◆−「シャボン玉」(ゼロリナ、読み切りです)−月影瑠璃 (2003/5/24 11:10:21) No.26060
 ┗Re:「シャボン玉」(ゼロリナ、読み切りです)−エモーション (2003/5/27 23:09:59) No.26094


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26060「シャボン玉」(ゼロリナ、読み切りです)月影瑠璃 E-mail 2003/5/24 11:10:21


ふと、ルームメイトの本棚に、シャボン玉のボトルが置いてあったのを見て、
思いついた話です。
だからたいして意味があるわけじゃないんですけど・・・。

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「シャボン玉」

『シャボン玉とんだ。
屋根までとんだ。
屋根までとんで、
こわれて消えた。』

「リナさんって、シャボン玉みたいですよね。」

平穏な午後の町並み、シャボン玉で遊ぶ子供達の姿を見て、ゼロスは
唐突にそう言った。
ガウリイたちは別行動で、ここにはいない。
リナとゼロスは二人きりで歩いていたのだが。

「・・・どういう意味よ?」

太陽の光を受け、キラキラと輝くシャボン玉達。
それらを一旦視界に入れてから、リナはゼロスの方へと向き直った。

「いえ、ふとそう思っただけで・・・ただ、シャボン玉って、直ぐに壊れて
しまうじゃないですか。空(うえ)を目指して飛んでゆくのに、結局
辿り着けずに弾けて、消えてしまう。」

「・・・あたしの命は儚いと、そう言いたいの?」

自分のコトを弱い、そう言われたような気がして、リナは少し不機嫌な顔になる。

「・・・ええ、そうですね。」

そんなリナに、苦笑と言葉を返しながら、もう一度シャボン玉へと、
ゼロスは目を移した。
子供達の元から離れたシャボン玉は、屋根の辺りまで飛んで、壊れて
消えてしまった。

「・・・まあ、魔族から見れば、あたし達人間の一生なんて、シャボン玉みたいに
一瞬で消えちゃうもんなんだろうケド。」

妙に感傷的になっているゼロスを見て、リナは溜息を吐く。
こういうゼロスを見ると、何故かリナまで調子が狂ってしまう。
まあ、感傷的になっている魔族、というのは滅多に見られる物じゃない様な気は
するが、だからといって、別段得した気にもならない。

「キラキラしていて、似ていると思ったんですよ。」

そう言ったゼロスの顔は、いつものニコニコ顔。
だが、心中は穏やかではなかった。
いつだって輝いている彼女の生は、あまりにも短くて。
いつかは、あの弾けたシャボン玉の様に、目的地(うえ)に辿りつけぬまま、
壊れて消えてしまう。
それは永劫の時を生きる自分にとっては、刹那とも呼べるようなもので。
生を欲しながらも何時かは息絶えてしまう人間と、滅びを求めながらも
生き永らえる魔族。
ふと、矛盾だな、と思った。
そして、皮肉だ、とも。

ただただ飛ばすだけという行為に飽きたのか、子供達はシャボン玉を
追いかけ始めた。
触れようとして、手を伸ばす。
しかし、当然の様にそれは、指が触れた瞬間に弾け、壊れてしまう。
無邪気な子供は壊れてしまったソレに対して、一瞬だけ不服そうな、
そして悲しげな表情を浮かべるが、直ぐに気を取りなおし、また新しい
シャボン玉へと手を伸ばす。
あの壊れたシャボン玉と同じはずなのだ、魔族にとっての人間なんてモノは。
触れて壊れたって構わない。
いくら殺したって、罪の意識なんて感じない。
いつかは壊れてしまうものなのだから。
子供達の様子を黙って見ていたゼロスが呟く。

「キラキラしていて、思わず手を伸ばしそうになるんです。
手に入らないって事ぐらい解っているのに。」

思わず触れてしまいそうになる、目の前のこの少女に。
でも、触れたらきっと壊れてしまうから、あのシャボン玉みたいに。

「壊れないわよ、あたしは」

自分を見ているゼロスに対し、リナは、ハッキリとそう言いきった。
まるで、ゼロスの思考を読んでいたかのように。

「ましてや、消えたりなんて絶対にしない。あんたに触れられたぐらいじゃね。」
「リナ・・・さん?」

ああ、どうしてこの少女は、こんなにも強いのだろう?
リナの言葉に対して目を見開いて立ちすくんでしまった闇色の神官を見つめ、
リナは肩を竦める。

「ゼロス・・・あんたって、結構バカだったのね。」
「・・・は?」

突然のリナの暴言に、思わず思考回路が止まりかける。

「あんたがあたしを殺そうとしない限り、あんたに触れられたぐらいで
あたしが死ぬわけないじゃない。まさかあんた、あんたが抱きしめた
ぐらいで、あたしが壊れるとでも思ってるの?ヒトのコト見くびるのも
いい加減にしなさいよ。」

真っ直ぐな紅い瞳で、ゼロスの紫の瞳を射抜く様に見つめるリナ。
そのルビーのような瞳を見た瞬間、ゼロスの身体が動き、次の瞬間には
リナをその腕の中へ閉じ込めていた。
周りの視線なんて気にしない。
今、自分の腕の中に抵抗もせずに収まっている少女に、戸惑いながらも囁く。

「僕って、バカですね。」
「ええ、そうね。」
「一度触れてしまいましたから、もう一生放しませんよ?」
「別に構わないわ。」
「・・・・ありがとうございます。」

先ほどまでシャボン玉で遊んでいた子供達が、二人の周りに集まってきて、
冷やかし始める。

「あー、にーちゃんたち抱き合ってるー!!」
「ヒューヒュー!!」

騒がしくなった周りに気が付き、ゼロスはいつものニコ目に戻ると、
抱き締めていた手を弛め、リナに微笑んだ。

「帰りましょうか?リナさん。」
「ええ、そうね。」

子供達に冷やかされながら、もと来た道を戻っていく二人の手は、
しっかりと固く繋がれていた。

【END】

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26094Re:「シャボン玉」(ゼロリナ、読み切りです)エモーション E-mail 2003/5/27 23:09:59
記事番号26060へのコメント

こんばんは、はじめまして。
エモーションと申します。

「シャボン玉」……読ませていただきました。
きれいでふわふわと浮いて、そして触ると壊れてしまうシャボン玉。
ちょっと風が強いだけですぐに翻弄されて、割れてしまったり、
あっという間にどこかへ飛ばされてしまうシャボン玉……。
ゼロスたち魔族から見れば、確かに人間の命はシャボン玉のように
見えるのかもしれませんね。

キラキラしているシャボン玉に、リナを連想するゼロス。
リナは確かにキラキラしていると思いますが、触ったくらいでは
壊れないだろうと私も思います。
シャボン玉に見えるだけで実際は違うもので、とても頑丈だろうと(笑)
……すみません、ギャグですね、これでは。

基本的にはガウリナ派なんですが、(でも大抵の組み合わせは平気ですが)
魔族らしからぬ感傷に浸ってるゼロスに、ついつい惹かれてしまいました。
また、月影瑠璃様の書かれる魔族なゼロスも見てみたいな、と思いました。

それでは、短いですがこの辺で失礼いたします。