◆−GAME 3−潮北 かずら (2003/5/7 23:09:47) No.25896 ┗Re:GAME 3−オロシ・ハイドラント (2003/5/9 19:59:10) No.25912 ┗読んでくださって、ありがとうございます。−潮北 かずら (2003/5/9 23:39:21) No.25917
25896 | GAME 3 | 潮北 かずら | 2003/5/7 23:09:47 |
こん○○わー。 すっかり忘却のかなたになってしまいました……。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 城から空砲が響いた。この音量ならば、町の外にいても十分に聞こえそうだ。 ゲーム開始の合図である。 当日は風が強かった。にもかかわらず、大通りは人でごった返している。協会の入り口も然り。リナたちの姿を見ようと集まった人たちで埋め尽くされていた。まさに人の海だ。 城を正面に見る魔道士協会の屋根の上で、リナ達は街の様子を、その先にそびえる城を見据えていた。 狭い足場で足を前後に揃え、腰に片手を添えて立っているリナ。その右には、光の剣を杖のように両手で支えて座っているガウリィ。左には人形のようにちょこんと座して、風に揺れて顔に掛かる髪を、片手で押さえているアメリア。斜め前には、フードとマスクで顔を隠したゼルガディスが、出窓の屋根に腰を下ろして、立てた片膝に肘を置いている。 と、リナの後ろに黒い影が、スッと立ち上がった。背中合わせに現れたのは、ゼロスだ。 上機嫌のリナは勝気な笑みを浮かべて言った。 「さて、そろそろ行きましょうか」 一際強い風がふき、マントを右から左にはためかせて見事な演出をしている。仲間たちは頷く代わりに彼女を見、無言で立ち上がった。それだけ見れば、かなり様になる光景だが、彼女たちがこれからする事は、ゲームというヴェールに包まれた泥棒行為である。 「では、僕はお先に。遅れないで下さいね」 黒いローブを風に任せ、ゼロスは背中越しにうっすらと目を開けてみせる。 「分かってるわよ」 振り返りもせずにリナも答える。 返事を聞くと、ゼロスは屋根の反対側に飛び降り、瞬時に姿を消した。 「リナさん、私たちも!」 アメリアが目を輝かせている。 「アメリア。言っておくが、俺たちがこれからするのは泥棒だぞ」 ゼルガディスが突っ込みを入れる。 「分かってます!」 泥棒という言葉に抵抗感があるのか、アメリアは少し頬を膨らませた。 「んじゃ、行くわよ! みんな!」 リナの合図と供に、ガウリイを二人係で抱えて空に飛んだ。瞬間に、観客たちから感嘆の声と声援が立ち上り、後押しするように見送っていた。 「開門――!」 声を合図に、大きな門が徐々に開いていく。リナ達のために開け放たれているのだろう。早い話が「来るならいつでも来い」という意思表示である。衛兵たちの自信が伺えそうだ。 門の先では幾人もの兵士が、槍を片手にあちらこちらに立っていた。 兵士たちは周囲に向けて厳しい目をしている。 と――。 そのうちの一人が、何気なく視線を上に向け、 「来たぞ! あそこだ、空にいるぞ!」 一人の兵士の叫びに、全員の目が空へと向けられ、何人かの兵士が、その姿を確認した。黒い神官服の男、ゼロスであった。 若い兵士が勇んで槍を構える。 「来たか」 男は呟くと静かに、しかし堂々とした動きで異動した。 「慌てるな」 「エクセブ隊長……」 側に来た恰幅のいい男に、若い兵士はさっと敬礼をした。 「確かに、魔道士協会の奴だな。だが――」 隊長は怜悧な様を見せようとする。 「一人だけか?」 「はい」 「相手は五人いたはずだ。お前たちは残りの四人の所在をつきとめろ!」 言う傍から他の兵士が姿を見せ始める。エクセブは眉間に皺を寄せると、大声で怒鳴った。 「ディック、なぜここに居る? 誰が集合をかけた!?」 名指しされた若い兵士は、慌てて止まろうとしたが為にバランスを崩し、危うく前のめりに倒れるところだった。 エクセブは周りを見渡し、 「お前たちもだ。