◆−欲望の行き着く先 改訂版 前書き−龍崎星海 (2003/6/16 23:00:11) No.26263 ┣欲望の行き着く先 改訂版1−龍崎星海 (2003/6/16 23:04:38) No.26264 ┃┗Re:欲望の行き着く先 改訂版1−オロシ・ハイドラント (2003/6/17 20:28:52) No.26269 ┃ ┗お久しぶりです。−龍崎星海 (2003/6/18 00:56:19) No.26274 ┣欲望の行き着く先 改訂版2−龍崎星海 (2003/6/18 00:51:14) No.26273 ┣欲望の行き着く先 改訂版3−龍崎星海 (2003/6/18 23:57:08) No.26278 ┣欲望の行き着く先 改訂版4−龍崎星海 (2003/6/20 04:50:28) No.26286 ┣欲望の行き着く先 改訂版5−龍崎星海 (2003/6/20 22:20:49) No.26291 ┣欲望の行き着く先 改訂版6−龍崎星海 (2003/6/21 23:49:15) No.26306 ┣欲望の行き着く先 改訂版7−龍崎星海 (2003/6/22 03:43:36) No.26307 ┣欲望の行き着く先 改訂版8−龍崎星海 (2003/6/22 23:08:05) No.26317 ┃┗Re:欲望の行き着く先 改訂版8−オロシ・ハイドラント (2003/6/23 15:00:32) No.26319 ┃ ┗どうもこんばんは。−龍崎星海 (2003/6/24 00:24:04) No.26324 ┣欲望の行き着く先 改訂版9−龍崎星海 (2003/6/24 00:18:43) No.26323 ┣欲望の行き着く先 改訂版10−龍崎星海 (2003/6/24 23:32:39) No.26336 ┣欲望の行き着く先 改訂版11−龍崎星海 (2003/6/25 23:07:20) No.26349 ┗欲望の行き着く先 改訂版12−龍崎星海 (2003/6/26 22:59:30) No.26357 ┗Re:欲望の行き着く先 改訂版後書き−龍崎星海 (2003/6/26 23:06:03) No.26358 ┗お疲れ様でした−オロシ・ハイドラント (2003/6/27 18:36:35) No.26366 ┗ありがとうございます。−龍崎星海 (2003/6/27 23:47:49) No.26376
26263 | 欲望の行き着く先 改訂版 前書き | 龍崎星海 URL | 2003/6/16 23:00:11 |
どうもお久しぶりです。 お久しぶりすぎて始めましてと言った方がよさそうですが。 ええと、こちらに以前投稿させて頂きました「欲望の行き着く先」ですが、改訂しましたのでこちらに投稿しようかと思います。 この話は原作風をめざしています。 カップリングは無しです。まあ、多少ガウリナ・ゼルアメ風味がついてますが。 できれば毎日投稿したいと思っています。 よろしければ読んで行ってください。 |
26264 | 欲望の行き着く先 改訂版1 | 龍崎星海 URL | 2003/6/16 23:04:38 |
記事番号26263へのコメント あたし達は、次の街を目指して、いつものように街道を歩いていた。 「もうすぐ、カリメテの町に着くわね。 着いたら、早速名物を食べに行きましょ!」 「おう、そうだな!」 カリメテってのはあたし達が今向かってる次の町の名前ね。 もう長い事旅から旅への暮らししてるけど、何が楽しみって行く先々で出会うその土地その土地の名物料理よねっ! くうう‥‥楽しみーっ!! あ、自己紹介がまだだったわね。 あたしの名前はリナ=インバースよ。 ひょっとして噂くらいは聞いた事があるんじゃないの? 何しろあたしはこう見えても、かなり名の知られた天才美少女魔道士なんですからね! ‥‥え? 悪名をとどろかせてる、の間違いじゃないのかって? フッフッフ‥‥あんた‥‥どうやら、あたしに呪文で吹っ飛ばされたいよーね。 え、すみません、もう言いませんですって? 分かればいーのよ、分かれば。 あたしのこの可愛い外見に惑わされて、あたしを甘く見たヤツは沢山いるけど、そいつらは1人残らず痛い目を見せてやってるんですからね。 あんたもその仲間入りしたくなければ、言葉に気を付けるよーに。 で、あたしの後ろを歩いている、金髪碧眼のハンサムにして、すらりとした長身の、見た目は超一級でも頭の中身はスライム以下のこの男は、ガウリイ=ガブリエフ。 こー見えても、剣の腕と勘の良さは天下一品だったりするのよね。 ‥‥まー、それしか取り柄がない、とも言うけど。 このガウリイ、ちょっと前までは光の剣って言う小さな子供でも知ってるよーな伝説の剣の持ち主だったんだけど‥‥ この間、あたし達が巻き込まれた事件で、その剣をなくしちゃってるのよねー。 それ以来、剣のなくなったガウリイの役に立たない事、立たない事! しょーがないので、こーして代わりの剣を探して旅をしてるのよ。 実はこの間、まーまー使えそーな魔法剣を手に入れたんだけど‥‥ やっぱ魔族相手に戦うのにはちょ〜っと不安があんのよねえ。 って訳で、それ以上の剣を探して、旅をしてるって訳よ。 ああ、次の町にいい剣があるといーんだけどねー。と。 「なあ、リナ。次の町は何て言う町だったっけ」 いきなりガウリイが話しかけて来た。 こ‥‥こいつはっ!! 「あのねえ。朝宿を出る時に言ったでしょーが! 次の町はカリメテだって! ってかついさっき言ったばかりでしょーが! もう忘れたのかい、あんたは! 全く、本当にクラゲなんだから!」 「いやー、そんな前の事、オレが覚えてると思ってんのか? で、そのカリなんとかって町には、何かうまいモンがあるのか?」 こらまて、そんな前って‥‥ついさっきの事でしょーがっ!! ってか、そのカリなんとかってのは何よっ!! 「あのねえ‥‥まさかとは思うけど、あんた‥‥たった4文字の町の名前が覚えらんなんかいっ!!」 「いやあ‥‥オレが覚えられるのは、2文字までだから」 爽やかーに笑いながら答えるガウリイ。 そーゆー事、笑いながら言うなっ!! ったく‥‥これでよくアメリアの名前が覚えられたわねえ‥‥ まあ、いーけどさー。 「あー‥‥カリメテは、小さな町で有名でも何でもないからどんな名物があるのかは知らないけど、山間の町だからね。 きっと山の幸があるはずよ」 「山の幸かー。って事は、キノコとか、木の実とか、後は山に棲んでる獣とかか?」 「そーそー。特にキノコは美味しい物が多いからねえ‥‥ じゅるっ‥‥ああ、考えただけでヨダレが出てきちゃったわ。 ガウリイ! 先を急ぐわよ!」 「おうっ!!」 カリメテに着いたあたし達は、早速食堂を探して町を歩いた。 う〜ん‥‥小さな町だから、人通りが少ないのは仕方ないんだけど‥‥ 何だか、妙に活気のない町ねえ。 いくらなんでも人通りが少な過ぎるし、時々すれ違う人の顔にも活気がないのが気になるわねえ‥‥ まさか、何か起こってる、とか。 いや、たとえ何が起こっていよーとも、あたしには関係がないわ! これより、ご飯よご飯! あ、あそこにあるの‥‥あれ、食堂じゃない? しかも宿屋も兼ねてるみたいね。 他には‥‥食堂らしき物はないわね。 まあ、小さな町だから仕方ないか。 今夜の宿hばあそこでいーんだけど、問題は食事よねー。 こーゆー、町にたった1つの食堂って、あんまり美味しくない事が多いから。 ま、しょーがないか。背に腹は代えられないもんね。 「ガウリイ、あそこで食事にしましょ。 そのまま、今夜はあそこに泊まるわよ」 「おう、分かった。でも、この町‥‥何だかイヤな雰囲気がするんだが‥‥」 う〜ん‥‥ガウリイにもこの雰囲気が分かるみたいね。でも。 「そんな事より、今は食事が先よっ!!」 あたし達は、その食堂兼宿屋の扉をくぐった。 中にはここの女将だろうか。おばちゃんが1人居て、 「いらっしゃいませ!」 と入って来たあたし達に声を掛けて来た。 店の中は、あたし達以外にお客の姿はない。 ま、昼食にはちょっと遅い時間だからしょーがないんだろーけど‥‥ まさか、すんごくマズいせいで客が居ないんじゃないでしょーねー‥‥ ええい! そんなのは、食べてみれば分かる事よ! 「おばちゃーん、何でもいーからメニューにある物を1つずつ持って来てくんない?」 席に着きながら注文をすると、 「あ、オレも同じの頼む!」 ガウリイも同じように注文して、あたしの向かいの席に座った。 「わ、分かったよ。お前さーん、料理全部2人前ずつ!」 おばちゃんは額に1筋汗をかきながらも、奥の厨房へと声を掛けると、自分も厨房へ入って行った。 しっかし‥‥ガウリイったら、いっつもあたしが注文したのと同じ物を注文するんだけど‥‥ 何を食べるのか、ぐらい自分で考えればいーのに。 そんなんだから、どんどんクラゲになってくのよ! ‥‥そうだ。今度、わざととんでもない品物を注文してやろっと。 で、ガウリイがいつものように『オレも同じの頼む!』って注文して。 んで、出て来た物を見て驚いたら‥‥指さして笑ってやろう。 そーすれば、あいつも少しは考えるよーに‥‥って、ダメだ。 それだと、あたしもとんでもない物を食べなきゃいけなくなっちゃう。 あ〜あ、いー考えだと思ったんだけどなー。 などとボーッと考えながら待っていると、やがて。 「はい、お待ちどう!」 いい匂いと共に、おばちゃんが両手にもてるだけの皿を持って現れた。 それらの皿をドン!とテーブルの上に置く。 「んー、いー匂い‥‥おいしそー!」 「おほっ! いっただっきまーす!」 あたしが匂いをかいでる間にガウリイが料理を食べ始める。 ああ、先を越された! って、よく見たらこの料理、全部1皿に2人前ずつ盛ってあるじゃないの! って事は今ガウリイが抱えてるあの皿の料理、半分はあたしのじゃないの! 「こぅらー! ガウリイ! それ、半分はあたしのじゃないの! いい、全部食べたら、承知しないかんね!」 「ふっ‥‥そんなの、早い者勝ちに決まってるだろーがっ!!」 ガウリイは皿を抱え込んで、皿の上の料理を口の中にかき込んで行く。 あああ‥‥さてはあいつ、全部食べるつもりなのねっ!! そっちがそのつもりなら、こっちだってっ!! 「こっちの皿は、あたしが貰うわっ!」 あたしは、目の前にあった鳥の唐揚げをゲットする。 「あー! それ、オレも狙ってたんだぞ! くっそー、こーなったら‥‥」 皿を傾けると、中身を口の中にザカザカ放り込み出すガウリイ! 皿が空になると、すぐに次の皿を抱え込む! 「ほへはほへはほはっは!」 口の中一杯に物を頬張ってるものだから、何言ってるか分かりゃしないんだけど‥‥ たぶん、今のは『これはオレがもらった!』って言ったのよね。 ‥‥って、呑気に解説してる場合じゃないっ!! 「おにょれ、ガウリイ! そんな手で来るとは! だったら、あたしもっ!!」 ザカザカザカッ! 大慌てで皿の中身を口の中に放り込むと、別の皿を抱え込む! 「ほへはははひほ!」 ‥‥ちなみに、今のは『これはあたしの!』って言ったのよ。 自分でも何言ってるのか分かんないぐらいなのに、ガウリイにはちゃんと通じたらしい。 ガウリイがあたしをジロリと睨み付ける! あたしも負けじとにらみ返す! バ〜チバチバチ! あたしの視線とガウリイの視線がぶつかりあい‥‥2人の間で盛大に火花が飛び散る! 「あのー‥‥そんな事しなくっても、まだまだ料理はありますよ」 呆れ顔でおばちゃんが言うけど‥‥何言ってるかなあ! これは戦いなのよ! ガウリイの負ける訳にはいかないんだかんね! もぎゅもぎゅもぎゅもぎゅ手b あたしは大急ぎで口の中の物を食べ終えると、次のさらに取りかかった。 チラリとガウリイの方を見てみると‥‥ガウリイの方も、すでに抱え込んでいる皿をほとんど平らげてしまっている。 おにょれ、ガウリイ! やるなっ!! ガツガツガツ! あたしとガウリイは、大急ぎで皿の中身を食べ尽くすと、次のさらに手を伸ばした。 これで、残るお皿はあと2皿! 1つは肉料理で、もう1つは魚料理だ。 「あたしは魚料理を貰うわ!」 「じゃ、オレは肉料理だ!」 それぞれに皿を選ぶと、同時に平らげに掛かる! あたし達に無視されたおばちゃんは、ボーゼンとあたし達の食事風景を見ていたけど、やがて。 「次の料理を持ってくるわね‥‥」 それだけ言うと、寂しそーに厨房へと戻って行く。 でも、あたし達はそれすら無視して食べる事に夢中になっていた。 バクバクバクバク! 大急ぎで皿の中身を口の中に放り込んでいると、 「よっしゃー! 終わったぞ!」 ガウリイがそう言って、ダン!と空の皿をテーブルの上に置いた。 その時、あたしの皿の中には、まだ少しだけ料理が残っていた。 くぅっ‥‥ガウリイに負けるなんてっ!! 「くやしい〜〜!!」 「はっはっは、まだまだだな、リナ!」 勝ち誇るガウリイ。 おにょれ〜! って、あれ? いつの間に早食い競争になったんだろう。 ま、いーけど。と、 「へい、お待ち!」 次のお料理達がやって来た。 よっしゃー、リベンジよっ! 「ふ‥‥今度こそは負けないわよっ!!」 「よし、その勝負、受けて立った!」 お互い、テーブルの上の皿に手を伸ばし、早速平らげに掛かるあたし達。 「ねえ、あんた達、ここいらじゃ見かけない顔だけど、旅の人かい?」 バクバクバク‥‥カラ〜〜ン 「よーし、1皿終わった!」 「くそっ! リナに先を越された!」 「見たとこ、旅の魔道士と剣士みたいだけど‥‥あんたら、今ここいらで起こってる事件を知ってて来たのかい?」 バクバクバク‥‥カラ〜ン 「よ〜し、今度はオレの方が早かったぞ!」 「おにょれ、ガウリイ! 次は負けないわ!」 話しかけて来るおばちゃんを完全に無視して食事を続けるあたし達に、 「‥‥話は後にした方がいーようだね‥‥」 は〜〜っと深いため息を付くと、おばちゃんは厨房に戻って行った。 もちろん、そんな事には目もくれずに、あたし達は食事を続けたんだけどね。 『あたし、リナ=インバース。 いつものようにお食事バトルを繰り広げるあたし達に話し掛けて来るおばちゃん。 なんだかキナ臭い匂いがするんだけど‥‥今はそんな事より、いかにしてガウリイを出し抜くのか、の方が大事よ! 次回、「欲望の行き着く先 2」 読んでくんないと、ま〜た暴れちゃうぞ!』 **************** はい、いかがでしたでしょうか。 こんな感じで次回予告を付けていきますので。 次回からはいままでのあらすじもつきます。 ‥‥大した内容じゃないですけどね。 それでは、これにて。 |
26269 | Re:欲望の行き着く先 改訂版1 | オロシ・ハイドラント | 2003/6/17 20:28:52 |
記事番号26264へのコメント こんばんは。 お久しぶりです。 以前、お会いしたのは旧名の頃だったかと思われますが……。 一人称なのですね。 その一人称、なのですけど…… 非常に独特さを感じて、良かったです。 リナの解説という感じの文章。 でも、解説と言っても、くどくなく、分かり辛くもない。 リナの視線を通すということが、作品世界と読者との距離を近づけているかのようです。 新感覚で魅力的でした。 ユーモアも交えて、少々の長文も一気に読ませた今作。 どうやらストーリーに関しては、次回から本番に入るといった形のよう。 一体、この街ではどんな事件が起っているのでしょう。 このタイプの話では、どんな事件であるかが重要なところですからねえ? 魅力的な事件、期待しています。 そして今後の展開を、期待しています。 それではこれで失礼致します。 |
26274 | お久しぶりです。 | 龍崎星海 URL | 2003/6/18 00:56:19 |
記事番号26269へのコメント どうもこんにちは。本当にお久しぶりですね。 レス、ありがとうございます。 >一人称なのですね。 はい、リナ一人称です。 原作風を目指しているのですが、何だかいつの間にやら違ってる気もします(笑) >ユーモアも交えて、少々の長文も一気に読ませた今作。 >どうやらストーリーに関しては、次回から本番に入るといった形のよう。 な、長かったですか? ‥‥‥‥ええと、実は毎回このぐらいの長さで、全12回になります、この話‥‥ あはははは‥‥‥‥ おまけに、話が動いてません。 あう、すみません、すみません! ええと、次回は多少話が動きますので‥‥ それでは、これにて失礼します。 |
26273 | 欲望の行き着く先 改訂版2 | 龍崎星海 URL | 2003/6/18 00:51:14 |
