◆−こんにちは。2週間ぶりです....&ちょっと募集−猫斗犬 (2003/11/30 23:08:16) No.28415
 ┣Select Target Slayers】 第2話−猫斗犬 (2003/11/30 23:09:29) No.28416
 ┣【エル様漫遊記 ぷらす スレイヤーズSTS】2回目−猫斗犬 (2003/11/30 23:12:40) No.28417
 ┣【Select Target Slayers】 〜偽りの双子たち〜 第3話−猫斗犬 (2003/11/30 23:14:32) No.28418
 ┗Re:初めましてこんばんわっ!!!−F-ぽぷり (2003/12/9 19:41:03) No.28561


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28415こんにちは。2週間ぶりです....&ちょっと募集猫斗犬 E-mail URL2003/11/30 23:08:16


 こんにちはひねくれキメラ猫斗犬です。
 予定では先週に投稿するはずでしたが、音沙汰もなく申し訳ございませんでした。
 …ネットするのも2週間ぶりだわ…

 いや…緊急の仕事が入ってしまい…前回の投稿の翌日から今日まで作成してる暇がなくて…
 残業続きにしかもお休み返上込み…頼みますよお…うちの上司さあ〜ん…
 スケジュールぐらいちゃんとやってくださいよおぉ(泣)

 と…ぐちはこのへんにして…2週間ぶりの…登場です。
 一日ばかりで書いたもんなんで…面白くないと思いますが…ギャグが少ない…

 【Select Target Slayers】の2話目を投稿します。

 ではでは…

 次回は
  『エル様漫遊記  ぷらす  スレイヤーズSTS』 の2話目
 ですね…っていうか…もうできてたりして(汗)

 ん〜と…やっぱり…投稿しちゃおうかなあ…
  『Select〜』 が先週分で、
  『エル様〜』 を今週分として…

 ………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………
………ええーーい!
 投稿しちゃえ!

 と言う訳で変更して…次回は『双子〜』の3話目ですね……って…あれ?
 そういえば……微妙に完成してた気がひしひしと…
 ごそごそごそ…再読中………うるうるうるうる…
 あうぅ…そうか…そういえば6話目にする内容を3話目用に変更してたんだっけ…ずいぶん前に…書いてたんだよなあ…この話…
 ………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………
………んじゃまあ…これも…投稿します…くすん…

 え〜とそうなりますと…次回は…『Select〜』の3話目?
 …あ…あかん…話の展開何も考えてへんやん……う〜む…なんとかせーへんと…

 ではでは…次週…会えるかどうかは不安ですが…



 ……と…忘れるところでした…そう…タイトルどおりで…ちょっとばかし皆さんから募集を行いたいと思います。
 え〜とですね…募集したい内容と言うのは…

   今まで私の作品を読んで下さっている皆々様が突如、ふと疑問に思った質問

 …です。

 たとえば、達也&舞、双子の誕生日はいつとか…

 そんな作品の設定に関する物です。
 これには…皆さんに親近感を持っていただこうかなあなんて…
 …じゃなくて…
  「うまいこといけば…あんだ〜ば〜のネタになるかな〜」
 …ひそかな…願いからでた…募集だったり……

 ではでは…

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28416Select Target Slayers】 第2話猫斗犬 E-mail URL2003/11/30 23:09:29
記事番号28415へのコメント

【Select Target Slayers】 第2話

3.『獣』

 あたしは何故逃げているのだろう?
 誰から?
 朦朧としてる意識の中でそう思った。
 凄く、怖かったはず…
 凄く、悲しかったはず…
 大事なものをたくさん失って、失って、失い続けたはず…
 覚えてるのは青い光。
 きゅぼっ
 そんな音と共に彼の道すじが消滅した。
 …着た…きた…きた…
「…う…うわあああああああぁぁぁぁ!!」
 思わず、悲鳴を上げた。脳の隅々を侵食していく恐怖。
 何も考えず着た道を戻り走り逃げる。
 あれも走り出した。
 あれの足はあたしより速かった。
 疲労困憊していなくとも…人の足と比べてもとてつもない速さ。
 銀色の何かがその者の軌跡を駆け抜けた。
 走るその横を風が通っていくのを感じた。そしてとてつもない激しい痛みが襲う。
「ああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」
 痛みに耐え切れず悲鳴が口から漏れつづける。
「…あう…」
 痛みを伴うそれを見た。目を見張る。なければならないものがそこになかった。
 痛みに耐え切れずその場に崩れこむ。
「…う……う…で……腕が…」
 …いつ…なんで…どうやって…逃げなきゃ…
 混乱するまま前方を見た。あれがいた。
 銀色の毛並みをした獣。そしては右が青、左が金の瞳。
 たった一匹。そうたった一匹。
 それに20人はいたはずの仲間を殺された。
 思い出した。その悪夢の光景を。
 引き裂かれた腕から血がどんどんと溢れ出す。
 薄れる──目が霞んでいく──
 …死にたくない…
 …死にたくない…
 …死にたくないよ…
 …死…にた…くな…い…
 …死……あたしは…まだ………………………


4.『ゼオ』 〜TATUYA〜

 ぎいぃぃん
 2つの青い光の刃が合わさりその場に澄んだ音が鳴り響く。
「多少、腕を上げたようですね。達也」
「もう一度聞くぞ…ゼオ…おめえこんなことをして何をたくらんでやがる?」
 周囲には数十隊の屍。しかも獣に襲われたかのようなありさまで、あちらこちらに散らばっている。
 はっきり言って、こいつと遭遇したのはほとんど偶然だった。今回のオレの仕事によるターゲットはゼオではない。こいつがこの場所にいただけのことである。
 感情登録知性体・ゼオ──
 オレが次元セキュリティ会社『S.T.S』のトラブルコンサルタントになって最初のパートナーであり、現パートナーであるアインの兄貴でもある。
 しかし、2ヶ月程前。会社での仕事の折に当時、組んでいたパートナーを殺害し謀反者になった。その理由など社内でも判明することが出来ず今にいたっているが。
 会長もこのことに対しては口をつぐんで何も話さない。あの人なら何もかも知っているはずだと思うのだが…一体何を考えているのか…
 重なる刃と刃。
 互いの剣は青白い光をまとっているが、若干、ゼオの持つ剣の方が大きく感じられる。
 剣から力を抜き、それを後方へと振りぬき、その勢いを利用して円を描いて下段から剣を振るう。
 きんっ
 しかし、やつは何食わぬ顔でオレの攻撃を受け止めた。余裕さえ見られる。
 ちいっ…やっぱりつえー…今のオレじゃかなわないのか…
 それに…
「烈闇嗜連(ダグニスト・フォーレン)」
 すかさず後方に大きく跳び下がり、力ある言葉を開放する。
 と、オレの背後に闇と成す狼のような頭だけが出現し吼える。
 それが吼えたことにより、新たな力ある言葉を生み出し闇のエネルギーが発生しゼオに突き進む。
 こいつは火炎球と同等の闇系のエネルギーを乗倍増幅し討ち放つ魔法である。
 小山ほどとは言いがたいが、まあ…一撃で大穴を開ける位の威力はあるだろう。
 走る闇。
 しかし、ゼオはゆっくりとした動作で右手を掲げた。その手には謎の石版。
「Σ」
 ゼオが聞いた事もない言葉を放つ。
 瞬間。闇が霧散した。
 だあああああ!これもだめなのかよ!
「▽Σ×…」
 また知らない言葉を紡ぐ。そして──オレも知っている言葉…いや…呪文だ…
「烈闇嗜連」
 …って言うかさっきオレが…
 ゼオの力ある言葉が解き放たれると、彼の背後に闇が現れた。
「…で…でけえ…」
「…さあ…これに持ちこたえられますか?達也?」
 オレが生み出した物より5、6倍もある狼が吼えた。闇がオレに向かい走り来る。
 まずい…こんなのまともに受けたら……だったら…判断は一瞬。
 呪符を取り出す。
「鏡水円却(ウォーミラー・ザ・サーク)」
 跳ね返すしかない!!!
 ぎきゅ
「…ぐ…」
 闇と水がぶつかる。その威力にオレの肢体に強烈な負荷。
 闇が45度の角度を得て跳ね返るが、思わぬ負荷にオレも後方に吹き飛んだ。
 地面に叩きつけられ、そのまま滑り去る。
「大正解。達也。よく出来ました」
 …こ…この…
 その時、オレの目に銀の姿を捕らえた。
 銀色の毛並みをした狼のような体格の獣。そしては右が青、左が金の瞳。
 それがオレとゼオとの間をはさんで四肢が大地をしっかり踏み立つ。
「おや、おや…この騒ぎにこの子も駆けつけたようですね…」
 ぐるるるる…
 オレたちに向け獣は低い唸り声を上げる。あまり友好的な態度じゃ無いことは確かである。
「なんだ?こいつは?」
「今回の主役の一匹ですよ」
「あん?」
「達也たちが捕まえなければならない犯罪者が作り上げた者たちというべきでしょうかね…これを使ってね」
 そういってゼオは右手の石版を指し示す。
「…あいつが作った?って…ゼオ…なんでお前が知ってるんだよ…」
「ここに散らばている…死体を作り上げる彼らの一部始終をわたしは見ていましたからね」
「…な…ん…だと……」
「そして最後に生き残っていた者も、おそらく死んでるんでしょうね…」
「その石版を使って作ったって…大体。その石版は何なんだよ!」
「写本ですよ。こっちの世界にあってはならない写本」
 写本?
「さて…邪魔が入ってしまいましたし…そろそろわたしはお暇させていただきましょうか…」
 そういうとゼオの姿がとけ込み始め、
「…まて…ゼ…」
 があっ
 そのゼオを止めようとしたオレの動きが合図になったのか、あの獣が襲い掛かる。
「ちっ…火炎球!」
 ぐごおっ!
 爆炎。
 ほんの一瞬だった。獣の攻撃にゼオの姿から目を離していたのは…彼にはその時間だけで十分だった。オレが再び目を向けた時にはもうその姿はない。
 …逃がしたか…
 あのやろう。本当に何をたくらんでやがるんだ?
 ぐるるる…
 そんなことを考えている余裕は無かった。
「何?」
 火炎球で舞い散る煙が晴れていく。そしてその先に佇んでいたのはあの獣。
 こいつ…今のは直撃だぞ……魔族系の獣なのか?だから利いてない?
 だったら…
 懐から呪符を取り出す。
 こいつなら…
 そして、呪文を唱え始めた──


