◆−冥王の存在する意味−雫 (2004/2/13 22:01:07) No.29330 ┗獣神官の存在する意味−雫 (2004/2/14 21:56:49) No.29345
29330 | 冥王の存在する意味 | 雫 | 2004/2/13 22:01:07 |
こんばんは、雫です。念のため言って(書いて)おきますが、これは私の書いていた『存在する意味』のおまけ・・・その後の話のようなものです。これだけでも楽しんでいただけるようなものではあれば良いのですが、イマイチ自信がありません。それでもオッケー・・・と言う方は読んでくだされば嬉しいです。 ************************************* 冥王の存在する意味 僕は一人で滅びの砂漠にこもっていた。あれから何匹もの魔族が僕をののしりに来た。僕は文句も言わずにそれを聞いていた。カタート山脈で・・・。 部下が滅びて・・・計画も失敗して・・・僕に何が残ったと言うのだろうか?そんな僕の元に聞こえてくるのは悪口だ。 『平穏を乱された』 『魔王様をこんな風にして・・・』 『部下も利用して全て捨て駒に・・・ 違う!それは・・・違う・・・。 耳を塞ぎたくなって、僕は滅びの砂漠の城の中で独りボーっとした一日一日を過ごしていた。本当に一日なのかも分からない。それでも今は外に出たくなかった。面倒見の良い獣王が一度来たときに言われた 『人間の・・・泣いている時の顔に見える』 どんな風に泣いてるのさ?僕の問いかけに獣王は簡単に答えた。 『吹っ切れたような、捨てきれないような・・・ 今まで生きてた中で一番悲しい表情だ。 お前から出る負の感情がとても重い。 』 そうだ。きっと僕は泣いているんだ。悲しいんだ。何が悲しい?簡単だ。全てが悲しすぎる。ここまで上手くいかないとは・・・自分の存在さえ嫌になる。 僕みたいなのがこんな所にいて、存在してて・・・何故、他のものの存在が消えてしまったのだろう。僕の存在が消えた方が良かった。あそこでクローバーに滅ぼされてれば・・・そうすればまだ楽だったかもしれない。なぜ、金色の王ロードオブナイトメア様は僕たちに何も言ってくれない。僕たちの味方なのに、金色の王が出てくれれば世界は簡単に滅ぼせるのに・・・。 人間だったら・・・ここで滅びることも出来たんだろう・・・急激な温度変化に身体をやられ食べ物も無く、朽ち果てる。 いっそ、そっちの方が楽だ。今、こんなにも苦しい。心も身体もボロボロだ。 ゴトッ 「ん?」 僕は突然聞こえた音に少し驚いた。この城にいるのは僕だけのはずだ。だけど今音がした。僕は今、最上階にいる。誰かお客さんだろうか・・・? 足音がこちらに聞こえてくる。僕が身構えた。敵かもしれない。 ガチャッ 「失礼しま〜す。」 僕の目の前に現れたのは一人の男だ。ひょろりとしていて覇気の無い瞳をしている。くすんだ金髪で特に顔に特徴は無い。確か魔族だったはずだ。名前は・・・そうだ、確かブラドゥ。 ブラドゥは部屋を見渡している。こんなところまで僕をけなしに来るなんて、たいした度胸だよ。滅ぼす時は苦しまずにしてあげるv ブラドゥは残念そうに溜息をついて言った。 「ダメですよ、冥王様。もっと緑を増やさないと。だからどんどんマイナス思考になるんですよ。ヒヤシンスとか・・・、ユリとか・・・冥王様なら薔薇とか育てるのも良いですね。・・・あっ、でも初心者には難しいなぁ・・・。」 「プラス思考な魔族なんて聞いたこと無い。て言うか、人の城に入ってきて何」 「そういえばそうですね・・・・。すみませんここがどこだか考えて言うべきでしたね・・・。」 反省した様子を見せるブラドゥ。僕はその反応を見てコイツはまともな奴だと思った。ちょっと植物LOVEなところがあるだけで・・・ 「立ったらサボテンなんてどうでしょう?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・ はい・・・・・・・・・・・・・・・?」 僕は間抜けな声を出した。目の前にいるブラドゥは満足そうな表情をしている。僕はブラドゥの事を見た。やっぱり変人だ。怪しい。こんな奴が魔族なんて信じられない。ブラドゥは言った。 「ほら・・・砂漠だし・・・そんなところだとすぐ枯れちゃうし、枯れないにしても水の量の調節が大変ですからね。サボテンなら」 「ちょっちょちょちょちょっと・・・待ってよ。何で植物の話をしてるの?」 「え・・?冥王様の城には観葉植物が無いのでね。」 「かんよう・・・?・・・・とにかく!僕はそんなもの嫌いなの!」 僕はその台詞を吐いた後、思いっきり後悔した。