-ここは出発点-藍河りゅう(4/28-21:04)No.2516


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2516ここは出発点藍河りゅう 4/28-21:04

始めまして。藍川りゅうと申します。
ヘタクソすぎな小説ですが、読んでやって下さいな。


「ふわぁ〜あぁ〜」
あたしは、憂鬱な景色を眺めつつ、ため息を吐いた。
ここ数日の雨のせいで、あたしの滞在している町は外部と全く遮断されていた。
食堂の曇ったガラスにあたしの息がかかる。
「何だ〜?リナ、そんな深いため息して」
ガウリイの『のほほぉ〜ん』な声が余計あたしの神経を尖らせる。
「あんたねぇ〜、今のあたしは死ヌほど腹たててんのよ。
ちょっとは静かにしてよ」
「とは言ってもなぁ〜、さっきから百回ぐらい溜め息ついてるぞ。お前」
「だってぇ・・・・つまんないしぃ・・・」
もはや腹を立てる気力もなく、あたしは机に突っ伏した。
「こう・・・なんて言うのかしら・・?どかーん、って言う刺激的なこと・・・な
いかしらぁ・・・」
あたしの呟きに、返事は意外な所からきた。
「じゃ、手伝ってほしいことがあるから、やってくれるか?」
『?』
あたしとガウリイの振り向いた先には、女性がたっていたが立っていた。
黒い髪はショートカットにし、シャツにジャケット、ソルジャーズボンと言う、
いたってラフな格好をしている。
彼女は、かってにガウリイの隣に座る。
「え〜っと、まず自己紹介。
あたしはレア。レア=セイシェル。
旅の何でも屋ってとこになるな」
そういうと、手をさし伸ばしてくる。
あたしはその手を握り返すと、レアは笑った。
「じゃ、そっちも自己紹介してくれよ。」
「えーっと・・・あたしはリナ。リナ=インバースよ。
旅の魔道士で、こっちが・・・・」
「俺はガウリイ=ガブリエフだ。
旅の傭兵になるな。」
そういうと、そっとあたしに耳打ちをする。
『リナ。気を付けたほうが良いぞこいつ。
何でかは知らんが、魔族の匂いがする。』
―――魔族!?
ガウリイの言葉に、あたしは動揺する。
まさか・・・依頼って言うのは・・・罠?
あたしが疑心暗鬼になって彼女を見つめていると、彼女は悲しそうに溜め息を吐い
た。
「どうやらお連れさんには分かったみたいだな。あたしの匂い。」
彼女の言葉に、あたしは構える。
「目的は何!?」
「おいリナ・・・・」
ガウリイが慌ててあたしを押さえるが、お構いなしにあたしは続けた。
「何が目的!?」
しばらくの沈黙。
窓の外の雨の音だけが響く。
時間が外れているせいもあってか、周りには客はいない。
「依頼って言うのは・・・・そのことなんだよ・・・」
沈痛な面持ちで、彼女は話し始めた。


事のつまりは、こういう事だ。
彼女は昔、一匹の強力な魔族と戦った。
結果は彼女の勝ちだった。
しかし、死ぬ間際にかけられた魔族の呪術は彼女の体に残っている。
その呪いは、じわじわと彼女の意識を食らうことだった。
―――その魔族は、滅んでいなかったのだ。
自分の精神が異常だと気づいたのはつい最近。
強力な魔道士を探し出し、自分の体に巣食う魔族を始末してもらうつもりだった。
そして、あたしリナ=インバースにであつた。
しかし・・・彼女は気づいているのだろうか?
魔族を完全に始末すること・・・・すなわち、自分の死を。




「・・・・で、報酬は?」
あたしは、机の向かい側に座るレアに語り掛けた。
「前払い一括にしてやる。」
彼女はそう言い、背中からリョクサックをおろした。
「その中に入ってるわ」
・・・・・・・。
『っななななななな!?』
あたしとガウリイの声がはもる。
リュックサックの中って・・・あんた、そりゃ破格過ぎますよ。
「そうだなぁ・・・・総額2000金貨ってところだな」
に・・・にせん・・・
「おい、いいのか?あんた。
冗談じゃないが、このリナは依頼を大団円に終わらせたことがないぞ。真剣に。」