「はあ…はあ…はあ…はあ…はあ…」
 オレが向ける地面にはあの獣の頭。
 なんだったんだ?こいつは…
 オレはかなり体力を消耗していた。
 どんなに殴ろうとも、蹴ろうとも、剣で斬ろうとしても、魔法で攻撃してもこいつはぴんぴんしていた。ダメージの一つも見当たらない。精王雷輪(アスレイン・ファーリング)を使ってでもだ…
 精王雷輪。
 こいつはオレの世界に存在する雷・風系/雷聖鳳の力を借りる中で最強魔術。その威力は小山1つ吹き飛ばせるほど。
 …まったく…
 全ての攻撃が利かないのってーのはあの時以来、初めての経験だぜ…いや…あの時より攻撃力は上がってるはずなんだがな…
 しかも…とっておきのやつでやっと倒せたのだ…いや…それしか切り札が無かったと言うべきかもしれないな…
 とすっ
 オレはその場に座り込む。
 少し息を整えてみる。
 ゼオは確かこういった。主役の一匹だと…となるとこんなのが後、数匹…いや…下手すれば数十匹か…
 冗談じゃねぇ…ゼオの話が本当だとしてだ…
 1匹だけでこんなに手間取ったのに、まだそれだけいるとなると…とてもじゃないが全部を相手に出来るはずがない。
 大体にしても…全部を何とかするにも時間がかかる。
 それともやつの時間稼ぎか?
 何のために?
 情報が少なすぎるな…
「アイン?聞こえてるか?」
【Yes】
 右手の無線機から返事が返ってくる。
「すぐに本社と連絡を入れてくれ。やつのことをもっと詳しく知りたい。時間を稼いで何を企んでいるのか、特にその辺を重点的にな…それと…この狼みたいなのも解析を頼む…」
【了解しました】
 そして無線機がきられる。
 静寂がこの場に広がった。見渡す限りの死体の数。どこへ目を向けても毒々しい血を滲ませた大地が目に入る。
 冷たい風が吹いてきた。
 なんか、いやな予感がする。
 なんだろう。前にもこんな感じを受けたことがある気がするんだが…



5.『獣・2』 〜LINA〜

 それは一昨日のこと──
「え?」
「あら?今の聞こえなかったのかしらリナは♪」
「いいえ!ちゃんと聞こえてました!はい!しっかりと!!まんべんなく!!!!」
「ならいいわ♪」
「………………………………(汗×100)」
「リナさんがおびえてます…」
「珍しい光景だな…」
 うっさいよそこ…あんたたちはねーちゃんの怖さを知らないからそんなことをいってられるのよ!
「…えっと…で…その遺跡にいって何をすればいいの?姉ちゃん?」
「行けばわかるわ。多分…」
「多分?」
「厄介事よ。リナは好きでしょ。そういうの♪」
「いや…別に好きだという訳じゃ…」
「あら?そうだったっけ?」
「………………………………(汗倍増)」
「好きよね♪」
「はい!大好きです!とっても!!」
「じゃ♪行って来てね♪リナ♪」
「…はい…(涙)」
 ううううぅぅぅ…ねーちゃん…楽しそうに言ってるけど目が笑ってないよおおぉぉ…


「と言う訳で、姉ちゃんに言われた、その遺跡まで後2時間ほどでつくところまでやって来ました、天才魔道士リナ=インバースとその部下達」
「…おい…」
「この先に待ち受けているのは…いったい何か?と言うわけで次回へと続くのであった!」
「続くなーーーーーーーー!!!!!!!」
「…って…さっきから何よ?ゼル?うっさいわね…疑心暗鬼にでも取り付かれたの?」
「…お…おまえなぁ…」
 そうだ。ここで少しメンバーの紹介をしておこう。
 まずは、先ほどから、ぎゃいぎゃいうるさいのは部下その1のゼルガディス。
 精霊魔術と卓越した剣術を使い分ける魔剣士で、あたしが始めてあった時同様、長旅のために変色してしまった白い貫頭衣姿。その内に隠されているのは、過去に、五大賢者の一人でもある赤法師レゾの手によって石人形・邪妖精のキメラにされた青黒い岩の肌。
 今回は遺跡も絡んでることもあって、自分の体を元に戻す手がかりが見つかも知れないと、あたしとの同行に承諾してくれたのである。
 次にゼルの横に並んで歩いてるのが部下その2のアメリア。
 言わずと知れた、セイルーンのお姫様で、正義オタクで、体の90%が超合金でできている暴走娘。
 巫女であるが上、白魔術専門者だが、一通り精霊魔術も使える。
 以前同様白のピンクラインが入った服をまとう。
 今回の同行したいきさつは──「悪の臭いがします!!」──だそうである。
 いや〜出立の準備をしている間中、その辺で燃えまくってたもんなあ〜あの娘。
 そして最後に、あたしの横をぴったりとくっつき片時も離れてくんない…その姿を見て微笑むアメリアの顔を何度か見かけたが…部下その3のガウリィ。
 メンバーの中で唯一魔法を使ず、超が付くほどの一流剣士である。
 金色の長髪に整った顔立ち。一見、気の良さそうな兄ちゃんに見えるが、実はただたんに何も考えていないクラゲ兄ちゃん。一様、光の剣の戦士の末裔でもある。
 ま…今回、ガウリィがあたしについてきたいきさつだけど…
「で…みんなしてこれからどこに行くんだあ?ピクニックかぁ?」
『………………………………おい…』
「ガウリィ…あんた今まで何を聞いてたわけ。少し前から歩きながらあたしとゼルがいろいろと話してたじゃない…ねーちゃんが言っていた場所で何が起こってるのか。推測しながら」
「へえ〜そうだったのかあ〜」
「…あ…あんたはこの二日間、何も疑問ももたずにあたしについてきたんかい!!」
「…え?だって…リナがどっかに行くって言ってたし…それでいいかと思って…」
「…だからって…」
「…それに…リナとは離れたくなかったし…」
 ぶぼっ
 思わず顔が赤くなる。
「///にゃっ/////////////…にゃ…にゃ…にゃ…にゃにさらりと恥ずかしげもなく言い切ってるのよ!!!あんたはあぁぁ!!!!!」
 すぱぱぱぱぱぱぱぱんっ
『リナ(さ〜ん♪)顔が赤いぞ(ですよ♪)』
「うっさいなあっ!!………っ!?」
 茂みの奥から殺気が放たれた。思わず身構えるあたし達。
 茂みが音をたてゆれる。
 それが茂みの奥から現れた。
 一言で言うと、見たことのない毛並みを持つ獣──
 輝きそうなほどの銀色の毛並みに青と金に輝く殺意ある瞳。
 ぐるるるるるる…
「あんまり…友好的な歓迎とは感じられないなあ〜」
「そうね…」
 ほのぼのと言い募りながらガウリィは剣を抜き放ち、あたしはそれの警戒しながら戦闘態勢をとる。
 しかも、かなりの警戒を持って。
 どういえばいいのだろう。あれから発せられる殺気は尋常じゃないのだ。いや…更に言えばいやな予感まで漂っているのだ。
 ……………………………………………って…あれ?
「……なあ…リナ…あれ。どっかで見たこと無いか?」
「ん?だんなもそう感じたか?」
「って。ゼルも?」
「ああ…」
「実はあたしもなんですけど」
 アメリアまで?
 ???
 何だろう?なんでそう思ったんだろうか?みんなして?