まるで子供みたいな口調だ。確かに、部下や、覇王や獣王にはたまにガキみたいな口調をする。だけど、こんな馬鹿の前でこんな事を言ってしまうなんて・・・。 「・・・・・・・・・・・・ 冥王様 かわい〜v 」 ブラドゥが僕の事をきゅっと抱きしめる。決めた・・・苦しめて滅ぼしてやるv 僕はブラドゥの手から逃れて言った。 「良い?こっちが上司・・・。分かる?」 「分かってますよ・・・。でも・・・感情表に出してる冥王様が緑の次に可愛いと思って・・・。」 「可愛いって・・・失礼だと思わないわけ?ああ・・・そういえば観葉植物の話だったっけ?・・・僕はそういうの嫌い・・・嫌いになった・・・。」 それが真実だ・・・。植物は好きだった。綺麗な花を持ってくると部下は皆喜んだ。嬉しそうなかおをした。僕は言った。 「植物は育てなきゃいけない。誰かが守って・・・それでも・・・どんなに大事にしても・・・どうせ枯れちゃうし・・・弱いし・・・それに・・・」 「緑を馬鹿にしないで欲しいなぁ〜・・・。緑はねぇ・・・強いんですよ。」 ブラドゥの言葉に僕は驚いた。こんな事を言われるとは思ってなかった。ブラドゥは言った。 「緑は誰の手を借りなくても雨や日の光の恵みを受けて、独りでもちゃんと生きていけるんですよ。魔族より強いかもしれないでしょ? と言うわけで・・・。冥王様、落ち込まないで下さいね。ぼくはあの時砂漠で冥王様が助けてくれなかったらとっくに滅びてたんです。感謝してますから。」 「え?」 僕は驚いた。砂漠・・・・・。あの時だ。火竜王を騙してカタートへ一人で向かっていたとき、魔族が戦ってて劣勢になってたから思わず助けたんだ。 「・・・・クローバー・・・・クリア・・・・ノア・・・・スカイ・・・・。」 僕はブラドゥに抱きついた。辛かった思いが一気になくなった気がする。僕は何をやっているんだろう。独りはもう嫌なのに・・・自分から一人になろうとしてた。 しばらくして、ブラドゥはカタートへと帰っていった。僕はある一室に向かって歩き出した。その部屋には僕の四人の部下の持ち物が置いてある。花瓶や鉛筆、はたまたシャンデリアまで・・・。 スカイとの約束を思い出したから・・・・・。僕はそこに向かっていた。 スカイの部屋にあったタンス。そこの三段目を開く。そこに一枚の紙が入っていた。僕はそれを取り出して中を読んだ。 『ゼロスさんへ お約束の料理のレシピできました。 黄金竜を一口で倒せます!自信作です!』 この後は料理の作り方が書かれている。僕は急におかしくなった。あんな時にこんなものを頼むなんて・・・・スカイらしい。そういえば獣王のところのゼロスもスカイ並みのありえない味覚を持っていたような気がする・・・。 僕はポケットにそれを突っ込んだ。獣王のところへ手紙を届けに。 僕はあまりにも一人になりすぎた。独り過ぎて寂しかった。突然たくさんの物を失って・・・失いすぎて・・・。もう独りはいやだ。孤独はいやだ。だからこれから皆をひっぱて行く。一人にならないために。僕は一人では滅びたくない。魔族の為に自分自身への償いの為に。世界の滅びを進める。僕は死をつかさどる冥王。できないはずは無い。 それが僕の存在する意味だと思うから・・・ ************************************* えっと・・・、これから増えます。獣王とか覇将軍とかその他色々・・・。 こんなものですが最後まで読んでくださる方がいてくれれば幸せだなぁ、と思います。 それでは・・・・・。 |
29345 | 獣神官の存在する意味 | 雫 | 2004/2/14 21:56:49 |
記事番号29330へのコメント 獣神官の存在する意味 群狼の島。そこに獣王様の新しい居城が建てられていました。僕が獣王様の身体から離れた時にはもう戦争は終わっていました。もう彼女のもとへ行くチャンスは無い。 そのことが無性に悲しくなってくる。冥神官・ノア。僕とちがった冷笑を浮べている少女。僕の事を生ゴミと呼び、自分の生き方に自信を持っていた。そんな彼女の事を僕は愛していた。少なくとも僕はあの感情を愛だと思っている。魔族なのに何でこんな感情を持ってしまったのだろう・・・。でも、その気持ちが叶う事は無い。彼女が魔族だからではなく、彼女に・・・好きな魔族がいたからだ。その男の話によるとノアさんは彼の為に自らの命を犠牲にしたらしい・・・。 なんで・・・どうして傍に居ながら彼女の事をとめられなかった!?彼女が滅びてしまうぐらいなら魔族の敗北だって構いはしない。でも彼女は滅びた。それが現実。そして僕が生き残ってしまった事も・・・現実としか良いようがない。 