷静なままのカルボナードは漆黒の細腕を静かに彼女へ差し出した。
>>ディスティアの震える腕は迷いつつも上昇してゆく。
>>そして熱が伝わりあった。
>>表情が熱い激流に浸食された瞬間に、カルボナードは消えていた。
>>溜息を吐く。
>>熱の余韻が寂しく消えてゆく。
>>曇り始めた。ディスティアは一時の休息を前にして、寂しさに包まれている。
>>息の音のみがその世界を揺らしている。
>
>ユ:あああああああああああああああ(自壊気味)
>セ:訳しますと『ディスティア、書く人違うのにこんなになんで似ているの?』だそうです。
それだけディスティアは完成されたキャラなのでは・・・
>
>>
>>
>>静かすぎた。
>>淡々と無機質な音のみが響く空間。
>>卓を囲う3人の表情はどれも一様に靄が掛かっていた。
>>空いた6つの席。虚像が見え隠れする。
>
>ユ:ああ、寝返った馬鹿ね
そうです。豪華得点にあっさりつられて・・・。
>セ:それは、失礼なのでは?
>  まあ私の子供達は、1人以外、フィブに逆らって滅ぼされてますが、
>  生き残った子も、復讐が・・・フィブを殺すのが目的らしいですが・・・・
> (私は、望んでいませんが・・・・・)
まあうちの馬鹿王子も部下に滅ぼされかねませんけど・・・。
>ユ:そのために偽の忠誠を誓えるのは凄いと思うけど
まあそうですね。
>
>>
>>その一歩とともに蘇る。
>>言葉達は鮮明だった。
>>むしろ輝きがあって届かない今にして最も強く生まれて来る。
>>振り払う。だが無限に続いて強き外壁もやがて崩れて来る。
>>
>>――遡る時
>>
>>「ディスティア様って半分神族なんだって」
>>「え〜それマジぃ?」
>>平和の陰には闇があった。
>>平和公園――解放された施設。階級に関わらず安らげる憩いの場にて・・・一組のカップルと思える男女の囁き合いが彼女には聴こえた。
>>「うんマジ、マジだよ。」
>>刃が彼女を抉ってゆく。
>>害意を持たぬ虚ろの刃が・・・。
>
>ユ:言葉の刃か・・・・・・・
害意を持たぬは、ディスティアに向けられていないものというのと同時に、言葉は刃ではなく言葉の組み合わせとその他諸々で刃となるという感じで(何解説してやがる)
>
>>「それでさあ、アプロス様が滅びたのも、ディスティア様の呪いじゃないかって・・・」
>
>ユ:のろいで、基本的に人を(人じゃないけど)殺せないよ。
人を呪わば穴2つ・・・自分は殺せるけどね(いや何かどこかが間違ってる)
>
>>「へえええ。
>>そして――その言葉は・・・ディスティアを闇の淵に沈めた。
>>「でさあ、ディスティア様ってどうするのかなあ?」
>>「何が?」
>>脅えに微動した。
>>だが無情にも・・・。
>>「だってアプロス様のこと好きだったんだろ。滅びちゃって独り寂しいんじゃない?」
>>「さあ、あの馬鹿王子と一緒になるんじゃないの?」
>>「確かに姿は似てるからね。」
>>「アプロス様似なら誰も良いってね。」
>
>ディ:貴様ら、あの馬鹿・・いや愚劣な奴とアプロス(セレス)のどこが似ている。
・・・見た目(双子だしぃ)
それにすでに馬鹿王子じゃなくなってますし・・・。
>
>>嘲笑う。世界のすべてが自らを嘲笑っている。
>>無数の囁きはすべて自らを侮蔑するもの。
>>
>>――それ以来ディスティアは光を嫌った。
>>――闇の中での宝玉達の優しさが彼女の支えだった。
>>――だが去った5つの輝き。
