◆−存在する意味 その1−雫 (2003/5/24 15:08:28) No.26066
 ┣存在する意味 その2−雫 (2003/5/24 18:01:12) No.26069
 ┣存在する意味 その3−雫 (2003/5/24 20:58:20) No.26070
 ┣存在する意味 その4−雫 (2003/5/28 15:23:51) No.26095
 ┃┗Re:存在する意味 その4−オロシ・ハイドラント (2003/5/30 19:43:15) No.26106
 ┃ ┗Re:存在する意味 その4−雫 (2003/5/31 13:07:20) No.26109
 ┣存在する意味 その5−雫 (2003/5/31 18:07:21) No.26111
 ┣存在する意味 その6−雫 (2003/6/1 13:29:56) No.26116
 ┃┗Re:存在する意味 その6−オロシ・ハイドラント (2003/6/3 21:28:07) No.26136
 ┃ ┗Re:存在する意味 その6−雫 (2003/6/4 18:35:06) No.26139
 ┣存在する意味 その7−雫 (2003/6/6 23:00:42) No.26151
 ┣存在する意味 その8−雫 (2003/6/7 17:52:44) No.26156
 ┃┣Re:存在する意味 その8−氷月椋佳 (2003/6/7 18:21:03) No.26157
 ┃┃┗Re:存在する意味 その8−雫 (2003/6/7 18:52:56) No.26158
 ┃┗Re:存在する意味 その8−オロシ・ハイドラント (2003/6/11 21:11:50) NEW No.26191
 ┃ ┗Re:存在する意味 その8−雫 (2003/6/12 18:45:10) NEW No.26205
 ┗存在する意味 その9−雫 (2003/6/12 20:57:04) NEW No.26207


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26066存在する意味 その12003/5/24 15:08:28


 こんにちは。今回降魔戦争をテーマにしてみました。読んで下さい。魔族中心です。
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   存在する意味 その1

 フィブリゾは脱力していた。シャブラニグドゥ様が七つに別れ、もうここには居ない。そのせいで魔族全体が弱くなってきているような気もする。勿論、腹心とその直属の部下は大丈夫だ。しかし、この状況を長引かせていてはいつ神の側に攻め込まれても文句は言えない。
――目覚めさせる?魔王様を一つだけでも・・・。
  肝心の魔王様が何処に居るのか分からないのに・・・。
 フィブリゾは内心でそれも悪くないと思った。旅をするのも悪くはない。もしかしたら見つかるかもしれない・・・。フィブリゾは闇に向かって言った。
「ノア・・・」
「はい。」
 闇の中から一人の女が現れた。血のように紅い髪。黄金に輝く瞳、唇に浮べた人を凍りつかせる恐ろしい微笑。獣神官・ゼロスの微笑とは正反対である。冥神官・ノアにフィブリゾは言った。
「他の腹心に伝えて。僕はしばらく旅をする。いいもの連れて来るからって」
「私は連れて行ってはくれないのですね・・。」
「スカイとクリアは連れてく。クローバーは・・・ノアが淋しくないように置いてくね。」
 16歳ぐらいに見える少女ノアは溜息を漏らした。そして苦笑してから言った。
「クローバーは嫌いなんですが・・・まぁ良いです。では行って来ます。」
 ノアは空間に溶け込んだ。フィブリゾがその空間に取り残された。

 ノアは初めに獣王の所に行った。ノアは獣王の家の扉を開いた。そこに自分とは対象的な微笑を浮べた青年がいた。獣神官・ゼロス・・。強いと噂だが嘘のような気もする。ゼロスは言った。
「ノアさん今日はどうしたんですか?」
「それは・・・秘密です。」
「またですかぁ?どうせ獣王様に用でしょ?」
 ゼロスは内心苦笑した。ゼロスは彼女に興味があった。別にどうとゆう訳ではない。しかし、気付けば自分は彼女にひどいあだ名を付けられていた。
「当たり・・・。さすが生ごみ。」
「ノアさん、生ごみはやめて下さい。」
「あたしより弱いやつはごみ同然。あんたはまだ生っぽいから生ごみ。」
「あぅ。」
 ノアは獣王の部屋に行った。しかし獣王はいないノアは手紙を残してその場をさった。次は魔竜王の所である。ノアは魔竜王の家に着くなり言った。
「不燃ごみぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「誰が不燃ごみだぁぁぁぁ!?」
 そう言って現れたのは竜将軍ラーシャート。ノアは恐ろしい笑顔で言った。
「あんたv」
「なぁにぃぃぃぃぃ!!!?」
「とりあえず冥王様が旅出たからガーヴ様に伝えといてよ。」
 ノアは逃げるように空間を渡った。次は・・・、覇王の処だろうか。
 ノアはもう覇王の城の中にいた。ノアはある一室の中に入った。そしてベッドで寝ている少女に言った。
「覇将軍・シェーラ!親友ノアが来てやったんだ!起きやがれ!」
「はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
 そう言ってシェーラは飛び起きた。そしてしばらく奇声を上げた後、
「なぁぁぁぁんだ。ノアじゃない。」
と言った。ノアの頭の中で何かが切れた。
「平和ボケしてんじゃねぇぇぇぇぇぇ!」
「ごめん。」
「覇王様に苛められてない?」
 シェーラが首を横に振る。覇王は嫌われている。ノアは言った。
「冥王様から伝言。旅するからその間勝手なことは許さないって。覇王様に伝えといて。」
 シェーラが頷くのも見ないでノアは空間に消えた。

 「ん〜」
 フィブリゾは大きく伸びをした。人間の世界の空気は殺気にまみれた魔族の場所とは違う。フィブリゾは少し勿体無く思った。この世界はこんなにキレイなのに、自分は滅ぼす為にここに存在しているのだ。しかし自分は心のどこかで滅びを、あの方のもとに還ることを望んでいる。
「冥王様。」
 そう言ったのは冥神官・クリアだった。年頃は15歳ぐらいに見える。漆黒の髪は風に揺れて乱れている。肌が白く黒い瞳には今冥王が映っている。無表情なその顔でクリアは言った。
「スカイがいません。」
「マジ!?」
 フィブリゾは驚いた。スカイは冥将軍なのだが、どこか人間じみているのだ。彼女はよく言う。
   『私は魔族の正義を貫いているんです。』
 意味はよく分からない。フィブリゾが言った。
「とにかく探すよ」
            「あっ!フィブリゾ様!」
 フィブリゾが声のほうを見た。短い茶色の髪の毛が少しはねている。年は12ぐらいだろう。白い肌の可愛らしい少女だ。冥将軍・スカイである。フィブリゾは言った。
「どこ行ってたの!?」
「すみません。迷子になってしまいまして。この方が助けてくださったんです。」
 スカイの横には見知らぬ少年がいた。繊細なガラス細工のような銀髪。年は12歳ぐらいだろう。白いとゆうよりは透けるような白い肌。しかし、フィブリゾが惹かれたのはその炎の色とも血の色とも似た・・・
       紅の瞳・・・・・

*************************************
 雫です。降魔戦争ちょっと前から降魔戦争が終わるまでを描きたいんですが、疲れます。でも、手を抜かないよう頑張りたいです。とりあえず冥王の部下達はオリジナルです。4人います。海王様にもいます。オリジナルの部下。気長に読んでいただけたらうれしいです。それでは・・・。

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26069存在する意味 その22003/5/24 18:01:12
記事番号26066へのコメント

 こんにちは。雫です。挨拶苦手なので何を書いたら良いか・・・。とにかく始めます。
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   存在する意味 その2

