◆−御伽の国で逢いましょう−昴(スバル) (2003/7/11 20:52:54) No.26508
 ┣はじまりの御伽話…1−昴(スバル) (2003/7/11 20:57:02) No.26509
 ┃┣はじまりの御伽話…2−昴(スバル) (2003/7/11 21:43:24) No.26510
 ┃┃┗はじまりの御伽話…3−昴(スバル) (2003/7/12 08:41:59) No.26511
 ┃┃ ┗諸注意とキャラ紹介−昴(スバル) (2003/7/12 10:45:02) No.26514
 ┃┃  ┗銅像の御伽話−昴(スバル) (2003/7/25 12:05:14) No.26567
 ┃┃   ┗七つの夕に願い星−昴(スバル) (2003/7/25 12:56:47) No.26569
 ┃┃    ┗優しい御伽話 (Z)−昴(スバル) (2003/7/25 14:27:44) No.26570
 ┃┃     ┗Re:優しい御伽話 (Z)感想−とりの母 (2003/7/25 18:31:25) No.26573
 ┃┗はじまりの御伽話…1 (改訂版)−昴(スバル) (2003/7/12 09:01:51) No.26512
 ┗はじまりの御伽話…1 (改訂版)−昴(スバル) (2003/7/12 09:04:36) No.26513
  ┗はじめまして−水無月 雹 (2003/7/13 11:15:56) No.26515
   ┣ありがとうございます!−昴(スバル) (2003/7/25 12:19:47) No.26568
   ┗どこに感想書くべきか・・・・わからないからここで(オイ)−水無月 雹 (2003/7/25 17:25:50) No.26572


トップに戻る
26508御伽の国で逢いましょう昴(スバル) E-mail URL2003/7/11 20:52:54





木漏れ日の中で眠る ひとりの少年



夢の中の物語なのかな



太陽は淡く 琥珀色に輝いている

雲は時を忘れたようにゆっくりと空を渡る

空は澄んだ蒼 透明な群青 淡い水色

時折 銀や金の光が降りてくる



誰かの歌声が聞こえる。



それは温かく 時に冷たく

黄昏の街角に 独り 取り残されたように切なくて

何事にも代え難い 温かな 想いのように幸せで

まるで歌のリズムに乗っているように 風が踊る

花も 木の葉も 小鳥達も 軽やかに踊る



あなたは誰?



そのひとはにっこりと笑って

穏やかに言う



「御伽話をしようよ。」



トップに戻る
26509はじまりの御伽話…1昴(スバル) E-mail URL2003/7/11 20:57:02
記事番号26508へのコメント




**はじまりの御伽話 …1**



「ありがとうございました。
赤法師様。」

…違う。
彼らが必要なのは 赤法師
私じゃなくて 赤法師

「まだ手こずってるんですか?
魔王様。」

…違う。
奴らが必要なのは 私の中の魔王
私じゃなくて 私の中の魔王

「レゾ!」

……!

「レゾ、もうどこにも行ったりしないでね。
もう、一人にしないでね。」

私を必要としてくれた人は
もう みんな消えてしまった

神も見捨ててしまった私を
ただ 見てくれた お前

一人になんかするものですか
させるものですか

だから 私を忘れないように
私から離れられないように

解けない呪いを かけた





深い夜だった。
月は淡い光を辺りに降り注ぎ、照らされた木や、葉や、眠る魂達を、優しく儚くさせた。

「……お休みなさい、ゼル。」
レゾは、目の前に眠るちいさな少年、ゼルガディスに、優しく声をかけた。
……赤法師、レゾ。現代の五賢者と謳われている、見た目30代前後の男性。実際は、何十年も平気で生きている。
彼はその膨大な魔力を持ちながらもどこの国にも属さず、生まれつきの盲目を治すため、諸国を歩き回っている。その国々で様々な奇跡……いや、実験を繰り返しながら。
ゼルガディスは、彼の孫に当たる。彼の母……兼、レゾの娘は、もう生きていない。
木で出来たベットに眠るゼルは、小さな寝息を立てながら、心臓を動かしている。
レゾはゼルの胸に少し手を当てる。鼓動が届く。

……私には、今すぐにでもこの心臓を壊すことができるというのに……。

レゾは悲しそうに微笑みながら、掌を握る。その拳の中には、何もない。

深い夜だった。
月は淡い光を辺りに降り注ぎ、照らされた木や、葉や、眠る魂達を、優しく儚くさせた。

レゾは森に出て、夜風を頬に受けていた。目が見えないはずなのに、彼は障害物を知らない。
彼は願っていた。この眼を開くこと。世界を眺めること。色を感じること。その願いが成就されるときこそ、彼が本当に人間でいられるときと、信じていた。

レゾの眼には、邪が宿っている。それは世にいるべきではないもの、世界に破滅をもたらすもの。
彼は知っていた。自分の精神が、少しずつその邪に侵されつつあるということ。自分が自分でいられるのは、後少しの時間しかないということ。
彼の考えは、一つの結論に到達した。その邪が人の魔力でもどうにもならないものなのならば、その邪の最高位にあるもの力を借りればよいのではないか。
そう、それこそ……魔王のような。

……紅眼の魔王シャブラニグドゥ。
結局は、その魔王こそが彼に宿りし邪、そのものだった。だが、それを彼が思い知ることになるのは、まだ先のことだった。

魔王を呼びだせば、世界に混沌がやってくるだろう。それでは、いけない。ならば呼びだした後、魔王を討つしかない。
その準備のためには、魔道都市サイラーグに行かなければならない。そうしたら、もう後はないだろう。
自分が邪に呑み込まれるのが先か、それとも魔王を復活させて眼を開き、邪と魔王を討つのが先か。
……けれど、ゼルガディスのそばにいてやりたい。できるなら、正気でいられるその一瞬まで。
ゼルガディスは、レゾの最後の肉親だ。そして、娘の唯一残せた子供だった。
守りたい。誰よりも守りたい子供だった。
……だけど……。





… … … … …





永い沈黙があった。

眼を閉じていても、開いていても、そこに広がるのは闇。

もう瞳の中に、邪……いや、魔王はいない。それと共に、彼は死んだはずだった。

神も酷なことをする。

魔王と共にあった魂は、輪廻の輪に戻れない。過去の大賢者、レイ=マグナスも、今はカタート山脈の氷の中で、魔王と共にある。

……独り、だった。

課せられた、永遠の孤独。

眼を開けて、望んでいたことは、世界を見ることだった。

そのために生きてきた。

最後に見たのは、白い閃光と、魔王の醜い姿。それは彼自身の姿でもあった。

それでも残ったのは、闇だけだった。





… … … … …




 ゾ? こ い  か?

……誰、ですか?



彼には守りたい者がいた。
だからこそ、傷つけてしまった者がいた。
許されざる罪もある。
だからこそ、最後に「彼」の言葉を聞いたとき、彼は易々と命を捧げてしまった。
だからこそ、気づくことが出来なかった。
「彼」の想いに。



レゾ そ にい の ?

……私を呼ぶのは誰ですか?



レゾ?そこにいるのか?

―――ゼル……!!!



