◆−バーサーカートランス−岡野ゅ (2003/8/12 14:37:38) No.26688
26688 | バーサーカートランス | 岡野ゅ | 2003/8/12 14:37:38 |
ただ少女は失った過去を探しに旅に出たのだ。 戦いに来たのではなく。 探しに来ただけだったのだ。 第1話 響く声 人が常に群がり、集まる活気ある賑やかな通り。 聖都市は、春を迎えて盛り上がりを見せていた。 そんな通りの入り口に一人の少女は突っ立っていた。 薄茶色い長い髪は一つに束ねられていて、服装は薄汚れたマントで見えない。長旅をしたにも関わらず、今だ日焼けすらしていない白い肌が少女の顔を引き立たせる。 大陸の最果ての村から、馬に乗って旅立ったのは秋頃だっただろうか…。 厚く雪が積もる冬を越すころには、馬は乗り手を見捨てて走り去ってしまったが、なんとか聖都市 ガルマ に辿り着いた。塀で周りを取り囲んだ街に。 巨大な塀の向こうに入る事の出来る、唯一の方法は特殊な施しを受けたこの門以外あり得ない。見張りの兵もおらず、がっしりと構える門は地響きのような声を上げた。 丁度真ん中にある漆黒の水晶も光りだし、人の言葉と異なる言葉で直接頭の中に語りかけてくる。その壮大な見えない力に押しつぶされそうになり、甲高い悲鳴がこぼれる。 その後、すぐに門は重い扉をひらき始めたのだ。 意味不明な門のことを、ずっと考えていた。 人の姿もしだいに少なくなった頃、まぬけにも自分がずっと突っ立ったままの事に気付いた。 とにかく宿屋に向かわなくては行けない。もうすでに、太陽は夕陽と呼ばれる時間を回っている。 アスファルトの道を歩き始めると、突然目の前から声をかけられた。 「ねぇ!泊まるとこ探しとらへん??」 短髪の髪を少し長めにしたいかにも軽そうな男は、鼻の先がつくのではないのかと思うほど、顔を近ずけていた。 「俺の泊まってる所においでや。ね?ね?」 断る暇も無く角張った大きな手に、たやすく腕を掴まれてしまった。抵抗しようにも、こうもがっしりと持たれてしまうと、後は引きずられる他なかった。 「と〜ちゃくぅ〜!!おつかれさん!ここやよ、俺の泊まってる宿屋v」 男の鼻歌を聞きつつ、薄汚い裏路地をだいぶ引きずられ……。 ついに着いた場所は、ただの小汚いパブ。名前は…バンブー、つまり“竹”。 無理矢理に連れてこられ、もう日は落ちた。静まり返った夜の大都市。そのさらに暗い、裏路地の奥にいるのだ。誰も、こんな所へ連れて行けとも言った覚えもさらさら無い。 目の前に立っている男の正反対の向きに向いた私は、そのまま歩き出そうとした。 もう、また掴まれることは無い。掴まれそうになれば、逆に返り討ちにすればいいのだから。 しかし、男は動かず。ただ、独り言のように呟いただけだった。 「君の悲鳴…・聞こえたよ。」 |