 海王は溜息をついた。冥王の部下・・ノアが来るのが分かった。海王が言った。
「ダルフ・・。」
「何でしょう?」
「ノアが来るから迎えに行ってあげなさい。」
「あ・・・はい。」
 海将軍・ダルフは一度会釈すると消えた。
 ダルフは扉を開けた。そこにノアがいた。ノアはその青年を見て赤面した。海のように深い青をした長髪。落ち着いた表情をした青い瞳は水で出来た鏡のようにノアを映していた。ダルフは言った。
「どうした?」
「あ・・・あの・・・」
 ノアは戸惑った。体が熱い。ノアは言った。
「海王様に会わせて!」

 フィブリゾは溜息をついた。気になる。あの少年の瞳。結局スカイが御礼をしたいと言って彼の家まで来たのだ。フィブリゾは言った。
「ありがとう。僕はフィブリゾ。こいつはクリア。」
「どうも。よろしくお願いします。」
 クリアは人間にだけ浮べる優しい笑顔を作った。この笑顔でクリアは人を何人も騙してきた。少年は言った。
「僕はアルト。」
 フィブリゾはアルトを見た。
ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉんっ
 突然爆発音。フィブリゾはやばいと思った。音がしたのは台所。スカイの居る所だ。何をしたのだろう。料理と言いつつレッサーデーモンを創っているのではないだろうか。アルトが台所に向かう。フィブリゾとクリアも後を追う。
 そしてそこには・・・・。台所だったものが炎上していた。その場でぴんぴんしているスカイが言った。
「ごめんなさい。料理・・・下手で・・・。」
 下手ですむ問題じゃないとフィブリゾは思った。アルトは言った。
「スカイって結構不器用なんだね。」
どしゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ
 思わずクリアとフィブリゾがこけた。
――どんな神経してるの!?
――この人間侮れません。
 スカイが泣きそうな表情で言った。
「すみません。どうやって償えば・・・。」
 アルトは溜息をついた。しかしクリアが言った。
「住み込みで台所を直させて頂きます。」
「え・・・ク・・」
 フィブリゾの反論を右手で押さえ込むクリア。クリアはフィブリゾに聞こえる声で言った。
「彼の中から赤眼の魔王様に似た気配を感じます。もしかしたら・・・、彼の中に魔王様が・・・・。」
 フィブリゾはアルトを見た。アルトは言った。
「良いですよ。」
 フィブリゾは気付いた。アルトの目が、いつもスカイを見ていることに。フィブリゾはアルトの精神面に少し侵入した。


   しばらく蒼い景色が続いた。
          モット奥ヘ・・・
   突然変化がおとづれる。蒼い世界に映るスカイの笑顔・・。
          見タイノハモット別・・・・
   世界が紅く染まる。そして最後に一瞬
              赤眼の魔王・・・・・

「フィブリゾ様」
 聞こえてきた声にフィブリゾは手を伸ばした。フィブリゾは目を開けた。そこにスカイが居た。フィブリゾは周りを見た。みんないる。フィブリゾは自分がアルトの心の中を覗き見た事を思い出した。しかし、何かに拒まれた。アルトではない。
――あれは・・・魔王様・・?
 フィブリゾは言った。
「ちょっとアルトと二人っきりにしてくれない?」
 その言葉を聴くとスカイとクリアは出て行った。アルトが戸惑った顔をした。フィブリゾは無邪気な表情で言った。
「アルトさぁ・・。スカイのこと好きなの?」
「え・・?」
「目がずっとスカイを追ってたよ。」
 アルトの顔が赤くなる。アルトが頷く。しかしフィブリゾは言った。
「残念だけど・・無理だよ。住む世界が違うもん。」
「なんで!?」
「僕達が魔族だから。」
 絶望。フィブリゾはその感情を面白く思った。フィブリゾは言った。
「まぁ、方法が無いわけじゃないけど・・?」
「どうすれば良いの?」
「君の中に居るモノを目覚めさせれば君も魔族になれるよ。」
「目覚め・・・させる?」
 アルトの頭はもう真っ白になりかけていた。とにかく好きな人の傍にずっといたい。それだけだった。それは心の中で手に入れたいと言う欲望に変わってくる。冥王は言った。
「赤眼の魔王様の存在を認めるんだよ。君の中に居る魔王様の存在をね。」

      赤眼の魔王・・・ルビーアイ・シャブラニグドゥ

 そこでアルトの意識は自らの精神に引き込まれた・・・。

*************************************
 さぁ。どうなるんでしょう。オリジキャラが多くて困ります。それでは次も書くはずなので読んでいただけたら嬉しいです。それでは・・・。

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26070存在する意味 その32003/5/24 20:58:20
記事番号26066へのコメント

 こんにちは。雫です。『存在する意味』もついに三回目です。出来たら読んでください。
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   存在する意味 その3

 アルトは暗い世界にいた。目に映るものは虚無だけだ。しかし何かが居る。研ぎ澄まされた感覚が確実に目に見えないソレを捉えている。声が聞こえた。
『我が宿主よ。何を望む?』
 アルトはその質問に答えた。
「彼女と・・スカイと一緒にいたい。永遠に・・・。」
 自然に紡ぎ出される言葉。声が笑った。
『我等から見れば弱き存在。そんな物と一緒に居て何になる?』
「彼女と居られれば僕はそれだけで良い」
 声はアルトの本心に面白そうに見つめた。
『彼女・・・彼女はお前をどう思っている?』
「それは・・・・・・・・・・・・・・」
『愛しているのかそれとも彼女はお前の事を・・・』
「うるさい!」
 アルトが叫んだ。しかし心は彼女の気持ちを考える事は無い。
「うぜぇよ。マジでうるさい。」
 声は驚いた。虫けらであったはずの人間と言う存在が今自分を殺す毒になっている。アルトは言った。
「魔王。僕の中で滅びるか。それとも・・・“僕と混ざり新しい赤眼の魔王を産み出すか”・・・。」
『・・・どちらも不可能だ。お前の力では』
「分かってないのはルビーアイのほうだ。僕は気付いたんだ。精神世界でこんなにもアルトと言う存在が強いことに・・・さぁ選択権はお前にあるんだ。どうする?        紅の眼を持つ魔王。          』

 ノアは海王に伝言を伝え家に帰っていた。しかしそこは本当の意味で還りたい場所ではなかった。本当に還りたいのは“混沌の海”である。ノアは突然ダルフの事を思い出した。心が熱を帯びる。
「好・・・き・・・」
 ノアは驚いた自分がそんな事を口にするとは思わなかった。
「おい。」
 そこに一人の男が現れた。美しい黒髪は闇に似ている漆黒で肩の辺りまで伸びきっている。白い肌。年は18ぐらいで背中に背負った二本の大剣が印象的である。ノアは言った。
「何?クローバー?」
 冥将軍・クローバーは苦笑してから言った。
「もう少し優しくできねぇのかぁ?」
「さぁ?どうでしょう?これがあたしの精一杯。」

 ゼロスは溜息を吐いた。獣王様は手紙を見たらしい。何か慌てていた。ゼロスは鏡を見た。今日見たノアの姿が忘れられない。ゼロスは自分の中でノアの存在がこんなにも大きくなっているとは思わなかった。気付けば仕事以外のときはいつもノアの事を考えていた。
「弱点があったらいけないんですけどねぇ。」
ゼロスがなんとなく呟いた。魔王様がいなくなって、獣王様が悲しそうな顔をしていたときに決意した筈だった。
    獣王様の為だけに生きる。
 自分に立てた契り。獣王様が悲しい顔をしない為に作った笑顔。全てが・・こわれそうだった。