 狼らしき物が吼えた。
 それを合図にあたしたちはその場を退つ。
 あれから10分ほどたっただろうか。
 状況はまったく変わっていなかった。
 こあっ!
 同時に打ち出される光の線。光があたしが先ほどまでいた場所に突き刺さる──
 はっきりいってこんなことただの獣に出来るはずもない。
 魔の生き物なのだ。
 しかし──明らかにデーモンの類ではないことをこの場で付け加えておきたい。その証拠に──
「崩霊裂!」
 アメリアの呪文が完成し、力ある言葉とともに、あれの体を青い火柱が包みこむ。
 やがて、青い火柱はふっつりと消え…何事も無かったかのようにやつはその場に佇んでいた。
「ええ〜ん(泣)全然、利いてませんよおぉ〜(泣)」
 やはり駄目だった──
 精霊系最強の魔術であり、下級の魔族になら一撃必殺にもなる崩霊裂。デーモンの類であるのなら炎の矢1本もあればあっけなく倒せるのにこんな状態である。
 あれを見たとき脳裏によぎった疑問。そしてとてつもなくイヤな予感。
 あたしは一つの答えにたどりついているのかもしれない。しかし、あくまでそれと似ているだけであり、本当かどうかは定かではない。
 …一つ試してみるか…
「ガウリィ、あれをやるからお願い!」
「おうっ!」
 呼びかけに彼は即対応した。
 あたしの目の前で剣をかざして立ち構える。
 旅を共に、そして何度もの戦いに培われた意思の疎通。
 あたしが何をしようとしているのか解っているのだ。
 あれが咆哮する。
 光が走る。
 ぎゅぴぉっ
 しかし、それはガウリィの手によって全てなぎ払われる。
 彼が持つその剣。
 それは伝説にもなっている、名を──斬妖剣(ブラスト・ソード)──
 その剣に秘められた魔力を糧に切れ味を上げている魔剣…その切れ味は超一級…………を…さらに上回る…超非常識。
 なにせ、切っ先を下に向けて落としただけでも、石畳の上に深々と突き刺さり、石を切り裂きながら横倒しになる。
 鞘に納めて一振りすれば、ぱっくり鞘が斬り割れる。
 この鞘が木や革なんぞで出来ていたら、納める前には手応えも無く斬っていることだろう。
 こう、すぱすぱすぱすぱ切れまくられると、危なかしいったらありゃしない。
 まったくもって…ガウリィの脳味噌みたいに非常識な剣でなのである(我ながら見事なたとえ)
 今こそ、以前に再会した時に竜の峰の長老・ミルガズフィアさんに切れ味を鈍くする細工をしてもらって何とか事なきをえてるんだけど…それでも、まだ切れ味は非常識だったりするのよねぇ…
 そうそう、本当か嘘かは定かではないけど…この剣についてはこんな話もある…しかもこの話は世間一般には知られてはいないらしく…
 数十年前──正義と悪にわかれた二人の剣士がいた。
 悪に染まった剣士が持つ剣の名は『斬妖剣』──
 正義を貫く剣士が持つ剣の名は『光の刃』──…この『光の刃』とは多分、以前ガウリィが持っていた光の剣ではなかろうかとあたしはにらんでいる…
 二人の技量は互角。
 光が空を切り裂けば──
 邪が大地を割る──
 その戦いは日中夜続いた。
 疲れ果て肩肘をつく、光の戦士。同じように邪の戦士。
 光の刃を杖代わりに立ち上がろうとする戦士。
 斬妖剣を杖代わりに立ち上がろうとする戦士。
 その時、斬妖剣は地面深くにまで、突き刺さった。
 崩れ落ちる邪の戦士。
 しかも剣は深々と突き刺さったため引き抜くことができず………………そのまま光の戦士に倒された………
 なんちゅうか…情けない結末である。
 …世間一般には知れ渡らない理由がその辺にあったりするのでは…
 おっと…裕著にんな話をしている場合じゃなかったわね。
 あたしは呪文をつむぎだした。
「黄昏よりも暗きもの──」



 呪文の詠唱が終わりを告げると同時に、ガウリィがどんぴしゃりのタイミングであたしの視界から掻き消える。
 そして、力ある言葉をときはなつ。
「竜破斬!!」
 大地…木々…等、全てを破壊しつつ巨大な爆音と衝撃が生み出された。ゆれる大地。
 何を逃れた鳥さんたちが、けたたましい鳴き声を巻きちらし、ばさばさと飛んでいく。
「やりましたね♪リナさん」
「何をやったって?」
 アメリアの言葉にあたしは問いで返事を返す。
「何をって…」
 その返事に彼女は一瞬とまどう。
 今回放った竜破斬はあくまでも確認である。
 あたしの考えが正しいのであれば、この程度のものなどあれにとって痛くも痒くもないだろう。
 もちろん今ので、あれを何とかできるとはあたしはほんの少しも考えていない訳だし。
 かつして、巨大な破壊力に巻き上がった埃や煙が晴れると、
「…うそ…」
 アメリアの呟きを残し、それは何事も無く佇んでいる。
 これによって、あたしの考えに一つの結論が導き出された。
「どうする?リナ?」
 やつから目を離さずに問いてくるガウリィ。
「…さて…まあ…手は2つ程あるけど…あたしとしてはあんたたちのその剣で何とかして欲しいわね…」
 あたしはガウリィとゼルに目を向ける。
 その剣とは、もちろんガウリィの斬妖剣と、ゼルが持つ魔皇霊斬がかけられた剣のこと。
 そしてあたしが言う2つの手とは──
 1つ目は神滅斬。
 魔王の中の魔王と呼ばれるロード・オブ・ナイトメアの力を使い、闇色の刃を生み出す呪文である。
 だがしかし、べらぼうな魔力と精神力を常に使いつづけるため、維持しつづけること、連発できないと言うのが難点である。
 だいいち、こいつを倒せたとしよう。
 しかし、同じ存在が他にも居ないと言う保証は1つも無いのだ。
 もし、その事実が存在してるとしてだ…その後の戦いでは、力を使い切ったあたしはただの足手まといでしかならない。それだけは避けなければ。
 2つ目が重破斬。
 神滅斬同様、あれの力を使う、史上最強、天下無敵の呪文である……が、まったく同様、あたしの魔力は使いきるわ、術の暴走の恐れがないという保証が全然存在しないわ、と危険きわまりない物でもあったりする。
 一番重要なのは、以前とは違い、魔力増幅アイテムのタリスマンを失っていることが一番痛いと言うことだろうか。
 やっぱりここは2人にがんばってもらうしか…
「簡単に近づけるのならな、それにこしたことはないだろう…が…あいつの動きが速すぎる…」
 …確かに…
 『狼もどき』と言っても相手はあくまで獣である。
 その敏捷性といったら…人間であるあたし達はその動きに何とか目がついていけるかいけないかの差がある。下手をすればこちらがやばくなること請け合い。
「そこは根性で…ばっと…ずばっと…でででと…やっちゃえば…」
「なんだ…その…ばっと…ずばっと…ででで…つーのは…」
「ばっとゼルを掴んで、ずばっと投げ飛ばし、でででとゼルガディスミサイルをやってもらう♪」
「まてっおいっ!」
 ちなみに第2段はガウリィミサイル♪
「他に…ほ〜れ、ぽち。取って来い。とか言って骨を遠くに投げつけるとか」
「…リナさん…あれ…犬じゃないと思いますけど…」
 …う〜ん…でも…スポットの件もあるしなあ…試してみる価値はあると思うけど…
 こふ、くふ
 まるで人を馬鹿にしているかのような音をたてそいつは喉をならすと、突如、駆け出した。
 それに気付た時には、やつはすでに空けていた空間の半分までつめ寄っている。
 ざっ
 フェイントをかけそいつは90度に方向変換。
「ちいっ!」
 同時にガウリィが舌打ちをうった。そして彼の剣が一閃する。反対方向に。先には見知った姿。
 もう一匹!?
 彼の剣を軽々とやつは交わし…瞬間、あたしは背に悪寒を感じた。
「リナさ…」
「炎の矢!」
 アメリアの声とあたしの声が重なる。
 考えてやったわけじゃない。ただの女のカン。
 ぎゅきっ
 間違いではなかった。あたしの後ろからもう1ぴ……って!ウソ!!!
「あうっ」
 飛び出したその勢いは止まらず、あたしはそれにのしかかられ、そのまま地面に倒され、
「やろっ…」
 慌てて、ガウリィが剣を…が近距離で三方に光が飛ぶ。
『ぐっ…』
「きゃあ!」
 仲間がそれをまともに喰らい弾き飛ばされる。
 …こ…この…
 ぐるるるるる…
 あたしにのしかかっているそいつは喉を唸らし、首をふると、
 どぼっ
 近くで軽い爆発が起こる。あたしが放った炎の矢の影響で。
 …おい…普通…襲ってきた炎の矢をよけずにくわえて…突っ込んでくるかあ?
 ぐるるるるる…
 あれが唸る。と、その背後に何かが見えたような気がした。だが、そんなことを気にしている場合じゃない。倒されたままでも次の呪文をあたしは唱え、
「火炎…うぁ…」
 力ある言葉は紡げなかった。
 …な…何よ…これぇ…
 脳裏に闇がかすめ、激しい嫌悪感が襲う。外側からではなく、内側から魔族特有の瘴気を直接あてられたかのような…それに続いて、激しい眩暈と吐き気。
「…うぐっ…げほっ…」
 …だめ…き…気持ち悪い…
 その場が激しく揺れ動き、視界の全てがグルグルと廻る。
 …身体に力が入らない…
 あたしの視界に大きな物が飛び込む。やつの瞳。それぞれに青と金に輝く──

