◆−Encounter〜邂逅〜エピローグ−エーナ (2003/12/29 23:03:21) No.28855 ┗Oblivon〜忘却〜――紅い月夜に其は何を見る?−エーナ (2003/12/30 13:28:41) No.28862 ┣Oblivon〜忘却〜――悠久の時の彼方に其は何を思い出す?−エーナ (2003/12/30 19:43:25) No.28866 ┣Oblivon〜忘却〜――虚なるは世界か?それとも・・・−エーナ (2004/1/1 14:53:21) No.28894 ┣Oblivon〜忘却〜――堕天使の夢はどこにある?−エーナ (2004/1/2 04:39:36) No.28904 ┣Oblivon〜忘却〜――現か夢か、境界の果てよ−エーナ (2004/1/4 14:45:47) No.28927 ┣Re:Oblivon〜忘却〜――二つの意思が交じり合う時−エーナ (2004/1/5 02:06:56) No.28933 ┗Oblivon〜忘却〜――忘れえぬものは忘却のかなたに・・・−エーナ (2004/1/6 09:53:23) No.28940 ┣Re:Oblivon〜忘却〜――忘れえぬものは忘却のかなたに・・・−エーナ (2004/1/6 09:56:09) No.28941 ┗Re:Oblivon〜忘却〜――忘れえぬものは忘却のかなたに・・・−すぅ (2004/1/6 10:14:56) No.28942 ┗CONCENTRATE〜集う〜序幕−エーナ (2004/1/9 13:09:50) No.28959 ┗CONCENTRATE〜集う〜第一幕−エーナ (2004/1/9 13:11:18) No.28960
28855 | Encounter〜邂逅〜エピローグ | エーナ E-mail | 2003/12/29 23:03:21 |
Encounter〜邂逅〜 エピローグ 「いろいろあったけど・・・世話になったわね。ありがと」 時をわたり、現代。 艦の修復も終わり、彼女たち余人を元の銀河へと送り届ける直前だ。 「まあ、もともとの原因はこっちにあるんだし、そんな事いわなくていいわよ」 「・・・もしかして・・・照れ屋?」 「さあね?」 ルキは肩をすくめ、サミィがくすくす笑った。 「姉さん、準備完了したよ。銀河の座標の固定も終わったし、あとは引っ張るだけ」 ミカエルが艦の上から顔を出した。 「そっか。それじゃあ、これで本当にお別れね。あんまり暴れてると、あたし遊びに行っちゃうかもよ?」 「あははははっ!それは困ったわ。戦場が引っ掻き回されそうね」 サミィが明るく笑い、ルキも微笑んだ。 「幸運を祈るわ。あなたたちの未来に」 「・・・なんだ・・・分かってたみたいね。あたしたち三人のこと・・・」 今度はサミィが肩をすくめてそういった。 「まあね。それとレティシアと、もうちょっと仲良くしたらどう?彼女、不器用なだけなんだから」 「努力してみるわ。あなたにも幸運を祈っててあげる。もう会えないだろうけど、ね」 「さあ?どうかしら?さっき言ったことは本気かもよ?」 「・・・・・・・・・。・・・あなたなら本当にやりかにないわね・・・・・・」 最後はちょっと呆れていたけれど、サミィは楽しげに微笑んでいた。 彼女には仲間がいる。大切な仲間が。そしてその仲間たちも同じ。 だったら、きっと大丈夫だろう。 未来はきっと、明るくなる。 「――Good luck. お眠りなさい。そして忘れて。 ここでの体験は、あなたたちには不要なもの。 あなたたちと友達になれたのはうれしいけれど、特別な事がない限り、もう会ってはダメなんでしょうね。 ・・・さようなら」 二つの艦が空へと浮かび上がり、光に包まれて掻き消えた。 ルキは、虚空ををしばらくのあいだ見上げていた―― おまけ。 竜たちの峰〔ドラゴンズ・ピーク〕にて。 「お・・・おぬしはっ!イブリース!?何故今頃現れたのだ!」 黒衣の女性を見て、ミルガズィアが警戒する。 「いや・・・・・・今頃って、ねぇ。本来今の時代の存在なんだから、いたっておかしくないでしょ。 あ、それとあの箱・・・開いたでしょ?」 ほほをぽりぽりかきつつ言うイブリース。 「・・・・・・む・・・確かに開いたが・・・・・・なんなのだ?あれは」 「え?ちょっとした乙女心のお茶目ないたずらv ちゃんと『ハ・ズ・レv』って書いてあったでしょ?」 きゃらきゃらと笑って言うイブリース。 「・・・・・・・・・びっくりばこのつもりか?」 「あたしがプレゼントしたのは、あの箱の中身じゃなくって箱そのものの材質! オリハルコンとミスリル銀にレムタイトの精製した鉱石の合金がこれ。これでも結構丈夫で軽いし、魔力結界の材料にもなる。魔導加工をくわえればもっと便利になるんだけどね。お気に召さなかった?」 くすくす笑いながら小首を傾げるイブリース。 「・・・それは・・・・・・!・・・礼を言おう。ありがたく使わせてもらう」 「ならよかった。じゃあね〜♪」 そしてあっさりと彼女は消えた。 あとがき エ:よっし終わったっ! L:なんかかなり短いわね。 エ:あまり気にしないでください。 エピローグですから。 L:まあ良しとしましょう。 それでは!番外編:Encounter〜邂逅〜をこれで終わらせていただきます。 皆様、長いあいだお付き合いくださりありがとうございました。そして、来年もよろしくお願いいたします。 |
28862 | Oblivon〜忘却〜――紅い月夜に其は何を見る? | エーナ E-mail | 2003/12/30 13:28:41 |
記事番号28855へのコメント Oblivon〜忘却〜 ――紅い月夜に其は何を見る? 『堕天使よ』 『光と闇は分かつ事のできぬもの』 『我は肉を持たぬ存在〔もの〕』 『我が内包するは、光だけにあらず』 『闇を否定し、拒否したつけが今回ってきたようだな・・・・・・』 「――っ!!」 がばりと勢いよく跳ね起きる。 白い肌はさらに白く染まり、息も荒い。 「・・・・・・・・・また、あの夢・・・・・・人間の身体に入ってから、いつもこう・・・ ・・・嫌な夢ばっかりね」 母の夢から解放され、今度はこの夢。 ふとカーテンを開け、目に飛び込んできたのは『あの時』と同じ真紅の月。 ずっと昔の事だけに、たちが悪い。 忘れる事などできるはずがないのだ。あんな、強烈な―― 「――ルガスヴェル地区の悪魔の壊滅・・・大儀であった。ルシフェル」 純白の布を幾重にも纏ったような姿をした、彼――『神』、アルヴァセルは言った。 「人間界の悪魔の討伐、しばらく休むがよい。半年間休暇を与える」 「ありがとうございます」 恭しくこうべをたれる、金の髪に、金の瞳、そして、三枚の銀色に近い翼を持つ女性の天使・・・ 彼女の名は、ルシフェル。 神に次ぐ地位の持ち主であり、『悪魔・堕天使討伐任務総長』の肩書きを持っている。 ・・・と言っても、彼女は書類や何やらを担当せず、もっぱら実戦に出てばかりであったが。 「――姉さん」 神の謁見の間をでて、彼女は声をかけられた。 「ああ、ミカエル」 彼女の弟、『総天使長』の肩書きを持つミカエル。 銀の髪、銀の瞳、二対、計四枚の翼を持つ天使。 彼はルシフェルの次・・・すなわちこの天界で三番目に偉い、という事になる。 色彩を別にしたら、その顔つきはルシフェルと瓜二つ。 体型を忘れて横に並べたら、間違えたかもしれない。 「人間界の料理、今度食べさせてよ。久々に姉さんの料理が食べたくなっちゃってさあ」 「今度といわず、今夜作りましょう。久々に休暇をもらったから。 それも珍しいことに半年もいただいたし」 廊下を歩く二人のおだやかなその姿は、ほほえましくもあり、眩しくもあった。 ・・・眩しい。それは高位の天使、そして神に見られる特徴である。 高位天使や神自身はあまり感じはしないが(それでも存在が『輝いている』のは分かる)人間や、上級以下の天使、そして悪魔たちには眩しく感じさせる何らかの『力』のようなものがあるらしい。そして、それは天使が炎から生まれたとされ、特に高位の天使は神によって丁寧に創られたとされているからだ。 「珍しい事もあるもんだね。僕もさっき半年の休暇を言い渡されてさあ・・・」 「・・・ミカエルも?では、神は誰をそばにおいておくつもりなのでしょうね?雑務をこなすあなたがいなければ、結構大変でしょう」 「うーん・・・僕が言い渡された時は姉さんが代わりをやるのかと思ってたけど・・・」 「それは勘弁してほしいわ。私はデスクワークなんて嫌いですから」 本気で嫌そうにするルシフェルに、ミカエルはくすくすと笑った。 「まあ、たまには姉弟水入らずで、って神が取り計らってくれたんじゃない?」 「そ・・・そうですね・・・」 何か釈然としないものを感じつつ、ルシフェルはミカエルの言葉にうなずいた。 聖なるものよ 光り輝くものよ 闇を散らすものよ 汝は救世主〔メシア〕となれ 我が言葉に、従え・・・・・・ あとがき エ:ようやく始まりました。L様初恋物語vもとい、外伝『Oblivon〜』忘却〜シリーズです。 ちなみにOblivonはオブリボンではなく、オブリビアンと読みます。 集英社発行・和英併用新修広辞典第三版参照。(←古い。父もしくは母が成人祝いにもらったもの・・・・・・) L:・・・短いっ!てゆーかあたし性格違うわよ、これ。 エ:ええ。違います(おい)。 ちなみに短いのは、序章とかプロローグとかそんな感じのため。 それでは終わらせていただきます♪ L:おいこら逃げるなっ! |
28866 | Oblivon〜忘却〜――悠久の時の彼方に其は何を思い出す? | エーナ E-mail | 2003/12/30 19:43:25 |
