◆−わらしべレンちゃん(再度翔さんに詫び)−遙 琥珀 (2003/10/8 16:52:52) No.27287


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27287わらしべレンちゃん(再度翔さんに詫び)遙 琥珀 2003/10/8 16:52:52


昔々 ある所に とても無口な青年が 住んでいました

青年は根は真面目だったのですが 無口なので 他人に誤解されやすく どこか満たされない日々を送っていました

ある日 青年は神社にお参りに行くことにしました



「……………」

お賽銭を投げて 青年は手を合わせました

すると

「こんにちはぁ どぉもぉ 此処の神様ですぅぅ」

どうにも人生ナメてるっぽい神様が 出てきたのでした

金髪ミニスカートの神様は 青年を見て

「あらぁ お客様ですかぁ お茶でも飲んで行きますぅ?」

さっさとこの神様と縁を切りたかった青年は 首をぶんぶん横に振りました

「そうですかぁ 残念ですねぇ」

神様は『残念』と言う割に 朗らかな笑顔を浮かべました

「ところで用件は? そう お参りですかぁ」

神様は そこで困った様に 顔をしかめ

「今 お姉様がいなくてぇ あんまり大きいお願い事は 叶えられないんですぅ

 でもぉ それだと 折角来てくださった方に失礼なのでぇ ひとつ お告げを差し上げますぅ」

貰えるものは貰う主義の青年は お告げを聞くことにしました

「この神社を出た途端 貴方は転びますぅ 残念ですが 血は出ません」

よくわからない お告げです

「転んだ拍子に 掴んだものをぉ 大切にしてくださいねぇ それでは さよーならぁ」

そしてぇ 神様はぁ 姿を消しましたぁ(うつってる)




