◆−Traveler-第2話-−白昼幻夢 (2003/12/9 13:11:00) No.28552


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28552Traveler-第2話-白昼幻夢 2003/12/9 13:11:00


久しぶりの白昼幻夢です。ずいぶん遅くなりましたね…。もうすぐクリスマスでしょ?ああもうそんな季節だなんて…..。今年は英語か漢字の電子手帳欲しいです。だれか下さい(?)

Traveler−第2話−

がさがさ、がさ、がさがさがさ。
この音があらわすものは何だろう。

「…ううん…こ、ここは?あ、これ葉…..」
サディアが目を覚ました所は、辺り一面満目の樹木で覆われていて、人っ子一人としていない程の閑静な森の中だった。
枝葉の揺れる音も、風がそよぐ音も、小鳥のさえずりも聞こえない。
その静寂さが、森の薄暗さと共に不気味なものを感じさせた。

「ここはどこ…?ギーアさん…」

返事がない。

「あれ…?」
辺りは誰の気配もしない。
サディアはあることの気付くといっそう慌てた様子になり、立ち上がった。

「まさか…この森の中…わたし一人っ?!と、とにかく捜さないと。多分ギーアさんいると思うし……」
と言うなりどこかに駆け出していった。

「あいたっ」
つまずいて転んだ。地面があまり固くなかったので、怪我は何一つ負わなかったが。
「どうしよう…これじゃ迷子だし……今どこにいるの…」

そのとき、どこからともなく軽い、静かな旋律が流れて来た。その音は硝子笛の細い音にも、木笛の太い音にも似ていた。何か人を引き付けるような、眠くなるような音程のものだった。

(彼女は後で知ることになるが、この曲はレクイエムの一種であるのだ)

旋律が流れるたびに音にそって風が流れていく。これはきっと風の精霊が好む音なのだろう。あちこちで反響して、この森全体から聞こえる。
サディアは、この優しい音色がどこから聴こえて来るのかつきとめようとした。単なる音響が、風の精霊と戯れる……いや、むしろ「操っている」かのようにみえる。相当な魔力を持っているに違いない、おっと撤回。
誰か、いる。

あの人だろうか?

音は彼女から少し離れた樹木あたりからしている。近付くと、音色が大きくなる。
見上げると、音の持ち主は上枝に座り、太幹に寄り掛かって笛を吹いていた。その姿は、少年のようだ。肩くらいの青磁がかった金髪は繊細さを印象づけている。

この森に住むエルフか?

サディアがなお見上げていると、相手も気付いたらしく吹くのをやめて彼女を見下ろした。

「君は誰……」
大きく見開いた目はどこか空白感を漂わせるものであり、これも青磁がかった微透明の目が弱弱しく見える。

「亡くなった…の?……夢見……魔法熟知……の姿でもない……」
「ねぇ、ここはどこ?」
少年の言葉をさえぎってサディアは言った。

「ここは星霊界」
あっけもない答え。
「せいれい界?」
「そう」
「妖精界ではないの?」
「確か、近くにあった気もするけど…何年でてないかなぁ。もう忘れちゃった」
二人の間を、風が通り過ぎた。少年が言った。
「(、)_`.=/`/><」
風の言葉だ。
「…呼んでる……」
サディアには一つだけ聞き取れた言葉があった。
「[あの木]って何?」
それは少年を驚かせた。大きな目が丸くなる。
「精霊の言葉がわかるの?!」
声のトーンが跳ね上がった。
「う、うん……一応ね…」
サディアは気押されながらも返した。

「やっぱ、ただ者じゃないね……。輪郭がはっきりしてる…」
独り言を呟きながら、少年は枝をつたって降りてきた。
「僕はハルヘ。ここの住人ってとこ。…君は?
「わたしはサディア。人を探しているの。灰色っぽい服を着た、…なんて言うのかな…薄い茶色のような髪の人なんだけど、見なかった?」
「君以外誰も見なかったよ」
ハルヘは奥の方を指差した。
「風の精が、君にあの木を見せなよだって」
「あの木って何なの?」
「それは見てからさ」
彼はサディアの腕をつかんだ。
「さ、行こうよサディア。駆けて行こう」


二人は[あの木]がある場所についた。そこだけは、光があり、明るかった。
薄暗い闇の中に一つだけある、灯台の光とでも言えるだろう。
ところが、それよりももっと驚くべきことがあった。
光の下には一つの大きな木がそびえている。

えっ?それだけかって?続きを見なさい。
       ↓↓↓
それは、水晶のように透明なものだった………。

「こ、これは……?」
「生命の木だよ」
「綺麗ね」
サディアは素直に思って言っただけなのに、ハルヘは悲哀と怒気がこもった声を出した。
「…最初はそう思うだろうね…。あの木をよぉく見ててよ」
「…?何も変わったところはないよ」
「しっ。音をたてないで。もうすぐ……」
すると突然、風も吹いていないのに緑がざわめき始めた。ざわめきの中から微かに何かの音が聞こえてくる。堅くて太い音。何となく、硝子のパイプオルガン音、とさえ思えてくる。
その音を運んでいるのは、風の精霊達だ。不思議とさっきまでいなかったのに。

「……この音は、ここの風が好きなもの…
ハルヘが訳もなく呟いた。
硝子のパイプオルガン音(作者談)はさっきより聞こえるようになった。
「木を、じっくり見て……」
ささやき声。その後、
[生命の木]が白く光り出した。根から枝へと広がり、ついにはぼうっと浮かぶ白い外灯になった。

