◆−闇夜に堕ちて−夜宵 吹雪 (2003/10/27 19:57:43) No.27741
 ┗えっと……L様×Sというのは……どう?(笑)−じょぜ (2003/10/27 22:36:23) No.27754
  ┗挑戦、それは飽くなき探究心に対する果たし状(なんのこっちゃ)−夜宵 吹雪 (2003/10/28 18:11:59) No.27780


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27741闇夜に堕ちて夜宵 吹雪 E-mail 2003/10/27 19:57:43





   闇夜に堕ちて  ――全ては、彼方に消えて


「・・・・・・私はあまり賛同できんな。」
闇。
それだけが広がる空間で、一人の20代の青年がぽつりと呟く。
彼はかなりの細工物の工芸品のようなショルダーガードに、赤いマントを翻し、ゆったりとした格好だった。
その隣には美女、といっても差し支えのない二人の女性、さらに隣には野性味の溢れる20代後半の男、そして先程の青年と挟み込むようにいる場違いな一人の少年。
少年は、その年齢相応の甲高い声で言った。
「・・・・でも、あの方は賛同してくれたよ?それでも反対なの?」
「当たり前だろう。フィブリゾ、あの方はお前が見つけた、だがまだ失うわけにはいかないのだ。」
「ふぅん。まだ、ね?なら何時ならあの方を失っていいの?」
少年、フィブリゾの揚げ足を取った返答に、青年は露骨に舌打ちをした。
「そんなのは問題ではない!大体、二人で行くなど無謀だ。せめて、もう一つ欠片が見つかれば・・・・・。」
「そんなの、見つかる保証なんてどこにもないわ。」
切り捨てるように言ったのは、二人の女性の片割れ。
腰まで来る艶やかな黒髪に、深い海をそのまま移したような瞳。
白魚のような、透き通った白い肌に、青や透明な色を基調としたドレス。
線の細い、触れたら傷ついてしまいそうな印象を受けるが、彼女は毅然とした冷たい声だった。
「ねぇ、グラウシェーラ。あなたの気持ちも私は良くわかるわ。もちろんフィブの気持ちも。彼は今回の戦いで、部下を全員失ったのよ?」
「自業自得のような気もするがな。」
横から茶々を入れたのは、もう一人の男だ。なにやらフィブリゾを、見下したような、嘲笑うような目。
「五月蝿いな。部下なんてただの手駒だよ。それがいなくなった事で騒ぐ方がどうかしているんだよ。」
ぴしゃりと、その可愛らしい顔で冷たく言う。顔が可愛いだけに迫力があったが、男は怯まない。
「お前たち、騒ぐのはいい加減にしてくれ。ガーヴ、お前はどうなんだ?」
「・・・・・俺か?」
そして、もう一人の美女からいきなり話題を向けられ、フィブリゾをからかった青年、ガーヴは眉をひそめる。
「俺はどっちでも。戦えるんならそれに越したことはねぇし。」
「まったくお前は・・・・・・。」
呆れた様に美女はガーヴを見た。彼女は黒髪の女性とはまた違った美人だった。
強いて言うなら、明るい太陽のような女性。
太陽のように誰も寄せ付けない威厳と、なにやら鋭い印象を受ける。声はいつもよりも焦りを感じた。
「で?結局のところ、ダルフィンとゼラスはどうなんだ?」
「私は・・・・・・。」
ちらり、とここでゼラスは視線を泳がせダルフィンへ向けた。ダルフィンはため息をついて、それに答えるかのように助け舟を出した。
「私はフィブに賛成ね。ここで水竜王を叩かないと、後々面倒よ。」
きっぱりと自分の意見を言うダルフィンに、フィブリゾは満足そうにうなずいた。
「それで?ゼラスは?」
「・・・・・私は。」
そうゼラスが発言しようとした刹那。

