◆−Legacy of Lunatic Elf 〜白銀の遺産〜 6−柚乃 (2003/4/13 18:41:17) No.25552 ┣をおうっ!?−奈月るり (2003/4/13 21:10:34) No.25555 ┃┗Re:をおうっ!?−柚乃 (2003/4/18 16:34:48) No.25630 ┗祝・リナちゃんふっかーつ!−エモーション (2003/4/13 21:51:25) No.25557 ┗ガーネットいいですよね―――っ v v v−柚乃 (2003/4/18 16:43:13) No.25631
25552 | Legacy of Lunatic Elf 〜白銀の遺産〜 6 | 柚乃 | 2003/4/13 18:41:17 |
こんにちは。柚乃です。 あえて何も言いません。さっそく本編にどうぞ。 $$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ 「どしたの? なんか面白いものでもあった?」 何かをじぃっと見つめている少年に、少女が怪訝そうに声をかけた。当の少年はといえば、すぐ後ろに人がいることに気付いていなかったのか、慌てた様子で振り向いた。 「あ、えっと………これ、なんていう石かなって思って」 そう言って、少年が指し示したのは明るい深紅の色をした石。 ―――それは、少女の瞳の色によく似ていた。 「え? ………ルビー………じゃないわね。ん―………なんだろ?」 「分かんねぇか? ガーネットだよ、そいつぁ」 「へっ? これが? うっそぉ。だってガーネットってもっと………なんていうか………濃い色じゃない?」 悪戯っぽく正解を披露する店の主人に、少女はまさか、という表情でまじまじとその宝石を見つめた。 「ガーネットっつってもいろいろあるんだよ。そいつはパイロープ・ガーネットって種類でな。ガーネットの中でも一番明るい赤色をしてるんだ。綺麗だろ?」 「へえ。そうなんだ。パイロープ………って炎って意味よね? 確かにそんな感じの色ね」 「ほおぉ。お譲ちゃんよく知ってるな。 よっしゃ。ご褒美にちっと負けてやるから買ってかねーか?」 「ほほおぉぉう。そぉくるか………でもそうね。値段によっては買ってもいいんだけど―――で、いくらに負けてくれるのかなー♪」 そうして―――呆れて眺める少年を余所に、少女と店主との長い長い値段交渉がはじまった……… ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** すとん。 「そんなに緊張しなくてもいいよ。別にとって食おうってわけじゃないし」 軽い音を立てて窓枠に着地し、それでも臨戦態勢を解こうとしないガウリイにヴェルスは苦笑した。なんというか………リナとは対照的な反応である。第一印象の違いと言ってしまえばそれまでだが。 ちなみに今回は城に忍び込んだときのような怪しげな格好ではなく、ごくごく普通の旅人ふうの服を着て、もちろん顔も隠していない。 道端で普通にすれ違えるような格好である。まあ服の中身はかなり目立つ風貌ではあるがそれはともかくとして。 見た目はなんら怪しいところはないが、そんな普通な格好をしたやつがどうしてこんなところにいるのかとか、どうやってここまで来たのかとかを考えると、見た目の普通さが逆に死ぬほど怪しげに思えるのは何故だろう。 それはさておき、ガウリイは警戒を解かずに―――それでも一応剣は収め―――ヴェルスに向かって問いかけた。 「………何の用だ?」 「最初に訊くことがそれ? まあいいけど………ちょっと君と話をしたくてね。君も僕に訊きたいことはあるだろう」 窓枠に腰かけながら言った、それは疑問ではなく断定。あるいは確認。 「………リナはどうしてる?」 見透かされているようで面白くないが、それでもどうしても聞いておかなければいけないことを訊く。予想されているような気はするが。 案の定というべきか、ヴェルスはやっぱりね、とでも言うように頷いた。 「寝てるよ。大怪我して、一応傷がふさがって動けるようになってすぐに魔力をほぼ完全に使い切るような大技使ったんだから、当然と言えば当然だね」 「怪我!? 