あの音も、この木からする。

しばらくすると、枝から抜けた。何が抜けたかって?
光の一部が、風にのってどこかへ去った。
それに伴い、外灯の光が薄くなった。白が消えた。
音楽はまだ鳴っている。一段と弱くなりながら。

風が吹いていた。

「…枝から生まれたのは、穢れなき魂…。音楽と供に、風に運ばれていく…。故郷の地に戻りゆく者、戻るのを許されぬ者……」

「何のこと??」
その声が気になったため、サディアは聞き返した。

「実はね、」
少年は神妙な顔つきになった。
「あの木、魂の出入り口なんだ」

「…出入り口?」
「ここは君たちがよく言う「あの世」に近いとこっていうか…それの道と言うか……亡くなった者の霊が漂う領域」
少女は目をみはるばかりだった。
「せいれい界って、そういうとこか…」
「?言わなかったっけ?アストラル.プレーン…」
「アストラル?星?精霊界って…」
「…「精霊」界ではなく、「星霊」界…」
「そうなのぉ!?」
少女は「今初めてわかった」という驚きぶりをみせた。

「精霊も、一応はいるけどね」
冷ややかな答えだった。目の色が透明に近くなっている。


「ここにいるのは風の精のみ…」
少年はまるで詩のように口ずさみだした。
「骸(むくろ)は地と化し木を育て、緑を育み、実り、そして朽ちる。土地を養う。新たな生が誕生。…変わりゆくは外面」

今度は、サディアも黙って聞いていた。

「外面は器、器は台となり何かが育つ。だけど、魂は変わらず……」

ハルヘは笛を差し出した。
「これはあの木から作られた笛。護符であり僕の一部であり」
「君の一部…?」
「僕の器は生命の木へと消えた。木は成長し僕もう不死身の魂」
彼が何を言っているのかわからなくなってきた。どうしたというのだ?

「……!!」
彼女はやっと気付いた。

この少年が、幽霊であることを。
「わかった?」
そう言い残すと少年は笛を吹きはじめた。最初に聞いた音と同じなのに、とても悲しく響いた。
「生命の木」がその音色に合わせて、あの太い硝子音を奏でている。
ざわめきの中にあったのは、この木からの音だったのだ。

二人の周りを、冷たい風が通り抜けている。

「氷の精が来たよ……ハルヘ?」

隣にいた少年の姿は見えなくなっていた。笛の高い音楽と、木の低い音楽が混ざりあい、さらに大きくなる。

目の前の景色がぼやけてきた。

あの少年にはもう会うこともないだろう。

「…さよなら」

サディアはその場に倒れた。どうしようもない、やっかいな睡魔が襲ってきたから。ひどく疲れた気もする。それだけで、とさえ考えられなくなってきた。
眠いのだから。

視界は真っ暗だ。闇がはてしなく広がり、何も見えない。

暗闇に、きらりと光るものを見つけたのはすぐ後だろうか。
細長くて、白っぽいもの。

ハルヘの、笛?
手を伸ばした。が、届かない。

それでも、手を伸ばす。
届かない。

でもそれは、こっちに向かってくる。

凝らして見ると、白の透明色よりもっと濃い、象牙色…だった。
先の方が、五つに分かれている?
へんだなぁー。

それが二個に増えた。うっ。
ますますこっちに向かってくる。あっちいけぇーっ!!

逃げよう。としても、力が入らない。その前に、立てない…。

それは目の前に迫った。

悲鳴をあげそうになった時……
なんとなく目覚めた感じがした。
どこかに寝ていた。
少し、かたい繊維質の蒲団が掛けられている。

二個のそれ−はまだ目の前にある。だけどよく見ると、何の変哲もない白い手だ。

見上げると、誰かの顔があった。
顔を合わせた以上、何もしないのは失礼だということは知っていたが、この時はそのことも忘れる程その顔に見入ってしまった。

心配そうな表情の女性…なのだがまだ少し少女らしさが残っている。
大人にはまだまだなりきっていない娘のようだ。
薄緑の髪から耳が抜き出て尖っているところをみると、エルフだろうか。

サディアはその顔に、どこかで会った気がしてならなかった。

電光石火のごとくとはよく言うが、本当にその通りだ。
記憶の泉から、一気に沸き上がってきたのだから。

「は、はる…ハルヘ?!」
彼女は驚きに満ちていた。似ているのだ。でも女性であるので別人だが。
相手も驚いた。寝ぼけているのにしては、あまりにも鮮烈すぎる言葉だったから。
「なん…何で知っているの?」
「会ったから」
「星霊界で?」
「うん。せいれい界で…ここはどこ?」
「ここはわたしの家」
その言い方があの少年に似ていた。

「貴方は、夢で会ったのね」
「夢?」
「生きている者がそこに行くには、夢を見ないと。あれはわたし達にとって、夢見の世界よ」
「そんなに知っている、あなたは誰?
「…わたしはトルーシュ。ハルヘと双子」
なるほど、だから似ているのか。とあらためてサディアは思った。

「…生命の木は見た?」
「見たよ。透明な木。霊界の道……」
「あの木から魂が出てくるところは、見てはだめなのに、彼は……貴方は見なかったのね、よかっ………あれっ?」
「……zzz」

サディアは深い眠りに落ちていた。
WAIT SEQUEL
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感の良い人はハルヘがどうなったかわかると思います。あとサディアの身に何かが…!!(おい)
最後にあらわれた英語…「続編を待て」という意味だったかな?
この「生命の木」編はと○○う、の[みんけ..]をちょっと拝借しました。
その、と○○うす少し気持ち悪いです。CDありますが。