ごす

「さぁーっ、なんっっっっっ・・・でもお手伝いいたしますわ!レア様!」
「・・・どうでも良いが、連れが後ろで死んでるぞ。お前の拳で」
レアが、少し後ずさりをして言う。
「まぁ、たいへん♪大丈夫?が・ウ・リ・イ☆」
「・・・なんだかリナって最近俺に冷たいよな・・・」
ガウリイが、涙を流しつつ起き上がる。
「あら愛情表現よ決まってるじゃないおほほほほほほ」
・・・・ちっ、気づかれたか。
「あー・・・話を元に戻すぞ」
レアの咳払いに、あたしは真顔をする。
「聞きたいと思ってたんだけど・・・その魔族って、いったい誰なの?」
あたしの問いに、彼女はうつむく。
・・・・・聞かれたくない過去、ってね。
「名前は・・・・知らない。
強かった。言えるのはそれだけだ」
「リナ・・・」
ガウリイが、あたしを心配そうに見つめる。
―――なんだか、話がややこしくなってきたわね―――
あたしは、大きく溜め息を吐いた。
「じゃあ他の事を聞くわ。
あなたの精神にそいつが乗り移るのは・・・何時?」
「・・・・・あたしが・・・・魔術を使ったとき」
「ふむ・・・魔力に反応するわけね。
わかったわ。じゃあ、明かり程度で良いから唱えてみてくれる?」
あたしの言葉に、ガウリイが慌ててあたしを止めに入る。
「おいリナ!こんな所で・・・・」
「分かった。」
「おいあんた・・・」
・・・ったく情けない。
あたしは呆れてガウリイを叩く。
「あのねー、やらなきゃ何も始まらないでしょ?」
「だけどここは・・・・」
はうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・
私は憂鬱に溜め息を吐くと、窓の外を見上げる。
「確かに・・・・ここでは周りの人に迷惑がかかるかもしれないわ。
でも・・・・・」
私はそこで台詞を止めると、両手で拳を作り、腰にあてがう。
「雨でぬれるの、嫌なのよっ!」
「同感だ」
「・・・俺って・・・女運・・・悪いんだな・・・」
いや、そこまで言われるとちょっと殺意沸くんスけど。
「とにかく、やるったらやる!それがあたしなのよ!て言うわけでれっつとらい」
あたしの煽りに、レアは頷き、呪文の詠唱を始める。
そして、途中で止める。
「?どったの?」
あたしがきょとんとしていると、レアは微笑んでいった。
「お前なら・・・・・分かってるだろ?あたしの依頼の目的。」
彼女の言葉に、あたしはぎこちない笑みを作る。
「大丈夫よ。あなたを殺さずに魔族を殺す。あたしならできるわ」
本当に大丈夫か。
それはあたしにも分からない。
だけど・・・
あたしは、不敵に微笑んだ。
「ヤルっきゃないわ」
「・・・おい、ガウリイ=ガブリエフ。」
レアが、からかうようにガウリイを呼ぶ。
「?」
「いい相棒を持ったな」
ガウリイは、苦笑すると、肩をすくめた。
「良すぎて時々手におえなくなるがな」
ふと、レアが目をつぶる。
呪文の詠唱を始める。
呪文の内容からして・・・・風の結界をはる魔法?
「レア?なんでそんな魔――――――」
あたしが聞こうとする瞬間、何かが弾けたような気がした。
「リナ!」
ガウリイが、あたしを床に伏せさせる。
轟音。
炎。
爆炎。
すべてが混じる中、あたしはふと顔を上げた。
「熱く・・・・ない?」
不思議な感覚が、あたしを包み込んでいる。
ガウリイも、警戒の色を薄めないまま起き上がった。
「爆発音も・・・確かにしたよな。
周りは炎だらけだし・・・・」
「もしかしてっ!?」
「おいリナ!」
あたしは走り出した。
もしあたしの予想が当たっていたら・・・レアは・・・・



「っはぁ、はぁ、レア!?」
あたしが走るのを止めたのは、炎の渦からちょうど出た所だった。
「おいリナ!一体何があったんだよ?突然・・・」

ばがぅん!!!

