◆−藍の空(ゼルアメ)−G.O. (2003/12/28 21:56:24) No.28845 ┗藍の空(ゼルアメ)<2>最初の夜−G.O. (2004/1/2 20:30:11) No.28912 ┣Re:藍の空(ゼルアメ)<2>最初の夜−心 (2004/1/3 00:19:46) No.28914 ┃┗ありがとうございます−G.O. (2004/1/3 04:41:48) No.28915 ┣拝読いたしました(><)−B.BALL (2004/1/6 00:04:06) No.28939 ┃┗よろしく!−G.O. (2004/1/6 12:12:34) No.28943 ┗堪能致しましたw−空練 (2004/1/8 16:42:53) No.28955 ┗淡泊です−G.O. (2004/1/9 21:27:44) No.28964
28845 | 藍の空(ゼルアメ) | G.O. | 2003/12/28 21:56:24 |
初めまして、胸バクしつつの、初投稿です。 2003年さんざっぱら楽しませていただいた己の記念に、年越しゼルアメをひとつ……いや、もう、記念はエエから勝手に年越せよ!てなもんでしょうが、今年後半より半年間ホントに楽しみました。スレイヤーズ、ゼルアメ、書き殴りさん、そしてゼルアメスキーな方々へのお世話になり納めということで。 ちょっと早いですが、年越し、新年ネタです。 ------------------------------------------------------------------- 藍の空 <1>最後の夜 去りゆく年を偲び、迎える新たな年を思い、人々がにわかにざわつく、そんな一年最後の夜。 しんみりと思いに耽ることも、浮き足立つこともない男が一人、 旅仲間が待つ宿に向かって街の通りを歩いていた。 時折酒の入った男どもが彼の肩を掠めて行き過ぎるたびに、軽く舌を打ってそれを避ける。 何が新年だか……ゼルガディスは、手をつないで歩いてくる楽しげな親子を一瞥した。 彼にとっては年が明けることなど、単に一夜明けるのと何ら変わりのない話だ。 いつものように日が沈み、夜闇を越えて朝が来る。 ただそれだけ。 「来年もいい年になるといいわね。」 「きっとそうだよ!だって僕、10才になるんだもん!」 すれ違いさまに親子の会話が耳に入った。 10才か……その頃の自分なら、明ける年に胸を弾ませたりしたんだろうか。 思い出そうにも、そんな記憶があるのかさえ怪しく、 どうでもいい事だとかぶりを振って、再び歩を進めた。 ふと足を止め、頭上に広がる夜空を仰ぎ見る。 明日も明後日もその先も、何も変わらないであろう満天の星空。 己の背負った運命と同じく、気が遠くなるほど永い時間を過ぎても、 僅かな変化も起こすことのない張り付いた夜空だ。 ゼルガディスの冷め切った瞳がかすかに細く眇められる。 広がる深い藍は、彼を見つめる少女の大きな瞳の色にも似て、薄ら寒い感覚に襲われた。 瞬く星の輝きまでが瞳に浮かぶ光に酷似し、じっと見下ろされている気がする。 だが違う……そうではない。 自分を見る光と藍は、短い時間の中で大きく変化するものだ、天とは違う。 いつまでも変わりなく存在するものではないのだ。 古い年を捨て、新しい年を迎えるように、いずれ目の前から去りゆく儚い藍。 ゾッとするような藍の空から視線を引き剥がし、再び仰ぎ見ることなく目的地に向かった。 「遅い!もう年内には会えないかと思ったわよ、ゼル!」 宿に着くなり、食堂で待ち構えていたリナが大声で咎める。 「……だからなんだ。別に何がどうなるわけでも………」 「ダメですよ、ちゃんと一緒に新年を迎えようって約束したじゃないですか!」 ゼルガディスの言葉を遮ってアメリアが叫んだ。 深い藍と、瞬く星。 約束などした覚えもなかったが、覚えのないことに知らず自分が組み込まれているのは常だ。 黙って肩を竦めると、テーブルに揃った赤、金、黒の頭に自分のそれを加える。 サッと席を立ったアメリアが賑やかな食堂の人混みを縫って姿を消し、 すぐに湯気を上げるカップを片手に戻って来た。 「で、こんな遅くまでどこ行ってたんですか、ゼルガディスさん?」 「ああ、ちょっとな。」 