◆−出来損ないの夢−むくぅ (2003/3/6 20:45:29) No.25034
 ┗沈める久賀(待て)−のりぃ (2003/3/6 23:46:00) No.25040
  ┗上昇するむくぅ(何かが間違っている)−むくぅ (2003/3/8 14:34:08) No.25074


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25034出来損ないの夢むくぅ E-mail URL2003/3/6 20:45:29



 投稿小説に顔を出すのは実に何ヶ月ぶりかになりますむくぅです。




 もはや初めましての方のほうが多いような気がぷんぷんしますが、それでも悪あがきのようにお久しぶりですと言わせていただきたいと思います(礼)
 HPの方では何気に改名してますけど、こっちではこれで通させていただきたいと思います。
「……それで、しっかりかっきりオリジナルなんかい。あんたわ。」
 げふっ(吐血)
「クリスマスに投稿したのは確かにスレイヤーズだったけど、それだってオリキャラばっかだったし。」
 げごふっ(さらに盛大に吐血)
「それにこれ受験(今日)終わってすぐ書いたからなんかいろいろおかしいし」
 …………(ほぼ死亡)
「それに……そういえばあんた。ちなみに夏からほっぽっといてるスレの長編……」
 えーっとッ! むくぅを知らない方でむくぅのスレイヤーズを読みたいと言う親切な方は、著者別もしくは過去記事でご覧になっていただければ幸いですッ!(滝汗)
「(がっ! とむくぅの頭引っつかみ)……よーするに、全然書き進んでないわけ?」
 ……………ハイ。そーです。リナ=インバース様(涙目)
「ふーん……ところであんた、触れたものを粉々に破壊する呪文、って知ってる?」
 それってもしかしてブラスト・ウェ……(黒魔波動)

「ま、潰れたトマトのよーになったむくぅはほっておくとして!
 えーと、今回はオリジナルらしいです。暗いんで苦手な方はひたすら注意して下さい。
 しかも前書いた短編の続きみたいなもので、まー話的にはあんまつながってないんだけど、ワケ解らんって方は著者別の『亜麻色の髪の剣士』参照のこと。
 余計わけがわからなくなることうけあいです以上。
 それじゃあたしはこれで」


(退場)


 ……ちなみに、前回(亜麻色〜)同様、BGMはドビュッシーの『夢』で読んでいただければむくぅがちょっと嬉しいデス(笑)
 と言うことで。
 出来損ないの夢。よろしければ、最後までお付き合いください(礼)



===================================









 ……みなはあの男のことを褒め称えるが、私は正直言ってあの男のことが大嫌いである。
















出来損ないの夢













 金の眼に、青い瞳の少年……
 纏う衣服は旅の厳しさを感じさせるものだった。




 彼は数日の滞在を村長(むらおさ)に頼み、そして許された。
 私たちの村は小さく、辺りには魔物、と呼ばれる人を食う化け物が蔓延(はびこ)っているのにも関わらず剣士もろくに雇えぬ村で、彼のような旅人は本来警戒すべきものなのだが、彼はわりかしすんなりと村に受け入れられた。
 彼が少年だった、と言うのも一つの原因なのだろうが、実のところ、『外』――村の外と久しく交流の絶えていた辺境の村では、旅人が珍しかった、という方が本当のところだろう。
 彼は村のものから引っ張りだこで、『外』の話を沢山してくれた。私も気にしない振りをしながら聞き耳を立てていたが、彼が話すのは夢のような外の話というよりはむしろ、町で暮らすことの難しさや、魔物の恐ろしさなどだった。
 私の家に宿を取った彼は、人を探しているのだ、と言った。
 彼が見せてくれた、首飾り(ロケット)の中に入っていた『探し人』の絵は、騙りを防ぐための剣士の肖像画(え)で、それは私たちがよく知る、有名な剣士のものだった。
 片刃の大剣に細身の剣、二本の剣を持った青年の絵。
 その人物について。


