◆−CONCENTRATE〜集う〜第二幕−エーナ (2004/1/18 19:48:06) No.29072
 ┣CONCENTRATE〜集う〜第三幕−エーナ (2004/1/22 17:26:34) No.29128
 ┣CONCENTRATE〜集う〜第四幕−エーナ (2004/1/22 20:28:00) No.29129
 ┣CONCENTRATE〜集う〜第五幕−エーナ (2004/1/24 21:51:30) No.29164
 ┣CONCENTRATE〜集う〜第六幕−エーナ (2004/1/25 09:16:25) No.29170
 ┣CONCENTRATE〜集う〜第七幕−エーナ (2004/1/25 15:12:49) No.29174
 ┃┗Re:L様♪L様♪−はるか (2004/1/26 19:26:00) No.29190
 ┃ ┗Re:L様♪L様♪−エーナ (2004/1/26 19:50:24) No.29191
 ┣CONCENTRATE〜集う〜第八幕−エーナ (2004/1/28 03:11:01) No.29203
 ┣CONCENTRATE〜集う〜第九幕−エーナ (2004/1/28 21:14:46) No.29213
 ┣CONCENTRATE〜集う〜第十幕−エーナ (2004/1/31 12:07:14) No.29227
 ┣CONCENTRATE〜集う〜第十一幕−エーナ (2004/2/1 19:51:35) No.29244
 ┃┗Re:CONCENTRATE〜集う〜第十一幕−神高 紅 (2004/2/1 22:16:33) No.29246
 ┃ ┗Re:CONCENTRATE〜集う〜第十一幕−エーナ (2004/2/2 19:12:35) No.29250
 ┗CARRIED SCOPE〜万華鏡〜プロローグ−エーナ (2004/2/2 20:44:21) No.29251
  ┣CARRIED SCOPE〜万華鏡〜一章第一話−エーナ (2004/2/3 21:02:17) No.29259
  ┣CARRIED SCOPE〜万華鏡〜一章第二話−エーナ (2004/2/6 22:25:37) NEW No.29287
  ┗CARRIED SCOPE〜万華鏡〜一章第三話−エーナ (2004/2/8 12:14:29) NEW No.29296


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29072CONCENTRATE〜集う〜第二幕エーナ E-mail 2004/1/18 19:48:06



サガシテイタ
サガシテイタ
ズット
ズット
ダケド ミツカラナカッタ
ニジュウネンカンモ・・・
シンジラレナカッタ!


CONCENTRATE〜集う〜
              第二幕

吹っ飛ばされた二人を回収して、あたしは早速セイルーンへと向かった。
定期的にセイルーンを中心として各国が外の世界へ使節団を送っているからだ。あたしたちはそれに便乗する。
しかし、海の波は荒く、砂漠は越しがたい。
万全を期してメンバーを集め、船を修理し、点検。
それらをするとなるとどうしても数年単位で時間がかかる。
よくて交換留学、それでなくても物品、情報などのやり取りが限度なのだ。
しかもそれは国の上層のイベントであって一般の人々には遠い世界・・・
遣唐使や遣隋使みたいなものである。
そのうえ、こちらは魔法中心の文化。向こうは魔法は衰退し、科学が進歩しつつあるなどと言う状態で、相容れない・・・とまでは行かなくとも、なかなか打ち解けにくい事は確か。今まではあまり大きな問題は起こらなかったが、こうなっては外の世界と結界内同士が文化の摩擦によって戦争を起こしかねない状態である。
もっとも、向こう側もこちらの文化の理解があっても戦争に利用しようとか、逆にこちら側が、なんて思惑もあるのだろう。
まあ、それらに関わらない限りあたしには関係のないことなのだが。

「しかし・・・・・・神殿に行くといいましたが、火竜王〔フレア・ロード〕の神殿にはもう誰もいないんでしょう?」

運良く定期的にセイルーンへ向かう馬車を捕まえ、三人で乗り込んでゼロスがそういった。

「ちっちっち。あたしはウラバザードのところに行くとはいったけど、別に火竜王〔フレア・ロード〕の神殿に行くとは一言も言ってないわよ。
行くのは・・・赤の竜神〔フレア・ドラゴン〕スィーフィードの神殿!
それも。外の世界で唯一異界黙示録〔クレア・バイブル〕の存在する――
――『秘奥の神殿』――」

あたしが笑って指を振りながら言った言葉にゼロスとフィリア、二人が凍りつく。

「ル・・・ルキさん。何故その神殿の事を知っているのですか!?
『秘奥の神殿』と言えば、ドラゴンの高位の神官と巫女しか場所を・・・いえ、存在すら教えられないはず・・・!」

「ルキさん!その神殿は神族の巣窟・・・・・・本気ですかっ!?」

元々かなりの位の巫女であったフィリアが。
そして魔族として最初にあそこへは絶対に近づくなと叩き込まれたゼロスが抗議する。

「本気も本気v
――文句ある?」

『イエ・・・ナイデス』

はらはらと涙を流しつつ(片方は真似だが)口をそろえて言う二人。
結構気が合うのね。この二人。

「それはともかく・・・聖王都・セイルーンが見えてきたわよ」

窓の外から顔を出し、あたしは六望星に囲まれた白い町並みを見据えてそういった。








「こぉれはこれは!レオナルド=デュー=レシア=セイルーンさんじゃあないですか。
王族のお坊ちゃまがじきじきのお迎えですか?
大変ですねえ。第二王位継承者ともあろうものが、仕事もあるでしょうしねえ!
こぉぉんなところで油売ってていいんですかっ?」

「はっはっはっはっは。竜を滅せしもの〔ドラゴン・スレイヤー〕が一人の人間をお守りかい?
魔族も景気が悪いんだろう?写本を燃やす仕事もこなさなきゃならないだろうに。そっちこそ大変だよね!」

「魔皇霊斬〔アストラル・ヴァイン〕。爆裂陣〔メガ・ブランド〕」

づぼぉむ!

王城の門で言い争う二人をあたしの言葉とそれに伴う爆発によって収める。
門番や、そばに配置されている兵士たちはいつもの事、と高みの見物を決め込んで動こうとすらしない。
この近くを通る人たちもそれが日常の一部である事を理解しているので、一瞥してそのまま通り過ぎていった。
そして、フィリアがゼロスに向かってへんっと笑う。地べたに叩きつけられたゼロスはこめかみをひくつかせ――

・・・これでは話が進まない。直接おじさんとおばさんに頼んだほうがいいか・・・

「・・・・・・地封穿〔ディバインド〕」

ぎゅるっ!

あたしはこめかみを押さえつつ、三人まとめてまだ魔皇霊斬〔アストラル・ヴァイン〕が効いている土のつたに捕まえられていただいた。

『ああっ!そんなせっしょうな!』

三つの声がきれいに重なり、あたしに向かって抗議するが・・・

「せっしょうもくそもあるかっ!知らん!もぉ知らん!」

すたすたと城内へと踏み込みながら、あたしはそう言い放った。









「お久しぶりですね。ルキさん。でも、クリスマスのとき・・・三年前からあまり背が伸びてませんね」

セイルーンの街を一望できるテラスのところで、王妃であるアメリアおばさんが待っていてくれた。
彼女は、王妃の風格を漂わせながらも無邪気な雰囲気を残した微笑みであたしを出迎えてくれた。
白の清楚なドレスと、肩口で切りそろえられた黒髪がきれいに彼女の雰囲気を引き立たせている。

「アメリアおばさん・・・あたしは早熟だからいいの!それに母さんよりは背が高いし」

「冗談ですよ。それで、何でここに?」

くすりとわらい、アメリアおばさんが尋ねてきた。

「明日の使節団、あたしも乗せて欲しいの。
・・・ダメ?」

おねがい!と、手を合わせて上目づかいでおばさんを見るが、少々困った顔をするおばさん。

「けど・・・そんな急に・・・」

「――まあまあ。そんな事言わないで上げましょうよ。お母様」

つかつかと微笑みながら歩み寄ってきたのは・・・

『セラーネ?』

あたしとおばさんの声が重なり、その少女の名を呼んだ。

そう。あたしの幼馴染の、第一王位継承者であり、セイルーン第一王女であり、そしてレオンの姉であるセラーネ。
彼女は薄水色のドレスをまとい、さらさらと長い黒髪を自然にながしている。
切れ長な瞳と知的な顔立ちはおじさんの遺伝であろう。彼女もまた王族然とした雰囲気を纏いながら、少女特有のかわいらしさをも持っている。

「魔を滅せしもの〔デモン・スレイヤー〕二世、第二のドラまた、盗賊殺しの女王〔ロバーズ・キラー・クイーン〕、『美しき堕天使』・・・・・・それら数々の二つ名を持つルキ=ファー=ガブリエフが今度の使節団に参加するとなったら、箔がつくと思いますが?」

セラーネが、あたしのもつ数々の二つ名を挙げ、母親に提案した。

「・・・それもそうですが・・・・・・・・・
・・・・・・・・・あたしがリナさんを入れて一緒に使節団を編成したとき、黄金竜〔ゴールド・ドラゴン〕が乱入して街や港が大変な事になったんですよ?
・・・・・・・・・しかも・・・その大半はリナさんの呪文で・・・・・・・・・」

「大丈夫!あたしなら母さんより被害は少なくできるわ!」

「・・・・・・戦闘を前提にして言わないで欲しいんですけど・・・・・・・・・」

あたしが胸をそらして自慢げに言ったセリフに、おばさんが頭を抱えた。








見送る人々。ざわめく声。
紙テープが舞いちり、ところどころで小さな花火が上がる。
数年に一度行われる出港式。
それはさながら祭りのようだった。

「くれぐれも被害は出すなよ。船が全壊すると、新調しなくちゃならんからな。費用も馬鹿にできん」

出港式で国王であるおじさんが、あたしに声をかけてきた。

「・・・ゼルおじさん。あたしや母さんをどんな目で見てるわけ?」

「こんな目だ」

おじさんはじと目であたしを見据えてそういった。

「おじさんってば・・・・・・きつい・・・・・・」

ため息をつき、あたしがそういう。

「はっはっは。セイルーンへ来るたびに爆発と騒動を巻き起こす人間に注意するのは当然だ」

「・・・いぢわるっ!」

ずずいっとつめよるおじさんに一言言って、あたしはきびすを返した。

「よい航海を」

「おじさんたちこそ、幸運を祈るわ」

顔だけ振り向いて、あたしは手を振った。












あとがき

エ:お久しぶりでございます。最近、キーボードの調子が悪く、投稿が難しい状況となっておりました。
  これはいかん!と、中古のキーボードを買い込み打っているしだいでございます。

ごぎゅっ。

L:久々にエセ物書きを沈黙させてみたりでございます。
  しっかしエーナのヤツ・・・・・・ネタがないもんだから本編をこの第三部で終わらせようなんてするとは・・・・・・
  けしからんっ!
  ・・・まあ、最近新しいネタを思いついたらしいからよしとするけど。
  それでは皆さん、またお会いしましょう!


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29128CONCENTRATE〜集う〜第三幕エーナ E-mail 2004/1/22 17:26:34
記事番号29072へのコメント




あなたがいないと言うのならば。
        私にはこの世界は不要なもの。



CONCENTRATE〜集う〜
              第三幕


・・・ざざぁぁん・・・・・・ざっぱぁぁ・・・ん・・・

広い海原。
水平線は空と海とを分かち、二つの青が穏やかに流れている。

「う〜み〜は〜ひろい〜な〜おおき〜い〜な〜
つ〜き〜は〜のぼる〜し〜日はし〜ず〜む〜♪」

あたしは海を眺めながらどっかの異世界の歌を口ずさんだ。

「・・・ルキさん」

「ん?何、フィリア?」

ひくひくとこめかみを震わせているフィリアが後ろから声をかけてきた。
あたしは普通に彼女のほうを見るが、さらにフィリアはほほを引きつらせ――

「この状況で歌っている場合ですかぁっ!!
ゼロスはいつの間にか消えてしまったし、皆さん嵐で避難しちゃって残っているのは私たち二人だけなんですよっ!?」

・・・ざざぁぁん・・・・・・ざぁぁ・・・ん・・・

・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・。

「・・・で?」

へーぜんと言い放ったあたしの言葉に、フィリアはふらりとよろめく。

「フィリア、船酔い?それとも日射病?」

「違いますっ!!私たちは遭難してるんですよ!?どうしてそう平然としていられるんですか!!
嵐で食料は根こそぎ波にさらわれ、帆は壊れ、今いる場所も分からない状態で・・・」

「してないわよ。遭難」

はたはたと手を振るあたしに、フィリアのセリフが停止する。

「今この船を流している海流はかなり速くってね。
折れたマストやらなんやらを修理しなくても目的の場所に着いちゃうのよ。
こういう流れで海流に乗って・・・・・・行き着く先は・・・・・・この海域」

ぱらりとあたしは世界地図を取り出し、地図の『両端』に印をうつ。
緯度はほぼ0。経度は・・・眠る竜の中心から東経西経どちらも180と言ったところ・・・すなわち、眠る竜の中心の真裏にあるのだ。
ちなみにゼロスがいないのは、向かう場所が場所のため、いったん別行動をする事になったためだ。

「よ・・・・・・余計ダメじゃないですかぁぁああっ!!」

フィリアが頭をかかえて叫ぶ。

「なんでよ」

「そこは深海竜〔リヴァイアサン〕の群生する海域なんですよ!?
そんなところに行くなんて自殺行為以外の何者でもありませんっ!」

フィリア、そんなに叫んだら喉つぶれるわよー。

・・・と、まあそれはおいといて。

――深海竜〔リヴァイアサン〕とは。
深海に棲む竜の一種。
ちなみに亜種ではなく、水面近く・水中に限って言えばその力は黄金竜に優るとも劣らない。
知能は白竜〔ホワイト・ドラゴン〕あたりと同程度で、言語体系は特殊。
その上生存圏が違いすぎるため、他のドラゴンたちとはほとんど交流を持たなかった。
例外を除き、常に深海に潜んでいるのでその存在はややマイナーな上、結界内での知名度はほぼゼロ。
え?何でって?
そんなの簡単じゃない。大陸棚があるからよ。
深海竜〔リヴァイアサン〕は、もぉ『これでもかっ!』ってくらいの深海をおもな住処とする。
つまり、海溝など以外ではある場所を除いてめったにお目にかからないものなのである。
当然、結界の内部にはそんな深い場所があるはずがない。それゆえに結界の内側に閉じ込められた深海竜〔リヴァイアサン〕もゼロ。
まあ、一匹や二匹、気まぐれで結界を張る前に紛れ込んだかもしれないが・・・深海竜〔リヴァイアサン〕の寿命は他の竜たちと比べてかなり短い1000年前後。まず生きてはいないだろう。
――おっと、ひとつ付け加えねばならないことがある。
面白い事に、深海竜〔リヴァイアサン〕は、魔族と同じように『契約』を結ぶ事があるのだ。
それも、自分より強いと認識した存在のみの限っての事だが。

「大丈夫。話せば分かってもらえるわv」

「あああああっ!
このごに及んでアメリアさんみたいなことを言わないでくださいっ!!
それにあなた深海竜〔リヴァイアサン〕の言語を話せるんですか!?」

「無理。根本的に声帯の形が違うし」

「当たり前ですっ!深海竜〔リヴァイアサン〕の言語はそれ以外のドラゴンにも判別しにくく・・・」

「当然ね。生活環境がものすごく違うんだから。
すさまじい水圧がかかる海中と、一気圧の地上・・・
発生するための声帯や、コミュニケーション方法が違わないほうがおかしいわ。
彼らにとってはイルカのほうが友達かもよ?」

「だったら何故・・・!
それに、この海域に何があるというんですか!?」

「秘奥の神殿」

「その神殿は南西の大陸・・・ここよりはるかに南にあるはずです!」

「それダミー。
・・・・・・まずおかしいと疑いなさいよ。
いくら高位の神官や巫女だからと言って、ただのドラゴンにそんな重要な場所を教えると思う?」

「うっ・・・それは・・・・・・」

「答えはひとつ。そこが本物じゃあないからよ。
もしくは、『表』としてのただの看板ね。
ドラゴンたちに管理されてきた掘っ立て小屋なんかよりも、竜王たちには別の場所でひっそりと存在している神殿のほうが集会所としては扱いやすいはずよ。
それも――事情の知らないものたちがまったく近寄らないように『門番』を立てて」

「ちょ・・・ちょっと待ってください!どうしてそんな事を知ってるんですか!?私ですら知らなかったんですよ!?」

フィリアは目を丸くして、こちらにかををずずいっと近づける。

「ん?それは――まあ――」

言ってあたしはほんの少しうなる。

ここでフィリアに告げられるはずがないのは言わずもがな。
あたしは言うべき言葉を捜し・・・適当な単語を見つける。

「秘密ってことでv」

べし。

フィリアがずっこける。

「・・・ル・・・ルキさん・・・・・・生ごみみたいな事を言わないでください・・・・・・」

ちょっぴり精神的ダメージを負ったフィリアが起き上がった。

「この海域にいる深海竜〔リヴァイアサン〕たちは、おそらく秘奥の神殿にいる存在・・・もしくは存在たちと契約しているわね」

フィリアの言葉を無視し、再びあたしは地図を指差していう。

「だから海面近くに深海竜〔リヴァイアサン〕がうようよいる、なんてことがあるのよね」

「・・・なら・・・気をつけて進まなくてはいけないんですね」

「んーん」

フィリアの言葉にあたしは首を横に振り・・・

ざばぁっ!!

