◆−スレイヤーズTRYノベル:十五話:新たなる旅立ち−オロシ・ハイドラント (2004/3/8 22:05:29) No.29561 ┣ある意味、利害の一致ですね。−エモーション (2004/3/9 21:27:41) No.29576 ┃┗Re:ええ、どうやら一致してるみたいです。−オロシ・ハイドラント (2004/3/10 16:01:51) No.29583 ┗スレイヤーズTRYノベル:十六話:神の住まう森(前編)−オロシ・ハイドラント (2004/3/18 19:08:26) No.29635 ┗スレイヤーズTRYノベル:十七話:神の住まう森(後編)−オロシ・ハイドラント (2004/3/19 18:07:37) No.29643 ┗不可思議な生態ですね−エモーション (2004/3/19 22:01:48) No.29646 ┗Re:食べ物なしで生きられるんでしょうかねえ?−オロシ・ハイドラント (2004/3/20 15:13:17) No.29649
29561 | スレイヤーズTRYノベル:十五話:新たなる旅立ち | オロシ・ハイドラント | 2004/3/8 22:05:29 |
こんばんは。ハイドラントです。この話を投稿するのは久しぶりかも知れません。 今回は遊びとして、注釈(?)をつけてみました。 本文を読み終えてからご覧になることを推奨致します。 <@><@><@><@><@><@><@><@><@><@> 15:新たなる旅立ち 火竜王の神殿の四大祭の一つである地竜王祭(*1)は朝早くからおこなわれた。 フィリアに叩き起こされたあたし達は、神殿の南側に位置する「地の間」(*2)と呼ばれる場所に連れていかれた。 祭りとつくのだからさぞ賑わいのあるものかと思っていたが、地竜王祭は実に静粛な雰囲気の中でおこなわれた。 数え切れないほどいる竜達は、誰も一言も発しない。 ただ祭壇の上に立つ最長老の姿を見つめている。 最長老が声を発した。 無駄と思えるほどに言葉を連ねた後、これから地竜王祭を開始すると述べた。 竜達は意味不明の歌を歌い、意味不明の言葉を囁くように発した。 「何なのよ。これ」 後ろの方で観察していたあたしは、小声でラファエルに問い掛けた。 「……知りませんよ。祈りの言葉か何かじゃないですか?」 博識な彼でも知らないとは……。 謎の囁きが終わると、なぜか祭壇上で劇がおこなわれた。 筋は、神に祈りを続けているのに全く報われない男が、やがて世界そのものを憎むようになり、悪魔と契約を結んで世界を滅ぼすことを企むが、正義の神官によって倒されるという単純極まりないものであった。 さらに台詞もやたらと説明口調で、演技も下手くそ。 どうしようもなくつまらない。 フィリアにこれの何が良いかと訊くと、筋が分かればそれで良いんだという言葉が返って来た。 何でもリアリティがあってはいけないらしい。 世界を滅ぼそうとする悪が登場する物語を、リアルに表現するのは異端のやることなのだという(*3)。 ……よく分からんが。 その後、全員が外に出た。 一年前に地竜王の神殿に旅立った者の帰還を歓迎し、新しい神官を送るのだそうだ。 太陽が頂点に達した頃に、一匹の竜が現われた。 帰還して来た竜らしい。 レオネルド・アイマール助祭という青年の竜だという。 新たに旅立つ者には、何とミュヘンが選ばれた。 フィリアは嫌がるかと思ったが、むしろ彼が選ばれたことを喜んでいたように見えた。 何でも、他の神殿へ送られる者に選ばれることは非常に名誉なことであるらしい。 これは滅多にあることではないが、昇階――つまり階位が上がることさえあるのだという。 「さすがにいきなり司教になるとは思っていません。でもミュヘンはいずれ司教の最年少記録を塗り替えることでしょう」 彼は現在のところ、助祭と司祭の最年少記録保持者でもあるらしい(*4)。 