◆−導かれちゃった者たち 冒険をする ディオル Lv26−Dirac (2003/7/15 23:01:44) No.26530
 ┣導かれちゃった者たち 第十六話 大地に生きる民−Dirac (2003/7/15 23:05:31) No.26531
 ┃┣魔性の子……否、魔性の女、降臨……。−エモーション (2003/7/16 22:05:09) No.26534
 ┃┃┗ちょっとだけよ〜(はーと) byカトちゃん−Dirac (2003/7/17 21:54:59) No.26539
 ┃┗仲間がいれば・・・不安が一杯?(汗)−びぎなーいっく。 (2003/7/21 23:53:48) No.26559
 ┃ ┗不安が小さじ一杯ですむということでしょうか?−Dirac (2003/7/26 21:22:21) No.26585
 ┣導かれちゃった者たち 第十七話 騎士道−Dirac (2003/7/29 21:22:56) No.26600
 ┃┗最強のぴこぴこリナちゃん−エモーション (2003/7/29 23:07:55) No.26602
 ┃ ┗進化形のぴこぴこリ(略)ナちゃん−Dirac (2003/8/1 19:09:12) No.26623
 ┗導かれちゃった者たち 第十八話 災厄の鼓動−Dirac (2003/8/9 21:08:18) No.26662
  ┗心証、じゃない新章突入ですね−エモーション (2003/8/10 22:57:00) No.26676
   ┗埋まるギリギリですいません−Dirac (2003/8/20 02:25:35) NEW No.26742


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26530導かれちゃった者たち 冒険をする ディオル Lv26Dirac E-mail URL2003/7/15 23:01:44


 神父:ディオル殿、本当によく(おめおめと)戻られました。
    
今までのあらすじ(長〜い空白期間があったので、思い出せない部分は再読することを推奨)

 山々と樹海に囲まれたとある村で、ディオルは家族や村人の愛情を受け、幼なじみのウィニーとともに幸せな時間を過ごしていた、しかし、ディオルは自分が伝説の勇者の血を引いていることをまだ知らなかった。
 ディオルが十七回目の誕生日を迎えた日、彼をまだ未完成のうちに抹殺しようと図ったガウリイ=ガブリエルら邪悪なる者たちが突如村を襲来した。村人はディオルに彼が勇者の末裔であることを知らせると、彼をかくまい、魔族に全力で抵抗を試みる。しかし、無残にも彼らは息絶え、ウィニーはディオルの身代わりとなってその命を散らした。突然訪れた悲しみに打ちひしがれながらも、ウィニーと結んだ約束『この世界を救う』を守るべく、ディオルは旅立った。
 あやかしの笛を手に入れたディオルたちは、リ・ナにガウリイの暴走を止める協力を求めるべく、大地の妖精が住まう名もなき丘に聳え立つ塔へと向かう。あやかしの笛によって塔の秘密の入り口を見つけ、潜入に成功するも、リ・ナの護衛デイミアの抵抗に苦戦する。死闘の末にデイミアを倒し、リ・ナに出会ったのだった。
 しかし、今度はリ・ナを狙う騎士ユーリィと、やはり彼女を狙う別口の刺客となったゾードたちが襲来する。さらに、倒したはずのデイミアも復活し、リ・ナを巡る四つ巴の戦いが繰り広げられた。なんとかリ・ナを守るディオルたちであったが、リ・ナはザインに奪われてしまう。しかし、誰もがこれまでかと思った瞬間、大地の妖精フィル怒りの鉄拳が、ゾードに炸裂したのであった。

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26531導かれちゃった者たち 第十六話 大地に生きる民Dirac E-mail URL2003/7/15 23:05:31
記事番号26530へのコメント
「そこの方々、ちょっとすまぬが――」
『どおわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
 山賊の頭領のような男、……もとい、山賊の頭領に声をかけられ、ランガーシャとマリアテーゼはぶっ飛び、ガードナーは逃げ出した! ……って、あんたがぶっ飛ぶ資格ねーよランガーシャ。
「ど、どちら様でしょうか?」
 思いきりド肝を抜きまくる怪しさがあるが、見た目で判断してはハイソでない。マリアテーゼが脊椎反射的に唱えた呪文を中断する。
「うむ。わたしは見ての通り大地の妖精だが――」
『見ても分かんねーぞえ』
 心の中でツッコむランガーシャ。だからあんたがツッコむ権利ないって……。
「実は、この子を誘拐せんと企む輩がいてな」
 そう言って、大地の妖精を自称する山賊の頭領が背中に負ぶっていた子供を下ろす。
 その子は――。
『リュスティーナ!?』
「この子を連れて奴らから何とか逃げてきたのだが、しつこく追ってくる。奴らの追撃を逃れるために、乗せていってほしいのだが」
 リュスティーナの顔を見て二人が驚くのには気づかず、頭領が逃亡の協力を頼む。
 だが、戸惑う彼女たちが返事をする前に、
「むっ!?」
 ディオル(復活した)たちがこちらに向かってくるのを見たとたん、頭領は表情を渋らせた。
「追いつかれたか。……仕方ない、この子を連れて逃げてくれ。待ち合わせ場所は……北の森のパラライマッシュが生い茂っている所で待っていてくれ。詳しい場所は村人が知っている。もし日没になってもわたしがそこに来なかったら、……代わりに子のこの両親を探してやってくれ」
 悲壮な決意すらにじませつつ一方的に言いたいことを言うと、頭領はディオルたちに向かって駈け出していこうとするが、
「姫! 危ない!!」
 親切心で思わずディオルが口走ってしまった。
「姫?」
 明らかに味方に注意を促す内容と、目の前の代物を形容した『姫』という言葉が、親分の目の色を変えさせた。どちらが彼により強い衝撃を与えたのかは定かではない。
「そうか! 仲間か! よくもこのわたしを謀りおったな!!」
 どこまでも自分一人で盛り上がる親分。
 さらに、
「ひえええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「待てぇっ!」
「この野郎っ! ちょこまかと!!」
 山賊の出現で逃げ出した後、先回りしていた黒ずくめ一団と偶然ハチ合わせたガードナーが、彼らに追いかけられながら戻ってきた。
 ……………………………………………………………………………………
「どうやら、極めてややこしいことになっているような気がしますわ……」
「……同感ぞえ」
 予測不可能な展開に、因縁浅からぬ黒ずくめたちとの再会したにもかかわらず、ランガーシャとマリアテーゼは、緊張感が高まるどころか、むしろ妙な脱力感に襲われていた。

「せいっ!」
「わひいぃぃぃっ!」
 黒ずくめが一斉に投げたダガーを、ガードナーが天性の危機防衛能力でかわし、
 ザスザスザスッ
 そのほとんどがフィリアの頭に突き刺さった。
『オノレラナニサラシトンネン! クタバリヤガレッ!!』
 ピボオオオオォォォォォォォォォーーーーーーン
『うぉっ――』
 フィリアの閃光の吐息【レーザー・ブレス】が、悲鳴もろとも黒ずくめ集団(とガードナー)を焼き尽くした。
「何だ今のは!?」
「たかが馬が何故閃光の吐息など!?」
 と、黒ずくめたちが浮き足立っているところに、
『ナリムアモーオニロットアヴォネジュイロパンアイツネヴエトネリフ』
「うっ!?」
「か、体が!?」
 ラティーナが金縛りで十数人の黒ずくめの動きを封じ、
 ザシュッ ブシュッ ドシュッ
「ふふふふふ……。手応えはもうちょっと弾力があった方がいいけどね」
 喜悦の笑みを漏らしながら、辻斬りモードレミーが黒ずくめたちを斬り倒していく。
「雷撃破【ディグ・ヴォルト】」
「ぐおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
 さらに、黒ずくめたち以上に闇に解け込んでいるギザンが、別の黒ずくめに雷を放った。
 パタ――
 放電が収まり、黒ずくめが手を放した棒のように倒れる。
 とどめを刺すべく、その黒ずくめのそばに向かうギザン。
『!?』
 だが、雷撃を浴びたにもかかわらずその男から焦げたにおいが全くないのに気づいた時、ギザンは瞬時に男のそばを離れた。
 シュッ――
 そのギザンの胸を銀色の爪がかすめる。
「残念、もう少しだったんだがな」
 バチン
 両手の爪が触れたとたん、青白い線が音を立てた。
「なるほど。お主も雷の使い手か」
 納得したように言うギザン。確かに、彼が雷撃を使用するなら何らかの耐電も施されていても不思議ではない。
「だが――」
 ギザンが小さな袋を投げる。
「ぬっ!?」
 黒ずくめがその袋を叩き落とした時、
 ドオオオォォォォォォン
 雷を帯びていた爪が引き金となり、袋の中に入っていた火薬が爆発した。

「ぬおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
 類は友を呼ぶのか、黒ずくめが圧倒的多数を占める状況で、フィルは何故か真っ先にマイルズに戦いを挑んだ。
「ちっ!」
 ドギャッ
 フィルのタックルをかわす素振りすら見せずに放ったマイルズの右ストレートが、彼の額に命中した。
 しかし、インパクトの瞬間にマイルズの腕が伸びきっていなかったため、本来の威力は発揮されず、逆にタックルの勢いで後ろに押された。
「むっ?」
「お主……神官という聖なる身分でありながら……」
 パンッ パンッ パンッ パンッ
 マイルズの体勢が崩れかかったところ、すかさずフィルも右ジャブを返す。……って、彼は踊り子ですが。
「ぬぅっ」
 マイルズがフィルのジャブを防ごうとガードを上げると、
「誘拐行為など企みおって! 恥を知れ!」
 ドズッ
 狙いすましたヒザがマイルズの空いた脇腹をえぐる。
「ぐぬっ!」
 肝臓にまで達した衝撃に息を詰まらせるマイルズ。
 思わずガードを下げてしまったマイルズに、フィルはさらなる追撃を仕掛けるが、
 フッ――
 合気道の要領で、マイルズがとっさにフィルの拳の向きを反らす。
「うっ!?」
 完全に仕留めにかかった一撃を受け流され、フィルの重心が不安定に泳ぐ。
「うおりゃぁっ!」
 運動の法則に従うしかないフィルのこめかみ目掛けて、マイルズが回し蹴りを放った。

 ランガーシャは戦いより子守りで忙しかった。
「ぶえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
「おーよしよし、今からお乳あげるから泣き止むぞえ」
『ぎょええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』
 ズザザザザッ
 黒ずくめたちは逃げ出した。
 しかし、回りに囲まれた。
『何故じゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
 ボス敵との戦闘では逃げられないというのは公然の約束事であるにもかかわらず、逃げられないことに魂の咆哮を上げる黒ずくめたち。
「ちょっとあなた方!! こともあろうにランガーシャ姫様がお乳をお与えになるところを邪【よこし】まな目で眺めるだなんて、ハイソでないこと極まりないですわ!!」
「ちょっと待てコラ!!」
「そんなの見るかボケ!!」
 マリアテーゼの批判に、黒ずくめたちが己の生命とアイデンティティとレゾン・ディーテルをかけて抗議する。
「えぇい! ならこれでいいだろ!? 黒霧炎【ダーク・ミスト】」
 黒ずくめの一人がランガーシャの周囲を闇の霧で覆った。これならランガーシャの授乳は誰からも見られることはない……はずであった。
 ドオオオォォォォォォン
 ギザンが起こした予期せぬ爆風が霧を吹き飛ばした。
 そして、(以下の描写は公共の場にふさわしくないので割愛)になった。
「ぐはっ!!」
 黒ずくめたちが泡を吹いて倒れた。
「男の方って……みんなこうなのでしょうか?」
「敵の集団を一瞬で悩殺してしまうとは……わしも罪な女ぞえ」
 と、別の意味で罪な女が甚だしい自己満足に浸っていると、
 パチン――
 黒ずくめの一人の肉が弾けた。