記事番号26263へのコメント 欲望の行き着く先2 『あたし、リナ=インバース。カリメテの町に着いたあたし達。 な〜んか‥‥ここ、ヤな感じなんですけど‥‥ でも、その前に腹ごしらえよっ!! ああ、ガウリイ、あたしのお料理をっ!! これは負けてらんないわっ!! こーして、あたし達のお料理バトルは始まったのだった』 やがて。 タンッ!! 最後のデザートの皿を、同時にテーブルの上に置くあたし達。 う〜ん、同着とは‥‥ガウリイもやるわねー。 「う〜ん、くったくった」 満足そうに腹をさするガウリイ 「そーよねえ。町に1件しかない食堂だから、どーかなーと思ったけど‥‥ けっこう美味しかったわね。これなら十分に合格点が付けられるわっ!!」 「そりゃありがとよ」 そう声を掛けたのは、おばちゃんだった。 手に香茶の乗ったトレーを持っている。 「お客さん達、旅の人かい?」 「そーよ。あ、そーだ。今日はここに泊めてもらうからね」 「そりゃありがとね。ところで‥‥あんた達は、見た所魔道士と剣士みたいだけど、今ここらで起こってる事件は知ってるのかい?」 事件‥‥そっか、やっぱ何か起こってたんだ。 「ううん、知らないけど‥‥何かあったの?」 するとおばちゃんは顔を曇らせながら、こう言った。 「そーかい‥‥だったら、悪い事は言わないから、このまま来た道を引き返しな。 この先に何の用があるのか知らないけど、命あっての物だねだよ」 ‥‥ちょっと。穏やかじゃないわねー。 「命あっての物だねって‥‥そんなに物騒な事件が起こってるの?」 「ああ、この町の先に山があるんだけどね‥‥ 実は、最近その山へ行って生きて帰って来た旅人は居ないんだよ」 生きて帰ってって‥‥本気で物騒ね。あ、でも。 「それって旅の人とか商人とかでしょ? だったら、ただ次の町へ行ったから戻って来ないんじゃないの?」 「だったらよかったんだけどねー。 今んところ、襲われるのはよそから来た旅人だけで、地元の人間や町の間を行き来してる商人なんかは襲われないんだけどね。 で、隣町から行商に来てる人の話によると、最近この町から隣町へ行った旅人が1人も向こうに着いてないって言うんだよ。 隣町から旅立ったはずの人達も、この町へは来てないしね。 で、一応念のために山に捜索隊が入ったんだけど‥‥」 そこで言葉を切るおばちゃん。 ‥‥な、なんかすっごいヤな展開なんですけど‥‥ 「‥‥まさか、全滅した、とか‥‥」 「いや、全員無事で帰って来たよ。 でも、山の中にで沢山の死体を見つけてね。 それも‥‥皆、そりゃーひどい殺され方だったそうで‥‥」 なんとも言えない、恐怖と悲しみがない交ぜになった表情をするおばちゃん。 そりゃそーよねえ。 そんな事件が起こり続けたら、誰もこの町を訪れなくなっちゃう。 そーなったら‥‥町は成り立って行かなくなっちゃうもの。 いや、それ以前に、今は旅人しか襲われていなくっても、いつ町の人間が襲われるか、分かった物じゃないのだ。 いつ、山ではなくって、町中で襲われるよーになるのか、分かった物じゃないのだ。 きっと、町の人達は生きた心地がしないでしょーねー。 あ、それでなのね。この町になんとなく活気がないのは。 道で遊んでる子供も1人も居なかったし。 きっとみんな、家の中で息を潜めるよーにして暮らしてるんだろーなー。 「大変ねー。それで、何か手は打たなかったの?」 「それがね‥‥町長さんに呼ばれて、今まで何人もの腕に自信のある人達がやって来て、山に入って行ったんだけど‥‥ 誰も戻って来ないんだよ‥‥」 そう言って、さらに顔を曇らせるおばちゃん。 そっか‥‥みんな、失敗しちゃってるんだ。 これは、かなりやっかいな事件みたいねー。あ、でも。 「じゃ、町長さんは、今度の事件を解決してくれる人を捜してるのね」 「ああ、そうだよ。だから最初はあんた達も町長さんに呼ばれたのかと思ったのさ」 なるほど、そーゆー事ね。 ふっふっふ‥‥よっしゃー、儲け話みっけ! 何しろ、何人もの人間が失敗してるのだ。 かなりふっかけられると見た! 「ねえ、その町長さんちってどこにあんの?」 「え? ‥‥まさか、あんたら‥‥行く気なのかい? やめといた方がいーよ! 見るからに強そーな人達だって、みんなやられちゃってるんだ。 あんたみたいなお嬢ちゃんやそこで寝てる優男じゃ、殺されに行くよーなもんだ。 やめときな! 悪い事は言わないからさ!」 血相を変えてあたしを説得しようとするおばちゃん。 心配してくれるのはありがたいけど、あたしをそこらの奴と一緒にして欲しくないわね! 「だ〜いじょうぶだって! こー見えても、あたし達は腕が立つんだから!」 ‥‥って、おばちゃん、今そこで寝てるって言ったけど、まさか‥‥ あたしはギギィ‥‥と首を回して、向かいの席に座っている、ガウリイを見た。 ガウリイは、テーブルの上につっぷして、スピョスピョ気持ちよさそーに眠っていた。 こいつは〜〜っ! まーた寝てやがるっ!! 「起きんか〜い、このクラゲ〜〜っ!!」 パコカーンッ!! 「いってーっ!!」 あたしに殴られて、飛び起きるガウリイ。 今あたしが使ったスリッパは、この前泊まった宿屋でパクッって来たんだけど‥‥ 音はいーし、ガウリイは1発で起きるし。 ほんと、使い勝手がいーのよね。もっとパクッとくんだった。 って、そーじゃない! 「こら、ガウリイ! あんた話の途中で寝るなっていつも言ってるでしょーがっ!! いー加減、その癖治しなさいよっ!!」 思いっきりガウリイを怒鳴りつけてやる。 すると、あたしに叩かれた場所を撫でていたガウリイが不満そーに答えた。 「だ〜ってよー、何の話してるのか、全然分からないんだから、仕方ないだろ。 リナだって、訳の分からない話を聞かされたら、眠くなるだろーがっ!!」 そりゃ、あたしだって、チンプンカンプンの話聞かされたら眠くなるわよ。 でも、今あたしがおばちゃんと話してたのは、そんなに難しい話じゃないでしょーがっ!! と言うかっ!! 「あんたの場合は、『分からない』んじゃなくって、『分かろうとしない』んでしょーがっ!! 少しは頭を使いなさいっ!! でないと、しまいに頭が退化してなくなっちゃうわよっ!!」 思いっきりどなってやるけど、当のガウリイは涼しー顔で。 「あ、それなら大丈夫だ。いっつもリナにぶん殴られてるからな。 ちゃーんと使ってるから、なくなったりしないって」 ‥‥‥‥‥‥あ・の・ね〜〜!! 「そーゆー意味の使うじゃないわーっ!!」 スパパパパーンッ!! スリッパ4連発がガウリイの頭にキレイに決まる! 目にも留まらないスピードで4回相手を殴るこの荒技は、なかなか上手く決まらないんだけど、それがこんなにキレイに決まるなんて‥‥ 今日のあたしは絶好調よね! 一方、ガウリイは、と言うと‥‥物も言わずに、テーブルに突っ伏している。 さすがにダメージが大きいみたいね。 ま、ふざけた事を言った罰よね。と。 「あの〜〜‥‥」 横からおばちゃんが声を掛けてきた。 いっけない、ガウリイに気を取られて、忘れてたわ。 「で、町長さんの家はどこにあるの?」 まるで何もなかったかのようにおばちゃんにもう1度尋ねると、おばちゃんは額に一筋汗をかきながらも、答えてくれた。 「それなら、街道ぞいに行けば町の中心に大きなお屋敷が建ってるからね。 それが町長さんちだよ。ま、行けばすぐに分かるさ」 「ありがとうございます。ホラ、ガウリイ行くわよ!」 あたしは、まだテーブルに突っ伏しているガウリイを引きずるようにして、食堂を出たのだった。 食堂のおばちゃんに教えられた通りに道を行くと、やがて大きなお屋敷が見えて来た。 あれね? 町長さんの家って。 まわりの家々より1段と大きくって、なるほどこれなら一目で分かるわね。 それにしても‥‥何で、こんな小さな町の町長さんがこんな大きな家に住んでるのよ。 う〜ん、副業でもやってるのかな? ‥‥まあ、いーわ。その辺りの事情も、会ってみれば分かるでしょ。 「じゃ、行くわよ、ガウリイ」 そう言って、屋敷に向かおうとすると、 「おう! って、リナ、この家に何か用なのか? 言っとくけど、オレ、強盗空き巣のたぐいには手を貸さないからな」 ガウリイが変な事を言いだした。 こいつは〜〜! 言うにことかいて、何て事言うのよ! 「このスカタン! 誰がこの家に押し入るって言ったのよっ!! スパコーン!! ジャンプ1発、ガウリイの頭にスリッパの1撃が決まる! 「いってー! ってお前なあ! そうパコパコ気軽に人の頭を殴るなよ! いくら叩くのがスリッパでも、少しは痛いんだぞ!」 頭を抱えてガウリイが文句言うけど‥‥変な事言うあんたが悪い! 「少しくらいの事で文句言うんじゃないわよ! 大体あんたが人の言う事きーてないからいけないのよ! あたしがさっき町長さんちへ行くって言ったの、もう忘れちゃったの、このクラゲッ!!」 すると、ガウリイはへ?と言う顔をした。 「‥‥言ってたっけ、そんな事。 リナ、さっきは確か行く、って言っただけで、どこへなんて1言も言ってなかったぞ」 ‥‥はうっ、し、しまったあ! そー言えば、あたしがおばちゃんと話してた時、こいつ寝てたんだっけ。 だったら、町長さんちへ行こうとしてる、なんて分からなくって当たり前か‥‥ いや、話の途中でグースカ寝ちゃう、ガウリイが悪いっ!! そーよ、だから叩かれたってしょーがないのよ! それにしても‥‥ガウリイが、さっきあたしが言った事を覚えてるなんて‥‥ 天変地異の前触れじゃないでしょーね! いや、ひょっとして、こいつ少しずつ脳味噌が復活してきてるのかもしんない。 さっきの話聞いてると、ちゃんと頭使ってるんだもん。 そうよ、きっとあたしが毎日のよーにパカパカ叩いてるもんだから、その刺激で脳が活性化したのね。 ガウリイの脳味噌を復活させるなんて! エライぞ、あたしっ!! 「ンな訳ないだろーが‥‥」 ジト目であたしを見ながら、ガウリイが呆れたよーに呟いた。 ‥‥って、ちょっと待ってよ。 「な‥‥なんであんた、あたしの考えた事が分かんのよっ!! さては、人の考えが読める能力持ってるのっ!!」 そーいえば、人並み外れた勘持ってるし! 人の心ぐらい読めて当たり前かもっ!! 「あのな‥‥ンな事できるかよ。 お前さん、さっきから考えてる事を全部口に出してしゃべってたぞ」 へ? 口に出してたの、あたし。 な〜んだ。じゃ、分かって当たり前ね。 ふと、視線を感じてそちらを見てみると、ガウリイがさも何か言いたそーな顔して、あたしを見ていた。 「‥‥あによ。何が言いたい訳?」 「いーや、呆れてるだけ」 あたしの質問に、簡潔に答えるガウリイ。 うにゃああ! ガウリイに‥‥ガウリイに呆れられたーっ!! あああ‥‥こいつにだけは呆れらたくなかったのにーっ!! ‥‥‥‥‥‥‥‥ 「と、とにかく! 町長さんに会いに行くわよっ!!」 「‥‥誤魔化したな」 うっさいっ!! 『町長さんの家に着いたあたし達。 さてさて、この町で起こってる事件とは一体、どんな物なんだろう。 と言うか‥‥いくらふっかけられるかなー、たのしみー♪ 次回、「欲望の行き着く先3」読んでくんないと、ま〜た暴れちゃうぞ!』 |
26278 | 欲望の行き着く先 改訂版3 | 龍崎星海 URL | 2003/6/18 23:57:08 |
記事番号26263へのコメント 『あたし、リナ=インバース。カリメテの町にやって来たあたし達。 でも‥‥ここ、なんかきな臭い匂いがするのよねえ。 よっしゃ、まずは町長さんちへ行って話し聞いてみますか!』 あたしは町長さんの家のドアを叩いた。 コンコン! 「すみませーん、ちょっといーですか?」 するとドアが開き、中から執事とおぼしき男性が現れた。 その男は、あたしをチラリと見るやいなや、 「押し売りならお断りです」 人の話を聞こうともせず、いきなりそれだけを言うとドアを閉めてしまった。 ‥‥え〜っと‥‥し、しまった! あまりの素早さに、声を掛けそびれてしまった! ドンドンドン! もう1度、ドアを叩く。 「すみません、押し売りじゃないんです!話を聞いて下さい!」 すると、もう1度ドアが開いてもう1度執事さんが顔を見せたかと思うと、 「宗教の勧誘ならお断りです」 やっぱり、それだけ言うとドアを締めてしまう。 だああ! 人の話ぐらい、聞きなさいよ! もう、こーなったらヤケよ! 何がなんでも話を聞いて貰うわっ!! ドンドンドンドン! 「宗教の勧誘でもないし、新聞の勧誘でもないんです! とにかく、話を聞いてくださいっ!」 しつこくドアを叩いていると、やがてドアがギィィ‥‥と言う音を立てて開いた。 「何かご用ですか」 今度はそう聞いて来る執事。 やれやれ、やっと話を聞く気になってくれたみたいね。 「今この町で起こってる事件についてお話を伺いたいんですが‥‥ 町長さんはご在宅ですか?」 「少々お待ちください」 執事はそう言うとドアの向こうに姿を消した。 それにしても‥‥いつも思うんだけど、どーして執事って言うとみんな同じよーな雰囲気なんだろう。 み〜んなポーカーフェースだし。 ひょっとすると、世界のどこかには執事養成学校なんてのがあって、そこで執事を大量生産してたりしないでしょーねー。 などと考えていると、いきなり目の前のドアが開いた。 「旦那様がお会いになるそうです」 執事はそう言ってあたし達を邸内に招き入れてくれた。 執事に案内されて邸内を歩いて行く。 それにしても‥‥ホントに大きなお屋敷ねえ。 一体、いくつ部屋があんのよ。 いくつものドアの前を通り過ぎた後、執事は1つのドアの前で立ち止まった。 重厚な作りのドアだけど‥‥執務室かしらね。 ギイィ‥‥と重々しい音を立てて、両開きのドアが開く。 部屋の中はドアの重厚さに負けず劣らず、かなり贅沢な作りになっていた。 見るからに高価そーな机と椅子。 壁ぞいには大きな書棚があって、そこは本で埋まっている。 ちょっと、何よ、これ。 これじゃあ、ヘタな地方のロードの執務室より豪華じゃないの! ばかに大きなお屋敷といい、この部屋といい‥‥ここの町長、まさか変な事に手だしてるんじゃないでしょーね‥‥ あたしは部屋に入った瞬間にそれだけの事を見てとると、正面の椅子に座っていた男の人に声を掛けた。 「あなたがこの町の町長さんですね?」 年の頃なら50過ぎ。 中肉中背の、ごく普通のどこにでも居るおっさんである。 かなり金の掛かった服着てるけど‥‥はっきし言って衣装負けしてるわねー。 服を着てるんじゃなくって、服に着られてるわね、あれは。 「そうだが‥‥君は誰だね? この町で起こっている事件について、話があるそうだが」 えらそーに椅子にふんぞり返っておっさん‥‥じゃなくって、町長が答える。 ‥‥ったく、この人‥‥服といい、部屋といい、態度といい‥‥ 絶対何か勘違いしてるわね。 こんな小さな町の町長がンなえらそーにするんじゃな〜〜いっ!! これが仕事がらみでなきゃ、吹っ飛ばしてやるんだけど‥‥ここは我慢、我慢。 「私の名前は、リナ=インバース、こちらに居るのは相棒のガウリイ=ガブリエフです」 あたしの紹介に会わせて、ガウリイがペコリと頭を下げる。 あたしの名前を聞いて、町長の顔がピクリ、と動いたのをあたしは見逃さなかった。 どうやら、あたしの名前を知ってるみたいね。 だったら話が早いわ。 「この町で起こっている事件なんですが、私達がお力になれるのではないかと思いまして、こうして参上した次第です」 「‥‥なるほど、君がリナ=インバースか。噂はかねがね聞いている。 確か射に、君達なら何とかしてくれるかもしれんな。 ああ、申し遅れたが、ワシの名はサントス=ガズニックと言う。 立ち話もなんだ。そこにかけたまえ」 彼に勧められて、執務室に置いてあったソファーに腰掛けると、サントスさんはあたし達の向かい側に腰を下ろして事件の概要を話てくれた。 「‥‥‥‥と言う訳だ」 「なるほど。すると今回の犯人は魔族なんですね」 「ああ、目撃者の証言を信じればそーなるな。 とりあえず今まで分かっている事を書いた書類は、後でお渡しする。 それで、この件を引き受けてくれるかね。それともやめるかね」 相も変わらず尊大な態度を崩さないサントスさん。 こいつ‥‥人に物を頼む時は、それなりの態度ってものがあるでしょーがっ!! あたしは別に、こんな町の事件、無視してってもいーんですからね! ったく‥‥こーゆーのを見ると、フィルさんって人間が出来てるなー、と実感するわね。 ふっふっふ‥‥よーし、こーなったら思いっきりふっかけちゃる! 相手は魔族だって言うし、見たとここの人お金持ちみたいだし。 遠慮はいらないわよねっ!! 「‥‥そうですね。では、金貨1000枚、出していただけるのならお引き受けしましょう」 あたしがさらりと言った金額は、相場の10倍以上だった。 ふふん‥‥どーだっ!! 少しは慌てればいーのよっ!! ところが、サントスさん。 「なるほど。では、前金として金貨1000枚。うまく事件を解決出来たら、もう1000枚出そう」 なんてサラリと言ってくれた。 うぞっ‥‥相場無視で言ったとんでもない金額の、さらに2倍の金を出してくれるの!? ああ、なんていー人だっ!! もちろん、こんなおいしい話、あたしが断る訳はない。 あっさりと商談は成立したのだった。 ううう‥‥金貨2000枚よ、金貨2000枚! ふっかけといて、よかったーっ!! 「では‥‥おい、金貨を用意しろ」 後ろに控えていた執事に、金を持って来るよう指示したサントスさんに、あたしは気になっていた事を聞いてみた。 「あの‥‥サントスさん、少しお聞きしたい事があるんですけど」 「詳しい事なら、書類に書いてあるから、そちらを見てくれ」 あたしの方を見ようともせず、席を立つサントスさん。 「いえ、そーじゃなくって。あの‥‥サントスさんはかなりの収入があるようですが、そんなお金どこからどーやって手に入れてるんですか? 失礼ですが、こんな地井様町の町長さんじゃそんなに収入があるはずないんですけど‥‥」 そーなのよねー。問題は、この豪華な内装や屋敷の金の出所。 もし‥‥もしもサントスさんが、なにか不正をやって、それで金回りがいーのなら。 事件を解決して、依頼料を貰ったその後で、サントスさん吹っ飛ばして、お金を巻き上げ‥‥じゃなかった、不正な蓄財を没収してやらなきゃいけないもんね。 あたしの質問に、サントスさんは、いかにも不快な顔をした。 「なんだね、君。ワシが不正な事をしているとでも言うのかね! 変な言いがかりを付けないでくれたまえ。 ワシほど公正な町長は居ないぞ! 嘘だと思うのなら、帳簿でも何でも調べるがいい!」 とうとう怒りだすサントスさん。 あっちゃー‥‥マズイ。 依頼人怒らせちゃったら、せっかくの仕事がパーになっちゃう! 「いえ、町長さんが不正をしていないのは分かっています。 ただ、町長さんの収入源はなにかなー、と思っただけで‥‥」 そう、こんな小さな町じゃ、ワイロもらおーが横領しよーが、こんなお屋敷建てて、それを維持するなんて無理なのよね。 絶対、他の収入源があるのよ。 それも、裏で密売やってるとか、変なクスリ作ってるとか、かなり悪どい事を。 まあ、自分で『悪事を働いています』な〜んて言わないだろーけど、一応、ね。 すると、サントスさんは、あたしをしばらく睨み付けてたけど、やがて不機嫌そーな声で答えてくれた。 「‥‥フン、ならいーんだ。実はさっき話した山だが、あそこはワシの山でな。 あの山からはオリハルコンが採れるのだ。 その金で屋敷を建てた訳だ。‥‥これで納得いったかね? へ? オリハルコン! そんなのが採れるの!? なるほど、ならこんな屋敷持ってても不思議じゃないわね。 ‥‥山へ入ったら、ちょっと探してみよっと。 そこへ、執事が金貨の入った袋と、書類とを持って現れた。 その袋と書類を執事から受け取ったサントスさんは、それらをあたしに押しつけるよーに渡すと、 「さあ! さっさと仕事に取りかかってくれ! それじゃワシは忙しいので、これで失礼する。 おい! お客様のお帰りだ!」 執事に合図を送った。 「ではお帰りを」 「いや、あの‥‥」 あたし達は執事に強引に屋敷から放り出されてしまった。 あう‥‥怒ってるわね‥‥サントスさん‥‥ まあ、疑っちゃったから仕方ないんだけど。 あたし達はしょーがないので、お金と書類を持って、宿屋へと戻って行った。 『町長さんちで依頼を受けたあたし達。くうう‥‥金貨2000枚よ、金貨2000枚! 絶対にこの仕事はやりとげてみせるんだから!でも‥‥あの町長、なんだか怪しいのよねえ‥‥ 次回、「欲望の行き着く先4」読んでくんないと、ま〜た暴れちゃうからね!』 |
26286 | 欲望の行き着く先 改訂版4 | 龍崎星海 URL | 2003/6/20 04:50:28 |