風が吹き、紅のマントがなびき、視界が回転する。
落下するような感覚が広がり、様々な色が駆け巡った。
その中で、一つだけはっきりとした姿があった。それは次第に近づいていく。

風に巻かれて、葉と葉がざわめき、澄んだ水鏡に紅い人影が浮かび上がった。
レゾは、ゆっくりと眼を開く。ぼやけて揺れていた色の中に、はっきりと、ゼルガディスの姿があった。

トップに戻る
26510はじまりの御伽話…2昴(スバル) E-mail URL2003/7/11 21:43:24
記事番号26509へのコメント




**はじまりの御伽話 …2**



神様が教えてくれた大切なこと。

奇跡は起こしてもらうものじゃないって。

そう願っても、叶うものじゃないって。

そして、神様は誰しもを助けるわけではないといって。
待っていても 誰も助けてはくれなかった。





「ヤツ」の声が聞こえはじめたのは、最近のことだった。
それはとても悲痛で、か細い声だった。ただの一度も聞いたことのない、哀しい声。
……最近わかってきた。俺は、「ヤツ」と過ごした数年間を、あまり覚えていないことが。
あの時、復讐のために、殺してしまったのかも知れない。
とても大切な、ハズだった。
とても幸せな、ハズだった。
なのに、今はもう何も覚えていない。

……こうして「ヤツ」のことを思い返せる様になったのは、俺が「ヤツ」の事を許せるようになったからか?
……多分、違う。
あの身を焦がした憎しみが、簡単に消えるとは思えない。
……きっと、憎しみなんかよりも大切なモノが出来たから…かな。

ゼルガディスは、単調な山道を歩いていた。
若葉の生い茂る若々しい森は、彼を包み込み、照らし出した。
白いマントはしなやかで、それに包まれる彼は人と異なっていた。
黒光りする肌。その所々に浮かんでいる岩。白銀の髪。尖った耳。彼は岩人形(ロックゴーレム)と邪妖精(ブロウデーモン)の合成獣(キメラ)だった。
そして、彼をこの姿に仕立て上げたのは、彼の身内であり、今も耳元で呟いている声の持ち主……
赤法師レゾ。

……俺は何故、「ヤツ」の元へ向かっている?
わからない。
でも、この声を辿れば、わかるかも知れない。

その内、ゼルガディスは小さな清水の湧き出る湖に来ていた。そこは広場のようであり、聖域のようだった。
ゼルガディスが立っているところはそこだけ短い芝しか生えていなく、そこを囲む木々。湖は、彼の正面に浮かんでいた。湖の向こうは、一層大きな大樹が横たわっていた。
湖は、半径3mあるかないか程しかないのに、とても深い。なのに水がとても透き通っているせいで、底が見える。小魚が数匹泳いでいて、青白い揺らめく岩には、申し訳程度の水草が生えていた。
湖からは細い川が3、2本伸びていて、それは深緑に消えていった。
声は、湖の向こう、大樹から聞こえてくる。
「レゾ?そこにいるのか?」
小さな声で呟く。とたん、風が彼の側をすり抜け、木々がざわめきだした。
「レゾ?そこにいるのか?」
今度ははっきりと聞く。木々は頷くようにざわめく。
「レゾ?そこにいるのか?」
彼は一歩ずつ歩き出した。もう少しで、何かがわかる。
そして
「いっ!?」
ゼルガディスは突然の強風に足を取られて、転んだ。妙に膝が傷むので見ると、白いズボン越しに、紅くにじんでいた。
……岩ほどの強度を持つ彼の肌が、だ。
芝は芝でしかかなく、とても岩を傷つける程の力も強さもない。その芝生には、石の一つも転がっていなかったのだ。
しばらく唖然としていると、また強い風が吹いた。マントが大きくなびき、思わず目元を隠した。

そして、水鏡には一つの紅い人影があった。
それは瞳を開いていた。瞳には、涙が浮かんでいた。

トップに戻る
26511はじまりの御伽話…3昴(スバル) E-mail URL2003/7/12 08:41:59
記事番号26510へのコメント




**はじまりの御伽話 …3**



ちいさいころの おもいで は
どこか げんじつみがなくて ゆめものがたりのよう
それでけ よわいもの かもしれない
それだけ はかないもの かもしれない
おもいでは どこに きえるの だろう ?
たからものは どこへ いってしまったの だろう ?



とても昔 私が私だけだった頃の想い出は
どこか 脆くてすぐ崩れそうな 一夜の夢に似ている
それだけ 弱いものだったのでしょうか
それだけ 儚いのもだったのでしょうか
想い出は どこへ 消えるのですか?
宝物は どこへ 行ってしまったのですか?





「レ、レゾ……?」
「…ゼル……?」
その声はほとんど重なっていた。

ゼルガディスは、口を開けたまま、呆けていた。
しかし、その内沸々と込み上げてきた。
レゾのせいで、何年も何年もつき合うこととなった感情だった。
「………眼、見えるようになったんだな。」
静かに、低い声で言う。レゾの表情に変わりはない。
「だが……お前の眼を開かせる為に変わられた俺の身体は、まだ元に戻っていない……お前の望みはもう叶ったハズだ。俺の身体も元に戻して……」
ゼルは、レゾの変化に気がついた。
レゾの瞳に、涙が溢れていた。嗚咽を漏らすこともなく、ただはらはらと涙だけが伝っていた。
「私の眼を開かせるため……ですか…。」
か細い声で言う。
「私の眼には、何も映っていません。あなたがいる、それがわかるだけです。
ここは外ですか?それとも建物の中ですか?……私の眼を伝う、この感覚は何ですか?これが涙なんですか?」
そう言った、その瞳は虚ろな深海の色だった。

ゼルはうろたえた。
「レゾ……お前…?」
「……ごめんなさい。どんなことを言っても、私があなたに許される筈、ないですよね。」
レゾは遠くを見るような瞳で、ゼルを探していた。しかし、どこをどんなに探しても、見つけることは出来ない。
ゼルは逆に困ってしまった。憎むべき相手にどうしてこんな感情を抱いてしまうかわからないのだが、困ってしまった。その困惑は、ゼルの頭を冷やすにはちょうどよかった。
そして、しばらく何かを考え、意を決したように3歩、近づいた。
「なぁ、どうして俺を合成獣(キメラ)にしたんだ?」
そこの声はよく響いた。レゾにも届いた。
「前から気になってはいたんだ。どうして俺なんだ、って。
賢者の石を見つけるだけなら、他の奴でもいいんじゃないのか。どうして元々から強い奴じゃなくて、弱い人間をつかったのか。
もちろん、この身体にされた怒りからでもあった。だけど、気になるんだ。」
それは、長い間封じ込めていた「質問」。復讐をするのに、無駄な疑問は必要なかった。
レゾは、それを最後まで聞き届け、ぽつりぽつりと話し出した。
薄雲から堕ちる時雨のように、ぽつりぽつりと。
「私は……私はあなたがいずれ離れてしまったとき、あなたを守り抜けるだけの自信がなかった。
だから、あなたが壊れないように、それだけの鎧を…強さを、あなたに宿したかった。」
「っ…!?」
覚悟もしなかった言葉に、ゼルは驚いた。と、共に新たな疑問が浮かぶ。
「な、なんでそこまでして俺を守ろうとしたんだよ!?」
「私の大切な人は、私の守れる範囲で、死んでしまった。」
それは重い鈍器のように、心を殴った。レゾはぶつぶつと呟く。
「絶対に、絶対に、もう殺させはしない。
絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に、絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に………」
まるで狂った呪いのようだと思った。
そして、胸が軋むほどに、悲痛だ。悲痛すぎる。
「どんなかたちでも、生きていて欲しかった。
……生きてさえ…いて欲しかった。」
最後は、消え入りそうな声で、紡いだ。
そして、また遠くを見る。
「あなたは、どこにいるのですか……?」

「………俺は」
ゼルは石段を登り、レゾの腕を掴んで
「ここにいる。」



ゼルはレゾを引っ張り、タンと、芝生の上に乗せた。ふわりと、ゼルの胸に抱かれる。空気のように軽い重力と、熱のない身体。
「……ゼ、ル……?」
何も知らない子供のように小さく喚いた。