記事番号28862へのコメント Oblivon〜忘却〜 ――悠久の時の彼方に其は何を思い出す? 「・・・ちょっと街をぶらついてくるわ」 「・・・へ?こんな時間にですか?」 ルキが言った言葉に、ゼロスは小首をかしげる。 今は真夜中。早朝と言えなくもないが、十人中九人は夜中と答えるだろう。 「寝付けないのよ。夢見も悪かったしね」 言って宿の戸に手をかける。 「僕も行きましょうか?女性の一人歩きは危険・・・ ――っ!?」 ちらりとゼロスを見据えた瞳は・・・金色。 「夢見が悪かった。って、言ったでしょ? ・・・一人にしといてちょうだい」 「わ・・・分かりました」 怒りでも、悲しみでもない、重くるしい負の感情。 本来それを糧にする魔族ですら、その冷たい感情でその場に縛り付けられる。 そして、ルキは宿から出た。 「・・・動けなかった・・・?僕が・・・?」 彼女のひめたる思いと、その深淵に愕然とする。 しかし、確かにあれは感情で・・・力などではなかった。 そう。あれは―― ――憎悪。 「いやあ、姉さんの手料理を毎日食べられたし、僕は幸せものだねえ♪」 シチューの皿をからにして、ミカエルが言った。 「・・・少しくらいは手伝ったらどう?毎日作るのは大変なんだけれど」 「まあまあ。そう言わないで」 ――こんこん。 「・・・誰です?」 軽いノックの音に、ルシフェルはいぶかしげる。 仕事以外でこの邸宅に訪れるものなどほとんどいないのだ。それに今は休暇に入ったばかり・・・・・・ 「――ミカエル様、ルシフェル様・・・・・・!」 焦燥の表情をした、上級の天使が一人。 「どうしたというのです?我々は今、神から休暇を賜っているのですが・・・」 「そ・・・そうであらせられましたか。 神が重大な発表をなさるというので、職務中の天使は一人残らず謁見の間に・・・・・・ あなた方がおいでにならなかったので、何かあったのかと思ってしまったのです。 どうやら私の勘違いのようですな。お騒がせしてしまって申し訳ございません」 言って深く天使は礼をし、その場を立ち去った。 「・・・『重大な発表』・・・?」 ルシフェルはつぶやき、ミカエルと顔を見合わせる。 休暇に入ってから、まだ一ヶ月もたってはいない。 そして神に継ぐ地位である二人が『重大な発表』とやらに呼ばれないというのはおかしい。 その情報すら耳に入らなかったという事は・・・情報操作がなされていたという事だ。 しかし彼女たち二人は高位中の高位。自然に耳に入る事がなかったということは・・・・・・ 神自身が情報操作を行っているという事に他ならない。 「・・・・・・ミカエル、私は少々出かけてきます」 「え?神が僕らを呼ばなかったってことは、それなりに理由があるんだろうから・・・行かないほうがいいと思うよ」 「なら貴方はここにいなさい」 そして、ルシフェルは自宅より出た。 それが、重大な分岐点になるとはしらずに・・・・・・ 「よお、姉ちゃん。こんな夜中にこんな裏路地なんかにいるとと襲われるぜ? 特にあんたみたいな別嬪さんはよぉ。 たとえば、俺たちとかな」 ごろつきたちはルキを囲み、下卑た笑いを響かせる。 「そうね。あたしはどうやら襲われる寸前みたいね」 無表情にけろりと言うルキ。ごろつきたちは、彼女の瞳に宿った感情を知らない。 「寸前、だぁ?面白い事をいってくれるじゃねぇか。 姉ちゃんよ、あんたはもう俺らに襲われる運命・・・」 ――どぅんっ! 言葉の途中でごろつきがルキと反対のほうに吹き飛び、爆発、四散する。 人間だったそれは、ただの生暖かい肉片と成り果てた。 「・・・今のあたしの前で、運命なんて言葉を口にしないことね。 ――最も、もう遅いけど」 「ひ・・・っ!」 ようやくここでごろつきたちは、ルキの瞳に宿る暗い光に気がついた。 しかし、彼女が言うとおり、もう、遅い。 ごぅん!づごがぁっ! 同じように、他のごろつきたちが次々に爆発する。 そして残ったただ一人は、しりもちをつき、壁を背にしてひたすらがたがたと震えていた。 ルキは剣を抜く。ひゅんっ!と、風を切り・・・ ――ぴたり、と、首の薄皮だけを切って剣が止まる。 彼女が意図的に止めたわけではない。 つかまれているのだ。その手首を。 「・・・ルキさんらしくありません。止めてください」 「ゼロス・・・離しなさい」 「お断りします」 ぴくり、と、ルキの眉が跳ね上がる。 「もう一度言います。止めてください」 「・・・・・・・・・。・・・・・・分かったわよ」 ルキはあっさりと剣をひく。ごろつきは泡を吹いて気絶していた。 「・・・隠れてついてきて正解でしたよ。夢見が悪かったといいましたが・・・どうしたんです?」 「・・・・・・・・・。」 すっとルキは指をさす。 その先には、紅い満月。 「これ以上このことで話すつもりはないわ。宿に帰るわよ」 彼女は真紅の瞳でゼロスを見やり、そう言った。 「――天使たちよ」 謁見の間の壇上に、神がいた。 神は男とも女ともつかぬ声をひゃに響かせている。 謁見の間には多くの天使たちが集まり、神を見上げている。 下級の天使たちはめったに神を直接見ることがないので、かれらは少々興奮気味だ。 その中でルシフェルは意図的に『輝き』を抑え、上級天使の中にまぎれていた。 そして何故それが周囲の上級天使に露見しないかというと、いつもは輝いて姿が見えないからである。 「悪魔は人間を脅かし、我々はそれを駆逐する・・・しかし、悪魔はさまざまな場所にはびこり、完全に壊滅させるのは難しい」 言って、神は両腕を掲げ、その中に淡い光が現れ出でる。 ――人間の魂である。 「したがって、私は人間の指導者となるべき魂を創りだした。 名は、レヴィル」 ――レヴィル。その名は原始の言葉で・・・『魔に見定められし者』。 ルシフェルは、魂を見て・・・ある事実に気付き、愕然とする。 人間の魂に、このような特性を持たせるなどと、神は何を考えている! 自分やミカエルならば気付いたであろうその特性・・・そう。神は我々二人を厄介払いしたのだ! 「この人間を救世主〔メシア〕とし、人間たち導くのを見守る・・・」 ルシフェルは、神の長々とした口上をそれ以上聞いてはいなかった。 救世主〔メシア〕?よりによってこの魂が? 悪魔をひきつけ、人の悪意と混乱を招くような魂が、救世主〔メシア〕!? ・・・それは当然救世主〔メシア〕に見えるだろう。 その悪意と混乱の中で、たった一つの光なのだから。 他の全ての希望を壊した、『排他された希望』と言う名の・・・ 「・・・さあ、この魂にこうべをたれなさい。 この魂の名は、救世主〔メシア〕として人間たちの中で長いあいだ語られる事になるのだから・・・」 ずきりと、胸が締め付けられた。 いっせいにルシフェル以外の全ての天使たちがこうべをたれる。 そしてただ一人、立ち続けたものとしてルシフェルは神の目にとまった。 そしてルシフェルは、天使たちの合間をすり抜け、神の眼前へと歩み出る。 「・・・どういうことです」 開口一番ルシフェルは言った。 こぼれそうな雫を抑え、あふれそうな想いを焦がしてもなお・・・何も、誰にも見せなかったというのに。 この心は、神以外には向けなかった。ひめたる想いを・・・神は気づいているのだろう。それだというのに、神は自分を裏切った。 「この魂は一体なんなのです! そしてこの魂にこうべをたれろとあなたは仰る! これがあなたのやり方か!」 「ルシフェルよ・・・ ここにきてしまったか・・・・・・ ・・・これが一番効率的な方法なのだよ」 「効率、的・・・!?その魂の命はどうなるのです!そしてその周囲の人間はっ!!」 「・・・お前は何を見てきた?悪意の中の善意こそ、全てをひきつける」 その言葉に、ルシフェルは目を見開く。 「だから・・・悪意を植えつけると・・・?そして作られた虚構の善意を目立たせるためだけに・・・? だったら・・・我々も虚構なのですか?天使も、人間も、悪魔ですらも・・・・・・?」 「・・・・・・・・・・・・・・・。」 神は何も答えない。 「全ての存在が、あなたの繰る操り人形だというのですかっ!! ならば私は――」 ――何も認めはしない!虚構を全て、破壊してやる! あなたですら・・・!! あとがき エ:『Oblivon〜忘却〜――悠久の時の彼方に其は何を思い出す?』 よしできたっ! あ、この外伝はキリスト教のお話をベースにしていますが、もともとのものとは関係ありません。 妄想捏造大爆発ですから。 ちなみに一つ目の詩ともリンクしておりません。 M:へぇ・・・そうなんだ。そういえば、ベリアルたちはいつ出てくるんだい? エ:次のお話に出てくる予定。でも一人か二人かも。L様は? M:ノーコメントだって言ってたから、後のほうまであとがきには出てこないと思うよ。 エ:よっしあとがきでおびえなくていーんだ。わーいv めごすっ! M:・・・・・・直接は。 まあいいか。それではあとがきをここで終わりまーす。 |
28894 | Oblivon〜忘却〜――虚なるは世界か?それとも・・・ | エーナ E-mail | 2004/1/1 14:53:21 |
記事番号28862へのコメント Oblivon〜忘却〜 ――虚なるは世界か?それとも・・・ ――ごぅおぉぉおん! 「――!?」 すさまじい爆発音に、ミカエルは窓のそばへと駆け寄る。 天界でも、神が最上階に住まい、上級以上の天使たちが仕事を行う天の宮〔あまのみや〕。 その純白の外壁が崩れ、中から人影が飛び出した。 「ね・・・姉さん・・・!?」 その姿は、確かに自分の姉の姿。 彼女は空中でふと止まると、天の宮〔あまのみや〕に向かって何かを叫んだ。 再び姿を翻し、天の宮〔あまのみや〕から離れるように・・・天界のはずれのほうへと猛スピードで飛びだした。 それを追撃するかのように、光の球がルシフェルのほうへと飛ぶ。 しかし、それはことごとく外れ、あるいは防がれている。 「・・・なんで・・・?どうしてだよ・・・・・・何があったっていうんだ・・・?」 ミカエルは、姉の姿が消えるのを見ているしかなかった。 「・・・・・・勢いよく天界を飛び出してきたのはいいけれど・・・さて、この後どうするか・・・・・・」 ここは人間界。 彼女は翼をしまい、その服はすでに旅装のそれとなっている。 金髪は珍しくはないが、瞳の色は青へと染めていた。 荒野の中、建物の影を見つける。 ――とりあえず、行ってみましょうか。 「――よぉ、兄ちゃん。俺らみたいな恵まれねえやつに寄付なんかしてみたらどうだ? そんな上等な服着てよぉ、少しくらい俺らに分けてくれや。なぁ?」 入り口の辺りでこんな光景を目の当たりにし、あたしは呆れた。 ・・・どこの世界にもごろつきというものはいるのだ。 まったく、ばかばかしい。 「そういうのは裏通りでやりなさい。表で堂々とやるものではありません」 嘆息しつつ、一応忠告しておく。 前なら隠れて上から植木鉢を落としたりしていたのだが・・・今はそんな事をしてもあまり意味はない。 「・・・あんだぁ?」 「通行の邪魔です。どきなさい」 二度目の忠告。 「てめぇ、なめた口聞きやがって・・・!やっちまえ!」 男どもがこちらに突進し・・・ ・・・げし。どか。ぼこ。めごっ。 あごを蹴り上げ、裏拳で鼻筋を叩き、腹部に回し蹴り。 ついでとばかりにかかと落としを決める。 沈黙し、倒れ伏した男たちを一瞥し、あっさりとその場を・・・ 「あ・・・あの・・・」 紅い髪の、かなりの美青年が彼女に声をかけてきた。 「あ、まだいたんですか?」 「いえ、あなたのその身のこなしに見ほれてしまいましてv」 ・・・ひききっ! ルシフェルのほほがあきらかに引きつる。 「ナ・・・ナンパはお断りなんですけど」 「いえ、お礼を申し上げないとv旅の方ですか?」 「え・・・あ・・・まあ」 その異様な勢いに乗せられ、ルシフェルは後ずさる。 「そうですか。今晩の宿はお決まりで?」 一歩、こちらに近づいてくる。 「い・・・いえ、このまちには今ついたばかりなので・・・・・・」 そして一歩後ずさる。背中に壁が当たり、もう逃げられない。 「それはよかったvぜひぜひ、我々の屋敷におとまりくださいv」 「・・・我々?」 ルシフェルは彼の言葉に眉をひそめる。 彼と自分と倒れているごろつき以外、付近には関係者らしき人影はない。 「来て下さいますよね?よね?」 「は・・・はひ・・・」 あたしは思わずそう答えていた。 