>>――巨大な喪失の中で得た輝きは・・・
>>――けして手放したくない輝き。
>
>
>ユ:うちのディスの場合ケイトなんだけど、寂しい時にはあえない・・・・・・・
>  セレス(人形)に会った時なんかは辛いから
>  そこに来たカルボ・・・・・近くの光を手放したくないって感じの予定
ううむ。
>
>>
>>
>>記憶が途切れる。浅き過去であるのだが遠い果て・・・。
>
>ディ:あの人が逝ったのは遠くても記憶は薄れはしない
>   だから痛むのか・・・・・・
そですね。
>
>>それ薄れていって悲痛が走る。
>>だが歯を食い縛り耐える。
>>暗黒の波を抑えつつ、いつしか扉のその前にいた。
>>緩慢に伸ばしてゆく細き腕。
>>希望と絶望への恐れが混ざり、希薄の激しき旋律が巻き起こる。
>>激しく刻まれる鼓動のみを訊いて、幻想の光と闇を見て、静かにそのノブへ手を伸ばした。
>>冷たき感触が手をつたう。
>>そして強く握り締め・・・た瞬間。
>>焦りが生まれる。
>>風――そして恐怖感。
>>飛び立つ鳥の如き。だが翼はない。
>>大地が近寄る。
>>体勢を崩し、光の中へ投げ出された。
>>だが終点は固き地ではなく、優しき熱の伝わる闇。
>>「・・・大丈夫ですか・・」
>>そこですべての疑問は氷解した。
>>「・・・カルボナード・・・さん・・・。」
>>扉が音を立てて閉まる。
>>2人の世界、冷たい美貌は限りなく熱を持っていた。
>>「僕がいなくてそんなに寂しいですか?」
>>その黒き瞳は慈愛に満ちている。冷たき笑顔も彼女を誘う。
>
>ユ:(複雑そうな顔)・・・・・・・・
まあどんな相手でも今のディスには・・・。
>
>>だがそれ以上に心まで届く温もりがあった。
>>虚ろで伝えられぬ秘めた温もりのその光源に彼女は惹かれていた。
>>張り詰めた表情が自然に緩んでいく。
>>「分かりますよ。私のような優しい紳士を失ってしまうのは辛い。」
>>「なっ・・・」
>>軽い怒りが彼女を癒す。
>>「大丈夫ですよ。私はどこにもいきません。」
>>「・・・・・。」
>>沈黙のままその陽射しを浴びているのみ。
>>自然と笑顔が沸き起こる。
>>「・・・私があなたを護ってあげますから安心してください。」
>>漣(さざなみ)の如く静かで、太陽の如く巨大で優しいその姿。
>>「・・・私はいつでも現れますから・・・。」
>>そして彼女は夢から覚めた。
>>甘い現実というその夢から・・・。
>>そこには輝きが残っていた。
>>闇は不思議と晴れていた。
>
>ユ:(さらに複雑な顔)・・・・・・・・・
さあ果たしてカルとディスはどうなるのか(一応決まってますけど)
>
>>
>>後書き
>>ディスティア編再び。
>
>ユ:ありがとうございます。
ちなみにディスティア受難はこんなものではないです(おい)
>
>>すっかり →カルボナード に・・・。
>>まあこれで良いんですよ。これで・・・。
>
>ユ:昨日。ここレスした後、まとめたセレス(人形)に会ったディスティア編。
>  大まかな所に過ぎ
>  ・・・・ディスがショックで、寝込んでいる時現れたソラス(カルボに似た人)君が・・ディスの拠りどころみたくなって・・。
>  →ソラスになってたり。
>  偶然って、面白いってな感じですね
まあ私のカルボは随分前から(それこそ神魔書いてる時から)名前と姿は決まってましたけど、→ディスにしたのはほんの最近ですからねえ。シンクロ?