 アルトが目を覚ました。フィブリゾが言った。
「シャブラニグドゥ様?」
「ああ。」
「魔王様貴方が戻ってくるのを待っていました。さぁ、後の六つの体を取り戻しましょう!」
「残念だけど、・・その必要はない。」
「え・・?」
 フィブリゾは自分の耳をうたがった。魔王が言った。
「僕の名はルビーアイではない。僕の名は・・・アルト・シャブラニグドゥ。」
 その名長い歴史の間に消えてしまう事はこのときは誰も知らない。
「帰るよ。神との全面戦争を始める。」
 フィブリゾは驚いた。そこにスカイとクリアが現れた。アルトはスカイを見た。スカイは言った。
「アルト・・・・さん?」
「スカイ・・・僕の傍から離れたら許さないよ。」
「え・・・?」
 アルトが少し笑った。しかし、スカイは言った。
「すみませんが、私はフィブリゾ様の部下ですので。」
 殺気がフィブリゾに向けられた。フィブリゾは苦笑しながら心の中で呟いた。
――スカイの馬鹿ぁ。

*************************************
 なんか話がラブラブな話になってきてます。多分そのうちシリアスになりたいと思っています。では私はここで・・・。

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26095存在する意味 その42003/5/28 15:23:51
記事番号26066へのコメント

 こんにちは。雫です。毎回こんな挨拶で良いのでしょうか・・・。もうほとんど自分の趣味のままって感じで何を書いているのか・・・。
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   存在する意味 その4

 覇王は正直驚いてはいた。あの冥王が旅を始めたと言う事を自分が知ってから四時間程度で冥王は帰ってきたのだ。それだけなら覇王も驚かない。しかし、冥王はある御方を連れてきたのだ。
    シャブラニグドゥ。・・赤眼の魔王・・・。
 見た目はただの人間だが放つ気配が全く違う。覇王は内心笑った。
――魔王様がここに帰って来た。
 覇王は岩の上に座って脚をぶらぶらさせている冥王の耳元で言った。
「どうやってあの方を目覚めさせたのだ?」
「ちょっと突っついただけ」
 冥王はそれだけ言うと溜息を吐いていた。
――覇王に相談してもなぁ・・・。
 覇王は自分の家に帰ることにした。次帰るのがいつになるか解らない家に・・。

 覇王は椅子に腰を下ろした。覇王は一人で笑った。この事に神の側が気付かないと言うことはないだろう。覇王はふと顔を闇に向けた。覇王は言った。
「何のようだ・・?魔竜王・ガーヴ・・。」
 闇の中から現れたガーヴは言った。
「お前あれのことどう思う?」
「あれ・・・とは?」
「魔王・シャブラニグドゥ。」
すぱこ〜ん
 コミカルな音でガーヴを叩くダイナスト。
「って〜なぁ。何すんだ、馬鹿野郎!」
「貴様こそシャブラニグドゥ様をあれ扱いするな!」
 覇王はガーヴを追い出した。覇王は溜息を吐いた。自分でもあの少年が魔王様だとは思えない。覇王は言った。
「シェーラ。」
「え・・・、あ・・はい!」
「もしわたしが滅びたらどうする?」
「それは勿論、覇王様にお供して私も滅びます。」
「安心しろ。わたしが滅びる前にお前は我が盾となり鎧となり滅びるだろう。」
「そうですよね。」
 本当は違う。恥ずかしいのだ。シェーラのことを自分の部下のことをとても心配している事は誰にも言えない。冷徹な存在である自分は他のものを心配する必要はないのだ。覇将軍・シェーラの負の感情が覇王の体に滲みこんでくる。覇王はその感情に苦味を感じて気付かれないように苦笑した。
 シェーラは笑って言った。
「それでも、私は覇王様のお役に立てるなら幸せです。」
 しかし、シェーラから溢れる負の感情はとまらない。
――何故・・そこまで苦しむ?何故・・苦しいのに考えることを止めない?
「覇王様?」
 覇王は気付いた。無意識のうちにシェーラの頬に自分の手を伸ばしていた。
「・・・・っ!部屋に・・・戻れ。」
「え・・・」
「速く!」
 シェーラは走って行った。覇王は頭を抱えた。もうこのことは忘れよう。全部。

 クリアはある部屋に行った。少し扉を開けた。
「お兄様v」
べぐしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ
 クリアは何者かに蹴り飛ばされた。
「誰が何時どこでお前を弟にしたぁ?」
 そう言ってクリアを睨むクローバー。
「嗚呼酷い。何するんですか?」
「うるせぇぇぇぇぇぇっ!」
「恋人よりはマシだと思ったんですが・・・。」
「確かにましだが、・・・・って冗談でも言うな!」
「僕・・冗談は言いませんよ。」
                  ぴき〜ん
 その場の空気が固まった。クリアが言った。
「僕、戦いが始まったら神の所に行きます。」
「はぁ?」
「ここに僕の居場所はないと思いますから。」

 戦いが始まる。心のどこかで魔王は呟いた。この世界では彼女と一緒に居る事は出来ない。なら壊せばいい。全ての破壊。神も魔も人も・・全て滅ぼす。アルト・シャブラニグドゥの目標・・・。
      全てを・・混沌の海へ・・・・・。

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 毎回こんなんです。降魔戦争始まるのかなぁ・・?それが心配です。では私はここら辺で・・。(ワンパターンな私)

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26106Re:存在する意味 その4オロシ・ハイドラント 2003/5/30 19:43:15
記事番号26095へのコメント

こんばんは
お久しぶりです。

降魔戦争すかあ。
タイトルから考えて感動的なものになるんでしょうねえ(?)
色んなサイドから色んなキャラが出てて良いですねえ。


>「魔王。僕の中で滅びるか。それとも・・・“僕と混ざり新しい赤眼の魔王を産み出すか”・・・。」
>『・・・どちらも不可能だ。お前の力では』
>「分かってないのはルビーアイのほうだ。僕は気付いたんだ。精神世界でこんなにもアルトと言う存在が強いことに・・・さぁ選択権はお前にあるんだ。どうする?        紅の眼を持つ魔王。          』
今のところでは、このシーンが一番好きです。

でも、カタート攻撃した魔王って史実では確かレイ・マグナスだったような……。
別に私は気にしませんけどね

にしても感性刺激されました。
魔族もの書きてえ。(かなり無理あるけど)

まあともかくこれで……次回もがんばってください。
それでは

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26109Re:存在する意味 その42003/5/31 13:07:20
記事番号26106へのコメント


>こんばんは
>お久しぶりです。
はい。お久しぶりです。
>降魔戦争すかあ。
>タイトルから考えて感動的なものになるんでしょうねえ(?)
さぁ?私にもどうなるか・・・。
>色んなサイドから色んなキャラが出てて良いですねえ。
降魔戦争の時は皆揃ってたと想うので・・・。
>>「魔王。僕の中で滅びるか。それとも・・・“僕と混ざり新しい赤眼の魔王を産み出すか”・・・。」
>>『・・・どちらも不可能だ。お前の力では』
>>「分かってないのはルビーアイのほうだ。僕は気付いたんだ。精神世界でこんなにもアルトと言う存在が強いことに・・・さぁ選択権はお前にあるんだ。どうする?        紅の眼を持つ魔王。          』
>今のところでは、このシーンが一番好きです。
そうなんですか。私も結構好きです。
>でも、カタート攻撃した魔王って史実では確かレイ・マグナスだったような……。
えぇ!?そうだったんですか!?・・・知らなかったです。
>別に私は気にしませんけどね
すみません。ありがとうございます。
>にしても感性刺激されました。
>魔族もの書きてえ。(かなり無理あるけど)
オロシ・ハイドラントさんの作品私好きです。魔族もの好きです。楽しみにしてます。
>まあともかくこれで……次回もがんばってください。
>それでは
ありがとうございます。私も頑張りますのでオロシ・ハイドラントさんも頑張って下さい。