ある意味、この男は最強かもしれない。 街の高級住宅街にある、とあるひとつの屋敷。 「・・・映し身の鏡?」 「ええ、そうです。ぜひあなたにみてもらいたく思いましてv」 彼は友人のフタマタネコマタ卿(どんなヤツだよ。をい)とやらにに別荘を借り、この街に遊びに来ているとのことだった。 そこでナンパした女性をことごとく連れ込み、その鏡を自慢たらたらに話しているようだ。 ・・・もっとも、彼本人そのままが言ったわけではなく、あたしが話を要約しただけなのだが。 「映し身の鏡とは、代々私の家で長男に渡されるものでして、その人にふさわしい光景を映し出すそうなんです」 「・・・ふさわしい光景・・・? ・・・・・・たとえば・・・・・・だれかれかまわず無節操にナンパする男には女に殴られている姿とかですか・・・?」 あたしはもろに慇懃無礼に言ってやった。 「はははははっ!それは手厳しい。まあ、そんなところでしょうね。 しかしこれはあいにくと女性にだけ反応するものでして。結婚相手を決めるのに用いられるのですよ」 あたしの言葉にまったく意に介した様子もないようで、明るく笑う。 ・・・うあ。変なところで心広いでやんの。こひつ・・・ 「まあ、とにかく物は試しですよ。あなたはきっと、すばらしい光景を見ることになる・・・・・・」 そのとき、彼の瞳が怪しい輝きを放ったのに、あたしは気がついていた。 紅い月。宿の部屋でそれを疎ましそうに見上げながら、ルキは唇からメロディーを滑らせていた。 「――紅い月夜に何故踊る? 信じるのはこれからか? 裏切るのはこれからか? 祈りをささげ、許しを乞い、何を望み、何を願う・・・ さあ、止まれ・・・全ては水面に映し出す。 凍りつき、裏と表があいまいになる・・・ ・・・果てがあるのはどこ・・・」 小さな声で、緩やかに、悲しげに。 「黄泉の国、死者は捌きを受けはしない・・・ 残るのは無色の魂、形はあれど色はつかぬその器・・・ 廻るは心、消えるも心、白と黒、光と闇。 映し出すのは水面だけ・・・ それを見るのは私だけ・・・」 「・・・・・・きれいな歌ですね・・・でも少し悲しい。何の歌ですか?」 その小さな歌が終わるのを見計らい、ゼロスが訪ねる。 しかし、ルキはそれについて何も答えない。 ルキはポツリと口を開き、遠い遠い、昔話を語りだした。 「ずっと、ずぅっと・・・はるかな昔・・・ 嘘で塗り固められた世界の中で、本物を見つけた女の子のお話・・・・・・ その子は父親が大好きでした。 そして父親も自分を好きだと・・・少なくとも裏切ったりはしないと思っていました。 父親は人形を作る人で、そのこはそれを誇りに思っていました。 その人形には魂が宿り、食事をしたり、笑ったり、泣いたりもしました。 人形たちはたくさんいて、その女の子と父親を含む、大所帯の家族以外は、だぁれも人間はいませんでした。 女の子にはそれが普通で、それが世界だったのです。 だけど、世界のたくさんの数を占める人形は木でできていたので、虫がわく事があるのです。 女の子は父親の手伝いで、世界中の虫を退治するのがお仕事でした。 あるとき父親は、きれいなきれいな人形を作りました。 女の子と、父親の直接の手伝いをする女の子の弟以外の家族は、みんな父親に呼ばれて集まりました。女の子と、その弟が眠っている隙に。 そのときたまたま女の子は眠りから覚めて、見てしまったのです。人形を。そしてその周りにいる父親たちを。 父親は言いました。『この人形は虫に食われない、優しくきれいな人形。そしてこの人形を、人形たちの安らぎにしよう。人形たちに、この人形を知ってもらって、たくさんの人形に安らぎにしよう』・・・と。 家族は人形を作ったりする専門家ではなかったので、父親の言葉を信じました。 でも、覗き見をしていた女の子は、何故『虫に食われない』か。そして何故人形たちの『安らぎ』になれるのかが一目で分かりました。 虫に食われないのは、表面を何かで塗ってあるから。 何故安らぎになれるのかは、その人形が虫が大好きなにおいを発していて虫がたくさん寄ってくる、でも、その人形は虫に食われないがゆえに虫を蹴散らす事ができるから。 虫たちは人形に病を運び、人形たちの『希望』を奪います。そして、ただひとつ残る希望は、きれいなきれいなその人形だけ。 いわば、創られた『希望』だったのです。 女の子はたまらず父親の前に飛び出して、訪ねました。 どういうことなの?この人形は何?これがあなたのやり方なの?と。 そして父親は言いました。 これが、一番効率的な方法だ。と。 その言葉を聞いて、女の子は怒りました。 だから虫を引き寄せさせるの!?嘘をついてまでどうしてそんな人形を作ったの!? 人形は人形であっても、操り人形〔マリオネット〕ではないわ! もしあなたがそう思っているというのなら、あたしたちも、この世界に存在する全ての人形に、あたしたち・・・そして虫も操り人形〔マリオネット〕だって言うの!? だったら、あたしは何も認めない。この嘘を全部壊してやる!あなたですら・・・!! そういって、女の子は家を飛び出しました」 「・・・それからその女の子はどうなったのです?」 「人形のふりをして、人形たちだけがすむ街に行ったの。多くの街は人形たちだけですんでるけど・・・たまに虫が紛れ込んだりしていました。 その人形の街で、女の子は紅い髪の男の子の人形が、他の人形にいじめられているのを助けてあげました。 助けてあげた人形が言いました。 ありがとう。別荘にに来ませんか?きれいな旅人の人形さん。と。 女の子は、あてもなく飛び出してきたので、その晩は男の子のおうちに泊まることにしました。 男の子は貴族のようで、お食事を出してくれたり、女の子にとても優しくしました。 あるとき男の子が言ったのです。映し身の鏡という鏡があって、その鏡に女性が映ると、その女性にふさわしい姿が映ると。 本来、男の子の家でお嫁さんにする女の人を決めるために使われるそうです。 そして女の子はその鏡を覗き込みました」 ぷつりと話が途切れる。 あの時、あの場所・・・もし覗き込まなかったら・・・・・・? 「・・・何も映らないんですけど」 ルシフェルは鏡を覗き込んでから、なかばジト目で青年を見る。 「・・・へ?そんなはずはないんですけど・・・。おかしいですね。 男性だけがこれを見る場合は普通の鏡として周囲が映りこむんですが・・・ 男性と女性が一緒に見る場合、女性の見ている光景が男性にも見えるそうです。ちょっとのぞかせて・・・ ――ッ!?」 その光景を見て、青年は息を呑んだ。 「・・・『何も映っていない』でしょう? 真っ暗で・・・闇すら存在しない虚無の景色・・・ ――これが、私にふさわしいと?」 確かにふさわしいのかもしれない。 この世界は虚構ではあるけれど、確かに存在しているのだから。 自分はそれを壊そうとしている。だから、ふさわしいのかもしれない・・・・・・ 「ああ・・・そういえば自己紹介をしていませんでしたね。 私の名前は――ルシフェル」 「ル・・・ッ!?神に継ぐ実力と地位を持つ・・・!?」 その言葉に、ルシフェルはにこりと微笑んだ。 「まさか、私が人間ではないという事に気付いていなかった・・・なんていいませんよね? ――ベルゼバブ?」 「ふ・・・くっくくく・・・天使だとは分かっていたが・・・まさかあんたにぶち当たるなんてな・・・ 俺もついてねえ。潔く・・・・・・」 「何か勘違いをしていません?」 その言葉に眉をひそめ、ルシフェルは言った。 「・・・は?」 「天使だったらとうにあなたにけんかをふっかけてますよ」 ・・・・・・。 ・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・。 たっぷり数十秒沈黙に時間をさき、ベルゼバブはようやく口を開いた。 「それってぇと・・・つまるところ・・・・・・」 「神の方針が嫌になったんで天界を飛び出してきちゃいましたv」 「なにぃぃぃいいいいいっ!?」 屋敷中に絶叫が響き渡った。 「鏡を覗き込んで・・・それで?」 ゼロスのうながしに、ルキは再び言葉をつむぎだす。 「何も映ってはいませんでした。女の子の姿も、周りの景色も、光も・・・闇すらも。 そこにあったのは虚無だけ。 女の子は思いました。 これから世界の全部を壊そうとしているのだから、これが自分にはふさわしい、と。 そしてもうひとつ、女の子は気がついていました。 赤い髪の男の子が、強い強い虫だということに。 女の子がそれを言うと、男の子はあっさりそれを認めました。 長生きで、強い虫は人形の姿に似た姿になるからです。 男の子は、自分は蠅の王様だといいました。 蠅の王様は、虫の中でもすごく強くて、今まで退治しようとした家族や人形がみんな返り討ちにあっていました。 でも、女の子と蠅の王様が戦えば、女の子の方が勝つのです。それは、単純に女の子が強いから。 蠅の王様もそれが分かっていたので、抵抗はしませんでした。 でも、蠅の王様は勘違いしていたのです。女の子は蠅の王様と戦う気はさらさらなかったのです。 女の子は、虫そのものが嫌いではありませんでした。ただ、父親に言われていたから退治しただけ。 その父親が信じられない今では戦う理由なんてこれっぽっちもないのです。 当然蠅の王様は驚きました。そして女の子は続けて言いました。 父親が信じられなくなって、家を飛び出してきたのだと。 蠅の王様はちょっと考えていいました。 この鏡は、実はその人にとってふさわしい光景を映すものではない。女性だけに反応するわけでもない。 虫以外の全ての人に反応し、そして――」 「「最も恐怖する景色を映し出す」」 「・・・成る程。それで私には虚無の世界というわけですか」 「はぁあ・・・天使をひっかけて目的のヤツを探すつもりだったんだが・・・ 見つかったし、結果オーライってトコだろ。 しっかしなぁ・・・まさか大物中の大物が・・・・・・目的の天使だとは思わなかったな」 自分の髪をわしゃわしゃとかき回し、ベルゼバブは嘆息しつつ言う。 「・・・目的?何を探していたんです?」 「あんたを。だよ。正確には、この映し身の鏡の中に虚無の光景を見るヤツだが」 「・・・・・・それは・・・・・・一体どういう経緯でですか?」 いまだ漆黒に染まっている鏡を見つつ、ルシフェルが言った。 「これを聞いたら・・・後戻りできねえぞ? あんたが神を裏切っていようがいなかろうが、俺たちはあんたの行動を縛らなけりゃならねえ」 「それは少々困りますね。私は――やらなければならないことがあります」 『何をやっている?ベルゼバブ』 『見つけたんならとっととつれてきたらどうなの?』 虚空から、二つの声。ひとつは男性の、もうひとつは女性のものだ。 そして、ぴりぴりとした攻撃的な空気。 「よ・・・よせっ!こいつは・・・」 ベルゼバブが言い終わらないうちに、ルシフェルの姿が掻き消える。 『逃げた!?』 「・・・ッくそ!」 次いで声も、ベルゼバブの姿も消える。 屋根の上を消えたり現れたり。 次々に足場を変え、ルシフェルは街の外へと向かう。 ――そして。 街が地平線に見える、荒野のど真ん中。 「逃げるのはもう終わり?」 紺色の長い髪を持つ女性が間合いを取って現れる。 「・・・・・・・・・・・・・・・。」 続いて、緑色の髪の男が。 この二人が、先ほど声をかけてきたようだ。 「まったく・・・・・・」 ベルゼバブが現れる。 「ベリアルに、アシュタロス・・・・・・」 「あら、分かってるの?だったら抵抗が無意味だという事も分かるでしょう?」 ルシフェルの言葉に、くすりとアシュタロスが笑う。 「私がわかっているのだったら、あなたはわかっていないようですね」 ルシフェルも微笑み返し、言った。 「面白い事を言うわね。だったら――」 ひゅん!と、風をきってアシュタロスが猛スピードでルシフェルの眼前に躍り出る。 「力づくでも分からせてもらいましょうかっ!!」 ごぅあっ! アシュタロスが起こした爆発。 ルシフェルはそれに飲み込まれ――何もなかったかのように噴煙の中から歩み出る。 「え・・・?」 「今度は私の番ですね」 金色の光の球がルシフェルの周囲に出現する。 「ゆけ」 きゅどどどどっ! 「きゃぁあああっ!?」 光がもろに直撃し、吹き飛ばされる。 アシュタロスは倒れ、気絶していた。 「・・・・・・・・・!」 「あーあ・・・だからよせって言ったのに・・・しかもきっちり手加減されてやがるし・・・・・・」 ベリアルが目を見開き、ベルゼは頭を抱える。 《あなたたち、おやめなさい》 どくんっ。 頭の中に凛と響く女性の声。空気を震わせてはいない。何らかの通話方法のようだ。 「サタン様!?」 ベリアルが声を上げる。 「い・・・いつお目覚めになられたんです?」 《ついさっきよ。そばに誰もいないと思ったら・・・あなたたち、そんなところで・・・あら?》 がくんとルシフェルがひざをつく。 「・・・ぅ・・・っあ・・・・・・?」 心臓が熱い。声を聞くたびに、体がそこから壊れそうになる。 やがて、頭も朦朧として・・・・・・ そして、意識は消える。 あとがき エ:あけましておめでとうございます! L:おおっ!今回はやたらと長いわね。 エ:そりゃあもう♪お正月スペシャルってことで。 L:でも、最後あたしがぶっ倒れてるじゃない。どうなってるのよ? しかもサタンって・・・・・・おいおい。 エ:『サタン』とは『神の敵対者』の意味です。名前ではありません。 一種のあだ名とかそんなものだと思ってください。 L:くくぅっ!ようやくすごそうな展開になってるわね! それでは皆さん、今年もよろしくお願いしま〜す☆ |
28904 | Oblivon〜忘却〜――堕天使の夢はどこにある? | エーナ E-mail | 2004/1/2 04:39:36 |
記事番号28862へのコメント Oblivon〜忘却〜 ――堕天使の夢はどこにある? まどろみ、たゆたい、意識が自分という存在中に満たされてゆく。 ここは、どこ・・・? 《目覚めて》 ・・・誰・・・? 《目覚めて。あなたは知らなければならないことがある》 誰・・・? 《あたしは名も無き者。ただのかすかな意識と、それに連なる力のみが具現化した存在。 さあ、目覚めて》 あ・・・この声・・・どこかで・・・・・・ あたしはがばりと跳ね起きる。 「・・・夢?」 「夢じゃありませんわ。危うくあなたの魂が消えかかったところをサタン様がお助けになられたのです」 「・・・アシュタロス!」 聞こえた声に、あたしは目を見開く。 部屋の壁にもたれかけ、アシュタロスはこちらを見ていた。 「まったく・・・直接魂に語りかけられたとはいえ、ああも簡単に倒れるとは・・・」 「・・・・・・一回の攻撃であっさり気絶してたのはどこの誰だったんでしょうね?」 ぼそりと言い返してやる。 だがしかし、あの感覚・・・普通ではなかった。 アシュタロスは魂に語りかけられたと言っていたが、あんなにも肉体に影響が出るものなのだろうか? それとも、本当は違っていて、アシュタロスが嘘をついているのか・・・・・・・・・。・・・あれ? 「・・・何故・・・私はここにいるんです?」 「それは、サタン様がお決めになったことよ」 「ならばなぜ、魔王が私をかくまうのです?ベルゼバブは鏡の中に虚無を見る者を探していたと言っていましたが、何故ですか?」 「あたしに聞かないでよ。サタン様に聞いて。あたしたちは目的を知らされてはいない・・・・・・」 アシュタロスは嘆息してそういった。 ふと、彼女が無造作にドアのほうに歩き出す。 「ついてきなさい。いくらあなたでも魔界の地理には疎いでしょう。逃げる事はかなわないわ。 サタン様がお目覚めになっている限り、ここはあのお方の掌の上よ」 「・・・魔界?ここが!?」 眠っているあいだに運ばれたとはいえ、気付かなかった・・・・・・ 言われて見れば、天界とも人間界とも空気が違う。だが、違和感は感じても邪悪なものは感じない・・・ 「そうよ。何の意味があるのかは知らないけれど、あのお方は確実にあなたを『闇と光を越える者』だと思っていらっしゃるわ」 あたしはベッドから立ち上がり、アシュタロスの後ろをついてゆく。 「貴方はまだ堕ちてはいない。 神から離反したと言っていたけれど、まだ、堕ちていない・・・はっきり言えば、あたしはあなたを信用してないわ。 天使にはここの空気はつらいだろうけど、我慢してもらうしかないわね」 ・・・つらい?さっきの通り、違和感はあるが・・・ それよりあたしがまだ堕ちていない?どういうこと・・・? あたしは確かに神に向かって敵対するような発言をしたのだ。 本来ならば、堕天使になっていなければおかしい。 「・・・ここよ。サタン様はここにおられる」 長い廊下を歩いた果てにあった大きな扉。 ぎぃ・・・ 軽くきしんだ音をたて、扉が開く。 「つれてきました」 扉の向こうにあったのは――祭壇? 壇上にある、金色の光の球・・・・・・そこから、なにかを感じる。この光が、サタン・・・? よく見ると、その横にはベルゼバブとベリアルが控えていた。 《よく来てくれたわね。ルシフェル》 「・・・っ・・・」 再びあたしの胸に激痛が走る。 「やはり・・・あの会話方法ではあなたに負担がかかるみたいね。 ・・・神の封印・・・少々厄介ね・・・」 今度は、肉声で同じ声が聞こえてきた。 金色の光の球が揺らめく。 それは人の形を取り―― 「・・・私・・・?」 そう。あたしと瓜二つの姿になった。 「サタン様!そのお姿をとるのは、あなたの活動可能時間を著しく減少させます!」 ベリアルが叫ぶ。 「大丈夫よ。彼女が『堕天使』として出現したからあたしも目覚めた・・・そばにいる限り再び眠りにつくことはないわ」 魔王は微笑む。 「・・・眠る?それに、私がそばにいるから?一体、どういうこと・・・」 「あたしは悪魔たちの名も無き支配者。サタンというのはただの称号。 彼らはあたしが作り出した部下よ」 あたしにそっくりなサタンは言った。 あたしに瓜二つな瞳をきらめかせて。 しかし・・・何もかも分からないことだらけだ。 何故彼女はあたしを呼んだのか。そしてその理由がもっとも恐怖するものが『虚無の世界』だからなのか。 何故彼女はあたしとそっくりなのか。それに封印? そして―― 「あなたが・・・悪魔ではないのは何故です?」 くすりと、笑う。 彼女はその質問を待っていたかのように・・・いや、待っていたのだろう、おそらく。 「堕天使よ」 魂の奥まで響きそうな、そんな声。 「光と闇は分かつ事ができぬもの」 さらに続ける。 あたしは、その声に聞き入っていた。 「我は肉を持たぬもの。 我が内包するは、闇だけにあらず」 「ならば――あなたは何?」 「この世界にあたしの同類は六人いるわ。 あたしと、神と、あなた。それからベルゼにアシュにベリアル。 でも厳密に言ってしまえば『五人』として数えられる。 それは、あたしとあなたが同じものだから。 この姿はただの象徴よ?あなたとあたしが同じものだという」 「同じ?元とはいえ、私は天使、あなたは魔王・・・」 「そうね。あなたは天使だったし、あたしは魔王。 でもね、それよりもっと昔、あたしとあなたは同じものだった。 『我は肉を持たぬもの。 我が内包するは、闇だけにあらず』 そして・・・ 『汝が内包するは、光だけにあらず』」 「・・・私はいまや堕天使。当然です」 眉をひそめ、あたしは言った。 「いいえ。『堕天使』でありながら堕天使ではない。 その姿は天のみ使いのものだけれど、あなたの心はもともと『光と闇を越える存在』と同じ。 つまるところ――あたしと同じというわけ。 さて、お次は何を聞きたいの?」 「何故私を呼んだのか。そして何故かくまうのか」 「あたしとあなたは同じもの・・・あたしはそう言ったわね。 同じというのは、同類とか親戚というよりもっと近い、『同一の個』という事。 今のあたしは完璧ではないわ。 力はあれど、意識がそれに追いつかない。精神力が弱いのね、たぶん。 だからしばらく眠ってから、ほんの少しの間だけ起きているのよ。 あたしはもともとこうではなかったらしいのよ」 「らしい?」 「そこら辺の記憶があいまいでね、よく覚えてはいないのよ。 赤子の時の記憶・・・といったところかしら。 話を戻しましょう。 何故意識が力に追いつかないのかというと、神が無理やり過去のあたしを二人に分けたから。 一人はあたし・・・そしてあなた」 「それで・・・封印がどうのこうのと言うのは、神があたしに封印をかけていたからですか?」 「そう。察しがいいわね。能力の比重としては力は半分ずつだけど、意志の力はあなたのほうが強いわ。 そして、まだ幼い精神状態だったあなたに光の属性の封印を三重にかけた。 そして自分の手駒としてそばにおいておいたのね。監視の意味合いもあるけど。 でも、あたしはどちらかというと闇の方に近いから、神には扱いきれなかった。 そしてあなたの三つの封印・・・ 一つ目の封印はすでに解けているわ。あなたが神を否定したから。 二つ目の封印はあたしが解くことができる。 三つ目は・・・あなたのその天使の身体そのもの。 意識をそのまま詰め込んで強制的に枷にする・・・まったく、迷惑よね」 ・・・これらの話が全て本当だとは限らない。いや、まったくの嘘であるという可能性すらある。 だが、それなたあたしをここにつれてくる必要性はどこにも無い。 ならば真実だと考えたほうが妥当だろう。 「あの神は・・・過去のあたしが生み出した存在。きっとあの時はあたしも頭が回らなかったのよねー・・・ 過去のあたしがなんていったかは忘れたけれど、それを今でも従順に護っているのね、たぶん」 魔王がうんうんとうなずきながら感慨深げにそういった。 ・・・って待てこら。だったら自分のミスでこういうことになってるのかっ!? ・・・・・・なんだかあたしは気が重くなってきた。 あとがき エ:あ、そういや前回L様出てた。前々回ミカエルさんが直接は出ないって言ったのに。 M:勢いってやつじゃない?それに僕『思う』って言ったし。推測なんて当てにできないね〜♪ エ:・・・自分で言うか? M:そういや姉さんが二人いたね。(ミカエルの言う『姉』とはルシフェルであってサタンではない。しかし性格が同じなのであまり関係ないようだ) エ:当初の予定と少々違います。本来ならサタンさんはいないはずだったんだけどね。話をまとめるのに出現させてしまったり。 もしサタンさんが今でも存在したら恐怖倍増・・・ サ:ほほぉぉう?恐怖倍増ですってぇ!? M:本シリーズにおけるゲスト、サタンさんでーす。姉さんの代理とも言う。 サ:いったん死にさらせぇぇっ!! ごぅんどごづがぼむ。 エ:っぎゃぁぁあああ・・・・・・ サ:あー、すっきりした。 さて、そんなところであとがきを終わりますv |