>
>>それでは・・・
どうもありがとうございます。
>
>
>ユ:それと、ポルテ&カルボ・ママに一つお願い
>  2人に『○○の君』の○○の称号を入れてください
>  お願いします。
>  それでは・・・・・・・
わかりましたぁまとめてレスして来ます(今)
>

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25188――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:10話:黄金色の急襲D・S・ハイドラント 2003/3/15 11:31:44
記事番号25172へのコメント

闇に灯る光の中には数多の輝き。
「よしよし、皆しっかり働くんだよ。」
2階の手すりから見下ろした少年の瞳には宝玉達の姿。
嬉々としており、その手には等しく箒。
「「「「はぁ〜い。フィブリゾ様ぁ」」」」
それは恍惚の表情にも見える。
だが果たしてその眼差しの先に見えるのは・・・。
見ることなく冥王フィブリゾは踵を返した。
生まれる光が満ち満ちて無邪気な笑顔を放ち出す。
そして闇に消え去った。

笑みはなお連なる。果てしなき河の如く。
海よりも壮大で優しい笑顔。
それ絶やさぬままに、扉のノブを静かに握った。
微かな冷気が伝わって来る。そして同時に・・・
(・・・誰かいるみたい。)
だがそれでもさして驚かず、ゆっくりとその金属突起を回転させた。
扉が光の中にめり込んでゆく。
平静な中で張り詰めた胸中。
だがそれを嘲笑うかの如く、不意に流れは急速に・・・。
軽い恐怖が駆け抜けた。
「うわああっ」
フィブリゾはその奔流に巻き込まれ、浮遊感をその一瞬に感じた。
風が鮮明に通り抜け、大地が接近する。
その迅さにすべての構成は消え去って、混濁するままに落下する。衝撃が迎え撃った。
「あいたたたた・・・」
苦痛を堪え立ち上がろうとすると同時に、そこに感じる影。
「フィブリゾ様ぁあん。」
そして上部からもさらなる衝撃・・・。
「・・・ガーネット・・・重ひ・・・」
生死を彷徨うかのような表情でうめき声を上げるフィブリゾに、
「ひどいですわフィブリゾ様。この美しく清く優しくか弱い私が重いだなんて・・・」
馬乗りとなったガーネットは嘆きの声を張り上げた。その度に重量が増すばかり・・・。
「だから・・・・いたたっ・・・止めろって・・・言ってる・・・だろ・・・。」
だが重圧とともにフィブリゾを脱力させ、魔力の動きを妨げているガーネット。
「あら、止めろだなんて一回も聞いてませんわ。それに何を止めろってことですか?」
平静と化した彼女の声はまさしく悪魔。
地獄に堕とされし真に邪なるもの。
「・・・がふっ・・・ぐふっ・・・」
すでに滅びの境地を感じし冥王。
「・・・この程度で滅びてもらっちゃ困りますわ。」
「ぎゃあああああああああああああああ」
フィブリゾに疾るそれは・・・電撃。
燃え上がり、叫び散らす。怨嗟を交えた滅びの歌を・・・。
「分かった・・・何が・・・望み?・・・」
ガーネットは邪悪に笑い。
「・・・冥王位をください・・・フィブリゾ様♪」
「・・・断・・・る・・・。」
苦しみの中、声を振り絞る。
「ふふふっ・・・物分りが悪い坊ちゃんですね。」
「ぎゃああああああああああああああああ」
再び疾る雷撃。
「ついでにその無駄なほど大きな力を奪ってさしあげますわ。・・・馬鹿王子殿下。」
歯噛みし怒りと屈辱に必死で耐える。
「君は・・・初めから・・・こんな狙いで・・・」
すると嘲笑いつつ、
「決まってるじゃないですか。普通ならあなたのような無能に喜んで付いて来る魔族なんていませんわ。あなた自身にも自覚があるんじゃないですか?」
「・・・無能・・・だと・・・」
なお怒りは剥き出される。
「そうですわ。何度でも言いますわよ。・・・無能さん♪」
「きっ君ぃ!!・・・ぎゃあああああああ」
その叫びもガーネットの雷撃に弾かれた。
「・・・あなたは私の愛したアプロス様に姿が似ているだけの失敗作。ふふっ、アプロス様への冒涜同然ですわ。」
なお邪を露として来るガーネット。
「違う・・・僕は・・・アプロスの・・・失敗作・・・なんかじゃない!」
「無能の言葉なんてうるさいだけです。」
「ぎゃああああああああああああああ」
蝕まれる精神。その中での自らの無力さ。
(・・・何で・・・僕は・・・ガーネットにも勝てない?)
だが答えのなき問い。永遠の空白。
だがその答えでなくとも・・・
「分かった・・・僕が無能じゃないことを証明してやる。」
力強く・・・抵抗した。
「ふふふっ、あなたのような他人を陥れるしか能のない馬鹿に何が出来ると言うのですか。」
「馬鹿は君の方だろ・・・僕が邪神を・・・そして神族全体を滅ぼしてやる。」
瘴気がそこにて生まれ出でる。
「どうした・・・電撃は終わりかい?」
ガーネットはフィブリゾの頭部の後ろで震えていた。
「くっ・・・」
その少女は歯を食い縛り、
「その約束絶対ですわよ。」
憤慨を放つ。
「・・・当然だよ。」
闇の中での少年の声は強く優しかった。
「だから・・・さっさとどいて・・・」
・・・ガーネットは言われるままに立ち上がった。
そして遅れて立ち上がったフィブリゾは、
「近日に邪神狩りをおこなう。それが終わったら家族旅行だ♪」
輝く、いと高き声に・・・
「・・・分かりました。」
ガーネットは煌いていた。
「あっ後で今の分、10倍返しだから・・・」
「・・・えっ・・・」
それも一瞬後には暗雲の中へ・・・。