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26111存在する意味 その52003/5/31 18:07:21
記事番号26066へのコメント

 こんにちは。雫です。毎回こんな感じで始まるのですが、これを読んで下さっている方、読もうとしている方、真にありがとうございます。出来れば最後まで付き合って下さい。
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   存在する意味 その5

 ここはドラゴン・ピーク。多くの黄金竜達が住む場所。遠くの地には火竜王の神殿があるが、そことは殆ど縁がない。黄金竜達は数匹で会議をしていた。
「大きな無が動いている。」
「他の竜に応援を?」
「まず火竜王の神殿の方には頼めないな。」
 竜達は黙り込んだ。火竜王の神殿付近の黄金竜達はエイシェント・ドラゴンの生き残りの始末をしているらしい。一匹の黄金竜が言った。
「どのみち魔族とは全面対決は避けられないだろうな。」
 そんな事は解りきっている。長い沈黙が空気に染み渡る。
カタンッ
「誰だ!?」
 突然現れたのは15歳位の少年。少年は言った。
「あのぉ。ミスリルを探してたら迷っちゃいまして・・・。外まで案内してくれません?」
 困った様な表情をする少年。黄金竜は言った。
「どうしてこんな所に迷える?ここには力がなければ入れないはず。」
「いえいえ。この前も迷ったんですよ。それに・・・・力とは・・・・こう言うモノですか!?」
 突如、風が吹き少年の髪をなびかせた。美しい黒髪・・・。風が竜達の体を切り裂いて行く。少年の表情が一瞬にして無に変わる。
「貴様・・・何者?」
「他人の名前を聞くならまず自分から・・・。人間にはそんな考え方があるそうですよ。」
「・・ミルガズィアだ。・・・貴様は魔族か?」
「そうひとくくりにしても構いませんが、冥神官・クリアといいます。さて僕の名前を覚えていただけたところで死」
ずばごぉぉぉっ
 クリアは殴られた頭を抑えながらそっちを見た。人の形はしているが黄金竜だろう。短く切られた髪。目つきが悪い。見た目16歳の青年が言った。
「すみませぇぇぇぇん。こいつ俺の友達でぇ」
「魔族と!?」
「まぁすぐに追い出しますから、今日は俺に免じて許してくれよ。」
 そう言ってクリアを引っ張っていく青年。その場に傷だらけの竜達が残った。

 近くの森でクリアは青年の腕を振り解いた。クリアは言った。
「ちょっと何するんですか!?僕はクリアといいますが貴方はいったい何者ですかぁ?」
 普段の無表情はどこへ行ったのか怒りを表に出すクリア。青年は答えた。
「俺・・?俺はライ。お前さぁ、ミスリル探してんだよなぁ?」
「ちょっっ。どっから盗み聞きしてたんですか!?」
「最初っからぁ〜。ミスリルなら採ってきてやるけど?」
「要りません!」
「なぁお前さぁ、綺麗な顔してんな。」
「はぁ?」
 物凄くいやそうな顔をするクリア。ライはクリアの髪の毛に触った。
ぱしんっ
 クリアはライの手を叩いた。
「その手で・・・僕に・・・触れないで下さい。」
       神ナンカ嫌イダ
「守って・・・くれなかった。」
「うぉ?」
 クリアの呟きに思わず首を傾げるライ。クリアは自分が何を言っているのか解らなかった。クリアは空間を渡った。もうこの場に居たくない。ライは虚ろな空を見つめた。
「また会いに来てくれるよ・・・な?」

「はぁ・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・はぁ」
 だらしない。クリアは自分の頭の中で呟いた。幼い頃を思い出す。
「クリア?」
 突然現れたフィブリゾを見るクリアの瞳。クリアは言った。
「冥王様・・・。僕は昔・・・。人だったんですよね?」
「それが・・どうかしたの?」
 クリアが首を横に振る。フィブリゾは言った。
「無理しちゃダメだよ。」
 冥王が消えるとクリアは自分の膝を抱いた。

     どんなに神様に祈っても人間が魔族に勝てはしない。

   オ前ラ人間ハ俺達魔族ノ餌ナンダヨ。

      誰かが助けてくれる事はない。

   『神様が助けてくれるハズだもん』

       人間である時ほど愚かな時はなかった。

      神ガ何シテクレルッテ言ウンダヨ。

         愚かな自分に裁きを・・・

*************************************
 降魔戦争・・・のはずなんですが・・・もうなんでしょう?でもミルガズィアさんも出てきたしそろそろかと。カッコいいゼロスを書こう!それでは・・・。

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26116存在する意味 その62003/6/1 13:29:56
記事番号26066へのコメント

 こんにちは。雫みたいです。(みたいって何だろう?)とうとうこれも6話目になりましたが、ここまでお付き合いしてくださっている心の広い方々、ありがとうございます。これからも色々よろしくお願いします。
*************************************

   存在する意味 その6

 ゼロスは人間の町を歩いていた。今以上に強くなりたかった。ゼロスは広い範囲に攻撃できる技をあまり持っていない。そんな技も威力が低い。ドラゴスレイブが使えれば良いが、それは魔族であるゼロスにとって自殺に近い行為である。だから探していた。人間の町で・・・・。
 ゼロスは喫茶店に入った。ゼロスは言った。
「とりあえず水お願いします。」
 窓の近くの席。ゼロスがそこに居るだけで何故か女性客が増える。ゼロスは窓の外を見た。行きかう人は他の魔族にしてみれば餌だろう。しかし、ゼロスはその一人一人の行動を面白いと見ている。ゼロスは自分の上司である獣王から愛情を注がれて育っていた。
     『大事に想わないなら最初から創らない。』
 獣王様は赤眼の魔王様がよく言っていたと話してくれた。ゼロスは少しずつ飲んでいた水がなくなった事に気付き言った。
「水、もう一杯お願いしまーす。」
  「良いんですかぁ?水で・・・。ずっと頼んでたら怪しまれますよ。」
「はい?」
 思わず声のした方を見た。そこに一人の男が居た。長い紅い髪、怪しいほど白く美しい肌。そして・・・、紅い・・瞳。年は20代位に見えた。男は勝手にゼロスの空いている席に座る。ゼロスは言った。
「別にばれるものはありませんし。」
「魔族でしょう?貴方・・・。」
「え・・?」
 小さな声で言われた言葉。ゼロスは言った。
「貴方は・・いったい・・・?」
「レイ・マグナス。貴方は?」
「謎の神官、ゼロスと言います。」
 ゼロスはにっこり笑った。レイ・マグナスは言った。
「では、とりあえず水をお願いしますぅ。」
「貴方もじゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 思わず絶叫するゼロス。次の瞬間ゼロスはまた叫ぶ。
「ちょっとぉぉぉ!れい・まグなスってぇぇあの魔術師・・・!」
「まぁそうですが・・。それがどうかしましたか?」
 落ち着き払ったレイ・マグナスの反応にゼロスは少し怯える。人間の魔法使い。魔族に抵抗する術を持っている者もいる。しかし、レイ・マグナスの強さになるとゼロスも平気ではいられないかもしれない。しかも魔族だともうバレてる。やはり滅ぼしにかかるのだろうか・・・。ゼロスは逃げようとした。
「今からわたしの家に来ませんか?」
ぴきぃぃぃぃぃぃん
 ゼロスの動きが凍りつく。断ればどうなるだろう?ゼロスが言った。
「は・・・はい・・・・。」
――獣王様・・・。僕、帰ってこれないかもしれません。