陽動が目的かもしれん、各自持ち場を離れるな!」 と、集まってくる兵士の動きを制止するように、声を張り上げる。怒られてはたまらないとばかりに、動いていた兵士たちは、一斉に元居た持ち場へと帰って行った。 と、そこへ、間髪いれずに、一人の兵士が血相を変えて走ってきた。 「た、たた、隊長! 大変、大変ですっ!」 「如何した!?」 兵士は動転している。言葉がすんなりと出てこないほどに慌てふためいていた。 「た、たい……笏杖が盗まれました!!」 ………………。 一瞬何を言われたか理解できなかったエクセブ。 ………………。 「……なにーっ!!」 その場にいた全員が、今までに無いほどに目を見開き、愕然としていた。 一体何時の間にそんな事態になったというのだろうか。猫の子一匹、出入りする隙も無い程に厳重な警備体制だったはずであるにも拘らず。今現れたばかりと思った相手が、すでに一仕事終えていたなどと、普通ならとても考えられない。 しかし、そんな思いも、あっさりとゼロスが崩してゆく。 「あぁ、これの事ですか?」 一瞬のものとにゼロスは全員の視界から姿を消し、瞬時に地へと降り立ち現れる。空間を移動したのだが、ゼロスの正体を知らない者にしてみれば、目にも止まらぬ動きでしかないだろう。しかしまた、その得体の知れなさが、相手へのいらぬ不安を駆り立て、警戒心を強めさせる結果を導くのだが、ゼロスにとっては、ますます好都合である。不安と警戒心にとらわれた人間の心は、彼にとっては美味しい糧、仕事中の一服といったところだろうか。 ゼロスは誰の目にも映るように、持っていた錫丈の影から、盗み出した笏杖を取り出てみせた。さわやかな笑みが、何よりも嫌味だ。 笏杖をバトンのように一回転させると、取り付けられた梨型のイエローダイヤが燦然と輝きを放ちだす。『もう一つの太陽』と名付けられるだけあって、大粒の存在感と、鮮やかな黄色の輝きは目を引くものがあった。 「きっ……貴様―っ!」 ゼロスの王笏に対する粗雑な扱いに、エクセブは激昂し、腰のモノに手をかけた。 「おやおや。短気ですねぇ」 「うるさいっ! 大人しく盗んだものをこっちに渡せ! さもなくば――」 「さもなくば、何ですか? 斬りますか? 僕を」 からかう様にゼロスは横を向いて言い放った。その間にも、手にした笏杖を、くるくると回し続ける。均衡を取りにくいはずであろうにもかかわらず、笏杖は綺麗な円を淀みなく描き続けていた。 「斬る!」 一気に鞘から剣を引き抜いた。幅のある長剣を、両手で持って、肩の位置で水平に構える。 「でぇやぁぁー!」 声と共に、ゼロスめがけて突っ込むエクセブ。だが、ゼロスとて、そもまま切られる気など毛頭ない。余裕を持ってひらりとかわす。流れるような身のこなしで移動すると同時に、長剣が反光し、その場を凪いで行く。 「く、ぐっ……!」 奥歯をかみ締め、エクセブは鬼の形相を見せる。 「まぁまぁ、そんな怖い顔なさらないで下さいよ。そうでないと……」 ゼロスは瞬時にエクセブの横をすり抜け、 「このまま御暇しちゃいますよ!」 変わらぬ笑みでそう言い残して、一目散に走り去った。 「あ、コラッ! 待たんかーっ!」 エクセブは抜き身の剣を振り回しながら、後を追いかけるのだった。 ゼロスは飄々として迎え出る幾人もの兵士の攻撃を、のらりくらりとかわして行く。汗一つかくことなく、まったく変わらない笑みで、気の抜けた悲鳴のような声を上げながら行くゼロスの様子に、兵士達の間からも焦りと怒気が膨らんでいた。危ういようでいて、その実綿密に計算されたかの動きは、誰の目にも、相手の神経を逆撫でしているようにしか受け取れない。 「なんて奴だ!」 「ふ、ふざけやがってっ!」 「逃がすな!」 まだ始まって間もないというのに、兵士たちの口からも、焦りの声が漏れ始める。もしもここでゼロスが魔族だと知れば、恐らく手出しする者の数は格段に減り、場合によっては逃げ出す者も出てくるなどという、醜態を晒しかねないだろう。たとえ盗まれた物がどれだけ重要なものであっても、誰もゲームでなどで死にたくはない。 知らぬが仏とは、この事だ。 