「何を話しているんですか?皆さん。」

優しい、春の日差しを思わせるような声。
「魔王様・・・・・・。」
ざっ!
彼の姿が見えると、一斉に全員が頭を垂れた。それを見て、かつては人間だった魔王は苦笑を浮かべる。
「やめてください、私は貴方達をそんな風にさせるために顔を見せたのではないんですよ。」
「・・・・何か御用ですか?」
生真面目な口調でグラウシェーラが問いかける。それにはこの場にいて欲しくないと言う余韻がありありと感じられた。
「そう邪険に扱わないでください。そろそろフィブの作戦の確認をしたいと思いましてね。」
「いえ、それは・・・・・・。」
ちらり、とグラウシェーラはゼラスの方へ目をやる。
「どうかしましたか?何か不都合でも?」
「いえ・・・・・・。」
「魔王様!」
「ちょっとゼラス!!むがっ」
ゼラスがレイに発言を使用とするが、フィブリゾに睨まれる。だがそれをダルフィンが手でフィブリゾの口を覆ったので、かれはそれ以上発言できなかった。
「何ですか?ゼラス?」
「私は今回の水竜王を攻める作戦は反対です!」
「むがっ!へらひゅっ!!」
「フィブは少し黙ってね。」
「んー!はるふぃ・・・・むばっ!」
後ろでダルフィンとフィブリゾが仲良くじゃれ合って(レイから見て)いるのが目に入ったが、ゼラスは気にせず言った。
「危険なのです!我らの柱・・・、王となる身はあなた一人!今は竜神の戦力より我らが有利。あなたがわざわざカタートまで出向く必要など・・・・。」
そう最後まで発言はゼラスはしなかった。いや、できなかった。
言いたくなどなかった。このお方が、赤眼の魔王【ルビーアイ】が消えて、滅んでしまうことなど。
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
それを見て、レイは優しく微笑を浮かべゼラスの頭をなでた。
「ま、魔王様?」
「・・・良い子ですね、ゼラスは。・・・・・本当に。」
レイは悲しげに微笑んだ。微笑まずにいられなかった。
恵まれている、心に住んでいるもう一人を、少し羨ましく思いながら。
レイは、ただ微笑んだ。
「でもね、私は駒なんですよ。」
「・・・・・・駒?」
「・・・ええ。」
空を見上げる。
時間は夜だ。ここには空は存在しない。だが想像はできる。
きっと、満月だ。星と月の淡い光だけが、眼前には広がっている。
深い森と、高い山。冬だから空気は刺すように冷たい。
慣れた眼に、闇は塗りつぶしたような黒でなく、深い藍だ。ものの輪郭は見える。ただ、詳しくはわからないだろうが。
雲の動きは早い、眼で追えるほどに。
幼い頃、自分は何を思ったのだろう。
こうなる事を予想できていた?
いや、きっと違う。でも薄々感づいていた。

世界が、必要とすることを。

ならばそれに答えよう。自分にしかできないこと。
歴史を創り上げる事。
それはきっと、真っ白な紙にこんな絵を描きなさいと指定された事と同じ、自由はわずかで。鳥のようだ。
自由に大空を羽ばたく鳥も、現実では自由は少ない。いや、ないと言った方が正しいかもしれない。
止まる木も、乗る風もろくに選べない。選べるのは飛び立ち向かう場所。そして、着く場所は絵も同じ。
そうだ、これはゲームなんだ。
私は魔と言う名の駒。そして、敵は神という名の駒。
どちらかが徹底的に滅びるまで止まらない。そのための策だ。
だが消し切れないものがある。それはきっと思いとかいう代物だろう。
捨てきれない自分、それにゼラスやグラウシェーラの焦ったような表情を見て、重ねて見る。
「私は・・・手駒の一つに過ぎないんです。そして、あなたも。全てが。」
ゼラスから手を離し、フィブリゾに向かって精一杯、微笑んでみせる。
私は大丈夫、と精一杯の虚勢を張って。
「私も手駒の一つと考えているでしょう?フィブ。君は、己自身も私も駒と考える優しく、残酷な子だ。」
そして、魔王はまた微笑む。
「何のためかはわからない。でも君が望む結末は出そうと思うんです。」
フィブリゾは、その時、泣きそうな顔になった。
まるで親から無理やり引き剥がされた迷子の子供だ。
「それが私の出来る全てですから。」
迷いなく言った。
人と魔の、結合体とでも言うべき彼には。迷いはなかった。塵の程も。
「ごめんなさいっ・・・・・・。」
フィブリゾは小さく言った。泣き出しそうな顔と声で。
何を謝ったのかはわからない。
今までの自分の罪を嘆いたのか、魔王を敵地に送ることか。
レイは微笑んで、ゆっくりとフィブリゾを抱きしめた。

