◆−GAME 4−潮北 かずら (2003/6/14 23:42:41) No.26240
 ┗Re:GAME 4−オロシ・ハイドラント (2003/6/15 18:35:10) No.26247
  ┗どうも〜〜!−潮北 かずら (2003/6/16 22:34:30) No.26261


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26240GAME 4潮北 かずら 2003/6/14 23:42:41


どうも…です……。
さらに遅くなってしまいました……。
平身低頭……。

未だ見捨てずにいてくださる方がいらっしゃる事を祈りつつ……。
では、どうぞ……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「遅かったじゃない、ゼロス」
「すみません、リナさん。ちょっと遠回りをしまして」
 ゼロスの肩越しに、王城への道の中ほどに団体が急ぎこちらへ向かっているのが見える。
「なぁ、リナ」
 ガウリイが口を挟んできた。
「何よ」
 また馬鹿なことでも言うのかと問わんばかりの表情で、リナはガウリイを見た。無論、その通りだった時の為に、拳は既にしっかりと握られている。
手を庇にして、一団を見てガウリイは言った。
「なんか殺気立ってるように、見えるんだが……気のせいか?」
 …………。
 殺気立っているかどうかは、距離があり過ぎてリナたちには分からない。が、他ならぬガウリイの目である。彼の視力の良さを考慮すれば、信憑性は格段に高くなる。
 記憶力こそ疑われるが、視力と直感と剣の腕だけは、無条件で信用に足るのだ。何かが違うような気もするが。
「お前、今度は何やったんだ……?」
 ゼルガディスがゼロスに問う。
「いやぁ、あのエクセブとかいう隊長さんを、ちょっとからかってました。それで時間がかかってしまったんですね」
「はぁ?」
 呆れるリナに「実にからかい甲斐のある人でした」などと宣わるゼロス。
「まぁ、いいわ。で、一体、何を盗んできたわけ?」
「これですよ」
 脇からさっと獲物を取り出す。場違いな煌びやかさが、とにかく目を引いた。
「これって……」
「王笏だそうです」
 さらりと言うゼロス。
「えーっ!」
 大きな瞳をさらに大きくして、アメリアが叫んだ。
「っんなもの盗って来たわけ!?」
 リナもまた、胸倉に掴みかかって問いただす。しかし、驚愕はそこそこに、リナの瞳は別の驚きで輝いている。女性ならではの表情と言っても良い。
「はい」
 汗を伝わせながら、肯いた。
 手渡された笏杖を両手で受け取るリナは、ますます目を輝かせていく。ずっしりとした重みが冷たい感触と共に手から伝わる。国を治める者のみが、手にする事を許される重みである。しかし、今のリナには、高価なアクセサリーにしか過ぎないようだ。
「なるべく派手で、貴重な物がいいとは言ったけど……。まさかこんな物を盗んでくるなんて……」
 呆気にとられてか、はたまた感動してか、深くため息をつくリナ。その脳裏に、祭りの初日に交わしたやり取りが蘇えってくる。
「やっぱ、言ってみるもんね〜! さすがだわ、ゼロス!」
 笑顔のリナ。上機嫌だ。
「そうですか? この程度のことで」
 ゼロスの言葉はそうでもないと言う風だが、対面の笑顔に釣られて、ゼロスの笑顔にも、どこかしら喜びともとれる微妙な変化があったのを、リナは見逃さなかった。
 一瞬、きょとん、とした顔になるも、すぐに笑顔のなり、
「へぇ……ちょっと以外ね」
 と、リナは静かに漏らした。
 ……?
「なにがですか?」
「ゼロスでも、そんなかわいい笑顔になることもあるんだ。知らなかったわ」
 からかうようにリナは言った。
 途端に、ゼロスのこめかみから一筋の汗が、顎へとラインを引いてゆく。
「は、はぁ……。かわいい……ですか……」
 いくら知っている仲だとはいえ、いや、知っていて高位魔族に対して、かわいいなどという表現を使う人間は、過去にも未来にも、リナくらいのものだろう。
 そもそも、普通は男に対して使う表現でもない。そうも思うのだが、お茶目な魔族としては、悪意も無くかわいいと言われた事に、お礼を言ってよいものかどうか、首を傾げたまま止まってしまうのだった。
 そんなゼロスの頬を、リナは両手で摘んで左右に引っ張る。