記事番号26263へのコメント 『あたし達が訪れたカリメテの町では事件が起こっていた。 町長さんから事件の解決を依頼されるあたし達。 でも‥‥あの町長さん、な〜んか怪しいのよねえ。』 帰る道の途中で、ガウリイが話し掛けて来た。 「なあ、リナ。さっきの話なんだが、結局どーゆー事なんだ?」 こ‥‥こいつ、珍しく寝ないで話し聞いてたと思ったら‥‥ 結局話しを聞いてなかったんかいっ!! 「あんたねえ! 話を聞いてなかったの!?」 「いや、聞くには聞いてたんだが‥‥何言ってたのか、よく分からんかったんだよなー」 ポリョポリョ頬を掻きつつ、いつもの如くボヤくガウリイ。 ‥‥つまりは、何を言ってるのか理解出来なかった、ってゆーのね‥‥ サントスさん、かなり分かりやすく話してたのに‥‥ 「まーいーわ。話の内容を整理しがてら、話してあげるから、よーく聞きなさいよ。 いい、この町の西にある山に、魔族が棲み着いてて、通りがかる旅人を襲ってるから、そいちを退治してくれって以来だったのよ。分かった!」 あたしは、サントスさんの話を思いっきり要約して話してやった。 どーせ細かい内容話したって、ガウリイの頭じゃ分かんないもんね。 すると、ガウリイは手をポン!と叩いた。 「そっかそっか! なんだ、そーゆー事か! 始めっからそー言ってくれれば分かるんだよ!」 ‥‥‥‥あんた、ここまで要約して、やっと分かるんかい‥‥ いつも思うんだけど‥‥依頼人に会いに行くのに、ガウリイ連れて行く意味ってあるんだろーか‥‥ 「でも、そんな事件が起こってるのに、あの町長さん、困ってなかったぞ。なんでだ?」 いきなりガウリイがあたしに尋ねて来た。 ホウ‥‥ガウリイも気づいてたのね。 ま、こいつは勘だけはいーからね。 「そーなのよ。変でしょ? でも、あの町長のおかしな点は他にもあるわよ」 「あー、全然怖がってなかった事か? よっぽど肝が据わってるのかもな」 やっぱり、そこにも気づいてたか。 って事は、あたしの気のせいなんかじゃなくって、あの町長さんは困ってなかったし、怖がってなかった、って事よね。 そこが変なのよね。町の近くで旅人が襲われてたりしたら、町に誰も来なくなっちゃう。 そーなったら、こんな町、すぐに成り立っていかなくなっちゃうのよねー。 なのに、あの町長は全く困っていなかった。 まあ、それはあの町長さんはお金持ちだから、別に旅人が来なくなっても、そんなのは自分に関係ないって思ってるのかもしんないけど‥‥ 問題は、あの人が全く怖がっていなかった、って事よね。 町のすぐ隣にある山で人が襲われ、殺されているとなると、怖がるのが普通よね。 ましてや、相手が魔族ともなれば‥‥ 普通の人では全くかなわないうえに、神出鬼没でどこに現れるのかすら予想出来ない。 しかも、いつ山から町へ‥‥より多くの獲物を求めて狩り場を移動させるか‥‥分かったものじゃないのだ。 普通なら、怖くて怖くて仕方ないだろう。 実際、町の人達は怖がってるんだし。 なのに、あの町長さんはへーきな顔してた。 「これは、この事件‥‥何か裏があるかもしんないわねー」 ポツリ、とつぶやくと、耳ざとくそれを聞きつけたガウリイが 「何かって、何だ?」 と尋ねて来た。 「うーん‥‥今の段階じゃ、分からないわね。 とにかく、今日は宿へ戻って、この書類を調べて。 山へ向かうのは、明日にしましょ!」 「おうっ!!」 夕食も終わった後で、あたしは貰って来た書類を読んでみた。 そこには、山で見つかった沢山の死体についてと、数少ない目撃談がのっていた。 う〜ん‥‥どうもかなりひどい殺され方してるみたいね。 惨殺の見本のよーな殺され方をした人たちの死体の様子が克明にかかれている文を読むのは‥‥ちょ〜っとしんどいけど、相手の攻撃の仕方を知るためには、必要なのよね。 やっとの事で死体に関する部分を読み終え、目撃談の所まで来た時、あたしは読む手を休めた。 なるほど‥‥これが相手が魔族だって言う話の根拠になってるのね。 そこには、山へ山菜を採りに行った町の人が偶然見かけた、殺害の様子が事細かに書かれてあった。 どうやら‥‥相手は明らかに人間の形をしてないみたいね。 でも。あたしが知ってるモンスターのどれとも違う形をしてる。 なるほど、それで魔族‥‥か。 それも下級魔族‥‥ね。 でも、下級でもかなり出来る相手みたいね。 今までにやられた人間をみると、かなり腕のたつ傭兵も混じってるもの。 油断は出来ないわね‥‥ まあ、あたしとガウリイに掛かれば、敵じゃないとは思うけどね。 さて、明日は山へ行って、その魔族とご対面しなきゃ あたしは明日に備えて、早めにベッドに入る事にした。 翌朝。 いつものよーにお食事バトルを終わらせると、 「なあ、リナ。これからどうするんだ?」 これまたいつものよーにガウリイが聞いて来た。 「そーね。昨日言った通り、山へ行ってみましょ。 どーやら相手は下級魔族らしいけど、油断はしない方がいーわよ」 あたしの言葉にガウリイが首をひねった。 「なあ。なんで下級魔族だなんて分かるんだ?」 あ、そー言えばまだガウリイには説明してなかったっけ。 「昨日もらった書類に目撃者の話が書いてあったのよ。 それによると、犯人はモンスターとも人間とも違う姿をしてたわ。 犯人が魔族ってのもそっから来てるんだけどね。 さて、んじゃ行くわよ!」 あたし達は、宿のおばちゃんに作ってもらったお弁当を持つと山へと向かった。 街道を歩いて、弁当も食べて。 やがて道が森の中へ差し掛かった頃。 「う〜ん‥‥そろそろ出て来る頃かしらねえ。 ガウリイ、変な気配がしたら、教えてよ」 後ろを歩くガウリイに声を掛けると、 「あー、分かった。今のトコ、変な気配はしてないぞ。 人間の気配ならしてるけどな」 あっさり答えるガウリイ。 人間の気配って‥‥あたしには感じられないのに! 「誰か居るの!?」 慌てて道の前後を見てみるけど‥‥街道を歩いてるのは、あたしとガウリイだけで他には誰も居ない。 まあ、当たり前よね。 この道を行った旅人はみな襲われて殺されてるので、この道は事実上通行止め状態なんだから。 でも、ガウリイは気配がするって言ってる。 って事は‥‥誰かが気配を殺して、隠れてるって事か! 「隠れてるのは分かってるのよ! 出てらっしゃい!」 どこに居るのか分からないので、てきとーに辺りに向かって声を掛けてやると、行く手の藪がガサガサ!と揺れたかと思ったら、そこから人が現れた それは‥‥あたしのよく知っている人物だった。 「な‥‥ゼル‥‥ゼルじゃないの! 久しぶりねえ! 元気だった? もう、なんでそんなトコに隠れてたのよ! ビックリするじゃないの!」 現れたのは、少し前に別れて以来会っていないゼルガディスだった。 久しぶりの再会に、声が弾む。 でも‥‥何だか、ゼルの様子がおかしい。 表情が変わらないのは‥‥まあゼルの事だからいーとして。 なんだか、ただ事でない様子であたし達を睨んでいる。 「ゼル‥‥あんた、どーしたってのよ‥‥」 不審に思って声を掛けると‥‥ゼルガディスは、腰の剣をスラリ、と抜き放ち、あたし達に向けた。 「この先に行かせる訳にはいかん」 そう言うゼルガディスからは、殺気まで感じる事が出来る。 な‥‥なんでゼルがあたし達に刃向かって来るのよ! 「ぜる! それはどーゆ意味よ! なんであんたがあたし達の邪魔するのよ! 訳をいーなさい、訳を!」 慌てて声を掛けるけど、 「お前達に説明する事など何もない。 今すぐここから引き返せ」 ゼルガディスはぶっきらぼうに答えるだけ。 う〜ん‥‥あたし達と行動するようになって、ずいぶん穏やかになったと思ってたんだけど‥‥ しばらく会わないうちに、すっかり昔に戻っちゃってるみたいね。 取り付く島もありゃしない。でもね。 「悪いけど、帰れと言われて、はいそーですか、と言って帰る訳にはいかないのよ。 こっちも仕事として依頼されちゃってるからね。 ってな訳で、引き返す事は出来ないわ。って言ったら、あんたどうするの?」 軽く茶化すよーに言ってやると、 「なら‥‥力ずくでも追い返すのみだ」 ゼルガディスはそれだけ言うと、呪文を詠唱し始めた。 ちょ‥‥ちょっと待ちなさいよ! いきなり呪文で来る気、あんた! まさか、いきなり攻撃して来るなんて思ってもみなくって、対応ができないでいるうちに、 「ファイアー・ボールッ!」 ゼルガディスの呪文が完成し、彼はあたし達目がけてその呪文を解き放った! もちろん、そんなのを喰らうあたし達じゃない。 咄嗟に飛び退くと、あたし達がついさっきまで立っていた場所にファイアー・ボールが着弾し‥‥炸裂する! ドゥ〜〜ンッ!! こんのぉ〜! やったわね! お返しよっ!! 「フレア・アロー!」 あたしも負けじと呪文を唱え、それをゼルガディスに向かって解き放つ! ヒュンヒュンヒュン‥‥! 何本もの炎の矢がゼルガディス目がけて突き進む! ふ、いくらゼルガディスでも、あれだけの数の炎の矢、避けきれないでしょ! ところが。 「ハアッ!!」 ゼルガディスは手に持っていた剣で、1つ残らずその炎の矢をたたき落としてしまった! どうやら、いつの間にかアストラル・ヴァインを唱えていたみたいね。 剣の頭身が赤く光ってる! それにしても、いくら剣に魔法が掛かってるからって、あれを全部叩き落とすとは‥‥ゼル、やるじゃないの! と、スィッ‥‥とガウリイが動いて、いきなりゼルガディスに斬り掛かった! カシィ‥‥‥‥ンッ!! 2人の剣がぶつかり合う! カッ! カッ! カシィ‥‥ン! ガキッ!! 2合、3合と刃を合わせ‥‥2人は剣と剣での鍔迫り合いに入る。 馬鹿力で押すガウリイに、ゼルガディスも1歩も引かない! ギリギリギリ‥‥と、鋼と鋼がこすれ合うイヤな音が聞こえて来る。 うう‥‥なとかガウリイのフォローをしたいんだけど‥‥ あんなに接近してちゃヘタな呪文なんか使えない。 ガウリイまで巻き添えになっちゃうもの。 ってか‥‥2人を一緒に吹っ飛ばしてもいーんだけど、その場合ゼルの方が受けるダメージが少ない分、こっちが不利になっちゃう! かと言って、あたしの剣ではガウリイの邪魔になるだけだし。 仕方ないので、こっそり呪文を唱えながら、2人の戦いを見守ってると、いきなりゼルガディスが後ろに飛びすさった。 すかさずその後を追うガウリイ! だが、ゼルガディスの動きの方が早いっ!! ガウリイが追いつけない! ガウリイとの距離を開けたゼルガディスは、いきなり手の平をタンッ!と地面に付けた。 あのポーズは‥‥まさか? ヤ、ヤバイッ! 「ガウリイ、逃げて!」 叫ぶと同時に、慌てて走り出すあたし! 「ダグ・ハウト!」 ゼルガディスが呪文を解き放つ! 大地が、あたしの足下で大きく揺れ動く! くうう‥‥は、走りにくいっ!! でも、そんな事を言ってる場合じゃないっ! 急いで逃げないと、この後は! 「大地よ、我が意に従え!」 そう言ってゼルガディスが右手を大きく振り上げるのと同時に、岩で出来た錐が地中からせり上がって来る! や、やっぱりそう来るんかいっ!! な、なんとかして呪文の効果の及ぶ範囲から逃げ出さないとっ!! 必死で全力疾走するあたし!だが! いきなり、あたしの足下から岩の錐が出現する! うどわだあ! 串刺しなんて、いやだ〜〜! ジャッ!! だが、間一髪! 岩の錐はあたしのすぐ後ろを、マントを切り裂きながら、通り過ぎた。 ほおぉ‥‥助かったあ‥‥じゃな〜いっ! あたしの‥‥あたしのマントが〜〜っ!! これ、高かったのに〜〜! それにしても‥‥今のはヤバかったわよねえ。 走るのがもうほんの1歩分、遅かったら‥‥あたしは今頃、串刺しになっていただろう。 ‥‥って、そーだ! ガウリイ‥‥ガウリイは! 無事なの!? 慌てて辺りを見回すと、林立する岩の柱の向こう側にガウリイが立っているのが見えた。 どうやら、怪我もなく無事なようね。 ガウリイの無事を確認してホッとすると同時に、あたしの中にフツフツと怒りが湧いてきた。 ゼル〜〜‥‥あんた、何て呪文使うのよ! 今の、1つ間違えたら死んでたわよ! 仮にも昔一緒に旅した仲間に、本気で戦いを挑むとは‥‥いー度胸してるじゃないの! そっちがそのつもりなら‥‥こっちにだって考えがあるわよっ! 「ガウリイ! 全力で行くわよ!」 「おう、分かった!」 返事をするやいなや、ガウリイがゼルガディス目がけて奔る! 「たあっ!!」 かけ声と共に、ゼルガディスに斬り掛かるけど‥‥それを軽いステップでかわすゼル! よっしゃ! そのまんまゼルガディスを引きつけといてよ! あたしは2人が戦っている間に、呪文の詠唱に入った。 永久と無限をたゆたいし 全ての心の源よ 我が意に従い閃光となり 深遠の闇を打ち払え 「ブラム・ブレイザー!」 青白い光がゼルガディスと、その手前に居るガウリイ目がけて突き進む! このままではガウリイに当たる! だが、当たる寸前でさっとしゃがんで避けるガウリイ! よし! このタイミングなら、避けられないっ!! だが。あたし達の連携攻撃を読んでいたのだろう。 すんでの所で避けるゼルガディス。 くっそう! やっぱ、ずっと一緒に戦っていただけあって、あたし達の戦い方をよくしってるわね! これは‥‥やり方を考えないと、ゼルガディスに攻撃を当てるのは、一仕事だわ。 その時。ゼルガディスがガウリイの脇をすり抜けて、あたし目がけて走り出した! ‥‥って、ちょっと待ってよ、まさかっ!! ゼルガディスは、あたしの目の前まで来ると、剣を思いっきり振りかぶる! じ‥‥じょーだんじゃないわっ! 呪文でなんとか‥‥ダメ、唱えてる時間がない! 慌てて剣でゼルガディスの攻撃を受けようとするけど‥‥ ま、間に合わないーっ!! や、やられるーっ!! 『あたしの目の前に迫り来る、ゼルの剣。 ああ、大ピンチ! ってか、本気であたしを殺すつもりなの、ゼルッ!! あんた、それでも元仲間なのっ!! 次回、「欲望の行き着く先5」読んでくんないと、ま〜た暴れちゃうぞ!』 |
26291 | 欲望の行き着く先 改訂版5 | 龍崎星海 URL | 2003/6/20 22:20:49 |
記事番号26263へのコメント 欲望の行き着く先5 『あたし、リナ=インバース。 依頼を受けて動いていたあたし達の前に現れたのは‥‥ゼルガディスだった。 なぜか、あたし達に刃を向けるゼルガディス。 ゼル‥‥一体、どーしたって言うのよ! あたしの目の前にゼルの剣が迫る! ああ、どうなっちゃうのよ!』 あたしの目前に迫る、ゼルガディスの剣! 思わず目をつぶると‥‥あたしのすぐ目の前で、ガキッと言うイヤな音がした。 ハテ、何の音だろう。 不思議に思って、目を開けてみると‥‥あたしのすぐ鼻先でゼルガディスの剣は止まっていた。 ガウリイの剣によって‥‥ 「こいつを殺したければ、まずオレを倒すんだな」 そう言うガウリイの声には、明らかな怒りが含まれていた。 「ハアッ!!」 そして、力まかせにゼルガディスの剣を押し戻すガウリイ! 押されて、体勢が崩れたゼルガディスに、さらに追い打ちを掛けるガウリイ! ヒュン! ヒュヒュンッ!! 「くっ‥‥」 物凄いスピードで繰り出されるガウリイの剣戟を、あるいは受け止めあるいはかわすゼルガディスだったか‥‥ ガウリイのすさまじい気迫に押されて、すっかり守勢に回ってしまっている。 やがて。 ガッ!! ガウリイはゼルガディスの剣を弾き飛ばした! 「し、しまったっ!!」 武器をなくし、立ちつくすゼルガディスに迫る、ガウリイの剣! あのままじゃ、ゼルが死んじゃう! 「ダメよ、ガウリイ!」 あたしが慌てて止めた、次の瞬間。 「ファイアー・ボール!」 どこからともなく、声が聞こえてきた。 横手から飛び来る火球を、 「なっ!!」 慌ててよけるガウリイ。 ついさっきまでガウリイが立っていた場所を火球は通り過ぎ、やがて森の中の1本の木に着弾する! ドウ〜〜ンッ!! 強烈な炎が巻き上がる! 「誰なの! 出てらっしゃい!」 魔法が飛んで来た方向に声を掛けると、藪の仲から1人の女性が現れた。 ‥‥見た事ない顔だけど‥‥誰だろう。 「レミール!」 あたしの疑問に答えたのは、ゼルガディスだった。 まさか‥‥あの人、ゼルガディスの仲間なの!? くうっ‥‥ゼル1人でも手強いのに、仲間まで出て来るなんて‥‥と、 「なんで出て来たっ!!」 いきなり彼女を怒鳴りつけるゼルガディス。 ‥‥おい、助けてもらって、その態度かい‥‥思わず心の中で突っ込む。 でも、レミールとか言う女性は怒鳴られてもめげなかった。 「だってゼルガディスさん1人を戦わせるなんて、私には出来ません! 私も一緒に戦います!」 そう言と呪文の詠唱に入る。 くうぅっ‥‥どうする! このまま戦うか、それとも‥‥ ゼルガディス1人でも、かなりの苦戦を強いられた。 その上、この女性まで加わっては‥‥ ここは一旦引き上げた方がいいわね。 「ガウリイ! 引き上げるわよ!」 ガウリイに一声かけると、後ろも見ずに元来た道を戻って行った。 「おい、ちょっと待てよリナ!」 慌てて後ろから付いて来るガウリイ。 後ろから襲われる心配は必要ないわよね。 だって、ゼルガディスはあたし達を前に進めたくないだけなんだから。 あたしの予想通りに、ゼルガディスはあたし達を追撃して来なかった。 ☆ ☆ ☆ リナ達が居なくなった後で、 「ゼルガディスさん、大丈夫ですか!」 ゼルガディスに駆け寄るレミール。 「‥‥ああ、大丈夫だ。助かった。 ‥‥すまん、怒鳴ったりして」 「いえ‥‥もとはと言えば、私のせいですから。 あの‥‥今の人達、もしかしてゼルガディスさんのお知り合いの方なんですか?」 「ああ、以前一緒に旅をしていた。 一緒に戦った仲間でもある」 ポツリと答えたゼルガディスに、レミールは返す言葉が見つからなかった。 「‥‥すみません、私のせいで‥‥ あの、今からでも、この仕事を降りていただいても‥‥いいんですよ‥‥」 しばらくして、やっとの事でそれだけを言うレミールに、ゼルガディスは 「いや、構わんさ。俺は1度受けた仕事は必ずやり遂げる事にしているからな」 そう言うと、森の中へ歩きだすゼルガディス。 その後をレミールが追う。 やがて2人の姿は、森の中へと消えて行った。 ☆ ☆ ☆ 町へと戻る途中、ガウリイがポツリと漏らした。 「なあ、リナ。ゼルのやつ‥‥本気だったな」 ‥‥そう、あの時。確かにゼルは本気だった。 本気であたしを殺すつもりであたしに斬り掛かって来た。 あの時、もしガウリイが助けてくれなかったら‥‥あたしは今頃死んでいたはずだ。 「ゼル‥‥一体、どーしちまったんだろーなー‥‥」 ガウリイが呟く。 ンなの、あたしの方が聞きたいわよ! そりゃ、最初会った時は敵同士だったけど、その後は仲間として一緒に戦ったのに。 あいつ、義理がたいから1度仲間として認めた者に刃を向けるなんて事、しないはずなのに。 「さあねー。魔族に操られてた、って感じじゃなかったしねー。 かと言って、あのゼルが女の色香に惑わされるとは思えないし」 きっと訳が‥‥それも深い訳があるんだろう。 