 とっさに体を縮ませて身構えていたフィルに分かったことはただ一つ、マイルズが地を蹴って自分の左側に回り込んだこと。彼の耳から得た情報である。
『――!?――』
 カウンターのできない自分に対してフットワークは全くの無駄。マイルズの奇妙な行為をフィルが疑問に思った瞬間、
 ズシュッ
「ぐあっ!」
 何かが生肉を貫く音と、上がるはずのないマイルズの苦悶の声。
「なっ!?」
 思わずガードを解いたフィルは、目の前で信じられないものを見た。
 これ以上ないほどスキだらけの自分に蹴りを浴びせ掛けようとしたマイルズが、右ふくらはぎから血を流しながら宙を舞っているのだ。
 血の噴き出し口には触手のような黒い何か。
「まさか!?」
 この時、フィルは自分がこの男に助けられ、そして自分は大きな勘違いをしていたのではないかと思い始めた。
「マイルズ殿!!」
 近くで見ていたディオルが、マイルズのふくらはぎを射抜いた触手を斬り飛ばす。
 しかし、触手は一瞬で再生し、さらに猛烈な早さで枝分かれしていく。
「マイルズ殿! 大丈夫か!?」
「ああ、何とか……」
 ディオルの呼びかけに、歯を食いしばりながら答えるマイルズ。
「わ、わたしは――」
「それより、わたしが触手の相手をしているうちにマイルズを運んでくれ!」
「あ、ああ、分かった!!」
 申し訳なく思いつつも、ディオルに促されてマイルズに肩を貸すフィル。
 ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン
「むんっ!」
 時間差で襲いかかる触手から、ディオルは何とかマイルズを守りきっている。しかし、どうやって反撃していいかは全く分からない。
「誰か、こっちに来てくれ!!」
「だめだ! みんな触手に手一杯だ!!」
 ディオルが応援を頼むも、返ってくる返事は絶望的。
 そして、
 シュッ――
「しまった!!」
 数本の触手がディオルのガードをすり抜け、マイルズに向かって一直線に食らいついていく。
「危ない!!」
 ディオルが叫ぶも、マイルズに半身を預けさせているフィルがかわせるはずがない。
 しかし、
「うりゃああぁぁぁっ!!」
 ジュバシュッ
 突如現れた黒豹の獣人【くろひょう】が、マイルズとフィルに襲いかかった触手を次々と切り落としていった。
「危ねぇところだったなぁ、フィルの旦那」
「ゼクター!」
 ゼクターと呼ばれた黒豹は、ニヒルな笑みを浮かべて、
「俺だけじゃないぜ」
『おうよ、俺たちを忘れてもらっちゃ困るぜ!』
 シュタタタタッ
 ゼクターの声に合わせて、木の上から、人間の手足が生えた魚や人面グモ、狼人間、トカゲ人間、さらに、フィルと容姿が似た男が姿を現した。
「ヌンサ! バーヅ! フェルティス! グライモア! テリウス!」
「水臭いぞフィル。俺たちも誘ってくれよ」
 フィルの肩を叩きながら、ヌンサが親指を立てて言った。
「すまん」
「おいおい、こういう時は『ありがとう』っていうんだぜ」
 フィルの額を爪が伸びた人差し指で軽くつつきながら、グライモア。
「よし! みんないくぜ!!」
「オウッ!!」
 ゼクターの号令で一同が握り拳を高く上げ、触手に向かって駈け出していく。
『うおりゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
 ブゴオオォォォォォォォッ
 意気込み勇んだゼクターたちの一撃がディオルの顔を粉砕した。










 タイトルと中身がかみ合ってない、かつ本当に久しぶりの第十六話です。もしかしたら次回もお久しぶりになるかも……。
 三ヶ月くらいごぶさたしているうちに、新しくご来訪している方々が多いですね。どうも、初めまして。わたしはDiracと申します。
 そろそろ物語も佳境に入りかけるところですが、DQ4というベースがあっても小説は楽に書けないものだということを身をもって痛感いたしました。当初は今くらいの時期にはもう終わっている予定だったという、完膚なきまでの見通しの甘さを笑ってやって下さい。

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26534魔性の子……否、魔性の女、降臨……。エモーション E-mail 2003/7/16 22:05:09
記事番号26531へのコメント

こんばんは。

「導かれちゃった者たち」復活ですね♪
いつもパワフルなお話ですが、いろんな意味で、今回も凄まじいですね……(汗)
特にランガーシャ様……(遠い目)……大丈夫でしょうか、リ(省略)ナ……。


>「うむ。わたしは見ての通り大地の妖精だが――」
>『見ても分かんねーぞえ』
> 心の中でツッコむランガーシャ。だからあんたがツッコむ権利ないって……。

ある意味、お互い様ですよね……。「見ても分からない」のは……(汗)

>「むっ!?」
> ディオル(復活した)たちがこちらに向かってくるのを見たとたん、頭領は表情を渋らせた。
>「追いつかれたか。……仕方ない、この子を連れて逃げてくれ。待ち合わせ場所は……北の森のパラライマッシュが生い茂っている所で待っていてくれ。詳しい場所は村人が知っている。もし日没になってもわたしがそこに来なかったら、……代わりに子のこの両親を探してやってくれ」

本当に、フィルさんはいい人ではあるのですが……、勘違いしやすいのが
玉に瑕ですよね。
……でも、このメンバーでは無理もないとしか思えないのは、何故でしょう……。

>「どうやら、極めてややこしいことになっているような気がしますわ……」
>「……同感ぞえ」
> 予測不可能な展開に、因縁浅からぬ黒ずくめたちとの再会したにもかかわらず、ランガーシャとマリアテーゼは、緊張感が高まるどころか、むしろ妙な脱力感に襲われていた。

確かに、脱力の方が大きいかも……。

> 黒ずくめが一斉に投げたダガーを、ガードナーが天性の危機防衛能力でかわし、
> ザスザスザスッ
> そのほとんどがフィリアの頭に突き刺さった。

フィリア……とことん不幸です……(ほろり)

> フィリアの閃光の吐息【レーザー・ブレス】が、悲鳴もろとも黒ずくめ集団(とガードナー)を焼き尽くした。

そして、やはりこうなるんですね。がんばれフィリア、負けるなフィリア!

> 両手の爪が触れたとたん、青白い線が音を立てた。
>「なるほど。お主も雷の使い手か」
> 納得したように言うギザン。確かに、彼が雷撃を使用するなら何らかの耐電も施されていても不思議ではない。
>「だが――」
> ギザンが小さな袋を投げる。
>「ぬっ!?」
> 黒ずくめがその袋を叩き落とした時、
> ドオオオォォォォォォン
> 雷を帯びていた爪が引き金となり、袋の中に入っていた火薬が爆発した。

レミーさん、本当に怖い台詞を(汗)そして、ギザンさん。さすがです。
どうも私の目にはギザンさんが一番まともで、格好良く戦っているように見えます……。

>「誘拐行為など企みおって! 恥を知れ!」
> ドズッ
> 狙いすましたヒザがマイルズの空いた脇腹をえぐる。
>「ぐぬっ!」
> 肝臓にまで達した衝撃に息を詰まらせるマイルズ。
> 思わずガードを下げてしまったマイルズに、フィルはさらなる追撃を仕掛けるが、
> フッ――
> 合気道の要領で、マイルズがとっさにフィルの拳の向きを反らす。
>「うっ!?」
> 完全に仕留めにかかった一撃を受け流され、フィルの重心が不安定に泳ぐ。
>「うおりゃぁっ!」
> 運動の法則に従うしかないフィルのこめかみ目掛けて、マイルズが回し蹴りを放った。

似たもの同士のガチンコバトル。想像しただけで迫力あります、このお二人の
戦い……。パワーもビジュアルも強烈そうです……。

> ランガーシャは戦いより子守りで忙しかった。
>「ぶえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
>「おーよしよし、今からお乳あげるから泣き止むぞえ」
>『ぎょええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』
> ズザザザザッ
> 黒ずくめたちは逃げ出した。

気持ちは良く分かります。不幸な黒ずくめ&リ(省略)ナ……。
それより、子ども生んでないのに出るんですか、ランガーシャ様。

>「えぇい! ならこれでいいだろ!? 黒霧炎【ダーク・ミスト】」
> 黒ずくめの一人がランガーシャの周囲を闇の霧で覆った。これならランガーシャの授乳は誰からも見られることはない……はずであった。
> ドオオオォォォォォォン
> ギザンが起こした予期せぬ爆風が霧を吹き飛ばした。
> そして、(以下の描写は公共の場にふさわしくないので割愛)になった。
>「ぐはっ!!」
> 黒ずくめたちが泡を吹いて倒れた。
>「男の方って……みんなこうなのでしょうか?」
>「敵の集団を一瞬で悩殺してしまうとは……わしも罪な女ぞえ」
> と、別の意味で罪な女が甚だしい自己満足に浸っていると、
> パチン――
> 黒ずくめの一人の肉が弾けた。

せっかくの心遣い(?)も、戦いの中では無駄になるのですね……。
そして……魔性の子ならぬ魔性の女が降臨しました。
敵に与えるダメージは饕餮(とうてつ)レベル……。ああ、やはり魔性の子……。
(注:意味は「魔性の子」小野不由美.作を参照して下さい。「十二国記」でも可。
そういえば、アニメも、もう地上波は泰麒編に入ったので丁度良いかも)

>「危ねぇところだったなぁ、フィルの旦那」
>「ゼクター!」
> ゼクターと呼ばれた黒豹は、ニヒルな笑みを浮かべて、
>「俺だけじゃないぜ」
>『おうよ、俺たちを忘れてもらっちゃ困るぜ!』
> シュタタタタッ
> ゼクターの声に合わせて、木の上から、人間の手足が生えた魚や人面グモ、狼人間、トカゲ人間、さらに、フィルと容姿が似た男が姿を現した。
>「ヌンサ! バーヅ! フェルティス! グライモア! テリウス!」
>「水臭いぞフィル。俺たちも誘ってくれよ」
> フィルの肩を叩きながら、ヌンサが親指を立てて言った。
>「すまん」
>「おいおい、こういう時は『ありがとう』っていうんだぜ」
> フィルの額を爪が伸びた人差し指で軽くつつきながら、グライモア。
>「よし! みんないくぜ!!」
>「オウッ!!」
> ゼクターの号令で一同が握り拳を高く上げ、触手に向かって駈け出していく。
>『うおりゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
> ブゴオオォォォォォォォッ
> 意気込み勇んだゼクターたちの一撃がディオルの顔を粉砕した。

ああ、さわやかにフィルさんの仲間が現れましたね……。
そしてやはり勘違いで倒される勇者(笑)……無理もないですけれど。
浄化されたり、粉砕されたりしても、元通り復活するディオルさん……。
ウィニーさんの腕は本当に良いんだなあと、今思いました。

> タイトルと中身がかみ合ってない、かつ本当に久しぶりの第十六話です。もしかしたら次回もお久しぶりになるかも……。
> 三ヶ月くらいごぶさたしているうちに、新しくご来訪している方々が多いですね。どうも、初めまして。わたしはDiracと申します。
> そろそろ物語も佳境に入りかけるところですが、DQ4というベースがあっても小説は楽に書けないものだということを身をもって痛感いたしました。当初は今くらいの時期にはもう終わっている予定だったという、完膚なきまでの見通しの甘さを笑ってやって下さい。

間が開いても、パワーは衰えませんね。凄いです。楽しませていただきました。
ベースがあっても、これだけ個性的、尚かつ、ひたすら濃いキャラで味付け
するわけですから、本当に大変だと思います。
何より、書かれているキャラらしい言動に(一部は崩れまくってますが)、
しなくてはならないですし。
ギャグも……書くの本当に大変ですから、毎回毎回凄いと思っています。
本当に……今回のランガーシャ様には、勝てません。
毎回笑いつつ、次はどうなるのかなと思って読んでいます。
続きをお待ちしています。
それでは、拙いコメントですが、この辺で失礼いたします。

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26539ちょっとだけよ〜(はーと) byカトちゃんDirac E-mail URL2003/7/17 21:54:59
記事番号26534へのコメント

 本当にお久しぶりです。

>「導かれちゃった者たち」復活ですね♪
>いつもパワフルなお話ですが、いろんな意味で、今回も凄まじいですね……(汗)
>特にランガーシャ様……(遠い目)……大丈夫でしょうか、リ(省略)ナ……。

 申し訳ありませんが、復活というほど執筆のメドは立っていません。

>>「うむ。わたしは見ての通り大地の妖精だが――」
>>『見ても分かんねーぞえ』
>> 心の中でツッコむランガーシャ。だからあんたがツッコむ権利ないって……。
>
>ある意味、お互い様ですよね……。「見ても分からない」のは……(汗)

 百聞は一見に如かずなんて言いますが、人間の目ほど不確かなものはありません。

>> 予測不可能な展開に、因縁浅からぬ黒ずくめたちとの再会したにもかかわらず、ランガーシャとマリアテーゼは、緊張感が高まるどころか、むしろ妙な脱力感に襲われていた。
>
>確かに、脱力の方が大きいかも……。

 もう箸も持てません。
 これに比べれば、夏バテなんてかわいいものです。

>> ザスザスザスッ
>> そのほとんどがフィリアの頭に突き刺さった。
>
>フィリア……とことん不幸です……(ほろり)
>
>> フィリアの閃光の吐息【レーザー・ブレス】が、悲鳴もろとも黒ずくめ集団(とガードナー)を焼き尽くした。
>
>そして、やはりこうなるんですね。がんばれフィリア、負けるなフィリア!