海面が派手な音をたて、船が揺れる。

ドラゴンの頭部の影が、あたしたちの上を覆う。
フィリアの表情が、あきらかに引きつっていた。

「ああ、言い忘れてたけど・・・・・・」

――しゃぎゅおぉっ!!

後ろで深海竜〔リヴァイアサン〕がうなり声を上げる。

「もうその海域に入ってるから」

「はやくいってくださいいいっ!!」

あたしの言葉に、フィリアは本日十数度目の叫び声をあげたのだった。








あとがき

エ:うぐぅっ・・・短い・・・

L:かぜひいてるのに打ち込みするな。寝ろ。と言うか永眠大歓迎。

エ:ひ・・・ひどい・・・

L:いやだってこんなもの誰が書いてもおんなじ・・・いや、他の人のほうがうまく書けるか。

エ:ぐさぁっ!

L:あ、死んだ。
  ・・・まあいっか。
  これであとがきを終わりまーす。それにしても最近エセ物書きあっけないわね・・・


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29129CONCENTRATE〜集う〜第四幕エーナ E-mail 2004/1/22 20:28:00
記事番号29072へのコメント



CONCENTRATE〜集う〜
              第四幕


「うきゃあああああっ!」

「まあまあ。フィリアも落ち着きなさいよ」

紺色の鎌首が、一匹目の声を合図にしたかのように次々とこの船を取り囲んでいた。

「どぉっしてそんなに落ち着いていられるんですかっ!?」

「――ちょっと黙ってて」

フィリアを手で制し――あたしは取り囲んでいる深海竜〔リヴァイアサン〕たちのうち、一番の年長らしい深海竜〔リヴァイアサン〕に向き直る。

「シェル・ギル・カサザム・ロウク・ゲルス」

――しゃぎゅぅっ!?

あたしの発した言葉に、あきらかに驚愕の声を上げる深海竜〔リヴァイアサン〕。

「カサザム・ロウク・ゲルス。
クレイ・ウ・ザラルセ・イシェム・クロワ。
――ウラバザード」

『――!!』

深海竜〔リヴァイアサン〕たちがそわそわと騒ぎだす。

「あの・・・なんか意思の疎通ができてるみたいですが・・・なんて言ったんです?」

「ああ、『ウラバザードに会わなきゃいけないからここを通して欲しい』って言ったのよ。
ちなみに今のはかなり古代の言語で深海竜〔リヴァイアサン〕の言葉を人間用に簡略化したものよ。
たとえて言えば、人間の言葉を覚えたてのドラゴンがかたことでしゃべってるみたいな感じね。
そこそこしか意味は通じないけど日常会話くらいはこれで十分。」

少し落ち着いたらしく、耳元でフィリアが訪ねてきた。

『シンデンノ、モノニ、キイテ、ミヨウ。ニンゲント、ごぉるど、どらごんヨ。
ナマエ、ナント、イウ?』

かなり聞き取りづらくはあったが・・・それは確かに人間の言語であった。

「あたしはルキ。こっちはフィリア」

『ワカッタ』

その一頭と同時に深海竜〔リヴァイアサン〕たちは海へと潜る。
そして、海の影すらも消え、あたりには波の音だけが響く静寂に包まれた。

「・・・なかなか・・・理解の早い族長さんでよかったわね」

「ぞ・・・ぞくちょうっ!?」

「あったりまえよ。
そもそも深海竜〔リヴァイアサン〕は住んでる場所が場所だけに、人間の言葉を覚える必要なんてないんだから。
それを技能として、かたこととはいえ言葉を習得していると言う事は族長以外のなんだって言うのよ。
あの深海竜〔リヴァイアサン〕は軽く700歳は越えてたわねー」

ばたん。

あらま。フィリアが倒れちゃったわね。
これしきの事で倒れるとは・・・根性がない。
まあ、寝かせておいてあげますか。

「それにしても――」

ふう。とあたしはため息をつく。

「何でついてきちゃったのよ。ゼロス。
あたしは別行動をしろって言ったはずなんだけどね」

ちらりと虚空に目をやると、そこに肩をすくめるおかっぱ神官が現れた。

「そういわないでくださいよ。僕だって秘奥の神殿には興味がありますし」

「・・・ったく・・・人がせっかく巻き込まれないようにしてやったっていうのに・・・・・・」

「・・・?
何か言いましたか?」

首をかしげるゼロス。

「いーえ。別に」

あたしは、ゼロスにそっけなく言ってやった。









日が沈み、紅い満月が上る。
そしてその輝きを乱反射して輝く海。
その中で、深海に住まう竜は一頭だけその頭を持ち上げていた。

「あらまあ・・・族長さんじゃない」

今、ゼロスは精神世界面〔アストラル・サイド〕に隠れ、フィリアは倒れたまま。今ここにいるのはあたしだけ。

『ヒルマノ、コタエ。
トビラヲ、サガス。ミツケタラ、ナカニ、ハイッテモ、イイ。』

族長が口を開き、あたしにそういった。

「トビラ・・・神殿の扉ね?」

『ソウダ』

「なら話は早――ん?」

違和感。・・・風?
違う。大気は動いてはいない。
動いているのは・・・まさか。

「!?」

焦点はどこ!?この近くのはず・・・!

あたしはあわてて周りを見回す。
それに深海竜〔リヴァイアサン〕の族長はいぶかしげ・・・

『ドウシタ?ニンゲンノ、ム――』

「海中へ!」

『ナニヲ、イッテ・・・?』

「・・・っち」

状況が飲み込めていないらしい族長は動かない。
あたしは舌打ちをして、あたしの力をもって壁を作る。

――ごぅっ!

壁を展開すると同時に爆発が壁にそって散った。

「――あら、あら、あら・・・防いだの?器用なコねぇ・・・」

赤い光の中に、浮かび上がるシルエット。
逆行でよく見えないが、どうやら女性のようだ。
そして気配は、黄金竜〔ゴールド・ドラゴン〕のもの。
あたしは始めて・・・形のあるものに恐怖を感じた。
全ての敵。在ってはならないもの。あたしの『大罪』の集大成・・・!

「あんたもずいぶん器用ね。こんな事『普通』の人間や『普通』の精神生命体、『普通』のドラゴンにできるわけがないわ」

あたしの口からは、意外にも普通の声音で言葉が出てきた。

「・・・ふふふ・・・そうねぇ。あなた『も』普通じゃないという事かしら」

あたしの内心の気持ちに気付いたかどうか走らないが、女性は楽しげに笑う。

「でも困ったわぁ・・・
あなた、邪魔だからフィリアってコと深海竜〔リヴァイアサン〕の族長と一緒に殺しちゃおうと思ったんだけどね。
意外に強いみたいねぇ・・・?」

「とーぜんよ!
あたしの名前はルキ=ファー=ガブリエフ。魔を滅せしもの〔デモン・スレイヤー〕という二つ名を受け継いでるんだから強いに決まってるじゃないの!」

「魔を滅せしもの〔デモン・スレイヤー〕・・・?
ふふ、うふふふふ・・・!
邪魔ね。邪魔。あなたは邪魔。嫌いよ。あなたも。うふふふふ・・・!
竜を滅せしもの〔ドラゴン・スレイヤー〕、あいつを出して。ゼロス、ゼロスよ。
獣神官〔プリースト〕ゼロス・・・・・
あの竜〔ヒト〕を殺した、あいつよ、あいつ・・・!」

憎悪と、敵意と、殺気にみなぎった気配。
こいつ・・・すでに正気じゃない・・・!

「壊す、滅ぼす。うふふふふふ・・・
イラナイの。ゼロスを滅ぼして、世界を壊す。
みんな、消すの。あたしが、みんな。
あなたも似た二つ名。だから嫌い。憎い。全部いらない・・・!」

「・・・族長さん。竜王に伝えて。
『あんたたちのお膝元で暴れてるやつがいる。ただドラゴンが暴れてるだけと思ってるんなら大間違い!急いで対処しないと『ロン』がくる』
・・・ってね」

『ダガ・・・』

「ぐずぐずしてる暇はないのよ!
もしあんたが呼ばないって言うのなら、少し乱暴な手で『扉を蹴破る』わよ!」

『・・・シカシ!ワレラノ、ケイヤクシャノ、コトバハ、ゼッタイ!』

「仕方ない――」

漆黒の闇より深い虚無が、翼を形作る。
それは触手となり、虚空のある一点へと突き進み――

ごぁっ!

光があふれる。
あたしは虚無で扉をこじ開けようとしたのだから、当然あたしのものではない。

「あんたたちだけで奥座敷に引っ込んでるんじゃあないわよっ!!
自分の眷属の管理くらいしなさいよね!能無しどもっ!」

扉が開き、あふれる光と共にその巨躯が現れる。
紅い、紅い、大きなドラゴン。

――るぅぉぉぉおお・・・っ!

猛るように、怒るように、そのドラゴンは吼えた。
だけどあたしは知っている。
これが仮面だという事を。虚勢だという事を。無知による愚かな行為だと。


そう。こいつが――



火竜王〔フレア・ドラゴン〕ウラバザード。









あとがき

エ:よっしようやく敵キャラ出現!

L:あんた・・・夕方ごろにアップしたばっかりよね?どうしてこんなに差があるんだか・・・・・・

エ:その場の気分とノリ。風邪ひいてる鬱憤晴らしとも翻訳可。

L:・・・別にいいけど。あたしが目立ってるし。
  そういえば、深海竜〔リヴァイアサン〕の族長って名無し?

エ:ええ。権兵衛さんです。ちなみに作中の『ロン』・・・つづりは『R・O・N』

L:うわめっちゃ分かりやす。いいの?こんなんで。

エ:これは一種の隠語みたいなものです。
  普通はその名すら知りませんからそれで十分。
  でも、ドラゴンの高位の巫女や神官あたりは知っているということで。
  間違った知識なんですけどね。それ。

L:隠れてないのに隠れキャラって感じかしら?

エ:そんな感じです。皆さん、分かりますよね?
  それでは、またお会いしましょう!


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29164CONCENTRATE〜集う〜第五幕エーナ E-mail 2004/1/24 21:51:30
記事番号29072へのコメント



「あらら?これはちょっと厄介ね・・・
出直してこなきゃ・・・・・・まだ、力が足りないもの・・・・・・」

ウラバザードの出現にくすくすと笑い、月に映る影が消えた。

「――『まだ』――か・・・
あれ以上に力を手に入れる・・・?
・・・・・・・・・・・・・・・ちっ・・・・・・・・・」

ルキは目を伏せ、舌打ちをする。
その心情は、本人以外誰にも分からない。







CONCENTRATE〜集う〜
              第五幕







秘奥の神殿の内部。
異空間に作られたそこは、大理石のように見える壁と床によって囲まれた奇妙な空間だった。
あたしやゼロスはともかく、フィリアなんかは一発で道に迷うだろう。
通された部屋(と、定義してもいいのかどうかは分からないが)は応接間と言った感じで、シンプルなテーブルとイスといやみにならない程度の家具が置かれたところであった。
とりあえず、フィリアを据え置かれていたソファに寝かせたが、フィリアが起きるまでの沈黙がなんとも痛かった。
深紅の長い髪に、黒い瞳。
竜の姿から20台半ばぐらいの男性の姿になったウラバザードは少し困ったような表情を浮かべていた。
何しろゼロスは火竜王〔フレア・ロード〕を前にして微動だにすらしないし、その火竜王〔フレア・ロード〕もあたしとゼロス、そしてフィリアをちらちらと見るだけで口を開こうとしない。

「ウ、ウラ、ウラっ・・・ウラバ・・・っ!?」

起き抜けであたしはこいつがウラバザードだと言うと、フィリアはぷるぷると震える指先で彼を指し、口を金魚のようにぱくぱくさせる。

「はいフィリア。水」

コップで差し出された一杯の水を飲み下し、再び倒れそうになったフィリアが落ち着きを取り戻す。

ぜーはーぜーはーぜーはー。

「で・・・ここは・・・?」

「秘奥の神殿。そこら辺に神族がうじゃうじゃ隠れてるんじゃない?」

フィリアの問いに内心ガッツポーズをとりながらけろりと答える。

「・・・む・・・否定はせん。しかしここは神族の絶対の領域。汝らはそこに来たのだ。それくらいは甘受してもらおう」

「はぁ・・・『甘受してもらおう』ってねぇ・・・あたしはクリスマスに招待状を贈ったし、ちゃんとおまけもつけた。
なのにあんた、それはないんじゃない?」

呆れたような目つきでウラバザードを見やると、ひくりっ。と、彼の表情が凍りつく。

「しょ・・・しょうたいぢょう・・・?
まさか・・・御主、まさかフルネームを『ルキ=ファー=ガブリエフ』と言うのでなかろうな・・・?」

「ぴんぽぉん♪」

いささか震える声で言うウラバザードに、あたしが言う。

「まっ、ま・・・ま・・・まさか・・・『ロン』と知り合いだとか・・・?」

「本人目の前にして知り合いも何も無いでしょ」

「・・・・・・!!」

「二人とも、あたしこいつと話があるから席はずしてくれる?」

「わ・・・分かりました」

ゼロスは無言で、フィリアはそわそわしながら席を立つ。

「ああ・・・連れに手を出されちゃたまんないし――アシュタロス」

「はいはーい!呼ばれてとびでてじゃじゃじゃじゃぁんっ!」

ぽんっ!と言う効果音と共に、空気をぶち壊しつつアシュタロスが出現した。

「くだらない一発ギャグはおいておこーね。アシュ」

「みゅう・・・ウケませんでした?」

「はいとっとと行く!」

しっしっ、とアシュタロスを追い出す。
フィリアは驚いていたようだが、アシュタロスと一緒におとなしく部屋を出た。ゼロスも無言でそれについてゆく。

――ぱたん。

ドアが閉じるのを音で確認した後、あたしはウラバザードを見据える。

「・・・で。あの神託はどういうつもりかしら?ウラバザード」

「・・・あれは未来から贈られてきたメッセージ。それ以上でも以下でもない。・・・ただ」

いったんウラバザードはそこで言葉を区切る。
そして、意を決したかのように口を開き・・・

「ただ・・・あれには、抜けている部分がある」

「・・・ふぅん?」

あたしは眉をぴくりと跳ね上げる。
ウラバザードは目を伏せ――

「『闇よりもなお昏きもの 夜よりもなお深きもの
歩み寄るは中心
祈りも 願いも 届けられなかった者
復活するはただひとつ残りし黒き翼 始まりはあれど終わってはおらぬ者
彼の者らはそこに在り 凍りついた全てを飲み込まんとす
そして三枚の虚無の翼の扉は開かれ 王の御許に 真実の願いはかなえられん』
――これが――すべて・・・」

ウラバザードの言葉に、あたしは顔をしかめる。

「あなたは・・・これをかなえるためにここへ来たのか・・・?
魔王の中の魔王よ・・・」

「この際はっきり言っておくけど・・・・・・
この神託はあたしにとってはかなり重要度の高いものよ。
・・・かなり気に入らない内容ね・・・」

「え・・・!?」

「・・・その前に、あんたたちは勘違いをしてる。
混沌は光と闇、有と無、陰と陽、昼と夜、生と死、肉体と魂・・・それら全てが生まれ、そして消える場所。
魔を創ったのがあたしなら、神を創ったのは誰だと思ってるわけ?」

「それは・・・」

「あたしが言うのもなんだけど、混沌って言うと魔のイメージがあるけどね、全部が全部まぜこぜになった不条理のかたまりよ。
そのかたまりの欠片を人の器に入れて、今あんたの目の前にいる。
まさか・・・それを否定する、なんていわないでしょうね?」

「!」

・・・やっと理解したようだ。あたしが、全ての根源だと。

「まあ、それはこの際おいておきましょ。
それから、あたしがここに来たのはね、どうしてだと思う?」

にぃっと子悪魔の笑みを浮かべつつ、あたしはウラバザードに言った。

ひききっ!と、今までにないほどウラバザードの表情が引きつり・・・


その後、あたしが何をやったかは言うまでもない。









先ほどの部屋の形をまるきり正反対にしたような場所。
イスも、ソファも、テーブルも、小さな棚も、花瓶にいけたはなるらも鏡に映したように瓜二つ。
ドアは先ほどの部屋とつながるものがひとつだけ。
精神世界面〔アストラル・サイド〕に近いので、空間に干渉する術を持つものならば、この秘奥の神殿のどこへでもいけるだろう。
それは裏を返せばその術を持たない存在を閉じ込める事ができると言う事だ。
ここは神族の巣窟。ゼロスが何らかの形で動きを封じられれば、当然フィリアも同じこととなる。
それを避けるため、ルキはアシュタロスを二人のそばにつけさせた。

