-異界黙示録伝《風の書》その2-魔沙羅  萌(5/1-22:17)No.2547
 ┗Re:異界黙示録伝《風の書》その1、2-松原ぼたん(5/2-02:02)No.2554


トップに戻る
2547異界黙示録伝《風の書》その2魔沙羅 萌 5/1-22:17

今回も予告通り、アメリアさまの一人称です。はい。


キメラ研究所…そこで一人の金髪で緑の目の少女が外を眺めていた。
遥か彼方に妖精城が見えている。
――なぜこんな事になってしまったのかしら……。
少女はそう呟こうと唇をかすかにうごかした。
しかし、その言葉は声になったりはしなかった。
奪われてしまった言葉……彼女にとってそれはとても大きなモノだった。


追憶


ぽちゃん。ぽちゃん。
どこかで水の落ちる音がしてくる。
わたし達は今、パックさんの案内でキメラ研究所へと続く洞窟を通っています。
パックさんの話によると、ネオンさんもフェアルさんも相当不思議な体質な御方だそうです。
そんなことよりヒトを使ってキメラを造ろうとするようなヒトは許してはおけません!
そんなのわたしの正義に反します!
「パック、あとどのくらいかかるの?キメラ研究所まで」
アグニさんがパックさんに質問しているのが耳に入ってくる。
「おれが聞いた話によるとこの洞窟を抜けたらすぐだと……ネオン?」
パックさんの声にはっとして前を見てみると、白い鳥のもっているものと同じような翼を持った女の方が一人、こっちにやってくるのが見えました。
「パック……?そこにいるのはパックなの?」
どうやらネオンさんらしき銀髪の女性はふるえた声でパックさんの名前を呼びました。
彼女のその青い目は焦点が定まらないまま、宙をさ迷っている……。
「ネオン、大丈夫?……まさか私たちが見えないの?」
アグニさんの声はとても心配そうに聞こえる。ゼルガディスさんも少し心配そうな目で彼女たちを見ている。
「アグニ様……わたくしなら大丈夫です。目など見えなくとも平気です。
ただ…フェアルを助けてあげて下さい。それからパックをまもってあげてください。
お願いです」
ネオンさんの声はすごく細く聞こえる。何があったのかしら。
「ネオン、どういう事なんだ?何があったんだ?おれなら大丈夫だから…おしえてよ」
「オベロンとティタニアはあなた達を使ってキメラを造ろうとしています。
あいつらはヒトの命をなんとも思っていません。
あの日の……『鵺』の時の悲劇を繰り返そうとしています。
シルフたちから聞きました。あいつらが国民を操りはじめたことを」
「どういう事だネオン?この国で何が起ころうとしているんだ?」
ゼルガディスさんの問いにネオンさんは小さく微笑んでからこう言いました。
「…すべては……闇の奥底に…蠢く…者たちの、たくらみです……アグニ様、パックを…フェアルを……ジブ様を…お願いします……」
それがネオンさんの最後の言葉でした。
「ネオン?……返事しろよ、ネオン…おきろよ!ネオン!死んじゃやだよ!」
「パック……行こうみんな。キメラ研究所へ!」
その言葉を言うアグニさんの声はとてもつらそうでした。
こんな事許されてはいけません!簡単な埋葬をすませたわたし達はまた、キメラ研究所に向かって歩き出した。
正義を訴えるために!

〔続く〕

……また暗くなっちゃった。しかたがないけど。
…次回からはまた、アグニ姫の一人称にもどります。

トップに戻る
2554Re:異界黙示録伝《風の書》その1、2松原ぼたん E-mail 5/2-02:02
記事番号2547へのコメント
 面白かったです。


>我の願いも叶うであろう。
 願い・・・・やっぱりまだこだわってるんですねぇ。
>「決まってます!わたし達、正義に仲良し4人組の1部とその他2名で正義の鉄拳をかましに行きましょう!」
 ・・・・ここまで来ると執念の様な気が・・・・。
>それがネオンさんの最後の言葉でした。
 伝えるためだけに生きていたみたいですね。。
>その言葉を言うアグニさんの声はとてもつらそうでした。
 偉いですね。

 本当におもしろかったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。