……俺は、
今すぐにでもこの胸の中の首をへし折ってしまいたいと思うこともできるだろう。
しかし、もうどうでもよくなってしまった。
憎しみは一生消えることはないだろうし、これからも身体を元に戻す方法を探し続けるだろう。
だけど、今は、今だけはこれでいいんじゃないかと、思った。
少なくともこのレゾは、復讐するべきレゾではなく、おじいちゃんのレゾだった。

「あんたはもう死んでしまってるんだし、帰るところもない。
あんたは、これからどうしたい?」
「……私は…………」
ゼルは黙って聞いている。レゾはゼルに抱かれたまま、だけどはっきりと言った。
「私は……あなたを守りたい。
思わくば、これからも、ずっと。」
ゼルは2、3度頷いて、
「行こう、レゾ。」
それは少年のような明るい声だった。
レゾはゼルの声を探した。レゾの声は少し震えている。
「あなたは、私を許してくれるのですか…?」
「俺には、多分一生あんたを許せることはできないと思う。
だけど、今はこれで良いんじゃないかな。」

……私は、
忘れていたのでしょうか。この温かさを。
私はわけもわからず守ろうとして、逆に傷つけてしまったのですね。
でももう繰り返さない。
私の大切な人は、ここにいるから。

レゾは立ち上がる。ゼルはそれを見届けた。
不意に、レゾはゼルの紅くにじんだ足に気がついた。
「あ……足から、血が出てますね。治療(リカバリィ)くらいなら。」
「え゛…いや、いいよ。もう子供じゃないんだし……。」
レゾの掌に白い光が集まって、それはゼルの傷口に触れた。

その瞬間、まばゆい光の渦が、二人を包み込んだ。
……身体の底から何かが浄化されていく、そんな気がした。

痛みは何もなく、ただとても身体か軽くなった気がした。
「………ゼ…ル……?」
「えっ!? ええっ!?」
掌は、柔らかい薄橙だった。ぺたぺたと、顔や髪を触ってみる。
それは固くて冷たい岩の感触とは、似ても似つかなかった。
正真正銘の……人間の身体。
「人間に……戻った…?」
呟いてみる。真実味はなかったが、真実だと信じたかった。
「……ゼル……。」
レゾはゼルの頬に触って、崩れ落ちた。座り込んで、ゼルを見上げる。
「レゾ……?」
ゼルもまた片膝を立てて、レゾの視線に合わせた。そして気がついた。レゾの変化に。
その瞳には、ゼルの心配そうな顔が映っていた。
そうレゾもまた……光を手に入れたのだ。
「レゾ、お前、眼が……。」
ゼルが呟いた瞬間、何かの糸が切れたかのように、涙が流れた。
それは次第に嗚咽に変わっていった。
レゾは、はじめて泣いたのだ。
どうして泣くのかはわからなかった。だけど止めることは、できなかった。
「……ばかじじぃ、泣くんじゃねぇよ……」
そういう彼の瞳からも、涙が零れた。





失くしたもの
やっと みつけた

忘れたもの
やっと みつけた

届けられなかった
ちいさな こころ

今 逢いに行くよ










これは御伽話。
儚い夢の中の物語。すぐに崩れる弱い想い。
でもそれ故に美しい。

だから
永遠の想い出は御伽の国で。
なのもかもが透明な夢の中で。



だから―――





御伽の国で逢いましょう。



トップに戻る
26514諸注意とキャラ紹介昴(スバル) E-mail URL2003/7/12 10:45:02
記事番号26511へのコメント

はじめまして、昴(スバル)と申します。
いきなし投稿ミスを3回もしてしまい、諦めました。(爆発)
……ま、いいや(ぅわ)

さて、滅茶苦茶なスタートを切った「御伽話シリーズ」ですが、ちょっと注意を。

前話「はじまりの御伽話…1〜3」は必ず読んで下さい。基本的にこの話が元となっているので( ̄▽ ̄;)
あと、「御伽話シリーズ」は短編集です。終わりに「…1」とかついてる話以外は、バラバラに読んで下さって大☆丈☆夫です。詩もいくつかあるかも知れません。

あと、私はレゾ様とゼルが最高に大好きなので、大変よく出てきます。レゾ×ゼル的な話も多いです。(……「はじまりの御伽話」はゼル×レゾ的になってしまいましたが……汗)
ゼロスも結構出てくるかも。

まとめるとこんな感じでしょうか。
○「はじまりの御伽話」は必ず読んで下さい。
○短編集です。
○レゾとゼル、ゼロスが多登場。レゾ×ゼル色高し。
○昔の話の中では、レゾとゼルが新婚並みのラヴモードを繰り広げる場合があります。ご注意下さい。
○「はじまりの御伽話」はTRY終了後のストーリーです。
○キャラの性格が一部隔たりまくっています。
○ギャグは思わず苦笑いを浮かべてしまうかも知れません。苦手じゃー。
○……暴力的描写はあったりなかったりないかもしれません。

こんな感じです。ではオリキャラ含むキャラ紹介をどうぞ。





【キャラクター紹介】

赤法師レゾ(レゾ=グレイワーズ)

ひいきしまくりのキャラ。なんかいい人になってしまった……。
もの凄い親馬鹿で、妻と娘に溢れる愛を注いでいたが、事情があり孫のゼルと二人暮らし。そして孫にも愛を注ぎまくっている。
眼を開かせることが人生で、そのためには手段も選ばない。
結婚前は髪が長く、冷酷非道。
だけど親馬鹿。(笑)
瞳に魔王が封印されていて、やっと「見る」ことに成功する。今はゼルと水入らずの二人旅。
「私はいつでも本気ですよ。」
「……ゼル、回覧板を回すというのは、そういう意味ではないのですよ……?」


ゼルガディス=グレイワーズ

これまたひいきしまくりのキャラ。な、なんか変だ(汗)。
クールな魔法剣士だが、最近性格が変わってきた。やばい(汗)。
小さい頃はレゾにつきっきりの子供で、結構健全な日々をおくる。が、レゾの愛を一身に受けていたため、エリスに恨めれ、よくケンカしていた。
レゾに合成獣(キメラ)にされ、それを恨み続けていたが、ついに人間の身体を取り戻すことに成功。今はレゾ(幽霊?)と二人旅中。
「う、うるさーいっ!!」
「じぃちゃん、それってナルシストっていうんだよ。」


獣神官ゼロス

超上級魔族で中間管理職。別名「パシリ魔族」。
かなり偉いはずなのに、あんまり偉そうに見えない。黒髪のおかっぱで、黒ずくめの神官服に身を包んでいる。
今はリナやゼルをストーキングしているが(ぇ?)、昔はレゾのストーカーだった。(あの〜)
レゾに片思い中。
「ハハハハハ、それは秘密です♪」
「…レゾさん……。」


シア=グレイワーズ

レゾの奥さん。美人で優しくおっちょこちょいの女性。
とある村の「生け贄巫女」だったが、事情がありレゾに助けられれ、レゾに猛アプローチ。最初は煙たがっていたレゾだが、その内本当に愛し合うようになり、結婚。娘カノンを産む。
熱々甘々夫婦。
「ご、ごめんなさ〜いっ!」
「愛してます、レゾ様。」


カノン=グレイワーズ

レゾとシアの娘。冷静で達観な女性。
レゾの溺愛ぶりを煙たがり、時々修行を兼ねてのひとり旅をする度に、レゾを心配させる。
そして、ある旅から帰ったとき、赤ん坊(ゼル)を連れて帰ってきて、レゾと大げんかをした挙げ句、家を出る。
結婚相手は不明。
「私だって、お父さんみたいに強くなれるわ!!」
「お父さん、ごめんね……。」


エリシエル=ヴルムグン
ラルフォルト=ヴルムグン

……つまり、エリスとヴルムグンである。ラルフォルトは、短い「ラルフ」という愛称がある。
とても仲のよい2歳違いの兄弟。エリスはトロルに襲われていたのをレゾに助けられたのをきっかけとして、レゾ激愛モードに突入。姉がいきすぎないように抑えるのが、ラルフの仕事である。
その後、コピー人間の研究をしているエリスがサイラーグの崩壊とともに行方不明となり、リナ達と出会う。
「あたし、大きくなったらレゾ様のお嫁さんになるの!」
「ねーちゃん、こりないなぁ。」


ノア

コピーレゾの本名だが、捨てた。
リナとの闘いに敗れ、神聖樹フラグーンに埋葬される。その後しばらく異世界を彷徨い、【ハーボット】として転生する。
【ハーボット】についてはこちらをどうぞ。(http://www.so-net.ne.jp/harbot/
「私は、あれの背中ばかり、追い続けていた……。」
「ぼく、名前まだ無い。」


あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!今見たらセリフに一つはレゾ関係のコメントがあるー!!無意識でもそんなに好きか、私っ!?