 今はその辺に生えている雑草がエサだとしても、世界が平和になればティータイムをゆっくり過ごせるはずだ!!

>レミーさん、本当に怖い台詞を(汗)そして、ギザンさん。さすがです。
>どうも私の目にはギザンさんが一番まともで、格好良く戦っているように見えます……。

 彼は存在を隠す路線のキャラですので、他の皆さんが強烈に濃厚な場合は埋もれてしまうのです。

>似たもの同士のガチンコバトル。想像しただけで迫力あります、このお二人の
>戦い……。パワーもビジュアルも強烈そうです……。

 イメージはゴジラ対キングコング。

>>「おーよしよし、今からお乳あげるから泣き止むぞえ」
>>『ぎょええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』
>> ズザザザザッ
>> 黒ずくめたちは逃げ出した。
>
>気持ちは良く分かります。不幸な黒ずくめ&リ(省略)ナ……。
>それより、子ども生んでないのに出るんですか、ランガーシャ様。

 多分、その気になれば出ると思います。

>>「敵の集団を一瞬で悩殺してしまうとは……わしも罪な女ぞえ」
>> と、別の意味で罪な女が甚だしい自己満足に浸っていると、
>> パチン――
>> 黒ずくめの一人の肉が弾けた。
>
>せっかくの心遣い(?)も、戦いの中では無駄になるのですね……。
>そして……魔性の子ならぬ魔性の女が降臨しました。
>敵に与えるダメージは饕餮(とうてつ)レベル……。ああ、やはり魔性の子……。
>(注:意味は「魔性の子」小野不由美.作を参照して下さい。「十二国記」でも可。
>そういえば、アニメも、もう地上波は泰麒編に入ったので丁度良いかも)

 ランガーシャ様の『タブー』はノリで書いちゃいました。
 このシーンが年齢制限に引っかかるのかなんて考えずに書いちゃいましたが、消されていないということは、大丈夫だったようです。
 問題シーンをカットして正解でした。(笑)

>>『うおりゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
>> ブゴオオォォォォォォォッ
>> 意気込み勇んだゼクターたちの一撃がディオルの顔を粉砕した。
>
>ああ、さわやかにフィルさんの仲間が現れましたね……。
>そしてやはり勘違いで倒される勇者(笑)……無理もないですけれど。
>浄化されたり、粉砕されたりしても、元通り復活するディオルさん……。
>ウィニーさんの腕は本当に良いんだなあと、今思いました。

 今回の結びは前回を書き上げた時点で決めていました。
 ……まあ、そのうちディオルの見た目が役に立つ日も来ます。
 
>間が開いても、パワーは衰えませんね。凄いです。楽しませていただきました。
>ベースがあっても、これだけ個性的、尚かつ、ひたすら濃いキャラで味付け
>するわけですから、本当に大変だと思います。
>何より、書かれているキャラらしい言動に(一部は崩れまくってますが)、
>しなくてはならないですし。
>ギャグも……書くの本当に大変ですから、毎回毎回凄いと思っています。
>本当に……今回のランガーシャ様には、勝てません。
>毎回笑いつつ、次はどうなるのかなと思って読んでいます。
>続きをお待ちしています。
>それでは、拙いコメントですが、この辺で失礼いたします。

 お褒めのお言葉ありがとうございます。 
 確かに個性をコントロールするのも極めて困難ですが、あらすじにもひーひーと悲鳴を上げています。
 でも、崩れまくってるキャラなんていたでしょうか? キャラは忠実に再現しているはずですが……。(コラコラ)
 次回はディオルが復活します。(←予告になってない)

 味も素っ気もない返事ですいません
 それでは。

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26559仲間がいれば・・・不安が一杯?(汗)びぎなーいっく。 2003/7/21 23:53:48
記事番号26531へのコメント

お久しぶりでございます。いっくですm(__)m
とっても面白いです!テスト前なもので読み逃げ君のつもりだったのですが(こら)
思わずお目汚しながらコメント書きたくなってしまいました!!!(><)

> 明らかに味方に注意を促す内容と、目の前の代物を形容した『姫』という言葉が、親分の目の色を変えさせた。どちらが彼により強い衝撃を与えたのかは定かではない。
フィルさんなら前者だと思います。あくまで、フィルさんならば・・・・(汗)

>「ぬおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
> 類は友を呼ぶのか、黒ずくめが圧倒的多数を占める状況で、フィルは何故か真っ先にマイルズに戦いを挑んだ。
神官だから?見かけ?肉体派?(笑)
いずれにせよ嫌な類ですね・・・(涙)

> マイルズの体勢が崩れかかったところ、すかさずフィルも右ジャブを返す。……って、彼は踊り子ですが。
そういえばそんなんでしたね。
激しく忘れ(ようとし)ていましたが。(笑)

> と、別の意味で罪な女が甚だしい自己満足に浸っていると、
熟女の魅力ですね(はぁと)

>「水臭いぞフィル。俺たちも誘ってくれよ」
> フィルの肩を叩きながら、ヌンサが親指を立てて言った。
アナタは生臭いです。(爆)

> 意気込み勇んだゼクターたちの一撃がディオルの顔を粉砕した。
あ、あれ?(滝汗)

本当に楽しかったです。(爆笑してました)
個人的にはなんか男前なフィルさんの仲間達がイイです。(笑)
ではでは、また楽しい&スバラシイ続きにお会いできることを期待しつつ・・・

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26585不安が小さじ一杯ですむということでしょうか?Dirac E-mail URL2003/7/26 21:22:21
記事番号26559へのコメント

>お久しぶりでございます。いっくですm(__)m
>とっても面白いです!テスト前なもので読み逃げ君のつもりだったのですが(こら)
>思わずお目汚しながらコメント書きたくなってしまいました!!!(><)

 これはこれはお久しぶりです。
 テスト勉強より感想を優先していただき、ありがとうございました。(テスト大丈夫でしたか?)

>> 明らかに味方に注意を促す内容と、目の前の代物を形容した『姫』という言葉が、親分の目の色を変えさせた。どちらが彼により強い衝撃を与えたのかは定かではない。
>フィルさんなら前者だと思います。あくまで、フィルさんならば・・・・(汗)

 フィルさん? 誰のことでしょうか?
 ここには『親分』としか書いていませんが。(笑)

>>「ぬおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
>> 類は友を呼ぶのか、黒ずくめが圧倒的多数を占める状況で、フィルは何故か真っ先にマイルズに戦いを挑んだ。
>神官だから?見かけ?肉体派?(笑)
>いずれにせよ嫌な類ですね・・・(涙)

 多分、正義に燃える心の持ち主類です。

>> マイルズの体勢が崩れかかったところ、すかさずフィルも右ジャブを返す。……って、彼は踊り子ですが。
>そういえばそんなんでしたね。
>激しく忘れ(ようとし)ていましたが。(笑)

 ココだけの話……でもありませんが、彼は現在構想中の話でも踊ります。

>> と、別の意味で罪な女が甚だしい自己満足に浸っていると、
>熟女の魅力ですね(はぁと)
 
 特にうなじがたまらんのぉ〜。 by黒ずくめ

>>「水臭いぞフィル。俺たちも誘ってくれよ」
>> フィルの肩を叩きながら、ヌンサが親指を立てて言った。
>アナタは生臭いです。(爆)

 実はナロフを忘れていました。
 まあ、いてもいなくても差し支えありませんけど。

>> 意気込み勇んだゼクターたちの一撃がディオルの顔を粉砕した。
>あ、あれ?(滝汗)

 まあ、初対面で分かり合えることなんてありませんから、意見の食い違いで殴り合いなんてこともあるわけでして、多めに見てやってください。雨降って地固まるのです。(え? そういうことじゃない?)
 今ふと思ったのですが、地は『゛』なしだと『ち』と読むのに、どうして『゛』つけると『じ』と読むのでしょうか? (全然関係ねぇ……)

>本当に楽しかったです。(爆笑してました)
>個人的にはなんか男前なフィルさんの仲間達がイイです。(笑)
>ではでは、また楽しい&スバラシイ続きにお会いできることを期待しつつ・・・

 それでは、次回作ができあがるのを期待しつつ……。(こらこら)

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26600導かれちゃった者たち 第十七話 騎士道Dirac E-mail URL2003/7/29 21:22:56
記事番号26530へのコメント

「どうやら暴走したようですね」
「『暴走したようですね』じゃないっ!!」
 ゴツッ
 主に黒ずくめの突然変異を問い詰められ、屍肉呪法【ラウグヌト・ルシャヴナ】を応用した蘇生方法がまだ実験段階であったことを部下が半ば開き直りぎみに白状すると、案の定主から雷が落ちた。
「実験段階だったのならそれを早く言え!!」
「だって、そんなこと言ったら『なにぃい! まだ完成せんのか! このノロマ!!』って怒るじゃないですか。あと、今まで何度も言ってきましたけど、あまり強く殴らないで下さいよぉ」
 殴られた頭をさすりながら、反省の色が全くない返事をする部下。
「えぇいうるさい! この状況をどうしてくれるんだ!?」
 完全に制御不能になり、命令そっちのけで暴れるガルヴァのなれの果てを指差し、主が怒鳴り散らす。これではリュスティーナ生け捕りどころか、彼女の命を奪いかねない。それでは計画が台無しだ。
「そしたら……わたしの蘇生技術でもって――」
「未完成なんだろうがああぁぁぁぁぁぁっ!!」
 結局、怒鳴り散らすだけで対策は思いつかず――。
 彼らにアジトへの帰還命令が下ったのは、それから間もなくのことであった。

「すまん」
 いつも通り復活したディオルに、ゼクターたちは素直に謝った。
「気になさるな。それより、このまま受身になっていても耐えられそうにない。こちらも攻めなければ」
「よし。ディオルさんと俺とゼクター、グライモアは攻撃。残りはマイルズさんの護衛だ」
「……オゥっ!!」
 こんな状況で班分けを熟考しても時間の無駄である。ディオルと組むことに生理的拒絶を感じたゼクターたちだったが、この分担に異議は唱えることは誰もしなかった。まあ、ディオルが近くにいるとマイルズの傷が悪化しそうなのは確かではあるが。
「よし、いくぞ!!」
 ザシュッ ジュブッ グシュッ
 眼前に伸びてくる触手を次々と斬りのけ、ディオルたちが前進を始めた。
「氷結弾【フリーズ・ブリッド】」
 それと同時に、ヌンサがディオルたちの援護射撃をする。
「このっ、もやしみたいなくせに!」
「一日一善チョオオオオオォォォォォォォォーーーーーーップ!」
 さらに、バーヅ足に生えた爪で、フィルは手刀で、触手に応戦する。
「マイルズさん、薬塗ります」
 触手に奮闘するフィル、ヌンサ、バーヅの後ろでは、応急処置に長けているテリウスがマイルズの治療にあたる。
「ああっ! しまった!!」
 何故か至って無傷の箇所に薬を塗って悔恨の声を上げるテリウスに、マイルズの目が思わず点になる。
「す、すいません! 僕、本番に弱いタイプなんで……」
 顔面から血の気が失せたテリウスが、全身から脂汗をドボドボ垂らしながら震えたかすれ声でそう言った。

「ぞえええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
 再生力が異常な触手から逃れようと、ランガーシャがフィリアを全速力で走らせる。
「何とかならんかぞえ!? このままではリュスティーナが腹ペコぞえ!」
 ……あんた本気で飲ますつもりか?
「そう言われましても、この再生速度は手におえませんわ!」
 何度葬っても何事もなかったかのように復活する触手を相手に、魔法で撃退という反復作業を繰り返しながら、マリアテーゼが悲鳴混じりに言う。
「この再生能力、まるでどこかの誰かさんみたいですわ!」
「ランガーシャ姫!!」
「わっぴょ〜んですわ!!」
 不意をつくどこかの誰かさんの登場に、マリアテーゼがハイソならざる声を上げる。
「ディオル殿か! その者たちは?」
「心強い味方です」
 ゼクターたちを見慣れぬランガーシャに、ディオルが簡単な紹介をした。
「ところで、この触手は一体何ですか!?」
『ところで、この老婆は一体何ですか!?』
 姫と呼ばれてどこからどう見ても純粋な老婆が返事をしたことに、恐怖すら覚えるゼクターたち。
「よく分からないが……黒ずくめの一人が突然変異したぞえ」
「黒ずくめが突然変異? そんなバカな!」
『お前らも突然変異だろっ!!』
 そう言う彼らも進化の実験という人為的な突然変異で生まれてきたのだが、彼らの主張に矛盾を一切感じないのは何故だろうか?
「それなら、その黒ずくめを倒せば触手も消滅するかも――」
 二人があれこれ話している(ゼクターたちは会話参加不可能状態)時も、
『おわっ!?』
 疲れを知らない触手は絶え間なく彼らに襲いかかる。
「これじゃあ近寄ることすらできんぞえ」
 それどころか、触手を相手に彼女たちはその場を移動することさえままならない。
 ドシャアアアァァァァァァァァン
 さらに、馬車が何本もの触手に貫かれ、その勢いで横転した。
「きゃああぁぁぁっ!!」
『ナニシヤガルッ! コノボケナスゥッ!!』
 馬車の中にいたマリアテーゼは放り出され、フィリアは触手に拘束された。
「ぶええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
 リュスティーナは運良く無事であったが、それは一時的なこと。
 シャッ――
 泣きじゃくるリュスティーナに、触手がその牙を向く。だが、誰も何もできない。
「くそおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
 誰もが最悪を思い描いた瞬間――、
「リュスティーナ姫っ!!」
 傷だらけの体を引き裂く勢いで、ユーリィがリュスティーナの前に飛び出した。

 騎士道――守るべき者のためには命も捧げる。
 彼はまさにそれを体現した。
「ユーリィ!!」
「があっ!!」
 自らをリュスティーナの盾としたユーリィが、十数本の触手に体中を貫かれた。
 グジュリッ
 筋肉に食いつく不快な音を立てながら、触手はさらに彼の体を蝕んでいく。だが、彼は懐のリュスティーナを決して放さず、自らの血に染まることにただひたすら耐えていた。
「うへへへへへ……リュスティーナ姫ぇ!!」
『……………………………………………………………………………………』
 ……わけではなく、この状況において自らの欲望を思うがままに叶えていた。ちなみに出血は鼻血の割合が多い。
 墜ちていくだけのユーリィに、いや、だからこそ触手は容赦なく――
「いい加減斬り飽きたわ」
 間一髪で現れたレミーが、ユーリィを縛めていた触手を斬り落とす。
「地霊砲雷陣【アーク・ブラス】」
 バチバチバチッ
 一拍遅れてギザンが放った雷撃が触手をくまなく走り回り、その活動を鈍らせる。
「レミー殿! ギザン殿!」
『え? どこどこ? どこにいるの!?』
 ギザンが真正面にいるはずなのに、ゼクターたちは何も見えないどころか、音一つ聞こえなかった。
「リュスティーナ!!」
 ガゴッ
 ディオルがユーリィにとどめのフライングエルボーをかまし、リュスティーナを救出する……はずだったが、
「……あれ?」
 ユーリィの腕の中から現れたのは、両手に収まるくらいの女の子の人形だった。
「くっくっくっくっ……、それはぴこぴこリナちゃん。リュスティーナはここです」
 声がした方を向くと、ラティーナがリュスティーナを抱きかかえていた。
「彼が飛び出す寸前に心霊現象ですり変えておきました」
「そうか。よかった」
 確かに、ユーリィはもとよりディオルに救出されなくてよかった。
「よし、この子は俺たちが保護する。今のうちに触手の本体を叩いてくれ」
「ああ、それがいい。俺たちじゃ足手まといになりそうだ」
「この丘と俺たちの運命、……あんたらに賭けたぜ」
 こう言ってはいるが、彼らの本音は『これ以上は身がもたねぇ』である。だが、彼らを責めることはできない。器は自分の大きさ以上の水に対して宿命的に無力なのだ。
「分かったわ。あたしたちに任せて」
「後で酒でも酌み交わそう」
「……オウッ!!」
『勘弁してくれっ!!』
 手を振りながら導かれ(ちゃっ)た者たちと別れたゼクターは、彼らが視界から消えると猛ダッシュで逃げた。
「よし……行くか」
 ディオルの言葉に皆がうなずく。
 そしてその場に残ったのは、しびれが消えた触手に生気を吸われ続けながら、何を妄想しているのか、危ない笑みをひたすら浮かべるユーリィだけだった。

 触手の中心に辿りついたディオルたちが目にしたのは、クモのような脚を十本ほど生やした肉の塊だった。その肉に埋もれるようにして、黒ずくめの素顔が見えた。
 黒ずくめはいつも頭巾をかぶっていたので、ディオルたちにはそれが誰だか全く見当がつかない。
 ――ジロッ
 その表情がかもし出す明らかな破壊衝動には、恨みや怒り、憎しみといった動機付けが全くなく、行為そのものを目的としている印象もない。あまりにも無機質な殺意。
 敵ながらあまりに哀れな末路に、一瞬ディオルたちの緊張の糸が切れる。
 その一瞬――、
『――!?――』
 黒ずくめのなれの果てが突然脈動し、ディオルたちの体が自由を失った。
「こ、これは!!」
 文字通り踊らされながら、ディオルが驚愕の声を上げる。
 黒い肉の塊が繰り出したのは、マイルズのさそう踊りであった。
「何故こいつがマイルズ殿の踊りを!?」
「もしかして、傷つけた人間の能力を吸収できるぞえか?」
 と、ランガーシャ。
 だが、それが分かったところで体の自由が取り戻せるわけではない。
 ズシャッ
「ぐおっ――」
 不意に吹き上げた無数の触手がディオルの体を貫通した。
「ディオル殿!!」
 ギザンが叫ぶが、意志とは裏腹に体がディオルからどんどん遠ざかっていく。
 ギザンだけではない。この場にいる全員が、食い散らかされるディオルを中心に広がっていく円のように、引き離されていく。
「くっ、戦力を分断していくつもり!?」
 まるで激流に流される感覚を味わうレミー。
「きゃっ!」
 ドスン
 石につまづいて後ろに倒れたラティーナは、受身も取れずに頭を打った。
 トサッ
 その拍子に、ラティーナのポケットからぴこぴこリナちゃんがこぼれ落ちる。
 パコオオォォォン
「あっ」
 ぴこぴこリナちゃんが偶然通りかかったマリアテーゼに蹴り飛ばされた。
「ああっ!! 体が勝手に動いているとはいえ何てハイソでない行為を!!」
 さらに不幸なことに、ぴこぴこリナちゃんは触手の本体へと飛んでいった。
 コツ
 極めつけに、ぴこぴこリナちゃんはあろうことかディオルの残骸に落下した。
『……………………』
 だが、何故かぴこぴこリナちゃんを触手の本体は凝視し、
 スリスリ
「ゆおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん」
 ぴこぴこリナちゃんを手に取り、嬉しそうに顔にすりすりしていた。
 ……………………………………………………………………………………
 しばらく、全員何が起こったか分からなかったが、
「くっくっくっ。……どうやらユーリィの能力を吸収したらしいわ」
 ラティーナの発言にさそう踊りが解けた一同納得。
 さらに、
「ゆおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん」
 表現する術のない音が彼らの耳をつんざいた。
「何だ!?」
 思わず全員が周囲を見回すと、
「しょ、触手がしおれてる!!」
 それまで血気盛んに暴れまわっていたのが嘘のように、触手はすっかり萎【しな】びていた。
 ふと、触手本体の方に目をやると、
「ゆおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん」
 本体はしばらく苦しみもがき、やがて動かなくなった。
 しばらく何がどうなっているのか誰も分からなかったが、『もし自分がディオルを食べたら』という観点で思考を巡らせると、
『やつは毒を自分から食ったんだ!!』
 この時彼らは、フグには毒があり、薔薇には棘があることを思い出した。
 ……あのぉ、『フグの毒』も『バラのトゲ』も適切な比喩じゃないと思うんですが。

 死闘から一夜明けた。
 一時の誤解などなかったかのように、この丘の住人たちはすっかりディオルたちと打ち解けた……と導かれ(ちゃっ)た者たちは思っている。
 その後、彼らは一丸となってこの名もなき丘の修復に取り組み、宴を開いて酒を酌み交わし、互いの絆を深め合った……と導かれ(ちゃっ)た者たちは思っている。
 リュスティーナに関しては、ランガーシャ直筆の手紙でバトランド王ベリーウッズに彼女の身柄確保の旨を伝えた。バトランドから迎えが来るまでは、フィルたちが彼女を保護している。
 無論、ユーリィが叩かれなかったわけではなかった。
 しかし、ディオルたちの懸命の説得……が特にあったわけでもないが、我が身を挺してリュスティーナを守った勇気ある行動を認められ……たのかどうかは議論の余地があるが……いや、逆にないが、バトランド国会は、史上まれに見る早さかつ与党野党問わず満場一致で、今後ユーリィたちには一切関わらない……もとい、ユーリィを騎士団から永久追放するかわりに無罪放免とした。
 さらに、いつの間にかごく自然にディオルたちの仲間になっていたユーリィは、騎士道精神を貫いているわけではないのは言うまでもないが、リュスティーナへの想いをきっぱりと断ち、ぴこぴこリナちゃんに心を入れ替えたという。
 そして、後はガウリイを待つだけとなったのだが……。
「急用で来ないだとおおおぉぉぉぉっ!!」
 ゼロス(生きてた)に届いた伝書を読むなり、名もなき丘に訪れた最大の目的に関しては全くの徒労であったことを悟り、ディオルたちが絶叫した。

 ちなみに、後にバトランドの女王となったリュスティーナが、他に類を見ない過激な手法でゾンビ禁止法を強行採択したとか、しないとか……。










 ロザリーヒル編が予定より一話多くなっちゃいました(多分フィルさんが登場したから)。その代わりというわけでもないですが、魔神像はカットします。
 その魔神像編ですが、今回登場したぴこぴこリナちゃんを魔神像にしようと考えてました。ただ、それ以外何も思い浮かばなかったのですが……。
 あと、ザインがいつの間にか消えていることは気にしないで下さい。

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26602最強のぴこぴこリナちゃんエモーション E-mail 2003/7/29 23:07:55
記事番号26600へのコメント

こんばんは♪
17話ですね♪ ロザリーヒル編も今回で終了。リ(省略)ナも無事に、
魔の手(いろんな意味で)から解放されて、一応めでたしめでたし、ですね。

>「実験段階だったのならそれを早く言え!!」

み、未完成のものを実戦で使いますか……(汗)
自分でもどんな威力のある技なのか、全く知らずに必殺技を使って、ビルを
真っ二つにした昔のアニメの主人公を思い出しました……(汗)。
(初めて見る、と言っている仲間に一言「俺もだ」と言ったのには、ひたすら
TVの前でツッコミを入れました。ええ、もう。)

> 彼らにアジトへの帰還命令が下ったのは、それから間もなくのことであった。

放置していくなんて無責任な……。ペットは飼い主が最後まで責任持って
飼いなさーいっ!!!! ……あれ、何か違う。

> 再生力が異常な触手から逃れようと、ランガーシャがフィリアを全速力で走らせる。
>「何とかならんかぞえ!? このままではリュスティーナが腹ペコぞえ!」
> ……あんた本気で飲ますつもりか?
>「そう言われましても、この再生速度は手におえませんわ!」
> 何度葬っても何事もなかったかのように復活する触手を相手に、魔法で撃退という反復作業を繰り返しながら、マリアテーゼが悲鳴混じりに言う。
>「この再生能力、まるでどこかの誰かさんみたいですわ!」

違いは、勝手に再生するか、そうじゃないかですね。彼の場合は、
再生させている方がいますから……。
それにしても、ランガーシャ様、また周囲を悩殺するつもりなのでしょうか(滝汗)

>「よく分からないが……黒ずくめの一人が突然変異したぞえ」
>「黒ずくめが突然変異? そんなバカな!」
>『お前らも突然変異だろっ!!』
> そう言う彼らも進化の実験という人為的な突然変異で生まれてきたのだが、彼らの主張に矛盾を一切感じないのは何故だろうか?