さもなきゃ、ゼルガディスがあんな事するはずがない。 ま、あいつ『思いこんだら命がけ』ってトコあるしねー。 「とりあえず、1度町へ戻って出直しましょーよ。 相手がゼルなのなら、作戦も立て直さなきゃいけないし」 「作戦‥‥って、ンなもん、あったのか?」 あたしの言葉に、珍しく鋭いツッコミをするガウリイ。 「うっ! くうっ、それはっ!!」 ‥‥そりゃ、作戦なんて立ててなかったわよっ!! でも、相手の実力も、戦い方も、現れる場所も、な〜んも分かんないんじゃ、作戦の立てようがないでしょーが! 第一! 「まさか、ゼルが現れるなんて、しかも敵に回すなんて思ってもみなかったんだから、しょーがないでしょーがっ!」 そうよ、全部ゼルガディスが悪いっ!! 「ハハハ、分かった、分かった。分かったから、そうコーフンすんなって」 苦笑しながら、あたしの髪をワシャワシャかき回すガウリイ。 ああもう、こいつはーっ!! 「だ〜か〜ら〜、それはやめろって何度言わせるのよっ! 髪が痛むのよ! ってか、せっかくの髪型がぐちゃぐちゃになるでしょーが! 後で直すの、大変なのよ! 人が毎朝、キチンとブラッシングしてるのに、気軽にグチャグチャにしてくれてっ!!」 思いっきり睨み付けてやるが、ガウリイは涼しー顔で、 「でもなあ。どーせリナの髪は、あっちにはね、こっちにはね、してるから少々グチャグチャにしたって、変わらんと思うぞ」 サラリと言ってくれる。 こいつはっ! 人が気にしてる事をっ! 「うっさいよっ!!」 げしっ!と思いっきりガウリイの向こうずねをけっ飛ばしてやると、 「いって〜〜! 何すんだ、リナ!」 目に涙まで溜めて抗議するガウリイ。 「うっさい! 人が気にしてる事を言う、あんたが悪いっ!!」 「えええーっ!! リナが気にしてたのって、胸が小さい事と身長が小さい事だけじゃなかったのかっ!!」 大げさに驚くガウリイ。 こ‥‥こいつは〜〜! 人が気にしてる事を連呼しやがってっ!! もう、我慢ならないっ!! 「ディル・ブランド!」 ドッヴァ〜〜!! 「うわ〜〜!」 あたしの呪文で空高く吹っ飛ぶガウリイ。 「フン! 空のお散歩で頭を冷やすといーんだわっ!!」 町へ戻ってみると、何だか町がざわついていた。 どーしたんだろ。まさか‥‥町の中でも人が襲われた‥‥とか? いや、それにしてはピリピリした雰囲気がない。 「何かしらね、一体‥‥」 「なあ、リナ。あっちの方で人が集まってるみたいだぞ」 いつの間に追いついたのか、あたしのすぐ後ろからガウリイの声が聞こえて来た。 うどわだ! びっくりした! 「あんたね! 気配殺して、人の後ろに立つんじゃないのよ! しかも、その状態でいきなし話しかけて来て! 心臓に悪いでしょーが! ショック死でもしたら、どーしてくれんのよ!」 「お前さんがンな事でショック死するとは思えんけどなあ。 ‥‥‥‥いえ、なでもありません」 あたしの殺気を込めた視線に気が付いたのか、途中から急に殊勝な態度になるガウリイ。 分かればいーのよ、分かれば。 それにしても、その人が集まってる、ってのは気になるわね。 「ガウリイ、その人が集まってるってのはどっちよ」 「あっちだ」 ガウリイが指さした方に少し歩くと‥‥なるほど、なにやら大勢の人が集まっている。 ってか、この小さな町でこれだけの人って‥‥ほとんど町中の人が集まってるんじゃないかしらねー。 人混みの中からときどき人の声が聞こえる所を見ると、誰か真ん中に居るみたいね。 「はい、ごめんなさいよー、通してくれる?」 強引に人々をかき分けて、集まりの中心に行ってみると。 「ですから、皆さんは安心して生活して下さい。 この私、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンが来たからには、皆さんには指一本触れさせませんっ!!」 そこに居たのは、だいぶ前に別れたっきりになっていた、アメリアだった。 お〜〜‥‥パチパチパチ アメリアの演説を聞いて、集まった人達から歓声と、そして拍手がわき起こる。 「ア‥‥アメリア!? なんであんたがここに居んのよっ!!」 思わず大声で叫ぶと、 「え? ‥‥リナさん!リナさんじゃないですか! お久しぶりです!」 あたしを見つけたアメリアがいきなりあたしに抱きついて来た。 『ゼルガディスとの戦いを終えて、町に戻ったあたし達が会ったのは‥‥お久しぶりのアメリアだった。 アメリア、あんたなんでこんなトコに居るのよ! ‥‥っても大体想像つくんだけどねー。さては今回の事件に首を突っ込みに来たのね? 次回、「欲望の行き着くさき6」読んでくんないとま〜た暴れちゃうぞ!』 |
26306 | 欲望の行き着く先 改訂版6 | 龍崎星海 URL | 2003/6/21 23:49:15 |
記事番号26263へのコメント 『私、リナ=インバース。依頼を受けて動いていたあたし達の前に現れたのは、ゼルガディスだった。 あたし達に刃を向けるゼル。なんとか戦闘を回避して町に戻ったあたし達が出会ったのは、お久しぶりのアメリアだった』 「いやー、久しぶりねー。元気だった?」 感動の再会の後、こんな所で立ち話もなんだから、と言ってあたし達は泊まっている宿の食堂へと移動していた。 「はいっ! リナさんもガウリイさんも、お元気そうで何よりです!」 元気に返事を返すアメリア。 いやー、この娘も相変わらずみたいねー。それにしても。 「あんた、何でこんなトコにいんのよ」 さっきの演説からすると、ここで起こってる事件がらみみたいだけど‥‥ 王宮抜け出して来ちゃっていーのかしらね。 この娘、こー見えてもれっきとしたセイルーンの姫様なのに、いっつも王宮抜け出して。 見たトコ、お供も居ないみたいだし‥‥本当に大丈夫なんだろーか。 「はいっ! ここの事件の報告を聞いて、こんな悪事を放って置く訳にはいきませんので、やって来ました! とーさんも、領民の安全を守るのは私達王族の責務だって言って、快く送り出してくれました!」 いつものよーに無意味に拳を握りしめて、力説するアメリア。 領民って‥‥そー言えば、ここってセイルーン国内だっけ。 すっかり忘れてたわ。 ‥‥って、ちょっと待ってよ。確かセイルーンシティから来るには問題の山を越さないといけないんじゃないの? 「アメリア、あんたあの山、どーやって越したのよ。襲われなかったの?」 ひょっとして‥‥どっか魔族に見つからずに山越え出来る抜け道みたいのがあるのかと思ったんだけど。 「はい、山向こうの町で山を通ると殺されるとききまして。 山越えは危険と判断し、レイ・ウィングで空を飛んで来ました!」 なるほどねー。それなら山を越せるのね。 ‥‥でも、旅人全員にレイ・ウィング使わせるなんて出来ないし、第一そんな事したって根本的な解決にはならないから、その方法は使えないわね。 「そっか。でもあんた一人で、何とかする気だったの? 相手は魔族だってのに」 報告が行っていたんなら、敵は魔族だって事も伝わっていたはずよね。 あのフィルさんがアメリアが1人で行くのをよく認めたわね。 「はい、とーさんは大勢の兵士を付けてくれたんですけど、彼らはそれを飛べませんので、向こうの町に残ってもらいました! 時間が無かったので、何も説明せずに来たんですが、分かってくれるはずです!」 ‥‥オイ。ちょっと待てい。 「それって、普通は置いてきぼりにした、とか1人でこっそり抜け出したとか言わない?」 「大丈夫です! 胸に燃える正義の炎さえあれば、そんなのどって事ありませんっ!!」 瞳に炎をたぎらせて、力説するアメリア。 ‥‥ま〜た始まっちゃったよ、この娘は。 あ〜あ、きっと今頃、向こうの町じゃ『姫が行方不明になった』って大騒ぎになってるだろーなー。 連絡しよーにもこの町には魔道士協会なんてないし。 セイルーンのフィルさんトコに知らせが入る前に、事件解決してアメリア帰さなきゃね。 それにしても、ガウリイが静かねえ。 さっきっから、1言もしゃべらないけど‥‥まさか、まーた寝てたりしないでしょーね。 「ちょっと、ガウリイ! 起きてる? 寝てたりしないでしょーね!」 横でポ〜〜ッとしてたガウリイに声を掛ける。 こいつの場合、目を開いてるからって起きてるとは限らないもんね。 すると、ガウリイは 「あ? ああ、ちゃんと起きてるぞ。ちょっと考え事をしてただけで」 と答えた。 そっか、起きてたか。感心、感心‥‥って、なに〜〜っ!! 「考え事! あのガウリイがっ!!」 「すごいです! ガウリイさんが考え事するなんてっ! どーしちゃったんですか! 熱でもあるんですか、それとも変な物でも拾って食べたんですか!?」 「ダメじゃない、ガウリイ! 拾った物食べちゃいけないって、教えたでしょーが!」 2人してまくしたてると、それを聞いたガウリイはがっくりと肩を落とした。 「あのなあ。お前さん達、オレをどーゆー風に見てるんだよ‥‥」 どーゆー風って‥‥ 「のーみそクラゲ」 「頭は飾りで付いていて、何も考えてない」 「あ、アメリア。うまい事ゆーわねえ」 「そーでしょ? ずーっと前から、そー思ってたんですよっ!!」 あたしとアメリアのやりとりを聞いて、思いっきり脱力するガウリイ。 「あのなあ‥‥」 「と、まあ冗談は置いといて」 「‥‥冗談には聞こえなかったんだが」 ジトー‥‥とあたしを見るガウリイ。 そりゃそーでしょーね。 思いっきり本音で言ってたもの。 でも、そんな事を言うとガウリイが拗ねるからここは誤魔化さないと。 「まあまあ、細かい事はいーじゃないの。 それより、何考えてたのかよ。教えなさいよ」 「あ、私も気になります! ガウリイさんが考えてた事、ぜひ聞かせて下さい!」 アメリアと2人してガウリイをじーっと見つめると。 ガウリイは少しの間、頬をポリョポリョ掻いてたけど、やがて。 「いや、そんな改まって聞かれる程の事じゃないんだが‥‥ こいつ、誰だったかなー、とか思ってさ」 アメリアを指さして、ノホホーンと言ってくれた。 ドガシャッ!! それを聞いて、思わずずっこけるあたしとアメリア。 うう‥‥額を思いっきりテーブルにぶつけちゃた‥‥イタイ‥‥ 「うわー、お前さん達、ハデなリアクションするなー。 冗談だよ、冗談! ちゃんと覚えてるって!」 冗談ですって! ああもう、ガウリイが言うと、冗談に聞こえないのよ! 「本当でしょーねー!」 「おう、アメリアだろ? いくらなんでも、一緒に旅した仲間を忘れるはずないだろ?」 ニッコリ笑って言うけど。 ‥‥信じらんないわよねー。テストしてみよっと。 「じゃ、アメリアのフルネームを答えてみなさいよ」 「へ? フ、フルネーム?‥‥フルネーム、フルネーム‥‥アメリアじゃないのか?」 ンな訳あるかい! 「忘れたのね。一緒に旅した、大事な仲間の名前を忘れたのねっ!! ってか‥‥アメリア、さっきの演説の時、名乗ってたでしょーがっ!!」 「いや、演説なんて、オレが聞いてると思うのか?」 ポリョポリョ頬を掻くガウリイ。 そりゃまあ、ガウリイが演説なんてきーてる訳ないけど‥‥ 「えええ〜っ!! ひどいですっ! 私の名前、ほんっきで忘れるなんてっ!! ガウリイさんの薄情者ーっ!!」 さめざめと涙を流すアメリア。 アメリアに泣かれて、さすがにバツが悪いのか、ガウリイが慌て出した。 「え〜っと、いや、そのホラ‥‥そ、そうだ。 オレが何を考えてたか知りたがってたよな。聞きたくないのか?」 額に一筋汗をかきつつ、ガウリイが言う。 ‥‥誤魔化したわね。 こーゆー時は、『ああっ! すまない、忘れたわけじゃないんだ!』とか言って取り繕うのが普通でしょーが! つきあいが悪いんだから! そりゃまあ、ガウリイの考えた事も気になるから、いーんだけどさ。 「で? あんた、何を考えたわけ? あたしの横では、アメリアが嘘泣きをやめて、ウンウンうなずいている。 でも‥‥ガウリイは、なかなか言おうとはしない。 「だああ〜っ! 言い出したのは、あんたでしょーがっ! ぐずぐずしてないで、チャッチャと白状する!」 「そうですよ、ガウリイさん! 素直に白状すれば、お上にも慈悲はああります! さあ、どんなやましい事を考えたのか、白状しなさいっ!!」 あたしとアメリア、2人共、ビシイッ!とガウリイを指さす。 ‥‥って、ちょっと待てい。 「何よ、そのやましー事ってのは」 「え〜、だって男の人が言いにくそーにしてる時はやましい事考えてるんだって八百屋のおばさんが教えてくれましたよ」 「‥‥って事は‥‥ガウリイ! あんた、何考えてたのよっ!!」 「そーです! 素直に白状してくださいっ!!」 「ち、ちょっと待ってくれよ。 やましいってオレは別に‥‥ただ、ゼルの事をどう説明したらいーのかなあ、と思っただけでっ!」 あせりながら、言い訳するガウリイ。 言い訳するなんて、男らしくないぞっ!! ‥‥‥‥って、ゼル‥‥‥‥そっか。 そうよね、アメリアがこの事件に関わるのなら、言わない訳にはいかない。 でも‥‥何と言って説明したらいーんだろう。 この‥‥真っ直ぐで、人を疑う事を知らない娘に。 チラリと、アメリアの方を見ると、アメリアは 「ゼルガディスさん? ゼルガディスさんがどーしたんですか! ゼルガディスさんに何かあったんですかっ!! お願いです、教えて下さい! 秘密にするなんて、正義じゃないです!」 そう言ってあたしに詰め寄って来る。 ‥‥そーよね。隠したって、いずれはバレるんだし。 だったら、今のうちに正直に話したほーがアメリアのためよね。 「あのね、アメリア。落ち着いて聞いてちょうだい」 そう前置きをすると、あたしは今日山で起こった事をアメリアに話したのだった。 「そんな‥‥信じられません。 ゼルガディスさんが‥‥リナさんに刃を向けるなんてっ!!」 「でも、事実よ。間違いなく、ね」 「そんな‥‥き、きっと誰かに操られてっ!!」 「そんな感じじゃなかったわね。 ゼルは、自分の意志であたしと戦ってたわ。間違いなくね」 「‥‥じ、じゃあ‥‥その女の人に騙されるか何かしてっ!!」 アメリアはどーしてもゼルガディスが敵に回ったのが信じられないらしく、次々とゼルの肩を持つような事を言うけど‥‥ 「それも違うわね。ゼルがそんなに簡単に騙されると思う? それと、女の色香に惑わされてって感じでもなかったわ。 あの2人には、そんな甘ったるい感情はなかったもの」 「そんな‥‥じゃあ‥‥」 「ええ。ゼルは、間違いなく自分の意志で。 しかも、全力であたし達と敵対する気よ」 そう、それであたし達を殺す事になったとしても‥‥ゼルガディスは戦うわね。 あたしの話を聞いて、アメリアはボーゼンとしているようだった。 ‥‥無理もないか‥‥誰よりも真っ直ぐな心を持っているアメリアには、今の話はちょっとキツすぎるもんね。 「アメリア、あんたはこのまま帰った方が‥‥」 そう言いかけたあたしを、アメリアは手で制した。 「‥‥いえ、リナさん。たとえ、昔の仲間だったとしても。 いえ、昔の仲間なら、なおさら! 悪の手先となったゼルガディスさんを、何としても倒さないと! そうですよね、リナさん!」 アメリアは強い意志を瞳に宿して、あたしをじっと見つめる。 ‥‥そうね。そうだわ。昔の仲間ならばこそ、あたし達が相手しないとね。 もう、迷わない。今度会う時は、全力で戦わせてもらうわ、ゼル! さあ、そうと決まったら! 「じゃ、今日の所は、美味しい物でも食べて、明日に備えましょうか!」 「おうっ!!」 「はいっ!!」 『あたしの話を聞いて、ショックを受けるアメリア‥‥ 気持ちは分かるけど‥‥それでも、ゼルとは戦わないといけないのよ! さあ、明日はゼルとの決戦よっ!! 次回、「欲望の行き着く先7」読んでくんないと、ま〜た暴れちゃうぞ!』 |
26307 | 欲望の行き着く先 改訂版7 | 龍崎星海 URL | 2003/6/22 03:43:36 |
記事番号26263へのコメント 『あたし、リナ=インバース。仕事の依頼を受けたあたし達が出会ったのはゼルガディスだった。 なぜかあたしに剣を向けるゼル。なんとか彼との戦いを回避して町に戻ったあたしが出会ったのは、お久しぶりのアメリアだった。 アメリアも加えて、ゼルとの再戦に向かうあたし!待ってらっしゃいよ、ゼル!』 翌日。アメリアも加えて、3人になったあたし達は、昨日辿った道を歩いていた。 もちろん、ゼルガディスとの決着を着けるためだ。 その道すがら、アメリアがあたしに聞いてきた。 「ねえ、リナさん。ゼルガディスさんは、本当に出てくるんでしょうか」 出てくるって‥‥いや、あんた‥‥熊じゃないんだけど。 「そうね、来ると思うわよ。あいつ、理由は分からないけど、あたし達を山へ行かせたくないみたいだから」 「そですか。だったら、リナさん。もしゼルガディスさんが出てきたら、まず私と話させて下さい! ゼルガディスさんを説得してみせますっ!!」 勢い込んでアメリアが言うけど‥‥う〜ん、昨日のあのゼルの様子では、そんなに簡単に説得されてくれるとも思えないんだけど‥‥ まあ、話をする間も与えずいきなり襲ってきたりとか、話の途中で襲って来たりする心配はないからいーけど。 もし説得出来ればめっけもんだもんね。 「わかったわ。じゃ、お願いね」 「はいっ! まかせて下さいっ!!」 と、その時。それまでノホホ〜ンと歩いていたガウリイの雰囲気が、すっと変化した。 「リナ。もうすぐだぞ」 いつもより1段低い声であたしに告げる。 そっか。ずっと同じよーな風景の中を歩いていたから、いまいち距離感が分かんないけど、ガウリイがそー言うんなら間違いないわね。 「アメリア。もうすぐゼルが出て来るから、そのつもりでいてね」 アメリアに声を掛けると、警戒しつつ進んで行く。 すると、道の真ん中にゼルガディスが立っているのが見えた。 「止まれ。ここから先へ行かせる訳にはいかん。 ここで引き返せ」 今回は正面から現れたわね。 ま、いるのがバレバレなのに、隠れてたって意味ないもんね。 と、いきなり頭の上から声が降ってきた。 「ゼルガディスさん! 悪の手先になるとは何事ですか! 今からでも遅くありません! 改心して真人間に戻ってください!」 見上げてみると‥‥木の上に立ったアメリアがビシィッ!とゼルガディスを指さしていた。 ‥‥アメリア‥‥あんた、一体いつの間にそこに上ったのよ。 ってか、その人を指さすくせ、直しなさいって‥‥ あんたは人を指さしちゃいけません、って教わらなかったんかい‥‥‥‥ いきなり声高らかに宣言されても、ゼルガディスの方も慣れたのもで慌てず騒がず、 「アメリアか。俺は悪の手先になったつもりなどない。 第一、今回の事件はお前には関係ないはずだ。 今すぐ引き返せ」 冷たく言い放つゼルガディス。 でも、そんな事言われたくらいで大人しく引き下がるアメリアではなかった。 