何があったんだ!?」 「気になるなら自分でリナちゃんに訊くことだね。まあ怪我は完全に治療したし、一度目も覚ましたからもう心配はいらないけど」 「そう………か」 「じゃあ今度はこっちから質問。君はここで何をしている?」 「は?」 安堵したのも束の間、予想だにしていなかった問いに、ガウリイはきょとんとヴェルスを見返した。 「いや、何って………」 「君の腰に下がってる剣。魔法剣だね。何か銘はあるのかい?」 「リナは斬妖剣(ブラスト・ソード)って言ってたが………」 「ブラス………………………そうか、だから……… ―――その剣、昨日はどうしていた?」 「魔道の研究に使うから貸してくれ、って言われて貸していたが………今までにも何度かそういうことあったしな」 「魔道の研究、ね。この街のロードが何の研究をしてるか、君は知ってるのか?」 「いや。興味ないからな。 ………おい、何が言いたいんだ?」 要領を得ないヴェルスにガウリイが苛立たしげに口をはさむ。 「最初に言ったはずだよ。君はここで何をしているのか、ってね。 リナちゃんが怪我をしたって言ったよね。君がリナちゃんの傍にいればそれは絶対に避けられた事態だった―――と言ったら?」 「そんなことは………」 言いかけて。ガウリイは口ごもった。 自分が一緒にいれば、そうそうリナが怪我をするような事態には陥らせないとは確かに思う。思うが………相手はそういうことを言っているのではないような気がする。 「………どういう意味だ?」 「リナちゃんに怪我をさせた直接の原因は君が持ってるってことだよ」 「………………………!」 言った意味を悟ってガウリイは息を呑んだ。 そんなガウリイを感情のこもらない眼で見ながらヴェルスは続ける。 「普通の剣やそこそこ程度の魔法剣じゃあリナちゃんだってそっちに気を取られることはなかっただろうからね。あんな大怪我をすることもなかっただろうさ。 それにもう一つ。君はこの街のロードが何をしてるのか知らない、興味もない、って言ったね」 「それがどうかしたか?」 「昨日リナちゃんはこの城に忍び込んでいろいろと調べていた。その理由を自分で考えるんだね。それで分からないようなら―――君はリナちゃんの敵になる」 きっぱり言い放たれて。ガウリイは今度こそ完全に言葉を失った。 「リナちゃんは君がいようがいまいが同じことをするししただろうね。 その点君はどうだ? リナちゃんがいるといないでどれだけ行動が変わってる? どっちが保護者だか分からないじゃないか。いつまでもリナちゃんに依存してないで少しは自分で考えるんだね。でないとそのうち取り返しのつかない失敗をすることになるかもよ。 今の君なんかと比べたら、ゼナくんの方がよっぽどちゃんとリナちゃんを護ってるよ。まだ感情をうまくコントロールできないことを差し引いても、ね」 言うだけ言って、ヴェルスは勢いをつけて立ち上がった。 そしてガウリイを見下ろしながら、 「じゃあ言うことは言ったから僕はもう戻るよ。リナちゃんが目を覚ましてるかもしれないし、あんまり長くゼナくん一人に任せとくのも心配だし―――ちなみにゼナってのは今朝方君の剣をへし折った男の子のことだけど。 あ。それから忘れるところだった。昨日の騒ぎでそのゼナくんが落し物をしたみたいなんだよね。ガーネットに金の鎖がついたペンダント。魔法の品で、宝石の中に魔法陣が浮いてるから見ればすぐ分かると思う。 見つけたら拾って持っといて」 言って、とんっ、と窓枠を蹴る。 「ま………!」 慌ててガウリイが窓から下を覗き込んだときには、そこにはヴェルスの長い黒髪はもう何処にも見えなかった。 「………くそっ!」 がこんっ! 言いようのない悔しさに、力任せにこぶしを壁に叩きつけた。 ―――君はここで何をしている? ヴェルスの言葉がガウリイの脳裏によみがえる。 ただ腹が立った。何に対してかは分からないけれど。 ガウリイは斬妖剣(ブラスト・ソード)の柄を強く握りしめた。何も反論できなかったことが、無性に悔しかった。 「……… ……… ……えり。何処行ってたの?」 「ただいま。うん、まあちょっと野暮用で」 「?」 「それより、リナちゃんは起きて………ないみたいだね」 「うん、まだ。 