何故なのでしょうねぇ……(遠い目)

>「ぶええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
> リュスティーナは運良く無事であったが、それは一時的なこと。
> シャッ――
> 泣きじゃくるリュスティーナに、触手がその牙を向く。だが、誰も何もできない。
>「くそおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
> 誰もが最悪を思い描いた瞬間――、
>「リュスティーナ姫っ!!」
> 傷だらけの体を引き裂く勢いで、ユーリィがリュスティーナの前に飛び出した。
>
> 騎士道――守るべき者のためには命も捧げる。
> 彼はまさにそれを体現した。
>「ユーリィ!!」
>「があっ!!」
> 自らをリュスティーナの盾としたユーリィが、十数本の触手に体中を貫かれた。

この場面だけ見ていると、本当に騎士道を貫いているのですが……。

> 筋肉に食いつく不快な音を立てながら、触手はさらに彼の体を蝕んでいく。だが、彼は懐のリュスティーナを決して放さず、自らの血に染まることにただひたすら耐えていた。
>「うへへへへへ……リュスティーナ姫ぇ!!」
>『……………………………………………………………………………………』
> ……わけではなく、この状況において自らの欲望を思うがままに叶えていた。ちなみに出血は鼻血の割合が多い。

全然同情する気になれないのが、不思議です……(遠い目)
どんな状況でも自分の趣味(?)を優先させる姿勢は、さすが……。

> 墜ちていくだけのユーリィに、いや、だからこそ触手は容赦なく――

ちょっと、触手の方を応援したくなったかも……。

> ユーリィの腕の中から現れたのは、両手に収まるくらいの女の子の人形だった。
>「くっくっくっくっ……、それはぴこぴこリナちゃん。リュスティーナはここです」

ぴこぴこリナちゃん……。身代わり人形の選択がナイスです、ラティーナさん!! 
誰も違和感持たないでしょう!(爆笑)
心霊現象という単語が気になりますが(笑)

>「よし……行くか」
> ディオルの言葉に皆がうなずく。
> そしてその場に残ったのは、しびれが消えた触手に生気を吸われ続けながら、何を妄想しているのか、危ない笑みをひたすら浮かべるユーリィだけだった。

……ユーリィさんも、本体ごと闇に滅してください……(汗)

> 黒い肉の塊が繰り出したのは、マイルズのさそう踊りであった。
>「何故こいつがマイルズ殿の踊りを!?」
>「もしかして、傷つけた人間の能力を吸収できるぞえか?」
> と、ランガーシャ。
> だが、それが分かったところで体の自由が取り戻せるわけではない。
> ズシャッ
>「ぐおっ――」
> 不意に吹き上げた無数の触手がディオルの体を貫通した。
>「ディオル殿!!」
> ギザンが叫ぶが、意志とは裏腹に体がディオルからどんどん遠ざかっていく。
> ギザンだけではない。この場にいる全員が、食い散らかされるディオルを中心に広がっていく円のように、引き離されていく。

多分また復活するんだろうなーと思っても、やはりシリアスで緊迫した場面ですね。
でも、ゾンビ(ディオルさん)の能力を吸収したら、どうなるのでしょう……。

> だが、何故かぴこぴこリナちゃんを触手の本体は凝視し、
> スリスリ
>「ゆおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん」
> ぴこぴこリナちゃんを手に取り、嬉しそうに顔にすりすりしていた。
> ……………………………………………………………………………………
> しばらく、全員何が起こったか分からなかったが、
>「くっくっくっ。……どうやらユーリィの能力を吸収したらしいわ」

……………………ユーリィさん、初めて役に立ったかも………………。
そして、ぴこリナ……最強です!!

> それまで血気盛んに暴れまわっていたのが嘘のように、触手はすっかり萎【しな】びていた。
> ふと、触手本体の方に目をやると、
>「ゆおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん」
> 本体はしばらく苦しみもがき、やがて動かなくなった。
> しばらく何がどうなっているのか誰も分からなかったが、『もし自分がディオルを食べたら』という観点で思考を巡らせると、
>『やつは毒を自分から食ったんだ!!』

飼い主が、道に落ちているものを食べてはいけません、と躾をしないから(笑)

> 死闘から一夜明けた。
> 一時の誤解などなかったかのように、この丘の住人たちはすっかりディオルたちと打ち解けた……と導かれ(ちゃっ)た者たちは思っている。
> その後、彼らは一丸となってこの名もなき丘の修復に取り組み、宴を開いて酒を酌み交わし、互いの絆を深め合った……と導かれ(ちゃっ)た者たちは思っている。

敵対しなければ無問題でしょう、このメンバーでは。
そして、しっかり復活しているのですね、ディオルさん。本当に、ウィニーさんは
死霊使いとして、いい仕事しています。

> しかし、ディオルたちの懸命の説得……が特にあったわけでもないが、我が身を挺してリュスティーナを守った勇気ある行動を認められ……たのかどうかは議論の余地があるが……いや、逆にないが、バトランド国会は、史上まれに見る早さかつ与党野党問わず満場一致で、今後ユーリィたちには一切関わらない……もとい、ユーリィを騎士団から永久追放するかわりに無罪放免とした。

問題のある奴を丸投げしましたね(汗)バドランド……。無理もないですが。

> さらに、いつの間にかごく自然にディオルたちの仲間になっていたユーリィは、騎士道精神を貫いているわけではないのは言うまでもないが、リュスティーナへの想いをきっぱりと断ち、ぴこぴこリナちゃんに心を入れ替えたという。

ぴこぴこリナちゃん……やっぱり最強かもしれない……。
リ(省略)ナの代わりに、一個置いていったら、ガウリイは満足するような
気がしてきました。
……って、メンバーに加わるんですか? ユーリィさんっ?!

>「急用で来ないだとおおおぉぉぉぉっ!!」
> ゼロス(生きてた)に届いた伝書を読むなり、名もなき丘に訪れた最大の目的に関しては全くの徒労であったことを悟り、ディオルたちが絶叫した。

生きてましたか、ゼロス……。それにしても急用って、何があったのでしょう。

> ちなみに、後にバトランドの女王となったリュスティーナが、他に類を見ない過激な手法でゾンビ禁止法を強行採択したとか、しないとか……。

とりあえず、リュスティーナ姫は、その後無事に平和に暮らしたのですね。
ゾンビ禁止法……。きっと、トラウマになっているのでしょうね……(汗)

> その魔神像編ですが、今回登場したぴこぴこリナちゃんを魔神像にしようと考えてました。ただ、それ以外何も思い浮かばなかったのですが……。
> あと、ザインがいつの間にか消えていることは気にしないで下さい。

ぴこぴこリナちゃんの魔神像……。歩くたびにピコピコいうのでしょうか。
魔神像省略と言うことは、次は……どこだったのか、忘れてます、私(汗)
結構あちこち、ふらふらして歩いてましたし。

楽しんで読ませていただきました。
もう、シリアスな展開とギャグの落差、そして意外な展開に圧倒されてます。
ぴこぴこリナちゃんの使い方には、もう……凄いとしか。
代理のレミーさん(正規のメンバーが加わったからって、いなくなったり
しませんよね?)と本来のメンバー(?)ユーリィさんが加わった
「導かれちゃった者たち」。
大所帯になってますので、キャラを動かすのも大変だ思いますが、
続きが楽しみです。
それでは、この辺で失礼いたします。

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26623進化形のぴこぴこリ(略)ナちゃんDirac E-mail URL2003/8/1 19:09:12
記事番号26602へのコメント

>こんばんは♪
>17話ですね♪ ロザリーヒル編も今回で終了。リ(省略)ナも無事に、
>魔の手(いろんな意味で)から解放されて、一応めでたしめでたし、ですね。

 とても恐いことを経験して、リ(略)ナも大人への階段を一つ上りました。
 ……一つどころじゃない。

>>「実験段階だったのならそれを早く言え!!」
>
>み、未完成のものを実戦で使いますか……(汗)
>自分でもどんな威力のある技なのか、全く知らずに必殺技を使って、ビルを
>真っ二つにした昔のアニメの主人公を思い出しました……(汗)。
>(初めて見る、と言っている仲間に一言「俺もだ」と言ったのには、ひたすら
>TVの前でツッコミを入れました。ええ、もう。)

 まあ、この『導かれちゃった者たち』も、ある意味どれほどの威力があるのか全く分からないまま進行していますから。
 ちなみに、

 書いてる本人が夢にも思わなかった出来事ランキング(第一話〜第十七話まで)
  
 10位 ガウリイ=ガブリエルの不幸(アレは予定通り)
  9位 黒ずくめの出番多し
  8位 正確無比なあらすじ
  7位 大地の妖精参上!!
  6位 ぴこぴこリナちゃん
  5位 汚れていくフィリア
  4位 ゼルガディス七変化
  3位 炎の戦士リナ=インバース
  2位 リ(略)ナの臨死体験
  1位 禁断の呪詛『となりの空き地に』発動

>> 彼らにアジトへの帰還命令が下ったのは、それから間もなくのことであった。
>
>放置していくなんて無責任な……。ペットは飼い主が最後まで責任持って
>飼いなさーいっ!!!! ……あれ、何か違う。

 飼い主ラーヴァスは永遠に冷凍されているので無理です。

>>「何とかならんかぞえ!? このままではリュスティーナが腹ペコぞえ!」
>> ……あんた本気で飲ますつもりか?
>>「そう言われましても、この再生速度は手におえませんわ!」
>> 何度葬っても何事もなかったかのように復活する触手を相手に、魔法で撃退という反復作業を繰り返しながら、マリアテーゼが悲鳴混じりに言う。
>>「この再生能力、まるでどこかの誰かさんみたいですわ!」
>
>違いは、勝手に再生するか、そうじゃないかですね。彼の場合は、
>再生させている方がいますから……。
>それにしても、ランガーシャ様、また周囲を悩殺するつもりなのでしょうか(滝汗)

 そのうちランガーシャ姫に誘惑の剣を装備させるかも……。
 そう言えば、本編3巻のあとがきに魅了【チャーム】って魔法がありましたよね。(ニヤリ)

>>「黒ずくめが突然変異? そんなバカな!」
>>『お前らも突然変異だろっ!!』
>> そう言う彼らも進化の実験という人為的な突然変異で生まれてきたのだが、彼らの主張に矛盾を一切感じないのは何故だろうか?
>
>何故なのでしょうねぇ……(遠い目)

 人間のちっぽけな知能では、現前の絶対的存在には勝てないということでしょう。

>> 筋肉に食いつく不快な音を立てながら、触手はさらに彼の体を蝕んでいく。だが、彼は懐のリュスティーナを決して放さず、自らの血に染まることにただひたすら耐えていた。
>>「うへへへへへ……リュスティーナ姫ぇ!!」
>>『……………………………………………………………………………………』
>> ……わけではなく、この状況において自らの欲望を思うがままに叶えていた。ちなみに出血は鼻血の割合が多い。
>
>全然同情する気になれないのが、不思議です……(遠い目)
>どんな状況でも自分の趣味(?)を優先させる姿勢は、さすが……。

 逆境にこそ笑顔を絶やさないことが大切です。

>> 墜ちていくだけのユーリィに、いや、だからこそ触手は容赦なく――
>
>ちょっと、触手の方を応援したくなったかも……。

 ちょっとでいいんですか?