28927 | Oblivon〜忘却〜――現か夢か、境界の果てよ | エーナ E-mail | 2004/1/4 14:45:47 |
記事番号28862へのコメント Oblivon〜忘却〜 ――現か夢か、境界の果てよ ――あれから一週間。 天界を飛び出して、人間界に行って、そして今魔界にいる。 そしてあたしは魔王の半身? ・・・あまりにも非現実的な今の状況。 だが、それが全て現実である事には変わりがない。 それに、魔界に来て以来、調子が悪い。 ひどく、眠い・・・ 本来眠るという行為は天使にも悪魔にも必要ない。 だが、今のあたしはその行為にひどく貪欲で、起きているのもつらい。 その症状も日に日に増して・・・ なんとも情けない事だと自分でも思う。 しかしこの感覚はいかんともしがたく、あたしは今や、必要な時以外ベッドの住人と化している。 だが・・・眠り、夢を見ると・・・なぜか懐かしく、心地よい。 まるで、母体の中にいる胎児のような感覚が、夢の中で意識を支配する。 ――ぴしっ。 「――!?」 突如冷水をかけられたような感覚に、一気に思考が覚醒する。 『――敵襲!場内にいる兵士は全員配置につけ!』 「・・・敵襲・・・?・・・天使!?」 アナウンスらしき声にルシフェルは飛び起きる。 動きやすい服装に着替え、はめ込みの窓のカーテンを開ける。 薄暗い空の下、ちかちかときらめく銀色の――翼たち! ルシフェルは目を凝らし、その先頭の存在を見定め、愕然とした。 「ミカエル・・・!?」 どくんと心臓が大きく脈打つ。 知らず知らずその単語を口にし、信じられない面持ちで立ち尽くす。 そのとき。 ばんっ! 「避難しろ。王宮の裏手にある離れに・・・」 「お断りします」 皆まで言わせず即答する。 「・・・何?」 ベリアルが彼女の言葉に眉をひそめる。 ――いつか、こんな時が来るとは思っていた。 だが、まさかこんなに早いとは・・・ 「天界を飛び出したとき・・・いえ、神が創りだしたあの魂を見たとき、私の心はすでに決まっていました。 申し訳ないのですが、私は――あたしはもう逃げられない。戦わなければいけない」 ちらりとベリアルを見やり、ルシフェルは壁に手を当てる。 ――づがぁん! 派手な音と爆煙と共に、外側に瓦礫が飛び散る。 軽く床から跳躍し――堕天使となってもなお銀色の翼を広げる。 「まて!今お前に死なれてもらっては――」 《止めておきなさい。ベリアル》 制止するベリアルにかかる、穏やかな声。 「しかし・・・よろしいのですか?」 《彼女はもう気付き始めている。道は三つ。 このままミカエルを殺し、魔界に居座り続けるか。 二つ目は、彼女を引き戻そうとする神の手をとるか。 そして三つ目は・・・》 飛び来る銀色の人影。 ミカエルはそれを見て、全軍に先に行けと命令する。 「・・・姉さん」 ルシフェルは他の天使には目もくれず、ミカエルのほうへと向かってきた。 空中で静止するミカエルと、その向かい側にふわりと静止するルシフェル。 その、容貌が瓜二つで、色彩がまったく違う二人が相対する。 ミカエルの手には、神から与えられた剣。 ルシフェルの手には、自分の力を具現化した大鎌。 「・・・一週間ぶりね。ミカエル」 「あの口調・・・止めたんだね。昔の姉さんみたいだ」 ミカエルが苦笑する。 「そうね。あの口調・・・今でも慣れなくて」 懐かしむように優しく言う。 「・・・神は・・・姉さんを再び迎え入れる気だ。 帰ろう?またご飯作ってよ。今度は、手伝うから・・・」 悲痛な表情でミカエルは言った。 「・・・できないわ」 「何でだよ! 何で出て言っちゃったのかは知らない・・・神も教えてくれなかった・・・ みんなも知らない、見ていなかった、聞いていなかったって言うんだ・・・ でも、でも!一緒にいたいんだ・・・帰ってきてよ・・・・・・姉さん!」 ひとしずく涙を流し、ミカエルが叫ぶ。 それを見たルシフェルは、悲しげに目を伏せて・・・ 「・・・あなたは優しい。あたしもミカエルとは戦いたくない。 あなたは優しくて・・・」 ルシフェルは瞳をひらき、ミカエルに向ける。 その中には、決断の強い意思があった 「優しくて・・・そして、無知」 「――!」 ぎぃんっ! 間合いをあっという間に詰め、振り下ろされた鎌をかろうじてミカエルが防ぐ。 「あなたは甘さとは違う、優しさを持つ子。 でも、でもね? 何も知らないということは――間違った事も正せないという事。 あたしは神を許せない。許す事など出来はしない。 だから、無知なるあなたを倒さなければならない」 「何も知らない・・・僕が? だったら、あの時・・・姉さんが天界を出て行ったときに何があったんだよ!」 ぎちぎちと武器をお互いにふるわせながら、ミカエルが訪ねた。 「・・・・・・・・・。『レヴィル』・・・神がつくりたもうた、純粋で、無垢で、純白なる救世主〔メシア〕の魂・・・」 「知ってる。姉さんが飛び出したときにその人間の魂のお披露目があったって言うけれど・・・ ・・・いいことじゃないか。人間がそれで救われるんだろう?」 「救われたように見えるだけよ。 救世主〔メシア〕? 悪魔をひきつけ、人の悪意と混乱を招くような魂が、救世主〔メシア〕!? ・・・それは当然救世主〔メシア〕に見えるでしょうね。 その悪意と混乱の中で、たった一つの光なのだから。 他の希望を全て破壊した、『排他された希望』と言う名の・・・っ! 『レヴィル』の周囲の人間は・・・?『レヴィル』自身はどうなるの!? 悪魔に狙われ、自分が元凶だと知らずに生きる事になる哀れな魂! 神は・・・悪意の中の善意こそ全てをひきつけるといったのよ!? あたしたちは神の操り人形じゃあない! 天使も、人間も、悪魔も、そのほか全ての生き物も、神によって創られたとしても、操り人形のはずがない! あたしは、糸を操る人形師を滅ぼす。 全てを開放する」 「・・・え・・・?・・・そんな・・・嘘だよね・・・?」 「あたしはこの目で見た。それを信じるか信じないかはあなたの自由。 そして、あたしもどうするかは自由」 ぢっ! お互いの刃を跳ね飛ばし、両者とも後ろへと下がる。 「あたしはあたしの真実を知った。 そして答えも出した。 あたしの知りうる限り、全ての真実への答えを出した。 それが、どんなに突拍子もなく、信じられそうになくても。 そして、この先どうするかも決めたのよ」 ちゃきりと鎌の切っ先をミカエルに向ける。 「・・・僕と・・・戦う。そういうことだね」 「もしあたしの出した答えが、信じていたものが真実でなかったら、あたしはただ愚かなだけ。 でも、それでもいいのよ。あたしは信じたからには進まなければならない」 お互いに殺気がみなぎる。 ミカエルも覚悟を決めた。 ごぁんっ! 悪魔と天使がぶつかる爆発音。 それと同時に。 二人がぶつかる。 ぞんっ! 肉を断ち割る音。 血がしぶく。 「あ・・・っか・・・」 喉が震える。 翼が血に染まり、真っ赤になる。 「あなたは、優しい・・・・・・」 ルシフェルの瞳から涙が零れ落ちる。 「優しくて、優しくて・・・・・・」 がしゃんっ!と、音をたてて鎌が地に落ちた。 「それでも、一度決めた事は実行する、意志の強い子・・・」 「・・・姉さん・・・?」 ミカエルがかたかたと震えだす。 「あたしは、ミカエルを殺したくはない・・・・・・」 ぐらリとルシフェルの体がかしぎ、大地の方向へと引き寄せられる。 「あ・・・!」 手を伸ばすミカエル。 だけど・・・その手はルシフェルの衣服をかすり、虚しく空を切る。 大地に叩きつけられる直前。 ルシフェルが、微笑んでいた。 《三つ目は・・・自らミカエル自身の手にかかること》 「うわあぁぁああぁああっ!!」 あとがき エ:『Oblivon〜忘却〜・――現か夢か、境界の果てよ』をお送りいたしました。 A:うわ死んでるしっ!L様殺してどうするのよこのシリーズっ! エ:それは後のお楽しみvという事で。 A:おいおいっ! エ:それではあとがきを終わりま〜す。 A:終わるなぁぁあっ!! |
28933 | Re:Oblivon〜忘却〜――二つの意思が交じり合う時 | エーナ E-mail | 2004/1/5 02:06:56 |
記事番号28862へのコメント Oblivon〜忘却〜 ――二つの意思が交じり合う時 答えは出された。 我が行動は我が心によって決まる。 もはや、遮られるものなどない。 約百億年ぶりの久しい感覚に懐かしさを覚える。 あたしは神の敵対者〔サタン〕。 そして、真実の名は―― 「うわあぁぁああぁああっ!!」 血に染まった手を見て、ミカエルは絶叫する。 「僕が、姉さ・・・・・・ころ、し・・・っ!」 がたがたと震える。 その身を壊してしまうように爪を立ててかき抱く。 すでにその手から剣は離れ、地に深く突き刺さっていた。 「・・・っっ・・・・・・!」 何故姉が死ななければならない。 何故自分が死ななかったのか。 何故姉は天界に離反したのか。 何故姉は間際に刃を引いたのか。 何故姉は微笑んでいたのか。 何故、何故、何故! ―――何故――― 「ただいま・・・もどりました」 天の宮〔あまのみや〕の謁見の間、そこにいる神の前でひざをつき、彼は言った。 神の位置からは表情は見えない。 血のにおいがかすかに香る。 「して・・・ミカエル、魔界遠征の第一波、報告は?」 「被害は、天使の六分の一が死亡、残りの四分の一が重傷、そのほか軽傷の者が多数。 サタンと、それに仕える三大悪魔は打ち倒す事はかないませんでした。 しかし、魔王の居城、魔界宮にいる悪魔を半分弱ほど打ち倒しました。 それから・・・・・・」 少々彼は口ごもる。 「・・・それから、なんだ?」 「・・・堕天使ルシフェルを・・・この手で、討ち取りました」 「・・・ほう・・・!?」 「・・・証拠を・・・・・・」 血がほんの少しこびりついた金色の髪をひと房。神の眼前に差し出す。 「・・・確かに・・・ルシフェルのものだな・・・・・・ ・・・ミカエル、ご苦労であった。第二波の隊長は西方天使長のルクレスに任せる。一ヶ月ほど休暇を与えよう」 「・・・お言葉に甘えさせていただきます・・・・・・少々・・・疲れたので・・・」 彼は神に表情を見せぬまま、謁見の間から立ち去る。 後にはただ一人、神だけが残った。 