「普段は悪たらしくて、こうでもしないと気が済まないのにね〜。 おぉ! よく伸びる、伸びる」
「りなはぁ〜ん……」
 すっかり、いや、やっぱりリナのおもちゃである。
 間近でやり取りの一部始終を見ていたガウリイとアメリアは、笑うに笑えない顔を作っていた。ゼルガディスは首を垂れて脱力している。だが、追っ手がそこまで迫っている事に気づき、
「おいリナ、そんなモノ相手にしている暇は無い。急いで逃げるぞ」
 せかした。
 そんなモノ呼ばわりされたゼロスは、張れた頬をさすりながら、
「ゼルガディスさん、そんなモノはないでしょう」
 と、苦情を訴える。
 チラッと目を配っただけで、ゼルガディスは全く相手にしなかった。
「そうね、遊んでる場合じゃないみたいね」
 リナはゼロスに視線を落とし、軽くウインクした。気付いたゼロスも、片目をうっすらと開けると、直に視線をそらす。確認してか、リナが手の力を緩めると、ゼロスは「では」と、通りへ降りて人込みにのまれ、何処かへと姿を消すのだった。
 心機一転。
「んじゃ、みんな、ゴールまで突っ走るわよ!」
 やる気満万のリナに、
「おう!」
「はいっ!」
 ノリの良いガウリイとアメリアは、拳まで掲げて応えた。
「ふんっ!」
 唯一、鼻で笑うゼルガディス。しかし視線は仲間とは全く別な方へと向いていた。あたかも、自分だけはコイツ等とは別だ、とでも言うように。
「ゼルガディスさん、こういう事は恥ずかしがっちゃ行けませんよ」
 だが、一言にもとに、ゼルガディスの密かな訴えは、アメリアに玉砕されるのであった。
「……あのなぁ……」
 儚い望みである。せめて、沈着冷静と受け止めてくれるならば、まだ救いがあるだろうに。だが、直ちに走り出したリナを追いかけて、とっとと背を向ける仲間たちには、もはや何を言っても伝わらないのだった。哀れというのも失礼か……。不満は尽きないが、もはや茶飯事である。ゼルガディスも、もう気にも留め置かず、後を追って最後尾の位置で付いていった。
 リナは屋根伝いに走っていた。大通りを進む事も出来るが、人込みを走るのは、最良の選択とは言えないと判断した結果であった。何が最良かは知れないが。少なくとも、隠れたり、追っ手を巻いたりするならば、人込みというのは丁度良いだろうが、やはりここは、祭りのイベントであると云う事を考慮し、サービス精神を発揮して、極力目立つ逃走路を選択したのだった。無論、全員の承諾済みである。
 屋根の上は目立つのか? という率直な疑問を持つ人もいるかも知れない。
 その通り、目立つのである。
 長年やっていれば、実状報告やアンケートなどから、イベントの欠点は見えてくる。一番多い苦情は、何所を通るかわからないから観戦できない、というのがダントツであった。その不満解消に過去の経験を生かした結果、町のいたる所に、屋根の高さに合わせた高見台が幾つも作られるようになり、今では、かなりの人がそこから観戦できるようになったのだった。
 一般的に逃げる者の心理として、安全を確保したいというのは直ぐに出てくるものだ。逃げたい、できるだけ遠くに離れたいと思いつつ、ついつい隠れてしまうのは、捜査を撹乱し、一時的にでも身の安全を図ろうとするからであろう。だからこそ、人込みに紛れるのが常套なのである。
 とはいえ、それはあくまで一般論。中にはそういった手段を取らず、堂々と逃げ切る者もいる。自分に絶対の自信を持つ者などがそうだろう。最初から派手に立ち回り、まさに大胆且つ華麗に人々を翻弄し、何時の間にか、煙のように消えるのだ。
 そして、このイベントに参加した泥棒役は、その一般論から漏れる者が殆どであった。今回のリナ達と同じように。だからこそ、花形なのである。
 ゆえに、人が少なく目立つ場所は、格好の観戦ポイントとなる。高見台を作れば、参加者の邪魔にならず、時には目の前で迫力のあるやり取りが見れるのだ。
「頑張れよ!」
「応援してるからな!」
 あちらこちらから声援が聞こえてくる。嬉しい味方である。
 もっとも声援の中には、
「お願いします! 魔道士協会の名誉のためにっ!」
 なんてのはまだしも、
「頼むぞ! 俺の昨日の稼ぎが掛かってるんだからなっ!」
 などという、不逞な声もちらほらと……。
「あのねぇ……」
 リナの眉が釣り上がる。何処かで賭けが行われているようだ。野次も腹立つが、そういう妙な応援もやめてもらいたいところある。