「仲間と合流されると厄介だ! 追えっ! 絶対に逃がすなっ!」 声が効いたのか、追っ手は次第に数を増していった。 「めげない人たちですねぇ」 しかし、ゼロスは相変わらずあっさりとあしらって行く。数など問題ではないようだ。さすがにゲームで殺すわけにも行かず、またリナにも「絶対に殺しちゃダメ!」とキツく言われている為、死体が転がっているなどという洒落にならない状況ではないが、それでも怪我人の数だけは上昇し続けている。もっとも、ゼロスは手出ししていないので、実際には全員自滅して出来た怪我でしかないのだが。 「まぁ、最終的にどれだけ付いて来れるか、見物といえば見物ですが。そろそろリナさんたちにバトンタッチしないと……」 順調に進むゼロスの視界に、リナたちとの合流地点が見えてきた。大通りの入り口。そこがリナたちと待ち合わせ場所のはずである。通りの入り口には、左右に大きな塔のようなオブジェが対を成して建てられていた。普段は石造りの表面がそのままだが、祭りの為に、この数日間だけは、カラフルな布を巻きつけられ、先端には赤い風船を幾つも繋げて作った巨大な橋桁が、中に詰められたガスの働きでアーチを描いていた。 並び建つ建物の、向かって右側の屋根の上に、四人が待っているのが見えた。 〜つづく〜 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 次はもう少し早く投稿できるよう、善処したいと思います……。(あくまでも「思っているだけ」ですので、遅くなっても、石を投げたり、「嘘吐き!」と指をさしたりしないで下さいね。) ではでは……。 |
25912 | Re:GAME 3 | オロシ・ハイドラント URL | 2003/5/9 19:59:10 |
記事番号25896へのコメント ぐっどいぶにぃんぐラントです。 ついにゲーム開始 ……と思えばあっさりゼロスが…… 陽動かと思えば本命だとは…… これは意外な展開でしたね。 でもこれであっさり片付くのでしょうか。 うまくいきすぎているような…… それに裏でも何かあるんじゃないか、という感じでしたし…… 文章詳しくて、その割にスピード感を保っていて凄いです。 後、セリフは私、下手なので凄いと思います。 それでは続きがんばってください。 |
25917 | 読んでくださって、ありがとうございます。 | 潮北 かずら | 2003/5/9 23:39:21 |
記事番号25912へのコメント こん○○わー。 >ぐっどいぶにぃんぐラントです。 ごきげんよう! ラントさん。 >ついにゲーム開始 >……と思えばあっさりゼロスが…… >陽動かと思えば本命だとは…… >これは意外な展開でしたね。 はい。ついに始まりました。 最初はリナたちに、なんとかしてもらおうと思っていたんですが、展開的に城への被害が洒落にならないような想像しか出来なかったため、穏便に、ゼロスに取って来てもらう羽目になりました。最初に現れたところまでは、陽動のつもりだったんですけどねぇ……。(^^;) まさに行き当たりばったりです。はい……。(ー。ー;) >でもこれであっさり片付くのでしょうか。 >うまくいきすぎているような…… >それに裏でも何かあるんじゃないか、という感じでしたし…… う……。(やっぱりそう思いますよね……) それは、次回まで待ってくださいね。 なるべく、内容をひねって、面白く書くよう、善処しますので。 >文章詳しくて、その割にスピード感を保っていて凄いです。 >後、セリフは私、下手なので凄いと思います。 そう言っていただけると、心安らぎます。 私に言わせれば、文章が蛇行していますし、まとまり無いですし、なんか、焦って書いているのがありありと見えて、反省のしっぱなしです。もう少しゆとりがほしいです……。 セリフは……。私も苦労しています。一番修正が激しいです。 >それでは続きがんばってください。 はい……。命に代えて(代えるのかっ!?)がんばらせて頂きます。 ですので、また暫くお待ち下さい。(爆) ありがとうございました。 |