 ゼロスはレイ・マグナスの家の中に居た。目の前に置かれたお茶。ゼロスは家を見渡した。椅子は二つしかない。レイ・マグナスは言った。
「すみませんねぇ。台所が今使えないので・・・。」
 ゼロスはレイ・マグナスを見た。腰と首のあたりと両手首の辺りに魔道具らしき物がついていた。ゼロスは言った。
「あの・・・それは・・?」
「いえ・・このエプロンは子供が好きなので。」
「そうじゃなくて、その首とかに付いてる」
「タリスマンです。この混沌の海に立った棒の上にある四つの世界のそれぞれの魔王の力が込められているんですよ。・・差し上げます。」
「え・・・・?」
 レイ・マグナスがゼロスにタリスマンを手渡す。ゼロスはレイ・マグナスの行動に滅ぼす気は無いと気付き言った。
「レイさん・・・!僕に何か技を伝授して下さい!」
「技・・・・?」
「貴方にしか使えない魔法があったと思うんですが・・・。」
        「ブラストボム・・・・。」
 ゼロスは頷いた。レイ・マグナスが溜息混じりに言った。
「もう39なのに・・・。解りました。教えましょう。」
「・・・さんじゅう・・・きゅうぅ!?」
 ゼロスの叫びにレイ・マグナスは微笑んで頷いた。

「熱・・・・い。」
 思わず呟くゼロス今さっき見たブラストボムの威力は想像以上だった。レイ・マグナスは言った。
「これがブラストボムです。・・・少しでも気を抜けば己おも飲み込み兼ねない恐ろしい技です。それでも貴方はこの技を覚えたいと・・・?」
「はい・・・。僕は守りたい人がいます。僕を愛してくれた大事な人を。」
       獣王様・・・・・
 ゼロスは心の中で呟いた。レイ・マグナスは言った。
「では・・・こちらに来てください。」
 ゼロスはレイ・マグナスの後について行った。

 そこにあったのは洞窟だった。戸惑うゼロス。レイ・マグナスは言った。
「一人で行きなさい。この奥にブラストボムがあります。空間を渡る事は出来ません。したら貴方の体が崩壊するでしょう。」
 ゼロスは洞窟を見た。暗い。ゼロスは言った。
「あの・・・ライティングは・・・」
「使ったらダメですよ。」
 ゼロスは溜息を吐いてから中に入った。

 ただただ暗い世界。感覚すらどうなっているか解らない。
――混沌の海とはこんな感じなのかもしれませんね。
 ゼロスは暗闇を歩いた。今、自分が踏みしめているものが本当に地面なのか解らない。ゼロスはうっすらと眼を開いた。恐怖すらある。その時ゼロスは自分の姿が透けているように見えた。
「ひぃっ」
 少しだけ悲鳴が漏れる。
――滅びてきている!!?
「イヤだ・・・・。」
 思わず呟く。一人で滅びたくない。ゼロスは走った。ここから早く出たい。
 光が見えた。
――出口・・・・・・・・?
 ゼロスは自分の中で否定した。ゼロスは反対の方向に歩いた。出口ではなく、答を探して・・・・。
 突然、闇が破けた。ゼロスはそれを見た。本来キライなハズの柔らかい光を。ゼロスは遠くを見た。そこに石版があった。文字が刻まれているそれにゼロスは近づいた。ゼロスはその内容を読んだ。
    ブラストボムについてを・・・・・

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 どうもいっつもなんか似たようなあいさつでごめんなさい。とりあえず役者は揃ったんでしょうか・・。ガーヴさんは書くのが難しいです。これからたくさん出さなきゃいけないんですよね。皆様、お体に気おつけて下さい。それでは・・。

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26136Re:存在する意味 その6オロシ・ハイドラント 2003/6/3 21:28:07
記事番号26116へのコメント

こんばんは

レイとゼロスの出会い。
なるほどなあ、と思わされました。
ゼロスがブラスト・ボムを使えるのは「魔族だから」で片付けていたわけですけど、こういう手もなくはないですな。

エプロン賢者。
それに子供がいる、と。
街中に出て来て、いきなり、
>「魔族でしょう?貴方・・・。」
良いキャラですね。少々、規格外で……。

ガーヴは私は結構得意だったりします。
半分地でいってますから。

それでは短いですがこれで、次回もがんばってくださいませ

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26139Re:存在する意味 その62003/6/4 18:35:06
記事番号26136へのコメント


>こんばんは
こんばんはです。
>レイとゼロスの出会い。
>なるほどなあ、と思わされました。
>ゼロスがブラスト・ボムを使えるのは「魔族だから」で片付けていたわけですけど、こういう手もなくはないですな。
よく考えたらブラストボム使ってる魔族がゼロスさんしかいなかったので・・。
>エプロン賢者。
>それに子供がいる、と。
>街中に出て来て、いきなり、
>>「魔族でしょう?貴方・・・。」
>良いキャラですね。少々、規格外で……。
賢者もとりあえずにんげんですからね。私の中で若作りになってますが・・・。
>ガーヴは私は結構得意だったりします。
いいなぁ。羨ましい。
>半分地でいってますから。
半分地なんですか!?
>それでは短いですがこれで、次回もがんばってくださいませ
はい。ありがとうございます。次回も頑張らせていただきます。

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26151存在する意味 その72003/6/6 23:00:42
記事番号26066へのコメント

 どうも、雫です。毎回こんな挨拶しか出来ないのですが、これからも読んでいただければ嬉しいです。
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   存在する意味 その7

 シェーラは自分の部屋で一人座っていた。ただ座っているのではなく、手を前にかざし精神集中を行っていた。かざされた手から黒い霧のようなものが溢れ、何かの形を創っていく。
                   かちゃっ
「・・・!」
 シェーラは部屋に誰か入ってきたことに驚き精神集中を止めた。
「お・・・・お邪魔でしたか・・・?」
「・・・・・グロウ・・・何しに来たの?」
 霞がかった銀髪。くすんだ青い瞳はガラスで出来ているように見えてどこか弱々しい。そして雪のような白い肌。覇神官・グロウ。グロウは言った。
「いえ、覇王様を探してたんですけどねぇ。迷っちゃいまして。あははははぁ。」
「迷うもの?自分の家で。・・でもなんで覇王様を?」
「寒いところに行くらしいじゃないですかぁ、僕達。だからマフラーを届けに来たんですよぉ。」
 やたらむやみに困った表情をするグロウ。シェーラは言った。
「グロウ。・・・私たち魔族だよ?忘れてない?」
「あぁ、そう言えば・・・・そうだった気もありますねぇ。」
 その言葉に溜息を吐くシェーラ。しかしグロウはシェーラの方を真剣な眼差しで見つめながら言った。
「それで・・・覇王様は今何処に?」

「生ゴミ?」
「・・・・・・・・。」
 生ゴミ・・・もといゼロスが反応無いことに苛立ちを覚えて一瞬、武器を出しかけたがそれはあんまりなので耳元で怒鳴った。
「獣神官・生ゴミぃ〜!」
「え!・・・・あっ・・・・ノアさん・・・。何ですか?」
「あんたドラゴンピークに行くのよ。クリアと二人だけで。」
「・・・・ふぇ?」
「赤眼の魔王様が言ってたでしょう。あんた人間の町に行ってからずっとぼーっとしてるわよね。」
 ゼロスは困った。レイ・マグナスに遇っていたなどと言ったらこの女の子はどう思うだろう。ノアには嫌われたくないとゼロスは思う。ゼロスは苦笑した。しかしノアは言った。
「生ゴミ・・・・。あたしどうしよう。」
「はい?」
「怖いよ。・・・あたし今度の戦い、独りぼっちで滅びるかもしれない。そしたら誰もあたしの事を覚えておいてくれないかもしれない。・・・淋しいよ。そんなのさ・・・。」
「ノアさん?」
 ノアがゼロスの肩に寄りかかった。ゼロスは言った。
「の・・・・ノアさん!?」
「ゼロス・・・。じゃ無かった。生ゴミ。生ゴミはあたしの事忘れないでいてくれる?」
「も・・・・勿論ですよ。」
「よかったぁ〜」
 ゼロスは自分の体温が温かくなる錯覚を起こしかけた。自分は魔族だ。そんな事はありえない。
――それとも僕は、彼女を・・・・ノアさんを・・・・・愛してしまっている?
 自分の中で気付いた気持ち。今まで抱いたことの無い感情。ゼロスは戸惑いすら感じた。ノアが言った。
「生ゴミ。あたしね、ダルフの事が好きみたい。彼は私のこと憶えててくれるかなぁ?」
 一気に辺りを埋め尽くす負の感情。
――ノアさん。タイミング悪すぎます。
「生ゴミどうしたの?負の感情なんか出して。」
「何でもありません!」

