◆−TimePiece2【告】−みてい (2003/4/28 00:03:40) No.25743


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25743TimePiece2【告】みてい 2003/4/28 00:03:40


こんにちは、みていです。
かーなり合間ができてしまいました(汗)
すでに話が重くなりつつあります(汗)

…独立しても読めるようにしていく、と言っておきながら、大いに前回までの流れを引き継いでいます。
本編のどこかで必ず説明していくつもりでいますので、ご容赦ください(謝)

まだまだ流れに乗り切れず、読みづらいとは思いますが、おつきあいくださいませ。

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 今でこそ笑い話だけどさ。
 そんときにゃ、オレ、怖くなったっていうか。

 信じたくなかったんだよな、つまりは。

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「つまりリナ。
 お前は『ゼロス』の側にあの男がいるかもしれないと言うんだな」

 声を潜めたゼルガディスにあたしは頷いた。
 四人で囲んだ円卓の中心に置かれた懐中時計。
 時計は、時を刻むのを止めていた。
 否、『止めさせられていた』というべきか。




【告】




 あれから南下してセイルーンに入ったあたしとガウリイ。
 近くまで来たんだしついでに寄ってこっかって話になって。
 いーんだか悪いんだかすっかり顔パスになってしまった城の門をくぐり。
 タイミングよくティーブレイクしているゼルガディスと再会した。
「やっほー」
「…何しに来た」
「『何しに来た』はご挨拶じゃないのゼル。
 近くまで来たのに寄ってかないとアメリアが後からうるさいかなって思って来てあげたのよ」
「かもしれんな」
 噂のアメリアはおエライさんと謁見中とかで今ここにはいない。
 憮然とした表情を『わざと』作って見せたゼルガディスはそれまで目にしていた資料を伏せた。
「休憩中だと思ってたのに、ずいぶんと仕事熱心なのね♪」
「そういうわけじゃないさ。
 掴んでおくといい情報ってのはけっこうあってな」
 そう言ってゼルは苦笑する。
 ――― 大小様々な事態に対応するために、『情報』というのはかなり役に立つ。
 どれだけ有効な情報を掴んでいるかで己の立場を良くも悪くもすることができる。
 そしてそれは、『力』を持てば持つほど、その重要性が注目されるようになる。
 そのため、『力を持つ者』は、少しでも多くの情報を手に入れるためにいろいろな手段を用いていた。
「で?何か面白いネタあった?」
「さてな。
 まぁヤツが路銀稼ぎついでに集めてきた情報だ。どこかで何かにヒットするだろうな」
 このご時世、情報というのは商売になる。
 重宝がられる情報ほど、高値で売れる。いわゆる『情報屋』というのが存在するのもこのためだ。
 ゼルの場合、昔利用していた『人脈』をそうおおっぴらに使えなくなった分、めぼしいネタを知り合いに集めてもらっているようだ。
「それで?」
「何よ」
「お前が何の用も無くのこのこここまで来るはずはないだろう。
 用は何だ」
 本気半分、冗談半分で言ってくるゼルガディス。
「だからさっき言ったでしょ。
 どうしても『用』があってほしいなら、『聖王都秘蔵のお宝が見たいっ』て言うわよ。」
「何っ!?」
「『お宝が見たい』っ」
「待てっ」
「『お宝が見たい』っ」
「………すまん、俺が悪かった」
 あたしの本気の色を感じ取ったか、素直に謝るゼルガディス。
「なぁリナ、腹空かないか?
 どっか食いに行こうぜ。ゼルも一緒にさ。
オレたちの泊まってる宿、けっこうメシうまいんだぜ」

「…………………………………。」

 ガウリイのクラゲな発言に、あたしの時間が止まる。
「お?
 リナどうしたんだ。顔が変だぞ」
「あっのねぇっ!」
「どうどう」
「あたしは馬かっ!?
 そうじゃなくてえっ!
 あんた、状況わかってんのっ!?」
 きょとんとするガウリイ。
 頭を掻きむしるあたし。
「いいじゃないか」
「いいじゃないかっって、ゼルも黙っててっ!
 ………………ゼル?」
「何だ」
 ぎぎぎぃっと振り返る。
 もしかして、もしかしなくても、今あたしを制止したのって、コレだったりする…わね。

「ゼル、自分の立場わかってる?」
「無論だ」
「アメリアに感化されちゃった?」
「さてな」

 言いながら、あたしは笑えてきた。
 馬鹿馬鹿しいったらありゃしないわ。
『あのゼルガディス』が、こんな狭いところでじっとしてるかなんて、ちょっと考えればわかることだったわ。
 ――― そうとわかれば。