>> ユーリィの腕の中から現れたのは、両手に収まるくらいの女の子の人形だった。
>>「くっくっくっくっ……、それはぴこぴこリナちゃん。リュスティーナはここです」
>
>ぴこぴこリナちゃん……。身代わり人形の選択がナイスです、ラティーナさん!! 
>誰も違和感持たないでしょう!(爆笑)
>心霊現象という単語が気になりますが(笑)

 この辺を書いてた時には、『もったいないから』ぴこぴこリナちゃんを出したのですが、後になってノッてしまいました。

>>「よし……行くか」
>> ディオルの言葉に皆がうなずく。
>> そしてその場に残ったのは、しびれが消えた触手に生気を吸われ続けながら、何を妄想しているのか、危ない笑みをひたすら浮かべるユーリィだけだった。
>
>……ユーリィさんも、本体ごと闇に滅してください……(汗)

 闇の中でもイッっちゃってそうですが……。

>>「ゆおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん」
>> ぴこぴこリナちゃんを手に取り、嬉しそうに顔にすりすりしていた。
>> ……………………………………………………………………………………
>> しばらく、全員何が起こったか分からなかったが、
>>「くっくっくっ。……どうやらユーリィの能力を吸収したらしいわ」
>
>……………………ユーリィさん、初めて役に立ったかも………………。
>そして、ぴこリナ……最強です!!

 この時点で、ぴこぴこリナちゃんのコントロールを放棄してしまいました。
 もう、思うがままです。

>> それまで血気盛んに暴れまわっていたのが嘘のように、触手はすっかり萎【しな】びていた。
>> ふと、触手本体の方に目をやると、
>>「ゆおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん」
>> 本体はしばらく苦しみもがき、やがて動かなくなった。
>> しばらく何がどうなっているのか誰も分からなかったが、『もし自分がディオルを食べたら』という観点で思考を巡らせると、
>>『やつは毒を自分から食ったんだ!!』
>
>飼い主が、道に落ちているものを食べてはいけません、と躾をしないから(笑)

 実は、推敲前の本体の最期は、

 作り主がテリウスの流れ矢に当たる→作り主が「ぐふっ!」と基本に忠実に果てる→触手消滅

でした。 

>> 死闘から一夜明けた。
>> 一時の誤解などなかったかのように、この丘の住人たちはすっかりディオルたちと打ち解けた……と導かれ(ちゃっ)た者たちは思っている。
>> その後、彼らは一丸となってこの名もなき丘の修復に取り組み、宴を開いて酒を酌み交わし、互いの絆を深め合った……と導かれ(ちゃっ)た者たちは思っている。
>
>敵対しなければ無問題でしょう、このメンバーでは。
>そして、しっかり復活しているのですね、ディオルさん。本当に、ウィニーさんは
>死霊使いとして、いい仕事しています。

 喩えるならベホマスライム。勇者を支えるanother heroです。

>> しかし、ディオルたちの懸命の説得……が特にあったわけでもないが、我が身を挺してリュスティーナを守った勇気ある行動を認められ……たのかどうかは議論の余地があるが……いや、逆にないが、バトランド国会は、史上まれに見る早さかつ与党野党問わず満場一致で、今後ユーリィたちには一切関わらない……もとい、ユーリィを騎士団から永久追放するかわりに無罪放免とした。
>
>問題のある奴を丸投げしましたね(汗)バドランド……。無理もないですが。

 君子危うきに近寄らず。触らぬ神にたたりなし。
 所詮、人間はカタストロフィに対抗する力など持っていません。

>> さらに、いつの間にかごく自然にディオルたちの仲間になっていたユーリィは、騎士道精神を貫いているわけではないのは言うまでもないが、リュスティーナへの想いをきっぱりと断ち、ぴこぴこリナちゃんに心を入れ替えたという。
>
>ぴこぴこリナちゃん……やっぱり最強かもしれない……。
>リ(省略)ナの代わりに、一個置いていったら、ガウリイは満足するような
>気がしてきました。

 魔神像が現れるシーンで、『設計者が誰か何となく分かる気がする』という一文を添えるつもりでした。

>……って、メンバーに加わるんですか? ユーリィさんっ?!

 そのへんのユーリィの心理描写を書こうかとも思ったのですが、面倒なのでやめました。
 まあ、機会があれば。

>>「急用で来ないだとおおおぉぉぉぉっ!!」
>> ゼロス(生きてた)に届いた伝書を読むなり、名もなき丘に訪れた最大の目的に関しては全くの徒労であったことを悟り、ディオルたちが絶叫した。
>
>生きてましたか、ゼロス……。それにしても急用って、何があったのでしょう。

 そろそろ第一のヤマ場です。全身真っ青の大御所が復活します。
 ……まだ誰にするか決まってませんが。

>> ちなみに、後にバトランドの女王となったリュスティーナが、他に類を見ない過激な手法でゾンビ禁止法を強行採択したとか、しないとか……。
>
>とりあえず、リュスティーナ姫は、その後無事に平和に暮らしたのですね。
>ゾンビ禁止法……。きっと、トラウマになっているのでしょうね……(汗)

 ちなみに葬式は必ず火葬。土葬厳禁。

>ぴこぴこリナちゃんの魔神像……。歩くたびにピコピコいうのでしょうか。
>魔神像省略と言うことは、次は……どこだったのか、忘れてます、私(汗)
>結構あちこち、ふらふらして歩いてましたし。

 省略したり、後回しにしたりするのは魔神像だけじゃありません。
 詳細は伏せておきますが、王家の墓も省略します。その理由は次回かその次明らかになる予定です。

>楽しんで読ませていただきました。
>もう、シリアスな展開とギャグの落差、そして意外な展開に圧倒されてます。
>ぴこぴこリナちゃんの使い方には、もう……凄いとしか。

 書き終えた後「ぴこぴこリナちゃんをロザリーにした方が面白いかも」と思っちゃいました。
 もしかしたら書き直すかもしれません。

>代理のレミーさん(正規のメンバーが加わったからって、いなくなったり
>しませんよね?)と本来のメンバー(?)ユーリィさんが加わった
>「導かれちゃった者たち」。
>大所帯になってますので、キャラを動かすのも大変だ思いますが、
>続きが楽しみです。
>それでは、この辺で失礼いたします。

 キャラを動かすのが大変なのは今に始まったことではないというか、もう慣れちゃったかもしれません。……汚れたともいいます。
 おお、神よ! 我を救い給え!!

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26662導かれちゃった者たち 第十八話 災厄の鼓動Dirac E-mail URL2003/8/9 21:08:18
記事番号26530へのコメント

 ミントス南西にある断崖絶壁の孤島には恐ろしい魔物が多く棲息している。
 そのため、全くと言って差し支えないほど人がいない。せいぜい、孤島唯一の入り口である河口に小さな集落があるくらいである。
 故に、孤島の奥地に魔族の城デスパレスが聳【そびえ】え立っていることを知るものはいない。
 そのデスパレスに若き王ガウリイ=ガブリエルから帰還の連絡が入ったのは、およそ四日前のことである。同時に、彼から全魔族に帰還命令が下された。
 リュスティーナ襲撃事件の一報がデスパレスに届いたのは、そんな時であった。
「何だと!? リュスティーナ様が襲撃された!?」
 ガウリイ=ガブリエルの『忠実なる四天王』に選ばれて以来、どんなことにも動じなかった千の偽名【サウザンド】が、部下マイアス(獄番族のモンスター)からもたらされたその報告に愕然とした。
「……ようやく、ようやくガウリイ=ガブリエル様のお顔を拝見できると思っていたのに! これでは合わす顔がないではないか!!」
 いつもはあまり感情を表に出すことがない千の偽名が、珍しく顔を真っ赤にして叫ぶ。
「落ち着いて下さい! まだリュスティーナ様がお亡くなりになったと決まったわけではありません!」
 豹変した千の偽名に戸惑いながらも、マイアスが千の偽名の心を鎮めようとする。
「……そうだな。激昂したところで事態が変わるわけではない」
 マイアスに諭され、千の偽名が理性を取り戻す。
「ところで、ガウリイ=ガブリエル様はこの事をご存知で?」
「いえ。ガウリイ=ガブリエル様がどこにおられるか不明なので、ご報告ができない状態になっております」
 マイアスの答えに、千の偽名はあごひげをさすりつつ、
「できれば、ガウリイ=ガブリエル様がお戻りになられる前にリュスティーナ様をお救いし、心配事をなくしておきたいところだが――」
 あんた……リュスティーナを『救う』つもりでいるのか?
「襲撃犯が何者かは分かっているのか?」
「はい。ただ、現在情報が錯綜しておりますので、確実な情報だけですが」
 部下に手渡され、千の偽名が襲撃犯のリストをじっくりと見る。

  襲撃犯グループ
   ゾンビ:口からガスや粘液、霧状の何かを吐く。吐瀉【としゃ】物は極めて有害。
   ゾンビマスター:ゾンビを何度でも復活させる。
   オーガ:戦う前に踊る習性あり。
   エクソシスト:周囲に怪奇現象が度々起こる。
   ポルターガイスト:存在しているのはわかるが、その気配がまったくない。
   魔性の女:妖艶さで敵を誘惑し、闘志を萎えさせる。武器は鉈。
   フランソワ:吸血鬼【ヴァンパイア】もどき。ハイソにこだわる。
   はぐれメタル:俊足をいかして敵陣を引っ掻き回す。
   素浪人:辻斬りをこよなく愛し、斬る感触までこだわる。
   血の騎士:顔色が一変すると体中が血まみれになる。
   ドラゴンホース:ガラが悪い。閃光の吐息【レーザー・ブレス】を吐く。
 
 ……………………………………………………………………………………
『……まさか!?』
 リストを見ているうちに、千の偽名にふとした疑念が生まれた。
 リュスティーナの隠れ家(?)は、魔族の中でも彼を含め比較的地位が高い者しか知らない。まして、人間が彼女の居場所を知ることなど不可能といってもいい。人間が彼女の居場所を知る唯一の方法は、その魔族から直接訊くことであるが、まさか人間に位の高い魔族が正直に答えるはずがない。秘密を漏らすとすれば、その魔族が完膚なきまでに屈服させされた時のみである。そんな真似ができる人間などいないはずである。いるはずがないのだ。
 導かれ(ちゃっ)ていなければ……。
「マイアス」
「はっ」
 千の偽名はマイアスにこう耳打ちした。
「今すぐ裏切り者を探し出せ」
 犯人は魔族に違いないと確信した千の偽名が、信頼できるマイアスに極秘命令を下した。
 ……ちょっと違うんだけどなぁ。……まあ、リュスティーナが『さらわれた』っていうのは大いに違うけど。