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28417【エル様漫遊記 ぷらす スレイヤーズSTS】2回目猫斗犬 E-mail URL2003/11/30 23:12:40
記事番号28415へのコメント

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 エル様漫遊記  ぷらす  スレイヤーズSTS                <2回目>
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「ぼ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「ぼ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「ぼ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「………………………………おい…」
「………………………………あの〜リナさん…」
「何?ゼルにアメリア?」
「いえ…あの…ユニットさんと、ここで先ほどから何をされてるのかと思いまして…まあ…ガウリィさんはいつものことなので聞いても無駄でしょうけど…」
 あたしへの質問の後、ガウリィの方を見て一つため息をつくアメリア。
 ちなみにガウリィは、木の棒のぬいぐるみを何故か(笑)着込んで、ぼーっと突っ立ってたりする。
「ぼーっとしてるのよ」
『………………………………』
 あたしの答えに沈黙で対処する2人。
「…セ…セイルーンに帰るんじゃなかったんですか?」
「別に急ぐ必要は無いでしょ♪」
「…そ…それはそうなんですけどお…」
 そう、あたしたちはつい2日ほど前、ある事件にかかわり…あたしにとってたいしたことではないが…無事(?)に収拾をつけるとその足でセイルーンへとの帰路へ旅していたのだ。
 その事件って言うのはここの世界とは別のところにある、いわば異世界の神・ヴォルフィードと魔王・ダークスターが手と手を取り合いあたしに謀反を起こした出来事のことである。
 うふふふふ…まあ…もちろんその後にしっかりお仕置きをしておいたことなんていまさらいうことないと思うけど♪
「…まあ…急ぐ旅でもないことは確かだな…ずず…」
「…そうですね…ずず…」
 とか何とかあたしとユニットに文句の一つを言っていた2人ものんびりとお茶を堪能してたりする。
「てめぇら!人を無視するなーーーーー!!!!!」
『…………………おや…』
 その怒りとも、無視されて悲しいよう的悲鳴ともいえる、その声に思わずあたしたちの目がそちらに向けられた。
「えっと?どちら様でしょう?」
「だああぁぁぁ!!!!この状況を見てわからんのかおまえは!!!!!」
 アメリアのぶっ飛んだセリフに再び喚くムサイ親父。
 そして、周囲をぐるりと見回したアメリアは、
「ああ…」
 手をぽんと打つと、
「あなた方は悪なんですね」
「いや…最初におれたちゃ盗賊だと名乗ってるんだから…それで解ると思うんだが…」
「なるほど…なるほど…」
 その言葉に納得しこくこくとうなずき、再び周囲を見渡すアメリア。実はどこが高い場所がないか探しているところなのだが…
「………………………………」
 平坦な場所が続くその風景に、落胆し肩を落とす。
 う〜ん…かわいそうだから、アメリアのためにちょっとした小山までも作ってあげようかしら?全長10000キロぐらいの♪
「お前達…怪我したくなかったら返ったほうがいいぞ…ずず…」
「確かにそうですよね…ずず…」
「そうね…優しくて温厚なあたしならまだしも…」
『ぶはぁっ!!』
 今のあたしの言葉におもむろに飲んでいたお茶を噴出すゼル、アメ。まだ飲んでたのあんた達♪
「(優しいのか?お前さんが?)」
「(温厚ですかあぁ?)」
 あ〜ら…二人とも…心で叫んでてもちゃんと聞こえてるわよ♪しっかりと♪
「…とにかく…優しくて温厚なあたしならまだしも、ここにいる…」
 びっ
 ある一角を指差す。
「ぼ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 あら?ガウリィったらまだ木の棒の格好のまんまだし。
「条件反射だけで古今東西の魔王たちを3枚下ろしにしちゃう、すちゃらか脊椎動物兼剣士が!」
「ぼ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 自分のことだと全然、気付いてないし♪
「そして…」
 今度はゼルを指差す。
「自称・お茶目な魔剣士が!」
「誰が自称だ!誰がお茶目だ!」
 自覚がないって言うのも罪よねぇ〜♪
「そして…」
 最後にアメリア。
「枕もとで正の賛歌を歌い、悪夢と混沌を呼び出す巫女」
「どういう意味ですか!リナさん!!」
 そういう意味よ♪
「じゃあ。こうしよう♪」
 突如、ユニットが会話に割り込んできた。
「ゴールドドラゴンのミルガズィアのギャグ1000集が入ったテープを聞かせてあげるとか♪」
『それだけはいやだ(です)ーー!!!!』
 あ♪ガウリィまで反応した♪
『???』
 3人のおもむろおかしな反応に盗賊たちは疑問の顔を浮かべる。
「ユニットさん。お願いですから、それは止めてください!」
 ぐわばしいっ
 とユニットにしがみつき愛玩のアメリア。
「そうだ!あんなもんを流したらこの世界は崩壊間違いないぞ!」
 冷静を保つフリをしながらも冷や汗たらたらのゼル。
「いやだあ!それだけは!!!!」
 とガウリィ…い〜ぬは喜び♪に〜わ駆け周り♪
「やかましい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 再び怒りといえる悲しみのダンスが響き、
「…ぜい…はあ…はあ…ぜい…」
 そしてその人物が大きく息を弾ませる。
「お〜い…おっちゃん大丈夫か?いきなり大声だすと体に毒だぜ」
 いつの間に冷静になって近づいたのかガウリィがおっさんの肩を叩き、そうのたまう。
「いや〜最近、ちょっと運動不足でなあ…これからはもう少し健康を考えてみる…って…違ーーーーーーう!!!」
「お〜。元気元気。それだけ声出せるなら大丈夫そうだな♪」
「いいか…お前らよくもオレたちをコケにしてくれたな!このオトシマエはきっちりとさせてもらうからな!」
『…………………』
 ロング・ソードをちらつかせ、ねちっとした笑いを浮かばせ、
「…十分楽しんでな…くっくっくっく…」
「その男は言いのけ、いやらしい目つきであたしとエ…リナ、アメリアの体をねめつける。ああ…純粋なる無垢な乙女たちは、その狼たちの毒牙にかかり持てあそばれてしまうのか!!」
 じゃんじゃんじゃんじゃんじゃーーーーんっ
「なんだ!今の音は!どこからした!」
 ユニットから(はあと)
「ユニットさん楽しんでますね…」
「だな…」
「ところでユニットが持ってる本はなんだあ?」
「あ?これ?STSって本なんだけど。面白いんだよこれ。特にこの舞ちゃんが面白い子だし。達也は可愛いし♪」
『???』
 ユニットったら別の世界で販売されてる本を持ってきてるし…おまけに…
 どがああああああああ!!!!!
「あ♪来た来た♪」
 空を見上げユニットが嬉しそうな声を奏でる。
 本人達を呼び出してきたし。
 ま♪
 面白いからいいんだけど♪
 轟音と共に空を駆け抜ける、濃い青色のクローバー型の形をした一艘の船。
「何なんだ?いったい?いきなり?」
「あれは…箱舟?」
 それが轟音を上げ煙を吹き上げる落ちてくる。
「まさか、墜落してるのか?」
「そうよ♪」
「おいおい…なんか…こっちに向かって来てないか?」
「あれ?ほんとだ」
「何を他人事のように言ってるんだ!ユニット!」
 だって、他人事だもの。
 ひゅるるるるるるるる〜
 どが、ばき、ごしょ、ごきん
 あたしたちの数十メートル手前で墜落。
 ずがだだだだだだ…
 そのままの墜落した勢いで、大地をすべり、こっちに向かってくる。
『どわああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!来たああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!』
 悲鳴をあげててんでばらばらに逃げまどう、ゼル、アメリア、ガウリィ、盗賊たち。
 大地をひしゃげる音を上げ、あたしとユニットの横をすれすれで駆け抜けると。
 ぎきぎゃきごご………………………ごうん……
 静寂。
 しーーーーーーーーーーん…
 ほんの少し先で動きが止まった。
『…ひき殺されるかと思った…』
 あら?盗賊の何人かはひかれて、あたしのところに戻ってきたわよ。
 ガウリィは船に飛ばされて、ちょっとお空のお散歩。しばらくは戻ってこないでしょうねぇ♪
 数分間。数名の目がその船に向けられていると。
「でああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!!!!!」
 船内でそんな雄たけびが上がる。
 どごがんっ!
 そしてある一角、大人1.5人分ぐらいの大きさのある装甲が吹き飛んだ。
 いや、正確には中に居た者が足蹴りで壊し飛ばしたのだが。