「あ、あの・・・始めまして。フィリア=ウル=コプトと申します。
アシュタロスさん・・・で、よろしいんですよね?」

おずおずとフィリアがアシュタロスに問いかける。

「ええ。あたしの名前はアシュタロスっていいます。
エ・・・ルキさんとかあたしの同僚はアシュ、って愛称でたいていは呼ぶんです。
けど、好きなように呼んでもらってもかまいませんわ。
あのね、あのね、あなたのこと・・・フィリアちゃんって呼んでもいいですか?」

「あ、はい!ぜひそう呼んでください!
そう呼んでくれた友達が何人かいたんですけど・・・・・・」

「・・・いた・・・って言ったら、今はどうしてるんです?」

「・・・・・・それは・・・・・・・・・二十年ほど前に・・・・・・・・・火竜王ゆかりのものは私以外全員・・・」

「あ――そう、ですか。悪い事聞いちゃいましたね」

アシュタロスはばつの悪そうな表情をする。

数百億年前、彼女は他の二人と共に悪魔を総括する三大悪魔と恐れられていた。
しかし、身内の中では結構楽しく暮らしていたのだ。
友もいた。仲間もいた。家族同然の存在もいた。
だけど、彼ら、彼女らは戦争で、人間によって、あるいはそれ以外の理由でことごとく死んでしまったのだ。
残ったのは、自らを創りだした王と、同僚の二人だけ。
いつだったろうか。自分から他人へのコミュニケーションを極力絶ってしまったのは。心のうちを見せなくなったのは。
自分と、他人のあいだに壁を作ったのは。
怖かった。失う事が。
それでは前へ進めないとはわかってもいた。
だけど、わざわざ色々な世界に行って友人を作る気にもなれなかった。
王は、いいきっかけを与えてくれた。
前を向いてみよう。痛くて、傷口から自分の全てが流れ出てしまったとしても。
そして感謝しよう。自分に色々なものを与えてくれた王に。

「いえ。今は結構楽しく暮らしてるんで」

「今は何をやってるんですか?」

「骨董を主に扱っている小さな店を北東の大陸の辺境で細々と営んでいます。
ああ、モーニングスターも扱ってるんですよ。
えっと・・・ところで・・・・・・」

「なんです?」

「あなたは・・・魔族の方・・・ですか?」

「あたしですか?あたしは魔族じゃあないですね。それに神族でもありません。
そこのゼロスさんのかなり上の上司に当たるんです。もっとも、部署が違うんですけど。
あたしは実働するんじゃなくて、秘書みたいなものなんですけどね」

「そうなんですか?結構お偉いさんなんですね・・・・・・」

「と言っても、同じくらいの存在が後三人もいますし」


たわいもない事。
些細なこと。
世間話。
何が好きか、何が楽しかったか。

小さな、小さな。
それでいて幸せな時間。



――女性二人の話を理由もなく邪魔するほど、僕もやぼではありませんしね――

ゼロスは心の中でつぶやきつつ、沈黙を保っていた。







まだ。

始まってはいない。

王の王。
闇の闇。
夜の夜。
混沌と虚無。


全てを飲み込め。

扉よ開け。

もう待たない。

壊す。
滅ぼす。

ただ、それだけだから。









あとがき

エ:微妙にアシュのモノローグが入ってたり。

L:言う事はそれだけかぁぁあっ!!
  何!?あたしがウラバザードにお仕置きしたんでしょ!?したはずでしょ!?
  何でそのシーンが入ってないのよっ!!

エ:入れたら無駄に長くなるからやめようかなぁと。
  それではさようならぁ♪

L:にげるなまてこらっ!



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29170CONCENTRATE〜集う〜第六幕エーナ E-mail 2004/1/25 09:16:25
記事番号29072へのコメント



「真っ赤なお月様だぁ・・・」

心地よい夜の風。
ひやりとした大気の流れは澄んだ気分にさせる。

ここ数日姉が留守にしている。
どうも寝付けないので気晴らしで窓を開けて飛び込んできたのは、真紅の月。
まがまがしく、美しく。
それは天にその存在を誇り――中に影を抱いていた。

それは近づいてくる。風を切って。

「・・・誰・・・?」

緑色の髪を持つ7・8歳ほどの少年・・・ヴァルは目の前に舞い降りた影に向かってつぶやいた。

「私はディアナ。始めまして」

「は・・・始めまして」

何か危険なものを感じて、少年は後ずさる。
分からない。こんなに優しい表情をしたヒトなのに。

「終わってはいない。まだ・・・貴方は終わってはいない・・・」

「・・・え・・・?」

すっと手が伸ばされる。
それは優しく額に触れ――


びしり。


魂の奥底で、何かが砕ける。





CONCENTRATE〜集う〜
              第六幕








秘奥の神殿。
とりあえず一回はったおしてきがすんだので、もうひとつ聞いておかなければならないことを尋ねる。

「この一節・・・あんたは心当たりがあるわね?
そしてそれはフィリアに関係していて、あんたはそれを伝えるのをためらった・・・
なぜかしら?」

「それは・・・」

少々ぼろぼろになりつつも、至極まじめな表情でウラバザードは答える。



二十年前。

二つの世界の壁を越えた事件。
それは爪あとをさまざまな形で残していった。

それは火竜王眷属の竜たちをことごとく殺し、黒の世界の神族を滅ぼし、そしてデュグラディグドゥとヴォルフィードに及んでいた。



「しかし、この一説に当てはまるはずの古代竜〔エンシェント・ドラゴン〕はすでに異界の神・・・ヴォルフィードによって転生を果たしているはず。そしてフィリア=ウル=コプトが庇護している・・・」

「・・・まって。転生は混沌の海でしか行えないはずよ。
記憶の初期化、性格の純化・・・混沌でもできるのはその二つだけ。形質は変わる事はない・・・
だから人間は人間にしか生まれ変わる事はないし、もし何らかの意図があったとしても何かしらに影響は残るはず。
きっかけがあればその形質は簡単に引き出せる。
力を削がれて弱った神ができる事と言えば・・・封印だけ。
・・・って・・・まさか!」

あたしはあわてて隣の部屋へと駆け込む。

「――フィリアっ!あんたの店ってどこ!?今すぐそこに向かうわよ!」

「ヘ?・・・あ・・・なんです?そんなにあわてて・・・」

何を話していたのかは知らないが、おしゃべりに花をさかせていた二人がきょとんとしてあたしのほうを見る。

「あのヤロォ神託にある古代竜〔エンシェント・ドラゴン〕に関する一説を隠してたのよ!」

「ヴァルが!?一体どういうことなんですか!?」

「話しは後!アシュ、空間移動するわよ!」

「は、はいっ!!」

急に話をふられ、わたわたとあわてるアシュタロス。
彼女はぱちんと指を鳴らし――

ぐにゃりと風景が歪む。
その風景は黒い絵の具を流したかのように漆黒へと変わり、そしてその姿が形を持った。
真紅の月。
林の中に、まばらにある家々。

「フィリア、あんたの家は・・・」

言いかけて。
あたしは力の流れを感じた。


――っゴゥン!


爆音。

夜の闇に赤い閃光が散り、火薬の香りが漂う。
フィリアの表情が青ざめていくのが分かる。

「――遅かった・・・!?」

言いつつも、あたしは爆発の方向へと飛んだ。








「終わってはいない。まだ・・・貴方は終わってはいない・・・」

「・・・え・・・?」

すっと手が伸ばされる。
それは優しく額に触れ――


びしり。


魂の奥底で、何かが砕ける。

「っ・・・ぁぁあああぁああああぁぁああっ!?」


絶叫。


熱い。熱い、熱い!

溶ける。

溶けて、はがれて、消えてゆく。

そして奥底から噴出すのは――

「・・・ッは・・・はは・・・」

とめどなく流れる悲しみと、消える事なき絶望と、凍りついた憎悪。



まだ終わってはいない。

終わらせるのならば、自分の手で行わなければならない。




復活するはただひとつ残りし黒き翼 始まりはあれど終わってはおらぬ者










――っゴゥン!

「ヴァル様を放せっ!」

手榴弾を両手に、すごむのはジラス。

「その通りだっ!」

備品のモーニングスター(一番軽いの)をぷるぷると震えながらも両手で持つのはグラボス。


「――暴爆呪〔ブラスト・ボム〕っ!!」

――ごぐぁああっ!!

先ほどの手榴弾とは比べ物にならないほどすさまじい熱量がディアナに向かって放たれる。

「ルキさんっ!止めて下さい!ヴァルが・・・!」

「今のはただの牽制よ。これであいつが吹っ飛ぶなんて万に一つも思っちゃいないわ」

ふわりとあたしたち四人は地に降りる。
小さなヴァルを抱きかかえ、ディアナは慈母のような表情で微笑んでいた。

「始めまして。私はディアナ」

「ヴァルを離してっ!!」

フィリアが悲痛に叫ぶ。

そのとき。

びくんっ!

ヴァルの体が、大きく痙攣する。

「ッは・・・」

口から漏れるささやかな吐息。
ふせられていた瞳が開かれ・・・

「・・・はは・・・」

その口角が、にぃっと持ち上がる。

「・・・ヴァル・・・?」

ふわりとヴァルはディアナの手を離れ、地に降りる。

「・・・っぉぁあああああああっ!」

ひたいには、魔の眷属となった証である角。
そして出現する黒い翼。それは少年にはあまりにも不釣合いな大きさで。

「・・・まずい」

その言葉は誰のものだったか。
いや、誰でもいい。皆心境は同じであっただろう。

その翼は少年の姿を包み込み、そして開かれる。

その中には・・・

「ヴァルガーヴ・・・」

フィリアの呆然とした呟きを、その場にいる全員が聞きとっていた。









あとがき

エ:よし。キャラ全員そろったぞっ!!

L:ヴァルガーヴ出現っ!?あんたこの事態収拾できるわけっ!?

エ:できなかったら書いてません。それよりL様、パラレルワールドに飛び込んでいただいていいですか?

L:・・・は?何それ。

エ:いえ、ネタが出来上がったものですから。
  パラレルワールドは本編第四部になる予定。
  ちなみに無駄に長いです。

L:そういう話が出てくるってことは・・・この第三部はラストスパートに入ったとみなしてもいいわけね?

エ:まあそうです。
  うふふふふ・・・・・・

ごりゅげしゃぁっ!!

L:気色の悪い笑い方なんぞするなっ!!
  帰れお前はっ!

エ:いえ。打ち込んでるのは自宅からなんで。

L:・・・むぅっ・・・・・・血を垂れ流しながら平然とセリフを吐くとは・・・さてはゾンビっ!?

エ:嫌ですよ。そんな気持ち悪いのは。
  そーいう訳で、あとがきを終わりま〜す。


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29174CONCENTRATE〜集う〜第七幕エーナ E-mail 2004/1/25 15:12:49
記事番号29072へのコメント




CONCENTRATE〜集う〜
              第七幕


「何で・・・あなたがここに・・・・・・」

「強制的に眠らせれていたのをたたき起こされた・・・それだけさ。
新顔が三人・・・ディアナと・・・そっちの二人は誰だ?」

震えるフィリアにけろりと答えるヴァルガーヴ。
彼はあたしとアシュのほうを見て言った。

『ヴァルガーヴさまっ!』

「――アシュタロスです。始めまして。短い付き合いになるでしょうけどよろしく」

「ルキよ。ルキ=ファー=ガブリエフ」

ジラス・グラボスが声を重ねて叫ぶが、あたしとアシュタロスは無視して自分の名を名乗った。

「ガブリエフ?ガウリイ=ガブリエフの娘か?」

意外そうな表情をしてヴァルガーヴがあたしに尋ねてくる。

「そ。ついでに言うとリナ=インバースの娘でもあるわ」

「・・・くっくくくく・・・実に・・・実に数奇な運命じゃあないか。
そう思わないか?ゼロス」

「まさかあなたに再び会うことになるとは思いませんでしたよ。
ヴァルガーヴさん」

楽しげに言うヴァルガーヴに対し、ゼロスは不機嫌オーラ満々だ。
過去に何らかの確執があったらしい。
あたしは知らないけど。

「まだ・・・まだよ。ヴァルガーヴ。準備は万端ではないわ・・・・・・協力してくれるかしら・・・?」

「・・・オレを目覚めさせてくれた事には礼を言おう。
だが、何故あんたに従わなければならない?」

「私は全てを壊せればそれでいいの。それ以外に興味はないわ・・・」

「・・・ほう?オレと同じ目的だと言うのか。面白い」

「や・・・止めて下さいっ!
もうこんな・・・こんなこと・・・・・・やってはいけないんです・・・・・・
お願い・・・止めて下さい・・・」

フィリアが悲痛に叫ぶが、ヴァルガーヴとディアナはちらりとそちらを見るだけで興味をなくした。

「口で言って止まるようなたまじゃないと思うけどね。あたしは」

剣を抜き、その切っ先をヴァルガーヴたちに向ける。

「分かってるじゃないか」

ぞくっ!

背中に走るすさまじい悪寒。

――ごぐぁあんっ!!

問答無用で放たれた爆撃。
あたしたちの前にはいつの間にかアシュタロスが立ちふさがって、その攻撃は防がれていた。

「――ほぉ?」

土ぼこりの向こうで感嘆するような声。
炎と風によって巻き起こされた土ぼこりが収まったそのときには・・・

「いない・・・逃げられたみたいね」

今の爆発・・・直撃すれば再生するまもなく肉体が吹っ飛んでたわね・・・・・・

あたしは舌打ちをしつつ、剣をおさめた。










力の流れ。

それは世界中から集う。

その終点は・・・

「世界の中心、シャブラニグドゥとスィーフィードが戦った場所か・・・・・・ここでなにをするつもりだ?」

海の中にはいまだゲートの残骸が沈んでいる。
足の下を見つつ、ヴァルガーヴが言った。

「扉よ。ここは」

「・・・ゲート?どことつなぐんだ?」

「それは――混沌の海よ」

「荒れ狂う力の固まり・・・全てを飲み込みかねない王の中の王・・・
それを召喚するのか!?」

「まあね。
闇よりもなお昏きもの
夜よりもなお深きもの
魔族たちの真の王
金色の魔王
混沌の海にたゆたいしもの・・・」

「・・・ん・・・?」

違和感。
ヴォルフィードとデュグラディグドゥと交わった事で理解した知識は、分離と同時に消え去った。
今ディアナが言った事で、何かが間違っているとでも言うのか?
だが・・・自分が聞いた伝承はそれで正しかったはずだ。

「どうかした?」

「いや・・・なんでもない。
だが、ゲートを開くには鍵が必要なはずだ。それはどうするつもりだ?」

「感じない?この満ち満ちてゆく力を。
これは金色の力・・・三年ほど前に結界の内部からあふれ出したの。
それはこの星中に広がっていったわ。
この力をかき集めればかぎとして成すことができる。
後二・三日もすれば扉を開くには十分な量の力が集まるわ。
けど、ちょっと問題があってね・・・・・・」

ぱちんとディアナが指を鳴らすと、海面下から漆黒の球体・・・およそ直径20メートルくらいのものが浮き上がってきた。

「これは残骸をかき集めて作ったゲートを開く装置よ。
ただ、エネルギーを組み込むには時間がかかるの。そのあいだエネルギーを注ぎ込む術者は無防備になるからね・・・
あなたにここへ来た邪魔者を追い払って欲しいのよ。お嫌かしら?」

「・・・まあいいだろう」

「それじゃあ早速、あたしはこの装置に力を組み込み始めさせてもらうわよ・・・」

ディアナが球体に触れた。

力が集まり始める。


さあ。

これで終わりにしよう。









翌日。
フィリアは泣き腫らした目で出て行きたくないといい、あたしたちは数日ここにとどまることとなった。
あたしとしては、神託にはフィリアの事はなかったからおいていきたかったのだが・・・本人が行くと言っているのだ。覚悟ができているのならかまわないだろう。

「――いいんですか?一刻も早く世界の中心へ向かわなくて・・・・・・」

フィリアの店の番をしぶしぶといった感じでやりつつ、同じく店番のあたしに問いかけてくるゼロス。

「かまわないわ。来る時は来るのよ。
それに・・・力が世界の中心に集まっているのが分かるわ・・・そして、まだそれの量が足らない事も。
二日は余裕があるはずよ。
そのあいだ、鋭気を養わなくちゃね。
あ、そーだ」

「なんですか?」

「あたしちょっと買い出し行って来るね〜♪お昼過ぎには戻ってくるから店番よろしく!」

「え!?ちょ、ルキさんっ!?」

あたしはその思い付きを実行に移すため、フィリアの店を後にした。









あとがき

エ:いえーい♪後二話か三話で完結予定っ!
  とぉとぉここまで来ちゃいましたっ!