 天空城の玉座の後ろにある宝玉【オーブ】の神々しい輝きが色褪せている。
 自らの枯死をもって告げているのだ。古の災厄が再び胎動しつつあることを。
 マスタードラゴン直属の四天王、ラグラディア、ウラバザード、バールウィン、ランゴードは、すでに王の間に集結している。
「……時の流れは早いものだ」
 まるで雲一つない空にカゲロウを放すように、スィーフィードの弱々しい声が天空城を包む深海のような沈黙をかすかに破った。
「ついに……ついにこの日が来たか……」
 来るべくして来たこの日の朝焼けをその目に刻みながら、スィーフィードは哀愁漂う重いため息を深々と吐いた。
「とうとう八百九十三回目の誕生日を迎えることになるとはな。……ははは、もうここまで歳を重ねると、さすがに祝われても嬉しくないな。ところで、今年の誕生日プレゼ――」
 ズドムッ
 四人が無言で放ったマジツッコミが、耳を腐らせる戯言をほざくスィーフィードを黙らせた。
「ついに災厄が目覚め始めた」
 黙々と後片付けをした後、ウラバザードが単刀直入に話を切り出した。
「結局、古の災厄に関する記録、『天空の黙示録』は最後まで見つからずじまいか……」
「……悠久の歴史の証人たるはずの我々が、世界を滅亡にまで追い込んだ災厄の正体をろくに知らないまま、この日を迎えてしまうとはな」
 そう言って自嘲の笑みを浮かべるバールウィン。
 天空の黙示録が残っていない理由が、スィーフィードが天空の黙示録を読みながらフルーツパフェを食べていたら、手元を誤ってフルーツパフェを天空の黙示録にこぼしてしまい、それを隠蔽するためにスィーフィードが天空の黙示録を封印した(スィーフィード自身もどこに封印したか覚えていない)ためであることに彼らは知る由もないが、スィーフィードに原因があるだろうということは何となく想像がついた。
「もう我々の手に負える状況ではない。ここは歴代マスタードラゴンに伝わる預言の通り、勇者ディオルたちに世界の命運を委ねるしかない」
『待てこら』
 ラグラディアの意見に対する一斉の反論は光の速さすら超えた。
「……何か?」
「何かって……ツッコミどころ満載なんだが」
「ツッコミどころとは?」
 ウィニーにディオル復活を依頼したのは自分自身である。我ながら何を言っているのかと思いながらも、ラグラディアはポーカーフェイスを貫いた。
「言いたいことは山ほどあるが、時間がないので端的に言うと、ヤツらは本当に世界を救う勇者たちなのか!?」
 ランゴードが当然の疑問を切り出す。
「当然だ! だってディオルは勇者の末裔じゃないか!」
 ここで簡単に折れてしまっては勇者ディオルを生んだ自分の責任問題へと発展する。心の中で『自分は正しい』と自らに言い聞かせながら、ラグラディアは言い切った。
「違う! ディオルは『元』勇者だ!」
 論点がちょっとずれているウラバザード。
「何を言う!? ディオルの後を継いだ勇者が現れたとでもいうのか!? 新しい勇者が現れない限りディオルは『現』勇者だ!」
 ご丁寧に反論するラグラディア。
「そもそも、何故彼らが勇者になってはいけないと言うのだ!? どんな人間にだって英雄になる可能性があるはずだ!! それをお主らは……アレのみで否定するというのか!?」
 自己啓発催眠が効を奏したのか、意外にも、少しでもやましさのある者なら直面することをためらうであろう、不完全な思想の持ち主の醜悪なる理不尽な感情を、ラグラディアはオブラートに包むことなく、むしろそれをはがして三名に突き付けた。
 勇者たちを表現する『アレ』という言葉は、正面から体当たりすべき問題から目を背けた卑怯な略語に聞こえる。だが、『アレ』に替わる言葉が存在するのかと問われれば、どんな賢者でも沈黙するしかない。ただ、その『アレ』の後に『のみ』という言葉をつなぐのが正しいのか否かは、考えることを避けて通るわけにはいかない問いである。
「それはそうだが、問題はディオルが伝説の勇者かどうかというのではなくて――」
 だが、ランゴードはラグラディアの主張を受け流し、
「伝説は本当に正しいのか!? 何だよこの『(ちゃっ)』って!?」
 ずばり問題の本質を投げかけた。
「彼らを見れば、『(ちゃっ)』の意味など一目瞭然だ!!」
 説得力があると同時に説得力がない発言をするラグラディア。
「とにかく! わたしは彼らを信じる!!」
 もう自棄【やけ】っす。
「じゃあ頬を流れる一筋の汗は何だ!?」
 声が思いっきり裏返ったラグラディアを攻撃するバールウィン。
「み、み、導かれ(ちゃっ)た者たちの……あまりの恐ろしさに恐怖しているんだ!!」
 コメントが混乱気味のラグラディア。……まあ、その意味は理解可能ではある。
「そうか……ならば我々は我々でやらせてもらう」
 これ以上の議論は無駄と判断したウラバザードたちが、王の間を去ろうとする。
「どこへ行くだ!?」
「冷たい言い方かもしれんが、ディオルなどという過去の人間(?)に用はない」
 彼ら天空人は腐っても歴史の目撃者である。時代が変わったにもかかわらず過去の栄光にすがりついて哀れな末路を迎えるに至った人間たちなど、今まで飽きるほど見てきた。今ごろ……もとい、今こそ、ディオルという過去から脱却する時なのである。
 そこのあなた、『ディオルに栄光があったの?』なんて思わないこと。最低でも昔は勇者だったんだから。
「我々は救世主にふさわしい新たな勇者たちを探しに行く!!」
「ここにいる」
 グチャッ
 意見が食い違ってしまった二人だったが、この時ばかりは力を合わせてスィーフィードを闇の底深くに沈めまくった。

 ――夢を――。
 心地よい眠りを苦痛に変える悪夢を見ていた。
 断末魔の叫び。
 赤く染め上げる鮮血。
 容赦ない業火。
 太陽を遮る分厚い雲。
 天を切り裂く雷。
 枯れてゆく緑。
 生気を失う大地。
 汚れてゆく水。
 淀んでゆく風。
 闇に侵される星々。
 これが夢であることはすぐに悟った。しかし、夢の中で自分の身体を自分の意のままに動かすことができない。
 ――これはかつて起こった過去です――
 どれほど汚れた者にも等しく無償の愛を与えるような声が聞こえた。
 同時に、透き通るようなエメラルド・グリーンが一面に広がった。
 夢のはずなのに、呼吸をすると体の中が浄化されていく感覚を覚える。
 ――この古の災厄は世界を破滅に追い込みました――
 誰だろうか。
 誰かがそこにいる。
 ――古の災厄は天空人たちが封印しました――
 二十代半ばの女性らしい印象を受けるが、輪郭がぼやけているため、顔などはよく分からない。しかし、身に纏っている神々しい淡い光が年齢を超越した何かを感じさせる。
 ――しかし、それも消えつつあります――
 喩えるなら、聖母だろうか。
 ――導かれ(ちゃっ)た者たちよ――
 何故だか目頭が熱くなる。
 何故だか笑みがこぼれていく。
 何故だか傷がふさがっていく。
 何故だか温かい。
 何故だか安らぐ。
 何故だか救われる。
 ……ところで、若干『(ちゃっ)』の声が小さかった気のせいだろうか?
 ――今こそ、さ――
 ……………………………………………………………………………………

「ふああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 ランガーシャの朝はニワトリよりも早かった……。
 言うだけ野暮だが、ランガーシャは夢の内容なんて全く覚えていなかった。

 早速ラグラディアが夢を通して導かれ(ちゃっ)た者たちへ送った、丹精をこめて作り上げた熱いメッセージは、肝心なところでミもフタもなく寸断されてしまった。
「ちょっと待てええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
 彼らに直接会いにいくことを生理的に拒んだ代償は多分そんなに大きくもないと思われるが、ラグラディアは絶叫した。










 もう地獄の帝王編だというのに、緊張感が全く伝わってこない第十八話です。
 さて、とうとうデスパレス潜入まで来てしまいました。わたしが余計なアイデアさえ考えなければ、勇者ディオルと魔王ガウリイの対面までもうすぐです。この場面は個人的に書くのが楽しみでしたので、今から張り切ってます。

 最後に、久々のクイズです。地獄の帝王エスタークは誰でしょう? ヒントは『部分的に有名』です。う〜ん、分かりやすいような分かりにくいような……。

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26676心証、じゃない新章突入ですねエモーション E-mail 2003/8/10 22:57:00
記事番号26662へのコメント

こんばんは。

また見落とすところでしたーっ!(汗)
夏風邪から復帰して、昨日もここは覗いたはずなのにっ!

今回は新章のプロローグですね。
真面目な中に、さりげなくギャグが交じってますね。さすがです。


> そのデスパレスに若き王ガウリイ=ガブリエルから帰還の連絡が入ったのは、およそ四日前のことである。同時に、彼から全魔族に帰還命令が下された。
> リュスティーナ襲撃事件の一報がデスパレスに届いたのは、そんな時であった。

襲撃……あながち間違いとは言えないのが(笑)

>「できれば、ガウリイ=ガブリエル様がお戻りになられる前にリュスティーナ様をお救いし、心配事をなくしておきたいところだが――」
> あんた……リュスティーナを『救う』つもりでいるのか?

誰から救うのでしょう……(遠い目)やはり、ぴこリナを1個置いていけば、
すべて解決するのでは。

>  襲撃犯グループ
>   ゾンビ:口からガスや粘液、霧状の何かを吐く。吐瀉【としゃ】物は極めて有害。
>   ゾンビマスター:ゾンビを何度でも復活させる。
>   オーガ:戦う前に踊る習性あり。
>   エクソシスト:周囲に怪奇現象が度々起こる。
>   ポルターガイスト:存在しているのはわかるが、その気配がまったくない。
>   魔性の女:妖艶さで敵を誘惑し、闘志を萎えさせる。武器は鉈。
>   フランソワ:吸血鬼【ヴァンパイア】もどき。ハイソにこだわる。
>   はぐれメタル:俊足をいかして敵陣を引っ掻き回す。
>   素浪人:辻斬りをこよなく愛し、斬る感触までこだわる。
>   血の騎士:顔色が一変すると体中が血まみれになる。
>   ドラゴンホース:ガラが悪い。閃光の吐息【レーザー・ブレス】を吐

……………………な、なんて忠実で詳細な報告!!(爆)
ガウリイ=ガブリエルは、運は滅茶苦茶悪いし、その他諸々欠点はあるものの、
優秀な部下には恵まれてますね!(笑)

> リュスティーナの隠れ家(?)は、魔族の中でも彼を含め比較的地位が高い者しか知らない。まして、人間が彼女の居場所を知ることなど不可能といってもいい。人間が彼女の居場所を知る唯一の方法は、その魔族から直接訊くことであるが、まさか人間に位の高い魔族が正直に答えるはずがない。秘密を漏らすとすれば、その魔族が完膚なきまでに屈服させされた時のみである。そんな真似ができる人間などいないはずである。いるはずがないのだ。
> 導かれ(ちゃっ)ていなければ……。

まさか、育児ノイローゼ(笑)の世話係が手引きしたとは、さすがに思いませんね(笑)
まさに神のお導き(かもしれない)♪

> ……ちょっと違うんだけどなぁ。……まあ、リュスティーナが『さらわれた』っていうのは大いに違うけど。

ちょっとの差は、後に延ばせば延ばすほど、範囲は大きくなるのです。

>「とうとう八百九十三回目の誕生日を迎えることになるとはな。……ははは、もうここまで歳を重ねると、さすがに祝われても嬉しくないな。ところで、今年の誕生日プレゼ――」

おや、まだ八百九十三歳でしたか、スィーフィード様。もっとお年を召しているのかと
思いましたが。

> 天空の黙示録が残っていない理由が、スィーフィードが天空の黙示録を読みながらフルーツパフェを食べていたら、手元を誤ってフルーツパフェを天空の黙示録にこぼしてしまい、それを隠蔽するためにスィーフィードが天空の黙示録を封印した(スィーフィード自身もどこに封印したか覚えていない)ためであることに彼らは知る由もないが、スィーフィードに原因があるだろうということは何となく想像がついた。

素晴らしい勘ですね、四竜王様。それにしても、そんな状態で封印された本って……
見つけてもページが腐りまくって、ぼろぼろで、どちらにしろ見つけても
読めないのでは……(汗)