鏡の前に座りただただ自分の顔を見ている。この時間は無駄なものだ。でも、もう何もすることの無い僕にとってはとても重要な時間だ。その時間、僕は生きながらえている。正直まだ生きていたいと言う気持ちがある。だけど僕はその反面、自らの滅びを望んでいる。 扉がゆっくりと開き獣王様が入って来る。獣王様は僕の前に歩いてきて言った。 「あれから三十年たった。少しは気分も落ち着いただろう?」 「・・・・・・・・・いいえ・・・。僕はまだ・・・自分が外に出て行って良いのか分からないんです。」 「・・・・・・」 僕の答えに獣王は黙り込んだ。僕は自分の人生を嘲るように少しだけ笑った。僕は泣くような、消え入りそうな声で言った。 「僕は・・・存在していたいんです。・・・ですが・・・・、・・・僕には・・・存在する理由が見つからないんです。・・・・こんな僕がこの世界にいて本当に良いのか・・・。上手くはいえませんが、僕はもう・・・役目の終わった生き物のような気がしますし、僕の事を大事に思ってくれる人なんかいないんじゃないかと・・・」 僕はそこまで言って黙り込んだ。獣王様が僕の前で膝をつき、しっかりと僕の事を抱きしめていた。獣王様は澄んだ声でいった。 「ゼロス・・・お前は馬鹿か?私がお前のことを心配していないと?私がお前の事を大事に思っていないと言うのか?それにお前の役目が終わるはずないじゃない。お前は私の部下なんだ。まだまだ命令する事は沢山ある。私にはお前と言う部下が必要なのだ。それにな・・・冥神官との約束はどうする?」 僕は少し驚いた。全く完全に忘れていた。僕は彼女の事を記憶の中に留めて生きつづけなくてはいけなかったんだ。今、思い起こそうと思えば僕は彼女の事を忘れかけているではないか・・・。彼女の事を思い出そう。あの頃のように本当の笑みをつくれた時に戻れるように・・・。 『生ゴミ!あんた、あたしより弱いんだからね!』 冷たくも優しい表情・・・ 『それは秘密です。』 何かあるとそうやって全てうやむやにする 『生ゴミはあたしの事・・・忘れないでくれる?』 「忘れませんよ・・・。」 僕は思わず呟いた。思わず笑みがこぼれてしまう。僕は獣王様に言った。 「ありがとうございます!何かすっきりしました。」 「・・・そうか・・・良かった。・・・あ・・・私が来たのは冥王が来ているからだった・・・。」 「・・・?・・・・・冥王様・・・?」 僕は首をかしげた。獣王様は小声で「頑張れ」と応援してから外に出て行った。 僕は階段を下りて外へと続く扉を開けた。 「遅い!いつまで待たせれば気が済むわけ?これだから甘やかされてる部下は嫌なんだよ。」 「スミマセン。」 僕は思わず冥王様に謝った。冥王様はポケットの中からくしゃくしゃになった紙を取り出して僕に突き出した。僕が対応に困っていると冥王様は言った。 「これはスカイの手紙。ゼロス宛みたいだから・・・。」 あの時からかなり経っているのに・・・。冥王様ももしかして今の今まで僕みたいに落ち込んでいたのだろうか・・・。僕はにっこりと微笑んで言った。 「ありがとうございます!」 「ヴェッ・・・・べ・・・別にゼロスの為にやったんじゃなくて・・・これはスカイの最期の頼みだからでその・・・・・・・」 「分かってますよ。ありがとうございます。」 僕はその紙を見た。料理のレシピが載っている。この前頼んだ黄金竜を一口で倒せるほど美味しい料理だ・・・・。 冥王様はその後、軽く会釈して空間を渡り消えた。僕は城の中に入って獣王様に言った。 「獣王様!台所借ります!」 「・・良いけど何するの?」 僕はその質問に対して人差し指を口元に運び極上の笑みでいった。 「・・・・・・ それは秘密です。 ・・・・・・・」 獣王様が微笑む。僕は台所に走って行った。獣王様にも食べさせてあげよう。 長い時が僕の感覚を鈍らせ僕の存在を消し去ろうとする。今までは悲しみで前が見えなかった・・・。だけど・・・今は存在する理由ができた気がするんです。僕は長い時間の中で彼女との約束も、彼女の存在さえ忘れてしまうかもしれない。それだけ僕は弱い・・・。だからこそ、僕は彼女の癖を真似してどこかで・・・僕と言う存在のどこかで彼女が生きていられる場所をつくる。 それが僕の存在する意味だと思いたいんです ************************************* 無事第二話目終了・・・。疲れました。途中ご飯食べたり色々あってかなり時間がかかりました・・・(お風呂にも入ったし・・。)。こんなものでも読んでくださる方がいてくれれば本当に嬉しいです。 それでは・・・。 |