「…………」

青年が きょろきょろ 辺りを見渡しつつ 神社から出ると

「はいごくろーさん」

べちこん。

いきなり横手に現れた 紅い髪の男に 脚払いを掛けられてしまいました

不意を打たれた青年は ころころと 神社の階段を転がり落ちていきました

「うーん」

紅い髪の男は しばらく 階段の下を眺めていましたが やがて 傍の茂みに声を掛けました

「こんなもんで いいのかな フィアナ」

「上出来」

がさっ と 茂みから 紅い髪の女が出てきました

「さて 妹の預言も成就したところで デートの続きだ」

「預言成就って 結構人為的に 為されるものなんだね」

二人は にこやかに お喋りしながら 歩いていきました




さて 転げ落ちてしまった青年(生きてた)は 服の泥をはたき落としていました

「…………」

そして 右手に握っているワラを じっと見詰めました

転んだ時 彼が掴んだのは この 一本のワラなのでした

まぁ仕方がないので 青年は ワラを持って 街に出ました

すると やがて 一匹の虫が 青年の周囲を うるさく飛び回り始めました

「……うるさいハエだな」

『アブですよ〜っ』

青年の呟きに 虫が自己主張しました

しかし そんなこと 青年にとっては どうでもいいのです

ぱっ とアブを捕まえて ワラの先に くくりつけてしまいました

『わ〜 離してくださいよ〜』

銀髪のアブは ぎゃーすか 喚き始めました

青年が それを無視して歩いていると

「ちょっト そこノ アンタ」

不意に女の人に 声を掛けられました

「そレ 譲らなイ? 理由? まァ いいじゃなイ そんなこト♪

 ……タダとは言わないワ これあげル」

そして青年は ワラ(とアブ)と ミカン三個を 交換しました

青年が ミカンを持って歩いていると 道端に女の子が二人蹲っているのに逢いました

「喉乾いた〜 オルエン 水持ってきて〜」

「お前 私の分まで飲んでおいて 何を言っている」

「…………」

青年は 二人をじっと 見ていました

どうやら姉妹の様で 顔はそっくりなのですが 性格は正反対の様でした

「……困ったな……」

髪の短い方が きょろきょろと辺りを見回し……青年に目を留めました

「ああ 其処の方」

「…………」

内心 ドギマギしながら 青年は少女に近付きました

「無礼は承知だが その果実を譲って貰えないだろうか」

「…………」

こくこく頷きながら 青年は ミカンを三つとも差し出しました

「ありがとう」

少女は 微笑みを浮かべ もう一人に ミカンを渡しました

彼が ぼーっと少女を見ていると 少女は慌てた様に

「あぁ ごめんなさい すっかりお礼を忘れていた」

彼女は 傍に待たせていた馬車に駆け寄ると

「こんなもので済まないが 受け取ってくれ」

綺麗な反物を 取り出しました

「本当は 母の為に 着物を仕立てようと思ったのだが また買えば済む話だ」

少女は青年に反物を渡すと すぐ もう一人の少女と共に馬車に乗り込み 去って行ってしまいました

「…………」

青年は しばらく立ち尽くしていましたが

反物を手がかりにして また逢えるかも知れないと思い やがて 再び歩き出しました

青年がしばらく歩いていると 通りの向こうから 馬に乗った男がやってきました

「!」

男は 不意に青年の前で 馬から下りました

つかつかと 青年に歩み寄り 反物を眺めると

「むぅぅ この色 ダルフにぴったりですね」

「…………」

「失礼 この反物を 譲ってはくれませんか」

「…………」

青年は 露骨に嫌そうな顔をしましたが

「娘によく似合うと思うんですよ

 替わりにこの馬 差し上げますから」

親バカ男は さっさと反物を青年から取り上げ 馬を置いて歩いていってしまいました

「…………」

少女を捜す手がかりを取られてしまった青年は 溜息を付きました

青年は 取り敢えず 馬に乗りました

しばらくそのまま進むと やがて 日が暮れてきました

もう大分 家から離れた所に来てしまっていた青年は 今晩泊めて貰える家を捜すことにしました

青年がしばらく行くと 大きな屋敷が見えました

青年は馬から下り 屋敷の扉を叩きました

「済まないが 一晩 泊めて貰えないだろうか」

やがて出てきた 黒髪の女性は 青年をじぃっと見て

「いいでしょう」

こくんと 頷きました

「馬は 納屋に留めてくると よろしいですわ」



青年は 出された食事を食べた後 先程の女性に呼び出されました

「今日知り合った方に この様なことを言うのもなんですけれど

 貴方 宅の娘と お見合いする気はありませんこと?」

「はぁ?」

「この家には 跡継ぎがおりませんの

 娘が二人いるのですが ふたりとも どんな縁談でも断ってしまうのですわ

 貴方と同じくらいの年ですの 一度逢ってみてはくれませんか」

どうやら かなり 切羽詰まっている様子です

「…………」

青年の脳裏に 反物をくれた少女がよぎりました

青年が断ろうとすると

「ただいまー」

「ただいま帰りました」

「あら 遅かったですのね」

二人の娘が 部屋に入ってきました

青年は 二人を見て 驚いた様な顔をしました

二人は 例の 町娘だったのです

「娘ですのよ」

「……貴方は……あの時の……」

髪の短い少女が 青年を見て驚いた様に言いました

「あら 知り合いですの」

女性は 微笑み もう一度 青年に向き直りました

「どうです?考えてくれますか?」

「…………」

青年は相変わらず無言のまま こくこく頷きました

「なに?なんですか?」

「あー また お見合い相手 連れてきたんだー」

「貴方達が いつまで経っても 相手を連れて来ないからですわ」

「私 イヤよ」

「あら じゃあ オルエンね」

「あのぉ なんだか訳解らないウチに 話が進められてる気がするんですけど」

「気のせいよ」





そして 青年と町娘は結婚して 末永く幸せに 暮らしましたとさ



めでたし めでたし
















言い訳あんど言い逃れ。


………………………………………………………………………………………逃げます。
翔さんごめんなさいっ。



                                                        幕。