「だああ…くそ…ひでーめにあったぜ」
 そしてそこから見知った顔の………………自称・美少女が♪
「…くー…くー…くー…くー…」
「…それより…雪菜ちゃんってこんな状況でもなんで眠っていられるんですか…」
 次に最初の美少女に負けず劣らずの美少女・恵美と、彼女に背負われた4つ年下の少女・雪菜。
「気にするな…ただの狸寝入りだ…」
 ぼつり。美少女・達也が呟く。
「ゆ〜き〜な〜ちゃ〜ん〜!!!!」
「…ぐー…ぐー…ぐー…ぐー…」
『…いや…いびきに変えてもばればれだってば…』
 3人が出終わると続いてまたまた美少女、達也と寸分たがわぬ容姿を持った舞が出口から顔だけをひょっこりと出し、
「たっく〜ん。あたし足くじいたみたい。おんぶして〜♪」
「あ?何だって?今、どつき蹴りを喰らいたいって?」
「いいえ何でもありません!」
「え?何?三連脚?」
「あううぅぅぅ…ごめんなさい…ちゃんと歩けますうぅ…」
「よろしい」
「舞…とっとて出てくれない?しまいには怒るわよ」
「ああ…ごめんなさい…ごめんなさい…すぐ出ます!」
 ばたばたばた…
 舞が慌てて出終わると、最後にこれでもかって言うぐらいの美女が現れる。
『うおっ』
 その姿を見て思わず声を上げる数名の盗賊たち。
 ま…驚く気持ちはわからなくはないわ。何せあたしとためを張れるほどの美女だもんねぇ。有希って♪
「それよりも…ここはどこなんだ?」
「どっかでしょ」
「いや…有希さん…たっちゃんはそんなあやふやなことを聞いてるんじゃないと思うんですけど…」
「…ぐー…ぐー…ぐー…ぐー」
「くうぅ〜シャバの空気はおいしいねぇ♪」
「舞…おまいはどこぞかのヤクザか?」
「ふふふふふ…よくぞ見破った明智君」
「…おい…」
 わいわい…きゃいきゃい…
「…な…なんだ?あの騒がしい…フレンドリーなのは…」
「大変なめにあってるはずですよね…なんであんなに楽しそうに?」
 そういう子達なのよ♪
 と…それにしても…
「ずいぶんとまあ派手にやられたわねぇ。あんたたち」
『???』
 中から出てきた全ての者達が、その声の主であるあたしに目を向けた。
『って…誰?』
 舞、恵美、雪菜。
「………………………………(…エル…こんなところで何やってんのよ?)」
 有希。
「………………………………(…会長か?…なんでここに…それにその姿…しかもユニットまでいるし…)」
 達也。
 あら?親友の有希はともかく、達也があたしに気付くなんて…完全に気配は絶ってたんだけどねぇ。
 Sなんて全然気付かなかったのに。
 面白いわ…やっぱり…あいつ(S)を降格させて達也に魔王になってもらおうかしら?
 ずざっ
 あたしがそう考えた瞬間、一瞬にして彼の姿が掻き消えあたしの目の前へと移動していた。
『なっ』
 その一瞬に驚きの声をあげるゼルとアメリア。
 何、二人とも驚いてるのよ。こんなの魔族にだってできるでしょうに…と言っても、彼の場合は空間を渡ったのではなく、人の常識を越えたスピードで残像をのこし移動しただけなのだが。
「…今…神か魔王になってもらおうかしら…なーんて思ってただろ…」
「あら?何のことかしら?」
『は?神?魔王?』
 疑問の声をあげるゼルとアメリア。
「きゃああぁぁぁ♪ユニットちゃんだあ〜♪」
「わあ〜い♪舞ちゃん元気〜♪」
「元気♪元気♪」
「あ〜なんかその辺で感動しながらぴこぴこぴょんぴょん、跳ね飛んでるユニットと謎の物体Xはどうでも言いとして…」
「いいのか?おい…しかも謎の物体Xって…」
 ゼルがぼつりと突っ込みを入れる。
「…オレを見てたとき顔が笑ってたぞ…そういう顔をする時、会長の考えは2通りのパターンに決まってるしな…そうだろ?」
『会長?』
 再び疑問の声の二人。
「あら?じゃあもう一つってーのは…何なのかしらねぇ♪」
「………………………………う…(しまった!いらぬことを!)」
「と言うわけで♪舞〜唐揚げの出前いっちょ!」
「お待ちどうさまでした!」
 どがっ!
 でっかいお皿が地面に置かれる。そこにはにいろんな色した唐揚げが。
 いや〜相変わらず作るの早いわね〜舞ってば♪
『…待ってない待ってない…』
 舞のその一言に手をパタパタ振って突っ込むゼル、アメリア。
 がしっ
「あ〜ら♪達也ちゃんったら♪どこに行こうとしてるのかしらあ〜♪」
「だああああああぁぁぁぁーーーーーーー!!!!!!頼む!会長!そりだけはああぁぁぁ!!!!!」
「だあ〜め♪」
「助けて!ねーちゃん!!」
 しゅぼっ
 その場に煙が舞い上がる。
「ふうぅ〜今日はいい天気ねぇ〜…富士山が綺麗に見えるわ(汗)」
「ワイルドに生きる人間的行動パターンで逃げに入ってるしいぃ!つーか…こっちの世界に富士山は見えないっつーの!」
「あら〜草津はいい天気なのねぇ〜」
「…ねーちゃん……って!そうだ!雪菜!こういう時こそおまえの必殺、子犬系お願…」
「みーん、みーん、みーん、みーん、みーん、みーん」
「…あ…だめですね…木につかまりながら、完全に【あたしはセミです】モードで逃げにはいってます」
「ええーい!恵美!こういう時に落ちついて状況説明せんでいい!!」
「それより…どっから現れたあの木は…」
 たった今♪
『…って………ゼロス(さん)!!』
「………………………………どうも…」
「いつから居たんですか?そこに?」
「…っていうか…何故…木の格好をしてるんだ?」
「あら♪ゼロスったら木の姿、とってもプリティ♪」
「…しくしく…何故僕がこんな格好を…」
「と、言う訳でゼロス。これご褒美♪」
 ぱくっ
 ユニットが差し出したそれをゼロスは何も考えずに口にし、
『…あ…』
 達也と恵美の声が重なる。
「みーん、みーん、みーん、みーん、みーん、みーん」
「…品川は雨か…」
『………………………………』
「ぐっはああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
 そしてそんな悲鳴と共に…
 ぼふんっ
 と軽い音と共に爆発し、彼を煙が包み込む。
『なっ、なっ、なっ、なっ、なっ、なっ、なっ』
『やっちったし…』
『わくわくどきどき』
「舞にユニット…すんげー楽しそうだな…」
『当然♪』
「はもるな…」
『………………………………………………………』
 煙が晴れそこから再び姿を現したゼロスは、ゆらゆらと左右にゆれていた。
『………………………………………………………』
「………………………………………………………あの〜…」
『…………ぶっ!あははははははははははははははは…』
 現れたのはゼロスの姿をしたヤジロベエ。
「…ゼ…ゼロスさん…すんごく…似合いますよ。その姿…ぷぷぷぷ…」
「人事だと思って…嬉しそうに言わないでくださいよ。アメリアさん!」
 そう、反抗しながらも左右にゆらゆら、ゆらゆら、ゆらゆら。
「ヤジロベエならぬゼロベエってところかしらね?」
「ゼロベエですか?リナさん。いいネーミングです」
「全然、良くありませんよ!」
 あら、あたしがつけた名前に文句があるのかしらゼロベエちゃんは♪
 ぽんっ
「あわわわわ…」
 ゼロベエのバランスを保つその手を雪菜が軽く押した。すると大きくゆれる出すゼロベエ。
 ゆ〜ら…ゆ〜ら…ゆ〜ら…ゆ〜ら…
「おもしろ〜い(はあと)」
 彼女の目がきらきら輝く。
「あっあたしも!」
 舞が──
 ゆ〜ら…ゆ〜ら…ゆ〜ら…ゆ〜ら…
「あたしもやる〜♪」
 ユニットが──
 ゆ〜ら…ゆ〜ら…ゆ〜ら…ゆ〜ら…
「あたしにもやらせてください!」
 アメリアが──
 ゆ〜ら…ゆ〜ら…ゆ〜ら…ゆ〜ら…
「なかなかいいバランスをとるじゃないか。ゼロベエは」
「ひどいっ!ゼルガディスさん!僕、泣いちゃいますよ!」
「…ふ…」
「あうぅ〜それより…いったい全体、僕はどうしてこんな姿にいぃ(泣)…しかも戻れない〜(泣)」
「あら…簡単なことよ。彼女はね。自分が作るその料理のうち30%の割合で不思議な(面白い)魔法薬を作っちゃう能力があったりするの♪しかも魔族にだって有効♪」
「ええーーーーーーー!!!!」
「いや…会長…最近はその確率が大きくなってるんじゃないかとオレは思ってるんだが…大体、最初の一個をゼロベエに食べさせて……」
「ゼロベエじゃありませんっ!」
「…1発でアタルなんて……………て…ちょっと待てよ……おい…ユニット…おまえさん…どれがその魔法薬が見極めてから食べさせただろ…ゼロベエに…」
「だからっ!」
 うるさい(はあと)
 ごすっ
「……………………………………………………(撃沈)」
「えっへん!」
「いや…オレは誉めてないぞ…」
「と…言う訳でえ〜…」
「いや…ユニット…何がと言うわけなん…」
 がしっ
 あたしの手が達也の体を羽交い絞めする。
「…だ?って…会長何を……………あ…」
 その行動に現状を思い出してる達也。
「達也ちゃん♪お口をあけてね♪はい♪あ〜ん♪」
 嬉しそうにフォークに突き刺さっている虹色空揚げを達也に差し出すユニット。
「いやだあああああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
 空に達也の嬉しい悲鳴がこだまする──
                                          <続く>