あ。さっきね、宿のおばさんがこれくれたんだけど」 「へえ。ラスク鳥の燻製じゃないか。珍しいんだよ。それにすっごくおいしいんだよ、これ」 なぬっ!? ラスク鳥っ!? 「そうなの? じゃあリナが起きたら一緒に食べよう」 「そうだね」 「あ。でも二個しかないよ。どうやって分ける?」 「うーん………いっそのこと、リナちゃんが起きる前に、二人で食べちゃうっていう手もあるけど」 待て。こら。 「それはダメっ! リナと一緒に食べるの!」 「あははは。冗談だってば。だいたいリナちゃんに黙って食べたなんて知れたら、本気で殺されるかもしれないし」 当たり前よっ! 本気だったら竜破斬(ドラグ・スレイブ)ものだわよっ! 「まあそれはリナちゃんが起きてから考えればいいんじゃない? ただし、リナちゃん一人に全部食べられちゃわないように気をつけてね」 さすがのあたしでもそこまではしないわよっ! ………? あれ? あたし………? ぱち。 「あ! リナ、目が覚めた?」 「グッドタイミングだね。調子どう?」 「ゼナ………ヴェルス………」 「何?」 「ん?」 「あたしに黙って珍味を食べようなんざ百万年早いわよっ!」 あたしのセリフに―――何故か二人はそろってずっこけた。 「起きて最初に言うことがそれ? っていうか起きてたの?」 まだ少しぼーっとするが―――これは体力や魔力がどうこうと言うよりも寝過ぎ、ではないかと思う―――呆れたようなゼナのセリフに素早く対処できるくらいには頭ははっきりとしていた。 つまり――― 「んっんっん。何か言いたいことでもあるのかなぁ?」 「………言う前に反撃してる」 「痛くないでしょ。それくらい」 「そういう問題じゃないと思う」 ぼすっ、と手に持った枕をベッドに押し付けてゼナがぶつぶつと文句を言う。ちなみにその枕はいらんことを言ったゼナに対するあたしなりのお礼である。具体的に言うと、ちょうど手元にあったもの、つまり枕をゼナの顔面にヒットさせてみたと、そういうことである。 「それは置いといて、ここって………宿の部屋よね。あたしってどれくらい寝てたの?」 「城に忍び込んだのが昨日の夜。んでもってもう日は完全に落ちてるから、リナちゃんは一日近く寝てたことになるかな」 「うあ………道理で頭がぼーっとするはずだわ。寝過ぎよね、あたし」 「でも、いったん目を覚ましたから、寝過ぎってほどでもないんじゃない?」 「え? そうなの?」 「リナ覚えてないの? もしかして寝惚けてたとか? でも確かに一回起きたよ。ちゃんと返事もしたし」 むぅ………全然覚えていないのだが………しかしそれでも返事はちゃんとしているあたりはさすがあたし。 「まあそれはいいとして、リナちゃんお腹空いてない? 半日以上何も食べてないわけだから」 言われてみれば確かにお腹は空いている。つーか空きまくっている。 「そーね。とりあえず腹ごしらえしましょ。訊きたいこともあるし。 ………でもその前に」 「何?」 「着替えるからさっさと出てかんかぁぁぁぁ!!」 叫ぶと同時に放った枕がぼすっ、という間の抜けた音とともにヴェルスの顔面を直撃した。 「あっ! ちょっとそれあたしのっ!」 「………テーブルの真ん中に置いてある大皿の料理にも所有権ってあるわけ?」 「それはあたしが先に目を着けてたんだからあたしのものっ! 他のなら別にいいわよ」 「ゼナくんが取っても何も言わないのに僕が取ると文句言うんだね」 「何言ってんのよ。ゼナはあたしが狙ったものに手をつけたことがないから何も言わないの。ヴェルスはあたしが狙ってたものに手をつけようとしたから文句言ったんじゃない。 だいたいあたしとゼナは魔力回復のためにもたくさん食べなきゃいけないんだし、あたしなんか半日以上なんにも食べてなくってお腹空いてるんだからねっ! 何か反論は?」 「いえ。ありません」 よろしい。 宿屋の食堂にて。あたしとゼナ、ヴェルスの三人は夜食を食べていた。 ここの料理ははっきり言って絶品である。特に名物の大皿料理は基本的に家族単位でつつくものなため、ボリュームがあってなおかつ安くて美味いとまさに言うことなし! しかし、こんな賑やかな食事は久しぶりである。