後書き
こんばんはラントです。
フィブリゾ×ガーネット編?
ガーフィブだとガーヴとフィブなので、このカップはフィブネットと略しましょう(待て)
にしても最初はもっと可愛いこと強請るはずだったのに・・・。
まあシリアス化(?)して、しかも次回にうまく繋げられたから良いとするか。
そろそろ邪神についても詳しい説明が出るかも知れないです。
次回は邪神狩りの序章か神サイドです。
邪神狩りがまず最初のイベント、次に大きな波があってその次の波で最終回になるかと・・・。
ううむ越えるかも知れないなあ神魔。
だってこっちの方が多分話大きいし・・・。
ちなみに降魔と書いてありますけど降魔戦争とは関係ない話です。
モラトリアム=猶予期間ってことで降魔に至るまでの話です。
でも降魔編はないです。

それでは〜

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25191――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:11話:黄昏と暁の狭間D・S・ハイドラント 2003/3/15 14:11:55
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静かな蒼穹。
不変の白光は聖なるかな。
広大なる抱擁は無限の大地を優しく包む。
慈愛の眼差しよ。永遠に注げ。

小さき白の焔が天に浮かんで、即座に消される。
重圧が世界中より押し寄せて、力に歪んだ心が大河を生み出す。
見ている世界。映されている世界。
赤く燃えた、黒く染まった。
嘲笑うもの達、踏み躙るもの達。
世界が真に眠るその日に心を震わせていたのも過去の虚像。
儚き脆き風が駆けて来る。
懐くのか・・・。
涙が心の内で流れた。
優しく頬を打ち、激流に拍車を掛けるその中で心を惑わす、愛でられしもの。
「・・・俺は・・・魔族失格なのか?」
天空に浮かぶ大地より、遥かな天を見上げた男はいつしか呟きを上げていた。
美しき空は無邪気過ぎた。
永遠を信じるあまりの哀れさ。
男は惑っていた。
その猫を殺すことを・・・。
世界という名の1匹の猫を・・・。
「・・・忌々しい神と同じだとはな。」
涙が眼の側まで押し寄せ、奔流に耐えるまま時は流れる。
沈黙が続く中、幾度と思考は循環されていた。
儚き脆き風が駆けて来る。
優しく頬を打ち、静かに微笑む。
「・・・無理だ・・・無理だ・・・」
嘆いた。言葉となった。
惑わされていたとしてもその猫は殺せない。
焔が身を焼く。呪われし焔が・・・。
赤黒く燃え盛り、葛藤を巻き起こした。
すべてが敵と化す異端者。
海王将軍オリオンは・・・闇と光の狭間の中で・・・。
「・・・海王様・・・俺は・・・」
放った言葉。
だが――。
「海王様がどうしたの?」
急速に世界は変貌を遂げた。
儚き白光すら熱き熱線。
激流も焔もすべて幻と化して、
「うっウシャナ・・・お前・・・」
震える声を紡ぎ上げた。
「・・・アンタさっきから何してるの?」
焔が灯る。優しくとも烙印たる焔が・・・。
「いっいつからだ・・・」
視線すら定まらず自らが哀れ。
「アンタの独白モドキなら最初から全部よ。」
衝撃にオリオンの心は亀裂を生じた。
「ぐっ・・・」
真に今、すべてが牙を剥く。
曇り始める将軍の顔。
「・・・あっ海王様に全部言って来るね。」
「・・・止めてくれ。」
だが声も聞かずに海王神官ウシャナは駆け出していた。