>「そもそも、何故彼らが勇者になってはいけないと言うのだ!? どんな人間にだって英雄になる可能性があるはずだ!! それをお主らは……アレのみで否定するというのか!?」
> 自己啓発催眠が効を奏したのか、意外にも、少しでもやましさのある者なら直面することをためらうであろう、不完全な思想の持ち主の醜悪なる理不尽な感情を、ラグラディアはオブラートに包むことなく、むしろそれをはがして三名に突き付けた。
> 勇者たちを表現する『アレ』という言葉は、正面から体当たりすべき問題から目を背けた卑怯な略語に聞こえる。だが、『アレ』に替わる言葉が存在するのかと問われれば、どんな賢者でも沈黙するしかない。ただ、その『アレ』の後に『のみ』という言葉をつなぐのが正しいのか否かは、考えることを避けて通るわけにはいかない問いである。

正論と言えば、正論なのでしょうけれど……何かが激しく根本的にズレてますね。  
……所詮、人の身では神々の考えることなどわかりませんねぇ……。

>「伝説は本当に正しいのか!? 何だよこの『(ちゃっ)』って!?」
> ずばり問題の本質を投げかけた。

お茶のことです(きっぱり)。時々一服するという意味で。(嘘)

>「み、み、導かれ(ちゃっ)た者たちの……あまりの恐ろしさに恐怖しているんだ!!」
> コメントが混乱気味のラグラディア。……まあ、その意味は理解可能ではある。

確かに、それはショックと戦慄の、ホラーチック伝奇英雄譚……。

>「どこへ行くだ!?」
>「冷たい言い方かもしれんが、ディオルなどという過去の人間(?)に用はない」

つーか、「死んだ後にまで働かせるのは、あまりにもむごい。彼はもう、
安らかに眠らせてやるべきだ」とか言えば、多少は格好が付くのに。

>「我々は救世主にふさわしい新たな勇者たちを探しに行く!!」
>「ここにいる」
> グチャッ
> 意見が食い違ってしまった二人だったが、この時ばかりは力を合わせてスィーフィードを闇の底深くに沈めまくった。

うーん、今、彼らに「嫌いな上司は?」と質問したら、全員一致しそうですね。

> 二十代半ばの女性らしい印象を受けるが、輪郭がぼやけているため、顔などはよく分からない。しかし、身に纏っている神々しい淡い光が年齢を超越した何かを感じさせる。
> ――しかし、それも消えつつあります――
> 喩えるなら、聖母だろうか。

これはイメージ映像でしょうか。モデルはどなたが?

> ――導かれ(ちゃっ)た者たちよ――
> 何故だか目頭が熱くなる。
> 何故だか笑みがこぼれていく。
> 何故だか傷がふさがっていく。
> 何故だか温かい。
> 何故だか安らぐ。
> 何故だか救われる。
> ……ところで、若干『(ちゃっ)』の声が小さかった気のせいだろうか?
> ――今こそ、さ――
> ……………………………………………………………………………………
>
>「ふああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
> ランガーシャの朝はニワトリよりも早かった……。
> 言うだけ野暮だが、ランガーシャは夢の内容なんて全く覚えていなかった。
>
> 早速ラグラディアが夢を通して導かれ(ちゃっ)た者たちへ送った、丹精をこめて作り上げた熱いメッセージは、肝心なところでミもフタもなく寸断されてしまった。
>「ちょっと待てええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
> 彼らに直接会いにいくことを生理的に拒んだ代償は多分そんなに大きくもないと思われるが、ラグラディアは絶叫した。

一応「御神託」を下していたのですね。早起きなランガーシャ様には、誰も
敵いませんね。さすが魔性の女。

> もう地獄の帝王編だというのに、緊張感が全く伝わってこない第十八話です。
> さて、とうとうデスパレス潜入まで来てしまいました。わたしが余計なアイデアさえ考えなければ、勇者ディオルと魔王ガウリイの対面までもうすぐです。この場面は個人的に書くのが楽しみでしたので、今から張り切ってます。

今回は導入部ということで、抑えられているパワーは、次から炸裂なさるのですね。
変身の杖を使わなくても、違和感なく会議に参加できそうな勇者と愉快な仲間達!
潜入したデスパレスで、何を引き起こ……いえ、どんな事件に遭遇するのか、
楽しみです。

> 最後に、久々のクイズです。地獄の帝王エスタークは誰でしょう? ヒントは『部分的に有名』です。う〜ん、分かりやすいような分かりにくいような……。

ぶ、部分的に有名……(汗)封印されてて、半分冬眠ボケな上に、低血圧で
本調子じゃない、といったノリのまま勇者と戦う羽目になったエスターク様に
対応するキャラ……。
ここはストレートに部下S様で。封印されているし、依り代になっている方は、
有名人だけど、さすがに一般には、彼が依り代にされているなんて、知られていないですし。
さらに、読者にとっては、後書きの方で有名です!
あ、その定義だとL様も……はっ!(殺気を感知。以下棒読み)……なんてこと、
あるわけないですよね……ほほほほ(ガクガクブルブル)

では、この辺で失礼いたします。続きを楽しみにしていますね。

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26742埋まるギリギリですいませんDirac E-mail URL2003/8/20 02:25:35
記事番号26676へのコメント

>こんばんは。
>
>また見落とすところでしたーっ!(汗)

 こちらも返事が遅くなってすいません。(現在ちょっと忙しい)
 
>夏風邪から復帰して、昨日もここは覗いたはずなのにっ!

 実はわたしも風邪ひいてました。奇遇ですね。

>今回は新章のプロローグですね。
>真面目な中に、さりげなくギャグが交じってますね。さすがです。

 真面目に書いた気は全くないですけど。
 まあ、シリアスな展開は前フリということで……。

>> リュスティーナ襲撃事件の一報がデスパレスに届いたのは、そんな時であった。
>
>襲撃……あながち間違いとは言えないのが(笑)

 どんな言葉も翻訳されなければただの文字である byどこかの誰か

>>「できれば、ガウリイ=ガブリエル様がお戻りになられる前にリュスティーナ様をお救いし、心配事をなくしておきたいところだが――」
>> あんた……リュスティーナを『救う』つもりでいるのか?
>
>誰から救うのでしょう……(遠い目)やはり、ぴこリナを1個置いていけば、
>すべて解決するのでは。

 解決しません。
 彼の場合、リ(略)ナを愛する想いはプラトニックなものですから。

>……………………な、なんて忠実で詳細な報告!!(爆)
>ガウリイ=ガブリエルは、運は滅茶苦茶悪いし、その他諸々欠点はあるものの、
>優秀な部下には恵まれてますね!(笑)

 ガウリイの下にいる時点で優秀とは言えないという説も。

>> ……ちょっと違うんだけどなぁ。……まあ、リュスティーナが『さらわれた』っていうのは大いに違うけど。
>
>ちょっとの差は、後に延ばせば延ばすほど、範囲は大きくなるのです。

 意外とプラスとマイナスが打ち消しあって丸く収まる時もあります。

>>「とうとう八百九十三回目の誕生日を迎えることになるとはな。……ははは、もうここまで歳を重ねると、さすがに祝われても嬉しくないな。ところで、今年の誕生日プレゼ――」
>
>おや、まだ八百九十三歳でしたか、スィーフィード様。もっとお年を召しているのかと
>思いましたが。

 年齢なんてどーでもいいのでテキトーです。

>素晴らしい勘ですね、四竜王様。それにしても、そんな状態で封印された本って……
>見つけてもページが腐りまくって、ぼろぼろで、どちらにしろ見つけても
>読めないのでは……(汗)

 神様だから大丈夫です。
 ……って、だったら記録書なくても覚えとけ!

>> 自己啓発催眠が効を奏したのか、意外にも、少しでもやましさのある者なら直面することをためらうであろう、不完全な思想の持ち主の醜悪なる理不尽な感情を、ラグラディアはオブラートに包むことなく、むしろそれをはがして三名に突き付けた。
>> 勇者たちを表現する『アレ』という言葉は、正面から体当たりすべき問題から目を背けた卑怯な略語に聞こえる。だが、『アレ』に替わる言葉が存在するのかと問われれば、どんな賢者でも沈黙するしかない。ただ、その『アレ』の後に『のみ』という言葉をつなぐのが正しいのか否かは、考えることを避けて通るわけにはいかない問いである。
>
>正論と言えば、正論なのでしょうけれど……何かが激しく根本的にズレてますね。  
>……所詮、人の身では神々の考えることなどわかりませんねぇ……。

 わたしがこの小説で一番訴えようとしていることは、RPGにおける勇者の一般的なイメージに対するアンチテーゼを前面に打ち出すことにより、勇者というものは所詮『称号』であることを強調することを通して、未だに根強く残る権威主義に対する批判ではないかと思います。
 ……大学入試の英作文みたい。

>>「伝説は本当に正しいのか!? 何だよこの『(ちゃっ)』って!?」
>> ずばり問題の本質を投げかけた。
>
>お茶のことです(きっぱり)。時々一服するという意味で。(嘘)

 加○茶のことかも。
 某お姫様=『ちょっとだけよ』とか、某踊り子=『ヒゲダンス』とか。

>>「み、み、導かれ(ちゃっ)た者たちの……あまりの恐ろしさに恐怖しているんだ!!」
>> コメントが混乱気味のラグラディア。……まあ、その意味は理解可能ではある。
>
>確かに、それはショックと戦慄の、ホラーチック伝奇英雄譚……。

 笑劇の展開! 教父を呼ぶラスト!! あなたはこの戦慄に絶対絶える!!

>> グチャッ
>> 意見が食い違ってしまった二人だったが、この時ばかりは力を合わせてスィーフィードを闇の底深くに沈めまくった。
>
>うーん、今、彼らに「嫌いな上司は?」と質問したら、全員一致しそうですね。

 彼らはスィーフィードを上司と思ってないです。

>> 早速ラグラディアが夢を通して導かれ(ちゃっ)た者たちへ送った、丹精をこめて作り上げた熱いメッセージは、肝心なところでミもフタもなく寸断されてしまった。
>>「ちょっと待てええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
>> 彼らに直接会いにいくことを生理的に拒んだ代償は多分そんなに大きくもないと思われるが、ラグラディアは絶叫した。
>
>一応「御神託」を下していたのですね。早起きなランガーシャ様には、誰も
>敵いませんね。さすが魔性の女。

 彼女以外のバージョンもいくつか考えてたんですが、割愛しました。
 
 ディオル:三途の川を渡る夢を見ていたので、入る気が失せた。
 ガードナー:寝小便をしたので、入る気が失せた。
 ギザン:夢の中も闇に包まれていたので、入る気が失せた。
 ユーリィ:見るに耐えない夢を見ていたので、入る気が失せた。

>今回は導入部ということで、抑えられているパワーは、次から炸裂なさるのですね。

 抑えられているうちにパワーがしぼむという説あり。

>変身の杖を使わなくても、違和感なく会議に参加できそうな勇者と愉快な仲間達!

 やっぱりそうなるって分かっちゃいました?
 妥当な結論ですけど。

>潜入したデスパレスで、何を引き起こ……いえ、どんな事件に遭遇するのか、
>楽しみです。

 事件は会議室で起こってるんじゃない! 現場で起こってるんだ!! by踊る大捜○線 THE MOVIE
 というわけで、デスパレスでは何も起こりません。

>> 最後に、久々のクイズです。地獄の帝王エスタークは誰でしょう? ヒントは『部分的に有名』です。う〜ん、分かりやすいような分かりにくいような……。
>
>ぶ、部分的に有名……(汗)封印されてて、半分冬眠ボケな上に、低血圧で
>本調子じゃない、といったノリのまま勇者と戦う羽目になったエスターク様に
>対応するキャラ……。
>ここはストレートに部下S様で。封印されているし、依り代になっている方は、
>有名人だけど、さすがに一般には、彼が依り代にされているなんて、知られていないですし。
>さらに、読者にとっては、後書きの方で有名です!
>あ、その定義だとL様も……はっ!(殺気を感知。以下棒読み)……なんてこと、
>あるわけないですよね……ほほほほ(ガクガクブルブル)

 L様はこの話には出せません。
 出演させるなんてとてもとても……。

>では、この辺で失礼いたします。続きを楽しみにしていますね。

 次回は九月以降になると思いますが、それでは。
 つたない返事ですいません。