あたしもゼナもよく食べる方ではあるが―――ゼナに関しては比喩ではなく底なしという事実もある―――基本的にゼナはあんましおしゃべりな方ではないし、食事中はけっこう黙々と食べるのであまり賑やかにはならないのである。 ガウリイが一緒だと、昔一緒に旅したことのある仲間曰く、『食事くらい静かに食えんのか』ということになるのだが。 それはさておき。 「訊きたいことがあるんだけど?」 食事中はややこしい話は抜きで料理に集中していたが―――料理に集中しないというのは美味しい料理に対して失礼である―――ひとまず食事も終え、落ち着いて。食後の香茶など飲みつつ、あたしはヴェルスをひたと見据えた。 「僕からも訊きたいことがいろいろあったりするんだけど。たとえば………ゼナくんのこととか、ね」 あたしの視線にまったく動じず、ヴェルスは逆に問いかけてきた。 「まあそれはあとでかまわないよ。リナちゃんがあとでちゃんと話すって約束してくれたら先にリナちゃんの質問に答えよう。どう?」 「う………」 あたしは返答に困った。何が困るって自分のことではない上に相手がヴェルスだということだ。その辺のやつと違ってごまかされてはくれないだろう。 「かまわないんじゃない?」 「………ゼナ?」 「僕のことでしょう? 別に隠す必要もないと思うんだけど。相手はヴェルスなんだし」 出会った当初は自分のことを隠そうとか、そんなことは露ほども考えていなかったゼナだが、最近では自分のことをあまり他人に知られるべきではない、ということはきちんと理解している。 そのゼナがこうもあっさりと……… 「ゼナくん。その僕だし、っていうのはどういう意味かな?」 「そのままの意味だけど。ヴェルスなら別に話してもいいんじゃないかなって」 「………そう。一応誉め言葉として受け取っておくよ」 意外な心持ちで目をぱちくりさせているあたしの前で交わされる会話をなんとはなしに聞きながら、まあ本人がいいというのならいいだろうと、あたしも納得することにした。 「分かったわ。ヴェルスの質問にはあとで答える。だからあたしの質問に先に答えてもらうわよ。まず最初に………」 「待った」 さっそく訊こうとしたあたしにヴェルスが待ったをかけた。 あたしは眉をひそめつつ、 「何よ?」 「こんなところで話す内容じゃないだろう? 食事も終わったことだし、とりあえず部屋に戻らない?」 …………………………… それもそうか。こんなところで城に忍び込んでどうの、とか話すわけにはいかない。 あたしはこほんと一つ咳払いをして、 「そ、そうね。部屋に戻りましょうか」 そう言って、こくりと頷いた。 「まず訊くけど、あのあとどうなったの?」 場所をあたし(とゼナ)の部屋に移し。椅子が二脚しかないのであたしはベッドに座ってヴェルスに問いかけた。 ヴェルスは椅子に腰を下ろし、あごに手をあててしばし考えていたが、やがて考えがまとまったのか口を開いた。 「特に何も。あのあとすぐ城を出て宿に戻ったよ。リナちゃんをきちんと休ませたかったからね………あ。そういえばゼナくんがペンダントを落としちゃったみたいで、その時は急いでたし諦めてもらったけど、あとで探しておいてあげてくれる?」 「あ、うん。それはいいけど………でも大騒ぎになったんじゃないの? 宿に戻って………ってああああああっ!!」 「どしたの? リナ」 あることに思い至って思わず大声をあげてしまったあたしに、ゼナが驚いたように訊いてくる。しかしそんなことより………つーかなんで今まで気付かなかったんだあたしっ!? 「誰があたしを着替えさせたのよっ!? まさかあなたじゃないでしょうねっ!?」 ずびしぃっと指差しつつ言ったあたしに、ヴェルスはきょとんと目を瞬いた。 なんだそんなことと言うなかれ。女の子にとってはものすごく重要な問題であるっ! 宿のおばさん………ということはあるまい。そのときの格好といったら黒ずくめの上に血まみれという怪しさ大爆発な格好だったはずである。即座に通報されても文句は言えない。 となると考えられるのはヴェルスかゼナ………ゼナならまだしもヴェルスが着替えさせたんだとしたら………許してはおけん。 「ああ。着替えね。