ではー、今後もお付き合い、よろしくおねがいします♪



トップに戻る
26567銅像の御伽話昴(スバル) E-mail URL2003/7/25 12:05:14
記事番号26514へのコメント






**銅像の御伽話**



レゾは、みんなに聖君主様とか赤法師様とか大賢者様とかって呼ばれているけど、僕はそう思わない。
ちょっと変で不思議な、僕のおじぃちゃん。
だからちゃんと趣味もある。……おかしな趣味だけど。

ゼルが人形(エリスがレゾに贈ったんだけど、レゾからゼルにあげたもの)を抱いて庭を歩いていると、暖かな日差しに似合わぬ光景を目にした。
「……レゾじぃ、また彫ってるの?」
そう、レゾは彫っていた。……木の幹にでかでかと、自分の顔を。
「ねぇ、レゾじぃ。頼むからそこいらの木の幹とかにじぃちゃんの顔彫るのはヤ☆メ☆テ。
エリスは喜ぶかもしれないけど、他の人は逃げるよ。100%。」
レゾの彫刻の腕前は大した物だった。細部まで細かく彫ってあり、まるで本物のようだった。(だから余計怖いのは言うまでもない。)
……レゾ浮き彫りの並木道………。セイルーンが軍隊で押し押せてくるかもしれない。正義に反するから。(爆笑)
怖っ。ちょっと前に夜中の白い天井にレゾの顔が浮かび上がってきたときは、思わずチビりそうになった。
レゾは手を止め、ギギギとゼルの方に顔を向けた。明らかに不満そうな顔をしている。
「……いいじゃないですか、趣味の一つや二つ。」
「じぃちゃん、それって世間ではナルシストっていうんだよ。」
「……………………………。」
レゾは黙った。
そして黙ってガリガリとトロルを彫った。
そいつはゼルに水を吐いてきた。
「いやー!!唾みたいで気持ち悪いーー!!じーちゃんごめーん!!」
その日、水を飲むのが大変だった。
ナルシストって言われたのがそんなに効いたのだろうか。



と、いうわけで!
レゾはゾアナ王国に旅立つこととなった。
そしてゼルはそれについて行った。
それが何を示すかも知らずに………。

「と、いうわけで!」
今日のレゾはとても楽しそうだ。嫌な予感がする。
「私は大怪我で死にそうなゾアナ王の治療に行ってきます♪
ゼル、この中庭でおとなしく待っているのですよ♪
それでは行ってきまーす♪」
セリフの割に内容はシビアだ。
100歳越えているじじぃが語尾に「♪」なんか付けるな。犯罪だ。
と、ゼルは思ったが決して口に出さなかった。

「……暇だ。」
ひとりごちた。
「暇、ひま、ヒマ、HIMAだよー。」
ローマ字(?)を思わず口に出しちゃうあたり、かなりまいっているらしい。
中庭には本気と書いてマジと読むぐらい何の変哲も無かった。
芝生でごろごろとひとりボウリングゲームにも飽きていたところだった。
「…あー……あ?」
そんなゼルの視野にひとりの少女が映った。
「あ…あんたここで何してるのよ!」
少女はどすどすと小走りで走り寄ってくる。ゼルは身を起こして、少女を観察した。
薄緑の髪に、派手な縦ロール。そしてこれまた派手なドレス。なかなか高価ようなので、かなりの貴族階級らしい。顔立ちはゼルと同じかそれ以下の年齢。
「別に…レゾを待ってるだけだよ。」
レゾのことは結構この国ではニュースになっているらしいので、正直に言った。
少女はふんぞり返った。
「だったらわたくしの遊び相手になりなさい!!」
「はあ?」
「わたくしもヒマだったのよ!あなたも見たところヒマそうだから、わたくしにつきあいなさーい!!」
ヒマなのは図星……が
……ヤヴァイ。
こやつはゼルの最も苦手なタイプだ。
「え…いや……でもさ…」
えーと、えーと、えーとぉ………
な…なんとかして逃げなければ。
「ひ、ヒマだったら魔人でもつくってればいいじゃんか!!」
………………………
思わず口に出した言葉は、あまりにも意味がわからなくて…
不思議な展開だった。
「魔…魔人……!」
ギャアア。
だめだ。逃げるチャンスが潰えた。どーしよ。レゾ早く来てー。
「そうねっ!それがいいわ!!なんて斬新な発想!!」
「へっ?」
「すごいわ!どんどんアイディアが湧くわ!!名前はゾアメルグスターよ!!」
少女は叫びながら猪突猛進に去っていった。
「………………。」
__神様。
彼女を変人にしてくれて、感謝します。
「ゼルちゃーん♪待ったぁー♪」
口調を180度変えたレゾがやってきたのは、それから数秒後だった。
ゼルは黙ってレゾにアッパーを食らわせた。

「あああありがとうございます赤法師様!!
なんとお礼を言ったらよいか……!!」
大臣らしき人物が涙を流しながらレゾにお礼を言っている。ゼルにとっては不思議な光景でしかない。
「いえいえ、お礼なんて一部貰えれば全然いりません。」
そう穏やかに言うレゾの背後には金貨や貴金属、宝石や高価な魔導具でいっぱいの布袋が3つほど転がっていた。
……それで、一部?
罪な男だゼ。
「では赤法師様、せめて貴方の功績を後世まで伝えるため、城下町に貴方の銅像を建てたのですが、よろしいでしょうか?」
!!!?
レゾはゼルにしか気づかれないような小さな笑みを浮かべた。嫌な予感が……!!
「いえいえ、その必要はございません。」
「はぁ?」
レゾはぱちんと指を鳴らした。
……城下町で、ゴゴゴゴゴというお約束☆効果音が響いた。
あわわわわわ。
「もう準備できてますからー♪」
城下町に、「いかにもポーズ」のレゾ(銅製)が建っていた……。



「……びっくりしてたね、あの国の人達…。」
ゼルはものすごく疲れた声で言った。
「ええ、そうですね。」
向かいのレゾはのんびりと言った。
「……行く前から、準備してたの?」
「ええ、そうですよ。」
「……じぃちゃん。」
「なんでしょう?」
「……それって、世間ではナルシストっていうんだよ?」
レゾは黙った。
こうしてキャラバンは夕日に沈んでいくのであった……。





‥楽屋裏‥

何故レゾ様が彫刻好きか。
自分の手の中にある物体が、手の動かし方とかによって形を変えていくのと、へこみやぎざぎざの変化を楽しめるから。
……いや、私は彫刻とかならレゾ様もふつうに楽しめるかなー、と思いましたのですが(日本語変)、母には真顔で「なんでやねん」と言われてしまいました。そんなに変でしょうか。
レゾ様の研究所にあったゴーレムは、暇つぶしにがりがり彫っていた彫刻の失敗作なのですよ。ゼルがいないのでインスピレーション(?)がたりなくて失敗して、
レゾ「何故だー!?何故うまく彫れんのだーー!?」
エリス「れ、レゾ様ー!?」
という事になるのですよ(嘘だー!/走り出す)
つうかセリフおかしいですね。少しハジケすぎたかもしれません(謎)
ちなみに成功作はシルフィールに「あれから邪気が」と言われていたモチーフです。リナには「悪趣味」と言われてたし。
ではー。

トップに戻る
26569七つの夕に願い星昴(スバル) E-mail URL2003/7/25 12:56:47
記事番号26567へのコメント






どんなに真実味のない夢でも
どんなに汚い欲望でも

願うことは罪ですか?