「この人は、僕を救ってくれる唯一の人なんです」


 彼はそう言った。
 救う、と言うその意味が――彼が何から救われたがっていたのか、私には解らなかったけれど。




「――さん、って、美人ですよね。
 どうしてこんな村に?」
 別の日――彼が村に来た、次の――その、また次の日ぐらいのことだったと思う。
 夕飯の時分だっただろうか、彼がそう呟いたことがあった。
 まるで小さな村には不細工しかいないような口ぶりだな、と、からかうと、そういうわけでは、と彼はあせった。
 その彼の様子に笑う反面、美人、などと言われたことが初めてだったので照れくさくもあった。
「そうだな……私は村から出たことがないんだ」
 私が言うと、彼はどうして、と驚いたように言った……外の世界を渡り歩いている彼にとって、私のような存在は信じられなかったのだろう。
「怖いからさ。
 ……君も言ってたろ? 外には魔物がいるって」
 でも、と反論しかけた彼に微笑みかけて、私はあることを思い出していた。
「それに……私の両親は、魔物に殺されたから」
 言った瞬間、彼は――
 びくりと、身を震わせた。
 それはまるで彼が――私の両親を殺してしまったような、そんな顔で。
 ……私が小さいときだったから、これは後から聞いた話なのだが。
 両親は町々を渡り歩く商人だったのだそうだ。
 その時は、私はこの村に預けられていて二人だけが出かけて、それで……魔物に殺され、死んだのだという。その所為もあったのだろう、私が村を出たことが無いのは。
 私は彼がどうしてそんなに動揺しているのか理解しないままに、肩をすくめて笑う。
「でも、この村だけで暮らしている、というのもいいものだよ。
 村の外に出たことがあったら……旅人の話を聞く楽しみがなくなるだろ?」
 彼はきょとんとした顔をした後、それはそうですね、とまた笑んだ。その笑みは先ほどよりもぎこちなかったが、また別の話が始まると、その違和感も無くなっていった。











 彼がいた数日間は、とても楽しく。
 ……あっという間に過ぎ去って、夢のようとは、あんなことを言うんだろうと。
 でも。











 ……魔物だ。
 その叫びを聞いたのは……彼が来てから、一週間ほど経った頃だったろうか。
 よく覚えていないが、私がちょうど目を覚ました時だった――いや、その叫び声に目を覚ましたのかもしれない。
 彼は、と姿を探すが、いない。外に出れば、村の者たちは避難を始めているところだった。
 村の男たちが松明を掲げて『魔物』を広場の方に追いやっているのが見える。
 ――彼の姿は、見当たらない。私には気にしている暇も無かった。
 子どもたちをなだめて、村の外に出したその直後、悲鳴が聞こえた。


 ――地面が、血に濡れていた。


 一人が魔物の爪にかかって、倒れていた。
 体の下からじんわりと血だまりが広がっていって――遠目でも、その男が死んだのだと解った。
 ……頭の中が混乱して、わけが解らなくなって――


 気づけば走って、男の傍に寄っていた。


 化け物は少し遠くで暴れていて――そいつはもう松明の火も恐れなくなり、男たちは、既に他のものたちが逃げ出したのを確認すると、自分たちも村の外に出ていった……私のことには、魔物の陰になっていて見えなかったようである。

 ……男は完全に死んでいた。

 足ががくがくと震えて、どうしてこんなところに走って来てしまったのだと、どっと後悔が訪れる。
 『それ』はこちらに気づくと、ずるずると足を引きずるように近寄ってきた。
 ……立てない。
 逃げられない、のだと思ったその時、私は。
 魔物の方を見つめ、そして――


 ……そして私は……あることに気づいた。


 魔物の首に、引っかかるようにまとわりついていた、金色の欠片――鎖。


 それは……見覚えのある、モノだった。


「ッ……」




 彼が着けていた……彼の『探し人』の入った首飾り(ロケット)。













 それと同じもの……?













 『魔物』は迷うように立ち止まる。
 ……魔物?
 乾いた笑みが浮かぶのを感じた。




 魔物って……何だ?




 へなへなと、へたり込む。
 彼が……
 彼が、魔物だった、とでも言うのだろうか。
 ……魔物は獣と一緒だと、聞いていた――そう思っていた。
 なのに。
 これは……何の冗談なんだと。


 一歩、『彼』が足を踏み出した。
 唸り、前足を振り上げる。
 逃げる気も……起きなかった。ただ頭の中が空っぽになっていくのを感じた。
 爪が。
 ……爪が振り下ろされる。と。
 そう思った時――




 ッ……ゅぅ……っん……




 風の鳴る音がした。




 その日は空はとても晴れていて。
 ――『それ』が剣が空を裂いた音と気づくのに、私は数秒かかった。




 ふわりと、踊るように、その青年は一歩、足を踏み出した。




 『彼』が動きを止める。




 震えるほどの殺気に気づいたのだろう。
 探るような唸り声――私は私の横をすり抜けていく青年を見つめて……これは何か、夢なのだろうかと考えた。まるで悪い冗談のような夢なのかと。




 ……茶髪――
 否、亜麻色の髪。構えるのは二刀――片刃の大剣と細身の剣。




 私たちはその男を……剣士に与える最高の称号を以ってして呼ぶ。












 『剣聖(セイント・ソード)』と――












 そして、彼の探し人――『彼を救ってくれる』唯一の人間……だ。


 剣士の足取りは優雅とさえ思えた。一歩一歩『彼』へと近づく。その表情は私からは見えなかった。
 『彼』は動かない――動けない、のかもしれない。
 圧倒され、息も詰まるような空間が、ここに在るような気さえした。
 そして……