ガウリイの台詞の途中からは、爆発音に消えた。
しかし、やはりあたしたちには何も被害はない。
目を閉じ、あたしは息をすう。
そして、ゆっくりと目を開いた。
「・・・・出てきなさい・・・レア。」
感覚が戻る。
肌がちりちりとする。
炎のせいで、あたしは汗が噴き出る。
いや、冷や汗だったかもしれない。
「いや・・・『レアの中の魔族』さん」
あたしの言葉に反応するように、そいつは現われた。
どこからどう見てもレアだ。
ただ、レアじゃない、一つの証拠があった。
レアは・・・・魔族じゃ・・・ない。
「・・・・リナ、こいつ、強いぞ」
ガウリイの声が聞こえたのか、そいつは笑った。
「あなた方と戦う気は全くないんだが。」
「レアが・・・望んでいるのよ。あなたが滅ぶ事を」
威圧感に絶えながら、あたしは呟いた。
「そりゃあないだろ。
炎の中であなた方を守ったのは私だよ?」
「あたしに嘘は通じないわよ。
あたしたちを守ったのはレア。あんたが覚醒するのと同時に攻撃するのを見越し
て、ね」
ガウリイが、怒りを顔に出す。
「こいつ・・・そんな事を・・・」
「ま、じゃあとっとと始めようか。
私も忙しいんだよ」
そう言ったと同時に、あたしは跳んだ。
さっきまであたしのいた場所を光が薙ぐ。
「ガウリイ!そいつはレアの体を寄依り代にしてるわ!斬っちゃだめよ!」
「む、無茶苦茶な!!」
「牽制をお願い!」
そう言いつつも、あたしは迫りくる攻撃をかわす。
「助言か。良い事だな。まあせいぜい頑張ってくれ」
そいつは笑うと、手から黒い渦を生み出す。
「ファイア・ランス!」
あたしの呪文は、かなり離れた所に当たる。
「どこを狙っている!?当たらないぞ、人間の娘よ!」
その瞬間、ガウリイの剣がそいつの顔の横を通り過ぎる。
あああっ!?あぶなっかしーっ!
「どこを狙っていると・・・」
そいつが息を吸った。
「言っただろうがぁ!!」
「!?」
あたしは嫌な予感をかんじ、伏せる。
ガウリイも眉をひそめて伏せた。

じゃっ!

あたしとガウリイの頭上を、衝撃波が薙いだ。
「ち・・・避けるとはな」
そいつは舌打ちをすると、伏せたままのあたしにむかつて笑う。
「死ね」
あたしは、恐怖に引き攣らせた顔で、後ずさりをする。
「リナ!?避けろっっっ!」
「終わりだ」
そいつが、笑う。
あたしも、笑った。
「?」
そいつは不審な顔をした。
その瞬間、あたしのドラグ・スレイブは炸裂した。


どれぐらい経ったのだろうか?
レアは、瞼を開いた。
「気づいた?もう大丈夫よ、あいつは死んだから」
あたしの言葉に、レアは微笑む。
「しかし・・・一体どうやったんだ?リナ。」
ガウリイが、こそこそとあたしに話し掛ける。
「あたしたちが戦ってた場所ね、あそこは結界の中だったのよ。
それであたしはお構いなくドラ・スレかましたの。」
「じゃー、なんでレアさんは無事なんだ?」
ガウリイがまたもやこそこそと聞いてくる。
「ドラ・スレは囮。あの後、全力かけてエルメキア・ランスぶっ放したのよ」
「おー、だから髪が銀色なんだな」
ガウリイが、ぽんと手を打った。
「ちったぁかんがえろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
あたしのパンチが、ガウリイに炸裂した。



「わぁ・・・晴れてる!」
あたしが、空に向かって叫んだ。
「おー、ほんとだほんとだ」
あの後。
レアさんはとことん弱まった精神を癒すため、しばらく眠っていた。
昨日になって、『もう大丈夫』と言う事になりレアさんはあたしたちの見送りにき
ている。
「早くこのあたりから離れていた方が良いぞ。
この地方は晴れた日の次の日はまた雨だ」
「レアさんは?どうするの?」
あたしの問いに、レアさんは苦笑いをする。
「まだ完全に直ったわけじゃない。しばらくはここにいるさ」
そういうと、大きく息を吸い込んだ。
「あの魔族」
そこまで言うと、大きく溜め息を吐く。
「あたしの・・・父親だ」
「っな!?」
あたしが、声にならない叫びをあげる。
「あたしの父親は、あたしの母親・・・人間を愛した。
そして、力の暴走で母を殺した。
あたしはあの魔族が父親なんて知らなかった。あいつに呪いをかけられるまで。
だけど、同化してしった、あいつの事、想い。
だけど・・・これでよかったんだ。」
レアさんはそういうと、ふっと遠くを見つめた。
「父は・・・まだあたしの中にいる」
そう言ってから、笑った。
「さ、行ってこいよお二人さん。」
いまだ絶句しているあたしと、何か分かっていないガウリイに向かって。
「人間は・・・過去を振り返っちゃ行けないのさ」
あたしは嘆息して、ガウリイを軽くこずいた。
「じゃ、行くわよ、ガウリイ」
「おー」
空は、晴れていた。
ずっと、どこまでも。


(終わり)