「何を言ってるんです! 私達の邪魔をした時点で、すでに悪です! それに、関係なくないです! ここはセイルーン領内! そこで起こる事件を解決するのは、王族として当然の勤めです! さあ、分かったらそこをどいてくださいっ! ゼルガディスさんっ!!」 引き下がるどころか、ますますヒートアップするアメリア。 しかし、ゼルガディスの方もそーゆーアメリアには慣れているから、 「どかん、と言ったらどーする」 これまた冷たく言い放つ。 う〜ん‥‥これが普通だったら、緊迫感ありまくりのシーンなんでしょーけど‥‥ 相手がアメリアのせいか、どっかマヌケなのよねー。ま、いーけど。 あたしの方だってゼルガディスがこう返事するだろう、と言うのは予想ずみなんだから! 「だったら‥‥」 戦うまでよ、と続けようとしたあたしのセリフは、アメリアの声によってさえぎられた。 「だったら戦うまでです! 正義の鉄槌を受けるがいい! とうっ!!」 かけ声と共に、アメリアが木の上から飛び降りる! くるりと回転し、そのまま‥‥‥‥‥‥ドゴン! 地面に頭から激突した。 ‥‥‥‥‥‥ま、そーなるだろーとは思ったけどね。 「おーい、アメリア。大丈夫かー」 呑気に声を掛けるガウリイ。 その声に応じるように、 「大丈夫ですっ!!」 そう言って立ち上がるアメリア。 での、その頭はあらぬ方を向いている。 ‥‥まあ、アメリアだし。大丈夫でしょ。 コホン、と1つせきをして気を取り直すと、 「あんたが引かないなら、こっちとしては戦うだけだわ。 でも言っとくけど、こっちは3人なのよ。 あんた1人で戦って勝てると思ってるの? 不敵な笑みを浮かべて、ゼルを挑発してやる。 そのあたしの視界の隅で、アメリアがゴキュゴキュ!と頭を捻って治しているのが見えた。 ‥‥‥‥なんであんた事、できるんだろー。 ま、いーけどさ。とにかくこれでこっちは3人とも万全の体勢になった。 敵わないと見たゼルガディスが引っ込んでくれるとありがたいんだけど‥‥ でも、残念だが事態はあたしの思い通りには動いてくれなかった。 「1人じゃありません。私も戦います」 そう言いながら、木の陰から出て来たのは‥‥レミールだった。 「さては‥‥あなたですね! ゼルガディスさんを惑わしたのはっ!! ゼルガディスさんを悪の道に誘い込むとは、言語道断! この私が成敗してくれますっ!!」 ビシィッ!と今度はレミールの方を指さしながら、声高らかに宣言するアメリア。 レミールの方はと言うと‥‥見慣れない物を見て、理解しきれないのだろう。 ボーゼンとしている。 ‥‥あー‥‥‥‥無理もないか‥‥ それにしても、アメリア。昨日ちゃんと説明したのに、きーてなかったのかしら。 別にゼルガディスは惑わされてる訳じゃないのに。 「‥‥オイ。俺はこいつに惑わされた覚えはないぞ」 ほーら、ゼルだって呆れてるじゃないの。 「えええーっ! 違うんですかっ! 私はまた、てっきりそうかとっ! それじゃ、なぜゼルガディスさんはこんな事をするんですか。 私達、正義の4人組が戦うなんて、間違ってますっ!!」 グググッと拳を握りしめ力説するアメリア。 「‥‥だから、その呼び方はやめろ、っつったろーが。 大体俺は正義なんて物には興味がないんだ。 ただ‥‥受けた依頼を遂行するだけだ」 依頼‥‥そうか、今回のゼルガディスは依頼を受けて動いてるんだ。 でも、魔族からの依頼なんて受けるはずはないし‥‥となると。 「ねえ、ゼル。もしかして、その依頼って‥‥そこに居るレミールから受けたの?」 そう考えると辻褄があうわね。でも。 「その質問に答える必要はない。 それより、戦うのか、戦わないのか。どっちだ」 冷たく言い放つゼルガディス。 う〜ん、取り付く島もないわねえ。しょーがない。 「そりゃ、もちろん‥‥」 あたしが答えようとした、その時。アメリアが叫んだ。 「やっぱりダメです! 私達が戦うなんて、間違ってます! ゼルガディスさんが受けた依頼ってゆーのがどんな物なのかは知りませんけど、それって私たちの命よりも‥‥私達の友情よりも大切な物なんですかっ!!」 アメリアの魂の叫びを聞いたゼルガディスの顔に動揺が浮かぶ。 「‥‥俺は‥‥‥‥」 ゼルガディスが何か言うおうとしたその時。 レミールがそれを遮った。 「ゼルガディスさん! やめてください!」 それを聞いたゼルの身体がピクリと動く。 少しの間、つらそうな顔をしていたが、すぐに表情を引き締め、 「‥‥言うな、レミール。分かっている。 俺がお前達に話す事は何もない。 ここから引き返さないと言うのなら、戦うまでだ」 そう言うゼルガディス。 ちいっ‥‥もう少しでゼルが口を割りそうだったのにっ! やっぱり戦うしかないか。 でも、アメリアの言葉じゃないけど‥‥知り合いとやりあうのは‥‥出来ればさけたいわよねえ。 その思いは、ゼルガディスも、そしてガウリイも同じらしく‥‥にらみ合うばかりでお互い動こうとはしなかった。 と、どこからともなく、不気味な声が聞こえてきた。 『ククククク‥‥なかなか面白い事をやっているな』 「だ‥‥誰っ!!」 「リナ! 気をつけろ! 魔族だっ!!」 いきなり剣を抜いて、構えるガウリイ。 な、なんですって! じゃあ、この山にすくってるって言う魔族が現れたって言うの!? どこ‥‥どこなの!! 『クククククク‥‥お前らの悩みを解消してやろうか』 そう言いながら、何もない空間からしみ出るようにして現れたのは、黒い、まるで巨大化したアメーバみたいなヤツだった。 そうか‥‥こいつが今回の事件の犯人ね! 「そっちからわざわざ出て来てくれるとはね。手間がはぶけたわ!」 わざわざやられに出て来るなんて。 この魔族も結構マヌケね。 どーせ人間ごときにやられる訳がないって思ってるんでしょーけど‥‥ こっちはフルメンバーなのよ! 人間型を取る事も出来ない下級魔族なんて、敵じゃないわ! 「旅人を襲い、町の人達を不安に陥れ苦しめたその所業‥‥許しまじ! この私、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンが成敗してくれますっ!」 ビシィッ!と魔族を指さしながら、声高らかに宣言するアメリア。 まあ、確かにこーゆーシーンにはハマるけど‥‥いちいち相手を指さすんじゃないってば‥‥ イマイチ緊迫感のないあたし達とは違って、ガウリイはただ1人緊張を解こうとはしなかった。 「気をつけろ! こいつ、見た目よりずっと強いぞ!」 え‥‥なんですって!? 驚いたあたしが反応するよりも早く。 シャッ!! 魔族が、アメーバみたいな身体の一部を物凄いスピードで伸ばした。 狙いは‥‥レミール!? ザシュッ!! あまりのスピードに。あまりの出来事に、誰1人動く事が出来ないでいる間に、魔族が伸ばした身体の一部は細長い槍状となってレミールの身を刺し貫いた。 「‥‥‥‥あ‥‥‥‥」 「レミールッ!!」 慌ててゼルガディスが剣を抜いて駆けつけようとするが、その前に。 ズッ‥‥‥‥ レミールの身体から魔族は自分の身体の一部を抜き去った。 血を吹き出しながら、倒れるレミール。 「レミールッ!!」 駆け寄ったゼルガディスが、倒れゆくレミールを抱き留める! 「このっ!!」 その間に、ガウリイが魔族に駆け寄ると剣を一閃した! だが。 ヒュンッ‥‥‥‥ 魔族はその身体をグンヤリと変形させて、そのガウリイの攻撃をいとも容易くかわしてしまう。 くう‥‥こいつ、やるっ!! 急いであたしも呪文の詠唱に入るが、その呪文が完成するより早く、 『くくくくく‥‥お前らと遊んでやりたいのは山々だが、まだやらねばならん事があるので我はこれで失礼する』 そう言い残すと、まるで土の中に染み込むようにして姿を消す魔族。 口では帰るような事を言っていても、ひょっとすると嘘かもしれない。 そう思って、 「ガウリイ。あいつ、本当に行っちゃったの?」 そう尋ねてみると、 「ああ、行っちまった。もう大丈夫だ」 ガウリイは、そう太鼓判を押した。 ガウリイがそう言うんなら、間違いはないわね。 「ゼルガディスさんっ!!」 それまで立ちつくしていたアメリアが、急いでゼルガディスと、そしてレミールの元に駆け寄った。 そうか、あの2人との戦いをどーするか、って問題が残ってたわね。 と言うか、それ以前に‥‥ 「ねえ、どうなの容態は‥‥」 そっちの方が問題なのよね。 でも、ゼルガディスは無言でゆっくりと首を振るのみ。 レミールの横に座り込んだアメリアも、治療を始めようとはしない。 あたしも近づいて、レミールの様子を確認してみるけど‥‥ これは‥‥ほとんど即死ね‥‥ 『すわ、ゼルガディスとの再戦か! と言う時に、いきなり現れた魔族によって、レミールが殺されてしまった。 ちょっと、ゼル。一体何があったってのよ。 あの魔族は何者なのよ! 次回、「欲望の行き着く先8」読んでくんないと、ま〜た暴れちゃうぞ!』 |
26317 | 欲望の行き着く先 改訂版8 | 龍崎星海 URL | 2003/6/22 23:08:05 |
記事番号26263へのコメント 『あたし、リナ=インバース。事件解決の依頼を受けたあたし達が出会ったのは、アメリアだった。 アメリアを加えて、敵対するゼルガディスとの戦いに赴くあたし達。 だが、戦いの場にいきなり現れた魔族によって、ゼルの連れのレミールが殺されてしまった。 ちょっと、ゼル!どーなってるのか、あんた説明しなさいよ!』 なるほどね。あの魔族の言ってた、『お前らの悩み解決してやろうか』ってのは、こーゆー意味だったんだ。 確かに、依頼主であるレミールが死んだ今、ゼルガディスにはあたし達と戦う理由はない。 ‥‥まあ、ゼルの事だから、『1度受けた依頼は完遂する』とか言い出すかもしんないけど‥‥ それでも、交渉の余地はあるはずよね。 「ねえ、ゼル。レミールは死んじゃったんだけど‥‥どうする? まだあたし達と戦う? あたしとしては事情を説明してくれると助かるんだけど。 事と次第によっては、あんたの受けた依頼を手伝うわよ」 死んだレミールの側に座り込んで動こうとしないゼルガディスに声を掛けると、 「‥‥分かった。事情を説明しよう。 レミールが死んだ今、秘密にしておく必要もないからな」 そう答えると、ゼルガディスは立ち上がり、あたりの地面に穴を掘り始めた。 ‥‥そっか。レミールの墓を作るのね。 あたし達も手伝って、出来上がった穴にレミールを葬った後、ゼルガディスはポツリポツリと事情を話し始めた。 「実は‥‥レミールは、カリメテの町の町長の娘だ」 へ? あの娘が? ‥‥うわ、全然似てないでやんの‥‥ 「それで、ひょんな事から父親の悪事を知ったレミールが俺に依頼して来たんだ。 『父親の悪事をやめさせてくれ』ってな」 なるほど。やっぱり、あの町長、裏で何かやってたんだ。 「でも、あんた何であの娘の依頼を受けたのよ。 って言うか、あんたらはどこで知り合ったのよ」 「‥‥盗賊に襲われてたのを助けたら、いきなり依頼されただけだ」 さらりと答えるゼルガディス。 な、なるほど‥‥その場面が目に見えるよーだわ。 「で? 町長の悪事って何よ。密輸? それとも、麻薬にでも手を出したの?」 「‥‥いや、違う。町長は、魔族と手を結んだんだ。 旅人を魔族に差し出す代わりに、オリハルコンを貰う、と言う契約を結んで、な。 旅人が通らなくなってからは、事件解決の為、と称して、人を雇っては魔族に引き渡していたんだ。 だから‥‥レミールはこれ以上被害を出さない為にも、誰もこの道を通すな、と依頼されたんだ」 なるほどねー。 だから、ゼルはあたし達の邪魔したんだ。 そっか、あの町長、魔族と契約結んだんだ。 オリハルコンってのはすっごく高価だけど、それは数が少ないからと、採掘するのが大変だから、と言うのが大きいものね。 それを魔族に持って来てもらってたのか。 そりゃ、暴利むさぼりまくりよねー。 ‥‥って、待ってよ。そーすると、もしかして‥‥いや、もしかしなくても、あいつ、あたし達も魔族に差し出すつもりでいたのね! ぐっぞー! どーりで、とんでもない金額を飲むはずだわ! と、いきなりアメリアが立ち上がった。 「許せません! お金のために、人の命を差し出すなんて‥‥人とは思えない所業! そのせいで、どれだけの人が命を落とし、どれだけの人が悲しんだ事か! リナさん、今すぐその町長の所へ行って、正義の鉄槌を下しましょう!」 拳を握りしめて、力説するアメリア。 あんたに言われなくたって、あのおやじは吹っ飛ばしてやるわよ! でも、それよりも先にやらなきゃいけない事があんのよ。 「待ちなさいよ、アメリア。あんなおやじを制裁するのなんて、いつだって出来るわ。 それよりも、今はあの魔族を何とかしないと。 さもないと、また死人が出るわよ」 そうだ。いくら町長を制裁したって、あの魔族はまた別の人間を見つけて、同じような事を始めるだろう。 なにしろ、あの魔族は人間の欲を利用して、人を殺し、殺した人間の負の気と、そしておびえる町の人達の負の気を食っているのだろうから。 世の中には、欲の深いヤツなんて、いくらでもいる。 代わりはいくらでも居るんだ。やめさせるには、元凶を叩かないと! 「でも、ゼル、冷たいじゃないの。それならそーと言ってくれたら、協力したのに。 何も力ずくで追い返そうとしなくったって、いーじゃないの」 そーなのよね。あの時。最初に会った時に、ゼルガディスがちゃんと事情を説明してくれてたら、レミールだって死なずに済んだかもしんないのだ。 それはゼルガディスにもわかっているんだろう。 彼は少し暗い顔をすると、こう答えた。 「‥‥仕方なかったんだ。誰にも言うなって言われてたからな。 レミールは父親の悪事を他人に知られたくなかったらしい。 本当は、自分1人で人知れず解決したかったらしいんだが‥‥無理だから、俺に協力してくれないかって頼まれたんだ」 そりゃ、普通の悪事ならまだしも、魔族の手下になってたなんて知れたら‥‥エラい事になるもんねー。 その気持ちは分かるけど、でもさ。 「だったら、この先に魔族が待ち伏せているから引き返せ、とか言ってくれたらよかったじゃない。そしたら」 「そしたら、引き返したか? 俺にはそうは思えんが」 う。そ、そりゃ‥‥あたし達はその魔族を退治しに来てんだから、魔族が出るな〜んて言われたらかえって先に進みたがっただろーけど‥‥ 「い、いーじゃないの! あたし達がその魔族をやっつけちゃえば、全て丸く収まるんだから!」 「そーは行くか。万が一って事もあるし。 第一、誰も通すなって依頼なのに、顔見知りだからって通してどーする!」 いや、そりゃそーだろーけど‥‥う〜ん、本当にどーしよーもないわね。 あ、でもちょっと待ってよ。 「ゼル、あんたあの魔族を倒そうとは思わなかったの? 倒しちゃえば全部解決でしょ?」 「思ったさ。だが、神出鬼没でな。どこに居るのか分からんのだ。 仕方がないので旅人のフリして、街道を歩いてみたが、気づかれたらしく、出て来なかったしな」 う〜〜ん、そっかあ。考えてみれば、魔族はあたし達人間と違って眠る必要はないし、休みたいならアストラル・サイドへ戻ればいーんだから、「ねぐら」とか必要ないもんねー。 おまけに空間は渡るし、アストラル・サイドと自由に出入りできるし。 そりゃ、見つからんわな。 そー言えば、今まで色んな魔族と戦ってきたけど、いつだって向こうからやって来てたしねー。 こっちから出向いて行く時だって、向こうの居場所がはっきりしてたし。 魔族を探してまで戦うのはこれが初めてなんだー。 ま、普通は探し出してまで戦いたいとは思わないしねー。 でも、そうすると‥‥ 「ねえ、ゼル。だったらあんたはどーするつもりだったのよ。 来る人間を追い返してるだけじゃ、ラチが開かないでしょーが」 「それなら、週に1度だがヤツは町長とこの山の中にある小屋で会う事になっているんだ。 オリハルコンの受け渡しのためだが‥‥俺はその場に踏み込むつもりでいた」 なるほど、そんな作戦になってたんだ。 現場に踏み込まれたら、あの町長だって言い訳出来ないんだし。 よっしゃー、見てなさいよ! ギッタンギッタンにしちゃる! 「で、ゼル。それっていつなのよ」 そう尋ねると、ゼルガディスはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。 「やっぱりそう来るか。お前が騒動に首を突っ込まんはずないからな」 な、何よ、それどーゆー意味よっ! 「失礼しちゃうわ! あたしは別に騒動に首突っ込みたいんじゃあにわよ! あたしは正式に町長に依頼されてるのよ、魔族を退治してくれってね! だから、これは立派な仕事なのよ! 分かった!」 ジロリ、とゼルガディスを睨み付けてやるけど、横からガウリイが口を出した。 「お前さんはただ、金貨1000枚が欲しいだけだろーが」 ああ、こいつ! 余計な事をっ!! 案の定、それを聞いたゼルガディスもアメリアも、2人してあたしを非難し始めた。 「おい、金貨1000枚って‥‥お前、そんなにふっかけたのか!」 「ひどいです、リナさん! いくらなんでも、それはあんまりですっ !!」 おまけにガウリイが、 「しかも1000枚ってのは前金なんだぜ。 仕事が終わったら、後金としてさらに1000枚貰うんだぞ。信じられるか?」 な〜んて余計な事を言うもんだから、ゼルガディスもアメリアも、あたしをジト目で見ている。 ああもう! どーして肝心な事は覚えてないくせに、どーでもいー事は覚えてるのよ、ガウリイ! 「な、なによ! 言っとくけど、その後金1000枚ってのはあたしが要求したんじゃなくって、あっちが勝手に言いだしたんですからね! あたしはただ、金貨1000枚って言っただけなんだから!」 「‥‥金貨1000枚って相場の何倍ふっかける気だ、お前」 ジト〜とあたしを見るゼルガディス。 そ、そりゃあ相場無視の値段だけど‥‥ 「いーじゃないの! 向こうが納得して、払うっつってんだから! 問題ないの!」 「ないのか? 問題。だいたい、その金はお前達を山へ向かわせるために支払った物だろーが。 そんな金、受け取るつもりか?」 「い、いーのよ! もらった以上、あれはあたしのお金なんだから! で、あの魔族倒して、もう金貨1000枚もらうんだからっ!!」 「もらうんですか? リナさん‥‥」 呆れ返るアメリア。 決まってるじゃないの。当然の権利よ! 「‥‥ったく、お前さんは‥‥どーせその金もらった後で、町長しばき倒して慰謝料とかふんだくるつもりなんだろーが」 ジト目であたしを見ながら、ガウリイが言うけど。 「ふ、当然でしょ! 悪いやつをやっつけて、報酬を貰うのがあたし達の仕事なんだから。 それはともかく‥‥ゼル。あんた、昨日あたしに本気で斬り掛かってくれたわよねえ。 