 一閃。
 散る血しぶきが、地を染める。
 対照のように空は青く。
 酷く記憶に残る光景だった。













 その後私は村長にこってりと絞られた。
 どうして一緒に避難しなかったのか、と。
 ……私がいないことに気づいた村の人間は、ほとんどパニックになって私を探していてくれたようである。




 ――その日のうちに、死者たちの埋葬は行われた。




 私が見た村の男のほかにも、女性が二人、子どもがひとり――魔物に、殺されていた。
 小さな村では、みな知った顔で、特に子どもの方は……彼とよく話していた子だった。
 『彼』はあの後……元の、と言っていいのかどうかは解らないが……少年の姿に、戻っていた。
 剣の傷跡はあたかも魔物の牙と爪にかかったかのように生々しく残っていて。
 ……彼は、『魔物の犠牲者』として、死んだ村の者たちと、一緒に埋められることになった。








 剣士は『偶然』村を通りがかったところで、村の人間に助けを求められたらしい。
 埋葬を遠目に見ながら、私は剣士に、『彼』は貴方を探していたんですよ、と言った。








「知ってるよ」
 と剣士は疲れたように言った。
「……僕も彼を探していた」




「救いを。
 ――求めていたんです。
 貴方は己を救ってくれるたった一人のヒトだと」


 青い空に――雲が流れる。
 風はとても強くて。
 耳が痛くなるほどで。
 私は――


 ……私は、埋葬から視線をはずして、剣士を見た。
 女とも見えるが、男であることは確かだ。亜麻色の髪を三つ編みにしている。
 髪と同色の――いや、それより少し色の濃い、暗い瞳は、まっすぐにどこかを見ていた。
 私でも、埋葬の場でも、空でも地面でもない。
 『どこか』――どこなのかは、私には察しようもなかったが。
「……僕は剣士だよ?」
 それは奇妙な笑みで――泣いているようにすら見えて……
 無力なものの笑みだ。この剣士の笑いは。

 ――強いくせに。

「彼を救うなんて……出来やしなかったさ」
「ですが彼はそう言っていた」
「……」
 剣士は眉を寄せて黙した。
 私が何を言いたいのか……理解(わか)らないのだろう。
「……ひとつだけ、聞かせて下さい」
 頭の中が……暗く淀んでいくのを感じる。
「彼を探していたと言いましたね。
 あなたは。
 人の姿の彼に会ったら――どうするつもりでしたか……?」
「斬ったさ。
 ――僕にはそれしか出来ない」


 ――


 何故だか、解らない。






 その時、頭の中が真っ白になった。
 ……何故だか本当に、解らないが。







 この男の全ての言葉に腹が立って。












 ぱんっ。












 私は思いっきり、剣士の頬を叩いていた。




「彼は……ッ……笑っていたんだぞ……!?」
 ……彼の笑みと、この男の笑みはあまりにもかけ離れすぎていて。







「あんたが、救ってくれると言っていたんだぞ……ッ!」
 希望に満ちた彼の笑みと、絶望しか見ようとしないような、彼を殺したこの男の笑みが。
 あまりにも違いすぎて……!








「……君も、死にたがる馬鹿かい……?」
 それは静かな。
 ――それはとても静かな顔で。私にはまたそれが気に食わなくて。
 紅くなった頬を押さえながら、彼はふと呟いた。


 ……まだ笑うか。この男は。


「何を――言っている……」
「僕は違うし、彼も違った。
 けど僕は彼を殺した。
 それ以外に方法が無かった。
 あるいはあったかもしれない……だけど、僕は『それ』を知らなかった。探している暇も無かった」


 ……何なんだろうか。この男は。
 後ろ向きな言葉ばかり口にして。
 ……そのくせ私にはそれに反論する術が一つも無くて。




「でもッ……!」
 悔しすぎるじゃないか――そんな。




「彼を救う方法は……他にあったのかい? 君はそれを知っているかい?」
「あれは……救いじゃない……!」




 ――呟くことが精一杯の反論で。




「……あれが救いであるものか……」


 ――それ以外に私に言うべきことは……
 言えることは、なかった。だが。













 何も言えないなんて……悔しすぎるだろうに。
 ……こいつは彼を、殺した男だというのに。













 剣士は数日滞在し、やがて村を出て行った。
 ……私は何か罵声でも浴びせてやろうかと思っていたが、結局何も言えないままにあの男はいなくなっていたのだ。
 彼がいなくなった我が家が妙に広く感じたのは気のせいではなく。