L:はしゃぐな。うるさい。

エ:まぁまぁ。そういわないで。

L:しっかしヴァルもかわいそうよねー。出たとたんヴァルガーヴにタッチ交代。
  ほかに出番ってあるの?

エ:あ・・・ある・・・のかなぁ・・・?いや・・・ないかも。
  と・・・とにかくディアナが全部悪いのっ!

L:・・・まあいいけど。それはそうとディアナって月の女神の名前よね?

エ:はい。紅い満月をバックに登場してきた時に、もう名前はこれしかないっ!・・・と。

L:まてこらっ!初登場時に名称未定っ!?とことん扱いが悪いわね・・・ディアナって・・・

エ:さすがにかわいそうなのでモノローグを入れる予定です。
  ・・・そのモノローグすら短くなる可能盛大。

L:・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・と、とにかくっ!これであとがきを終わりますっ!


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29190Re:L様♪L様♪はるか E-mail 2004/1/26 19:26:00
記事番号29174へのコメント

はるか:はるかでごぜぇます元気にしてらっしゃいますか?
リナ:いやそんないきなり分けわかんないふれんどりぃな挨拶されても・・・・・・・。
はるか:私とゆー人間はこんなもんだ。
リナ:こんなもんなのかッ!?
   と、ともあれこんにちはです。
はるか:最近某漫画かってL様出てきてメチャクチャかっこよくて思わず写しちゃったぜぃ。
リナ:で?どうするの?
はるか:もちろん自分で描けるようになるッ!!
リナ:あー。がんばれがんばれ。
はるか:冷たッ!!ま、ともあれ私は熱烈なL様あーんどリナファンです♪
リナ:自称、ね。
はるか:うっ!!そ、そういうことでL様が活躍する、しかもちょっぴりセンチメンタル♪なんで好きです♪
リナ:主語がない。この話は、でしょ。
はるか:そうそう。なんか国語の授業みたい・・・・・・・。
リナ:気にせずに。って、あたしこの物語にはほとんど出てこないんだけど?なんか勝手な二つ名連呼されてるけど。
はるか:うむぅ。そこがちょっと、なんだがリナよかL様のほーが最初に自覚したから♪
リナ:自覚・・・・・・・・・・・・・?
はるか:そぉ。自覚。最初はリナがすきだとは思わなかった。
リナ:おひ・・・・・・・・・・。
はるか:だから。これでもおっけぇ、ってことで♪
リナ:待テオイ・・・・・・・・・。
はるか:あっ!そそそそそろそろ紙面が尽きてきたのでこの辺で〜♪(滝汗)
リナ:紙面があるかぁぁぁぁぁぁぁッ!!そこまで言ったからにはかぁくごしなさいよぉぉぉぉぉぉ??
はるか:そっそいではっ!!(爆走)
リナ:逃がすかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!


                  ――――――走り去って・・・・・幕――――――



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29191Re:L様♪L様♪エーナ E-mail 2004/1/26 19:50:24
記事番号29190へのコメント

エ:あああっ!ありがとうございますぅっ!!

>はるか:はるかでごぜぇます元気にしてらっしゃいますか?

エ:私は元気ですっ!!
  L様はもっと元気ですっ!
  他のキャラは・・・・・・
  ・・・・・・・・・。
  ・・・・・・今は元気でも後で元気なくなるかも・・・(当然L様にどつかれて)

ぴぎゅっ。

L:・・・今かっこの中に余分なセリフが入ってたでしょ。

エ:・・・ぴ・・・ぴこぴこはんまぁでこのダメージ・・・
  ううっ・・・私も元気がなくなるかも・・・・・・

ぎょりゃっ。

L:亡くなれ。勝手に。

エ:・・・L様・・・トゲつきはんまぁっすか・・・それに、字が違――

ごりょめげしゅぃっ!

L:いーのよこれで。

エ:げふぁっ!
  あは。あはははははv
  と・・・とにかくはるかさんありがとうございました・・・・・・
  それではまたお会いできたらいーなと・・・

L:中止は許さんっ!
  書けっ!おらおらっ!

エ:ひーん・・・
  混沌逝き急行列車に乗ったつもりで書かせていただきますぅ・・・
  それではまたお会いしませう・・・

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29203CONCENTRATE〜集う〜第八幕エーナ E-mail 2004/1/28 03:11:01
記事番号29072へのコメント


どどん。

それは、擬音語にするとそんな感じでたたずんでいました。




CONCENTRATE〜集う〜
              第八幕




ルキさんは昼過ぎあたりに言葉どおり帰ってきました。
ですがそのまま厨房を借りると言ってキッチンにこもったまま。
フィリアさんはいまだ自室に閉じこもっていますし(僕としてはそのほうがうれしいんですが)、他の二人(名前忘れちゃいました)も魂が抜けたようで使い物になりません。
ルキさんの部下のアシュタロスさんはフィリアさんの部屋の前から動きそうにありませんし・・・・・・
・・・まあ、つまるところヒマだったわけですね。これが。
そんなこんなで日も暮れて、大き目のランプで明るく照らされたルキさんに呼ばれて来たキッチンには大皿に乗せられた料理の数々。

「・・・なんですか?これ」

「見て分かるでしょ?料理よ。
前に作ったやつは受けが悪かったみたいだからねー。まあ、見た目も味のうちってヤツ?」

僕が内心いぶかしげてルキさんに尋ねると、彼女はこともなげにけろりと答えました。

まあ、確かに四年ほど前にご馳走になったあの料理の数々・・・味は一流でしたが見た目だちょっとあれでしたしね・・・
今僕の前に並んでいる料理の数々は、風変わりなものがたくさん並んではいても、興味をそそられるほどよい香りの漂ってきたり、色合いが美しいものばかり。
ハズレはない。と言う事でしょうか。

「・・・はあ。それで、何故こんなに大量に作る必要があるんですか?」

「景気づけよ景気づけっ!あたしもお腹いっぱい食べるしねっ!
フィリアの食が進まないんなら無理やり口に詰め込ませるくらいの感じでっ!
そろそろ夕飯には時間がちょうどいいはずよ。フィリアを引きずり出してくるから、これちょっと並べておいてね」

「・・・分かりました」

断る理由もありませんし、僕は素直にその言葉に従いました。
皿をテーブルの中央に並べ、ナイフとフォークとスプーンを置きます。
ちょうど置き終わったところに、ルキさんとそれに連れられたフィリアさん。その後ろにアシュタロスさんとミカエルさんとベリアルさんとベルゼバブさん。ついでに残りの二人が次々にダイニングへと入ってきました。

さて、これからどうなる事やら。
僕は、ルキさんの行動を見守る事にしました。









「それじゃあみんな席についてっ!ほらほら、フィリアも!」

あたしがせかすと、ほとんどが席に着く。

「・・・ですが・・・」

「・・・あたしの作った料理に文句があるんならいったらどう・・・?ないんなら席に着くっ!」

「わ・・・わかりましたっ!!」

ちょびっと黒いオーラを漂わせて誠意ある優しい言葉をかけてみると、フィリアも青ざめて喜びながら席に着いた。

「そーそー、ベ・リ・ア・ル・ちゃぁんっ!何かいい――」

「――いい酒ならすでに持参してきてあります。
このような場で私にかける言葉と言えばたいていひとつですから。
ゼフィーリア産250年物の当たり年の赤ワイン、『エターナル』。当時の永遠の女王〔エターナル・クイーン〕が吟味してラベルにこの名をつけることを許した逸品が一本。
エルメキア産の180年物のウィスキー、『フラットダース』。十二本に一本しか作れなかったという話があり、コクとキレが絶妙のフラットな風味を最大限に生かす逸品。これが二本。」

「ををっ!分かってるじゃないのっ!お酒に関しちゃあんたの右に出るものはいないわね〜♪」

ボトルを三本取り出すベリアルに、あたしは小さな拍手を送る。

「それじゃあ、今夜はぱぁっといきましょ、ぱぁっと!」

「・・・ルキさん!世界の危機が迫ってるというのにこんなことをしていて・・・」

「その世界の危機に――泣いて部屋に閉じこもっていたのはどこの誰だったかしら?」

表情を一転させて言ったあたしの言葉に、フィリアはぐっと言葉に詰まる。

「姐さんのことを悪く言う、許さない!」

「そうだ!大体お前20年前の事を知らないからそんな事がいえるんだろう!」

「泣いて悲しむよりも、自分にできる事を探しなさい。フィリア。
もしそれが、かけがえのないものを失う事になる方法だとしても、後悔しないというのなら実行なさい。
そしてためらわないで。
一瞬の判断が未来を決める事がある。わずか一ミリに過ぎない取っ掛かりが未来を見つける鍵となるかもしれない。
それをよく覚えておく事ね」

外野の言葉を無視して、あたしは淡々とそう告げる。
この言葉は、フィリアに対する忠告であり――あたしの絶対なる決意でもある。

未来を恐れるな。
茨の道を進むのにためらうな。
自分の中の大切な何かを贄〔にえ〕にしてでも。

「・・・リナさんにも・・・同じような事を言われました。
そうですよね・・・わかりました。努力してみます」

こわばっていたフィリアの顔が、ほんの少しゆるんだ。

「うん。それでいーのよ。それじゃあいっただっきまーすv」

あたしはナイフとフォークをもち、意気揚々と料理の完全征服に乗り込んだのだった。











――ぱきり。

球体に一点を中心として三本の筋が入る。

それはぎちぎちとうなりながら開きつつ、隙間からヴェールのようなものを幾重にも吐き出した。

「・・・これで仕込みは終わったわ。後は集まったエネルギーを調整するだけ・・・」

ゲートはゆっくりと回転し始める。
ヴェールもふわふわとそれにつられてなびき、翼のようにはためいている。



『闇よりもなお昏きもの 夜よりもなお深きもの
歩み寄るは中心
祈りも 願いも 届けられなかった者
復活するはただひとつ残りし黒き翼 始まりはあれど終わってはおらぬ者
彼の者らはそこに在り 凍りついた全てを飲み込まんとす
そして三枚の虚無の翼の扉は開かれ 王の御許に 真実の願いはかなえられん』

――翼の扉は開かれた。



「ゼファロノス・・・ゼファ・・・・・・」

かつて彼女と彼は誓った。
誓った。
千年、祈った。
千年、願った。
――だが。


『――君に誓おう』

かつて自分が愛した彼。
水竜王眷属の彼。

『ちゃんと君のもとに帰ってくる』

この約束を。誓約を。
交わしたはずだ。胸にそれを絶対と位置づけて。

『だから、君も無事でいてくれ』

離れ離れになった。
たまたま空竜王の眷属のドラゴンたちと連絡を取ろうとしてあの区域から外へ出たのだ。
そして・・・壁が作られた。

祈り続け、願い続け、かなわなかった。

『死んだ!?何故ですか!ミルガズィアさん!』

『結界の中で・・・虐殺が起きたのだ。ディアナ。
竜を滅するもの〔ドラゴン・スレイヤー〕ゼロスの手によって。
・・・ゼファロノスは・・・やつの手によって・・・・・・すまぬ。助けてやれなかった・・・』

『千年・・・千年、待ったのに・・・ここにいる・・・そう、信じて・・・・・・』

あがいた。
探して、探して。
それでも見つからなかった。

そして・・・四年ほど前。
力を感じた。広がる大気のよりも軽く、炎すらも圧倒する強い力を。
他の存在たちは気付いていないようだった。
その力は・・・金色の『力』。
何故だか、それが『そう』だとわかった。

そのとき。

あまりにも心の底に溜まり、澱み、濁っていたものがはじける。

『壊せばいい・・・』

世界は優しくない。
私に何も与えてくれなかった。
戦争も、それを行った神と魔も。
護ってくれなかった竜族も。滅びを望む魔族も・・・・・・

・・・あなたを奪った全てが憎い。

狂っている?
それでもいい。かまわない。

あなたの場所へ。全てを引き連れて私は還る。


「・・・ゼファロノス・・・」

その名を再びつぶやき、彼女は低く哂った。









あとがき

エ:ゼロス一人称初挑戦。見事に玉砕。予定通りディアナのモノローグ編入。わりと長くなったのでいとうれし。

L:エセ物書きたこ殴り挑戦。

ごげしぃっ!

L:見事に成功。予定通り踏み付け開始。わりと楽しかったのでいとうれし。

エ:・・・ごはぅっ・・・そ・・・そりはちょっとお控えいただきたいなー・・・なんて・・・・・・

L:ほぅっ・・・そりはちょっとやめられないなー、なんて。

エ:遊ばないでくださいっ!

L:あ、復活した。
  だってだってぇっ!今回のお話絶対『L様、世界の中心に殴り込みする』だと思ったのにっ!
  戦うのたの字も出てないじゃないっ!きぃぃっ!!

エ:ヒステリーの奥様か・・・あんたは・・・?

L:なんか言った?

エ:いえ何でもないでス。
  とにかく、そのお話は次回やらせて頂きますので。がんばってくださいっ!!(なげやりに)
  それではっ!またお会いしませうっ!


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29213CONCENTRATE〜集う〜第九幕エーナ E-mail 2004/1/28 21:14:46
記事番号29072へのコメント


景気よく夕飯を食べた次の日。
あたしたちは世界の中心へと向かう準備をしていた。

「や、無理でしょそれ。ヴァルガーヴを口で言って説得なんて」

狐とでっかいヤツの言葉を、あたしはあっさりと否定する。

「それにあんたたち足手まとい。ここでおとなしくしてもらったほうがいいわ」

ぎゃあぎゃあわーわー。

「うーん・・・そんなに騒がれてもねぇ・・・
と、ゆーわけで眠り〔スリーピング〕。」

ばたた。

「それじゃあいこーか」

「・・・むごい・・・セリフも名前すらも出てこないうちに・・・・・・」

「なんか言った?ベルゼ」

「・・・いえ・・・なんでもないでス」

あたしが言うとベルゼは視線を知らしてそういった。
んーむ。プレッシャーに弱いヤツ。

「それで・・・どうするんですか?
世界の中心なんて装置がなければそうそういけるものではありませんけど。
それに、行き当たりばったりで戦うのはかなりきついと思いますが」

「転送は彼・・・ベリアルに頼むわ。
その後、アシュ、ベルゼ、ミカエルにそれぞれ結界を張ってもらう。
その内側でディアナとヴァルガーヴを討つ。これで決定」

あたしが言うと、フィリアの顔が曇った。

「まあ・・・ヴァルのことはあたしが何とかしてみるわ。やり方は企業秘密だけど」

フィリアのためだ。あたしが一肌脱いでやろう。

「それじゃあ、行くわよ!」

あたしの声に、全員がうなづいた。






CONCENTRATE〜集う〜
              第九幕






闇よりもなお昏きもの 夜よりもなお深きもの
歩み寄るは中心
祈りも 願いも 届けられなかった者
復活するはただひとつ残りし黒き翼 始まりはあれど終わってはおらぬ者
彼の者らはそこに在り 凍りついた全てを飲み込まんとす
そして三枚の虚無の翼の扉は開かれ 王の御許に 真実の願いはかなえられん


・・・こぉおおぉぉおぉおおおぉ・・・

集う。
力が。
全てを飲み込もうと。
全てを壊そうと。




ざわざわと波紋が広がる海の上。
そこにあたしたちはいた。

「――見えたわ!結界を準備!配置について!」

あたしとゼロスはフィリアの首の辺りにまたがり、前方を確認する。

『――了解』

あたしの声に、ミカエル、アシュ、ベルゼの三人が動いた。

「フィリア、上昇!太陽の方向から突っ込むわ!」

『分かりました!』

風がうなり、がくんと体の角度が変わる。

「オーケー。そのまま急降下!すれ違いざまにレーザーブレスを!」

『はい!』

ぶぉおっ!

重力よりもなお強い力で落ちてゆくあたしのに、風がほほを叩く。

ごしゃあっ!ばしゅしゅっ!

海面すれすれで放たれた閃光は海へとちり、海水を一部蒸発させる。

「へたくそぉっ!当てなさいよフィリアっ!」

急速にヴァルガーヴたちのそばを離れながら、あたしはフィリアに毒ずく。

「ルキさんの計画が台無しじゃないですか。へたくそですねぇっ!」

『何ですってぇえっ!!』

「二人とも。自分たちに向かって重破斬〔ギガ・スレ〕撃って欲しいんなら口で言ってねv」

『・・・ゴメンナサイ』

こめかみに青筋を浮かばせ、にっこりとどす黒いオーラをただよわせて言い放った優しい言葉に、二人は素直に謝った。

「――へっ」

そのやり取りを見て遠くでヴァルガーヴが鼻で笑う。

「重破斬〔ギガ・スレ〕っ!!!」

『のぅおわぁっ!?』

ぼごしゃあっ!