あれって、どーゆーつもりだったのか、聞かせてもらいましょーか」 殺気を滲ませながら、ズイイッとゼルガディスに迫ると、ゼルは一筋、額に汗を浮かべた。 「‥‥覚えていたのか‥‥」 「殺されかけたのよ! 忘れるはずないでしょーが! ガウリイじゃあるまいし! さあ、何だってこのあたしを殺そうとしたのか、そのあたりをきっちり説明してもらおーじゃないの!」 ビシィ!とゼルガディスを指さしてやると、 「ええええ! ゼルガディスさんってば、そんな事してたんですか! 信じられません! ひどすぎますーっ!!」 アメリアまで一緒になって、ゼルガディスを糾弾する。 そーよね。このあたしを殺そうとするなんて、ひどいわよね! ところがガウリイときたら、ポリョポリョ頬をかきながら、 「そー言えばそんな事もあったよーな気がするなあ‥‥」 なんて呑気な事を言っている。 コラ待て。忘れたんかい、あんたは! ええい、ガウリイなんてどーでもいーわ。 とにかく、今はゼルガディスを問いつめないと! あたしとアメリア2人掛かりでズズィッ!とゼルガディスに迫ると、ゼルはだ〜らだら汗をかきながら、必死で言い訳し始めた。 「い、いや、あれはだな‥‥お前の性格から言って、あれぐらいしないと引き返そうとはしないだろうと思って‥‥だが、ちゃんと外すつもりではいたんだぞ! 本当だ、信じてくれっ!!」 ふっふっふ‥‥んな言い訳、通るもんですかっ!! 「くらえ、怒りのディル・ブランド!」 ドッヴァーッ!! 吹き上がる土砂! それと共に吹っ飛ばされるゼルガディス! 「うわあ〜〜っ! あの時は、仕方なかったんだーっ!!」 やがて待つほどに。 ドゴッ! と言う盛大な音を立てて、ゼルガディスが落っこちて来た。 「あ、ゼルガディスさん、お帰りなさい!」 アメリアが声を掛けるけど‥‥上半身が地面にめり込んでるゼルガディスに、まず言う事がそれかい‥‥ ちょっとは心配したげなさいよ。 まー、ゼルガディスがこの程度でどーにかなる訳、ないけど。 「おーい、ゼル。大丈夫かー」 そう言いながら、ガウリイがゼルガディスに近づくと、地面から突き出しているゼルの足をつかむなり、ズボッ!と地面から引っこ抜く。 「ああ、大丈夫だ。スマン」 地面の中から現れたゼルガディスは、多少汚れてはいるものの、怪我などはないようだ。 う〜ん、相変わらず頑丈なヤツ。 「それで? ゼル、魔族と町長が会うのって、いつなのよ」 「ああ、それなら明日だ」 パンパンと服をはたきながらゼルガディスが答える。 明日かー。しょーがない、出直すか。 「で? ゼル。あんた、その山小屋の場所は分かってんでしょーね」 「ああ、もちろんだ。明日、そこへ案内する」 よっしゃ、そうと決まったら。 「今日の所は町へ戻りましょーか。 あ、今日の夕飯はゼルの奢りで決まりね」 「何で俺がお前に奢らにゃならんのだ!」 ゼルガディスが抗議するけど‥‥こいつ、分かってないわねー。 「あのね。あたしを本気で殺そーとした事を、それっくらいで勘弁してやろーって言ってんのよ。 感謝して欲しいくらいだわ! 普通なら、ただじゃ置かないんだから!」 「そ、そんな‥‥」 呆然と立ちつくすゼルガディスの肩を、ガウリイがポンポンと叩く。 「ま、諦めろやゼル。リナの言う通りにしないと、後で何されるか分からんからな」 「そーそー。ゼルガディスさん、命あっての物だねです。 ここは犬にでも噛まれたと思って、諦めてください!」 アメリアまで一緒になって、ゼルガディスを慰めてるけど‥‥ 「ああもう!2人して、何言ってんのよ! モタモタしてると、置いてくわよ!」 あたしは後ろも見ずに町へと戻って行く。 「おい待てよ!」 「待ってください、リナさん!」 「‥‥‥‥‥‥」 あたしの後からついてくる3人。 こうして、あたし達は町へと戻って行ったのだった。 『ゼルガディスも加え、4人で魔族と戦う事になったあたし達。 よ〜し、これでフルメンバーよ! あの魔族がどんなヤツだか知んないけど‥‥ケッチョンケッチョンにしてくれるんだから! 次回、「欲望の行き着く先9」読んでくんないとま〜た暴れちゃうぞ!』 |
26319 | Re:欲望の行き着く先 改訂版8 | オロシ・ハイドラント | 2003/6/23 15:00:32 |
記事番号26317へのコメント こんばんは。 テストなんちゅう馬鹿げたもの(コラ)も、今日でようやく終わってしまい、一気に読んだこの話。 ついに明らかとなった真実。 やはり、あの町長はクロだった。 にしてひどい人ですね。 実の娘に手を掛けたのは、魔族の独断なのでしょうけど、いやもし町長の意志なら、許せたもんじゃありませぬ。 そろそろ、あの魔族との戦いでしょうか? どれほどの力を持つやつ、なのでしょうか? 大変面白かったです。 それでは、短いですが、このあたりで…… |
26324 | どうもこんばんは。 | 龍崎星海 URL | 2003/6/24 00:24:04 |
記事番号26319へのコメント どうもこんばんは。 テストだったのですか。学校出てだいぶたつので、そういう事が分からなくなってきています(笑) >ついに明らかとなった真実。 >やはり、あの町長はクロだった。 はい、真っ黒です。まあ、結果的には彼も魔族に利用されたんですが‥‥ あまり欲張るとロクな事がない、って事ですね。 >そろそろ、あの魔族との戦いでしょうか? はい、今回より戦闘シーンです。 それも3回連続で。 ‥‥1万5千字近く使って戦闘シーン書いてどうするんでしょう、私。 ええ、お暇でしたら後2回あります戦闘シーンもおつきあいください。 それでは、これにて失礼します。 |
26323 | 欲望の行き着く先 改訂版9 | 龍崎星海 URL | 2003/6/24 00:18:43 |
記事番号26263へのコメント 『あたし、リナ=インバース。カリメテの町で魔族退治の依頼を受けたあたし達。 色んな事があったけど、ゼルやアメリアも加えて、魔族退治に出発よ!』 翌日、あたし達は3たび山へと向かった。 「それで? その山小屋ってのは遠いの?」 「いや、そんなに遠くない。山道を2時間も歩けば、着く」 ゼルガディスはあっさりと答えてくれるけど‥‥山道を2時間って、十分遠い気がするんですけど。 しかも、今歩いてるのは街道じゃなくって、街道から脇にそれた、どー見ても獣道にしか見えない所で。 ‥‥その山小屋って、木こりか猟師が使う小屋なのかしらねえ。 まあ、それはともかくとして。 「ねえ、ゼルは昨日のあの魔族について何か知ってる事はあるの?」 「いや、何しろ直接会ったのはあれが初めてだったからな。 オレが知ってるのは、ヤツのザッファルトと言う名前だけだ」 う〜ん‥‥せめて得意な攻撃方法とか分かると戦略が立てやすいんだけど‥‥ 名前と外見、そして見かけより強いって事しか分からないんじゃあ、対策の取りようがないわねー。 と、その時、アメリアがいきなり叫んだ。 「大丈夫ですよ! 正義の4人組が揃ったんです。 何が出て来たって、負けるはずがありません!」 ガウリイも、腰に下げた剣をポンポン叩いてみせる。 「そーだぞ。この剣だって、結構使えるし。大丈夫だって」 あう‥‥あたし、そんなに浮かない顔してたのかなー。 「や、やーね。そんな心配してたんじゃないわよ。 ちょっと考え込んでただけなんだから、そんなに大げさにしないでよ」 と言いつつ、手をパタパタ振って見せる。 そーよ、あたしが負ける心配なんてするはずないじゃない! やる以上は絶対に勝ってみせるわよ! まあ、心遣いだけはありがたく貰っておくけど。 しばらくは、皆黙々と山道を歩いていたけど、急にゼルガディスがガウリイに話し掛けた。 「そー言えば、旦那は光の剣をなくしたんだったよな。 今使ってる剣はどーゆー剣なんだ? どうやらかなりいい魔法剣みたいだが」 「へー、ガウリイさん、新しい剣を手に入れたんですか? よかったですね!」 アメリアもその話しに割って入る そー言えば、2人には剣の事、言ってなかったっけ。 「おう、これは、こないだ何とかって町のなんとかってヤツんとこで見つけたんだが、なかなか使える剣なんだぜ」 嬉しそーに笑いながら、剣を2人に見せびらかすガウリイ。 苦労して手に入れた剣だから、嬉しくて仕方ないのは分かるけど‥‥その説明じゃ、何がなんだか分からないっつーの。 ホラ、アメリアもゼルガディスも呆れてるじゃないの。しょーがないんだから。 「あのね、それはひょんな事で手に入れたんだけど、強度もあるし、魔族にも有効だし、結構いい剣なのよ。 でも、やっぱ光の剣と比べると見劣りしちゃってねー。って訳でもっといー剣探してんだけどさ、アメリアもゼルもそーゆー噂を聞いた事、ない?」 ゼルガディスはあちこちの町を旅して歩いてるし、アメリアはセイルーンのお姫様だからね、何か知ってるかもしんない。 そう思って聞いてみたんだけど。 「うーん‥‥そーゆー噂は聞いた事ないな。アメリアはどうだ」 「え? いえ、聞いた事ないです。すみません、リナさん」 2人共知らないみたいだった。 ちっ‥‥使えないやつら。 ま、しょーがない。地道に探すとしますか。 「それより‥‥いー加減、歩き疲れたんだけど、またその山小屋ってのには着かないの?」 じれたあたしがゼルガディスに尋ねる。が、返事はなぜかガウリイから返ってきた。 「あれ? ‥‥りな、あれがそーじゃないか?」 いきなりガウリイが行く手を指し示した。 「え? 見えるの? どこよ!」 「ホラ、あそこの木の陰。な? 見えるだろ?」 そう言うガウリイが指さす方を一生懸命に見るけど、どー目をこらしてもあたしには何も見えなかった。 でも、ガウリイの視力は人間離れしてるからねー。 ガウリイが見えるって言うんなら、本当に見えるんでしょ。 ガウリイが指さす方に少し歩くと、本当に山小屋が見えてきた。 しかし‥‥間に木も生えてるってのに、さっきの位置からこれが見えるとは‥‥ ガウリイの視力は本当に人間離れしてるわねー。 問題の小屋は、森の中の空き地にポツンと建っていた。 なんて事のない、普通の山小屋だけど‥‥ 「ゼル、あの小屋で間違いないの?」 「ああ、そうだ。あれだ」 そっか、やっぱあの小屋でいいのね。 町長があたし達より先に町を出てるのは、確認してるから、後は魔族が来るのを待つだけね。 「ガウリイ、魔族が現れたら教えてね」 こーゆー時、ガウリイの勘はあてになるのよね。 すると、ガウリイは真剣な顔をして言った。 「‥‥それなら、もう中に居るぞ」 なんだ、もう来てるんだ。 まあ、あたし達みたいに山道歩かなくてもいーから、早くて当然だけど。 それじゃ、乗り込みますか! 「よっしゃ、行くわよ、みんな!」 あたしはガウリイ、ゼルガディス、アメリアに声を掛けると、勢い良く扉を開けた。 その途端、強い血臭が鼻をつく! 「な‥‥なによ、これっ!!」 小屋の中は、外に比べると薄暗くて‥‥中で何が起こっているのか、全く見えないけど、この匂いはただ事じゃないわ! 少しして、やっと目が慣れてきた頃。 「リナさん、あれっ!!」 アメリアが指さす先には、町長が倒れていた。 町長の身体の下の床が黒く変色してるのが見える。 きっと、あれは血‥‥だ。さっきからのこのおびただしい血臭は、町長が流した血が原因なんだろう。 その町長のすぐ脇には、魔族のザッファルトが立って‥‥と言うか、存在していた。 「まさか‥‥これ、アンタがやったの?」 いつ、襲って来るかもしれない。 そう思いながらも、ザッファルトに尋ねてみると。 『クックック‥‥そうだ、我がやった』 意外とあっさりとザッファルトは答えてくれた。 やはり‥‥でも、確か町長はこの魔族と契約を結んでいたハズなのに。なぜ‥‥ あたしの後ろに立っていたゼルガディスも、同じ事を考えたらしい。 「なぜだ! キサマは町長と契約を交わしてたんだろう!? なぜその町長を殺したっ!!」 ザッファルトに食ってかかるゼルガディス。 『クックック‥‥契約‥‥か。確かに交わしたな。 この人間が我に旅人を提供する、その代わりに、我はこの男にオリハルコンを渡す、とな』 「なら、なぜ殺すのですかっ!!」 アメリアも、ゼルガディスと同じようにザッファルトに食ってかかる。 『なぜ‥‥そんなの決まってるだろう。 旅人や町の人間の放つ負の気は、実に美味だった。だが‥‥そろそろ飽きてきた。 それに、この人間ときたら、どんどん要求する物が多くなって行くからな。 それも‥‥何を勘違いしたのか、我に命令るす始末だ。 だから、殺した。契約には、町の人下には手を出さない、と言う一文もあったが、町長には手を出さない、という契約はしてないからな』 クツクツと楽しそうに笑い続ける魔族。 こ‥‥こいつっ! なんて悪辣なっ!! そりゃ、魔族にいいやつなんていないけど! 思いは同じなんだろう。みんな、ギリギリと歯ぎしりしている。 でも、ザッファルトはさらに続ける。 『クックック‥‥キサマらの負の気はまた格別だな。 娘を殺した、と言ってやった時のあの男の負の気もなかなかだったが、それ以上だ』 愉快そうに語るザッファルト。 こいつ‥‥ 「あんた、まさかそのためにレミールを!」 『当然だろう。人間なんて、我らにとってはただのエサだ。 なら、効率よく上等の負の気を採取する方法を考えた方がいいからな』 クツクツと、笑いながら語り続けるザッファルト。 顔がないから表情は分かんないけど‥‥もし顔があったら、今頃はさぞかし満足そーな顔してるんでしょーね。 「あんた‥‥さいてーね」 「許せません! 人間をエサ呼ばわりした事‥‥後悔させてみせます!」 「‥‥俺も同感だな」 あたしもアメリアもゼルガディスも、ザッファルトに対して戦闘態勢に入った。 ガウリイも、無言だが殺気をにじませながら剣を構えている。 あたし達に取り囲まれる形になっても、ザッファルトは余裕しゃくしゃくだった。 『クックック‥‥いいだろう。全員まとめて掛かって来るがいい。 負の気をたっぷりと搾り取ってから、皆殺しにしてくれよう』 「そう‥‥うまく行くもんですかっ!! 行くわよ、みんな!」 「おうっ!!」 まず最初に仕掛けたのは、ガウリイだった。 素早くザッファルトに駆け寄ると、剣で斬り掛かる! それをよけようともしないザッファルト! ザシュッ‥‥と言う鈍い音と共に、いとも容易くザッファルトは真っ二つになってしまった。 フン、口ほどにもない‥‥ と、その時。 グニョリ‥‥と2つに別れたザッファルトがそれぞれ別々に動き始めた。 うそっ!! 「どーなってるのよ!」 普通はどちらかかたっぽか、両方か、とにかく攻撃受ければ消滅するのに! 驚くあたしの横を駆け抜けて、アメリアが走った! いつものように自分の拳にヴィスファランクを掛けると、2つに別れたザッファルトのうちの1つに殴りかかる! 「とうっ!!」 ボスッ!! アメリアの拳の勢いに押されたのか、ザッファルトの身体が2つにちぎれ飛ぶ! だが! グニョリ‥‥ またもや、2つに別れたザッファルトは、それぞれが別々に動き出してしまう! 今や、あたし達の前には3匹のザッファルトがうごめいていた。 「ど‥‥どーなってんのよ、これっ!!」 なんで‥‥なんで2つにちぎれても平気なのよっ!! と、ゼルガディスがあたしにこっそりと耳打ちした。 「おい、リナこれはひょっとすると‥‥」 「なによ、ゼル。あんた何か知てんの!? だったら早くいーなさいよっ!!」 思わずゼルガディスの胸ぐらを掴んで、ガクガク揺するあたし。 「お、落ち着け、リナ! そんなに揺すったら話せんだろーがっ!!」 ちっ! しょーがないわね。 仕方ないので離してやると、ゼルガディスは1つ大きな息を吐くと、話し始めた。 「フウ‥‥いいか、以前レゾが話していた事があるんだ。 攻撃を受けると、増殖分裂するヤツがいる、と。たぶん、あいつがそうなんだ」 分裂増殖って‥‥ 「ちょっと、嘘でしょっ! 攻撃すると増えるんじゃ、やっつけようがないじゃなのっ!!」 そう言いながらふと見ると。うっそでしょ! ヤツガさっきより増えてるーっ!! そうか、ガウリイとアメリアの仕業ねっ!! 「こらあーっ! アメリア、ガウリイ! 勝手に攻撃するんじゃなーいっ!!」 あたしがゼルガディスと話してる間にも攻撃続けるなんてっ!! いや、いつもなら大歓迎なんだけど‥‥ 今回はそんな事されたら、困んのよっ!! 『攻撃すると増殖する敵、ザッファルト。こんなヤツ、どーやってやっつけろって言うのよ! って、いつの間にかやたら増えてるしっ!! ああもう、どーしろってのよっ!! 次回「欲望の行き着く先10」リナちゃん大ピンチなんだから、読んでくんないとま〜た暴れちゃうぞ!』 |
26336 | 欲望の行き着く先 改訂版10 | 龍崎星海 URL | 2003/6/24 23:32:39 |