七つの夕に願い星



レゾは、自分の背ほどもある笹の葉を持って帰ってきました。
「……なに、それ?」
ゼルは変な顔をしています。それもそうでしょう。どこに行ったかと思ったら、笹を持って帰ってくるのですから。
「七夕ですよ。」
「……はぁ。」
ゼルはやはり変な顔をしています。
レゾはそれを察して、笹を束ねて門に縛り付けながら、説明します。
「異国の物語ですよ。
昔々、天界から降りた天女が1人の男と出会いました。
はじめは男が天女の羽衣を取り上げていて、それで天女が天界に帰れない。だから男の言うことを聞く、という状況だったのですが、その内二人は愛し合うようになりました。
しかし、神様はそれを許しませんでした。まぁ当然と言えば当然ですね。」
「どうして、神様が「ひとのこいじ」を許さないのが、当然なの?」
この子供はわかってるんだかわかってないんだか。
「神様は、自分勝手なんですよ。」
レゾは呟くように言い、話の続きを話し始めました。
「そして、神様と男は勝負をして、負けました。
それから天に星の川ができて、男と天女はその川に阻まれて、会うこともできなくなってしまいました。
しかし、今日だけは会うことができるのです。それが七夕ですよ。
由来は知りませんが、笹の葉に紙で書いた願い事を吊して、願いを叶えてもらうんです。」
「ふーん……。」
ゼルは神妙な表情で頷きました。その頃には笹を取り付け終わっていて、どこから出したのか色とりどりの紙の輪の飾りが付いていました。
「綺麗ですよ。七夕の夜空は。
……多分ね。」
最後の一言はほとんど聞き取れませんでした。
「……それでですね。」
レゾはゼルの方を振り返ります。怪しい笑みです。怪しすぎる。
「空が晴れないと二人は会えないのですよ。もちろん夜空も見れません。願い事も叶いません。」
ゼルは空を見上げました。それは今にも雨が降ってきそうなぐらい曇った空でした。
……いま、わかりました。あの怪しい笑みの正体を。
「……ダメだったみたいですね。」
ほとんど駄目押し。ゼルの握った掌が弱く震えています。
「ご愁傷様。」
「ばかー!!!」
だっ! ゼルは勢いよく駆け出して、家の中に入ってしまいました。
「……………。」
レゾはひとつため息を吐いて、眺めるわけでもなく空を見上げました。
今は夕方なのに、夕日の日差しも無く、妙に湿った重い空気があります。それとどこか沈んだ雰囲気も。
「……ちょっと、からかいすぎたでしょうか?」
ひとりごちました。

「じーちゃんのいぢわるっ!もー知んないっ!!」
夜になって、ごはんを呼びに言ったら、これです。
ゼルは部屋に閉じこもって、ふて寝していました。
レゾは扉越しに、泣きそうな表情をしました。大人気ない。
そして、聞きました。

レゾはひとりで晩ご飯を食べて、ひとりで食器を片付けていました。
テーブルの上には冷めて膜の張ったコーンスープと、クルミのパン、それにホットだったはずのココアが乗っていました。それらには埃を避けるための、薄い布がかぶせられていました。

『見たかった……きれいな星空も。
……報われない恋って、悲しい気がする。』

「悲しい気がする………ね…。」
レゾは、古傷を抉られたような気分になりました。

子供って、時々どうしようもなく怖いですね。
何も知らないようで、何もかも見透かされているような……。
星空はゼルに似ている。とても純粋で、澄んでいて、美しいのだろう。
だけど、分厚く重い雲に、すぐに隠されてしまう弱さもある。

「曇った暗闇の空よりも、」
小さく呟いて
「星の瞬く澄んだ空の方が、似合いますよね。」

夜風は冷たく、少し乾いています。好都合。
空気を同じように湿った草と土を踏み、木々のざわめきを聞きます。錫杖を一度鳴り響かせ、辺りの空気は一転しました。
深紅のローブが風に煽られ、舞い上がる。それがいったん止んで、今度は別の風に煽られました。

黄昏よりも昏きもの 血の流れよりも紅きもの
時の流れに埋もれし偉大なる汝の名において
我ここに 闇に誓わん
我等が前に立ち塞がりし 全ての愚かなるものに
我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを

紅い光が合わせた掌に集まり、金色の輝きを帯びてきました。
それは次第に熱い力の塊になり、風を踊らせ、辺りは紅に染まります。
レゾは空を睨んで、再び錫杖の澄んだ音がして、
「竜破斬(ドラグ・スレイブ)!!」

「どぅわぁああ!!?」
レゾの声が何かを叫んだと思った瞬間、凄い振動がゼルの元にも届きました。
ベットから落ちます。痛いです。これは大変痛いですから皆さんも気を付けましょう。
しかも棚から落ちたぬいぐるみの下敷きになります。あまり痛くはありませんが、駄目押しにはちょうど良いです。今日の彼はついてませんね。
「ってぇ〜………
…え?あれっ!?」
窓を見て、彼は驚きと感嘆の声を上げました。
そしてすぐに気付きます。じぃちゃんがやってくれたのだ、と。
空は満天の星で埋め尽くされていました。

空へ撃った竜破斬(ドラグ・スレイブ)は、見事に雲を消し飛ばしました。
まぁ、撃った衝撃波が付近に渡ったかも知れませんが、別にいいや。目的達成です。イエーイ☆
「レゾーー!」
ゼルが走ってきます。レゾは気付くのが少し遅く、ゼルのタックルをもろに受けてしまいました。
身長的に、それはタックルではなく膝カックン。レゾはまともに倒れました。ゼルは結構な経験値を得た。少しは恥じなさい。
「えへへ〜。」
レゾは痛い鼻をさすりながら、ゼルの方をむき直します。するとゼルは胸に飛び込んできました。
「ミッション、くりあ〜♪」
ゼルは嬉しそうに言います。レゾはかなり混乱していました。そして思ったこと。肩当て重い。
そして、もう一度ゼルが顔をぎゅーっと胸に押しつけて、正気に戻りました。
「じぃちゃん、大好きだぁ。」
全てはαからはじまり、やがて終点、Ωへと還る。
レゾはしばらく何も言えませんでした。まともな思考回路が間に合っていませんでした。
「えへへ〜。」
そしてぼんやりと、ゼルの身体って暖かいなぁと、思いました。



―――ねぇ、どんな願い事したの?
―――……秘密、ですよ。
―――じゃ、ぼくも秘密だよ。
   でもね、なんか少しだけ叶ったような気がするんだ。
―――奇遇ですね。実は、私もそう思っていたとこだったんですよ。



二人は、満天の星空を眺めていました。
いつまでも、いつまでも、眺めていました。





‥楽屋裏‥

実はこれ、七夕当日にHPアップ用に書いたんですよね。
ギャグを、とにかくギャグに見えるギャグを目指して書いてみました。なんか変だ。
ではー。

トップに戻る
26570優しい御伽話 (Z)昴(スバル) E-mail URL2003/7/25 14:27:44
記事番号26569へのコメント





どうすれば 良かったのだろう?