「・・・・・・ルシフェルよ・・・我が手で操られた世界に存在するのならば、死を選んだほうがよいというのか・・・? やはり・・・混沌の海を操る事はかなわぬか・・・・・・悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕・・・ ・・・・・・我があるじよ・・・・・・・・・幼子の時のご意思を・・・忘れたもうたあるじよ・・・・・・ あなたは我に、完璧を課したのだ・・・完璧な世界、完璧な魂、完璧な存在・・・! 完璧・・・完璧な光だけの世界・・・ 闇を否定し、拒否したつけが今回ってきたようだな・・・・・・ ・・・・・・・・・所詮は・・・私はただの被造物か・・・」 そうつぶやく神の声には・・・疲れと悲しみの色が見て取れた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ぱたりとドアを閉じる。 なんとなくキッチンに入り・・・大きな鍋が目に付いた。 なんとなく暖め、それを皿に取り、なんとなく口に運ぶ。 不揃いのにんじん。無駄に大きいたまねぎ。妙に甘い液体・・・ 『帰ろう?またご飯作ってよ。今度は、手伝うから・・・』 あの時の言葉を思い出す。 そのときふっと、唇が笑みの形になる。 「くく・・・くくくくくっくくく・・・」 もう、二人で料理を食べる事などないのだ。 ありえない。 知らず知らずのうちに、喉の奥から哄笑が漏れる。 「くく・・・・・・っは・・・あはは・・・」 「ちっ・・・天界のやつらからの奇襲! あの天使が来た時に警戒しとけばよかった・・・いや、迎え入れさえしなけりゃあんな事には・・・!」 悔しさと怒りが要り場じった表情で、ベルゼバブは歯軋りしていた。 「・・・ベルゼ!全てはあのかたのご意思よ。被造物であるあたしたちにどうこういう資格はないわ」 ベルゼバブにアシュタロスが叱咤する。 「規模からして、あれはおそらく第一波。第二波がすぐにでも来るだろう。 今は対策を練る事が重要だ」 「・・・だけどよ。あの女天使が死んでからサタン様は沈黙して眠ったままだぜ? どうするって言うんだよ」 ベリアルの言葉にベルゼバブが反論する。 「・・・そうね・・・ ・・・あの女天使の弟とやらをたたき起こして、どれくらいの規模がくるのか、いつの時期か・・・聞き出してみるのはどうかしら?」 視線の先には・・・ベッドの上で眠っているミカエルの姿。 「くくくっ・・・ふふ・・・ふ・・・」 銀色の髪、銀色の瞳を持つ『彼女』は、自分とミカエルの自宅で笑っていた。 「さぁて・・・暴れさせてもらおうかしら?」 ざわりと髪と瞳が金色に染まる。 「我が内包するは、光だけにあらず・・・ 悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕の名にかけて、ね」 あとがき エ:ううっ・・・今回ちょっと短い・・・! V:・・・・・・私のセリフが一度だけというのが一番気にかかるのだが。 エ:それはさらりと流しちゃってください。 V:流せん。無理だ。 エ:さて、それは置いておいて。 今回急展開をしました。 ただいまサタン+ルシフェル=悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕の図式が成り立っております。 肉体の破壊によって三つ目の封印が解かれた為、サタンとルシフェルが合体! 我らがL様の誕生でございます。 そしてミカエル君とルシフェルののマル秘裏設定! 悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕の精神体が半分こ(力は均等だが精神力はルシフェルのほうが比重が高い)になったとき、アルヴァセルさんではルシフェルのコントロールができません。 そこで一計を案じたアルヴァセルさん。ルシフェルの精神体を魂としてまとめ、天使の肉体に押し込めちゃいます。 しかぁーしっ!その状態では本編第二部のルキと同じ状態。 金色の力が外にだだ漏れで、これでは存在のオリジナル化が起こり、世界に悪影響を起こします。 そこで頭をひねったアルヴァセルさん。 『そーだ!もれるんなら受けるための器を作ればいーんだ!』といってルシフェルの対となるミカエル君を創りだしましたとさ。 さて、ミカエル君の肉体はルシフェルの漏らすエネルギーを活動源にしています。 もしミカエル君がルシフェルのそばにいないとルシフェルは力を自動的に内部に溜め込み(ルシフェルの天使としての肉体はこうなるように特別に作られている。ミカエルもエネルギーを受けるように特別に作り出されていた。でもって通常なら神に離反した時点で堕天使になるはずだったが、彼女がならなかったのはこのせい)、困った事になります。(現か夢かの冒頭参照) そして一週間で爆睡寸前のルシフェル、その近辺にミカエルが寄ってきたもんだからおめめパッチリ! そんなこんなで今に至るわけですが、今現在ミカエル君がぶっ倒れているのは精神ショックと、今までルシフェルから離れていたためのエネルギー不足が重なったせいです。 V:置いておいては欲しくないが・・・なかなか細かく設定されているな。 エ:でしょ?それじゃあ終わりますv V:・・・待て!まだ言いたい事が・・・ |
28940 | Oblivon〜忘却〜――忘れえぬものは忘却のかなたに・・・ | エーナ E-mail | 2004/1/6 09:53:23 |
記事番号28862へのコメント Oblivon〜忘却〜 ――忘れえぬものは忘却のかなたに・・・ 天の宮〔あまのみや〕、魔界遠征作戦会議本部前の廊下にて。 「西方天使長殿、魔界遠征の第二波の隊長をされるようですが・・・がんばってくださいね」 そこでいったん解散となったルクレスに、銀色の髪、銀の瞳をした天使が声をかけてきた。 「これは・・・!ミカエル様、お体の調子のほうは・・・」 後ろから声をかけられ、振り返ったルクレスの目には『堕天使である姉を打ち倒した傷心の大天使・ミカエル』が映っていた。 暴れる気満々だというのに少しやつれているように見えるのだから、ルシフェルもなかなかの名優である。 「いえ・・・身体のほうは大丈夫なのですが、少々精神的に参ってしまいましてね・・・・・・」 「・・・それは・・・姉君の事もありますからな・・・おいたわしい・・・・・・何ゆえ神を裏切ったのかは知りませんが、あなたの事も考えればよろしいものを・・・」 「何故、ルシフェルが神を裏切ったか、ですか・・・ ――それは、神が我々を裏切ったからですよ」 この近辺にはルクレスと同じように第二波に組み込まれる天使たちがいたが、先ほどの解散でもう自分たち以外には誰もいない。会話しているところも通りがかりの天使にも見せた。 ・・・そろそろころあいだ。 「・・・今、何を仰りました!?」 自分の耳に飛び込んできた言葉を信じる事ができず、ぎょっとした顔で言うルクレスに『ミカエル』――いや、色彩が違うだけのルシフェルは、その瞳に力強い光を宿らせ、慈母のような笑みをたたえた。 とうてい『堕天使である姉を打ち倒した傷心の大天使・ミカエル』にできるものではない。 「光と闇は分かつ事のできぬもの。我は肉をもたぬ存在〔もの〕。 ――さて、『神の死亡』という『最悪』のフィナーレと行こうじゃないの?」 「きさま、ルシ・・・」 ざぎぃっ! 言葉すら最後まで言わせず、いつの間にか出現させた鎌で一刀両断のもとに伏した。 「・・・まあ、失敗する可能性もあるし。これでしばらく魔界遠征は延長ね。体勢を立て直すには十分!」 駆け出し、考えを秘めずに声を出す。どうせあたりには誰もいないのだからかまわない。 すでに色彩も体型もルシフェルのそれとなっている。 そして服装は――悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕の物。 「さァて、いっちょ暴れますか!」 いたずらっ子のような笑みを浮かべ、刃を眼前にかざす。 勝手知ったるなんとやら。 ルシフェルは人通りの少ない道を選び、駆け抜ける。 わずかに通る天使たちの横をすり抜け、当て身で気絶させ、勢いは止まる事を知らない。 ――ぎりぎりまで自分を悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕とは知らせず、なおかつ自分の存在を知らせる方法。これが一番手っ取り早い。 もうすぐ、神のいる謁見の間――その前に、武装した天使の兵たちがこれでもかというほどずらずらと並んでいる。 「有象無象〔うぞうむぞう〕(いわゆるザコ)にあたしが倒せるわけないでしょっ!」 光の球が、駆けるルシフェルの周囲に出現する。 そして、同じく迎え撃つ攻撃の雨嵐。 「ゆけっ!」 力を減衰し、あるいは無傷のままで兵たちに押し寄せる光の球。 それは着弾と共に、爆音と金の火花を散らして天使たちを吹き飛ばす。 ――ばんっ! 勢いよくドアを蹴り、留め金が壊れたドアは、向こう側に倒れた。 その倒れた先には・・・アルヴァセル。 「お久しぶりね。レファグロン」 にぱっとわらうルシフェル。 「ルシフェル・・・!?侵入者とは・・・まさか・・・!」 『侵入者がいる』という報告しか聞かされてないのか、驚愕に顔をゆがめるアルヴァセル。 「そのま・さ・か。あんたをはったおしに来たのよ。 ミカエルに化けたら結構誰でも信用しちゃってくれてね〜。侵入するのはもう楽で楽で♪」 ぱちんと指を鳴らす。そして同時に兵士が駆け寄り・・・はじかれる。 「・・・結界!?今現在、そんな真似ができるのは・・・・・・まさ、か・・・っ!」 先ほどより驚愕するアルヴァセル。 「二度目のまさか!あんまり『闇』をなめてると痛い目見るわよ?」 「・・・く・・・」 「・・・と、言いたいところなんだけど・・・ね」 ・・・はふ・・・とため息をつき、先ほどのいたずらっ子のような笑みはどこへやら。 真剣なまなざしでアルヴァセルを見やる。 「・・・過去のあたしはあなたに何を望んだの?教えて」 「それ、は・・・完璧な世界・・・・・・あなたは私にそれを課した・・・・・・ 私は光で世界を埋め尽くし、涙のない、死のない、永遠の世界を作ろうとした・・・」 「・・・無理ね。人間は一番流動的で、とらえどころがないわ。片方を満たせば片方は満たされない・・・ それに、涙がないのは喜びも怒りも悲しみもないということ・・・死がないということは生きる喜びがないこと・・・ ・・・そして・・・永遠の世界はありえない。もし、ありうるのならば・・・『虚無』だけよ。 孤独は――もうたくさん。考えてみれば、あんたもかわいそうよね・・・」 しゃん。と音をたてて鎌が消える。 「・・・・・・哀れみはいりません・・・全てあなたのご意思のまま・・・」 「だったら、あたしの命令は撤回するわ。 新しい世界を作ってあげる。新しい名前もあげる。 多くの人が、心豊かになる世界を作りなさい。 豊かならざる人には、手を差し伸べてやりなさい。 それでいいわ・・・それで・・・ ・・・おいで、アルヴァセル。あなたは今ここで死んだ。新しい名は『―――』。」 