あたしの笑顔の一撃は、ヴァルガーヴの羽の先をほんの少し掠め、海の表面を穿った。

「てめっ・・・なんて無茶しやがるっ!」

言った後、ヴァルガーヴは消えた海水が元に戻っていくのを冷や汗をたらしつつ眺める。

「あたしを笑ったあんたが悪いっ!」

フィリアが旋回し、海面に波を立てながらもとの場所へと戻る。

「・・・おまえ・・・リナ=インバースよりひどいぞ・・・それ・・・・・・」

「褒め言葉として受け取っておくわっ!うふふふふv」

そのセリフにヴァルガーヴを含む三人がはまともに顔を引きつらせたのだった。

「それはともかく、結界を展開!」

三つの光のヴェールが広がり、海水もろとも包み込まれる。

「この結界は破れないわよ?破れるとしたらあたしくらいなもんね!」

胸を張って叫ぶ。

「――おもしれぇっ!」

青白い閃光がヴァルガーヴから放たれ、迫ってくる。

「――へっ」

今度はあたしが鼻で笑う。

「フィリア、そのまま突っ込んで!」

『本気ですかぁっ!?』

「とぉぜんっ!GOGO!」

びしぃっとエネルギー断の方向を指差しつつあたしは意気揚々と声をかける。

『ひえぇぇぇっ・・・』

フィリアはなぜか半泣きになりつつもそのまま突き進む。

「――!?」

ヴァルガーヴのほうはただの牽制のつもりだったのだろう。
あたしたちの意図がつかめず驚愕する。

そして――

ぱんっ!

光がはじけ、千切れ飛んで消える。

「・・・ほぉ・・・!」

『嘘っ!?』

ゼロスは当然と言った表情で微笑み、ヴァルガーヴは感嘆し、フィリアが驚愕する。
もちろん、今のはあたしがやったのだ。

「さぁて・・・」

あたしはヴァルガーヴの向こうにいるディアナと、黒い翼のようなヴェールを回転させている何かに視線を向ける。
どうやら、あの黒い回転する物体が力の収束点らしい。

ヴァルガーヴよりあっちのほうが厄介か・・・

「ぉおっ!」

先ほどとは比べ物にならないほど大きく、大量の閃光。

『ひええええっ!?』

「小さい小さいっ!」

あたしは漆黒の小さなプラズマ球を生み出し、迎撃する。

「そんな小さいもので・・・!?」

ヴァルガーヴが目を見開く。

――ごぅん。

・・・へ?

空気が震える奇妙な感覚に、あたしは首をかしげる。

「・・・まさか」

漆黒のそれを見やると・・・
バリバリと黒い雷を放電し、ヴェールがぴんと伸び、ファンのように回転が速くなってゆく。
その中心から光が漏れ・・・

「・・・開いたか。予定よりずいぶんと早いな・・・」

・・・どくん。

「――っ!」







――ごぅん!

ゲートの奥から来る衝撃波。
ぴくりとあたしの『身体』が震える。

「さあ、全てを飲み込め!混沌の海よ!」

ディアナが叫ぶ。

扉が大きく開く。
向こう側が見える。

だめ、だ。
広がらせては・・・ダメ・・・



結界の外の波が止まる。

吹きゆく風が凍りつく。






時よ、停まれ。








――混沌の海〔あたし〕はまだ、夢の中にいる。










あとがき

エ:をうっ!ようやくここまでっ!くくぅっ!お母さんは嬉し・・・いや、なんでもないです・・・・・・

L:やーいやーい小娘小娘〜♪

エ:・・・・・・・・・・・・。(ならあんたはバーさんだ。)

ごぎょぅっ!

L:ふっ・・・年長者は敬うものよ。

エ:わ・・・分かりました・・・・・・
  それはともかく・・・次のお話で第三部は終了予定。

L:一応年代は一部→二部→三部ってなってるのよね?番外とか外伝とかはどこに入るの?

エ:それもそうですね・・・ちょっと整理しましょうか。
  今この時点で一番古い年代のものは投稿した『誰かこんなこと思いませんでした?』ですね。
  当時ルキは5歳。
  二番目が第一部。ルキが8〜9歳のときです。
  三番目が第二部。ルキが14歳の時ですね。
  四番目がクリスマスのお話。ルキはこのとき16歳。
  五番目がEncounter〜邂逅〜。ルキは17歳(+半年)。
  そして一番新しい年代がこの第三部。
  外伝であるOblivon〜忘却〜は第二部から三部までのいつか、と言った感じですね。
  Encounter〜邂逅〜の年代が細かいのはウラ設定があるからですね。
  まあ、続編を書かなければ関係ありませんから気にしないでください。

L:・・・シェリフスターズって結構マイナーよね・・・・・・
  この前あんたサイトめぐりしてて、シェリフスターズメインのサイトってあんまりなかったわよね?
  両手の指で数えられるくらい。下手すりゃ片手・・・?

エ:んーむ。神坂作品はことごとく好きなのですが。読んでないのは『O.P.ハンター』と『闇の運命を背負うもの』あたりだったかと。ああ、『日帰りクエスト』は読みましたね。
  持ってるのは当然『スレイヤーズ』と『スレイヤーズすぺしゃる』、それから『ロスト・ユニバース』に『クロスカディア』に『シェリフスターズMS』および『シェリフスターズSS』・・・・・・漫画はことごとく持ってませんね。

L:・・・あんた原作者のファンね・・・・・・
  とりあえず。余談はこれくらいにしましょうか。
  それでは、またお会いしましょうっ♪


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29227CONCENTRATE〜集う〜第十幕エーナ E-mail 2004/1/31 12:07:14
記事番号29072へのコメント


『・・・ゲートが・・・!』

「・・・ルキさん・・・・・・あなたの話だと明日か明後日だったはずでは・・・・・・?
・・・ルキさん?」

ゼロスがルキに向かって声をかけるが、彼女は無反応のままゲートを凝視して・・・否、視線が虚空を彷徨っている。

「ルキさん?」

「・・・あ・・・」

二度目でようやくルキが気がついた。
ゼロスはその様子にいぶかしげ・・・

「・・・どうしたんです?」

「近い、の」

「・・・?」

「近すぎて・・・すごく、眠い・・・」

ぐらりとルキの体がかしぐ。

「ルキさんっ!?」

そこで、ルキの意識が『飛んだ』。






CONCENTRATE〜集う〜
              第十幕



「――全てを飲み込め!混沌の海よ!」

ディアナが大声で空気を震わせる。

「押し流せ、潰せ。そして還るがいい!」

・・・うるさい。

「すさまじいほどの力・・・これが混沌の海・・・!」

ヴァルガーヴが感嘆する。



「――ゲートはまだ完全には開いてはいません!今、ここでゲートを壊せばどうにかなすかもしれません!」

『あなたが指図しないでください!・・・ルキさんは!?』

「それが・・・」

フィリアさんの言葉に、僕は自らが抱きとめたルキさんの身体を見やった。

「・・・・・・今の状態ではルキさんのご助力は期待できません。
僕らで何とかするしかないでしょう。
・・・本来なら、あなたと協力するなんて真っ平ごめんなんですけどね」

『当然です!何を好き好んで生ごみ魔族なんかと・・・』

な・・・生ごみっ!?
むぐぐぐぐ・・・・・・お・・・押さえて押さえて・・・っ!
今は本当に時間がないんです。ケンカしてるヒマなんて・・・・・・

『生ごみ生米生卵っ!
あなた、籾殻〔もみがら〕や卵の殻と結婚したらどうですっ!?』

フィリアさんが一気にまくし立て・・・




・・・ぶち。




ごぎゅりゅいっ!




「ふ・・・ふっふっふっふっふ・・・・・・
・・・・・・ヒトがぶっ倒れているって言うのに、あんたらはのんきに口げんかかぁぁあっ!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・コロス。」

すわった目つきで、あたしはインバース・エルボー・フラッシュと、インバース・ロイヤル・キックをゼロスとフィリアのどたまにくらわせていた。

「ルキさん・・・はやまっては・・・
・・・・・・・・・いやなんでもないです非常に申し訳ございませんでしたあやまりますから睨まないでくださいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・・・」

あたしがぢろりとにらむと、ゼロスは早口でまくし立てて謝った。
んむ。これでいーのだ。

『ルキさん、止めないでください!こういうやつは一発がつんと・・・
・・・・・・・・・やられるのは私でいいです神様仏様精霊様金色の魔王様ああこれは私に与えられた試練なのですねですが私はこの試練を乗り越えられそうにありませんこれなら完全体のシャブラニグドゥをあいてに一人でしなびたハリセンを武器にして戦ったほうがましですええもう・・・・・・』

あたしの視線にフィリアがぶつぶつとつぶやく。
分かればよろしい。

「・・・二人とも、ゲートの事は気にしなくていいわ。
逆にこっちのほうが都合がいいくらいよ。あれの向こう側、どこにつながってると思う?」

ゲートを指差し、あたしが言う。

『混沌の海・・・と、言っていましたが』

「そう、そのとぉりっ!
混沌の海は死者の魂と、滅んだ精神生命体の意識が行き着く先。
死んだ魂はそのまま真っ白の紙みたいに書き込まれた記憶と性格を消去されて転生することがほとんどよ。まあ紙の形は変わらないから性質は転生後も受け継がれるけど、それはこの際関係ないわ。
精神生命体のほうは混沌の海で眠りにつくんだけど、『どこかの誰か』が揺り起こす事がたまにあるのよ。
さて、その『どこかの誰か』が自分の住処が荒らされようとしているのを見逃せないとする。けど自分は出てこれない。
なら・・・どうすると思う?」

「その『どこかの誰か』が何者かを目覚めさせてこっちへ寄越すのでは・・・
・・・・・・ってまさかルキさんシリアスやって倒れてた間に・・・?」

ゼロスの顔が引きつる。

「うん。ゼファロノスって黄金竜がいたんだけど千年くらい前にいろいろあってね、そいつを復活させたのよ。
ついでにもう一人復活させたんだけど・・・・・・見ないほうがいいわよ、二人とも。対ヴァルガーヴ用最終兵器なんだけど、あたしも提案したはいいけどじかに見るのはかなりきつくって・・・・・・本人なんて半ばやけになってるわね」

「ま・・・まさか・・・!?ルキさん、『あれ』だけは・・・『あれ』だけはやめてください!
『あれ』を見るくらいならリアランサーで100年下働きをしたほうがまだましです!」

負の感情をだくだくと垂れ流し、ゼロスが叫ぶ。

「・・・・・・その気持ち・・・分からなくもないけど・・・・・・もう遅いわ・・・」

あたしは悲しげに目を伏せ、うつむいた。










あとがき

エ:うわ終わらなかった!
  ああ・・・・・・当初ディアナをはったおす予定を変更したら話の流れ上ここで切るしか・・・・・・皆様申し訳ありません。

L:・・・・・・『あれ』を出してどうするのよっ!ヴァルガーヴ以外みんな哀れになっちゃうじゃないっ!

エ:・・・ふっ。運命とはかくも残酷なものよのう・・・・・・

L:あほかぁぁああっ!んな運命なんぞあってたまるかっ!
  運命なんて・・・運命なんて・・・!だいっきらいだぁぁぁああっ!!

ごじゃっ!

エ:ごふっ・・・・・・
  ふ・・・ふはははははは・・・皆様、あてんしょんぷりーづ。当部はギャグで終わります。
  しりあすふっとべー。ぎゃぐだいかんげー。

L:・・・だめだわこいつ・・・・・・脳みそ腐りだしてる・・・・・・
  ううっ・・・なんだか不安かも・・・・・・
  そんなこんなであとがきを終わります・・・


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29244CONCENTRATE〜集う〜第十一幕エーナ E-mail 2004/2/1 19:51:35
記事番号29072へのコメント



ぎぎぎ・・・ぎぎ・・・

ゲートが、きしむ。

「・・・来るわ」

あたしはゲートのほうをねめつけ・・・目をそらす準備をしていた。






CONCENTRATE〜集う〜
              第十一幕



ざぶぁっ!

金色の光が散り、内部から何かが飛び出してくる。

「・・・『あれ』が来たんですか!?」

「いいえ・・・あいつは・・・」

――ぉるぉおおおお・・・!

咆哮。
怒るでもなく、悲しむでもなく。
その声に含まれるのは・・・焦りのみ。

出現したのは、一匹の黄金竜〔ゴールド・ドラゴン〕。
そして、そのドラゴンの名は――

「ゼファロノス!?」

ディアナが叫び、その目が驚愕に見開かれる。

『――ディアナ――ディアナ・・・
・・・ディアナ・・・!ようやく会えた・・・・・・」

ドラゴンは金色の髪をなびかせる精悍な顔つきの青年の姿へと変わり、ディアナのそばに舞い降りる。。

「ゼファ・・・あなたが・・・何故ここへ・・・!?」

「その話は後だ!もうすぐ『あれ』が来る!今すぐこの場を離れ・・・」

ごぉ・・・ごがががが・・・

混沌の海がゲートの向こう側で渦巻き、一本の空洞ができる。
まるで、何かがそこを通るから道を開けた、とでも言うように・・・・・・

「・・・何が起こっている・・・!?
死者が蘇えるなど・・・・・・いや、それよりもゲートから今度は何が飛び出してくるんだ・・・!?」

ヴァルガーヴがゲートを凝視し、その向こうには・・・・・・

・・・向こうには。

赤い髪。野性的なハンサムと言える顔。そして長剣。

「ガーヴさま!?」

ヴァルガーヴが信じられないという表情で叫んだ。

そう。
姿を現したのは・・・魔竜王〔カオス・ドラゴン〕ガーヴその人である。

『ひぃぃぃいいいっ!!』

その姿を見て、その場にいる全員の・・・本人とヴァルガーヴを除く全員の叫び声が唱和した。

「みちゃだめみちゃだめみちゃだめみちゃだめみちゃだめみちゃだめっ・・・!
自分で仕組んだとはいえあれは混沌の海すら滅ぼしかねない最終兵器・・・見たら死ぬ滅ぶああもうやだやだやだやだやだやだやだ・・・!」

フィリアの背中でルキが震え。

「・・・っひいいいいいいいいい!!
魔王様獣王〔グレーター・ビースト〕様僕は見てはいけないものを見てしまいましたもう普通の魔族には戻れませんああこれが罰だと言うのなら僕が犯した罪とは一体なんなのでしょう・・・」

ぶつぶつとゼロスがつぶやき。

「ああこれはきっと夢なのですね夢を見ながら私は昇天しそうです混沌のお父様お母様最長老様私をお導きくださいこれ以上の地獄はないでしょう金色の魔王に誓って言いますどうか私をお救いください・・・」

フィリアは悲観し。

「はい、だーりんv」

「あははははっ!こいつぅ☆」

ディアナとゼファロノスは優雅にお茶を飲みながら現実逃避をし。

『・・・・・・・・・・・・・・・。』

結界を張っている三人は無言で目をそらし。

「そのせぇらぁ服姿、いつ見てもすばらしいですっ!」

――ぴしり。

ヴァルガーヴの爆弾発言に、全てが凍りついた。

・・・おい。ヴァルガーヴ。お前の感性はどうなってんだ。

「は・・・ははは・・・そうか・・・?」

本人の顔は引きつっていたりする。
をう、こいつは普通だったか。









「・・・あ。そうか・・・神託はこういう意味だったのか・・・・・・」

あたしは視線をそらしながら、いち早く復活した。
まあ、じかに見ていないと言うのもあるのだろう。
彼女は神託に思考をめぐらせ・・・


闇よりもなお昏きもの 夜よりもなお深きもの
歩み寄るは中心
祈りも 願いも 届けられなかった者
復活するはただひとつ残りし黒き翼 始まりはあれど終わってはおらぬ者
彼の者らはそこに在り 凍りついた全てを飲み込まんとす
そして三枚の虚無の翼の扉は開かれ 王の御許に 真実の願いはかなえられん


一節めは、まちがいなくあたしのことである。
二節目の主語は、どうやら誰でもいいようだ。
三節目がディアナ、四節目がヴァルガーヴを指す。
五節目に付いては二通りの解釈がある。
主語がディアナとヴァルガーヴの場合と、ガーヴとヴァルガーヴの場合だ。
前者は間違いなく、混沌の海にゲートをつなぎ、あたしが混沌の海と連動して時間を止めた世界全てを飲み込ませようとした、と言う事である。
後者は・・・・・・・・・