それならゼナくんだよ。宿のおばさんに頼むのはちょっとまずかったし。 ………ええとだからそんな目で睨むのは止めてくれないかな?」 「本当ね?」 「本当だって。ねえゼナくん」 「うん。本当だよ」 「ならいいけど……… ………まあいいわ。ええとなんだっけ………そうそう。あんなことがあったあとじゃあすごい騒ぎになってたんじゃないの?」 「なってたよ」 さらりと言われた言葉にあたしは一瞬どう反応するべきか悩んだ。 「明け方だったから安眠妨害された人もけっこういるんじゃないかな。でも僕らに手配とかは回ってないよ。そんな余裕もないみたいだね。まああの騒ぎで数十人が死んでるから。人手不足なんだろうね」 なんかそうあっさり言われるとたいしたことではないような気がするが、それって意外と大事なんじゃなかろうか。 しかしそう思っているのはあたしだけらしい。ヴェルスもゼナも特に気にした様子はなく平然としている。ゼナはともかく、ヴェルスの神経っていったいどうなってるんだろうか………? 「ま、まあそのことはもういいわ」 それ以上聞くとなんだか怖いことになりそうだし、あたしは話を変えることにした。 「昨日はなんだかさらっと流されたけど、今度こそちゃんと答えてもらうわよ。あたしとヴェルスって昨日が初対面よね?」 「そうだね」 「でもヴェルスはあたしのことを知ってるわけよね」 「まあそうなるね」 「………悪人相手だったら恨まれてる覚えはそれこそ数え切れないくらいあるけど、そんな感じじゃなさそうだし………」 「………リナ。自分で言って哀しくならない?」 やかましい。だいたいあたしに恨みを持ってるようなやつは、成敗されて然るべきことをやっていたやつであり、はっきり言ってあたしを恨むなんざ逆恨み、筋違いもいいとこなのだ。そんなやつらに恨まれたところで何がどうということもない。 ………まあそういうやつらが盗賊殺し(ロバーズ・キラー)だのどらまただの大魔王の食べ残しだのとあたしのことを言うのはムカつくけどっ! それはさておき。 「別にごまかしたわけじゃないけど………それに言っただろう? 僕自身のことじゃないって。リナちゃんと面識があるのは僕の息子だよ」 「………息子………?」 そういえば息子がいるとか言ってたっけ………なんかすっかり忘れてたけど。確か今年で二十三になるとか。………むぅ。それだけじゃあヒットしすぎるなあ。それに印象に残らない相手だったら覚えてないってこともあり得るし……… ………まあヴェルスの息子だったらそういうことはなさそうな気がするけど。いろんな意味で。 しかし、とりあえずすっと思いあたる相手はいない。まあヴェルスに似てるとは限らないけど……… ううむと考えるあたしにヴェルスは苦笑して懐から古びたペンダントを取り出した。いや………あれはロケットかな? 思ったとおりそれはロケットだったようで、ぱちんという音とともにフタを開けるとヴェルスはあたしにペンダントを渡した。 「それは僕の妻の肖像画だよ。………息子はどちらかというと彼女似かな。髪の色は違うけど」 言われてロケットの中を見ると、綺麗な女性が柔らかく微笑んでいる絵がそこにはあった。亜麻色の髪に青緑色の瞳。ともすれば冷たい印象を与えかねない色だが、不思議とその瞳には温かみがある。 ……………………………? ふと―――その女性の整った顔立ちと青緑色の瞳を見て、誰かを連想した。 あれ………? えーと………あああああここまで出てきてるのにっ!! 「答え教えちゃったら面白くないし、自分で考えてごらん。確実に知ってるから。正解したら一回ごはんを奢ってあげよう」 名前は、と訊こうとしたあたしに一歩先んじてヴェルスが釘を刺す。 うくっ………気にはなる、気にはなるが………戦士にして魔道士たるこのあたしがここで引くわけにはいかないっ! この場合戦士だの魔道士だのというのは関係ないような気はするけどっ! ………念のため言っておくが、決して『奢る』という言葉に釣られたわけではない。ないったらない。お願い信じて。 考え込むあたしを余所に、ゼナが思い出したようにとととっと部屋のすみに置いた荷物に近付き、何やらごそごそと探っている。 「リナ」 「何?」 