ルシフェルは手を差し伸べる。 窓の外には・・・真紅の月がかかっていた。 気泡が生まれる。 小さな泡が。 生まれたての、世界という気泡が。 彼は全てを忘れ、そこで再び神となった。 「――女の子はその世界を去り、新しい世界を作りました。 『神』の人形と『魔王』の人形を作り出し、人間を作り出し、神と魔の二つの勢力に与えられたのは、きわめて大雑把な命令だけ。 自由で、豊かな世界がたくさん生まれました。 ・・・これで女の子のお話はおしまいよ」 すでに紅い月は沈み、朝の光がこぼれだしている。 「生まれ変わった神様と、最初にいた魔王の部下たち、それから生まれ変わった神のいる世界と、最初の世界はどうなったんですか?」 長い話に付き合ったゼロスは数回目かの疑問符を出した。 「これは大昔のお話よ。すでに神は滅び、同時にその世界も・・・最初の世界もね。 魔王の部下たちと、弟は・・・」 力が少しずつ流れ込んでくる。 今までまったく反応しなかったまぶたが・・・かすかに開いた。 そして視認で姿を確認し、がばりと跳ね起きる。 「・・・姉さん・・・!?」 信じられない面持ちで姉を見上げる。 「おはよ、ミカエル。ずいぶん寝てたみたいね?」 姉の見せる柔らかな笑顔。それは日常で結構見せられていたもので・・・ 「え・・・あ・・・・?」 「どうしてあたしがここにいるのかって不思議そうな顔してるわね」 「・・・うん」 ミカエルは素直にこくりとうなずいた。 「ここは魔界よ。ミカエル。でも、もうすぐ行かなくちゃならない・・・」 「そんな・・・おいていかないでよ・・・やっと会えたのに・・・・・・!」 悲痛に叫ぶミカエル。 「最後まで話を聞きなさい。今度はおいて行ったりなんかしないわ・・・あなたが望めばだけどね。 この世界にいる?それとも一緒に来る?」 「・・・行くよ!神にそむく事になっても・・・」 「あ。神はあたしがはったおしたから」 「・・・・・・姉さんならやりかねないよ・・・」 呆れるが、くすくすと笑うミカエル。 「そぉよっ!あたしはいまや神様よりお偉いさんなんだからっ!」 「じゃあ何様?」 「悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕様っ!! とゆーわけであんたは神官っ!はい決定!」 びっと指を天にさし、ルシフェルは言い切った。 「うあ強引な。てゆーかなにそれ」 「なんだろ?まあ、身の振り方はこれから考えるわよ。 だからほら。行こう?ミカエル」 「もちろん!」 「・・・聞かないのね?」 すでに空は白み、太陽がかすかに顔を出している。 「なにをです?」 「その後の女の子のこと」 「聞くまでもありませんよ。 なぜなら・・・目の前にいるからです」 その言葉に・・・ルキはふ、と、笑った。 あとがき+アンケート エ:終わった・・・全てが・・・真っ白に・・・燃え尽き―― L:るなぁぁあっ! ごすっ!めがぞごりゅぅっ! エ:げふぁっ!? L:終わんなっ!番外編はどうしたっ!ほったらかしにされてる本編はっ! エ:アンケートをとらせていただきます。 一応構想は両方練ってあるんですが、特に番外編には問題がありまくり・・・(汗) やりたいんですがオリジナル設定はいりまくっているのでどうしたものかと。 L:・・・ほう。 エ:サブタイトルが『滅びた魔族はどこ行った?』です。 L:・・・おひこら。 エ:で、本編のほう・・・外の世界にルキが引っ張り込まれるんですが、番外より短くなる可能性が大! L:・・・・・・・・・いっそ書かないほうが・・・・・・ エ:何をおっしゃいますL様っ! そんなのあたしは何度思ったことかっ! L:開き直るな。頼むから。 エ:というわけで、アンケートをとります。 その1・番外編第二部、メインキャラ・・・ルキ、レティシア、メニィ、サミィ、イーザー、ゼロス、ついでにティモシー。 あと意外な方が二名ほど。そのうち一人は自分が『そう』だという自覚なし。サブタイトルのくせに確認される魔族はそんなにいません。 ちなみにこの二名は存在しないと言っても過言ではありません。(自分で書いていてもむちゃくちゃですが、そうなっています) そこら辺はご了承ください。 その2・本編第三部、メインキャラ・・・ルキ、フィリア、ゼロス、それからヴァルとかも出てくるかも。 もしかするとそのほかの皆さんが重要な役割を担っていただくかもしれません。 ・・・以上です。先着は五名様まで。 もし偶数しか投票されず、なおかつ票が割れた場合は番外編のほうに強制的に移行します。 それでは終わらせていただきますv |
28941 | Re:Oblivon〜忘却〜――忘れえぬものは忘却のかなたに・・・ | エーナ E-mail | 2004/1/6 09:56:09 |
記事番号28940へのコメント ・・・ああっ!アルヴァセルの名前がレファグロンになってる・・・ 皆様、申し訳ありませんでした。 |
28942 | Re:Oblivon〜忘却〜――忘れえぬものは忘却のかなたに・・・ | すぅ E-mail | 2004/1/6 10:14:56 |
記事番号28940へのコメント S:れでぃぃぃすあーんどじぇ・・・・ ばこっ!! す:なにやってるのよ・・・ S:いや・・・ L:あたしの出番が無くなるでしょうがっ! S:すみません・・・L様・・・ L:分かればよろしい。んじゃ、あんたは赤の世界に戻ってなさい!! しゅぅぅぅ・・・ なぜか煙になって消えるSさん。(優喜) す:ってことで、エーナさんのシリーズ始めのほうから読み逃げしまくってたすぅです。 L:ま、アンケートが出たから答える見たいだけど・・・ す:そうなんですよぉー。 >その1・番外編第二部、メインキャラ・・・ルキ、レティシア、メニィ、サミィ、イーザー、ゼロス、ついでにティモシー。 >あと意外な方が二名ほど。そのうち一人は自分が『そう』だという自覚なし。サブタイトルのくせに確認される魔族はそんなにいません。 >ちなみにこの二名は存在しないと言っても過言ではありません。(自分で書いていてもむちゃくちゃですが、そうなっています) >そこら辺はご了承ください。 > >その2・本編第三部、メインキャラ・・・ルキ、フィリア、ゼロス、それからヴァルとかも出てくるかも。 >もしかするとそのほかの皆さんが重要な役割を担っていただくかもしれません。 す:うーみゅ、私としては・・・その2のほうが良いなぁ〜とか・・・ L:あたしはどっちでも良いわよvどっちになってもあたしは出てくるわけだしv す:そぉいうことです。 L:短かったけど、 す:でわ、 す&L:さよぉならぁ |
28959 | CONCENTRATE〜集う〜序幕 | エーナ E-mail | 2004/1/9 13:09:50 |
記事番号28942へのコメント アイシテイルノニ・・・・・・ ――力を―― ナゼ、アナタハシンダノ? ――全てを、滅ぼす力を―― イカナイデ・・・・・・ワタシヲオイテイカナイデ! ――成れ―― ニクイ、ニクイ! ――王の、力を!―― アナタヲウバッタスベテガニクイ! CONCENTRATE〜集う〜 序幕 リナ=インバースは古い友人を家に招きいれていた。 「あたしは今、魔血球を持ってはいない。 あの力をコントロールする自信も・・・ちょっとはあるけどあんまり使いたいものじゃないわ」 リナは言って、香茶のカップを静かに置いた。 「・・・そうですか・・・残念です」 金髪の、20前後に見える女性がため息をついた。 「赤の竜神の騎士〔スィーフィード・ナイト〕もたぶん動かないわ。 ・・・でも・・・今現在巫女でないあなたが・・・どうして神託を受け取ったのかしら? ――フィリア」 リナは、姿がほとんど変わっていない旧友の名を言った。 闇よりもなお昏きもの 夜よりもなお深きもの 歩み寄るは中心 祈りも 願いも 届けられなかった者 彼の者はそこに在り 全てを飲み込まんとす そして王の御許に 真実の願いはかなえられん 「・・・分かりません。 もしかしたら、あなたに一番かかわりが深かった、竜族の『巫女』の力を持った者だったからかもしれません・・・」 うつむき、フィリアは答えを探すように静かに言った。 「・・・混沌の力を幾度も操ってきたあたしに関わっていたから、かも知れないと?」 「・・・・・・そういうことです」 こくりとうなずく。 「ですが・・・あなたもあなたの姉である赤の竜神の騎士〔スィーフィード・ナイト〕もダメだというのなら、他に適任者は誰が・・・?」 「・・・・・・一人だけ・・・心当たりがあるけど・・・・・・受けるかどうかは、あの子しだいね。 あたしも姉ちゃんも彼女には強制できないわ。 何しろ、あの子は世界で一番自由だから」 全てを滅ぼし、壊し、創り、再生する。 力を御〔ぎょ〕し、何よりも自由で、誰よりも強い。 その姿と力は肉体という枷〔かせ〕に縛られても、心が自由なのだから。 全知で在らずとも、それに最も近く。 全能で在らずとも、それに最も近い。 恐怖するが故に虚無を御すのはかの存在だけ。 「あの子、とは?」 「あたしの自慢の娘よ」 「・・・・・・お名前は?」 「ルキ。ルキ=ファー=ガブリエフ」 言って、リナはいたずらっぽく笑った。 あとがき エ:アンケートにお答えして外の世界のお話、本編第三部。まだ序幕なのでリナとフィリアしかいない上に短いです。 L:アンケートに答えたのは一人だけ。あんたの書く物の駄文っぷりが分かるわね。 エ:がふぁっ!・・・それは言わないお約束・・・・・・くすん。 L:ほう。自覚はしてるみたいね。 エ:ようやくストーリーが決まったところなのに・・・・・・ それはともかく、すぅさん、アンケートにお答えいただきありがとうございました。 それでは、次のお話で会いましょう! |
28960 | CONCENTRATE〜集う〜第一幕 | エーナ E-mail | 2004/1/9 13:11:18 |