「・・・うあ。」

思わずあたしがうめきを漏らした。
はっきり言って考えたくない。
でも考えなければなるまい・・・・・・

・・・後者は、ガーヴの姿に凍りついた全員をその場のノリと勢いに飲み込ませると言う事・・・・・・・・・
この場合・・・・・・ヴァルガーヴ自身に自覚はないだろう・・・・・・・・・
・・・ガーヴにもその気は・・・・・・・・・あ。遠くに聞こえる会話ではヴァルガーヴに乗せられてあのおぞましい格好を『かわいい』って・・・・・・?
い・・・嫌だ。心底嫌だ。
あたしは耳からの情報をシャットアウトして、続きのことを考え始める。

最後の一節・・・一区切り目はゲートの事。
二区切り目・・・・・・
・・・・・・よし。ウラバザードに押し付けよう。一応あいつも『王』だし。
うん。これが真実の願いだ。
・・・・・・ってあり?
最後の部分は・・・・・・これで、いいのよね。
と、ゆーことは・・・・・・・・・

・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・これで終わりかいっ!
・・・どをしよふ。

・・・とにかく。
いま『ルキ=ファー=ガブリエフ〔あたし〕』と『混沌の海〔あたし〕』がそばにいる状態は、お互いに連動しやすいと言う事。
時が止まった状態を『混沌の海〔あたし〕』が解除して、ミカエルあたりにゲートを破壊させる。
そして最優先事項のガーヴの着替えを行わせ、魔族・神族・ガーヴの三者に協定を結んでもらおう。
魔族と神族は、あたしが今この世界に属す限り、戦争は行なわせない。
ガーヴと、神族・魔族には永遠にお互いにどんな形であれ不干渉とさせる。
不干渉であれば今までどおりでいい、と、言う事だ。
そーだ。今後ヴァルガーヴが暴走してもあれだから、古代竜〔エンシェント・ドラゴン〕たちを開放しよう。
『混沌の海〔あたし〕』が手を加えない限り、ヒトはヒトに、犬は犬に、猫は猫に、エルフはエルフにしか転生できないから、古代竜〔エンシェント・ドラゴン〕たちは転生を今か今かと待っている状態で混沌で眠り続けている。
器を作ってやれば後は魂を入れてやるだけ。そうだ、ミルガズィアとフィリアあたりに世話をさせよう。
ミルガズィアは『イブリース』とゼロスから頼めば引き受けてくれるだろうし、フィリアのほうも快くそうしてくれるだろう。
前者は心配ないが、後者はアシュタロスをしょっちゅう遣わせねばなるまい。
まあ、アシュとフィリアは仲がいいみたいだから大丈夫だろう。
ディアナとゼファロノスは・・・・・・まあ、再会の喜びを満喫しててもらおう。つまり放っておくと言う事。
ヴァルとヴァルガーヴは、それぞれに人格が存在するから・・・二つに分ければいいか。
うん、これでいい。これで八方丸く収まる。

あたしはゼロスの肩を叩く。

「ゼロス、こっち向きなさいよ、ほら」

「・・・へ?あ・・・ルキさん・・・・・・」

ほうけた返事を返すゼロス。
今まで恐怖の世界に引きずり込まれていたらしく、見るからに安堵の表情が顔に出ている。

「かくかくしかじかでそれこれだから・・・いい?」

「・・・はあ・・・・・・魔王様と協定を結ぶ席に同伴すればいいんですね?」

「ええ。ガーヴにはヴァルガーヴ、ウラバザードにはフィリアと一緒に来てもらうからね。
ミカエルが中心になって協定を結んでもらうから。
それも、悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕の名にかけてやってもらうわよ」

「分かりました。ルキさんのためですしね。
魔王様にあなたの御名を使ってそのおりを伝えておきます」

あたしがにやっと笑って言うと、ゼロスも同じく笑みを返していた。

「・・・だけどその前に・・・・・・」

あたしはちらりとフィリアを見やり、つぶやく。

「・・・・・・この状況、どうしよう」

「・・・・・・・・・はあ・・・・・・」

フィリアは目を据わらせ、ぶつぶつと何事かをつぶやいていた。








――結局。その場はベルゼに乱入させて雰囲気をぶち壊したすきにミカエルがゲートを破壊した。
そのまま『あれ』を直視したベルゼを見捨ててすたこらさっさ。
後日、どシリアスなセリフをはいてインバース商会に乗り込んできたヴァルガーヴをルナおばさんがいじめにいじめ抜いてぼろぼろになったところで二人を分離。残ったヴァルガーヴをガーヴに引き取らせた。
協定調印の場にはインバース商会を指定。
ルナおばさんを見たヴァルガーヴとゼロスがびくついていたが、平穏に・・・フィリアとゼロスがケンカをやりかけたのであたしが黙らせた事と、レイ=マグナスとルナおばさんのばかっぷる全開モードで母さんがその後悪夢を見たこと以外はおおむね平穏だった。
ガーヴの話によると、彼はこれからヴァルガーヴをつれて諸国を傭兵として渡り歩くらしい。
魔王をあたしが倒した事でバランスがくずれ、神族側に最近不穏な動きが出ていたが、協定でそれも沈静化したようだ。
ミルガズィアのところに新たに誕生させた古代竜〔エンシェント・ドラゴン〕の卵の半分を預け、もう半分はフィリアのところに。
フィリアの小さな店では古代竜〔エンシェント・ドラゴン〕全員は養いきれないので、インバース商会の外の世界第一店舗を名目としてインバース家が支援を行っている。



「ふぅ」

あたしは羽根ペンをおき、紙でできた冊子への書き込みを止めた。

「うーん・・・これで一息つけるかな?」

あたしはイスから立ち上がると背伸びをして、そうつぶやいた。

――こんこん。

「どーぞ。母さん」

あたしの部屋のドアをノックする音に、あたしは微笑む。
かちゃりと扉が開かれ・・・

「ルキ、ガウリイが急に実家のほうに呼び出されたのよ。
今年のお墓参り、あたしガウリイに付き添って行けないからあなたが行ってくれない?」

母さんがあたしの部屋に入ってきてそういった。
相変わらず若作りだ。三十歳くらいにしか見えない。まあ、父さんも同じようなものだが。

「ええ。セレンティアでしょ?行って来るわ」

「ありがとう」

母さんは言ってきびすを返して立ち去った。
ぱたん、と、ドアが閉じて・・・・・・

「さて、行って来るか!」

あたしは剣を腰にさし、アーマーを着込んで、飛んだ。

――セレンティアへ。









あとがき

エ:よ・・・ようやく終わりましたCONCENTRATE〜集う〜!・・・あり?なんだか暗い・・・

L:・・・・・・・・・数々の脳死者を出したと言う恐怖の・・・恐怖の『ガーヴのせぇらぁ服姿』!
  もし本当に実在したら、あなたはそれを直視できますか・・・・・・?

エ:ぎゃうっ!?ホ・・・ホラー風に言わないでください。怖いから。(かちりと電灯をつける)
  しかもあたりを暗くして懐中電灯で下からって・・・・・・

L:まあいいじゃない。でも結局今回、誰が勝ったの?

エ:ガーヴが着ていたせぇらぁ服。

L:そ・・・そぉ。そういえば最後、続きそうな感じだったけど・・・・・・

エ:あれは第四部へのステップです。この直後に第四部が来ると思ってください。
  第四部のタイトルは『万華鏡』にしたいんですが・・・つづりがよくわからなくって・・・・・・
  とりあえずそれっぽいアルファベットを入力してつづりの修正機能を利用して出てきたのがこれ。
『CARRIED SCOPE』・・・あってるかどうか分からないので誰か教えてください・・・・・・
  とにもかくにもみなさまありがとうございましたv
  第四部でお会いしましょう!


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29246Re:CONCENTRATE〜集う〜第十一幕神高 紅 2004/2/1 22:16:33
記事番号29244へのコメント

こんばんは初めましてエーナさん神高紅っていいます。
コ(初めましてコウ=カオス=ディスティニーだ)
こ(こう=クロス=ディスティニーです・・)
ええーと最初にとりあえず今まで詠み逃げしててすんません(土下座)
コ(まったくだ、いっぺん死ね)
こ(まあまあ・・ここは十分の九殺しで・・勘弁してあげましょうよ・・)
それほとんど死んでんじゃん!大差ないっすよ!まあそれは置いといて。
コ(露骨な話題変換だな)
うっさい!とにかく第三部も終わりのようなのでレスをしようかと。
コ(じゃあレススタートだな)
>「その話は後だ!もうすぐ『あれ』が来る!今すぐこの場を離れ・・・」
>
>ごぉ・・・ごがががが・・・
>
>混沌の海がゲートの向こう側で渦巻き、一本の空洞ができる。
>まるで、何かがそこを通るから道を開けた、とでも言うように・・・・・・
総員緊急避難!逃げ遅れたら死ぬぞー!
コ(んな大げさな)
こ(そうですよ・・)
お前らは見たこと無いからそんなこと言えるんだ・・・・・
>「・・・何が起こっている・・・!?
>死者が蘇えるなど・・・・・・いや、それよりもゲートから今度は何が飛び出してくるんだ・・・!?」
>
>ヴァルガーヴがゲートを凝視し、その向こうには・・・・・・
>
>・・・向こうには。
>
>赤い髪。野性的なハンサムと言える顔。そして長剣。
>
>「ガーヴさま!?」
>
>ヴァルガーヴが信じられないという表情で叫んだ。
>
>そう。
>姿を現したのは・・・魔竜王〔カオス・ドラゴン〕ガーヴその人である。
>
>『ひぃぃぃいいいっ!!』
>
>その姿を見て、その場にいる全員の・・・本人とヴァルガーヴを除く全員の叫び声が唱和した。
コ&こ(かはっ!!!!)(吐血して倒れる)
だから言わんこっちゃない・・・・
>「みちゃだめみちゃだめみちゃだめみちゃだめみちゃだめみちゃだめっ・・・!
>自分で仕組んだとはいえあれは混沌の海すら滅ぼしかねない最終兵器・・・見たら死ぬ滅ぶああもうやだやだやだやだやだやだやだ・・・!」
こ(あれ・・何か川が・・見える・・そこにいるのは・・誰・・?)
コ(眠いな・・・眠い・・・もうなんも考えられねえ・・・)
滅びそうになってますよ2人とも!?
>「そのせぇらぁ服姿、いつ見てもすばらしいですっ!」
>
>――ぴしり。
>
>ヴァルガーヴの爆弾発言に、全てが凍りついた。
>
>・・・おい。ヴァルガーヴ。お前の感性はどうなってんだ。
>
>「は・・・ははは・・・そうか・・・?」
>
>本人の顔は引きつっていたりする。
>をう、こいつは普通だったか。
よかったガーブはまともでほんとよかった。
>・・・とにかく。
>いま『ルキ=ファー=ガブリエフ〔あたし〕』と『混沌の海〔あたし〕』がそばにいる状態は、お互いに連動しやすいと言う事。
>時が止まった状態を『混沌の海〔あたし〕』が解除して、ミカエルあたりにゲートを破壊させる。
>そして最優先事項のガーヴの着替えを行わせ、魔族・神族・ガーヴの三者に協定を結んでもらおう。
>魔族と神族は、あたしが今この世界に属す限り、戦争は行なわせない。
>ガーヴと、神族・魔族には永遠にお互いにどんな形であれ不干渉とさせる。
>不干渉であれば今までどおりでいい、と、言う事だ。
>そーだ。今後ヴァルガーヴが暴走してもあれだから、古代竜〔エンシェント・ドラゴン〕たちを開放しよう。
>『混沌の海〔あたし〕』が手を加えない限り、ヒトはヒトに、犬は犬に、猫は猫に、エルフはエルフにしか転生できないから、古代竜〔エンシェント・ドラゴン〕たちは転生を今か今かと待っている状態で混沌で眠り続けている。
>器を作ってやれば後は魂を入れてやるだけ。そうだ、ミルガズィアとフィリアあたりに世話をさせよう。
>ミルガズィアは『イブリース』とゼロスから頼めば引き受けてくれるだろうし、フィリアのほうも快くそうしてくれるだろう。
>前者は心配ないが、後者はアシュタロスをしょっちゅう遣わせねばなるまい。
>まあ、アシュとフィリアは仲がいいみたいだから大丈夫だろう。
>ディアナとゼファロノスは・・・・・・まあ、再会の喜びを満喫しててもらおう。つまり放っておくと言う事。
>ヴァルとヴァルガーヴは、それぞれに人格が存在するから・・・二つに分ければいいか。
>うん、これでいい。これで八方丸く収まる。
無理やりまとめましたね。
コ(ああ・・・そうだな・・)(まだちょっとふらふらしてる)
>――結局。その場はベルゼに乱入させて雰囲気をぶち壊したすきにミカエルがゲートを破壊した。
>そのまま『あれ』を直視したベルゼを見捨ててすたこらさっさ。
ひどっ!見捨てちゃってますよ。
コ(見捨てる以外に選択肢なんかねえよ!)
こ(まったくですよ・・死ぬかと思いました・・)
>あとがき
>
>エ:よ・・・ようやく終わりましたCONCENTRATE〜集う〜!・・・あり?なんだか暗い・・・
>
>L:・・・・・・・・・数々の脳死者を出したと言う恐怖の・・・恐怖の『ガーヴのせぇらぁ服姿』!
>  もし本当に実在したら、あなたはそれを直視できますか・・・・・・?
3人(無理!絶対!何があっても!)
>L:そ・・・そぉ。そういえば最後、続きそうな感じだったけど・・・・・・
>
>エ:あれは第四部へのステップです。この直後に第四部が来ると思ってください。
>  第四部のタイトルは『万華鏡』にしたいんですが・・・つづりがよくわからなくって・・・・・・
>  とりあえずそれっぽいアルファベットを入力してつづりの修正機能を利用して出てきたのがこれ。
>『CARRIED SCOPE』・・・あってるかどうか分からないので誰か教えてください・・・・・・
>  とにもかくにもみなさまありがとうございましたv
>  第四部でお会いしましょう!
はい第四部も見ますよではエーナさんまた今度お会いしましょう。
コ(じゃあまたな)
こ(ばいばい・・)

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29250Re:CONCENTRATE〜集う〜第十一幕エーナ E-mail 2004/2/2 19:12:35
記事番号29246へのコメント


>こんばんは初めましてエーナさん神高紅っていいます。
>コ(初めましてコウ=カオス=ディスティニーだ)
>こ(こう=クロス=ディスティニーです・・)

エ:神高紅様、コウ=カオス=ディスティニー様、こう=クロス=ディスティニー様、ありがとうございますv
  こんなものを読んでいただいてもぉ・・・もぉ・・・感謝感激雨あられっ!ついでに雹とか雪とかさらには隕石すらも降っちゃいそうな感じでっ!

L:いや・・・・・・感激するのは分かるけど最後は問題あるでしょ。
  どうせなら隕石じゃあなく彗星とか漢字違いで水星とか・・・・・・

エ:L様、彗星って大半が氷なの知ってます?大気摩擦で燃え尽きちゃいますよ。(過激なセリフには突っ込まんのかい。)

>>「みちゃだめみちゃだめみちゃだめみちゃだめみちゃだめみちゃだめっ・・・!
>>自分で仕組んだとはいえあれは混沌の海すら滅ぼしかねない最終兵器・・・見たら死ぬ滅ぶああもうやだやだやだやだやだやだやだ・・・!」
>こ(あれ・・何か川が・・見える・・そこにいるのは・・誰・・?)
>コ(眠いな・・・眠い・・・もうなんも考えられねえ・・・)
>滅びそうになってますよ2人とも!?

エ:三途の川が目の前にっ!?
  ・・・こりゃすごい。

L:ギリシャ神話風に忘却の川レーテってのもアリかもよ。
  まあどっちも死んだら行く事に変わりはないんだし。
  もしかしたら混沌の海に流れ込む川かもね。
  あ、これは比喩だから。実際にはそんなものはないと思うわ。

エ:・・・『思う』って・・・ずいぶん大雑把ですね。

L:乙女には秘密がいっぱいvいちいち気にしてちゃあダメよv

エ:・・・乙女・・・?齢〔よわい〕一千億歳にさしかかろうとしてるのに・・・?

ごりゅっ!

L:ふっ・・・・・・レディに歳の事を言うものじゃあないわよ。

エ:・・・・・・年下には優しくしましょう・・・・・・

>>――結局。その場はベルゼに乱入させて雰囲気をぶち壊したすきにミカエルがゲートを破壊した。
>>そのまま『あれ』を直視したベルゼを見捨ててすたこらさっさ。
>ひどっ!見捨てちゃってますよ。
>コ(見捨てる以外に選択肢なんかねえよ!)
>こ(まったくですよ・・死ぬかと思いました・・)

エ:ええ。ベルゼは汚れ役なんです。(復活)
  まだ天使だったころのルシフェルへの第一印象が最悪だった事にくわえ、あの性格。
  ところかまわずナンパしまくるので皆様に顰蹙(〔ひんしゅく〕ってこう書くのか・・・)を買っております。

L:乙女の敵はいぢめるべしっ!これあたしの鉄則のひとつね。
  それから、母さんよりもっとすごく!もっとしたたかに!