 クリアはドラゴンピーク近くの森に来ていた。気紛れで来ただけだが今はとっととここから離れたいと思っていた。
「ライさん、いい加減に放して下さい。」
「なんだよ。お前冷たいぞ。お礼ぐらいしろよな。」
「神の側に何で僕が・・・。」
「・・・・・惚れたんだよ。」
「はぁ?」
 ライの突然の言葉にクリアは呆れた表情をした。ライは言った。
「そのさぁ、人間じゃ絶対ありえない綺麗な顔立ちとかさ。お前が俺のこと嫌いなのは解るけど」
「僕は昔、人間だったんです。」
 ライは絶句した。クリアは言った。
「小さな村で僕は生まれました・・・。そう、平和だったんですよ。あの時まではね。」

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 微妙な続き方ですみません。時間が足りない。これからも私は頑張りますので皆様も頑張って下さい。それでは。

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26156存在する意味 その82003/6/7 17:52:44
記事番号26066へのコメント

 こんにちは。雫です。これも短いながらに8話目にきました。そろそろ降魔戦争
も始めたいです。・・・始められるのかなぁ・・・。
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   存在する意味 その8

 クリアの感情がないような表情に少しだけ悲しげな色が浮かんでいる。ライは続きを促そうと口を開きかけたが、それよりも早くクリアが口を開いた。
「その小さくても平和な村に魔族はやって来ました。魔族は力の無い僕たちをゴミでも見るかのような眼で見て、僕達を一箇所に集めました。大人たちはすぐになぶり殺されました。」
「・・・・ひでぇ・・・・・。」
「ヒドイ・・・・?酷いってものじゃありませんよ。地獄。・・・・でも、そんな中でも僕は神を信じ、神を愛し、神に祈って、助けを求めていた。僕達の神に。僕が神に祈っていることは皆、知っていた。勿論、魔族も・・・。魔族はそんな僕が気にいらなかった。周りが絶望している中でも僕は祈り助けを求めていた。気付けば魔族は僕にどうにかして負の感情を出させようとした。でも・・・・」
 クリアが言葉を止めた。クリアは驚いた。ライがクリアの体を包み込んでいた。ライは言った。
「もういい。何も言うな・・・。」
「・・・・・。」
 溜息・・・。クリアはライを剥がすと言った。
「言いたいんですよ。言わせて下さい。・・・・・僕は神が助けに来ることは無いことに気付かされてしまった。神はこんな小さな村のことを見ていられる程暇じゃ無いって事に・・・。そしたらどうなったと思います?僕の心の中。」
「悲しみとか怒りとか・・・。」
「虚無です。もう怒りも悲しみも絶望も超えていた・・・。感情なんか無くなっちゃったんですよ。今みたいに無表情になったんです。全て封印してしまいました」
「え・・・・。」
 クリアの顔は完璧な無表情。どこか壊れそうで・・・。
――声にはきちんと出せないでいる気持ちがあるじゃねぇか。何でわからねぇのかな。
「魔族は感情の無くなった僕を殺しました。そして・・・・『眼を覚ましたら』全てがなくなっていました。目の前に広がるのは火の海。そして、その海にその御方はいました。」
「その・・・・御・・・方・・・?」
「冥王・フィブリゾ・・・。」




『おはよう。君の新しい人生を祝してこんなに綺麗な景色を用意しておいたよ。』
        「新しい・・・・・」
     『質問・・・“誰に”復讐したい?』
                           その答はあっさり出る
           「神。僕を助けてくれませんでした。」
  本当は全てを滅ぼしたい・・・・。
『おいで・・・・。僕と一緒にこんな世界、壊しちゃおう』




「それで今の僕がいるんですよ・・・・・。」
 クリアの瞳にライが映る。ライは言った。
「そんな事で・・・・・。」
「・・・・今のうちにドラゴンピークから離れてください。戦いが始まります。死にますよ・・・ライさん。」
「心配してくれるのか・・・?」
 少し嬉しそうな表情をするライ。クリアは言った。
「僕は自分は魔族としてじゃなくあの時の自分として滅びたいんです。そして、自分に対して何も思ってくれない人には滅ぼされたくありません。自分を愛してくれる方に滅ぼされたいなって・・。」
       どさっ
 ライはクリアを地面に倒した。ライはクリアに言った。
「わがままだぞ。お前・・・。てめぇは俺に好きになった奴を滅ぼせとでも言いたいのか?」
「冗談言わないで下さいよ。互いに好きにならないと愛とは言いませんよ。貴方は僕の存在を忘れないでいて欲しいんです。僕、嫌われ者ですから・・。」
 クリアは起き上がった。そして地面に座り込む。ライはクリアに真剣な眼差しを向けて言った。
「俺は好きだ。・・・・で、お前ら魔族は何処から攻め込むんだ?」
 クリアは立ち上がった。やや怒っているのがライの目にも解った。クリアはライを見て言った。
「教えられるわけ・・・ないでしょう・・・。」
「じゃぁ俺魔族攻めて来た時どうすりゃ良いんだよ?」
「だから今からずらかるんでしょう?」
「怪しまれるだろ?で・・・・どっから来るんだ?」
「・・・・・。」
 クリアがライの方を見る。ライは言った。
「俺を信じろよ。好きな人、売りさばくような真似はしねぇから。」
 それでもクリアはライを睨んでいる。ライはクリアの体を優しく抱きしめた。クリアが言った。
「放して下さい!」
「放したらお前逃げるだろう?」
「滅ぼしますよ!」
「教えてくれよ。なんで信じてくれないんだ?」
                  「貴方だって神の側なんでしょう?」
「さらってやるよ。決めた。お前誘拐決定。」
「ちょ・・・・ちょっと何勝手に僕は戦わなきゃいけないんです。」
 あわてるクリア。それがまるで子供のように見える。ライはクリアの体をそのまま引きずって行く。
「解りました!教えますから・・・・。信じて・・・・良いんですよね・・・?」
「ったりまえ。」
 クリアの溜息が森に響いた。クリアはこのタイプの性格が嫌いだ。自分の話を聞いてくれない。しかもマイペース。クリアは地面に図を書きながら思った。
――この人なら・・・神様と違って助けてくれるかもしれない。