記事番号26263へのコメント 『あたし、リナ=インバース。カリメテの町で魔族退治の仕事を依頼されたあたし達は、アメリアやゼルガディスも加えて、魔族退治に向かった。 でもこれがねえ‥‥攻撃するたびに増えていく、って言うとんでもない敵で‥‥ああもう、どーしろってのよっ!!』 あああ‥‥あんなに増やしちゃってーっ!! さして広くもない小屋の中には、ザッファルトが‥‥えーと、ひー、ふー、みー‥‥あああ、こら動くな! 数えらんないでしょーが! とにかく、ぱっと見では数が分からないぐらいに増えていた。 ああ‥‥どーしよー、これ。 そう思ってる間にも、 ザシュッ!! ガウリイが後ろから襲い掛かって来たザッファルトを一刀の元に切り捨てた! グニョリ‥‥ だが、やはり2匹に分裂するザッファルト! キ‥‥キリがなぁあ〜いっ!! おまけに、ただでさえ小さな小屋の中に4人の人間と沢山のザッファルトが居るもんだから‥‥ 自由に動く事もままならなくなっちゃってる。 じょーだんじゃないわ。このままじゃやられちゃう! 「みんな! 外に出るわよ! こんな狭い所じゃ、あたし達には不利よっ!!」 そう言い捨てて、小屋から外に飛び出す。 後からゼルガディスとアメリアが続き、最後にガウリイが飛び出してきた。 フウ‥‥ どうやら全員無事に抜け出したみたいね。 とは言え‥‥ザッファルトの倒し方が分からない事には、どーしよーもない。 「ねえ、ゼル。あーいう増殖する敵はどーやって倒せばいーのよ。 レゾは何か言ってなかった?」 ゼルガディスに聞いてみると、ゼルはいかにもすまなそーな顔をした。 「いや、すまんがそれは聞いてない。 ただ、厄介すぎる相手だから出来ればそーいった敵は相手にするな、と言ってたが‥‥」 ‥‥冗談じゃないわよ! あのレゾをして手を出すな、なんて言うなんてっ!! あああ、どーしよ‥‥どーやって倒そう‥‥と。 「来るぞっ!!」 ガウリイの叫びと共に、小屋の壁が黒く染まった。 ‥‥いや、あれは‥‥ザッファルトだ。 ザッファルトが小屋の壁を通り抜けて出て来てるんだ! うわ‥‥ちょっち気持ち悪いかもしんない‥‥ なんて呑気な事言ってる場合じゃなーいっ! 今や全身を表したザッファルト達は、一斉にあたし達に襲い掛かって来る! うにょわあ〜っ!! 慌てて逃げに掛かるあたし。 ザシュッ! ザンッ! ボスッ! それぞれに、剣やら拳やらで応戦するガウリイ、ゼル、アメリア。 「‥‥って、こら〜〜っ! 勝手に攻撃するんじゃないわよっ!! 特にゼル! 攻撃したら分裂するのが分かってる相手を斬るんじゃな〜〜いっ!!」 あたし達の目の前で、攻撃されたザッファルト達はそれぞれが分裂し、6匹に増えてしまった。 うだああ‥‥ 「す、すまん、つい‥‥ 「ご、ごめんなさーい」 それぞれに謝るゼルガディスとアメリア。 うああ‥‥謝ってすむ問題かーいっ!! 「え? こいつら、分裂するんか?」 ところが、ガウリイときたら、まだ呑気な事を言っている。 こら待てい。 攻撃をければつい反射的に反撃しちゃうのは、分かる。 それはある程度、仕方のない事だ。 そう訓練されてるんだから。でも‥‥ 「ガウリイ、あんたねー! 斬った相手が分裂してんの、目の前で見てんのに、何で気づかないのよ!」 「いやあ、なんか斬るたびに2つに別れてくなー、とは思ってたけどな。 それがそのぶ‥‥なんとか、ってのだとは気づかんかった」 戦闘中だと言うのに、ノホホーンと言ってくれるガウリイ。 「‥‥だから、それを分裂してるって言うのよっ!」 「なるほど、そーだったんか」 ポン、と手を叩いて納得するガウリイ。 あう‥‥こいつは‥‥いや、やめとこう。 まともにガウリイの相手をしてても、疲れるだけだし。 それよりも‥‥今は、ザッファルトをどーするのか、よ! 「と、とにかく、今言った通りだから、うかつに攻撃するんじゃないわよ! って、こらガウリイ! あたしが言ってるそばから攻撃するんじゃなーいっ!!」 あたしが注意してる間に、横から攻撃して来たザッファルトに斬りつけるガウリイ。 当然、そいつは2匹に分裂した。 こんのお! あたしもゼルガディスもアメリアも、必死でザッファルトの攻撃よけて逃げ回ってるってのに‥‥ なんであんたは攻撃すんのよ! おかげでまーた増えちゃったじゃないの! 「こおらー! ガウリイ 攻撃すんな、つーてるでしょがっ!!」 「でも、こいつら少しずつ弱くなってるみたいなんだ。 たぶん、もう1回攻撃したら倒せるんじゃないか?」 へ? そ、そうなの? 見たところ、ザッファルトの様子に変わったところはないけど‥‥ ガウリイがそう言うんなら、物は試しね。 「ブラスト・アッシュ!」 あたしが呪文を唱えると、 ボシュッ! ガウリイが分裂させたうちの1匹が黒い霧に包まれる! その霧が消え去った時、そこにはザッファルトの姿はなかった。 本当だ‥‥倒せた。って事は! 「みんな、こいつはある程度分裂させれば、1撃で倒せるようになるわ! 1匹に集中して攻撃して!」 「わかった!」 「なるほどな‥‥そーゆー事か」 「了解です!」 3人3様の返事が返って来て、戦闘が再開されたのだった。 「はあっ!!」 まずはゼルガディスが残る1匹のザッファルトに斬りつける! ザシュッ!! キシャァァァ‥‥ ゼルガディスの剣はザッファルトを真っ二つに切り裂き‥‥2つの欠片は分裂する事なく、甲高い悲鳴を上げて消滅していく。 よっしゃー! この調子で! 「はあっ!!」 ボスッ!! アメリアの攻撃で2つに分裂したザッファルトには、 「ブラスト・アッシュ!」 「たあっ!!」 あたしとガウリイが攻撃する。 って、4つに分裂したーっ!! 「てえいっ!!」 ボスボスッ! キシャァァァ‥‥ すかさずアメリアがそのうちの2つを連続して攻撃すると、2つとも消滅して行く。 よし、この調子で! 「ブラスト・アッシュ!」 「とうっ!!」 あたしとゼルガディスの攻撃を受け、やっぱり4つに分裂するザッファルト。 「‥‥あああ、ちっとも減らないじゃないの!」 「しょーがないだろーが! ほとんどダメージ受けてないのもいるんだ!」 あたしの文句にゼルガディスが答えてくれるけど‥‥ そんなの言われなくっても、分かってるわよ! 分かってるけど、ハラが立つんだから、しょーがないでしょーが! 大体、チマチマやっつけてくのって、あたしの性分に合わないのよ! こーなったら‥‥特大魔法で一気にカタを付けてやる! 「みんな、さがってて!」 あたしは一声、声を掛けると、呪文を詠唱し始めた。 「黄昏よりも昏きもの 血の流れより 紅きもの」 「ドラグスレイブ‥‥か?」 「なるほど、それで一気に殲滅するんですねっ!!」 ガウリイとアメリアは慌ててあたしの後ろに走り込む。 その中で、ゼルガディス一人が 「ばかっ! リナ、やめろっ!!」 あたしを止めようとしていた。 やめるわけ、ないでしょーが! あたしの呪文に気づいたザッファルト達が一斉にあたしに襲い掛かろうとするが‥‥ その前に、あたしの呪文が完成する! 「等しく滅びを与えんことを! ドラグスレイブ!」 あたしの手から魔力光がほとばしり、それがザッファルト達に向かって突き進む ザッファルト達の中心にまで達した魔力光は‥‥そこですさまじい爆発を起こす! ドドドドド! ものすごい爆風が辺りを薙ぎ払う! ちょーっと爆発が近すぎたかな? ひょっとして、誰か巻き込まれたかもしんない。 まあ、ゼルガディスもアメリアもガウリイも、ドラスレに巻き込まれたくらいで死にゃしないだろーから、いーけど。 爆風が収まったところで、 「みんなー、無事?」 声を掛けると、 「おー、無事だぞ」 「大丈夫ですー」 「‥‥いきなりドラスレなんか使うな!」 3人から返事が返って来た。 やー、みんな無事だったのね。 「ま、いーじゃないの。みんな無事だったんだし」 「だからと言ってだな!」 「まーまー、ゼル。それにしても‥‥見事に何もなくなったなー」 キレイさっぱり吹っ飛んだ小屋の跡を前に、感心するガウリイ。 ふふん、あたしのドラスレ喰らったんだから、当然よ。 「さーて、そんじゃま戻って金でも受け取って‥‥」 クルリ、と回れ右して歩き出そうとした時。 いきなり突き飛ばされた。 「なっ!」 文句を言おうとしたあたしの上を、黒い錐状の物が通り過ぎる。 へ? 今のって‥‥ と土の中から次々とザッファルト達が飛び出して来た! うそ‥‥無事だったの!?ってか、増えてるしっ!! 「リナッ!! 大丈夫かっ!!」 あたしの上に覆い被さったガウリイが、あたしに尋ねる。 ‥‥いや、何でもいーけど、この体勢はちょっと‥‥ そりゃ、ガウリイのおかげで助かったけど、でもいくらなんでも恥ずかしすぎる! 「いーから、どきなさいよ!」 パッカーン!とガウリイの頭をスリッパではたくと、ガウリイの腕の中から抜け出す。 その頃にはザッファルト達は攻撃を開始していて、ゼルガディスとアメリアが反撃をしていた。 「ぐっぞー‥‥ドラスレでもやっつけらんないなんて!」 「それはともかく、どーするんだよ、こんなに増やしちまって」 ザッファルトに応戦しながらも、ガウリイがあたしをジト目で見る。 うう‥‥そ、そりゃ、ただでさえ数が多くて苦戦してたってのに、いきなし倍増では‥‥つらいわよね。 「‥‥‥‥あー、分かったわよ!なんとかすればいーんでしょうが、なんとか! ゼル! アメリア! 後ろに下がって!」 あたしは2人に声を掛けると、 「黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの」 もう1度呪文の詠唱に入った。 『ドラスレ1発では倒せなかったザッファルト。 しかも、増殖しまくっちゃって‥‥ 文句言わないのよ! 責任取ってちゃんとやっつければいーんでしょーが! いくらなんでもドラスレ2連発すれば‥‥全滅するでしょ! 次回、「欲望の行き着く先11」読んでくんないと、ま〜た暴れちゃうぞ!』 |
26349 | 欲望の行き着く先 改訂版11 | 龍崎星海 URL | 2003/6/25 23:07:20 |
記事番号26263へのコメント 『カリメテの町で魔族退治を依頼されたあたし達。 その魔族ってのが、攻撃するたびに増えて行く奴で‥‥ やってらんないんでドラスレ使ったんだけど、これがドラスレ一発じゃ倒せないのよねえ。 て、それじゃ、ってんでもう一発唱える事にしたんだけど!?』 「ドラスレ‥‥か?」 「り、リナさん、ちょっと待ってくださ〜いっ!!」 慌ててガウリイとアメリアが逃げ出す。 「バカよせ、リナっ!!」 また止めるゼルガディス。 ええい、止めたって無駄だっつってるでしょーが! 「等しく滅びを与えんことを ドラグ・スレイブ!」 チュドーンッ!! またまた物凄い閃光と共に、激しい爆風があたりをなぎ払う! 爆風が収まった時、そこに立っていたのはあたしだけだった。 「ガウリイ、アメリア、ゼル。大丈夫ー?」 「はい、なんとかー」 「リナ、無茶すんなよ‥‥」 「だああ、やめろっつっただろーがっ!!」 ボコボコと土の中から現れる、アメリア、ガウリイ、ゼルガディス。 ははは、みんな土砂の下敷きになっちゃったんだ。 「まあいーじゃないの。これで終わりなんだし」 そう言った、次の瞬間! シュッ!! 土の中から黒い錐状の物があたし目がけて飛び出して来た! ダメ、よけらんないっ! 「リナっ!!」 ガウリイの声と共に、剣が一閃し。 シュバッ!! その錐状の物が切り落とされた。 あたしの目の前まで迫っていた黒い錐は、サアア‥‥と崩れ落ちて行く。 それを合図にしたかのように、土の中から現れるザッファルト達! うあ。まだ生きてたんかい! と言うか‥‥また増えてるーっ!! 「くそっ!! エルメキア・ランス!」 ゼルガディスは呪文を唱え、まず1匹を倒すと、ザッファルトの群に突入して行く! 「私だって! ヴィスファランク! とうっ!!」 アメリアもまた、もう1度自分に呪文をかけ直すと、ゼルガディスと同じようにザッファルトの群に突入して行く。 2人して、右に左に、猛攻撃を掛ける。 見る見るうちに倒されて行くザッファルト達。 もちろん、あたしもガウリイも黙ってそれを見ていた訳ではない。 「ブラスト・アッシュ!」 「とうっ!!」 2人して、呪文と剣でザッファルト達と戦っていた。 だが、いかんせんザッファルト達の数が多すぎる! 4〜50体は居るんじゃないの? 幸い、ドラスレ2発でほとんどのザッファルトが1回の攻撃で倒せるよーになっているけど‥‥ それでも、多お足手も倒しても次から次へと襲い掛かって来る。 「ああもう! キリがないいっ!!」 「お前さんがドラスレなんか唱えるからだぞ!」 「だーってえ!」 お互いに口げんかしながらも、ザッファルトを倒し続けるあたし達。だが。 いかんせん、相手の数が多すぎるため、倒しきれずにあちこちから攻撃を受けてしまう。 前後左右から攻撃されたら、いくらなんでもよけ切れるものではない。 そのため、あたし達は全員満身創痍になっていた。 「リナッ! こーゆー時こそドラグ・スレイブだっ!!」 剣でザッファルトの相手をしながら、ゼルガディスが叫ぶけど。 「無茶言わないでよ! こんな状態で使えるもんですかっ!!」 なにしろ、敵味方入り乱れての乱戦になってしまっているのだ。 いや、それは無視するとしても、あちこちから攻撃されるため、よけきれず付いた傷が痛くて、どーしても集中しきれない。 おまけに、あちこちからやたらと攻撃して来るのをよけながらの呪文詠唱になってしまう。 これじゃあ、ドラスレなんて高度な呪文は無理だっつーの! 「ブラスト・アッシュ!」 あたしの呪文と共に、また1匹のザッファルトが倒れる。 ‥‥さっきから同じ呪文ばかり唱えてるけど、これだってちゃんとした理由があったりする。 それは‥‥次どの呪文使おうか、なんて考えるヒマがないのよっ!! それに別の呪文使うには別のカオス・ワーズを思い出さなきゃいけないしね。でも、 「ブラスト・アッシュ!」 こーして同じ呪文ばかり使ってれば同じ言葉を繰り返してればいーから楽なのよ! ああ、それにしても‥‥本気でキリがないっ!! 倒しても倒しても次から次へとっ!! いや、減ってはいるのよ? 減っては。 今いるザッファルトの数は‥‥ええと、20匹くらいかしら。 うにゃあ‥‥まだ20匹も残ってるんかいっ!! 「もう‥‥いー加減、あきたーっ!!」 ずーっと同じ呪文で、ずーっと同じ相手と戦うなんて、もーイヤだっ!! 思わず叫ぶと。 「何言ってるんですかあ! こんなに増やしたの、リナさんじゃないですかっ!!」 「そうだぞ! ここまで減らすのにどれだけ苦労したと思ってるんだっ!!」 体中キズだらけになりながら、アメリアとゼルガディスが言い返して来る。 「だああ! 文句言うヒマがあったら、ちゃっちゃとやっつける! ブラスト・アッシュ!」 あたしの呪文を受けて、また1匹のザッファルトが姿を消す。 「‥‥ちぇ。ちょ〜っと自分に都合が悪くなると、す〜ぐにこれだから‥‥」 ガウリイがブツブツ言いながら剣を振るっている。 「ガウリイ君、今何か言った?」 「‥‥いえ、何でもないです‥‥」 ふん。文句言うヒマがあったら、一体でも多くのザッファルトをやっつけろっての。 「ブラスト・アッシュ!」 さらにもう1匹のザッファルトが姿を消した。 数が少なくなって来ると、当然向こうからの攻撃も少なくなる訳で。 あたし達はどんどんと、ザッファルトを倒して行った。 「はあっ!!」 ガウリイの剣で、また1匹のザッファルトが倒れる。 よっしゃあ! 今ので残り10匹を割ったっ!! 「みんな! 後少しよ、頑張って ブラスト・アッシュ!」 みんなに声を掛けながら放ったあたしの魔法で、また1匹のザッファルトが消え去る。 「ヒイハア‥‥てええいっ!!」 ボスボスッ!! 体中キズだらけのアメリアは渾身の力で近くに居る2匹のザッファルトを同時に攻撃する! キシャァァァ‥‥ こすれるような悲鳴を上げながら崩れ去る、2匹のザッファルト! 「も‥‥もうダメですぅ‥‥」 それを見届けるなり、その場に座り込むアメリア。 ううん、さすがにアメリアも限界みたいね。 でも、もう後残りは6匹! 「はああああ!」 ゼルガディスが剣を手に走り、 ザン! ザン! ザン! 右に左に剣を振り、一気に3匹のザッファルトを倒す! よっしゃ、よくやった、ゼル! でも、駆け抜けるなり、ゼルガディスはその場にくずおれるようにして座り込んでしまう。 剣を杖になんとか立ち上がるけど‥‥肩で息してるし。 ありゃ、これ以上戦うのは無理みたいね。 なら、あたしが! 「ブラスト・アッシュ!」 ボシュ! また1匹のザッファルトが姿を消した。 よっしゃー、後2匹! その時、辺りが一瞬だが暗くなった。 ‥‥え? 何、なんなの、今の。 そう思う間もなく。 「はあっ!!」 ザシュッ!! ガウリイの渾身の一撃で倒されるザッファルト。 よっしゃー、後1匹! でも、さすがのガウリイも、今ので力を使い果たしたのか、地面に片膝を付いている。 う〜ん、情けない‥‥って、しょーがないか。 もう随分長い時間、戦いづめだもんね。 でも、あれほど増殖してたザッファルトも、後1匹を残すのみ! よっしゃ、最後はあたしの呪文で決めてやるわ! 「闇よ 集いて我に従い 深遠と成り‥‥」 ブラスト・アッシュの呪文を詠唱し始めた途端、凄まじいめまいがあたしを襲った。 膝に力が入らず、思わずその場に座り込む。 ‥‥なに、これ。 そう思う間も、あたしの視界はグラグラと揺れ続け‥‥呪文を唱えるどころか、立つ事もままならない。 ひょっとして、これって‥‥魔力を使い果たした? そー言えば、ドラスレ2発も撃ってるし、その後、ブラスト・アッシュを何回使ってるか‥‥数えらんないくらいだし。 そりゃー、魔力も使い果たすわな。 なんて、感心してる場合じゃなーいっ!! 残ってるザッファルトは、たったの1匹なのに、あたしは魔力を使い果たして地面にへたり込んでるし。 アメリアも座り込んで、動ける状態じゃない。 と言うか、動けたとしても、ヴィスファランクが使えないんじゃ、戦力にならないし。 ゼルガディスも同じく、アストラル・ヴァインを使える状態じゃない以上、戦力にはならない。 ガウリイは‥‥さっきまで片膝ついてたけど、今はなんとかかんとか立ち上がっている。 でも、剣を杖代わりにしてやっと立っている状態だ。 ‥‥あと1匹。後1匹だってのに、それを倒せる人間が居ないっ! 『ククククク‥‥どうやら、動けないようだな。 随分と我を倒してくれたが‥‥結局は我の勝ちだ。 死ぬがいい!』 勝ち誇ったザッファルトが、あたしに攻撃を仕掛ける。 目の前に迫り来る、槍状の物体! よけないと‥‥なのに、手も足も思うように動いてくんない! 避けられない‥‥もうだめっ!! そう思った瞬間。 剣を杖に、やっと立っていたガウリイがザッファルトに襲い掛かった! ザシュ! 『な‥‥なにっ!?』 一刀の元に切り捨てる! だが‥‥グニョリ‥‥ その途端に、2つに分裂するザッファルト! うにゃああ! 今更、分裂するなーっ!! 2つに分裂したザッファルトが攻撃態勢に移る、その前に。 ガウリイはたった今振り切った剣を横に一閃した! ズザシュッ!! 2匹まとめて、切り倒す! キシャァァァ‥‥ きしんだよーな悲鳴を上げつつ、最後のザッファルトはチリと化したのだった。 ‥‥これで終わったのだろうか。 あたしの疑問に答えるように、 「はあ〜っ、疲れたーっ!!」 そう言うなり、地面に大の字になって寝ころぶガウリイ。 ガウリイが緊張を解いたって事は、本当に終わったって事よね。 そう思った途端、全身から力が抜けて立っていらんなくなり、あたしもまた、地面に四肢を投げ出し、寝転がったのだった。 「みんな、大丈夫〜?」 一応、確認のために声を掛けると。 「何とか‥‥大丈夫ですぅ〜」 「ああ、生きてるぞ」 アメリアとゼルガディスから返事が返って来るけど‥‥ガウリイの返事はない。 ‥‥何で? さっき、ひっくり返ったけど‥‥まさか、何かあったとかっ!! 「ガウリイ‥‥ガウリイ! 返事しなさいよ、ガウリイ!」 何とか起きあがってガウリイの元へ行こうと思うけど‥‥どーしても立ち上がれない。 く、くっそう、この根性なしの身体! 動け〜〜!! あたしがジタバタやってると。 「リナさーん、ガウリイさん、寝ちゃってるみたいですー」 アメリアののんびりとした声が聞こえて来た。 へ? 寝てる? な、なんだ寝てたのか。人騒がせな‥‥ ま、気持ちは分からんでもない。 あいつも随分頑張ったんだから。少し寝かせてやるか。 ‥‥って、ダメだ。あたしも起きてらんない。 「あたしも寝るわ。悪いけど、ゼル、見張りよろしくね」 「私も、そうさせてもらいます。おやすみなさ〜い‥‥」 「あ、こら、キサマラ! 勝手に決めるな!」 ゼルガディスの怒鳴り声を、あたしは夢うつつで聞いたのだった。 『なんとかザッファルトとの戦いを終わらせたあたし達。 ああ、こんなに苦戦するとは思わなかったわ。 でも‥‥まだ後始末が残ってるのよねえ。 次回、「欲望の行き着く先12」読んでくんないと、ま〜た暴れちゃうぞ!』 |