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28418【Select Target Slayers】 〜偽りの双子たち〜 第3話猫斗犬 E-mail URL2003/11/30 23:14:32
記事番号28415へのコメント

 実は今回のは…2人しか出てきません。あしからず。

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【Select Target Slayers】 〜偽りの双子たち〜 第3話


 夢は誰にだってある。
 心をもつ者なら誰にでも。
 もちろんあたしにも──彼女にも──彼にも──
 つらい運命を背負って──その運命を受け止めて──
 一生懸命短い時を過ごし──
 楽しい日々を送って──
 そして、運命に嘆き、悲しんだ──
 時にはあの日に帰りたいとも願った。
 あそこに──
 純粋な願い。
 清らかな心。
 わたしはそれに答えるだけ…


 ──正心流拳法道場──
 きいっ
 夜中、静かに音を立て開かれる戸。その場から一人の少年が出てきた。
 彼のその整った顔立ちに、険しい表情が伺える。
「達也どこに行くつもり?」
「な!?」
 その言葉にやっと気付いたのだろうか、達也と呼ばれた少年は彼女がいたことにいまさらいたことに驚きを隠せずにいる。
 振り向くとそこに一人の女性。
 背も高く足が長い。バストとヒップは日本人離れした形のよさで張り出し、ウェストはほっそりとしまっており、モデルをやっていてもおかしくないプロポーションだ。黒髪のショートカットに両目は活力のおびた黒い瞳。黒のスーツにタイトのミニスカート。同色のハイヒール。
 いや、そんな説明よりこう述べたほうがいいのだろうか。
 ”ほとんどの男どもが涎を垂らす良い女”ってやつだ。
 本名・神楽有希。
 横浜西警察署・刑事課所属。階級──警部補。
 神がかり的な推理力を持ち、射撃・剣道・柔道等…天才的な腕前を誇る。
 彼には見慣れていたその彼女の姿を確認した矢先、目に冷めた光が取り戻された。
「…なんか用か?エル?」
 ぴくっ
 彼のその一言に彼女の右眉がかすかにゆれた。
 ──有希ネエ──姉ちゃん──
 いつもの彼ならそのように呼んでいたはずの呼称名。しかし彼はまったく違う名前で彼女を呼んでいた。
「達也。いつ、気付いたの?あたしの正体に?」
「昨日…いや…正確には前回の仕事を終えた時だ…」
「…そう…やっぱり封印が解けちゃったのね…」
「…解けちゃった?は?何いってんだ?あんたが解いたんじゃねぇか?」
「あたしが?」
「ああ…」
 不思議そうな顔をする彼女に少年がいぶしかげな表情を見せる。
 どういうこと?
 あたしが封印を解いた?
 あたしには覚えが無いし、解くつもりは無かったはずなのに。
 誰かがあたしの名を語ってこの子の封印を解いた?
 何故?
 誰が?
 彼女は少し悲しい目を彼に見せるがすぐに気を取り直し、ゆっくりと目を閉じた。
 するといったいどうしたことなのか、彼女の姿がゆがみ、しばらくすると、金色の長髪と服が突然と変わる。
 惜しげもなく露出した素足、胸元の谷間もこの世の男達が喉を鳴らすかも知れないほど見せつける姿。プロポーションは先ほどと何ら変わりはないけれど、来ていた服は明らかに対照的で違っている。
「…さて…もう一度聞くわよ。どこに行く気なの?達也?」
 天使か?妖精か?
 そんな感じにさえ錯覚されそうなその声に、この世の男たち…女性たちも…魅了されたであろう。
 最初はふわふわと…徐々に持ち上がる押さえ切れないその高揚感。
 そんな状態で彼女を目にすれば、どうなるのか?
 これが、人の言う【魅力】だと一言で言い表すのは彼女に対して失礼ではないか?
 一目見ただけでも美人と言えるそのマスクに、完璧といえるそのプロポーション。
 だが、その見た目だけで全ての者を魅了できるわけではない。
 者には五感がある。
 視覚。聴覚。嗅覚。味覚。触覚。
 そして、第六感と呼べる物。
 その者が持つ力。オーラと呼ぶべきか。それを診分ける感覚。
 彼女が放つそのオーラと呼ばれる力は普通の者たちに比べて巨大だった。
 大きな力は寄り多くの小さな力をひきつける。彼女の魅力を表すとしたらそれが適切。
 その力に、【存在】と呼べる者は全ての意識は囚われていたであろう。
 だが、改めて彼の目を見てみよう。彼の目は彼女に魅了されていなかった。
 いや、逆の冷めた敵対心にも似た、力強いく意思の目と怒りの目。
 その彼の表情に美女はさすがだと感嘆する。
「エルには関係ない…」
「関係ないわけじゃないでしょう。偽っていたとはいえ、あたしはあんたの姉なんだから」
 彼が漏らしたその質問に、彼女は微かに笑った。
 くすりとしたその微笑にさらに人は魅惑されるであろう、が少年は全く動じない。
 ここで彼女は感嘆と言う物を覚えさせられる。
 ──【ロード・オブ・ナイトメア】──
 ──全てを生み出せし存在──
 ──混沌の海にたゆたえし存在──
 ──魔王の中の魔王──
 彼女には幾らでも呼び方がある。しかも全てなる者の頂点として君臨する呼ばれ方ばかり。
 そんな存在である彼女、エルを今まで楽しませてくれた存在なら星の数ほどいた。
 しかし、彼女に興味を持たせた存在になるとどうだろう。
 彼女は少しだけ過去を探ってみる。
 結論は5本の指を埋めることは無かった。彼女はそのことを語らない。
 その中に少年が入ることを彼女は語らない。
 大いなる力の存在である彼女。その彼女をほんの一瞬とはいえ、ひきつけた存在。
 そしてもう2人──
 達也はその2人に出会っている。いや…1人は…
 この3人が接触したことによって、新しい展開が見えてくる。
 変わっていくはず。
 それを彼女は望んでいた。
 純粋なるその願いを切り開くために。
 大いなる存在のエルならその願いを簡単にかなえることが出来たであろう。
 だが、彼女は【大いなる存在】であると同時に【全てなる母】でもある。
 「あなたの純粋な願いが聞こえてきました。では、私がかなえてあげましょう」
 そして、かなえられたその願いは、純粋な願いであって純粋じゃないのかもしれない。
 …何もしてない…けど…ずっと願い続けている、純粋な思い。
 エルがその願いをかなえたものは、純粋な願いとなるのだろうか。
 ──否──
 そんな願いを聞けば、また別な、願う事だけしかしない者が現れるだろう。
 ただ、優しいだけの【母】で有りつづける訳には行かない。時には見守る【母】でなければ。
 どこまでも、走り続けて、走り続けて、それでもダメな時だけ、力は貸してあげる。けど…
「こいつはオレの問題だろ…」
 その言葉に彼女の心がゆれた。人の物とは思えぬその悲痛な負の感情に流され。
「今度こそけりをつけなきゃならねぇ…あいつとな…」
 力ある彼の瞳。
 だが…最後に吐いた自分自身のその言葉で、彼の瞳にはかすかな濁りが湧く。
 彼は気付いている、この問題に終止符をうとうとしたところで彼の心は晴れないだろうということを。
「そうもいかないのよ…今回…STSとして仕事をあんたにやってもらいたいのよ…正確には…あんたにしかできない事かしら…」
「…エル自信が動けばいいだろ。オレが解決するより速いし、何より確実だ…それに…」
 彼は次の言葉に躊躇する。
「…オレは引退した身だろ」
 まるでダダッこのような彼のセリフに初めてエルから笑みが消える。
 それは悲しみ──
 一生消えることは無いであろう悪夢──
「あんた…このまんまじゃ、ダメになるわよ…」
 ──彼はまだあれから吹っ切れていない──
 その事実にエルの胸はいたんだ。
 彼女が見守る【母】でいたが為に起こってしまった彼たちの悲劇──