             愚かな僕と言う存在を・・・。



「明日だね。生ゴミの出番。とりあえず覇軍の皆はもう出発したらしいよ。遠いからねぇ。生ゴミも頑張ってよね。あんたが滅びたら困るからね。」
「はい。」
 ゼロスの暗い表情。・・・・ゼロスは夜空の下、ノアと並んで座っていた。月が綺麗に輝き、ゼロスの愁いを帯びた顔を美しく照らした。その隣に座るノアの口元に浮かんだ微笑が妖しく、ノア自身を一つの芸術として浮かびあがらせた。
 そこにクリアが現れた。クリアの手には一輪の花が握られていた。そして髪にも美しい白い花が添えられていた。ノアはクリアを見て言った。
「クリア、どうしたの?その花。」
「////・・・・・何でもありません!」
 何故か顔を紅くして怒鳴るクリア。ノアは面白そうに言った。
「何〜?彼女からのプレゼント?」
 クリアはしばらくしてからゼロスの隣に座り言った。
「彼女とかそう言う問題以前です。」
 怒ってる・・・。ゼロスはそれが解った。隣に座られたためクリアの負の感情をまともにくらったのだ。クリアは溜息を吐いた。
「何ぃ?このノア様に相談しなさいよねぇ。クリア。」
「・・・・・僕ってとりあえず見た目、男ですよね?」
「あ・・・・あたしはそうだと思ってるけど?」
「僕もそう思いますよ。」
 ゼロスはなんとなく会話に加わってみた。クリアは思わず言った。
「男・・・・・ですよね・・・・・」
 クリアが溜息を吐く。ノアは言った。
「もしかして男に言い寄られた?」
「えっ!?そんなはず・・・・・!あ・・・・あははははは。」
 乾いた笑い。クリアは内心呟いた。
――この人にこれ以上言ったらからかわれる・・・。言えない・・・・。
  額にキスされたなんて・・・・。
 ノアはクリアの様子を面白く見ていた。クリアは言った。
「ノアさんこそ海軍の方と行くんでしょ。」
        「まぁね・・・・。」
 ノアの顔が赤くなる。ゼロスの胸が痛くなる。ノアはダルフの事が好きなのだ。だからノアをダルフのところには行かせたくないと思った。ゼロスは言った。
「まぁ、多分どこも長期戦になるかもしれませんね。クリアさん一日目から滅びないで下さいよね。」
「大丈夫ですよ。ゼロスさん、ライと言う黄金竜は殺さないで下さいね。」
 ゼロスは一瞬、不思議そうな表情を浮べたが、笑って言った。
「安心して下さい。どんな恨みがあるかは知りませんがその竜は攻撃しません。」






「滅びの砂漠・・・か。暑いんだろうね。やだな。クローバーはどー思う?」
 フィブリゾの問いにクローバーは答えた。
「別に・・・・ただフィブリゾ様よりガーヴの方が弱いのに魔王様の傍ってのがなんかムカつく。」
 フィブリゾは溜息を吐いた。ノアは海王の所に貸し出し、クリアは獣王の所のゼロスとドラゴンピーク。スカイはガーヴのところ・・・・魔王様の傍に行く。滅びの砂漠に行くのは自分とクローバーだけである。フィブリゾは言った。
「もう寝よ。明日から戦いが始まるのだから・・・。」






 美しい蒼い髪。水竜王・ラグラディアは長い髪を一つに結わえていた。魔の存在が動き始めたのは解った。後は自分が出向けば良い。水竜王は呟いた。
「終わらせる・・・・。早めに・・・」






 一軒の家。そこにレイ・マグナスはいた。台所が何かの爆発で崩壊している。レイ・マグナスは苦笑した。自分はなんて事をしたのだろう。自分の禍を自分の血のつながりに委ねてしまった。
「息子が何かしでかす前に行かなくてはいけませんね。」
                カタートへ・・・・・






 夜が過ぎていく。それぞれの思いの中にあるものは戦争。

        それがその後どんな嵐になるのかまだ誰も知らない。

      ただ・・・・・誰もがこの戦いに自分の存在を掛けている

   魔も神も人も・・・・・・・・・・・・・・・




*************************************
 ちょっと長かったです。自分でどうなるのか解りません。どうなるんでしょう?ここまで読んで下さっている方、もしいるのでしたら本当に最後まで雫にお付き合いしてください。お願いします。

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26157Re:存在する意味 その8氷月椋佳 E-mail 2003/6/7 18:21:03
記事番号26156へのコメント

こんにちはっ!氷月椋佳でっす。

なんだかすごい展開になってきてますね〜v毎々回見せてもらせています。
様々な立場に立つ者達の思い、見守っていきたいとおもいまっす。(てゆ〜かみたいのさっ!)

> ちょっと長かったです。自分でどうなるのか解りません。どうなるんでしょう?ここまで読んで下さっている方、もしいるのでしたら本当に最後まで雫にお付き合いしてください。お願いします。
もちろんっ!みてゆきますともっ!雫さん、がんばってくださいね〜v最後まで付き合いますよ。

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26158Re:存在する意味 その82003/6/7 18:52:56
記事番号26157へのコメント


>こんにちはっ!氷月椋佳でっす。
お久しぶりです!雫です。
>なんだかすごい展開になってきてますね〜v毎々回見せてもらせています。
ありがとうございます。
>様々な立場に立つ者達の思い、見守っていきたいとおもいまっす。(てゆ〜かみたいのさっ!)
ぜひとも見てください!どーぞご自由にお入り下さい。(?)
>> ちょっと長かったです。自分でどうなるのか解りません。どうなるんでしょう?ここまで読んで下さっている方、もしいるのでしたら本当に最後まで雫にお付き合いしてください。お願いします。
>もちろんっ!みてゆきますともっ!雫さん、がんばってくださいね〜v最後まで付き合いますよ。
ありがとうっす!最後まで付き合って下さるなんて光栄です。これからも頑張らせていただきます。

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26191Re:存在する意味 その8オロシ・ハイドラント 2003/6/11 21:11:50
記事番号26156へのコメント

こんばんは
風邪みたいなもので遅れました。

>「虚無です。もう怒りも悲しみも絶望も超えていた・・・。感情なんか無くなっちゃったんですよ。今みたいに無表情になったんです。全て封印してしまいました」
虚無かあ。
そういえば、そういうのってありますよねえ。小説とかでは。

>『おはよう。君の新しい人生を祝してこんなに綺麗な景色を用意しておいたよ。』
何か格好いいな、このフィブ君。

>「明日だね。生ゴミの出番。とりあえず覇軍の皆はもう出発したらしいよ。遠いからねぇ。生ゴミも頑張ってよね。あんたが滅びたら困るからね。」
生ゴミで通す、というのもまた良いですねえ。

>「息子が何かしでかす前に行かなくてはいけませんね。」
>                カタートへ・・・・・
息子?
どういうことなのでしょうか?

面白かったです。
この後、どうなってゆくのでしょうか。

それではこれで……

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26205Re:存在する意味 その82003/6/12 18:45:10
記事番号26191へのコメント

>こんばんは
>風邪みたいなもので遅れました。
いえいえ、私こそ返すの遅れてしまってすみません。
>>「虚無です。もう怒りも悲しみも絶望も超えていた・・・。感情なんか無くなっちゃったんですよ。今みたいに無表情になったんです。全て封印してしまいました」
>虚無かあ。
>そういえば、そういうのってありますよねえ。小説とかでは。
はい。小説ではこんなのもありです。しかも個人的に虚無とかそういう言葉が大好きなのですよ実は・・・。
>>『おはよう。君の新しい人生を祝してこんなに綺麗な景色を用意しておいたよ。』
>何か格好いいな、このフィブ君。
私にとっちゃ何やっててもフィブ君はかっこよくて可愛いです。(おい!)
>>「明日だね。生ゴミの出番。とりあえず覇軍の皆はもう出発したらしいよ。遠いからねぇ。生ゴミも頑張ってよね。あんたが滅びたら困るからね。」
>生ゴミで通す、というのもまた良いですねえ。
彼女はそう言うのこだわる人ですからね。
>>「息子が何かしでかす前に行かなくてはいけませんね。」
>>                カタートへ・・・・・
>息子?
>どういうことなのでしょうか?
さぁ・・・・?とりあえず色んな人が出てきますから。降魔戦争には・・・。
>面白かったです。
>この後、どうなってゆくのでしょうか。
それは秘密です。(私がやっても似合いません。すみません。本当に・・・。)
>それではこれで……
はい。オロシ・ハイドラントさん、お言葉ありがとうございます。私もこの生クリーム入りの頭で頑張らせていただきますのでオロシ・ハイドラントさんも頑張って下さい。それでは・・・・。