エ:・・・・・・この傾向は第四部でさらに顕著になりそうですね・・・・・・

>はい第四部も見ますよではエーナさんまた今度お会いしましょう。
>コ(じゃあまたな)
>こ(ばいばい・・)

エ:ありがとうございました。
  あいかわらずへぼいですが、石を投げずに呼んでいただけるとありがたいです。

L:それでは、アディオス!また会いしましょう!

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29251CARRIED SCOPE〜万華鏡〜プロローグエーナ E-mail 2004/2/2 20:44:21
記事番号29072へのコメント



CARRIED SCOPE〜万華鏡〜
               プロローグ



小さな、墓。
新旧あわせてさまざまな花束がひっそりとたたずんでいる。
それらは言うまでもなく、ケレスさんが飾ったものだろう。
墓は手入れが行き届いており、添えられた花束と相成ってささやかな美しさを保っている。
きょう、あたしはそこに花束をもうひとつささげよう。

「あたしはあなたたちに会ったことはないわ。
でもね、時々母さんが話してくれるのよ。懐かしそうに。悲しそうに。楽しそうに。
ごめんね?今日は母さんたち来れないのよ。
過去は変えられないけど――ああ、そういえばこういう話は知ってるかしら?」

墓に話しかけること自体に意味は無い。そこには魂がないのだから。
それでもあたしは話しかける。それが故人への悼みというものだ。

「未来から過去へ行った存在が、過去を変えてしまったら・・・それはもう未来から来た存在の過去ではない。
その過去は、パラレルワールドとして無限に枝分かれする可能性のひとつに埋没するって話」

あたしは花束を持ちながら、話がわき道にそれても話しかける。

そのとき。

ひらり、と花びらが舞う。
あたしの目は何とはなしにそれを追い・・・

「――え?」

空中で、止まった。

辺りが闇に包まれ・・・いや、何もない空間になる。

「何・・・?どういう・・・!?」

あたしは花束を思わず取り落とし、その花束が消えた。

そして突如。

まるで、ガラスのように・・・


割れた。


「――っ!?」


落ちる。

止まらない。

金の鎖、黒の鎖。
銀と、赤と、紺と、深緑の糸。

からみつく。
抗えない。

その視覚イメージが再び砕ける。

その先には、鏡の大群。
鏡の中には、あたしではないものが映っている。

「――これは・・・!?」

          『――ならばなぜ――我は滅ぶ?』
          『あなたがもし・・・滅びを望んでいるとしたら?』

     『ルゥゥゥゥゥゥク!』
     『おう――あんたらか――』

『小賢しいわぁぁぁぁぁッ!』
『神滅斬〔ラグナ・ブレード〕!』

             『あたしには――後がないのよ!』
             『ちょっと待て!マジでシャレになんねーぞ!こいつ!』

  『――救ってあげてくださいね。ベル姉さんを――』
  『―― いっしょになろう――姉さん――』

          『知ったせいさ。我々が国を失う原因となったものの名を』
          『――おひさしぶり。おっちゃん。あんた、けっこー強かったのね』

『魔王剣〔ルビーアイ・ブレード〕!』
『・・・・・・そ・・・・・・そんな事ないわよっ!絶対由緒正しき名前なのよっ!』

       『――滅びを望むのなら、従うがいい!』
       『ああああああああああああああっ!!』

                『父さんっ!』
                『――笑うが・・・・・・いい・・・・・・』

     『神滅斬〔ラグナ・ブレード〕!』
     『グルァァァァァァァァァァアッ!?』


                    『やめろっ!やめろっ!やめろっ!やめろっ!やめろぉぉぉっ!』
                    『竜破斬〔ドラグ・スレイブ〕!』


     『シルフィール!』
     『・・・・・・この樹が・・・・・・私の墓標です・・・・・・』

『ルビア!』
『お前に倒されるというのなら――それはしかたのないことなんだろうね・・・・・・』

            『重破斬〔ギガ・スレイブ〕!』
            『――おまえ自身に敬意を表し、おとなしく滅びてやるよ・・・・・・』


過去の声。
母さんと父さんが関わった、過去の・・・・・・


万華鏡。


最後の一枚。
それを覗き込んで・・・驚いた。

黒髪の男性の後ろ姿。そして剣を振りかぶる父さん。
しかし、驚いたのはそれではなく・・・鏡に走った、無数の亀裂。

さらにそれは広がり・・・砕けた!


その向こうから、金色の光があふれてくる。



       ――あたしは・・・あなたを――



その声が響くや否や、あたしは外へと放り出された。

海岸へ。そしてそこに突き立ったひとつの剣。

「光の剣・・・!?烈閃の剣〔ゴルンノヴァ〕!」




ああそうか――
・・・ここは・・・



・・・パラレルワールド。









あとがき

エ:第四部カレイドスコープ!始まりました始まりましたっ!
  やたらと長くなる予定のこの第四部、まずはレゾ=シャブラニグドゥ編です!

L:ガウリイが光の剣を所持していないと言う事は、ガウリイは出てこないの?

エ:たぶんそうですね。話だけなら出てくるかも・・・たとえばシルフィールの。

L:ふぅん。
  このお話は、もし本編にガウリイの代わりにルキが乱入したらってお話なのよね。
  ・・・あ。『黒髪の男性の後ろ姿。そして剣を振りかぶる父さん。』って本文中にあったけど、あれは『刃の先に見えるもの』の最初のシーンだと考えていいわけ?

エ:そうです。
  で、その映像が映った鏡が割れた・・・と言う事は、その過去が消失した――つまり、そこからパラレルワールドとして枝分かれした世界だと言うことです。
  さて、最後にルキにかけられた声は誰のものだったのか?そしてどのような意図でこの世界へ引き込んだのか?
  それらはいずれ分かります。それでは、またお会いしましょう!


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29259CARRIED SCOPE〜万華鏡〜一章第一話エーナ E-mail 2004/2/3 21:02:17
記事番号29251へのコメント



ある日の昼間、あたしは街道を歩いていた。

「――よくもさんざ俺たちをコケにしてくれたな」

をうっ!このしょーもないセリフはっ!
びんごっ!くくぅっ!一週間このあたりをふらふらしててようやく見つけたわっ!
なんかよくわかんないけど、いつの間にかあたしが昔していた封印と同レベルの封印が施されてたうえ、黒魔法が使えないように魔力の流れが制限されてるしっ!
おにょれ!これを施した当人に会ったら24時間罵倒し続けてやるっ!

あたしは、固くそう誓っていた。




CARRIED SCOPE〜万華鏡〜
               一章 第一話


あたしはうんざりしていた。
この手のヤツの頭には言っている単語など、せいぜい百を越えないだろうと前から思っていたが・・・・・・

「はーい、そこの油おやぢども、こっちにちゅうもーくv」

・・・ほえ?

あたしは女性のきれいな声を聞いて、視線をそちらに向けた。
年のころなら16・7。金の絹糸のような髪に笑みの形に細められた目と、かわいらしいピンク色の唇。かなりの美人である。
真紅に塗られたシンプルなアーマーを着込んだ軽戦士〔ライト・ファイター〕の女性だ。
・・・あっ。あたしより胸でかいでやんの。むぅっ・・・

「女の子によってたかって大勢で襲うって言うのはあんまり好かないわね。
・・・と、ゆーわけで爆裂陣〔メガ・ブランド〕っ!」

づぼべんっ!

土砂にまぎれて盗賊どもが吹き飛ぶ。

「あのアマっ!かかれっ!」

残り半分となった盗賊どもに命令をくだし、指差す――が。

「いねぇっ!?」

土砂がおさまった向こうにはその姿はなかった。
どうやら、今の魔法は目くらましにも使われていたらしい。相当場慣れしている証拠だ。

「ぐげっ!」
「ぎゃうっ!」
「げぼっ!?」

金の輝きが舞い踊り、あっという間に残りの半分を切り伏せた。

「おおーっ」

あたしは素直に感嘆し、拍手をする。
ちきり、と言う金属音と共に、刃が鞘に収められる。

「お譲ちゃん、一人歩きは危ないわよ?」

「・・・お嬢ちゃんはやめてくれない?これでも15よ」

「ふぅん。童顔ってお互いに若く見えていいわよねーv
ちなみにあたしは18よ。16か17に見えた?」

くすりと彼女はいたずらっぽく微笑む。
・・・いや、さっきから彼女、糸目のままだが。

「それで、どうしてこんなのに追われてたわけ?」

「それがね。あたしは見ての通り魔導士。それで傭兵家業をしてるのよ。
それであるところの村の人たちから盗賊退治を依頼されて盗まれた物を取り返してあげたのよ。
依頼料代わりに持ち主が分からないお宝を持っていったんだけど・・・それでちょっと、ね」

「ほう。趣味と実益を兼ねて盗賊いぢめをして、それを根に持たれてしつこく追いかけられていたってわけね。
しつこい男って嫌われるのよね。いやーね、そういうの。もうちょっと派手にやればよかったかしら」

「をうっ!分かってるじゃないっ!あなたとは気が合いそうっ!」

「ほんとねっ!群れる雑魚をふっ飛ばし、お宝をいただくっ!これぞ盗賊いぢめの醍醐味よっ!
・・・と、道の真ん中であんまり興奮するのもあれだし。
旅は道連れって言うしね。あたし、アトラスに向かう予定なんだけど・・・途中まで一緒に行く?」

言った彼女のその目には――紅い瞳がきらめいていた。








彼女の名前はルキ=ファー=ガブリエフ。
一緒にゴブリンをからかったり、あたしたちはなかなか楽しく旅をしている。
紅い瞳はあたしの家系の女性の特長だ、と言ったら、だったら傍系かもよ?と笑いながら言っていた。

そしてその日の夜。あたしとルキは宿屋で夕方の食事を取っていた。

「・・・リナ、お客さんよ」

「んむ?」

あたしは最後の料理を喉に通し・・・入り口のほうを見やった。

――ばんっ!

唐突に扉が蹴破られる。

「あの女だ!」

あちゃーっ!
先頭にいるあのミイラおとこ・・・あろうことかあたしを指差してら・・・

「人違いですぅvあたしソフィアって・・・」

「やかましいっ!名前なんぞしるかっ!お前、ちょっと前に盗賊の宝倉をごっそり荒らして行ったヤツだろうっ!」

あたしの言葉をさえぎって、ミイラ男が叫んだ。

「・・・よーし、わかったわ。
けりをつけましょう。表に出なさい」

「いやだ」

「あいやあっ!」

あたしはあわてて別の手を考え――

「烈閃牙条〔ディストラッシュ〕」

・・・ルキの放った問答無用の光の刃が、トロルたちをまとめて倒す。

「うあよわっ」

あたしが思わず言い放った。

「ぐっ・・・今日の所は退いてやる!だが、次に会ったときは・・・」

「会いたくないです烈閃槍〔エルメキア・ランス〕」

・・・ぱたむ。

悔しげに捨て台詞をはこうとしたミイラ男にあたしの術が直撃する。

「・・・・・・宿、変える?」

ルキが問いかけてくるが、もうこれは確信に近い。
あたしもこんな騒ぎがあった宿にはあまり泊まりたくはない。

「そーね。そうしましょうか」



そしてあたしたちは宿を変えた・・・だがしかし。



「リナ・・・またお客さんよ。でも殺気がないからさっきのヤツとは用件が違うみたい」

ルキとあたしは一緒の部屋に泊まっていた。
そこで彼女が再びこんなことを言ったのだ。

「・・・また?」

――こんこん。

丁寧なノックの音が聞こえる。

「――あんたと商売がしたい」

ドアの向こうから声が響いてくる。若い男の声だ。

「怪しいわね」

「当たり前だ。言ってて自分でも怪しいと思うよ。普通ならこんなヤツ部屋の中に入れたりはせんぞ」

おいおい。

「じゃ、いれない」

「・・・待ってくれ。俺は怪しいが、今、あんたらに危害を加えるつもりはない」

ルキのそっけない言葉に、男からの待ったがかかった。

「・・・いいわ。ルキ、開けて」

「ええ」

ルキは素直にドアを明け・・・そこには白尽くめの姿が一人立っていた。

「めちゃめちゃ怪しいわね。ことばどおり」

あたしはその男の風貌を見て、そういった。

「・・・まあな。さっきはすまなかったな・・・ゾルフのヤツが世話になった」

「さっきのミイラ男のこと?あ、いいわ。それで、商談って?」

「あんたがあの盗賊から奪った宝に値段をつける。それをオレが買い取る。それだけさ。
悪い話じゃないだろう?」

あたしは眉をひそめる。
わざわざ買い取る?
とすると、こいつはどうやら盗賊の仲間ではないらしい。
そしてあたしが相場の値段以上をつける可能性があるのにそう言ったという事は、どうしてもそれが欲しいと言う事なのだろう。

「この件、かなりきな臭い気がするんだけど?ねえ?『白のゼルガディス』さん」

ぴくりっ、と、男――ゼルガディスの眉が跳ね上がる。


ルキが言い放った名前は、とんでもないものだった。










あとがき

エ:一章第一話完了。ゼルガディス登場のあたりまでっ!

L:それはいいけど、こんかいガウリイめちゃくちゃないがしろにされてるわよねー。
  今回欠片も出演しない予定なんでしょ?
  しかも好きなキャラの五人とかその次点にガウリイが入ってないし。かわいそーに。

エ:・・・なまじルキが万能型だからクラゲが出演しづらかったりするんです・・・・・・
  ううっ!ガウリイファンの方ゴメンナサイっ!

L:でもさー。好きだとか言っておきながらシェーラ出てこないわね。欠片も。あ、でもプロローグにセリフ『だけ』出てきたか。
  書く予定とかあるの?

エ:・・・・・・ネタばれですがシェリフのウラ設定に組み込んじゃったんで・・・・・・
  ううっ・・・出したいよう・・・・・・あのけなげさが・・・もおどつぼに・・・っ!

L:まあ、9巻の部分まで待ってれば自然に出てくるんでしょ?

エ:・・・それもそうですね。気長にやります。
  それじゃあ皆さん・・・

L:また次回お会いしましょうっ!


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29287CARRIED SCOPE〜万華鏡〜一章第二話エーナ E-mail 2004/2/6 22:25:37
記事番号29251へのコメント



「この件、かなりきな臭い気がするんだけど?ねえ?『白のゼルガディス』さん」

白のゼルガディス――残酷な魔剣士と謳われる、そこそこ有名な人物である。
よくはしらないが、『めちゃくちゃ不気味』と言う評価を聞いた事があるが・・・なるほど。この容姿ならそれにも納得が行く。




CARRIED SCOPE〜万華鏡〜
               一章 第二話

「・・・ほう?俺のことを知っているか」

眉をぴくりと跳ね上げ、ゼルガディスはそういった。

「まあねー。本名はゼルガディス=グレイワーズ。白尽くめでとっても怪しい20歳弱くらいの男・・・その中身は石人形〔ロック・ゴーレム〕と邪妖精〔ブロウ・デーモン〕と人間の合成獣〔キメラ〕・・・」

つらつらと言葉がルキの口から滑り出る。
もしかするとナーガ並の情報網を持ってるのか・・・?
・・・・・・知り合いだったらどうしよう。

「・・・・・・かなりの情報網だな・・・名は?」

「ルキよ。ルキ=ファー=ガブリエフ。
あんたのプロフィールに関しちゃ続きがあるけど・・・やめておくわ」

「思慮深くもあるようだ」

「さすがにくそつまらないことを言ってあんたの機嫌を損ねるよりかはましね。
――で、リナ、どうする?」

「・・・いいわ。商談にうつりましょう。
品物は像と剣、そして古いコインが少々。
――あ、宝石は省くわよ。誰が見たってただの宝石に過ぎないものを言い値で買う人もいないでしょうしね」

ゼルガディスはこくりとうなずいた。

「それじゃあ、まず剣が・・・・・・」

あたしは次々に値をつけた。
ゼルガディスが後退ってまん丸に目を開き、ルキは顔をしかめる。
まったく。二人とも肝っ玉が小さい。
『言い値で買う』って言ったんだから、相場の100倍やそこら、ぽーんと払いなさいよねっ!
・・・・・・って・・・今気がついたのだが、どれも城が丸ごと変えるような値段である。
いやぁ。びっくり。はっはっは。

「・・・リナ・・・」

とがめるようにルキが口を開く。

「いやぁ・・・今のはさすがにちょっとね・・・」

あたしはほほをぽりぽりかいて、奇妙な表情をする。

「そうよっ!安いわっ!」

・・・・・・はい?
バックに炎を背負いながらルキが言い放ったその言葉を聞いて、さすがにあたしも目が点になった。
・・・あ。ゼルガディスこけてら。

「仮にも命を狙ってきたヤツらなのよ!
しかも呪文一発であっさり倒れるようなよわっちいやつ等には相場の十万倍や百万倍は当たり前っ!」

・・・・・・おい。それだと土地代だけ見積もってみてもゼフィーリア一国分くらい買えるんだが・・・?