 通りの入り口についたエクセブ隊長率いる警備隊は、さっそく建物に持参した梯子を、定間隔を空けて掛けて一斉に登り始めた。さすが毎年やってるだけあって、隊士の行動も中々慣れたものである。誰が見ても分るほどに手際がいい。
「カート、シン、ジェット、上はお前たちに任せる」
 名を呼ばれた三人は、敬礼をして、任を拝命した。
「残りはワシと共に通りを行くぞ!」
 掛け声を上げて方向転換しようとした瞬間、
「早いですね、もうここまで追いついたのですか、エクセブ隊長」
 背後から、言葉がかけられた。
 声に反応し、振り返った途端、顔面の筋肉が総動員で一歩引いたかのように、エクセブの表情は即座に引きつた。上半身も、どこか反り気味である。
「うっ、ぐぎぃ……アレン……」
 この国で一番会いたくない苦手意識の化身の登場に、エクセブは見事なまでに心理を忠実に表現した格好に動いていたのだった。
「やぁ、数時間ぶりですね」
 アレンは余裕をもって見ている。
 あからさまなエクセブと、全く動じていないアレン。対照的な反応があざやかである程、周囲の目には滑稽に写る。現に、居合せた人々は興味を持って二人を見ていた。
「な、何か用か……いや、ですか?」
 未だ言葉遣いがおかしい。苦手だろうが、年下だろうが大臣は大臣である。敬語を使うのは当然の事なのだが、払拭し切れない抵抗が残っているからだろう。平常を装おうとして出来なかった、無様な結果である。
「ええ、実はちょっと警備の人員に変更が加えられたので、事後報告に来ました」
「変更だと!? そんな事、聞いていないぞっ?」
 驚いた拍子に、敬語が消えてしまった。
「それはそうでしょうね。ついさっき決めましたから」
「ついさっきだと!?」
「はい。これ」
 紙を一枚、手渡す。
「何だこれはっ!?」
「何って、見た通りのものですよ」
 エクセブは食い入るように見る。書面には、『一日警備隊長』などという文字が大きく踊っていた。そして、そこに記された名前は――。
「何故お前の名前が書いてあるのだっ!?」
「急遽立案されたので、人員選考の時間が無かったんですよ。だから試験的に今回は私が涙を飲んでなる事にしたんです」
 アレンは顎に両の拳を持って行き、うるうると涙を浮かべた瞳で、「涙を飲んで」を演出して見せる。
 激昂するエクセブ。
「そんな馬鹿げた事が……何処のどいつだ!? こんなふざけた企てをした奴はっ!!」
「どこのって? 嫌ですね、ここの僕ですよ。そんなの決まってるじゃないですか」
 さらっと言ってのけるアレン。
 職権乱用もいいところだ。
「他の大臣の署名もちゃんともらってますし、正式なものですよ」

