◆−雨上がり(ゼロフィリ?ヴァルフィリ?)−かぼちゃ (2003/6/8 12:30:05) No.26162
26162 | 雨上がり(ゼロフィリ?ヴァルフィリ?) | かぼちゃ | 2003/6/8 12:30:05 |
空が暗かった・・・。 「一雨来るのかしら・・・?」 と、骨董品店の窓から顔をのぞかせ、フィリアは心配そうに呟きました。 ダークスターとの戦いから一年が過ぎようとしていました。 卵から孵ったヴァルは驚くほどの成長速度を見せ、なおかつ以前の記憶もバッチリ憶えていたりします。そんなヴァルのことをフィリアは我が子同然に可愛がりました。 ――そう、我が子同然に・・・。 ソレがまずかったのです。 どう見ても同い年にしか見えないフィリアのことをヴァルが母と思うことなどできようはずもありませんでした。さらに悪いことに、ヴァルはフィリアに惚れてたりしました。 それでも、フィリアにとってヴァルは一年間、大切に育てた可愛い息子なのです。そこにズレが生まれました。そして今日、二人はついに大喧嘩をした挙句、ヴァルは外に飛び出していってしまったのです。 「はぁ・・・。」 フィリアは泣きそうな顔でなんとも情けない溜息をつきました。 「あの子、反抗期なのかしら・・・?」 「そういう問題じゃないと思いますよ。」 フィリアは不意に後ろから掛けられた声に硬直しました。さっきまでの情けない表情が露骨に引きつっています。 「な・・・生ゴミッ!どうしてココにっ!?」 モーニングスターをえいっ、とばかりに振り上げつつ振り替えるフィリアの視線の先にいたのは生ゴミ・・・・・・おっと、失礼・・・獣神官ゼロスでした。彼は何故か、ちょくちょくこの骨董品店を訪ねてきます。 「おやおや、せっかく親子関係がこじれてしまった貴女のために、適切なアドバイスをしに来たのに・・・。」 「アドバイス?」 まるで、インチキ塾の勧誘のようなことを言うゼロスにフィリアは訝しげな表情をしました。 「そうです。まず、貴女は世間一般の方から見るとシングルマザーと言うことになります。きっと、ヴァルガーヴさんには父親という存在が必要なんですよ。 ・・・・・・・・・そうですねぇ、僕なんか・・・」 「さっさと、ヴァルを迎えに行きなさいっっっ!!!!!!」 さりげなく口説こうとしたゼロスにしばらく拳を震わせていたフィリアは爆発したように絶叫しました。 「えぇっ!どうして僕が・・・」 「さっさと行きなさい・・・。」 今度はずーんと声のトーンを下げたどすの利いた声音で言われてゼロスは逃げるように去っていきました。 ぽつり。 「ん。」 空から落ちた一滴の雨がヴァルの鼻の頭を濡らしました。ヴァルは家から少し離れたところにある森の中に居ました。何もせずにただ木の根元に座り込んでいました。 少しづつ雨は強く大地を叩きつけ始めました。それでも帰る気にはならないのでした。 そこに、生ゴミが・・・・・・じゃなくて、ゼロスが通りかかりました。 「あぁ、ヴァルガーヴさん、こんな所にいたんですか・・・」 「おぅ。」 どこか、落ち込んだ声でヴァルは答えました。 「全く、フィリアさん心配してましたよ。」 いいながらゼロスはヴァルの横に腰を下ろしました。びしょ濡れになって前髪が額に張り付いていました。そんなゼロスを見てヴァルは少し笑いました。 「何ですか?」 「いや、お前は魔族らしくないな・・・と思ってな。」 むっとしたように言ったゼロスにヴァルは楽しそうに言いました。 雨は激しさを増していました。 「そうですかァ?」 「ああ。」 「どの辺りが?」 「全部。あ・・・特に、フィリアのところに通ってるところ。」 ヴァルはいたずらっぽく言いました。ゼロスの方は赤面しました。それを見てヴァルはケラケラとても面白そうに笑いました。そして 「そんなに、フィリアに御執心か?」 と、不意に真剣な顔で言いました。 「はい。」 それにはゼロスも真顔で答えました。 「僕は魔族ですが、フィリアさんのことが好きですよ。」 「・・・・・・・・・・・・・。」 「勿論あなたがフィリアさんのことが好きなのも知った上で言ってるんですよ。」 にっこりと、とても魔族とは思えないような清々しい笑顔をヴァルに向け、ゼロスは言いました。 「負けませんよ。」 「俺だって。」 二人はお互いのびしょびしょになった顔をみてニッと笑って見せました。かつて、お互いに命を奪い合っていた二人が最高の好敵手になりました。 「さ。帰りましょうか。」 いつしか、雨はやんでいて 「そうだな。」 雨上がりの道を仲良く風邪引いた二人が愛する人の待つ家に帰って行きました。 |