曖昧に答ながら、彼女が差し出すカップを受け取って中身を確認する。 口を付けずともそれと分かる、鼻をつくアルコール臭。 「お前ら……」 顔を上げ、改めて談笑するリナとガウリィを窺うと、 ウワバミ男はともかく、赤毛の彼女はほんのり頬を染めていた。 視線を目の前のアメリアに戻して、じっと見つめる。 「お前も飲んでるのか。」 「えへへ〜、だって今夜は特別ですから!」 嬉しそうに笑う彼女は、言われてみれば、どことなく顔が赤い。 ゼルガディスは呆れた息をついて、自分のカップに口を付けた。 かなりきつい酒だ。 ふいに、先程見上げた夜空を思い出し、低い声を上げる。 「何がどう特別なんだ。」 「え……?」 アメリアがきょとんとした顔で小首を傾げる。 「お前は……古い年を捨てて、新しい年を迎えるだけのことがなぜそんなに嬉しい。」 ゼルガディスの冷ややかな瞳が、真っ直ぐ彼女に向かっていた。 |
28912 | 藍の空(ゼルアメ)<2>最初の夜 | G.O. | 2004/1/2 20:30:11 |
記事番号28845へのコメント 先のタイトルに<1>を書き忘れた愚か者ですが、続きます。 そして終わります……すみません。 -------------------------------------------------------------------- 「お前は……古い年を捨てて、新しい年を迎えるだけのことがなぜそんなに嬉しい。」 藍の空 <2>最初の夜 「あの、でもそれって………」 答えかけた彼女の言葉は、一斉に上がった人々の歓声にかき消される。 時間が一年を跨ぐ一瞬。 アメリアとゼルガディスの視線も自然とその騒ぎの方に向けられた。 そこに溢れる慶びに満ちた笑顔。 皆が手にしたカップを大きく持ち上げ、口々に祝いの言葉を交わしている。 「え、そうなの?」 見知らぬどこぞのオヤジから仕入れたばかりの情報に、リナの嬉しそうな声が響いた。 くるりとこちらに向きを変えた彼女は、満面の笑みを浮かべている。 あの顔は食い物がらみだな……ゼルガディスが素早く察知した。 「大通りでお酒や新年限定の料理やなんかを振る舞うんだってさ、行く?」 案の定、赤い瞳をキラキラ輝かせて旅仲間に問いかける。 当然のことながら、金髪の剣士が元気良く手を挙げた。 「おう!行く行く!新年限定ってのを食うぞっ!」 「あっ、私も………」 言いかけたアメリアがパッと傍らの男を振り返る。 「俺は行かん。」 こちらも当然のように、聞かれる前から素っ気なく言い放った。 ざわざわと騒ぎながら食堂を後にする人々の群れと、 その中に混じってじゃれあっているリナとガウリィ、 そして無表情に酒を煽っている男を順に見遣ったアメリアが、 「じゃ、私も行きません。」 あっさり言って椅子に座り直す。 「俺にかまわず行ってこい。遠慮など……」 「遠慮なんかしてませんよ。ゼルガディスさんと一緒の方がいいんです。」 にこりと藍が微笑んで、自分のカップを抱え込んだ。 「だって、せっかくの新年ですからね。」 真っ直ぐ歪みのない、惜しみなく綻ぶ顔に、思わず顔を背ける。 多くの人々と同じ感情を持てない人間など捨て置けばいいものを。 彼女は自分と違い、ごく普通に浮かれる気持も沸くはずだ。 「さっき、言い損ねましたけど……」 「なに?」 アメリアの言葉に、視線を戻す。 「古い年を捨てて新しい年を迎えるってヤツです。」 それももはや、過ぎた年の話だ。 藍の瞳が不思議そうにゼルガディスの顔を覗き込んだ。 「捨てたりとかしませんよね?年って積み重ねるんじゃないんですか? だって勿体ないですよ、せっかくいろいろ楽しいことがあったのに。」 そんなものは言葉のあやだ、と、言いかけて口をつぐむ。 楽しいこと…………? アメリアはなおも言葉を続けた。 「でもほら、新しい年はもっと楽しくなるかも知れないでしょ? だから、やっぱり嬉しいんですけどね、そう思いませんか?」 「……残念ながら、俺はそんなに楽観的にはなれなくてな。」 ゼルガディスが口の端に笑みを浮かべて彼女を見据える。 「登った山は必ず下るもんだぞ。お前の過ぎた年が頂上でなかったとなぜ言い切れる。」 「……ゼルガディスさん……新年早々暗いですよ。」 