ほどなく目的のものを見つけたのか手に何かを持って振り返るゼナに、あたしはロケットから目を離さずに応える。 「さっき宿のおばさんにもらった燻製、食べる?」 「食べる」 あたしは即答した。 「むうぅぅぅぅぅ」 ベッドにころんと転がってあたしは唸った。 考えているのはヴェルスの子供とやらのことだ。あの絵を見て、確かに誰かに似ていると思ったのだ。しかし………どぉしてもそれが誰なのか思い出せない。たぶん、受ける印象が違うのではないかと思うのだが………男女の違いもあるし……… 部屋にいるのはあたしとゼナの二人だけ。もう遅いし、話の続きは明日ということにしてヴェルスは自分の部屋に戻ったのだ。ちなみにその肖像画が入ったロケットはヴェルスに返してある。 隣のベッドを見ればゼナがベッドの上で本を読んでいる。 ゼナの知識量はあたしでも敵わないところさえあるが、かなり偏りがあるため、一般的な常識がすっぱり抜け落ちているときがままあったりする。それを補うために最近はよく本を読んでいるのだ。あたしがそうするように言ったのだが。 「ねえ、ゼナ」 「何?」 ふと思いついてゼナに声をかけると、ゼナは読んでいた本から顔をあげた。 「ゼナはヴェルスのことどう思う?」 あたしの問いにゼナはわずかに首を傾げた。どう答えようか迷っている………というよりもむしろ、あたしの質問の意図を測りかねているようだ。 「いい人だと思うけど」 しばしの沈黙の後、答えが返ってきた。 「まあよく分からない人ではあるけど………嫌な感じはしないよ」 「うーん………」 うーみゅ。相変わらず判断基準がよく分からん。 はっきり言ってゼナは人を見る目が厳しい。しかし、その基準はあたしにはさっぱり分からなかったりするのだ。 それでもその判断は確かなので、それなりに信頼してはいるのだが――― 「確かに悪い人じゃないとは思うけど………なんか隠し事してるっていうか、そんな感じがするのよね」 「そうだね」 あたしの呟きに、ゼナは意外にもあっさりと頷く。 「でも、悪い人じゃないから悪いことじゃないよ。きっと」 「………分かりやすいっていうか単純だわねー………」 ああなんかもぉどぉでもよくなってきた。………っていうか、あたし自身、彼のことをけっこう信用してるってのも確かだし。 「リナとは全然違う人だよね。正反対ってわけでもないけど」 「………そう」 とりあえず曖昧に頷いてみる。 「まあいいけど………………今日はもう遅いし、もう寝なさい。あたしも寝る」 考えてどうなるものでもなし。あたしは軽く伸びをするとベッドにぼすっ、と倒れ込んだ。 もう寝る、とは言ったものの、昼間にも散々寝ているため、眠れるか分からなかったが、やはりまだ体調が完全ではないのか、寝転がっているとだんだんうとうとしてきた。 横を見れば、ゼナも言われたとおり読みかけの本にしおりを挟んでベッドサイドの机に置き、毛布の中にもぐり込んでいる。 ランプの明りを絞り毛布にもぐり込むと、ほどなく襲ってきた心地良い睡魔にあたしは抵抗することなく身をゆだねた。 $$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ 終わり方がすっごい中途半端で嫌な感じです。でもなかなか切れるところがなくて………これ以上長くするのはさすがにまずいかとも思ったので(第三話はもっと長かった、というのは禁句です)。 しかし何ですね。全然進んでません。原因は分かっています。相性がいいのかリナ、ゼナ、ヴェルスさんの三人だと妙に会話が弾むんですね………まあゼナはあんまりしゃべる方じゃないので(ときどき鋭いツッコミを入れたりはしますが)、主にリナとヴェルスさんの会話になるのですが、それでも会話が続く続く。 いいんですけどね………別に……… ただ、今回、作者的に嬉しかったことが一つ。それは食事シーンを書けたこと。スレイヤーズって本編でもスペシャルでもよく食事シーンが出てくるので、絶対に食事シーンを一つは入れようと思っていたのですv それが達成できて嬉しいですーvv あ。それとこれだけは。ヴェルスさんの奥さんの瞳の色ですが………別に青でも緑でも良かったんですけど、青緑なのは作者の趣味………もとい、こだわりということで。もちろんその色は子供に受け継がれてます。髪色は………いまいちピンとくる色が思いつかなかったので………その時聞いていたミュージックからフィーリングで。思い付きとも言う。 そしてまた今回もガウリイくんいいとこなし。がんばれガウリイ。 とまあそんな感じです。続きもがんばって書きます〜。 ではではっ。柚乃でした〜。 |