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26207存在する意味 その92003/6/12 20:57:04
記事番号26066へのコメント

 こんにちは、雫です。降魔戦争を舞台にした存在する意味もついに9話目になりました。本当は10話目で喜ぶはずなのに・・・・・。
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   存在する意味 その9

「ゼロスさん。合図はまだですかね・・・・。」
「カタートの方向からまだ合図らしき爆発はありませんからね・・・。」
 ドラゴンピーク近くの森の影にゼロスとクリアは座っていた。この森から少し外に出れば少し切り立った崖のような場所がある。その先が・・・・ドラゴンピークだ。合図の爆発と共に崖のところから一気に決着をつける。突然カタートの方から爆発が聞こえればさすがに黄金竜達も戦う準備が出来ていない。不意打ちでとても申し訳ないのだがこれも仕方が無いことだ。


 アルト・シャブラニグドゥはカタートから見える朝日を見ていた。
「綺麗だね。」
 傍にいたスカイに言う。スカイは淋しげに笑って言った。
「でも、魔王様はこの綺麗な世界を壊すんでしょ?」
「壊すだけだよ。その後・・・スカイと僕が幸せになれるような世界に作り変えるから。」
  「冥王様も幸せになれますか?」
「・・・・(怒)。さぁね・・・・。」
 アルトの怒り。しかしスカイは気付いていない。スカイは何故、怒っているのか解らなくて少し慌てた。
「おい!冥将軍。こっち来い!」
    「あ・・・はい。魔竜王様・・・・。」
 スカイはガーヴに呼ばれて降りていった。アルトはまた遠くを見た。水竜王・ラグラディアに手紙を渡しておいた。そのうち来るだろう。そろそろ合図を打とう。
「アルト。」
                  「!!?」
 思わず驚くシャブラニグドゥ。そこに居たのは一人の男だった。紅い髪に紅い瞳のその男をアルトも、そして過去にシャブラニグドゥも知っていた。
「レイ・マグナス・・・・。それとも・・・父さん・・・って呼んだ方が良い?」
「父さんの方が・・・・・。」
 笑顔で言うレイ・マグナス。アルトはレイ・マグナスを睨んで言った。
「何の用?ただちょっと強いだけの人間が・・・・。」
「自分の行いに罰を・・・・いえ・・・判決を下しに来ました。」
 怪訝そうな顔をするアルト。しかし、シャブラニグドゥである部分はその意味がよく解った。それでも今この中で強い精神を持っているアルトが否定する。
「いやぁ。ビックリしましたよ。家に帰ってみればアルトは居ないし、台所は何かの爆発によって使える状態じゃありませんでしたし・・・・。」
 レイ・マグナスは微笑んだ。こうなるとは思っていなかった。アルトはレイ・マグナスを見下しながら言った。
「で、父さんは自分の何を裁きたいわけ?」
「貴方に・・・・・辛いことを押し付けてしまった。」
「はぁ?」
「わたしは若い頃に自分の中にあの赤眼の魔王・シャブラニグドゥの七つの欠片のうちの一つがある事に気付いてしまったのです。とても怖かった。自分はいつかこの魔王に体をのっとられる気がしたのです。そんな中でわたしは結婚した。その間にもわたしは魔王を殺す方法を考えていた。色々な魔法をあさり吸収しそして今のわたしができた。そんな時、貴方が生まれた。わたしは逃れたかった。この魔王を体に宿していると言う恐怖から・・・。しかし、わたしには魔王を殺す方法を見つけられずにいました。そしてわたしは・・・・貴方の体に・・・・魔王を移してしまったのです。」
               「長い話ご苦労様。」
 アルトの乾いた拍手がこの空間に響いた。レイ・マグナスはアルト・マグナスを見つめた。
「そして・・・・、これから始まる戦いはもう誰にも止められない。互いに大切なものを奪い合う大きな戦い・・・。だから・・・・・もう混沌の海に眠りなさい。わたしがシャブラニグドゥをまた体に戻しこの戦いを終わらせます。」
        「ふざけないでよ。」
「こうする他ありません。」
「僕が勝てばいいんだよ。」

      「それは無理です。貴方はまだ・・・本当の修羅を知らない。」

 そう言って、レイ・マグナスは混沌の言語を唱え始めた。

      ――闇よりもなお昏きもの――

「何?その呪文・・・・。聞いたこと・・・・無い。」
 少し心の中で焦る。しかし、魔王である自分にはどんな魔法も通用するはずはない。

      ――夜よりもなお深きもの――

 レイ・マグナスは苦笑した。あの時・・・・この呪文を知っていれば・・・。

      ――混沌の海よ たゆたいし存在 金色なりし闇の王――

 シャブラニグドゥの体が震えた。金色なりし闇の王に・・・・・

      ――我ここに 汝に願う
        我ここに 汝に誓う
        我が前に立ち塞がりし
        すべての愚かなるものに
        我と汝の力もて
        等しく滅びを与えんことを――

 闇が・・・・それをも越えた混沌のような塊がレイ・マグナスの手の中に存在していた。それはレイ・マグナスの手からはじけようとするかのように暴れているように見えた。
「・・・・っ・・・・!」
 思った以上の力がレイ・マグナスの魔力だけでなく命を削る。これだけは保たなくてはならない。
 
 そして・・・・・・レイ・マグナスは息絶え絶えになりながらアルトを見据えて言った。

「・・・・・・・重破斬・・・・・」

 重破斬・・・・ギガ・スレイブ・・・・・。混沌の海に漂うロードオブナイトメアの力を借りた魔法。誰も知らないところでこの世に姿を現した技。
「滅びるのはアルトだけですよ・・・。大丈夫・・・・一人になることはありませんから。」
                「やだ・・・・父さん・・・・」
 アルトが泣きそうな顔をした。しかし、レイ・マグナスは無視する。














「すみませんね。わたしの息子が・・・・でも上手い具合に貴方を残せて良かったですよ。赤眼の魔王様。さぁ・・・・私の心を・・・・喰らいなさい・・・。」
 紅い闇が笑う。・・・後は自分の仕事だ・・・・。



「おい!赤眼の魔王様よぉ・・・・あれ・・・・?そのカッコ・・・。」
 ガーヴは驚いた。今までのガキじゃない。シャブラニグドゥは言った。
「元に戻ったんです。・・・全て・・・・・。」
「そんな事より水竜王が・・・!」
「これから迎え撃ちます。ガーヴとスカイ・・・・私の力をあわせれば何とかなるでしょう。」


 そして水竜王がやってくる。見た目は美しい女。しかし、その相手を見る目は威圧感がある。そして身には鎧をまとっている。
「はじめましょうか・・・・。」
 その言葉だけで・・・・たった一言で戦いが始まった。







        どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ








「あ・・・爆発・・・・。」
  「行きましょうか・・・・。」
      「ですね・・・。」
 クリアとゼロスが森から出る。
          ぶおっ
 吹き抜ける風。しかしそれはただの風ではなくレーザーブレスによって起こった風だった。
「な・・・・・・。」
「気付かれてた?」
 ゼロスとクリアの視界に映ったのはたくさんの黄金竜だった。

*************************************
 はい・・・・。混沌の言語・・・死霊都市の王を見ながら書きました。憶えてません。はっきり言って。すみません雫はここらでさらばします。