「大きなお世話だ。そいつが俺の業ってヤツでな。」 ジト目のアメリアにかまわず、酒の入ったカップを口に運んだ。 鼻をつく刺激を感じながら、たった今過ぎ去った一年を思う。 古い年にはアメリアが存在した。 過ぎ去った一年、一日と欠かさず、彼女の藍は自分を見ていた。 だが、新しい年も変わらずそこに存在するかといえば、甚だ疑わしい。 得たものは必ず去る。 手にしてしまった以上、あとは手放す瞬間を待つだけだ。 失う可能性を秘めた時間を迎えたからといって、何を喜ぶ必要がある。 「今年も一年、よろしくお願いしますね、ゼルガディスさん。」 ゼルガディスが動きを止める。 目の前には花と綻ぶ満面の笑顔。 「アメリア、お前は………」 続くことを願うのが贅沢だと思い知る瞬間。 「なんですか?」 「………いや。」 ガラにもなくその藍に感じる温もりが、たとえ刹那でもかまわないと。 「そうだな……まあ、お手柔らかに頼む。」 そんなふうに思うこともある。 「どういう意味ですか、それ。」 見慣れたふくれっ面には軽く肩を竦めて見せ、宿の外の喧噪に目を遣った。 おそらくは、始まったばかりの一年の無事を祈って騒ぐ人々。 そんな祈りが何の役にも立たないとは思いながらも、 知らず深い藍の無事を願っている自分に、苦い自嘲が浮かんで消えた。 滑稽な話だ……いっそ酔いでもしていれば気付かずに済んだものを。 「どんな一年になるんでしょう。」 アメリアが問いかけると 「そんなことを俺に聞くな。」 ゼルガディスがぶっきらぼうに答えた。 いっそ、酔いでもしていれば…… ゼルガディスがゆっくりと手にしたカップをテーブルに降ろした。 新たな時間など、どうせ自分にとっては何も変わらないか、あるいはそれ以下になるだろう。 ならば、せめて。 「……お前にとって良い一年ならな。俺は……」 藍の瞳が大きく見開く。 「それでいいとは思うが。」 ゼルガディスがほんの僅かに首を傾けると、 アメリアがパッと頬を染めて俯き、無意味にカップを撫でさすった。 「ええと、その……では、私も……」 得難いものを手放す時間を迎えたのかもしれない。 あるいは、強く煌めく深い藍が、変わらずそこに存在し続けるのかもしれない。 触れてしまったものが、時間と共に指の隙間をすり抜けて去るというのなら……… 「私も、ゼルガディスさんにとって良い年になれば、すっごく嬉しいと思います!」 それもいい。 今この瞬間、瞬く星を抱いて藍の空が自分に笑いかけるのならば。 一年に一度の最初の夜を、少しは祝ってやってもいいだろう。 ------------------------------------------------------------------- まあ、幸せに過ごしてくれ、魔剣士。 と、そういう願いを込めて……いや、もうそれだけを願って……今更なゼルアメ話で失礼しましたっ!皆さまも良い一年をお過ごし下さい! そして、読んで下さった方々には感謝を込めて……こ、今年は頑張ってここに「ゼルアメ」ツリーを飾るんだと心に固く誓っております。もうやめろと言われようが……!(拳を握りつつ去る) |
28914 | Re:藍の空(ゼルアメ)<2>最初の夜 | 心 | 2004/1/3 00:19:46 |
記事番号28912へのコメント 初めまして。 ホームページにもコメントしたことがないのにここにいきなり投稿します。 いつもいつもありがとうございます。 作品全部が死ぬほど好きです。 今、G.O.ゼルアメを読むためだけに生きていると言っても過言ではない。 狂ったようにアクセスしている自分がいて、ほんのり慄いております。 これほど「ゼルと姫の性格設定が」「一貫している」「一連の作品群」というものにお目にかかったことがない私は、あっという間に虜になって早半年。 この半年、お蔭様でものすごく幸せでした。 今後も命ある限りアクセスします。 ビバ・ゼルアメ。 |
28915 | ありがとうございます | G.O. | 2004/1/3 04:41:48 |