25555 | をおうっ!? | 奈月るり E-mail URL | 2003/4/13 21:10:34 |
記事番号25552へのコメント いきなり変な題名で済みませんっ!_(∠ヾ)(←いきなり平謝り) 今回もとても楽しかったです♪ 取りあえず、一番一人で大暴走していたところの感想を・・・ とうとう影(?)だけ登場!ヴェルスさんの息子さん!青緑の瞳ですかぁ・・・“彼”ですね!?私は“彼”の瞳は青で塗っておりますが。(^^)(←ただ単に、手持ちの色ペンにレパートリーがないだけ) いやぁ。“彼”がリナさんと一緒にいる(一緒にいなくてもいいんですが・・・)ヴェルスさんと出会ったら、いったいどうなるんでしょうね?なんかいきなり無言で斬りかかりそう・・・なんて思うのは、私だけでせうか?でも、やっぱり複雑な家庭事情なのかもしれませんし・・・ まあ、直接対面することはなくても、偶然旅の途中に出会ったリナさんから話を聞いて、「まさか・・・」ってオチも良いですねv(←オチなのか?) に、しても・・・ 自分の剣がリナさんを傷つけたということをガウリイさんが知ってしまったら、どうなっちゃうんでしょうね? ガウリイさん、自分を責めるだろうなぁ・・・ おまけに、ヴェルスさんが言ったペンダントを持っている某赤毛の方をガウリイさんが見つけるのは(多分)必至。 また、ひと嵐きそうですね♪(←何でそんなに嬉しそうなんだ?) それでは、またまた短いですがこれで。 【奈月るり】 |
25630 | Re:をおうっ!? | 柚乃 | 2003/4/18 16:34:48 |
記事番号25555へのコメント こんにちはっ。レスありがとうございます〜。 > とうとう影(?)だけ登場!ヴェルスさんの息子さん!青緑の瞳ですかぁ・・・“彼”ですね!?私は“彼”の瞳は青で塗っておりますが。 実際の瞳の色ってどうなんでしょうねー? 私がこの色にしたのは、青か緑か………と迷った末、なら中間で(爆)。というなんともいいかげんな(いいかげんの語源は良い加減なので良いのですっ!)理由からだったりするのですが(笑)。 > いやぁ。“彼”がリナさんと一緒にいる(一緒にいなくてもいいんですが・・・)ヴェルスさんと出会ったら、いったいどうなるんでしょうね?なんかいきなり無言で斬りかかりそう・・・なんて思うのは、私だけでせうか?でも、やっぱり複雑な家庭事情なのかもしれませんし・・・ > まあ、直接対面することはなくても、偶然旅の途中に出会ったリナさんから話を聞いて、「まさか・・・」ってオチも良いですねv(←オチなのか?) どうでしょうね………。ここからは裏設定になるのですが、”彼”はヴェルスさんのことは知らないらしいです。”彼”が小さい頃に(五、六歳の頃のことなんか覚えてないから、それくらい?)お母さんがいろいろあって亡くなり、その際にひいじーさん(ヴェルスさんにとってはじーさん)にテイクアウト(待て)されて、それ以来会ったことがない、と。 うーん。作中でこういう設定を出せるかどうか………微妙なところです。本当は出したいんですけど。でないとヴェルスさん、謎の人で終わっちゃいそうですし(笑………えないですマジで)。 ガウリイくんに関しては………がんばれ、としか言いようがないですね(笑)。とりあえずとっととリナと合流させないと……… ではでは。次はまた遠くなりそうな気がひしひしとしますがそれはさておきこれにて失礼します。柚乃でした〜。 |
25557 | 祝・リナちゃんふっかーつ! | エモーション E-mail | 2003/4/13 21:51:25 |