「おっけー、アメリア拾ってとっとと行きましょ」

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「おばちゃーん、コマイヌサラダもいっこ追加ねー」
「はいよっ」
「あっ、リナさんずるいっ。わたしもくださいっ」
「コマサラ二つねっ」
「オレ、これ」
「『これ』じゃわかんないよっ。ちゃんと名前でお言いなっ」
「らんばだ?」
「ラザニアだろう…」

 食堂を一人で切り盛りしているおばちゃんがカウンターの向こうから返事すると油のはねる小気味いい音がし始めた。
 あたしはタコさんウィンナー突き刺すとにこにこしているアメリアを見た。
「アメリアねぇ、さっきから何一人で笑ってんのよ。
 こう言っちゃあれだけど、かなり不気味よ」
「だってですね、嬉しいじゃないですかっ」
「そぉ?」
「そうですよっ。
 リナさんとガウリイさんふーらふらふーらふら旅してて、なかなか会いに来てくれないじゃないですか」
「……ケンカ売ってんなら言い値で買うわよ♪」
「べ、別に売ってないですよ☆」
「だったらアメリアがあたしたちに会いに来ればいいじゃない」
「それもそうですねっ」
「…おいリナ、アメリアを煽るな」
「ゼルー、お前って自分は出かけるのはよくってももアメリアが出かけるのは嫌なんだあ」
「うるさい」
 わかるわかると何度も頷くガウリイの言葉にふいっと視線を逸らすゼルガディス。
 その顔がほんのり赤くなっているのをあたしは見逃さなかった。
「はいよ、コマサラ二つ。それからラザニア。
 にーさん、覚えとくんだよっ
それから、これはサービス」
「来た来た〜vv」
 がつがつがつがつ。
「おいしいっ」
 もぐもぐもぐもぐ。
「ちょっとガウリイ、あたしのイカウィンナー取ったわねっ」
 ばりばりぱりばり。
「そうは言うけどリナ、オレのマンボウウィンナーさっき食っただろっ!?」
 ぽきんっ
 ごくごくごくごく。
「ボンゴレ、おいしいですよっ♪」
「そんなに食べて平気なのか?」
「たくさん食べても平気ですっ」
 ずずずずずずずずっ
 ばきぃっ
 ――― 世間では、カニを食べるとき、人は沈黙するという。
 しかし、サービスのカニさんが円卓に上がったところであたしたちには当てはまらないのだv

「あれ、奇遇だね」

 そんなあたしたちを黙らせたもの。
 それは不意の来客。

「なんでそこに突っ立ってるのよ」
「ここにいるって聞いたから顔ぐらい見せておかないとと思ってね。
 まさか姫様たちまで連れ出してるとは思わなかったけど」
 わざとらしく肩を竦めて見せるのは『不意の来客』。
 つまり、『お呼びでない』相手。
「状況を正しく把握してから発言するんだな、ストライジェ郷」
「息抜きってわけだね」
 ゼルの嫌味にもどこ吹く風。
 以前会って『悪党』だという感想を抱かせたネイヴァ=ルト=ストライジェは、全っ然変わってなかった。
「アメリア王女?
 そろそろ戻らないと『お父上』が心配されちゃうよ」
「ご忠告ありがとうございます。」
 にっこりと微笑み返すアメリア。
 …うーむ、こういう表情もするのよねぇ…。
 ネイヴァはわずかに目を細めると宿を出て行った。
「何しに来たの、アレ」
「『営業』だろ」
 この話題は終わりたど言わんばかりにガウリイが呟く。
 あたしは、彼の言ったことを真に受けるわけじゃないけど時計を探していた。

「ごめんねぇ、ウチの時計、壊れちゃっててねぇ」
「あぁどーりで」

 おばちゃんのすまさそうな声が飛んでくる。
 壁にかけられていた時計は、動いてはいるものの、あたしが予想していたよりも遥かに未来な時間を示していた。
「リナさん、わたし持ってますよ」
 ようやく気が済むまで食べたアメリアが懐から懐中時計を取り出した。
 ――― それは、『記念』にあたしたちも貰ったもの。

「あ。」
「どうした」

 手元の時計を覗き込むと、時計板が歪んで時計針の進みを止めてしまっていた。
「ぶつけた覚え、無いんですけど…」
 至極残念そうなアメリア。
「直せばいいことよ」

「…リナ」
「どうしたのよ」

 ガウリイが眉を潜めながら懐中時計を差し出した。
『それ』は、あたしたちが貰ってからずっと持ち歩いていたもの。
 ――― この時計も壊れていた。時計板と針の間に小さなカケラが挟まって、動けない針が時折震えていた。


 ――― わたし、願いをこめたんです。
 ――― あの日の記念に。
 ――― あの誓いが、永遠のものとなってほしいから。
 ――― あの場にいた人、みんながそうあってほしいから。