「ワシは認めんぞ! こんなものっ!」
「破るんですか? それを? 紛う事無き公文章ですよ」
 エクセブの手が止まる。
「貴方には拒否権も決定権もありません。そういうわけで……なくても、一応、私のほうが上官ですね」
 これは間抜けだったと、側頭部をぽんと叩いて見せる。殆どアレンの独断場である。
「それに、言いませんでしたか? 事後報告と」
 嫌味な笑みを浮かべ、静かに言い放つ。
「く……っ!」
 絶望に打ちひしがれ、エクセブはその場に崩れ落ちた。
「もし覆したいならば、陛下に注進するより他ないでしょうね。もっとも笏杖を盗まれ、取り戻す事も出来ない警備隊長のお目通りが叶うならばの話しですが、ね」
 絶対に無理だ。たとえ天地がひっくり返ろうとも、この状態では決して叶えられるものではない。何より、そんな事をしている時間すら無い。今こうしている間にも、リナ達は着々とゴールに向かっているのだ。自尊心を優先した無駄な努力で時間を潰し、任務をしとげられなければ、それこそいい恥さらしである。
「くそっ!」
 行き場の無い憤りに、エクセブは地面に拳を叩きつけた。
 ゼロスといい、アレンといい。エクセブにとって、今日という日は絵に描いたような厄日であった。
 その姿に、鋭気を秘めた若き大臣は、業とらしく高笑いを飛ばす。だが勝ち誇る姿も十分様になっている。
「そうそう、ここは貴方にお任せします。頑張ってくださいね、エクセブ殿」
 踵を返すと、アレンは堂々と歩き去っていった。
「これで天下御免で遊べます」
 恐るべし、アレン=ラスベール。
 人は彼を、知略に長けた道楽大臣と噂する。
 ――完敗


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
はぁ……蛇行してしまいました……。
ホント、なんか訳のわからない話になってしまいました…。得に後半が。(^^;)
正直なところをいえば、アレンさんの性格はしっかり暴走しています。もっと温厚な人なのに……。元は私のオリジナル小説の登場人物でした。かなり使い勝手の良い人だったので持ってきたのですが、品行方正さ(が在ったかはともかく)がごっそり抜けて、すっかり歪んでしまいました。(うぅ、ルシカに殺される……/ 爆)

次はちゃんとマトモに書けたらいいな……。(希望的観測)

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます!
次も読んで下さいましたら、幸いです。

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26247Re:GAME 4オロシ・ハイドラント 2003/6/15 18:35:10
記事番号26240へのコメント

こんばんはラントです。

そろそろクライマックスなのでしょうか?
大臣参加でどう荒れるのでしょうか?
戦況を逆転させるような切り札を持っているようには見えないのですけど、自信から見るときっと凄いものを隠しているんでしょうね。

エクゼブ隊長の感情変化がリアルに描かれていたかと思います。
他の箇所も的確で、さらにくどくなりすぎず読みやすいので多少の長さも気にならずにスピィーディーに読めました。

> 屋根の上は目立つのか? という率直な疑問を持つ人もいるかも知れない。
> その通り、目立つのである。
断言出来るということはまさか……経験者?(待て)

それでは、これで失礼致します。
さようなら

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26261どうも〜〜!潮北 かずら 2003/6/16 22:34:30
記事番号26247へのコメント

ラントさん、こんばんわ〜。

いつもコメント下さってありがとうございます!
見捨てずにいて下さった事に、感謝!!!(^▽^;)


>そろそろクライマックスなのでしょうか?
そうですね……そろそろ締めくくらないと、ダラダラと書いてしまいそうだと、気を張っております。希望としては、長くてもあと3話以内に終わらせたい。
でも、どうなるか……こればかりは書いてみないと分りません。まぁ、3話以内が目安ということですかね……。本当にどうなるんだろう。(^^;)

>大臣参加でどう荒れるのでしょうか?
少しは荒れると思います。ただ、派手かどうかは?(にやりっ)ということで。 

>戦況を逆転させるような切り札を持っているようには見えないのですけど、自信から見るときっと凄いものを隠しているんでしょうね。
うーん……それもどうでしょうか?
今回の投稿の方でも書きましたが、アレンは私のオリジナル小説から引っ張ってきたキャラです。元々スレとは設定も何もかも違う中にいる奴なので、こっちに引っ張ってきてからの性格、強さ等の修正がイマイチうまくいってい無いような気がします。本来は頭が良くて器用な万能タイプ、役割は縁の下のサポーターという、決して主役になれない奴なんですが、この話では全然違ってますよね。
なるべく凄くしたいと思います。(爆/チョット待て!)

>断言出来るということはまさか……経験者?(待て)
(爆)
作中のような経験は無いです……。
あ、でも、子供の頃に『かくれんぼ』で屋根の上を使ったことはあります。(^▽^;)

ありがとうございました。
続きも頑張ります。