 空が空色ではなく、真っ青に染まる風の強い日。
 私は彼と同時にあの魔物の姿と――、剣士のあの腹の立つほどに綺麗な姿を思い出す。
 魔物は世界からいなくなり、『剣聖』は世界を救った男の二つ名となり、村の人々は時々、思い出すように彼の名を出し話の種にしている。
 ……私はそれがたまらなく気に入らない。








 ……みなはあの男のことを褒め称えるが、私は正直言ってあの男のことが大嫌いである。











===================================


 スクロールバーが何故かちみっこくなってますけど、気にしないようにお願いします(遠い目) ただ単に改行がやたら多いだけですので。
「……それで? 肝心のスレイヤーズは……」
 いや……なんか別の話書いてます。スレイヤーズですけど。
「…………駄目だな。お前。生命体として(ため息)」
 そこまでッ!?(汗)
「むしろアメーバ以下か?
 いや、そこまで言ったら失礼か。
 ……そう、あえて言うなら……
 アメーバ未満だな(どきっぱし)」
 『失礼』って、アメーバに失礼なんですかーッ?!(汗/鳥肌)
「当たり前だろうが。このバクテリア未満」
 うう、扱いが上がっているんだか下がっているんだかびみょーに解らない……(涙)
「で、結局俺は此処に出てきているわけだが、お前が書く上では俺は出てくることがあるのか?」
 さァ。それはなんとも……ないんじゃないでしょうか。リナとガウリイと魔族とオリキャラが出るだけでてんてこ舞いだって言うのに、魔剣士さんと姫まで出したらそれこそキャラ数がえらいことに。
「…………成る程。
 で、結局最近は用意がいいわけか? 逃げる準備もしておいて」
 えぇ(クラウチングスタート体勢<体育2)
「じゃあ、地の果てまで行き着く前に絶対追いつく。十秒待ってやるからさっさと逃げろ」
 いや、ご親切にどうも(汗笑)

 それではでは、むくぅでした(礼) 次はきっとスレイヤーズで出れるといいなぁとか考えつつ逃走しますッ!




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25040沈める久賀(待て)のりぃ E-mail URL2003/3/6 23:46:00
記事番号25034へのコメント

 ……いや、レスタイトルに深い意味は無いです。ただ単に、ドビュッシー名曲シリーズのようでしたから、ちょっとレスタイトルも曲名からパクって見たりして(をい)
 そんなわけで、お久しぶりですむくぅさん。久賀みのることのりぃです(礼)
 ……って、忘れ去られてたらどうしよう(滝汗)



 こういう話をシンプルにさらっと書き上げられるのって結構凄いと思います。
 余白が多いのも、効果的というか、ある意味より深くなったというか(謎)
 初めと終りとに同じ文が入るのもピシッとしていいと思いますし。
 あ、前作とのリンクもきっちり発見してきましたよっ!慌てて著作別を漁ったんですけど(汗)
 個人的には、

>「……君も、死にたがる馬鹿かい……?」
 
 以下の会話がお気に入りです。
 
 

 では短いですが今回はこの辺で。
 ……何かレスって、長ければ長すぎるで、短いなら短すぎるで何となく悪い気がするのは気のせいでしょうか(待て)
 それでは、最後ぐらいはテンション上げていきましょうっ!池の中に沈みつつ再開を祝して撤収ぅぅぅっ!(待たんかい)

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25074上昇するむくぅ(何かが間違っている)むくぅ E-mail URL2003/3/8 14:34:08
記事番号25040へのコメント


 ドビュッシー曲だっつーのに全く別の方向から攻めてみた(何を)むくぅですっ! のりぃさん、久我みのるさん? どちらで呼んでいいのやら解りませんがどうもこんにちはっ!(礼)
 いや、忘れ去ってませんのでご心配なくッ!


 ……自分で気に入ってる話なので、褒められるとつけ上がりますよ?(待っとけ)
 ドビュッシーシリーズならぬ意味不明なモノローグシリーズ、続いているような続いていないような感じで結局続いているような(意味不明)

>気に入っていただけた会話

 あのセリフを入れたら会話のテンポと話の筋が崩れまくり、慌てて修正したと言ういわくありげなセリフです。このセリフの所為で大部分の設定がうやむやに(汗)


 何やともあれよく解らないテンションで繰り広げてきたレス返しでした! ご感想どうも有り難うございました♪ 短いなんてことは無かったですッ!
 それでは上昇し続けそろそろ大気圏突破(爆)、戻ってきたのはいいけれどこのままどこかに消えていきそうなむくぅでした!
 あぁ沈んでいくのりぃさんから離れていくぅぅぅうッ!(待て)