「でも司祭になれたのはあんたと結婚したお陰じゃないの?」 と、フィリアに言ってみたが、こう返って来るだけだった。 「確かにそうかも知れませんが、ミュヘンが私と結婚出来たのは、彼が優れた人物だったからです。もしも本当に無能者だったら、最長老様は絶対に結婚をお許しにはなりませんでした」 さてミュヘンが旅立ち、地竜王祭が終わると、昼食の時間が来た。 全員で質素な食事を取った後、あたし達四人は最長老の部屋に呼び出された。 もしやアデイルの事件に関することではないかと考え、期待混じり、脅え混じりでいたのだが、当然のことながら――あたしがこのことについて知っていることに、最長老が気付いているなどということはありえない。フィリアが告げない限りは――、話は全く別のものであった。 最長老は単刀直入に言った。 ボーディガーを持って出ていけ、と。 「誘拐犯には仲間がおるそうだからな。もしも、そやつがボーディガーを奪おうと企めば、厄介なことになるからの」 誘拐犯の仲間――つまりヴァルガーヴは、どんな暴挙に出るか分からない。 万一、武力行使に出て来られたら、数の利で撃退は出来るかも知れないが、被害は必ず出る。 だがその時、ボーディガーが神殿に不在ならば、それを証明するだけで、追い返すことが出来る。 そして神殿にないボーディガーは、あたし達の手元にある。 それを推測することは容易だろう。 そうなれば、ヴァルガーヴはあたし達を狙う。 「ボーディガーは餌ということね」 「そうじゃな。しかし奪われてはならんぞ」 あたし達はヴァルガーヴを倒さねばならない。 あたし達だけの力でだ。 ちなみにこれは依頼に属することのようで、最長老からは依頼料がもらえることになった。 依頼料は前金だけでも相当な額であった。 「悪いが、出発は今すぐにしてもらおう。早い方が良いのでな」 「そうですね」 フィリアが嬉しそうに答えた。 「勘違いするなよ。フィリア、お前は残るのじゃ」 「ですが……」 「わしはお前を危機に晒したくはない。その気持ちが分からんのか!」 最長老は怒鳴り声で言った。 それは身勝手な発言なのかも知れないが、フィリアは最長老の孫なのだから、心配するのが普通である。 「でもリナさん達だけだと、どんな行動に及ぶか分かったものではありません。ボーディガーを街で売りさばいてしまうかも知れないんですよ(*5)」 「ならば、別に監視役をつけよう。戦力にもなるしな」 「監視役なら、一応つき合いのある私が……」 「危険だと言っておるだろうが! それにお前は戦力にならん」 「私なら大丈夫です。それにリナさん達がヴァルガーヴに遅れを取るとは思えません」 最長老と同じくフィリアも必至だ。 後の方は本気で言っているのかどうか分からないが、確かにあたしも監視役などいない方が気楽で良い。 「しかし……」 「もし同行の許可を頂けないなら、私は巫女を辞めて神殿を出ます。祖父と孫の関係にあるのも今日までです」 「…………」 フィリアは強かった。 ついに最長老を追い詰め、同行の権利を得ることに成功した。 さらに依頼料を吊り上げることにも成功した。 別れ際、最後にあたしは一つ尋ねた。 ボーディガーとは何なのか、と。 それを聞く権利はあたし達にはあるはずだ、と。 返って来た答えは、まさしく予想通りのものであった。 光の剣ゴルン・ノヴァと同じ、異界の魔王、ダーク・スターの作り出した武器の一つ。 ダーク・スター……闇を撒くもの。 この世界の魔王シャブラニグドゥと並ぶ、恐るべき闇の支配者。 世界に滅びをもたらす者。 最長老は言った。 ダーク・スターは、彼と敵対する竜神ヴォルフィードを打ち倒し、その力を喰らって暴走しているのだ、と。 