 遥か昔──
 まだ、エルたちが混沌一族と呼ばれず、【全てなる母】でも無かった、一個人の存在でしかなかった昔。
 そんな彼らの中から双子が生まれた。
 一人の名を青金と名づけられた。
 もう一人は名を青銀と名づけられた。
 そして、双子は異質な存在だった。
 ──青金は闇の力しか持っていなかった──
 ──青銀は光の力しか持っていなかった──
 彼ら一族は光と闇、2つを持ってこそ本来の姿。双子特有の存在なのであろうか。
 双子はすくすくと育ちました。
 青金は気性が激しく、自愛を持たぬ男性へと──
 青銀はおとなしく、怒ることを知らない女性へと──
 お互いに持つものが欠けているはずの双子は、それでも他の者たちとは比べ物にならない力を持つほどに。
 全く異質な2人。けど、とても仲が良かったのはどうしてなのか。
 その2人に対してやっかむ存在もいました。
 それは、青金がいない時に青銀に絡みます。
 青銀は、力はあるが絶対に何もしてこないと踏んでのことです。
 それは、青銀をめちゃくちゃにします。彼女を滅ぼそうとせんほどに。
 その姿に青金が怒ります。全てを滅ぼそうとするほどに。
 青金は青銀を愛していました。妹としてではなく一人の女性として。
 青金は暴走します。自分で解かっていてもとめれらないほど。
 青銀は青金を愛していました。彼と同じように兄としてではなく。
 彼女は彼を止めようとしました。その傷ついた体で。
 滅ぼすのではなく、止めたいと言う一心で。
 彼女は自分の身を絶ち切りました6つの体に。
 兄の暴走する力を長き時を経て封印するために。

 それはエルでさえ、ただの伝説と思われていたお話──


 そして──今から半年と少し前──
 達也が中等部卒業まじかに事件は起こった──
 それはいつものようにただの反逆者たちの暴走だと彼女は思っていた。
 そう考えてエルはSTSのトラブルコンサルタントである達也に今回の処理を任せたのである。
 都合よく、反逆者たちは達也たちの世界でことを起こそうとしていたから。
 それがエルのミスだった。彼女でさえ知らなかったのだ。
 青銀が青金を封印していた場所が達也たちの世界であったということを。
 どんどんと悪化していく戦い。
 その影響と偶発的な要因もあってか、青銀の封印が解かれてしまったのである。
 封印から開放された暴走する青金。
 全てを破壊し、全ての命を奪っていく。その世界の住人を。反逆者たちを。
 青金は尚も暴走をし、自分の身も含めて全てを消し去った──

 その時、駆け付けたエルによって、助けられたのは達也ただ一人だけだったのである──


「あんた…このまんまじゃ、ダメになるわよ…」
 エルがもう一度言う。
「大いに結構。幸せになる気はこれっぽっちもない…オレなら…もっと早くあの事件を解決出来たはずなんだからな…」
 彼は今でもそのことをそう後悔していた。
 そうしていれば…
 ──故郷も──
 ──これから歩むだろう未来も──
 ──両親も──
 ──結婚、間近だった姉も──
 ──2人の妹も──
 ──そして最愛の人も──
 …全てを助けられたはずだと…
 いや…事実は違う…彼では何もできなかった…エルはそう思っている。
 唯一助けることが出来た彼は、その後、他人の目から見ても大変な落ち込みようだった。何に対しても無気力で、誰に対しても返事を返さず、一人暗闇で後悔の言葉を呟くばかり。
 昔の彼とは比べ物にならないほどの光を失った者。
 そんな彼の姿にエルは見ていられなかった。
「あれは全面的にあたしのせいでしょ…あたしが青金たちのことを知ってれば…そしてもっと早く駆け付けることが出来れば…もっと多くが助けられたわ」
「エルは悪くない…それにエルがその場に来ても青金は止められなかったはずだって聞いてるぜ」
 混沌と混沌のぶつかり合いは新たなる破壊を招く、混沌族全てに伝えられている理事。だから、エルは青金に手出しすることに躊躇した。
「けど…」
「…もう言い…このままじゃ…前と同じ事の繰返しだ……」
 そう言って、エルと真正面に向き合っていた彼は背を向け歩く。
 思わずエルは彼の行く手に結界を施した。その障害物に彼の歩みが止まる。
 彼は怒っていた。あの時の事件についてではない。
 その後、後悔に苦しむ達也を見かねて…いや…彼のそんな姿をもう見たくなかった…エルが記憶の封印を施したことにである。
「…頼む……………頼むから行かせてくれよ…」
 ──死ぬ気ね。この子──
 彼らしくないその悲痛な声。
 その姿に怒りを彼女は覚えかける。拳が強く握られる。
 …だめよ…落ち着いて…
「自分でもわかってるんだ。今、あいつのところに行ったって何にも変わらないことぐらい。けど…すべてを失ったままじゃ…つらくてよ…姉ちゃんだってよ…もう少しでちゃんとした家族を持つところだったんだぜ…」
 その言葉でエルの脳裏に一人の女性が見えた。
 彼女、エルが先ほどまで偽っていた人物の姿。
 ──神楽有希──
 人間でありながら、力を隠していた自分の正体をあっけなく見破った存在。
 人間でありながら、自分にため口感覚で話をしてきた存在。
 そう…彼女に興味を持たせた存在は彼のすぐ近くにいる。いや…正確にはいたと言うべきか…
 彼女とかち合わせたグラス。2人で改めて確認しあったガラスが打ち合う音。
「達也!」
 彼女は叫んだ。そしてもう感情を止められなかった。
 彼女たちにだって止められないものはある。
 混沌は光と闇。二つを持ち合わせる存在。
 人間は光と闇の狭間で生まれた2つの感情を持ち合わせる存在。
 ある意味、混沌と人間は近い存在なのだろうか。
「…あんたはあたしがあの事件で悲しんでない。なんて思ってるんじゃないでしょうね…はっきり言っておくけどね…」
「……なっ!」
 エルが達也へと歩み寄り、そのまま襟元を掴み取りそのまま引き寄せる。
「…いい?混沌であるあたしたちはね、長い時間を生きつづけるの!」
「…エ…エル…」
 始めてみる彼女のその激しい剣幕に達也は困惑した。
 彼女の怒る姿にではない。あまりにも激しい怒りの隆起。
 だが、ここまで感情をあらわにすることなぞ、ついぞ見たことも無い。
 いや、混沌族がここまで、しかもただの人間に見せることがあるのだろうか?
 達也は思う。
「それでも…あたしと同じ存在である混沌族は別として、友達と呼べる存在はいないわ!」
「…ちょ…」
 エルの腕に力がこもる。
「……結構…さびしい存在なのよ…混沌って…」
「……………………………………?」
 エルの悲しい笑みを達也は見た。この表情だって彼は見たことが無い。
「…それが…それが…ただの人間を……あんたの姉、有希を…」
 エルは彼女が6歳のころからの知り合いだった。人間で言えば長い年月の付き合い。
 彼女といた時だけはいつもとは違う、楽しい感覚があった。
 それが友達と言うものなのか?それが何なのかエルには知ることが出来なかった。
 そんなある時期、エルは有希にたずねたことがあった。今から3年前で有希が22歳になったばかりの時。

『ねぇ…有希はさ、なんであたしと友達でいてくれるの?』
『あ?何よ?エル?突然』
『だって…有希はあたしが人間じゃないって事は知ってる訳でしょ?』
『まあねぇ〜♪絶対なる闇の王を友達に持つなんてあたしぐらいよねぇ♪』
『だから…あたしの存在を知った者って…恐れおおくも、とかなんとか言って…
 距離をおくのが普通の反応なのよ。
 それなのに有希は何の躊躇も持たずに友達でいてくれる…なんで?』
『ん?なに?エルってば、友達になるのに理由がいると思ってんの?』