「ぜ・・・前言撤回だ。おまえむちゃくちゃすぎるぞ・・・・・・」

「え、そう?」

打って変わってきょとんとしたかおでゼルガディスにいうルキ。
金銭感覚ないのかおまいは。

「さすがにそっちの剣士が言った額は無理だが――オレに手を貸さんか?最初にお前が言った額の2倍・・・いや、3倍でもいい、払ってやろう」

「ふむ」

あたしは腕を組んだ。

「それだけ欲しがってる――と言う事はつまり、この提案を断れば自動的に、あなたとあたしは敵同士、ってことになるんでしょうね」

「・・・・・・・・・・・・」

ゼルガディスは答えなかった。ただ、片方の眉を跳ね上げただけである。

「あたしとしてはできるだけあなたみたいなタイプとことを構えるのは避けたいわね。
なぜかって聴かれると、女の直感としか答えようがないけど」

「フム」

「――で、これもその直感ってヤツなんだけど・・・あなたみたいなたタイプとは死んでも手を組みたくはないわね」

言った刹那。
あたしとルキ、ゼルガディスの間に殺気がうずまく。
しかし、にらみ合いが続いたのはほんの数瞬だった。
退いたのは、ゼルガディスのほうだ。

「・・・交渉決裂か。仕方があるまい、気の強いお嬢さんたち」

「ホント、残念ね」

「約束だからな。今日はおとなしく退こう。
しかし・・・それは必ず力づくでも奪い取らせてもらう。明日の朝、お前たちがこの宿を出た瞬間にオレとお前たちは敵同士だ」

あたしが小さくうなずくと、ゼルガディスはそのまま出て行った。








「――大丈夫?傷のほうは」

狂戦士〔バーサーカー〕たちを倒しきった後、ルキは座り込んでいたあたしに声をかけてきた。
――なんだ、分かってたのか。

「・・・ちょっとかすっただけ。そう大した事じゃないわ・・・・・・・・・にしても・・・」

あたしのわき腹には、浅い傷がついている。右手でそれを押さえているが・・・・・・

「・・・ん?どうかした?」

「・・・治癒〔リカバリィ〕の効きが悪いのよ。今かけてるんだけどね・・・」

「・・・ああ、そういうこと。もうすぐ魔法が使えなくなるんでしょ?もう少しここで休んでいきましょうか」

「ありがと」

あたしが短く礼を言うと、ルキはくすりと笑う。

「・・・ねえ、昨日のヤツとその仲間のお目当てのものの事なんだけど・・・ちょっと見せてくれない?」

「ん?ああ、いいわよ。ほら」

あたしはナイフと像、コインを取り出して広げて見せる。
ルキは迷わずナイフと像だけを手にとり・・・

「ナイフのほうは・・・たちの悪い魔法がかかってるだけね。像は・・・あらま」

ぴくりと眉を跳ね上げるルキ。

「・・・どうかした?」

「見た目の体積と比例する重量と、手に持った感じの重量が違うのよ。
少し重いわ。中に何か入ってるみたいね」

「分かるの?」

「これの予想重量が約850グラム。でも約1キログラムあるわ。
150グラム分重いのよ。
像の大きさからして中には言っているもののサイズは・・・・・・直径3・4センチメートルの球体、ってところかしら。
それで150グラムも重くなる物質は普通に出回っているものじゃあないわね。
いくら重いったってプルトニウムやウラニウムなんかの類じゃないだろうし。
金だってこれより軽いわよ?もし普通に出回ってない物質だとしたら・・・」

「・・・だとしたら?」

あたしはルキの言葉を反芻し、先をうながす。

「賢者の石だったりしてv」

「あははははっ!いくらなんでもそりゃあないわよ。
そんな伝説上の物質がころころそこらにあるわけないでしょ」

「わっかんないわよー?3年くらいしたらリナも伝説になってたりして。いい意味で。
ほら、事実は小説よりも奇なりって言うじゃない」

けらけらとあたしたちは笑いあって、あたしは傷の具合を確かめてから立ち上がる。

「まあ、なんにせよこれから分かる事よ。あせらず行きましょうか。リナ」

「ええ」

立ち上がるルキに向かって、あたしは笑いかけた。








あとがき

エ:ゾルフが弱いっ!おまえホントに竜破斬〔ドラ・スレ〕使える魔導士なのかっ!?

L:確かにそれは同意見よね。ぜんぜん術の事を理解してないくせに何で作中で扱えるのが不思議なくらいよ。

エ:・・・あり?狂戦士〔バーサーカー〕張り倒した時の傷が浅いぞ?

L:・・・あんた一応これ書いてるんでしょうがっ!それくらい把握しときなさいよっ!
  あたしがいるのにそんな深い傷を負わせるわけがないでしょうがっ!

エ:それもそうですね。しかしルキさん演技うまいですね。母親譲りかっ!?

L:こいつが言ってるのはたぶんあたしがナイフとオリハルコンの像を手に持ったときのことね。
  母さんからどうなるか聞いてるのに今分かったような話し方だったからねー。
  とぉっぜんよ!
  ・・・・・・って、なんだか原作との差異を解説してるわね。
  まあいいか。
  それでは皆さんまたお会いしましょうっ!


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29296CARRIED SCOPE〜万華鏡〜一章第三話エーナ E-mail 2004/2/8 12:14:29
記事番号29251へのコメント



CARRIED SCOPE〜万華鏡〜
               一章 第三話


足音がした。
気のせいではない。
あたしが宿で床について、しばらくしてのことである。
疲れてはいたが、色々と考えている事もあり、なかなか寝付けなかったのである。
どうやらそれが幸いしたようだ。
遅くまで飲んでいたおっさんがようやっと腰を上げて、自分の部屋に戻っていく――そんな類の足音ではない。
複数の人間が、できうる限り足音を忍ばせている――そんな音だ。
あたしはベッドに身を起こした。
この足音の主たちがあたしを狙っていると決まったわけではないが、この場合その確立のほうが高い。

かたり、と戸が開け放たれる。

「――どこだ!」

「火炎球〔ファイアー・ボール〕っ!」

ごぁん!

ドアの横に潜み、全員が部屋の中には言ってきたのを見計らって術を放って戸を閉める。
当然、あたしは廊下へと避難している。

「――リナ!」

隣の部屋からルキがアーマーを着込んで飛び出してきた。
どうやらあたしと同じことを考えていたようである。

「敵襲!?やったの!?」

「わかんない!」

そのとき、あたしが閉めたドアが開く。
案の定、焦げ臭いにおいと共に、火に巻かれながらもトロルが飛び出してきた。

「砕氷塵〔グレイ・バスター〕!」

ぎぎんっ!

これを予想していたらしく、ルキの術によって先頭の数体があっという間に凍りに包まれる。

「――ふっ!」

ルキは短く気を吐き、氷付けのトロルを切り裂いた!
そしてその向こうには胴を薙がれ、真っ二つとなった氷付けとならなかったトロルが。
・・・それにしてもすごい腕である。魔法と剣術をうまく合わせて敵を倒す・・・これで黒魔法が使えるのだったら最強であろう。

そして、ルキの二撃目。

ぎっ!

その一撃は、さらに奥にいた人間によって受け止められていた。

「小娘の仲間か?嬢ちゃん」

がっしりとした体格の中年男がルキに声をかけた。

「なかなかやるわね。おっさん」

「なーに、年の功ってヤツさ」

その時。
にぃっとルキが笑うのを、あたしは、見た。

がぎぃんっ!

ルキは一度身を引いて、掬い上げるように放った剣で・・・刃を切り飛ばした!

「なにっ!?」

「この刃はあたしが作った特別製でね!
元々切れ味も一流だったのを、あたしの魔力を流れ込ませて魔導強化するように回路を組み込んだのよ。
ま、この柄は刃に元々ついてたものじゃあなくて、魔力を受け取る機能が半分くらいないからこれでも切れ味は落ちてるのよ?
あんたも斬られなくてよかったわね!感謝なさいっ!」

「く・・・ッ、退くぞ!分が悪すぎるわい・・・」

残りのトロルたちを率いて、おっさんたちは階下へと去った。

「・・・逃がしちゃっていいの?」

「いーのいーの。それに・・・そっちのヒトも気になるしね」

剣をおさめ、ちらりとルキが見やったほうには・・・ひとつの影。
そこには、一人の僧侶がいた。

「いやはや。お見事な腕前ですね。私が首を突っ込む必要もなかったくらいでしょうか?」

毒々しい血の色の法衣。
年齢の分からない慈愛の漂う白い顔。
年老いても見えるし、若くも見える。
目が見えないのか、その両の瞳は硬く閉ざされている。
感嘆と賞賛の入り混じる声音で彼は言った。

「――あなたが他の泊まり客に眠り〔スリーピング〕の魔法をかけたの?」

あたしが問うと、男はほう、といった顔をする。

「わかりましたか」

なめてもらっては困る。

「これだけドタバタやっても他の客が出てこないっていう事は、そういうことなんでしょ」

「無関係の人間に大勢出てこられて騒がれるのは面倒ですからね」

「ならあなたは、この件に何のかかわりがあると?」

「――見たところあの連中、ゼルガディスの手のもののようですが・・・」

「あいつを知っているの?」

「知っていますとも」

僧侶はうなずいた。横でルキが顔をしかめている。

「あなたのもっているあるものを使って、魔王シャブラニグドゥを復活させようとしている男――私の敵です」

さあ、とんでもない事になってきた。

「あるものって・・・これのこと?」

ルキが取り出したのは、オリハルコンの像。

「ええ――それです!」

僧侶はいささか興奮気味にそういった。
目が見えていないのに品物がわかると言うのは少し不思議だが、何らかの魔法でも使って形を確認しているのだろう。
彼は少し間を置き、声音を落ち着かせてこういった。

「私がそれを預かりましょう。それであなたたちもつまらぬごたごたに巻き込まれなくなります」

「――それよりも、これを壊してしまったほうが・・・」

「いけません!
それこそが魔王を復活させる方法なのです!」

「――けど、もしこれをあなたに渡せば、あなたはたった一人でやつらと戦う事になるわ」

「ご心配なく。確かにやつらは手ごわい相手ですが、この赤法師、決してやつらごときにひけをとるつもりはありません」

・・・・・・赤法師?

「あなた、赤法師レゾ?」

「――そんな風に呼ばれることもありますね」

ルキの問いに彼は苦笑して答えた。
あたしは数秒黙考し――

「・・・では、あたしたちも一緒に戦います」

「え・・・?しかし・・・
お心遣いは感謝しますが・・・」

「ご心配には及びません。あたしにも少しは魔導の心得はありますし、このルキもかなりの魔剣士。
けして法師様の足手まといになるような真似はいたしません」

「――わかりました」

レゾは大きく息をつく。

「ですが、その像は私が預かりましょう」

法師が言う。しかしあたしは静かに首を横に振った。
彼は怪訝そうな顔をし・・・

「やつらはあなたと私たちが手を組んだ事を知りません。そこで私たちが囮になり、法師様には影からの援護をお願いしたいのです。
あなたがこの像を持っていれば、私たちの間に何らかの接触があったものとやつらは気付きます。
そうなればまた、それなりの作戦を立ててくることでしょうし、それでは囮の意味がなくなります」

「そうれはそうですが・・・」

「法師様、どうかこのリナをお信じください」

ここまで言われて、『いや、しかし・・・』と言う人間はまずいない。ルキあたりなら言いそうな気もするが。

「・・・分かりました。その像はあなたに預けておきましょう」

言って、法師はあたしの部屋のほうに歩み寄り、懐から球のようなものを取り出す。
彼はおもむろにそれを部屋の中へと放り込んで扉を閉め、呪文を詠唱する。

「・・・・・・再生〔リヴァス・レゼクション〕・・・白魔法の秘儀中の秘儀・・・
たしか、ゼフィーリアの王宮につたわっいると聞いた事があるけど・・・」

ポツリとつぶやくルキ。
うみょ!?そんなすごい術ならあたしも習得してみたいわっ!
・・・今度里帰りしたら女王にねだってみよう。

「それでは私は自分の部屋に戻りますから。明日からは打ち合わせの通り、私はあなたたちを影から援護します。
おやすみなさい」

いうと、すたすたとその場を歩み去ってゆく。

あたしとルキは部屋の中を覗き込み・・・
・・・げっ!

「・・・やっぱり」

そう。あたしの部屋はなんともなっていなかった。
あたしが火炎球〔ファイアー・ボール〕を投げ込む前と。

「とりあえず今夜はあたしの部屋で寝ましょうか。そのほうがいいだろうし」

「・・・ええ」

ルキの言葉に、あたしはうなづいた。








右には生い茂る木々。左にはちょっとした大きさの空き地。
その間に伸びるそこそこの幅の道。
その中心に、一人の男が立っていた。ブロード・ソードを手にして。
青黒い岩のような肌。頭に輝くは無数の金属の糸。
コートのようなものを着た、20歳前後のなかなかのハンサムさんである。
そして、あたしとルキが足を止める。

「ゼルディガス!」

「違うわよ。ゼガルディスでしょ?」

「・・・おい」

開口一番にじと目でいわれ、あたしはほほをかいた。

「じ、冗談よ。ゼディルガスでしょ?」

「まてこら。名乗ったろうが」

「・・・あなた今本気で間違えたわよね・・・?
ゼルガディスでしょ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

ああっ!空気が白い!
せっかくのシリアスな空気がっ!
何とかフォローしなければっ!
ってゆーか。ルキ、普通に冗談だったのかっ!?
まじめに間違えてたのはあたしだけっ!?
うんざりとしつつ当人は、

「俺の名前などどうでもいい。
それよりも、例の物を渡してもらいたいのだが。いやだと言うのなら無理やり奪い取るまで。
どちらがいいか選んだらどうだ?『ソフィア』さん」

―――?
あたしとルキは顔を見合わせ・・・

『ああ』

と、二人同時に手を打った。

「あたしはリナよ。リナ=インバース。ゾルフってやつに言ったのはでまかせの名前」

「・・・は?」

・・・・・・・・・。
しろひ・・・さらに空気が白くなった・・・

「――名前なんかどうでもいいのさ」

声は後ろからした。
あたしたちはそちらに目をやり・・・居たのは、ひとりの獣人〔ワー・ウルフ〕。
正確にはトロルと獣人〔ワー・ウルフ〕のハーフのようだが、面倒なので一括して獣人〔ワー・ウルフ〕と呼ばせてもらおう。

「とゆーわけでルキ!がんばって!」

「・・・はいはい。
――すべての力の源よ
輝き燃える紅き炎よ ――」

「・・・ほう?そっちの嬢ちゃんも術が使えるのか・・・」

「――我が手に集いて煉獄となれ!」

「・・・っておいこらっ!そんな術をこんなところで・・・」

呪文の内容に、ゼルガディスがあわてる。

「問答無用っ!烈火球〔バースト・フレア〕!」

精霊魔法、火炎系最大の呪文。
獣人〔ワー・ウルフ〕に向かってまさしく煉獄の劫火が野を駆ける!

――ごぐぁんんっ!

「のげろぉぉおっ!?」

あ、吹っ飛んだ。お星様になってら。

「・・・・・・連れて来た意味がなかったようだな」

ぼそりとつぶやいたのは、ゼルガディスではない。
ゼルガディスの横手から出てきたのは、トロルたちを率いていたおっちゃんだ。
狂は屋外とあって槍斧〔ハウルバード〕なんぞを担いでいる。どうやらこちらが彼本来の得物なのだろう。

「炎の矢〔フレア・アロー〕!」

ばじゅっ!

あたしとルキは左右に飛ぶ。
炸裂した呪文によって、もうもうたる土ぼこりが舞い上がる。

――しまった!ルキから離された!
仕方がない。逃げるか・・・!

あたしは走り、追ってくるゼルガディスをかわしつつ森の向こうへ。
やがて湖が見え・・・

「――影縛り〔シャドウ・スナップ〕!」

「・・・!」

足が止まる。
あたしはあわてて呪文を唱え、放つ。
生まれた光は束縛からあたしを逃した。
だがしかし、そのときすでに――目の前に、ゼルガディスがいた。







あとがき

エ:よ・・・ようやく一章の真ん中くらいですっ!

L:ほう。昨日映画を見ててアップできなかった、と?

エ:げぶぅっ!そ・・・そりはいわないでくださひ・・・

L:はっはっは。ロード・オブ・ザ・リングを全部見てたのよねぇ?

エ:ああ・・・レゴラスさま私をお守りください・・・(無理)

めぎょりゅぅっ!

L:・・・さて、エセ物書きが黙ったところでこれであとがきを終わりますv
  またお会いしましょう!