◆−滅ぼせし者(スレイヤー) 00−十六夜 (2003/12/11 17:21:01) No.28604


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28604滅ぼせし者(スレイヤー) 00十六夜 2003/12/11 17:21:01



 エルメキアにある高級レストラン。
 正装限定の味も値段も超一流の店内の一角で、気怠げに椅子の背に寄り掛かり、窓の外の景色を眺めている一人の女性。
 薄い黄色のドレスに、漆黒の星空を映したようなマント、同色の手首まで覆う絹の手袋に、足首まである黒のブーツ。
 それら全てはシンプルでありながら、所々に金の刺繍が織り込まれてあり、美しい。
 その向かいには恐縮した面持ちで何事かを報告している一人の女性。
 否、恐縮しているというより、うっとりとしそうになる己を制し、震えそうになる声を制して何とか報告しているといった方が正しいだろう。
 つまらなさそうな表情で腕を組み、報告を聞いている女性は視線を窓の外へ向けたまま、動かそうともしない。
 それでも向かいに座った女性は恍惚とした表情で報告を続けている。
 ―――やがて報告を終えた女性は己の上司である主を見つめ、言葉を待つ。
 窓の外へ向けていた眼差しをふと細め、すぃっとその真紅の瞳を向かいの女性へ向ける。
「・・・・・・・・・まつろわぬ者に、用はない。好きに片付けるがいい」
「承知致しました」
 言葉を賜った女性は、歓喜しながら軽く首肯する。
 水色のドレスを纏った女性は、空になった主のグラスに新たに酒を注ぐ。
 深い色合いの赤を見、新たに酒を注がれたグラスを持ち、軽く手で弄ぶ。
 美しい水金色の膝程までもある長いさらっとした髪に、真紅の瞳。整った、正に絵に描き出す事さえ出来ぬ程の完璧な容姿。
 そしてその向かいに座る女性も、目の前の主程ではないが美しい容姿をしていた。
 白銀色の髪に氷蒼(アイスブルー)色の瞳を持つ艶麗な女性は、金の王に創り出され、目の前の主に仕えられる事を感謝していた。
「リディア。私が許す。滅ぼせし者(スレイヤー)の名において、―――消せ」
 リディアと呼ばれた女性は、真顔になって頷くと、名残惜しげに立ち上がった。
「では、リナティス=ナイトメア=スレイヤー様配下、リディス。時空の狭間に逃げ込みし天空の存在(もの)殲滅、及び金の君と貴女様を裏切りし者の始末に行って参ります」
 限りない敬愛と思慕の念を込めて一礼すると、店の者に金貨を支払い、店から出て行った。
 残された女性は、赤い極上のワインで喉を湿らせ、ふっと目を閉じる。
 時空の狭間に隠れ潜む存在(もの)。
 その唇の両端に、くっと嘲りの笑みが浮かぶ。
「・・・・・・・・・・・・愚かな。愚かな事。自らの分を知らぬ、愚かなる存在(もの)。償いは、してもらわねばのう? 精々足掻いて見るがよいわ。我等は永き時を在り続ける。その余興に、せめて楽しませる事はして見せてほしいの? つまらない下郎だが・・・・・・のぅ? 悪夢の君よ」
 虚空から笑い声がさざめき、金の髪、金の瞳の美しすぎる女性が姿を現した。
 漆黒の、闇色の衣装に身を包み、冴えた月光のごとき白刃の大鎌を持った女性が真紅の瞳の女性の向かいに座る。
「そうね。リナティス♪ わたしがいつか天空(そら)に還る時までまだ時間かかるだろうしね♪」
 突然現われた女性に、普通は驚く筈の者達は、何事もないように反応しない。
 まあ、当然といえば当然なのだが、その店に人ではない者、魔族しかも高位の知れば何故ここにいる!? と言いたくなる事間違いなしの獣王ゼラス=メタリオムと、その直属の部下である獣神官ゼロス、海王ダルフィン、覇王グラウシェラーがいれば話は別である。
 リナティスと呼ばれた女性が来店した時から気になって精神世界面(アストラル・サイド)から盗み聞きしていたゼラス達は、かなりの衝撃を受け、グラウシェラーは足下が薄くなってきていたり(でもテーブルの下だし、テーブルクロスで見えない)する。
 勿論リナティスとL様は気付いているが、気にしていない。
「それにしても、折角限界を超えてわたしと同格になったのに、また人間に生まれたいなんて面白い事言うわよね♪? リナティス」
「いいであろう? たかが100年程度生きられるかどうかなのだ。この身体(うつわ)を使えば世界に影響は出ぬし。のぅ、このまま暫くこの世界で遊んでいてもいいであろ?」
「そうね、最近暇だし♪ 貴女を見ているだけで、結構楽しいし♪☆」
「フィリアの所のヴァルが記憶を取り戻しそうでの、そこに行ってみるが♪ 名前はまあ、リナ=スレイヤーでいいかのぅ?♪」
 くすくす笑い合う美女二人。
 かーなーりー、目の保養になっていたりする。
「貴女がリナ=インバースの時に喚んだ時から、側近にする事は決めていたけど、限界を超えるんだもの♪♪♪♪♪ 貴女とわたしでなら、天空(そら)との決戦に負ける事はないから、楽しみよね☆」



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   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・反応がよければ、続きが出るかも知れません・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
   因みにカップリングはゼロス×リナティス(登場人物全員、完璧にオリジナル化していますが(汗))か、なしかのどちらかです。
   なしの場合でもほのかにゼロリナかも知れませんが。
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それでは!(ダッシュ。逃走!)