これが、最後だと噛み締めながら。

歯車は、廻る。



あとがき
魔族似非シリアス物語(おゐ)、第二段。今度は腹心五人で決めてみました。
S×ゼラスちっくなのはご愛嬌。おかしいな、カップリング物を書く気はなかったんだが・・・・・。どこを間違ったんだろ。
ま、それはともかく。・・・・・どうでしょ?満足していただけたかしら?
フィブりんを泣かせて(?)怒られないかな・・・・。
・・えーと、年代的に言って、水竜王の神殿へれっつらごうという場面。
結構、反対があったと思うんです。王様と大臣が直々に敵地にですよ?王が死んだらどうすんだ、という意見もあったはず。
賛成するのはその作戦を立てた言わずもがなのフィブリゾ、そして他の欠片が見つかる保証はないのでその前に敵の動きを止めたほうが良いんじゃない?のダルフィン。
仕えるべき主を滅ぶかもしれない所にやるのは危険すぎるのグラウシェーラに、あの方が滅びるなんて信じたくない乙女(ヲイ)なゼラスは反対派。
考えたりすること大嫌い、敵をぶっ潰す。それだけを考えてんだよ俺はなガーヴ君は中立・・・・微妙に賛成派で。
おや、珍しくフィブと意見があったなガーヴよ。・・・・・・・・・嬉しくないよな、そーだよな。
・・・えーと、またネタがあったら書くかもしれません。もちろん魔族がらみで。
魔族ネタ(神族でもいいかなぁ)シリアスで「こんなん書いてー」な奇特な方、もとい読書好きな方。
書くかはものぐさの私の文章力しだいですが・・・・・・、まあ、感想とともに一緒にリクしてくれれば書くかもしれない。
カプはヴァルフィリぐらいかな。ゼロリナでシリアスは書けん。まじで(泣)
ではでは、運が良ければ(宝くじで一等取る位の)あなたのリクエスト作品でお会いしましょう。





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27754えっと……L様×Sというのは……どう?(笑)じょぜ 2003/10/27 22:36:23
記事番号27741へのコメント

どうも〜。今回は魔族オンリーなんですね。

>「私も手駒の一つと考えているでしょう?フィブ。君は、己自身も私も駒と考える優しく、残酷な子だ。」

フィブリゾって確かにこんな人,いや魔族ですよね。確かに主さえも計画のひとつと考えるタイプ。うんうん。
でもレイさんのことは好きみたいですね,彼。
レゾのことはどう思ってたのかな? あっというまに滅んじゃったけど(笑)。
ルークとは……ウマが合いそうもないか。

>私は魔と言う名の駒。そして、敵は神という名の駒。
>どちらかが徹底的に滅びるまで止まらない。そのための策だ。

確かに……。
「貴女に,そう造られたんだからなー!!」とフィブがNEXTで絶叫しておりましたね。お母さまっ,なぜそんなふうに世界を造ったのでしょうか?
そしてなぜ,そんなにも部下をドツキまわすのがお好きなのか……(笑)

>魔族ネタ(神族でもいいかなぁ)シリアスで「こんなん書いてー」な奇特な方、もとい読書好きな方。
>書くかはものぐさの私の文章力しだいですが・・・・・・、まあ、感想とともに一緒にリクしてくれれば書くかもしれない。

で,タイトルを見て欲しいんですけどっ(笑)。
できればこの最強かつ最凶なお二人のカプなどいかがと……。
できればでいいんで。無理なさらずに。ギャグでもシリアスでも。
あと,ゼルリナがお好きなんですよね? それはお書きにはならないのですか?