 手のひらに収まるけどポケットに入れるにはちょっと大きい懐中時計。
 アメリアは、あたしたちが前回セイルーンを出た後、これを作って届けさせた。
 見事な細工を施され、時間とともに時計板がその景色を変えるようになっているものだ。
 今ここにある二つと同じ物が、あと二つ存在する。
 一つは、エルメキアの森の奥に。
 一つは、あたしたちと同様、風の向くまま気の向くままに。
 その四つの時計のうち、二つが同時に壊れてしまった。
 一つは、時計針を留める支柱が押し込まれてしまったことにより時計板全体が歪んでしまい、一部破損が見られた。
 一つは、おそらく内部の部品だろう歯車が取れ、時計板と針を止めてしまっていた。
 ガウリイがあたしたちの持っていた時計を振ると、やがてカラカラと小さな音がした。
 見てみると、歯車が取れたことでその場に存在できなくなった部品が一つ、細工の隙間から出てきていた。
 何となく予感がしてアメリアの持っていた時計を見れば、同じ部品がここでは歪んだ時計板に阻まれ、上半身だけを現していた。


『僕たちを止めることができます?』


 ………………急に、思い出された言葉。
「あー、話しといたほうがいいのかなーっ!?」
 半ばヤケッパチなあたしの声に、ゼルにアメリア、ガウリイがこっちを向く。
「…何だ」
「後でねちねち言われるのヤだから今言っとくわ。
 少し前だけど、あたしたちのところに『ゼロス』が来たわ」
「何を企んでる」
「さぁね。
 そこまではあたしにだってまだわかんないわ。
 でも『何か』ロクでもないこと考えてるってことだけは間違いないわ」
「どうしてですか?」
「言ってたのよ。
『僕たちを止めることができます?』ってね」
「複数形だったんですか」
「紫カッパの集団ってのも嬉しくないけど、あいつのことよ、きっとフザケたこと考えてるわね」

「…リナ、どうしてそれを今話したんだ?」

 ガウリイが訊く。
 その響きには、彼が予想しているであろう『あること』を否定してほしい響きがあった。
 だけど。
「これも可能性の一つだ、ってことよ。
 在り得ないとは言い切れない。でしょ?」
 押し黙るガウリイ。

「…偶然、ですよ」
 アメリアが言う。
 顔に苦いものを湛えながら。
「……あんた、心の底からそう思える?」
「…いいえ」
 力無くアメリアは首を振った。

「つまりリナ。
 お前は『ゼロス』の側にあの男がいるかもしれないと言うんだな」

 在り得て欲しくない仮説に辿りついたゼルガディスも問う。
 確認のように。
「あいつの性格からいけば、可能性は、あるわ」
 あたしは懐中時計に視線を落とす。
 ……取れてしまった部品は、同じ『人間』を象ったもの。
 その『人間』とあたしたち、特にガウリイは密接な関係を持つ。
 そして、『ゼロス』は『彼』にしつこく『取り引き』を持ちかけていた。

「ランディ」

 ガウリイが小声で呟いたのは、彼のお兄さんの名前。
 または、『仮説』の条件をすべて満たしている人間の名前。

「近いうちに、エルメキアに行ってくるわ。
 何でもなければ、ただの杞憂で終わるでしょ」

 重くなる空気を無視してあたしは明るい声を出した。

「そうとも限らぬかも知れんぞ。リナ=インバース」
「今は、カブリエフよ」

 ――― せっかくの虚勢を無に帰す、覚えのある声。
 言い返しながら振り返れば、予想どおりの相手がいた。

「ふむ、人間とはややこしいものだな」
「そんなことより。
 あたしが丸めようとしてた場を遠慮無く突っついたその根拠は何よ?ミルガズィアさん」

 ガウリイも、ゼルも、アメリアも、ミルガズィアさんを見ていた。
 金髪の中年男性に変化して現れた黄金竜の長は、再び「ふむ」と頷くと口を開いた。


「『森』が、ざわめき続けていると言えば、察しはつかぬか」


 ――― 最初に気づいたのは、ゼルガディス。
「くそっ」と吐き捨てた。
 ――― その次は、アメリア。
 彼女の大きな瞳が潤んで見えた。

「ゼル、どういうことよ」

「『森』というのはカタートにある無数の『神聖樹(フラグーン)』のことだ。
 それから、『神聖樹(フラグーン)』は共鳴し、ざわめきあう。
 近くの『魔』に反応してな」



 ―――『仮説』が、『現実』になろうとしていた。



/続/

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ああ、登場人物が増えていく(待テ)

○今回の小ネタ
 言い換えれば沖縄名産(?)サラダ

ではでは、みていでした。
多謝♪