「あたしは心の底から友達…いいえ親友と呼べたのよ!彼女を!!」
 エルの感情が高ぶっていく。

『………………う…そ…そうは思ってないけどぉ…』
『自分でも納得してるんじゃない♪』
『…でも…やっぱり…ちゃんとした理由が欲しいしぃ〜…ごろごろごろごろ』
『猫みたいに喉をならすな』
『欲しい。欲しい。ちゃんとした理由が欲しいのにゃあ〜』
『にゃあ〜じゃ無いでしょ…ったく……ん〜…理由?……ちゃんとした?
 ……う〜ん…そうねぇ〜……しいて…言うなら…』
『しいて言うなら?』
『…エル………寂しそうだったから…かな?』
『え?』

「あたしが心からそう思うってことが…どれだけ重要なのかわかる?あなたに?」
 どんどんと高ぶっていく。

『…さ…寂しそうだった?あたしが?』
『うん。エルって…いつ生まれたのかわかんないけど…そん時から大きい存在だったんでしょ』
『…ええ…』
『まあ…そう言う存在だったからなんでしょうけど…回りにいるのは部下たちばっかりで…
 …逆に友達になるような存在なんていなかったんじゃない?』
『…………………………』
『それが億単位…いや…兆単位かな?それだけの年月を生きてきた…寂しくないって、ほうが可笑しいわよ』

「その彼女の結婚が決まって…」
 確かにそうだった。あたしの周りは部下たちばかり。時々、お仕置きとかして気分を紛らわしたりもしたけど…空しさもあったかもしれない…そんな時と彼女と話をする時では楽しいと言う物が違っていたのかもしれない…

『エルって結構意地っ張りだし…寂しくてもそう言うところは絶対表に見せない』
『…うっ…』
『そういうとこ。あたしはなんとなくわかっちゃうのよねぇ』
『…な…なんでわかっちゃうのよ?人間である有希が?』
『だから友達なんじゃない(はあと)』
『…あ…』

「結婚式の招待状を貰って…凄く嬉しかった…友達だから…親友だったからこそ…喜べた…」
 ──きーん──
 涼やかなガラスの音。
 自分のことなのに…簡単なことなのに…何故かあたしは気付いていなかった。
 それを、さらりと言ってのけた有希は、その時にあたしの持つグラスに自分のグラスを打ち合わせたんだっけ………思い出してしまった。
 感情が押さえきれない。彼女はそれに飲みこまれていく。
「……その…その彼女が死んで……」

『ま♪さらに言っちゃえば。あたしたち、15年来の付き合いじゃない♪
 いまさらわからないほうがおかしいって』

 その時の彼女の笑顔を思い出してしまい、エルはその感情をさらに奮い立たせた。
「…………あたしが悲しんでないとでも思ってるのおぉ!!!!!!!!!!!」
 【全てなる母】?
 【ロード・オブ・ナイトメア】?
 大層な名を持っている…力だってある…だけど…友達一人救えなかった…
 相手が巨大だろうと…混沌であったであろうと…その時のほんの一瞬のためらいが!
 エルの頬につたわる…
「本当は皆を生きかえらせたいとも思ったわよ。けど、あそこまで…混沌の力で…あそこまでされたら…
魂も完全に滅びちゃうの!あたしでもどうしようも出来ないのよ…」
「………エル…泣いてるのか?」
「なっ!って!泣いてわよっ!」
 彼を放りだし、慌てて手で頬のあたりを、わしわしと拭きまくる。
「いや…しっかり泣いてるじゃん…」
「…うるさい!泣いてないって言ったら泣いてないの!いい!達也!あんたが何を言おうと、どう言おうと
この仕事だけはやってもらうわよ!」
「…逃げたな……」
「…うるさい!」
 かつんっ
 と彼女はハイヒールを踏み鳴らし背を向けて…
 恥ずかしいものを見せてしまった。彼女は顔を赤くしていた。
 あんな取り乱した姿、ついぞ見せたことが無かったのに。
「…エル…」
「何?!まだ文句でもあるの!!」
「……ああ…話が終わったんなら、とっととこの結界解けよ…」
「あん?あんたまだあいつのところに行こうと…」
「違うって…このまんまじゃ…家にも戻れねぇだろうが…早く結界とけってエ………………いや…会長…」
「…………………………あ?…ってあんた!今、あたしのこと会長って!」
「…言ったが…それがどうかしたか?」
 彼女は半年振りに彼の本当の笑顔を見た。それが親友の顔とだぶる。
 …やっぱり…似てるわ…あんたたち……笑い方まで…
「ま…とりあえず…家に入ったら、復帰戦のその仕事の詳しい内容。聞かせてもらおうじゃねぇの。言っておくが…今までの鬱憤を晴らせるぐらいのを出来れば希望するぜ。オレは…」
「…と…当然よ当然。元とは言え、あんたは特別級の資格者でしょうが。そんな小粒な仕事持ってくるわけ無いでしょ」
 …やっと…やっと…止まっていた時が動き始めた…
 そう、何気なくエルが思う。
 やっと?…まだ…たった半年じゃない…
 あたしにとっては一瞬。なんでそう思ったんだろ?あたしってば?
「なあ…会長…」
「なに?」
「何であんなことをしたんだ?」
「…………………………あんなこと?」
「オレのあん時の記憶を封印して、さらに偽の世界を作って偽の家族を作った。なんでだ?」
「…あ…そのこと…………………そうね…あなたのため…と言いたいところだけど……結局はあたしの自己満足なんでしょうね…あの事件はあたしにとってもつらかったから…」
「…本当にそれだけか?」
「……………………そうよ…」
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
「…………………そうか…」
 …………………………彼はまだ心を閉ざしている…絶対的な存在の彼女にでも彼が考えていることが読めない…
 ──何を考えてるの?あんた──
「ふう…それにしても…」
 大きくため息をつき、
「…ん?」
「…会長がここまで、感情的になるとはねぇ…」
 にたりと達也が口を歪ました。
「へ?」
「くう〜しまった!さっきの姿。写真にでも撮っとけば良かったぜ♪Sとかその辺の魔王たちなんか絶対、可愛いとか何とか言って欲しがるぞお♪」
「なっ!////////!!!!!!!????????」
 また、エルが感情に飲み込まれる。恥ずかしいと言う感情に。
「…ぬ…ぬわ〜に!勝ち誇った顔してんのよおぉぉぉ!16年しか生きてないガキがあぁ!!」
「うわ〜!イタイ!イタイ!イタイ!イタイ!…エ…エル…止め…」
「うるさい!何だろうと生意気は生意気よ!それがあたしの理論よ!!」
「にええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーー!!!!どう言う理論だあ!それはあぁーーー!!!!!!!」
「全てなる存在のあたしが言うんだから、正しい理論♪」
「ぬわあ〜に!姉ちゃんみてーな事を言ってるんだ!あんたわああぁぁ!!!」
「あ〜ら♪今は姉としてあんたと暮らしてるのよ♪それにまだしばらくは有希として一緒に暮らすからね♪いや〜嬉しいでしょ達也。美人でとっても優しいお姉さまと一緒にいられるんだから♪」
「どこが優しんだあぁぁ!!!あんたのどこがああああぁぁぁぁ!!!!!!!」
「あ〜ら♪この口かしら嬉しいことを言ってくれるのはあ♪」
「ひいぃぃぃぃぃ!!!!!」
 …え〜と……その………お大事に…達也くん…
 つーか…そんだけ騒ぐと近所迷惑ですよ…お二人さん…

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28561Re:初めましてこんばんわっ!!!F-ぽぷり E-mail 2003/12/9 19:41:03
記事番号28415へのコメント

 
 こんにちは、そして初めまして!F-ぽぷりという者です。
 前々から「あんだ〜ば〜」を読み逃げしてたどうしようもないやつです。すみませんっ。
 ちなみに相方はリナちゃんのことが多!!です!(すごく余談)
 こんなヤツですがどうぞよろしくお願いします!!

  猫斗犬さんはなんだか忙しそうですね・・・。
  かくいう私も期末テストに追われでるんですけど・・・ね(汗)
  うん・・・。ふぁいとだ・・・(ずぅ〜ん)。

 それで、募集の件なんですけど、
 たしかに達也&舞の誕生日も捨てがたいっ!!しかし私は思いました!!
 達也&舞達出演者の好きな食べ物は何かと!!・・・いや、
 別に知ってどーなるというわけでもないと思いますけど・・・ね(汗)
 まあ、というわけで(どういうわけだ?)、私がふと思った疑問は
 「出演者達の好きな食べ物は何かっ!?」です。
 ・・・・なんだかちっともネタにはならなさそうですが、
 それでは〜〜。F-ぽぷりでした。

 _______逃げっ!_________