ではー次も楽しみにしてますー。ヴァルフィリも頑張って書いてくださいねー!!

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27780挑戦、それは飽くなき探究心に対する果たし状(なんのこっちゃ)夜宵 吹雪 E-mail 2003/10/28 18:11:59
記事番号27754へのコメント

>どうも〜。今回は魔族オンリーなんですね。

吹雪:いやぁ、魔族って書きやすいんです。ネタ的に。
白亜:で、主人公でシリアスは書けないんだよね。
吹雪:うっせぇ、リナはどーしてもすぺしゃるのギャグにひかれるんだ。

>>「私も手駒の一つと考えているでしょう?フィブ。君は、己自身も私も駒と考える優しく、残酷な子だ。」
>
>フィブリゾって確かにこんな人,いや魔族ですよね。確かに主さえも計画のひとつと考えるタイプ。うんうん。

吹雪:だってL様の魔法でさえも道具にしちゃうんですよ。ある意味恐ろしい子・・・・。
白亜:あ。この話では部下全員滅亡?
吹雪:うん。部下を捨て駒にしちゃうなんてモロだし。

>でもレイさんのことは好きみたいですね,彼。
>レゾのことはどう思ってたのかな? あっというまに滅んじゃったけど(笑)。
>ルークとは……ウマが合いそうもないか。

吹雪:うちの腹心たちはお父さん大好きっ子です。そして親ばかなS様。
白亜:ルーク・・・はガーヴとは気が合いそうだな。
吹雪:そだね、レゾは・・・・まあ、目的のために手段は選ばないからフィブとは相性はよさそうだ。

>>私は魔と言う名の駒。そして、敵は神という名の駒。
>>どちらかが徹底的に滅びるまで止まらない。そのための策だ。
>
>確かに……。
>「貴女に,そう造られたんだからなー!!」とフィブがNEXTで絶叫しておりましたね。お母さまっ,なぜそんなふうに世界を造ったのでしょうか?
>そしてなぜ,そんなにも部下をドツキまわすのがお好きなのか……(笑)

吹雪:それは永遠の謎。
白亜:名シーンだよね。
吹雪:L様も寂しかったのかなぁ、と考えてみたり。

>>魔族ネタ(神族でもいいかなぁ)シリアスで「こんなん書いてー」な奇特な方、もとい読書好きな方。
>>書くかはものぐさの私の文章力しだいですが・・・・・・、まあ、感想とともに一緒にリクしてくれれば書くかもしれない。
>
>で,タイトルを見て欲しいんですけどっ(笑)。
>できればこの最強かつ最凶なお二人のカプなどいかがと……。
>できればでいいんで。無理なさらずに。ギャグでもシリアスでも。
>あと,ゼルリナがお好きなんですよね? それはお書きにはならないのですか?

吹雪:果たし状ですねっ!しかと受け入れます!!
白亜:んでゼルリナは?
吹雪:んーとね、あの二人はいちゃついてるより、ゼルがリナを無理しないように見守る・・・、共同戦線を張ってるようなイメージが。
白亜:戦友から、恋人へ?
吹雪:あの二人は・・・私が書くと、もうカプじゃなくてコンビっぽくなるんですよ。その辺ヴァルフィリとゼロリナは楽だ(笑)

>ではー次も楽しみにしてますー。ヴァルフィリも頑張って書いてくださいねー!!

吹雪:・・・ヴァルフィリ、書こうかな。そろそろ。
白亜:をを、吹雪が静かに燃えている。消火鎮火。
吹雪:やめい。では、次回作のL×Sで!(笑)