   ――こんなこと 前にもどこかで?――





優 し い 御 伽 話 ( Z )





レゾは優しい。と、当事者の僕でも思う。
というか、レゾは誰にでも優しい。
レゾを信用して、レゾに助けを求める人達にも、――僕、にも。
または、レゾ、または僕は、本当の「優しさ」というものを、理解していないのかもしれない。だからレゾのやることなすこと、みんな「優しい」と感じてしまうのかもしれない。
それでも僕はレゾが優しいと思うし、他の人も、そうだと思う。それは別に、それ自体は別に、いいんだ。

ただ

レゾにとって

優しいってどういう事なのだろう?





その日、ゼルは遅く起きた。レゾは起しにこなかった。
日は完全に昇っていて、ベッドを覆うような日溜まりができあがっていた。朝の10時くらいというところか。
「………。」
しばらく、ぼーっとしていた。
「…レゾ…?」
その名前を呼んでみて、何となく漂う虚無感に気がついた。
起しに来てくれなかったのだろうか?
そう思って、一瞬だけ泣きそうになって、すぐに階段を下りた。

「レゾ…!」
寝起きで、5歳児のろれつは上手く回っていなかった。
「レゾ!」
台所、居間、広い一階を駆けめぐった。
どこにもいない?
どうしようもなく、心配になって、玄関からスリッパのまま走り出した。
「レゾぉ!
!」
……いた。
家の大きな門の前。

朝の靄と光に、レゾの姿は消え入りそうだった。
その姿は何故か神秘的で、儚かった。動けなくなった。
レゾは一度振り返り、ゼルを見つめた。
本当なら、目の見えないレゾが「見つめた」というのはおかしい。
だけど、これは「見つめた」としか言いようのない光景だった。
――頭の中に、声がした。

   事情があって、もう行かなければなりません。
   必ず、帰ってきます。

   ごめんなさい。

そして
手を少し振って、消えていった。

ゼルは最後まで、動けなかった。



「…バーカ。」
呟いた。
当然、台所には誰もいない。
「バーカ、バーカ、バーーーーーカ。」
何度も呟いた。
ぐぅぅ〜〜〜〜〜…
「…あぅー……。」
とりあえず、何か食べのもを探し出した。



自分の部屋で、絵本を読んだ。
午後は天気も良かったし、外に出て遊んだ。
綺麗な小川で水遊びをした。
少しだけ森に入って、優雅に飛ぶ蝶々も見た。
なのに、なんでだろう。
「…バカ……。」
心の奥に残る、暗いしこり。



「…もう、夕暮れ…」
ゼルは立ちつくして、空を見上げた。
「そろそろ、帰ってくるよね……
外にいたまんまなら、やっぱり、怒られるよ、ね……」
少し笑いながら、家へと走り出した。
空は紅く染まっていて、遠くは紫色だった。

嗚咽が、漏れた。



黙って夕食を食べた。
メープルシロップを簡単にかけただけのパンと麦茶を必要な分だけ流し込んで、足早に席を離れる。
手を洗って、シャワーを浴びて、歯を簡単に磨いて、寝巻きに着替えた。
……玄関に急いだ。
「………。」
とても暗かった。虫の鳴く音だけが響いていた。
少しだけ笑って、うなずいた。
2階に上がり、自分の部屋へ。絵本を数冊と、ピンク色の丸いキャラクターのぬいぐるみを持ってきた。
小さな期待を胸に、玄関で待つ。

ぼんやりとした闇が漂っている。
「どうすれば、良かったんだよぅ……」
ぬいぐるみを抱きしめた。
「行かないでって、言いたかったのに……」
抱きしめる力が、自然と大きくなる。
闇は何も答えなかった。
「寂しいよ…」
涙がこぼれる。
「寂しい…よ……」



ねぇ、レゾ?
僕の心臓の音、聞こえる?
レゾ、ねぇ、近くにいるんだよね?
だって、レゾの心臓の音、こんなに近くで聞こえるもん。

…ねぇ?
ねぇ、レゾ?
僕の心臓の音、聞こえる?
聞いていて、くれてる?

僕は、大丈夫。
ほら 聞いて?
生きてる
生きてるよ

僕も

レゾも

ねぇ?
独りじゃないって、言って?

聞いていて、くれてるんだよね?



うっすらと眼を開けた。光が差し込んでいた。
……暖かい。
暖かい何かが、自分を抱きしめている。
「レ、ゾ…?」
朝日に照らされた紫色の髪。紅の法衣。
レゾは名前を呼ばれて、静かに顔を上げた。白い肌が光っている。
「ゼル……」
レゾもまた、その名を呼んだ。
ゼルはしばらくその顔を見ていて、弾かれたようにレゾの胸を殴った。
「バカっ!!」
大して強くもない力で、何度も殴った。
「バカ、バカ、バカッ!!」
レゾは俯いたままで、
「…ごめんなさい…」
消え入りそうな声で、確かに言った。
「バカぁ……」
そのまま、レゾの胸に抱かれていた。
「もう…置いてかないで……」
「……ごめんなさい…」
「う、うぁ……うああああああーーー!!」

何で泣いたのか、判らなかった。
レゾはずっと、離さなかった。



「レゾは、どうしてそんなに優しいの?」
泣き疲れて声は掠れていた。日は少し昇っていて、心地よい日差しを与えてくれた。
「私は、優しいですか?」
「うん。」
即答する。
レゾは少し黙って、袖でゼルの涙を拭った。
「……わかりません。」
レゾは自分の手の甲をゼルの眼の上に軽く乗せた。手の甲は、ひんやりとして気持ちが良かった。
「ただ、わかるのは、」
力が抜けてだらりとしたゼルの身体を、しっかりと膝の上にのせて、抱きしめる。
「愛おしい、です。」
レゾの腕に、少し力が入った。
ゼルは片手でぬいぐるみの足を持って、もう片手でレゾの腕を弱く握った。
レゾの腕は、小刻みに震えていた。
「好きだって事は、優しい事かなぁ?」
「……わかりません。」
一呼吸置いて、
「あなたは私を、好いていてくれますか?」

「……うん。」



僕ね……寂しかったんだ。
どうしようもなく寂しくって、ずっとレゾを持っていたんだ。
だけどさ……レゾも、どうしようもないんでしょ?
どうしようもないような事があって、僕から離れたんだよね?
……うん。
だから、もしもの時は……僕には何も言わないでね?
……悲しく、なるから。

ただ……お願い。
今だけは、そばにいて……?



「知ってる?
レゾの心臓の音って、とっても優しい。」




END





‥楽屋裏‥

「優しい御伽話」のゼルバージョンです。と、いうことはレゾバージョンもあります。
少し久々のシリアスです。シリアス、大好きなのですが、書いていて大変疲れます。
ではー。

トップに戻る
26573Re:優しい御伽話 (Z)感想とりの母 2003/7/25 18:31:25
記事番号26570へのコメント

はじめまして。
この作者のごく身近にいる者です。
十数年ばかり前、こういう事が何度もあったような気がします。
朝から晩まで丸一日ということは無くても、二、三時間、放ったらかしで
戻ってみると、抱きついて泣き出す子供の手触りとにおい。
もちろん、その間、しかるべき手によって幼子の安全は守られているのですが。

私はこの作品を読んで感動したのですが、
おそらく半分は親バカ、半分は作者の成長に感無量、といった部分で、
作品として冷静に評価するなら、そんなに立派でもなんでもないかもしれません。
とりあえず、私は、目頭が熱くなったことを記しておきますです。


トップに戻る
26512はじまりの御伽話…1 (改訂版)昴(スバル) E-mail URL2003/7/12 09:01:51
記事番号26509へのコメント




**はじまりの御伽話 …1**



「ありがとうございました。
赤法師様。」

…違う。
彼らが必要なのは 赤法師
私じゃなくて 赤法師

「まだ手こずってるんですか?
魔王様。」

…違う。
奴らが必要なのは 私の中の魔王
私じゃなくて 私の中の魔王

「レゾ!」

……!

