◆−神の理 火の奇跡(カップリングはフィリアと……誰だ?)−オロシ・ハイドラント (2003/5/15 18:02:13) No.25968
25968 | 神の理 火の奇跡(カップリングはフィリアと……誰だ?) | オロシ・ハイドラント URL | 2003/5/15 18:02:13 |
間にドデカいスペースがあるのでそんなに長くはないです。 ◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆ ―神― すべてが終わりました。 もう闇が私を、苛むこともありません。 すべてが終わったのです。 光も私には、届きません。 孤独です。 私は、永遠に孤独です。 無機質な蒼。 静寂の風。 差す光さえ、永遠の安息に似て、孤独で暗い。 「…………」 石造りの大広間は、優しげな眼差しで彼女を見ていた。 青玉を思わす沈黙の壁は、光をすべて彼女へ向けていた。 「火竜王……様」 空間の中心、絶対の点に焔は燃ゆる。だがそれは、儚き揺らめき。 幻想を揺蕩(たゆと)う、微睡の眼差しはけして彼女を見てはおらぬ。 眠り続けた。潰え掛けた意識。 「…………」 彼女は言葉を模索する。ゆっくりと思考を闇に沈めた。 熱されていた感情を落ち着かせて、歯車を廻す。 文字の羅列。大河が見えた。 そして、慎重に言葉を紡ぎ出す。 「……私は、わがまますぎるのかも知れません」 数十年ぶりにも思えた声音。事実、十数年において出でなかった言葉が、今日は降りたのだ。 フィリアは何度、眼前の竜へもの言おうと思ったか。 「……もう、孤独は嫌なのです」 沈黙。 「……誰も頼れるものは、いません」 やがて、重圧。 「……辛いの、です」 絞り出す。 「……あなた様でさえ、私に話し掛けることすらありません」 フィリアは、震えていた。 もう誰もいないのだ。 一族は絶えた。 そうすべて、滅びた。けして還らない。 「……滅びを、望む、ことは、罪、なの、で、しょう、か」 涙。一層、凍えさせる。 「……こんな、世界、なんて……」 悲壮。 絶望。 そして……不信? 「間違ってるぜ」 だが、衝撃。驚愕。 「!?」 打ち据えられて、涙が溢れ出る。 だが、温かく優しい涙。 「……誰?」 恐る恐る、呟いた。 急に笑顔を浮かべようとする、自らが恥らしい。 「神は降りるはずだ」 懐かしい。そう思った。 追憶は雨、だが狭間には光があった。 「……ヴァル」 鈍色の世界の、唯一の白。 フィリアは、火竜王に背を向けた。 「……あんたは信じる神を知らなすぎる」 精悍な若人。笑みを湛えていた。 「……どういう、こと?」 涙の残滓が残る声で、フィリアは彼のものへと尋ねた。 すでに、笑みを隠しはしない。 そして、 「……お前は、自然界で燃え続ける火を見たことがあるか?」 帰って来るヴァルの言葉は、まさしく神のそれに見えた。 「…………」 思考。停止。 「あんたの神は、それと同じさ」 そして、射抜かれる心。 「……火は他と違って、常に存在してるわけじゃねえんだ。つまり常に恩恵があるわけじゃねえ」 水は常に流れ、大地と天は常にすべてを見守り続ける。 しかし火はけして在り続けることはなく、輝いては虚空へと消ゆ。 「信じてみろよ。仮にも巫女なら、祈り続けてみろよ。……それで報われなければ魔に染まっても誰も文句は言わねえよ」 「……ヴァル」 足音が響く。 近付いて来る。 「……何か、ヴァルじゃない……みたい」 ヴァルは……笑った。 腕を伸ばす。 彼女を包む大いなる環。 光が満ちる。熱が迸る。 「……なら、これが俺の証だぜ」 唇は、彼女の頬を熱く、濡らした。 火照りだす顔。絶頂の光。 フィリアを抱き締め、 「あんたは、孤独じゃねえ」 ヴァルは言ってくれた。 そして…… ――――――閉幕。 ―人― 夜が羽ばたいた。 旋律が彼女を揺さぶり、夢の世界を破壊する。 「……うっ、ううん」 光が還って、目が覚めた。 フィリアは独り、寝台に横たわっていた。 夢の残滓が響き、苛む。 ――分かっています そう、ヴァルは死んだ。フィリアを置いて……。 すべて、哀しい幻想。 残影と妄想。真実ではない。 ――でも……信じますね フィリアは起き上がり、歩き出した。 火竜王は、今も眠り続ける。 救済をおこなうその日を待つため? フィリアには、希望の種が宿されていた。 黙し、祈り、願い続ける。 張り詰めた時を、河の流れに喩えて……。 祈る気持ちを忘れずに……。 救いがいつか降りると信じ……。 そして数ヵ月後。 「よう、フィリアっ!」 神へと祈るフィリアに対して、声が掛かった。 それでも黙々と、祈り続ける。 「……って、お祈り中か。邪魔したな」 だがその声により、フィリアは焦りに負け、振り向いた。 「いえ、まっ、待ってください!!」 必死で取り繕おうとする。 そして、それが届いたかのように、 「……そうか。にしても久しぶりだな」 男は快さを保っていた。 「ええ、お久しぶりです。」 金色の髪を持ちし、壮年の剣士。 「……ガウリイさん」 幻影は去り、救いは降りた。 どこかでヴァルの微笑みを錯覚した。 「……お茶の用意をして来ますね」 フィリアが駆け出していく様を、ガウリイと火竜王は見守っていた。 すべてが終わっていたのかも知れません。 しかし、私に光が差しました。 彼が照らしてくれたのです。 私は今、救われました。 彼は去るかも知れません。 でも、もう孤独は恐れません。 永遠では、ないのですから。 火竜王様……慈悲をありがとうございます。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――閉幕。 後書 こんばんはラントです。 何となく、書いてみました。 それでまず、問題なのがこの話のカップリングです。 ヴァルフィリか? ガウフィリか? とのことです。 私は断然、ガウフィリだと思っています。 まあヴァルフィリっぽいかもぉ、とも思うけど、信じるものは巣食われる……じゃなくて救われる。というテーマな感じの話。 だからガウフィリ。ガウさん、歳食っててもガウフィリです。火竜王とフィリアでも……。 それと火についてヴァルが語ったアレ。 私は、火を他の三つと同列で考えたくないのです。 だから下位として、常に考えてきたのですけど(露となってはないが)、最近になって頂点ではないかと。 普段はいないけど、ここぞという時に大活躍。それが火でしょう。 それにしても、ヴァルと書くと某迷宮探索ゲームの小説の一つに出て来る、美貌の狂った魔術師を浮かべてしまう。絶版済みの本だけどマジ名作。 まあとりあえずこれで……。 読んでくださった方、どうもありがとうございました。 最後に……私って愛が足りない。 没タイトル集 ・ 救済者(かりゅうおう)の理(ことわり) ・ ヴァルガーヴの基礎理論 ・ 祈りよ。竜に届いているか ・ 最後の竜に捧げる言葉 ・ 神な火 |