――結局、海王からの咎めはなかった。

――オリオンの上司が部下に厳しい獣王や覇王でなかったのは不幸中の幸いであろう。

◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
「マナディール襲撃・・・ですか。」
光に満たされし闇の間。
常闇の天頂に向かい合う2人。
巨大な台座の上に立つは白衣を纏う金髪赤眼の少女。
彼女と対峙するは禍々しき黒衣を纏う、黒髪で黄昏色の双眸を持つ若き巨漢。
「そうです。神聖帝国ほどのものを崩壊させれば魔族どもを誘うことが出来るでしょう。」
少女は冷淡に返した。
竜神ルナには見られぬ邪気を持って・・・。
「ですが・・・マナディールは我々に強く信仰を・・・」
男が呟きに等しき声を上げれば、その震える容貌に向けて、
「どうせ、邪神のおこないです。我々に問題はありません。」
強き眼差しを浴びせた。
「ですが・・・」
戸惑うのは虚ろの御神であったもの。
「黙りなさい邪神王!」
母の力は絶対なりてアルティアは言葉を奪われる。
邪気に満ちた彼女でもそれは絶対的であった。
「人形に過ぎないあなたが私に口答えしないでください。」
哀れみ、沈黙の中でのアルティアの眼差しはそれであったのかも知れない。
「・・・あなたは私に従うだけで良いのですよ。」
微かに面影を残していようとも、
「・・・だから蹂躙しなさい。この脆き世界を・・・。」
狂気はすでにけして消えぬ。

――邪神、忌み嫌われしその名。

後書き
オリオンとルナを対照させる(?)ことに果たして成功させられたかな編。
アルティア虚ろの御神から邪神王に・・・。果たして昇格したのか降格したのか・・・。
ちなみに他の御神さんはもっと良い感じの神達の上に付いてます。
運命神とか守護神とか工業商業の神とか死神とか・・・。
誰がどれなのかは結構簡単に推測出来ると思います。(これはクイズだ!賞品ないけど・・・。)
これはアルが半魔族だからでしょう。
あっ神族と言っても、元が竜や竜人ですので、一応精神体な御神とは全然別物です。
本当の意味で神なのは、竜神と5人の御神と鋼の創造主だけです。鋼の創造主は出ないと思います。

それではこれで・・・。

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25211――ハイドラント式1/100スケール降魔戦争Moratorium――:12話:会議は端折る面倒だし(おい)D・S・ハイドラント 2003/3/16 10:31:56
記事番号25191へのコメント

闇が燃えている。
絶望の歌を奏でつつ静かに燃えている。
汚されてゆく。
暗闇に映える白き大地は汚されゆく。
邪な宴は始まっていた。
暗夜を駆ける影達は、嘲笑っていた。
それが大陸『眠る竜』を統べし神聖帝国マナディールの最期となる。
闇が燃えていた。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
「昨日の夜、マナディールの首都のマナサイトが『魔族』に滅ぼされたらしいよ。」
厳粛な空気のその中で、少年は笑顔で述べ,
「おっおい・・・まさかあの野郎ども・・・」
「ガーヴ、私語禁止。」
見やる男から生まれた声を叩き伏せる。
荒涼とした大地。無風の世界。
永遠の黄昏が在りし隠り世。
王を失った座に従い立つ少年と、彼に対峙し直立不動の4人の男女。それが今の構図であった。
「だから今日は、腹心会議をおこなうよ。」
そして焔が灯り始める。