「レゾ、もうどこにも行ったりしないでね。
もう、一人にしないでね。」

私を必要としてくれた人は
もう みんな消えてしまった

神も見捨ててしまった私を
ただ 見てくれた お前

一人になんかするものですか
させるものですか

だから 私を忘れないように
私から離れられないように

解けない呪いを かけた





深い夜だった。
月は淡い光を辺りに降り注ぎ、照らされた木や、葉や、眠る魂達を、優しく儚くさせた。

「……お休みなさい、ゼル。」
レゾは、目の前に眠るちいさな少年、ゼルガディスに、優しく声をかけた。
……赤法師、レゾ。現代の五賢者と謳われている、見た目30代前後の男性。実際は、何十年も平気で生きている。
彼はその膨大な魔力を持ちながらもどこの国にも属さず、生まれつきの盲目を治すため、諸国を歩き回っている。その国々で様々な奇跡……いや、実験を繰り返しながら。
ゼルガディスは、彼の孫に当たる。彼の母……兼、レゾの娘は、もう生きていない。
木で出来たベットに眠るゼルは、小さな寝息を立てながら、心臓を動かしている。
レゾはゼルの胸に少し手を当てる。鼓動が届く。

……私には、今すぐにでもこの心臓を壊すことができるというのに……。

レゾは悲しそうに微笑みながら、掌を握る。その拳の中には、何もない。

深い夜だった。
月は淡い光を辺りに降り注ぎ、照らされた木や、葉や、眠る魂達を、優しく儚くさせた。

レゾは森に出て、夜風を頬に受けていた。目が見えないはずなのに、彼は障害物を知らない。
彼は願っていた。この眼を開くこと。世界を眺めること。色を感じること。その願いが成就されるときこそ、彼が本当に人間でいられるときと、信じていた。

レゾの眼には、邪が宿っている。それは世にいるべきではないもの、世界に破滅をもたらすもの。
彼は知っていた。自分の精神が、少しずつその邪に侵されつつあるということ。自分が自分でいられるのは、後少しの時間しかないということ。
彼の考えは、一つの結論に到達した。その邪が人の魔力でもどうにもならないものなのならば、その邪の最高位にあるもの力を借りればよいのではないか。
そう、それこそ……魔王のような。

……紅眼の魔王シャブラニグドゥ。
結局は、その魔王こそが彼に宿りし邪、そのものだった。だが、それを彼が思い知ることになるのは、まだ先のことだった。

魔王を呼びだせば、世界に混沌がやってくるだろう。それでは、いけない。ならば呼びだした後、魔王を討つしかない。
その準備のためには、魔道都市サイラーグに行かなければならない。そうしたら、もう後はないだろう。
自分が邪に呑み込まれるのが先か、それとも魔王を復活させて眼を開き、邪と魔王を討つのが先か。
……けれど、ゼルガディスのそばにいてやりたい。できるなら、正気でいられるその一瞬まで。
ゼルガディスは、レゾの最後の肉親だ。そして、娘の唯一残せた子供だった。
守りたい。誰よりも守りたい子供だった。
……だけど……。

「……ゼロス、そこにいるのでしょう?」
レゾは虚空に話しかけた。木々がざわざわと揺らめき、闇が一層濃くなった。
一瞬、漆黒の錐が現れ、それが人影になる。現れたのは、黒で統一した神官服を纏った、魔族。
獣神官ゼロス。魔王の5人の部下の一人、獣王ゼラスの創り出した、上級魔族。その強さは、黄金竜をたった一人で一掃できるまでに及ぶ。
「あれぇ?ばれちゃいましたか?」
ハハハ、と、軽く笑ってみせる。相変わらずのニコ目だが、レゾはその裏の邪悪を知っていた。
レゾは眉をひそめ、重い口調で話しかけた。
「パシリ魔族が何のようです?」
「……パ…パシリ……」
ゼロスは顔を引きつらせた。そして何事もなかったかのように、穏やかに楽しそうにいう。
「いやぁ、そろそろ貴方も潮時なんじゃないですか?
僕もこの仕事、飽きてきましたし。いい加減、僕らにゆずって欲しいんですよ。そうすれば、貴方も楽になりますし♪」
仕事、というのは、「魔王の魂を宿す者を、見届けること」。
「なんなら、貴方を執着させる理由をなくしてあげてもいいんですよ?」

っヒュドォ!!!

青白い閃光が、ゼロスの影を追う。立て続けにまた爆発が起こり、また起こる。
ゼロスの影がよろめいた瞬間を、レゾは見逃さなかった。レゾの錫杖がゼロスの服の袖に突き刺さり、そのまま地面にたたきつけられる。
「…………やっぱり、人間にしてはなかなかのモンですね。」
ゼロスは、感心したようにのんびりという。比べ、レゾは今にもゼロスを錫杖で突き殺さん形相だった。もっとも、上級魔族がそれくらいで滅びるわけがないのだが。
「おふざけは、過ぎない方が長生きできますよ?人間でも、魔族でも。」
レゾは静かに言う。ゼロスは少し苦笑して、闇にかき消えた。
レゾはしばらく黙って座り込み、やがて錫杖を持ち直した。見えない眼でただ暗い天上を見つめ、何か口を開きかけ、閉じた。



… … … … …



永い沈黙があった。

眼を閉じていても、開いていても、そこに広がるのは闇。

もう瞳の中に、邪……いや、魔王はいない。それと共に、彼は死んだはずだった。

……独り、だった。

眼を開けて、望んでいたことは、世界を見ることだ。

そのために生きてきた。

最後に見えたのは、白い閃光と、魔王の醜い姿。それは彼自身の姿でもあった。

それでも残ったのは、闇だけだった。



… … … … …



 ゾ? こ い  か?

……誰、ですか?



彼には守りたい者がいた。
だからこそ、傷つけてしまった者がいた。
そして、最後に「彼」の言葉を聞いたとき、彼は易々と命を捧げてしまった。
……だから、
気づくことが出来なかった。
「彼」の想いに。



レゾ そ にい の ?

……私を呼ぶのは誰ですか?



レゾ?そこにいるのか?

―――ゼル……!!!



風が吹き、紅のマントがなびき、感覚が回転する。

風に巻かれて、葉と葉がざわめき、澄んだ水鏡に紅い人影が浮かび上がった。
レゾは、ゆっくりと眼を開く。

トップに戻る
26513はじまりの御伽話…1 (改訂版)昴(スバル) E-mail URL2003/7/12 09:04:36
記事番号26508へのコメント




**はじまりの御伽話 …1**



「ありがとうございました。
赤法師様。」

…違う。
彼らが必要なのは 赤法師
私じゃなくて 赤法師

「まだ手こずってるんですか?
魔王様。」

…違う。
奴らが必要なのは 私の中の魔王
私じゃなくて 私の中の魔王

「レゾ!」

……!