記事番号28914へのコメント 心さん、はじめまして。 読んで頂けただけでも有り難いというのに、レスありがとうございます。 いやはや、サイトにもということで、こっ恥ずかしい限りですが、過ぎたお言葉に感謝します。 G.O.は懲りずにここでも、ちょぼちょぼとゼルアメ話を書いていこうかなと思っておりますので、お付き合いいただけると嬉しいです。こちらこそ、こうしてゼルアメ好きな方に出会えるのはホントに楽しいです。書くのは己の楽しみでもありますが、書き続けられるのは読んで下さる方がいればこそ。共にゼルアメを楽しめればと、それだけを願ってます。 ありがとうございました! でもって(笑)今後ともよろしくお願いいたします! ビバ!ゼルアメ!(まったく同感なので便乗!…まったく芸のない私…) |
28939 | 拝読いたしました(><) | B.BALL | 2004/1/6 00:04:06 |
記事番号28912へのコメント こんばんは。 何回も何回も読んで、勇気をふりしぼってコメント投稿させて いただきます! さりげなくきっぱり後ろ向きなゼルがいいです! 無骨なくせに、真顔でラブいこと無意識にいっているゼルが! そして、かわいいかわいい健気アメリアが! 二人がいろんな意味で、ずっといっしょに歩いていけますように。 心から二人の幸せを祈ります。 最近になってはまってしまった身には、時間差がかなり寂しい ものがありますが、そんな中、なんて心強いお言葉でしょう! 作品を楽しみにして、拝読して、感想を書く…くらいしか できませんが、応援しています。 ゼルアメ万歳! |
28943 | よろしく! | G.O. | 2004/1/6 12:12:34 |
記事番号28939へのコメント 初めまして、B.BALLさん! 拙作を読んでいただいた上に勇気をふりしぼって下さり、感謝します。 後ろ向きにギザギザ歩きが魔剣士の本領だとは思うんですが、なかなか私には難しいところです。 >無骨なくせに、真顔でラブいこと無意識にいっているゼルが! 無意識に惚気るのも魔剣士ならではかしらと…(笑) 私も姫と魔剣士、どんな形でもいいから共に歩いて欲しいです。 幸せを祈りつつ、しかしいろんな二人が書ければと思ってますので、 今後ともお付き合いいただけると嬉しいです。 >作品を楽しみにして、拝読して、感想を書く…くらいしか >できませんが、応援しています。 ありがとうございます………しかしですな、できればここでもって「共に」!ゼルアメツリーを飾ろうじゃありませんか、B.BALLさん……心の底より、五臓六腑を愉快に軋ませながら、その日が来ることを私、G.O.はお待ち申し上げております。ビバ!ゼルアメ!ふっ…… |
28955 | 堪能致しましたw | 空練 | 2004/1/8 16:42:53 |
記事番号28912へのコメント G.O.さんこんにちわ、空練と申します。 素敵な新年ゼルアメを読ませて頂きましたw ワタクシ、燦然と輝くゼルアメツリーに小躍りしております! >「古い年を捨てて、新しい年を迎えるだけのことが〜」 淡白なモノの見方をする魔剣士に「お前な〜」と一人で突っ込んでしまいました(笑 でも淡白だからこそ的を得た台詞なのかと。 「…!?…確かにそうかもね…」と思う自分がいたりいなかったり(笑 なるほど、魔剣士の鋭さは淡白見解からきていたのか… そしてラスト近く、さらりと(私的に)萌える台詞を言ってくれた彼に乾杯★ ………ビ、ビバ、ゼルアメ!! 素敵なお話をありがとうございました。 これからもG.O.さんの活躍を楽しみにしています! |
28964 | 淡泊です | G.O. | 2004/1/9 21:27:44 |
記事番号28955へのコメント 空練さん、はじめまして。 お名前は「からねり」さん……でよろしいのでしょうか? 拙作を読んでいただき、ありがとうございます。 >淡白なモノの見方をする魔剣士に「お前な〜」と一人で突っ込んでしまいました(笑 私自身がおそらく淡泊な人間で、どうしても書くモノに出てしまうようです。魔剣士もホントはもっと熱く!愛なんぞを語りたいのかも知れませんが……申し訳ないことです。 このように薄味なヤツですが、今後ともよろしくお付き合い下さいませ。 レスありがとうございました、すごく嬉しかったですッ!! またお会いできる日を楽しみに、ビバ!ゼルアメ! |