異なる世界で起こったことはそう簡単には知ることが出来ないし、知ったところで干渉は出来ないので知る意味などほとんどないため、今はあちらの世界がどうなっているのか分からないが、すでに生ける者はすべて絶えているのではないか、と。 「これは迂闊には言えんことじゃが、もしもヴァルガーヴとかいう輩がそれを集めているとすれば……やつは世界を滅ぼすつもりなのかも知れん」 ダーク・スターの五つの武器は、五つすべて集めればダーク・スターそのものを召喚――召還?――することが出来るという力を持っているらしい。 「五つ揃えねば意味はない。しかし万が一にも五つとも揃えられてしまえば……」 その一つであるゴルン・ノヴァはヴァルガーヴが持っていた。 またセフィクスの持っていたネザードという小手状の武器も、五つの武器の一つであるという。 「これで良いじゃろう」 「ええ、ありがとう」 あたし達は退室した。 現在、所在が分かっている武器は、ボーディガー、ゴルン・ノヴァ、ネザードの三つ。 残りの二つも、もしやこの世界にあるのかも知れない。 異界の魔王が呼び出されでもしたら、それこそ本当に世界の危機。 正直言って、火竜王の病さえ些細なことに思えてしまう。 それはフィリアでさえも同感のようだった。 たとえ火竜王の病と関係ないとしても、ヴァルガーヴは倒さねばならない敵となった。 だが、ガーヴは世界を滅ぼすことを望んではいなかったはずだ。 ならば、なぜヴァルガーヴは世界を滅ぼそうとしているのだろうか。 あとがき やっとここまで来ました。神殿脱出(何か違う) 次回は番外編的なストーリーで、ヴァルガーヴとは全く関係のない敵と戦う話になりそうです。 ちなみに密室には実はゼル達の方が挑んだりします。 それでは、これで失礼致します。 ……ちなみに第三期は終わっていません。 ――リナちゃんのちょっとうるさい注釈―― * 1四大祭の一つであるらしき地竜王祭(*1):毎年秋におこなわれる。ちなみに他の三つは冬の水竜王祭、春の天竜王祭、夏の火竜王祭らしい。 * 2地の間:神殿の南側にある。ちなみに北には「水の間」、西(入り口は西向きであるらしく、従って入り口付近になる)には「天の間」があり、それぞれ火竜王以外の三体の竜王を意味しているのだという。 * 3世界を滅ぼそうとする悪が登場する物語を、リアルに表現するのは異端のやることなのだという:ならば悪人を登場させなければ良いだけの話だと思うのだが、それではだめなのだろうか? * 4彼は現在のところ、助祭と司祭の最年少記録保持者でもあるらしい:ミュヘンの年齢は千二百歳くらいらしい。信じ難いことだが、神殿の黄金竜の千二百歳は、人間でいう二十代前半程度なのだという。人間で、二十代前半で司祭になる者はごく稀だから、最年少記録保持者であっても不思議ではないが、なぜそんな記録が残っているのだろう。やはり暇だからか? * 5ボーディガーを街で売りさばいてしまうかも知れないんですよ(*5):失敬な。売るなんてもったいないことはしないぞ! |
29576 | ある意味、利害の一致ですね。 | エモーション E-mail | 2004/3/9 21:27:41 |
記事番号29561へのコメント こんばんは。 ボーディガー持参で神殿脱出……。何か思いっきり体の良い囮にされているような(汗) もっとも、リナが個人的にヴァルガーヴに命を狙われているのは事実ですし、 リナ達も「奪われたらまずいけれど、強力な武器」を持つことになりますので、 ある意味では利害の一致とも言えるのかも。 依頼にあたるのは「ボーディガーの警備」になるのかな。 地竜王の神殿へ行くことになったミュヘンさん。これは、交換留学生みたいなものでしょうか? もしかして、天竜王や水竜王の神殿にも同じように神官を交換して派遣しているのかな、と思いました。 ……といっても、水竜王の方は神殿が残っているかどうか、ちょっと怪しいうえに、 結界が解けたと言ってもさすがに千年ぶりでは、いきなり派遣は無いような気がしますが。 (まず、最初は現状はどうなっているのか、確認するのが先でしょうし) 次回からまたリナ、ガウリイ、ラファエルさん、フィリアとの旅ですね。 密室トリックにゼル達が挑む、ということは、ゼル達とは入れ違いに なってしまうのでしょうか? 丁度出るときにやって来たゼル達と再会して、どっかの街で待ち合わせするとか。 また、リナちゃんの注釈、面白かったです。 説明しつつも、きちんとツッコミしているところがリナですね。 それでは、短いですがこの辺で失礼します。 続きを楽しみにしていますね。 |
29583 | Re:ええ、どうやら一致してるみたいです。 | オロシ・ハイドラント | 2004/3/10 16:01:51 |
記事番号29576へのコメント >こんばんは。 どうも、こんばんは! > >ボーディガー持参で神殿脱出……。何か思いっきり体の良い囮にされているような(汗) >もっとも、リナが個人的にヴァルガーヴに命を狙われているのは事実ですし、 >リナ達も「奪われたらまずいけれど、強力な武器」を持つことになりますので、 >ある意味では利害の一致とも言えるのかも。 >依頼にあたるのは「ボーディガーの警備」になるのかな。 そうですね。 リナ達は依頼料も受け取っていますし、多分どちらにとってもプラスとなる取り引きだと思います。 まあ、もしかしたらリナは「厄介なもん押しつけやがって」と思い、最長老は「高い金払わせおって」と思っているかも知れませんが(苦笑)。 > >地竜王の神殿へ行くことになったミュヘンさん。これは、交換留学生みたいなものでしょうか? >もしかして、天竜王や水竜王の神殿にも同じように神官を交換して派遣しているのかな、と思いました。 そうです。 その竜王の名前のついた祭りの日に派遣することになっています。 >……といっても、水竜王の方は神殿が残っているかどうか、ちょっと怪しいうえに、 >結界が解けたと言ってもさすがに千年ぶりでは、いきなり派遣は無いような気がしますが。 >(まず、最初は現状はどうなっているのか、確認するのが先でしょうし) そういえば水竜王の神殿とかって言葉は聞きませんね。どうなったんでしょう(待て)。でも現存してたとしたら、すでに確認は済ましているでしょう。もう四年とどれだけか経っているはずですし。 > >次回からまたリナ、ガウリイ、ラファエルさん、フィリアとの旅ですね。 >密室トリックにゼル達が挑む、ということは、ゼル達とは入れ違いに >なってしまうのでしょうか? >丁度出るときにやって来たゼル達と再会して、どっかの街で待ち合わせするとか。 リナとゼルは私にも予期出来なかった形で再会してくれました(笑)。本当に細部は考えなしでやりましたから。でも意外と書いてみると書けるものみたいです。 > >また、リナちゃんの注釈、面白かったです。 >説明しつつも、きちんとツッコミしているところがリナですね。 注釈は書いてて本当に楽しかったです。この小説関連でしたことの中で一番楽しかったかも。またやるかも知れませんし、この話を別の場所(HPなど)で発表する機会があれば、一話から十四話にも取りつけるかも知れません。うるさくないように、ほどほどにしなきゃなりませんが。 > >それでは、短いですがこの辺で失礼します。 >続きを楽しみにしていますね。 ご感想どうもありがとうございました。 次回はすぐに投稿出来るか、かなり間が空くかのどちらかだと思います。 それでは! |
29635 | スレイヤーズTRYノベル:十六話:神の住まう森(前編) | オロシ・ハイドラント | 2004/3/18 19:08:26 |