「レゾ、もうどこにも行ったりしないでね。
もう、一人にしないでね。」

私を必要としてくれた人は
もう みんな消えてしまった

神も見捨ててしまった私を
ただ 見てくれた お前

一人になんかするものですか
させるものですか

だから 私を忘れないように
私から離れられないように

解けない呪いを かけた





深い夜だった。
月は淡い光を辺りに降り注ぎ、照らされた木や、葉や、眠る魂達を、優しく儚くさせた。

「……お休みなさい、ゼル。」
レゾは、目の前に眠るちいさな少年、ゼルガディスに、優しく声をかけた。
……赤法師、レゾ。現代の五賢者と謳われている、見た目30代前後の男性。実際は、何十年も平気で生きている。
彼はその膨大な魔力を持ちながらもどこの国にも属さず、生まれつきの盲目を治すため、諸国を歩き回っている。その国々で様々な奇跡……いや、実験を繰り返しながら。
ゼルガディスは、彼の孫に当たる。彼の母……兼、レゾの娘は、もう生きていない。
木で出来たベットに眠るゼルは、小さな寝息を立てながら、心臓を動かしている。
レゾはゼルの胸に少し手を当てる。鼓動が届く。

……私には、今すぐにでもこの心臓を壊すことができるというのに……。

レゾは悲しそうに微笑みながら、掌を握る。その拳の中には、何もない。

深い夜だった。
月は淡い光を辺りに降り注ぎ、照らされた木や、葉や、眠る魂達を、優しく儚くさせた。

レゾは森に出て、夜風を頬に受けていた。目が見えないはずなのに、彼は障害物を知らない。
彼は願っていた。この眼を開くこと。世界を眺めること。色を感じること。その願いが成就されるときこそ、彼が本当に人間でいられるときと、信じていた。

レゾの眼には、邪が宿っている。それは世にいるべきではないもの、世界に破滅をもたらすもの。
彼は知っていた。自分の精神が、少しずつその邪に侵されつつあるということ。自分が自分でいられるのは、後少しの時間しかないということ。
彼の考えは、一つの結論に到達した。その邪が人の魔力でもどうにもならないものなのならば、その邪の最高位にあるもの力を借りればよいのではないか。
そう、それこそ……魔王のような。

……紅眼の魔王シャブラニグドゥ。
結局は、その魔王こそが彼に宿りし邪、そのものだった。だが、それを彼が思い知ることになるのは、まだ先のことだった。

魔王を呼びだせば、世界に混沌がやってくるだろう。それでは、いけない。ならば呼びだした後、魔王を討つしかない。
その準備のためには、魔道都市サイラーグに行かなければならない。そうしたら、もう後はないだろう。
自分が邪に呑み込まれるのが先か、それとも魔王を復活させて眼を開き、邪と魔王を討つのが先か。
……けれど、ゼルガディスのそばにいてやりたい。できるなら、正気でいられるその一瞬まで。
ゼルガディスは、レゾの最後の肉親だ。そして、娘の唯一残せた子供だった。
守りたい。誰よりも守りたい子供だった。
……だけど……。

「……ゼロス、そこにいるのでしょう?」
レゾは虚空に話しかけた。木々がざわざわと揺らめき、闇が一層濃くなった。
一瞬、漆黒の錐が現れ、それが人影になる。現れたのは、黒で統一した神官服を纏った、魔族。
獣神官ゼロス。魔王の5人の部下の一人、獣王ゼラスの創り出した、上級魔族。その強さは、黄金竜をたった一人で一掃できるまでに及ぶ。
「あれぇ?ばれちゃいましたか?」
ハハハ、と、軽く笑ってみせる。相変わらずのニコ目だが、レゾはその裏の邪悪を知っていた。
レゾは眉をひそめ、重い口調で話しかけた。
「パシリ魔族が何のようです?」
「……パ…パシリ……」
ゼロスは顔を引きつらせた。そして何事もなかったかのように、穏やかに楽しそうにいう。
「いやぁ、そろそろ貴方も潮時なんじゃないですか?
僕もこの仕事、飽きてきましたし。いい加減、僕らにゆずって欲しいんですよ。そうすれば、貴方も楽になりますし♪」
仕事、というのは、「魔王の魂を宿す者を、見届けること」。
「なんなら、貴方を執着させる理由をなくしてあげてもいいんですよ?」

っヒュドォ!!!

青白い閃光が、ゼロスの影を追う。立て続けにまた爆発が起こり、また起こる。
ゼロスの影がよろめいた瞬間を、レゾは見逃さなかった。レゾの錫杖がゼロスの服の袖に突き刺さり、そのまま地面にたたきつけられる。
「…………やっぱり、人間にしてはなかなかのモンですね。」
ゼロスは、感心したようにのんびりという。比べ、レゾは今にもゼロスを錫杖で突き殺さん形相だった。もっとも、上級魔族がそれくらいで滅びるわけがないのだが。
「おふざけは、過ぎない方が長生きできますよ?人間でも、魔族でも。」
レゾは静かに言う。ゼロスは少し苦笑して、闇にかき消えた。
レゾはしばらく黙って座り込み、やがて錫杖を持ち直した。見えない眼でただ暗い天上を見つめ、何か口を開きかけ、閉じた。



… … … … …



永い沈黙があった。

眼を閉じていても、開いていても、そこに広がるのは闇。

もう瞳の中に、邪……いや、魔王はいない。それと共に、彼は死んだはずだった。

……独り、だった。

眼を開けて、望んでいたことは、世界を見ることだ。

そのために生きてきた。

最後に見えたのは、白い閃光と、魔王の醜い姿。それは彼自身の姿でもあった。

それでも残ったのは、闇だけだった。



… … … … …



 ゾ? こ い  か?

……誰、ですか?



彼には守りたい者がいた。
だからこそ、傷つけてしまった者がいた。
そして、最後に「彼」の言葉を聞いたとき、彼は易々と命を捧げてしまった。
……だから、
気づくことが出来なかった。
「彼」の想いに。



レゾ そ にい の ?

……私を呼ぶのは誰ですか?



レゾ?そこにいるのか?

―――ゼル……!!!



風が吹き、紅のマントがなびき、感覚が回転する。

風に巻かれて、葉と葉がざわめき、澄んだ水鏡に紅い人影が浮かび上がった。
レゾは、ゆっくりと眼を開く。



トップに戻る
26515はじめまして水無月 雹 2003/7/13 11:15:56
記事番号26513へのコメント

はじめまして、小説2に現れてたりするヘタレ小説書きの水無月と申します。
とてもおもしろそうだと思ったので作品を読ませていただきました。

え〜と感想書くのって苦手なんですが、とてもよかったです。
レゾ&ゼルって何故か好きなんですよ。
単品でもコンビでもCP(オイオイ)でも。
だから楽しんで読めました〜。
続き楽しみにしてます。これからも頑張って下さい。

短いコメントですみませんでした。
とりあえず読んでて楽しいという気持ちが伝わってくれればとを思います。
それでは〜

トップに戻る
26568ありがとうございます!昴(スバル) E-mail URL2003/7/25 12:19:47
記事番号26515へのコメント

感想ありがとうございます!
あわわわわ、すっごくうれしいです!

レゾ×ゼル、いいですよね(いきなりそれかぃ)
ゼルも好きだしレゾ様も好きです♪

とりあえずギャグ&シリアスでがんばっていこうかと♪
ではー♪

トップに戻る
26572どこに感想書くべきか・・・・わからないからここで(オイ)水無月 雹 2003/7/25 17:25:50
記事番号26515へのコメント

こんにちわーヘタレってる水無月です。

いやもうめちゃくちゃ楽しかったです!
銅像(以下略)なんてテンション高いレゾさんに大笑いv
ああこんなじいちゃんいたら大変だねゼル!
でも若くて顔いいから私だったらOKさっ(エ)

七夕(以下略)ではシリアスとギャグの混じったところが良かったです。
ああこういうの書きたい・・・。

優しい(以下略)しんみりシリアスは大好きです。
レゾ&ゼルはしんみりシリアスが合いますね。
もち他のも好きですが、しっくりとくるのはちょっと悲しいシリアスですかね

続き楽しみにしてます。よければ私の作品も見てやってくだせぇ。
それでは〜