――長き時間の後、虚ろな砂時計は秒刻を終えた。
「明日、A班ガーヴとディスティアでマナディール、B班ゼラスとゼロスで邪の神殿、C班オリオンとウシャナとノーストとルビーで百魔の森・・・これで良いね。」
フィブリゾが声を上げれば、全員一致で頷いた。
 
――世界に真の黄昏が訪れる。
 
――君は腹心の中では僕の次に強いはずだよ。
――純粋な力だけじゃなくてね。
――だから一番危険性の高いマナディールにいくんだ。
――世界の核から力吸い上げれば邪神相当強くなるはずさ。
――ディスティアは念のためだけどアルティアがいた時に使えるからね。

蘇って来る言葉。
(あいつ・・・一体・・・)
その虚像の中で少年は巨大すぎている。
そのさらに過去のものとは明らかな変化。
それでもガーヴは闇に堕ちていった。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
闇夜は温かかった。
「明日、・・・邪神狩りですか。」
沈黙の中に優しき波紋が揺れる。
「なっ・・・なぜそれを・・・」
振動はディスティアにそのまま伝わった。
「私はあなたのことならば何でもしってますから・・・。」
「それってストー」
言い掛けた瞬間、彼の言葉は颶風の如く、
「紳士と言ってください。」
それでいて落ち着きに満ちていた。
「・・・やっぱり同義語?」
だが意に介した様子はなく、
「気を付けてください。あなたはまだ滅びてはいけません。」
そしてその唇を近づけてゆく。
言葉に違和感を覚えるも、ディスティアはそれに重なった。
カルボナードの温もりが奔流する。
甘美な流れを受け入れつつも、彼に強く抱き寄った。
そしてその熱に浸食されたまま、カルボナードとの別れを迎えた。
宴の跡は静寂すぎた。
◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆
暁であろうともそこは黄昏の中。
「・・・ルビーと・・・ディスティア遅いね。」
沈黙が流れている。
寂れた空間は悲痛を誘うのみ。
魔竜王ガーヴ、獣王ゼラス、獣神官ゼロス、海王将軍オリオン、海王神官ウシャナ、覇王将軍ノースト彼らは一様に光明を待つ。
それぞれの思い違っても・・・。
「ああ遅え!」
苛立ち混じりの声が上がるが、冷たい沈黙に消え去るのみだ。
果ては見えぬ。昏き地に、未だ暁が来ぬと同じように・・・。
絶望にも等しき長き時。
無限にも等しき遅き時。
闇だけが永遠に生まれるその中で、彼らは待ち続けた。
冷気が身を蝕む。
寒気が心を震わす。
だがそれでも光は訪れた。
黒き太陽の中に映し出される1つの影は・・・
「ルビー!」
感極まってフィブリゾは声を上げた。
その勇ましき姿は接近し、
「冥王フィブリゾ様、ディスティアの命令拒否を伝えに参りました。」
冥王フィブリゾは凍てついた。
沈黙の色が一層張り詰める。
「ふざけんじゃねえ!」
だがその中で上がった焔は・・・

後書き
今回はタイトル通り会議シーンをカットしました。
しっかり書いた方が良かったかなあ。
でも正直どんな感じか分かんなかったし・・・。
ストーリーの方は次回でまあ何かあって、その次くらいには邪神狩り編にいけそうです。
それがまあファーストの大イベントですね。
とりあえず凄惨な光景を出来る限りリアルに書くのを目標にでもしましょうかねえ。(おい)
あっ御神当てはめクイズまだ継続中です。

今回内容皆無ですみません。
それでは〜

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25235改名表明颪月夜ハイドラント 2003/3/18 12:34:23
記事番号25211へのコメント

3月18日
本日を持ちまして
私はここに改名することを誓います。
D・S・ハイドラント
から
颪月夜ハイドラント


これは
「おろしつくよのはいどらんと」
と読みます。

大変読みにくいですが
「んなもん読めるかコラ」
「わしをなめとんのかボケ」
などと言わず、
よろしくお願いいたします。

それと・・・降魔止めてぇ〜!!!!!
まあ書きたくなるまでは休載することにします。
まあ本日中に復帰もありえますし(おい)
私なんて単純なものですし・・・。

それでは・・・。