記事番号28959へのコメント CONCENTRATE〜集う〜 第一幕 そこそこの大きさの街の、そこら辺の食堂に入り、悠々と食事を終えようとしていたとき、それは起こった。 「くぉの生ごみぃぃぃいっ!!何であなたがここにいるんですかっっ!」 ・・・・・・よくわからないが、ヒステリックな女性の声が聞こえる。 「ほっほぉぉう?火竜王の巫女をクビになったあなたが、何のようですかねぇ? た・だ・の!フィリアさんっ!!」 やたらと『ただの』の部分を強調するゼロスの声。どうやら知り合いらしい。 あたしはフォークをくわえたまま女性のほうをちらりと見やる。 ・・・んむ?この気配は・・・ 「・・・ふぅ。急ぎの用か何かは知らないけれど、そんなところでケンカしてちゃ他のお客に迷惑でしょ。 あなたたちおとなしくしたら?」 ソーセージを咀嚼して、あたしは呆れていった。 今この時間はお昼ご飯を取るのには少々遅い。客は少ないが、その少ないお客がぎょっとして二人のほうを見ていた。 あたしは先ほどゼロスと一緒に席についていたため、いまさら知らんぷりを決め込むわけにもいかずにそう言ったのだ。 「あ・・・あなた、この生ごみと知り合いなんですか!? 悪い事は言いません!きっぱりさっぱりと縁を切ったほうが身のためです!」 その女性――フィリアとか言ったか。 彼女がずかずかとこちらに歩み寄り、なんだか炎のようなものをバックに背負ってゼロスを指差しつつ言い放つ。 ・・・いや・・・ンなこといわれても・・・・・・ 縁切れって・・・・・・無理だし。 こちらが返答に困っていると、彼女はなおも言葉を続けた。 「この生ごみは北の山のロートル・・・」 ・・・って待てこらっ!ここは人間の街で・・・っ! あたしは彼女の言いたい事が分かってしまい、短い呪文を唱える。 「――サウンド・ブレイク」 その言葉が終わると同時に、全ての音が、周囲数メートル以内では効力が失われる。 「魔・・・・・・、・・・・・・・・・・・・!・・・・・・」 高らかに演説(らしきもの)をしているつもりの彼女は、自分の声が聞こえない事に気付いていない。 ・・・・・・今の呪文は空気振動を完全に停止させるもので、液体や物体で伝わる音は確かに打ち消しはしないから、骨伝導で脳には届くだろうが・・・・・・耳から自分の声が聞こえる分もあるのだ。普通は気付くぞ。 「・・・・・・・・・。・・・・・・!」 そこでようやく演説(らしきもの)が終わったのか、一拍ため息をつき、いつの間にか取り出されたお茶を優雅に飲んでいる。 あたしも出されたお茶を彼女に会釈してカップを傾けた。 いつの間にかゼロスもあたしの隣に座っている。 彼女の神経にそれが触ったらしく、再び口を開き、罵声を浴びせている(つもり)。 ゼロスは鼻で笑い、『彼女が魔法を使ったのにも気付かないなんてとんだ竜王〔ドラゴン・ロード〕ですね!』と、書かれた羊皮紙をぴらぴらと見せている。 それを見たフィリアははっとなり・・・そしてさらにすさまじいオーラを背負って、持っていたらしい羊皮紙に書き込み始めた。 ・・・・・・どうやら音を消そうが何をしようが状況は変わらないらしい。 あたしは残っていた料理を口に運び、飲み込んでから席を立って会計を済ませ―― 「はい、ストップ」 ぱん、と軽く手を鳴らすと同時に術を解く。 「続きは表でやりましょうね〜。二人とも」 ゼロスとフィリアが同時にこちら顔を向け、びくぅっと反応する。 「まさか、ここで続きをやるなんていわないわよね?」 小首をかしげるしぐさをしてあたしが言うと、ぶんぶんと首が千切れんばかりに首をふる二人。 「それはよかったv表に出たら―― ――あんたたちまとめてふっ飛ばしてあげるわよっっ!!」 『ぅでょあふぇいおぅああっ!?』 表に放り出して盛大に吹っ飛ばした。 盛大に吹っ飛んだ。 すっきりした。 あんなところで騒ぐ二人が悪い。 「・・・そういえば、フィリアって言ったわよね?あなた、何であそこにいたの?」 あたしが借りた宿の一室で、ゼロスを追い出してあたしは訪ねた。 「・・・・・・それは・・・・・・。・・・人を、探していたんです」 数秒躊躇った後、フィリアはそう答えた。 おびえのような色が瞳に混じっているような気もするが、気のせいである。うん。 「ふぅん?で、誰を探してるって?」 その様子が少々気にかかるが、聞かない訳にも行かない。 何気ない風を装って、あたしは尋ねる。 「ルキ=ファー=ガブリエフという人なんですが・・・」 「・・・・・・・・・それは・・・誰から言われて?」 少し声音が低くなったのは否めないが、彼女はそれに気付いてはいない。 「神託があったんです。私は元々火竜王さまに使える巫女だったんです。 でも、リナ=インバースが関わった件のどたばたで仕事を辞めまして・・・今は辺境で骨董店を細々と営んでいるのですが・・・」 「でも、神託が下りた、というわけね・・・・・・」 二年前、あたしはパーティーと称して腹心全員とレイ=マグナス=シャブラニグドゥの精神、それから竜王を全員呼び出した。 まあ、あれはあくまで『招待』で、任意の参加だったわけで、あたしだって全員が全員来るとは思ってはいなかった。 案の定、混沌にいたラグラディア以外は全員来なかったわけだが、彼女自身もあまり目立つのを控えていた。 しかし、その使いには、ミカエル、ベルゼ、アシュ、ベリアルの四人を寄越した。 ・・・つまり、だ。インバース家には悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕が深く関わっていると思わせることも目的だっのだ。 ネーミングセンスも計画の才能もないあほうな覇王〔ダイナスト〕あたりは忘れていそうだが、そのほかの腹心はもう知ったはずだ。 そして四竜王たちはバカでもあほでもない。特にラグラディアは頭がよかったが・・・まあ、それは余談だ。 彼女は母さんとかかわりがあった。しかも、今まで顔を見たことがないということは、外の世界の住人だという可能性が高い。 ・・・・・・ってことは・・・デュグラディグドゥとヴォルフィードの件か!そういえばウラバザードがあのとき自分で何とか処理してみるとか何とか言ってたが・・・結局は他人任せかいっ! ・・・・・・・・・・・・後でシメてやろう。 ・・・そしてそもそも、神託とは神に下りるものなのだ。え?十年後の大根の値段とかを神が伝えてるんじゃないかって? いやまあ、伝えてはいるが、その過程が少々面倒なのだ。 未来を知ることはたやすくはないし、それはあたしにおいても同じこと。 それに何より、未来を知ってしまったら面白くない。 パンドラの箱という話をご存知だろうか。 あ、知ってる?なら話ははやい。 パンドラという女性が開けた箱(蓋付きのつぼらしき物という説もある)・・・あの箱の最奥には、希望が入っていたとされている。 そしてもうひとつ逸話がある。 最奥には、希望などではなく・・・『未来を予知する力』が入っていたとされる説があるのだ。 もし、それが開放されていれば人は未来へ進む力を失う。 『事業が失敗する』という予言があったとしよう。そしてその予言を受けた人がいたとする。 そして彼がそれを信じたとする。そして彼は事業に対してやけを起こし・・・失敗する。 いい予言だとしてもそれがよくなるように働くとは限らない。 もし、『大好きな人と結婚できる』という予言があったとして、その予言を受けた人がいるとしよう。 そしてその彼もそれを信じたとする。 その結果は・・・無気力。それゆえ予言が実現しなくなる。結婚しようとする行動がなければ、人は結婚しないことが多い。 政略結婚としての、いやいやながらの結婚だとすれば、その逆もしかり。 予言を知ったがゆえに未来が変わる、もしくは逆にそうなってしまうという事もありうるのだ。 全ての存在が、未来の全てが予知できるようになってしまったのならば、その全ての存在は調子に乗るか、無気力になる。 そうなれば世界は破滅する。『滅ぶ』ではなく『破滅』だ。予言を知らない動物たちにしてみれば、人間がいなくなってしまって幸せ、以外の何ものでもないが。 ・・・おっと、少々話がそれてしまった。 予言や、それに順ずるものを知るには、まず未来への時間軸への干渉が必要となる。 しかし、過去から未来へ伝える事は簡単でも、未来から過去へ伝える事ほど難しい事はない。 たとえば、伝える手段を電波だとしよう。 そして過去へと発信しようとしても、その電波が時をわたるにあたって邪魔になるものがある。 時空間の『壁』だ。物体、魂などの精神を送るのはエネルギーの一種である電波より比較的簡単だ。 何しろ、それらは時をわたる途中に消費されにくいからだ。 時をわたるのは、魔力か、それに変わる力が必要である。 人間がもし何か、誰かを過去に送ろうとするのならば、それを『望む』場所、『巨大、もしくは多数の』精神力、そして纏め上げる核となる意思と、実行するエネルギーが必要となる。・・・場合によっては、肉体に備わっている生命エネルギーすらも。 そして、それは今のあたし・・・冥王〔ヘルマスター〕くらいの力では到底無理なのだ。 そして未来からのデータを含んだ電波をひとつの精神で送るとなると、完全な部下Sの五分の一以上の力が必要になる。 当然四竜王であるウラバザードはその基準を超えている。 だから、わざわざ未来、その時にあたる時間軸で情報を含んだ電波を発信するのだ。 お分かりか? 未来を知るには、未来からのメッセージが必要なのだ。 一方的に過去からアプローチしても、未来を知るのは無理だということだ。 そしてそのメッセージは、時をわたると同時に越す時空間に干渉され、暗号みたく変化する。 示される内容そのものは変わらない。 たとえば『大根が一本銅貨8枚』という予言があったとしておく。 それが『白く長く太く、地に多くが埋まるもの。銀の次に雷の道になりやすきもので作られし(銅は銀の次に電導率が高い。そのためコンセントなどのリードは銅で作られている)人によって価値を定められし物、八つにて等しくなりき』 ・・・とか何とかなっても示されている内容は同じなのだ。 ・・・・・・こんな神託ヤだけど。てゆーか普通は伝えん。 「その内容は?」 「・・・それは・・・・・・ 『 闇よりもなお昏きもの 夜よりもなお深きもの 歩み寄るは中心 祈りも 願いも 届けられなかった者 彼の者はそこに在り 全てを飲み込まんとす そして王の御許に 真実の願いはかなえられん 』 ・・・という神託で・・・・・・」 「ぃいいいっ!?」 あんのやろぉ・・・・・・・・・最初の一節分かっただけでインバースに押し付けやがったな・・・・・・ ・・・スペシャルコース決定。ぜっったいはったおしてやる・・・ 「――ゼロス!」 「は、はいっ!」 虚空からゼロスがふっと現れた。 「・・・まずウラバザードのとこに行くわ。 神殿、つれてってくれるでしょ?フィリア?」 「・・・はい?いやあの・・・部外者をそうそう簡単には・・・・・・」 あたしの雰囲気に押されつつも、弱弱しくそういった。 「・・・そういえば自己紹介がまだだったわね。あたしはルキ。ルキ=ファー=ガブリエフ。 そこんとこよろしくっ!」 「あ・・・あなたがルキさんなんですかっ!?嘘ですっ!」 信じられないものを見るようにあたしを上から下まで眺め、フィリアはそう言い切った。 「なんでよっ!」 「リナさんの娘なのに胸が大きい・・・」 「風波礫圧破〔ディミル・アーウィン〕っ!!」 どぼむっ! 超失礼な事をつかまつりやがったからふっ飛ばしてみた。 室内なので風の呪文で。 ・・・言っていいことと悪い事があるのだ。今回は後者に当たっただけの話。 ゼロスも一緒に吹っ飛んでいたが・・・それはご愛嬌というもの。 かくして、あたしたちの旅は始まった。 あとがき エ:おをっ!今回のお話はほかよりましな書き方ができたぞっ! L:ちょっとだけね。 エ:・・・しくしくしくしく・・・・・・ L:4×9の四乗・・・1679616? エ:数学とか算数じゃないっすよ・・・・・・・・・そりゃあないんじゃ・・・ L:ある。あたしがあるったらある。 と、ゆーわけで、次もよろしくっ! |