26357 | 欲望の行き着く先 改訂版12 | 龍崎星海 URL | 2003/6/26 22:59:30 |
記事番号26263へのコメント 『あたし、リナ=インバース。カリメテの町で魔族退治を依頼されたあたし達。 無事、魔族も退治した事だし。とっとと町へ戻るとしますか!』 「んー、よく寝た!」 1時間ほど寝て、あたし達が起きた時には、もう日が傾いていた。 「全く‥‥人に見張りさせといて、自分達だけ気持ちよさそーに寝やがって‥‥ 俺だって、疲れてるんだぞ‥‥ブツブツブツ」 ゼルガディスがブツブツ文句を言っている。 あやや、機嫌損ねちゃったか。 「はは、ごめんごめん、ゼル。それよか、町へ戻ろっか。 町長さんの墓は、町の人にでも作ってもらえばいーしさ」 「そうですね。どうせ町の人に事情を説明しないといけませんし」 う〜ん、事情説明‥‥ねえ。 「でも、町長が魔族と手を組んで、私腹を肥やしていたなんて、言った所で町の人は信じないんじゃないの?」 何しろ、証拠なんてないからねー。 「ええと、それは‥‥」 「そんなの、適当にごまかしとけばいーだろーが。 それより、俺は疲れてるんだ。町へ戻るぞ!」 ゼルガディスが珍しくごねだした。 「それもそーね。お腹も空いたし。 早いトコ、戻りましょ!」 「賛成っ!!」 あたしの提案に、みんなすぐに同調し、あたし達は揃って山を降りたのだった。 町へ戻り、宿屋に付くと、そこではおばちゃんが待っていた。 「あんた達‥‥よかった、無事だったんだね!」 そっか、心配しててくれたんだ。 「ん、ありがと。そーだ、山に居たやつ、やっつけたから、もー大丈夫よ。 みんなにそう伝えてくんない?」 「え‥‥ほ、本当なのかい!?」 「うん。まー町長さんとその娘さんが殺されちゃったけど‥‥ きっちし退治したから、もう大丈夫よ」 「え‥‥町長さんとレミールちゃんが‥‥ わ、わかったよ。ちょっと待っててくれるかい?」 おばちゃんはそう言って、宿の外へと飛び出して行った。 やれやれ、ちょっと待ってて、って言ってたけど‥‥あの様子じゃ、しばらく帰って来ないわねえ。 「リナさん‥‥いーんですか、町長さんの事を言わなくて」 「あ? いーのよ。何もわざわざ事を荒立てる必要もないし。 生きてたら、きっちし責任取らせるんだけど、死んじゃったんじゃ‥‥しょーがないじゃない」 「そりゃ、そーですが‥‥」 「あの‥‥今の話は本当なのかい?」 そこへ厨房から現れたおじちゃんが、あたしに問いかけた。 おばちゃんの旦那さんかな? 初めてみたわね。 「うん、本当よ。ちょーっと苦戦しちゃったけど」 「あれがちょっとか?」 「うっさいよ、ガウリイ。いーじゃないの、ちゃんと倒したんだから!」 「‥‥そうか、ありがとよ。お礼に食事奢るから、好きなだけ食べてきな!」 「え‥‥ホント? ありがと、おじちゃーんっ!!」 ああ、やっぱしいー事すると、気持ちがいーわねえ。 少し待ってると、おじちゃんは山のように料理を作ってくれた。 「うわー、いっただっきまーす!」 「ハグハグハグハグ!」 「ああ、ガウリイさん、いただきますぐらい言ったらどーなんですか!」 「ほっとけ、アメリア。今声を掛けたって、無駄だ」 ゼルガディスの言う通り、ガウリイもあたしも、アメリアの言う事なんて聞いちゃいなかった。 だってだって、お腹空いてたんだもん! バクバク、ガツガツ、モグモグ! 次から次へと出て来る料理を、次から次へと平らげて行くあたし達。 ゼルガディスもアメリアも、自分達の分だけ確保すると別のテーブルに行っちゃったけど‥‥そんなのどーでもいーわっ! 「ハグハグハグ!」 「ガツガツガツ!」 あたし達はただひたすら、出された料理を平らげて行った。 しばらくして。 「あー‥‥お腹一杯。もー食べらんない」 「オレもー‥‥」 あたし達の食事は終わりを告げたのだった。 「全く‥‥お前らときたら、相変わらずだな」 「ホントに‥‥お2人の食べる姿を見てるだけで、お腹が一杯になりますよ」 2人して呆れてくれるけど‥‥うっさいよ、ゼル、アメリア! 「それより、あんた達はこれからどーすんのよ」 「俺は明日、この町を発つ。 また、俺の身体を戻す方法を探しに行くさ」 「私はお城へ戻ります。 隣町へ残して来たみさなんの事も気になりますし!」 「あ、アメリアはこの町に残らなきゃダメよ」 アメリアにだけ、そう言ってやると。 「えええーっ! どーしてですか、リナさん! どーしてゼルガディスさんは良くって、私はダメなのか、納得出来ません! 説明してください、リナさんっ!!」 案の定、拳を握りしめて、力説するアメリア。 あんた‥‥あんな戦いの後だってのに、元気ねー。ま、いーけど。 「だって、この町の町長があんな殺され方したのよ。 その後始末が残ってるでしょーが」 次の町長さんを選ばなきゃいけないし。 ま、それは町の人がやるにしても、町長があんな殺され方をした、となると色々と面倒な事があんのよ。 そーゆーのを通りすがりの旅人であるあたしがやったりすると‥‥そりゃもう、死ぬほどメンドい事になるのよねー。 その点、この国の姫であるアメリアがやったら、スムーズに運ぶのは間違いないもん。 ‥‥言っとくけど、厄介事をアメリアに押しつけた訳じゃないからね! あくまでも効率の問題なんですからね! そこんところ、間違えないよーに! 「そんなあ‥‥仕方ない‥‥分かりました、私、ここに残りますー」 ブツブツ言いながらも、了承するアメリア。 うん、素直でよろしい。 「ま、隣町に居るお付きの人には、あたしから言っといてあげるから、安心なさい。 ついでに、隣町の人にもう街道は安全だって知らせといてあげるから。 ‥‥あー、眠い。あたし、もう眠るからねー」 お腹一杯になったせいか、もう目を開けてらんないぐらいに眠い。 「え? リナさん、傷の手当はしないんですか?」 「あ? あー‥‥こんなの、明日でいーわ」 そりゃ傷だらけだけど、大した傷じゃないし。 そんな事より、今は一刻も早く寝たい。 部屋に戻るべく、あたしが立ち上がると、 「俺もこれで眠らせてもらう。 明日の朝は勝手に出て行くから、見送りはいらんぞ」 ゼルガディスも立ち上がると、それだけ言い残すとさっさと自分の部屋へ戻ってしまう。 全く‥‥あいつも相変わらずなんだから。 「あ、それじゃ私も、失礼させてもらいますね。 ってリナさん、そー言えば後金の金貨1000枚、もらいに行かないんですか?」 アメリアが自分の部屋へ行きかけて、思い出したらしくあたしに聞いてきた。 あー‥‥金貨。そー言えば取りに‥‥ ダメだ。眠すぎる。 「あー‥‥今日は眠いからもういいわ。 明日にでももらいに行くわよ」 お金は逃げないしね。 「えー、でも、町長さんは殺されちゃってるのに、貰う気ですか?」 「そんなの、執事にでももらうわよ。 ちゃんと契約書もあるんだから、拒否はできないわ。じゃ、おやすみー」 あたしは自分の部屋へ戻ると、その晩は夢も見ずにぐっすり眠った。 翌朝。 朝食が済んだ後で、町の人達と話し合いをしているアメリアを残して、あたしとガウリイは町長の家へと向かった。 それにしても、町の雰囲気がたったの一晩でずいぶんと変わったわねえ。 昨日までは町全体を薄く恐怖が覆っていたのに、今朝はどこの家の玄関先でも、住人達が立ち話をしてるし、あちこちで子供達が走り回ってるし。 うん、やっぱり町ってのはこーでなくっちゃね。 やがて町長の家に付いたあたし達は、玄関のドアを叩いた。 ドンドン! 「すみませーん。契約した魔族を倒したので、後金をもらいに来たんですが」 しかし、いくらドアを叩いても、いくら大声を出しても、執事は出てこなかった。 「どーしたのかしら」 「なあ、リナ。この家、変だぞ。人の気配が全くないんだ」 へ? 人の気配がない? ンなアホな‥‥でも、ガウリイがそう言うんなら、間違いないでしょーし。 ‥‥じゃ、執事も居ない‥‥って事? ‥‥なんだろう。すっごくイヤな予感がする。 あたしは、思い切ってドアを引っ張ってみた。 すると、ドアはいともあっさりと開いた。 鍵が掛かってなかったみたいね。 う〜ん、これはひょっとして‥‥何かあったのかしら‥‥ とにかく、中へ入って調べてみないと! 「すみませ〜ん、失礼しま〜す」 誰も居ないと分かってはいるけど、一応声を掛けながら中へ入る。 家の中は、ガラーンとしていた。 「うーん、本当に誰も居ないみたいね」 でも。賊が入った‥‥って感じじゃないわね。 どちらかと言うと‥‥うん、この感じは夜逃げね。 夜逃げ? ‥‥‥‥ま、ましゃか! 「ガウリイ! お金探して!」 「へ? リ、リナ、いきなり何言いだすんだよ。 他人の家で、金探すなんて、立派な泥棒だぞ!」 「いーから! 早くっ!!」 「お、おう」 ぐずっていたガウリイも、あたしの剣幕に押されたのか、家の中を探し始めた。 だが。2人掛かりで家中を探してみたものの、家のどこにも金貨はおろか、銅貨一枚も見つけだす事はできなかった。 それだけではない。家の中にあった物を持ち出したらしき跡まであった。 特に、執事の部屋とおぼしき部屋には服が散乱し、慌てて逃げ出した様子がうかがえた。 「や‥‥やられた‥‥」 へたり込むあたしに、ガウリイが駆け寄って来る。 「お、おい、リナ! どーしたんだ! どっか痛いのか? それとも、気持ちが悪いのか?」 昨日の戦闘の後だからだろうか、あたしの体調を心配するガウリイ。 「うう‥‥そんなんじゃないやい‥‥ ぐっぞう‥‥執事のやつ、ゆーべのうちにこの家の有り金と金目の物を持てるだけ持ってドロンしやがった‥‥ あたしの、あたしの金貨1000枚があ!」 あああ‥‥うまく行ったらオリハルコンぐらいは残ってるかと思ったら‥‥それもない‥‥ 「こんな事なら‥‥こんな事なら、ゆーべのうちに金取りに来ればよかったあ!」 ああ、あたしのバカ! 眠気なんかに負けるなんてえええっ!! ‥‥後悔先に立たずとはよく言ったもんだわ‥‥ ガックリ落ち込むあたしの頭を、 「ああ、よしよし。ま、とりあえず前金の金貨1000枚はもらってるんだから、それでいーじゃないか」 ガウリイが優しくなでてくれる。 あんた‥‥それ、慰めてるつもりなの? そんなの慰めになんないわよっ!! ってか、幼稚園児じゃあるまいし、ンな物で慰められるかーいっ!! ‥‥でも。ガウリイに優しくなでてもらっているうちに、段々落ち着いて来るから‥‥不思議よね。 「‥‥こーしててもしょーがないわ。 次の町へ行きましょ」 こーして座ってたからって、お金が出て来る訳じゃなし。 それに、隣町で気をもんでるハズのアメリアのお付きの人達にアメリアの事を知らせてあげなきゃいけないし。 隣町の人達を安心させてあげなきゃいけないし。 「うん、それにうまく行ったら、隣町で報奨金でも出てるかもしんないし、ね。 って事で、ガウリイ。アメリアに挨拶したら、この町を出るわよ!」 「‥‥ったく、お前さんってヤツは‥‥でも、リナらしいな。 よし、じゃすぐ行くか?」 「もちろんよ!」 ぐずぐずしてたら、隣町へ着く前に日が暮れちゃうもんね! あたし達は1度宿へ戻ると、忙しそーにしていたアメリアに声を掛けた。 「じゃ、あたし達、もう行くから!」 「ええ! もう行っちゃうんですか!?」 「うん、後よろしくねー!」 「ちょっと、リナさん! やる事が山積みなんですよ、少しくらい手伝ってくださいよー!」 アメリアが悲鳴上げるけど‥‥じょーだんじゃないわ、だ〜れが手伝うもんですか! 役人を相手にするなんて、メンドい事、したくないのよ、あたしは! 「もう旅立つのかい? じゃ、これ持っていきなよ!」 出て行こうとするあたし達を、めざとく見つけたおばちゃんが差し出すお弁当を、ありがたく頂戴すると、あたし達はあわただしく町を後にしたのだった。 「やれやれ。何だか知らんが、最後に来てバタバタしたなあ」 ガウリイが頭をかきながら、ため息を付いた。 そりゃ‥‥そーよねえ。 「だーって。これ持ち出したのバレて取り上げられたら大変じゃないの」 そう言いながら、あたしは隠しポケットから色んな物を取り出して見せた。 「‥‥お前‥‥それ、どーしたんだよ!」 「フフン‥‥町長の家からパクって来てやった♪」 家中を探し回ったあの時に、残っていた物の中にかなりの値打ち物発見したのよねえ。 どうやら、執事はあまり目利きじゃなかったみたい。 まー、確かに今あたしの持ってる物は、一見すると大した値打ち物には見えないけど‥‥ 出るトコに出て売っぱらえば‥‥一財産になるわよぉ♪ ふふふ‥‥たーのしみねえ! 「さあ、頑張って金貨1000枚以上で売らなくっちゃ!」 「お前さんなあ‥‥それ、立派な泥棒だろーが!」 「あ、何言うかなあ、ガウリイ。 これは盗んだんじゃなくって、もらい損ねた後金の代わりにもらったのよ。 言わば、現物支給ってやつ? いや、差し押さえの方が正しいかな? どっちにしても、これはあたしがもらう権利があんのよ。 誰にも文句言わせないわ!」 そーよ。これは正当な理由であたしの物になったのよ! しばらくは口をポカンと開けて、呆れていたガウリイだったが。 「‥‥お前さんってヤツは‥‥全く‥‥‥‥」 そう言ったかと思うと、笑いながらあたしの頭をグシャグシャグシャ!と思いっきしかきまぜだした。 「ああ、何すんのよ! 髪の毛がグチャグチャになるじゃないの!」 「いや、お前さんってすごいヤツだな、と思ってさ」 「‥‥あんたねえ。それとあたしの頭をグチャグチャにする事と、どーゆー関係があんのよ! いーからやめなさいよっ!!」 「いーや、やめない♪」 あたしの制止も聞かず、みょ〜に楽しそーにあたしの頭をかきまぜるガウリイ。 グシャグシャグシャ! 「あああああ、やめなさいって言ってるでしょーがっ!!」 なんとかやめさせようとする物の‥‥何しろ、背丈が違う。 どーしてもやめさせられなくって、仕方なくガウリイの魔の手から逃げようとするあたし。 ところが。 「こら待て、逃げるなよ!」 ガウリイときたら、何を考えてるのか、あたしを追い掛け始めた。 だああ! 待てるもんですか! 逃げるあたし。 追う、ガウリイ。 いつの間にやら追い掛けっこへと発展してしまったけど‥‥ これはこれで楽しいから、いーか。 「へへーんだ。追いついてみなさいよっ!!」 後になって冷静に考えてみればそれはバカップルの姿に他ならなかったんだけど‥‥ その時はその事に全く気づかず、あたしはガウリイとの追い掛けっこを心底楽しんでいた。 「やーい、ガウリイののろま〜♪」 「待てよ、リナーっ!」 結局はそのまま隣町まで追い掛けっこを続けてしまい、思いっきり白い目で見られてしまったのは‥‥ 不覚だったわよねえ。 ‥‥ま、いーわ。旅の恥はかきすてって言うし。 ガウリイの方はどーせすぐに忘れるだろうし。 無かった事にしよっと。 追記 隣町で置いてけぼり食らったアメリアのお供の人達は、全く、これっぽっちもアメリアの事を心配していなかった。 ‥‥そーよねえ。アメリアはしょっちゅう家出‥‥じゃなかった、城出してるんだもん。 少しくらい消息不明になったからって、心配するはず、ないか。 さらに言うなら、隣町では今度の事件に関して、報奨金とかは出ていなかった。 どーやら、こちらから向こうへ行けなくても、あんまし困らないから、ってのが理由らしい。 ‥‥ちぇ‥‥世の中‥‥思い通りにはなんないわねえ‥‥ |
26358 | Re:欲望の行き着く先 改訂版後書き | 龍崎星海 URL | 2003/6/26 23:06:03 |
記事番号26357へのコメント はい、どうもこんばんは。龍崎です。 長い長いお話におつきあいいただき、ありがとうございました。 さて、この話の敵、ザッファルトですが元はドラクエだったりします。 いえ、ドラクエに出てくるんですよ。 攻撃すると分裂するヤツが。 で、それに全体魔法うっかりかけて、エライ目に遭いましてねえ。 それがザッファルト作った理由だったりします。 ところで、このザッファルト。人間型はしてませんが、中級魔族クラスの力は持ってます。 ただ、その力を人間の形を取る事につかわず、分裂増殖能力に使ったって事ですね。 見かけより実力重視したわけです。 普通魔族は上位に行くほど人間っぽい外見になりますが、必ずしもみんなそうとは限りませんし。 ま、そーゆーのもありかな、とか思いまして。 あ、そー言えば言うの忘れてましたが、この話、原作で言うとブラストソードは入手してるけど、その剣がブラストソードだと気づいてない時期に起こった事件、って設定です。 だからガウリイとリナは剣を探して旅をしてるんですね。 それでは、おつきあいいただき、ありがとうございました。 これにて失礼します。 |
26366 | お疲れ様でした | オロシ・ハイドラント | 2003/6/27 18:36:35 |
記事番号26358へのコメント こんばんはラントです。 ついに完結しましたね。 ほど良い量で、良質。 読みやすい文章が、どんどんストーリーに引き込んでくれました。 本当に、楽しませていただきました。 分裂するザナッファルトととの激しい戦い。 それにしても残虐で狡猾な魔族でしたねえ。 激闘の末の勝利。 だが、最大の敵は……執事! でも、無事お宝のようなものを見つけたようですね。 さすがリナ! >さて、この話の敵、ザッファルトですが元はドラクエだったりします。 >いえ、ドラクエに出てくるんですよ。 >攻撃すると分裂するヤツが。 そういえばいたような気がします。 少し、懐かしいですドラクエ。 >普通魔族は上位に行くほど人間っぽい外見になりますが、必ずしもみんなそうとは限りませんし。 >ま、そーゆーのもありかな、とか思いまして。 まあ、そうっすよね。 それでは本当にお疲れ様でした。 また会う日まで……。 |
26376 | ありがとうございます。 | 龍崎星海 URL | 2003/6/27 23:47:49 |
記事番号26366へのコメント どうもこんにちは。龍崎です。 >ほど良い量で、良質。 >読みやすい文章が、どんどんストーリーに引き込んでくれました。 >本当に、楽しませていただきました。 お読みいただき、ありがとうございます。 そう言っていただけると嬉しいです。 ドラクエ‥‥懐かしいですか? そういえば7が出てから少し経ちますからね。 1からは‥‥何年経ってるんでしょう(笑 それでは、お読みいただきありがとうございました。 これにて失礼します。 |