記事番号25552へのコメント こんばんは。 お待ちしていました♪ パイロープ・ガーネット……ガーネットの中で一番純粋な真紅の色ですね。 (おかげで見た目だけならルビーと間違われる……スピネルほどじゃないけれど) ガーネットの色は確かに様々ですよね。基本は夕日色のアルマンダインですが、 緑色や黄色やオレンジ、ピンク、紫、褐色などもありますし。 さすがに直接ロードライト(ピンク・紫)やスペサルタイト(黄色・オレンジ)や ツァボライト(緑)を見たことはないですが。(写真でならあります。 当然のごとく純度の高いものなので色がとても綺麗でした) ヴェルスさんとガウリイのご対面♪ リナが心配だという事もあるのでしょうけれど、警戒色バリバリなガウリイが 個人的にツボでした。 何気にガウリイをいびり(笑)つつ、しかっり焚きつけているヴェルスさんもツボです。 さあ、がんばれガウリイ! リナちゃんサイド。 半分眠りつつ、しっかり美味しい食べ物には反応しているのがさすがです。 やはりリナはこうでなくては!(笑) でも、食欲があるようになれば、もう安心ですから読んでいてほっとしました。 さらにお食事バトル……やはりこれは重要でしょう。(でも私は何故か書けない) 静かに黙々と、でもしっかりと食べているゼナくんと、多分さほど食べられ なかったのではないかと思われるヴェルスさんの落差を想像してしまいました。 会話のはずむ組み合わせ……確かにありますよね。 逆に話の展開上、どうしてもはずませたいのに、上手くいかない組み合わせも。 こういうのって、何なんでしょうね(汗) ヴェルスさんの息子……どなたでしょう。 整った顔で青緑の瞳……すみません、ゼルぐらいしか思いつきません。 それとも「すぺしゃる」の方のキャラなのでしょうか。 楽しく読ませていただきました。 次でリナたちはこれからどう動くのか、そしてヴェルスさんの目的は何なのか。 そして、ヴェルスさんにしっかり焚きつけられたガウリイがどうでるのか、 続きが楽しみです。 では、つたないコメントですがこの辺で失礼いたします。 |
25631 | ガーネットいいですよね―――っ v v v | 柚乃 | 2003/4/18 16:43:13 |
記事番号25557へのコメント こんにちはっ。レスありがとうございます〜。 >パイロープ・ガーネット……ガーネットの中で一番純粋な真紅の色ですね。 >(おかげで見た目だけならルビーと間違われる……スピネルほどじゃないけれど) >ガーネットの色は確かに様々ですよね。基本は夕日色のアルマンダインですが、 >緑色や黄色やオレンジ、ピンク、紫、褐色などもありますし。 >さすがに直接ロードライト(ピンク・紫)やスペサルタイト(黄色・オレンジ)や >ツァボライト(緑)を見たことはないですが。(写真でならあります。 >当然のごとく純度の高いものなので色がとても綺麗でした) ガーネットは好きなんです〜v 他にも瑠璃とか翡翠とかサファイヤとかエメラルドとか蛍石とかアレキサンドライトとか好きな宝石はいっぱいありますけど、たぶん一番好きですっ! やっぱり一番はパイロープ。確かに基本はアルマンダインですけど………赤系ではやっぱりパイロープの明るい色がいいですね。次いで好きなのはトパゾライトだったりするのですが。黄色………というよりも金色で、すごくきれいなんですよ〜v >何気にガウリイをいびり(笑)つつ、しかっり焚きつけているヴェルスさんもツボです。 いびり………確かにそうなんですが………改めて言われると何ですね(笑)。でもヴェルスさんは別にガウリイを嫌ってるわけじゃないですよー。むしろ好意的に見てはいます。ただ、優先順位の問題と、あと………『からかいがいがある相手』と思っている、というのが一番の問題かと(爆)。 >静かに黙々と、でもしっかりと食べているゼナくんと、多分さほど食べられ >なかったのではないかと思われるヴェルスさんの落差を想像してしまいました。 甘いですっ! ヴェルスさんはしっかり食べていたと思われます。『あの』ヴェルスさんが自分の分を確保できない、なんてことがあるはずありませんからっ(笑)! 続きはまたそうとう先になりそうな予感がするのですが………なるべく早く書くように努力します。 ではではっ。これにて失礼いたします。柚乃でした〜。 |