◆−戦場・友人 第1話−a (2004/2/25 19:56:32) No.29444
29444 | 戦場・友人 第1話 | a | 2004/2/25 19:56:32 |
「その存在は、危険だ。」「きっといつか我々に牙を向く」「だが必要なのだ」「我々の勝利のために」「この化け物を今使わなくて、いつ使う」 「化け物め」「恐ろしい」「人殺し!」「お前が死ねばいいのに」 あぁ、分かっている。分かっている。自分だって嫌だというぐらい理解している。だけどどうしようもないんだ。それにこんな私を作ったのはお前らじゃないか。 私だって嫌だ。苦しい。恐ろしい。はやく死にたい。はやく楽になりたいよ。 あぁ、どうか。誰か。どうか、私を。 殺して 「冷たい…」 そう呟いて、彼女を見た。いや、彼女とではない。この人は「彼」と呼ぶべきだろう。 「……そりゃあ、こんな真冬に川に入りゃあ冷たいわな。」 彼は呆れたように私を見た。私はその顔を見たかったが、生憎体が動かずしかも私は彼の足元に倒れていたので、彼の顔は逆行になっていて残念な事に見れなかった。 けれど、きっと、彼は呆れたような可笑しそうな、そんな顔をしているのだろう。簡単に想像がつく。それがなんだか可笑しかった。 「おい、何笑ってんだ。このままじゃ、真面目に凍死するぞ」 「じゃあ、はやく私を連れて行け。」 そう言うと、彼は(本人曰く切るのが面倒なので)だらしなく伸ばした髪を(けれどその髪は血のように美しい色で、私は好きだ)ぼりぼりとめんどくさそうに掻いて言った。 「それが人にモノを頼む態度かな?ウィッシュ君。」 私は言葉に詰まった。それと同時に、目の前にいる彼に腹を立てた。 寒さのせいで体が震えていて、うまく動かせない。このままだと彼の言うとおり、凍死するだろう。危険な状態だ。私はまるで他人事のように思った。 そんな最悪な状態の私を見ているのに、彼はいつもとおりだ。それに腹を立てた。 だからと言って彼の思い通りに行動するのは嫌だった。正直言うと、人に物事を頼むのは苦手だ。いや、下手に出るのが出来ないのだ。だから、さっきから彼の望む言葉を言えない。 だけど、もし自分がこのまま何も言わなければ、彼は私を置いていくかもしれない。彼はそういう人だ。それだけは避けたかった。 プライド、なんか。捨てなくては。 「………お願い、します。連れて行って、下さい。」 「…何か心かこもってないなぁ。けどまぁ、いっか。」 私が彼の思いどおりの行動に出ると思ってなかったのだろう。少し驚いたような口調だった。だが、彼はぶつぶつ言いながらも私の腕を持ち上げ担いだ。 その瞬間彼から汗の臭いがした。けれどもそれは私にとって嫌な臭いではなく、とても安心できる臭いだ。 私はその臭いに包まれながら、疲れた体を癒すため、深い眠りについた。 「ここ、は。」 眼が覚めると、そこにはテントの中だった。体を動かそうとしたが、動かなかった。まだかすかに震えている。 「お目覚めかい。」 その言葉にハッとして、なんと動かせる顔を隣に向けた。彼だ。 「私は…」 まだはっきりと覚醒してない頭で、私は彼に話し掛けた。 「覚えてないのか。お前は川で溺れかけていたんだよ。」 言われて、朦朧とした頭でこれまでの事を思い出してみた。 風がテントを叩きつける音が煩かった。 私の名前はウィッシュ・レイン。地位は少尉だ。そして私の隣に座っている彼の名は、北村砂名。地位は少佐。私の上司だ。 私達は今、上からの命令で戦地にいる。と言っても、私達が配属された場所は比較的安全地帯だった。そんな時に事件は起こったのだ。 いきなり、軍の宿泊施設が爆破し、続いて発砲があった。テロだ。皆、油断していたのだろう。いきなりの敵からの攻撃に、周りの者は慌てた。 私は爆発から離れた場所にいたので助かった。そしてすぐに敵に向かった発破した。敵はみるみると倒れていった。何人かが死んだ頃には、他の者達も冷静さを取り戻し応戦していた。 その時だ。軍の制服に身を包んだある用兵が、テントの奥へと逃げるように去って行ったのを私は横目で見た。不信に思い、私は彼の後をつけた。彼はテントから離れて行き、とある川原まで来ていた。私は岩陰に隠れ、彼が動くのを待った。 何分かすると、木々がかすかに動くのが聞こえて、森の奥から数人の人が現れた。 敵だ。 私は瞬時に理解した。彼は密告者だったのだ。まずい。はやく知らせなくては。そう思い、私は元のテントの場所へと行こうとした。だが 「運悪く、音を立ててしまい敵に気づかれた。だが、何とかその場を乗り切った。」 「だけど弾を何発かくらっちゃって、そのせいで足を滑らせて川にドボン。何とか流されずにすんだけど、動けずにその場で倒れていた。んで、お前がいない事に気づいた俺が探しに行って、ぐったりしてたお前を見つけたってわけ。」 OK?そう言って、彼ははぁと大げさにため息をついた。 「あのね、何一人で勝手な行動してるわけ?俺はお前の上司なの。で、お前は俺の命令で動く部下。分かる?俺の方が偉いわけ。お前にもしもの事があったらどうすんの。俺が見つけなきゃ、お前あのまま凍死してたぜ。ばーか。」 舌打ちして、彼は頭を掻いた。 頭はまだはっきりしてない。だけど彼が酷く怒っているのは分かった。きっと彼は私がいない事に気づいて、必死に探してくれたんだろう。自分の危険もかえりみず。 「申し訳ありませんでした…。」 本当に申し訳なく思い、私は言った。あぁ、どうして私はいつも彼に迷惑をかけるのだろう。彼には無様な姿ばかり見せている。 はぁ また、ため息が聞こえた。だけどさっきの荒荒しいのとは違い、今度のは本当に呆れて出たため息のようだ。 「頼むから、これからは自分勝手な行動はつつしめ。これは、命令だ。」 あと、と彼は付け足して言った。 「そんな調子でここにいろ。いつか死ぬぞ。頼むから気をつけてくれ。いくら安全地帯だからと言っても、いつ敵襲がくるか分からないんだ。これは、友人としてのお願いだ。」 「…………」 彼は優しい。今も口調はきついが優しく私を慰めて、腹は減ってないか、悪いところはないかと聞いてくる。優しくしないで欲しい。こんな、私なんかに。 「どうして」 「ん?」 気付いたら、声が出ていた。駄目だ。ここに来て、私は弱っているのかもしれない。だが、自然と口から言葉が出る。 「どうして、やさしくする」 声が擦れ、どことなく弱弱しく感じる。こんな女々しい自分が嫌いだ。 「どうしてって、親友だからだ。大切な。」 そう言って彼は私の頭を撫でた。子供扱いされるのが嫌で、振り解きたかったが、体が動かなかった。 お前の髪は柔らかいなぁ。金色で、すげーきれー。 そう言って、女子供を相手にしているように、愛おしそうに撫でる。 あなたのほうが、ながくて、すきとおっていて、こわいくらいきれいなのに。 腰まではあるだろう、彼の長く真っ直ぐな赤髪を見て、私は眠りにつきそうな、はっきりしない頭で彼と出会った頃を思い出した。 つづく(?) 小説を書くのは、はじめてです。 いつもは絵の方をつらつら描いてます。 キャラクターは友人が考え、それを私が話しにしているものです。 内容はまだまだで、分からないでしょうが。 よろしくお願いします。 |