記事番号29561へのコメント 16:神の住まう森(前編) 余計なことはしてくれるなよ。 これが、最長老が別れ際に言った言葉であった。 過去にも一度聞いた台詞だ。 全く不愉快な言葉である。 さてあたし達は今、東を目指している。 北は通って来た道、南はしばらく辺鄙な土地しかなく、西は巨大山脈――巨竜の化石なのだから、残された道は東のみ。 それに、東に進めばすぐに砂漠を抜けることが出来るのだという。 出発から数日、砂漠を抜けたあたし達は、出口の村で駱駝と馬を交換した。 砂漠の出入り口となる場所には、駱駝の貸し出しを生業としている者がいる。 その業者達はすべて手を組み、独自のシステムを築いている。 例えば、馬車に乗った人間がAシティから砂漠に入ろうとする時、自分の馬車馬を駱駝と交換し、僅かな料金を支払う。 そして砂漠を越えてBシティに辿り着いた時、また僅かな料金を払って駱駝と馬を交換するのだ。 愛着のある馬や名馬を持つ者でなければ、実に便利な機能と言えるだろう。 それからさらに東へと向かった。 別にどの方角でも良いのだが、ラファエルが古い都を訪ねたいと言い出し、その街がある方向へ勝手に馬車を走らせたのだ。 そのラファエルが目指す都、ローズ・シティは薔薇の街の意ではなく、後世に偉大な功績を遺した大魔道士マーヴェン・ローズの名を取ったものであるのだという。 元は別の名前だったが、遥か大陸北方からこの土地を訪問したマーヴェン・ローズ氏が、この街にマジック・アイテムを寄贈した時に改名されたのだそうだ。 「あの街は、マーヴェン・ローズが、若かりし頃のレイ・マグナスとバース・ブラウンの両賢者を連れて訪れた千年以上前にも存在していたんです。ムッサボリーナ級の歴史を持っているんですよ」 この三人の偉大な賢者は、主に黒魔術の分野で活躍したが、マーヴェン・ローズは、当時はまだ失われていなかった神聖魔術の研究もしていたらしいし、信仰に興味を持ってもいたようだ。 バース・ブラウンは黒魔術と白魔術の融合に挑戦したという記録もある。 大賢者レイ・マグナスに比べ、他の二者は知名度において大きく劣るが、功績にでは互角以上を見る者もいる(*1)。 それにしてもラファエルは、どこでこれだけの知識を仕入れたのだろう。 思えば、あたしはラファエルについて知らな過ぎる。 凄まじいまでの魔道の才を持ち、あたしについての多くの情報を知っており、あたしを火竜王の神殿に呼び寄せた。 彼は一体何者なのだ? ある夜、眠れなかったあたしは、宿の屋上へと昇った。 屋上にはラファエルがいて、月もない夜空をただ眺めていた。 あたしはそっと近寄った。 随分と空気が冷たい。 もう冬はすぐそこまで迫っている。 冷たい闇の世界の中でラファエルの後ろ姿は、妙に現実離れして見えた。 孤高の魔道士のマントは、静かに風に揺れている。 間近まで迫ったが、彼はあたしに気付かないようだ。 そっと顔を覗き込むと、不意に彼は笑顔を浮かべた。 優しい瞳があたしを見る。 即座に視線をそらしたあたしは、 「眠れないの?」 ラファエルは視線を天に戻し、冷たい息を真っ白な月に吹き掛けた。 「そういう日もありますよ」 穏やかな口調で言う。 「……ねえ、訊きたいんだけど」 闇は幻想を醸し出す。 広い世界の片隅で、あたしは彼に尋ねごとをした。 「何で色んなことを知ってるの?」 ラファエルは笑った。 微かに、柔らかに。 「……先生に教えてもらったんですよ。動かない、息もしない、図書館なんかにいくと数え切れないほどいる先生」 そして少し、表情が暗くなった。 苦味のある表情だ。 「本の知識?」 「実を言うと私は、とある魔道士に拾われた身なのです。いわば捨て子だったんですよ。私はその魔道士の様々な蔵書を少しずつ読んで、知識を身に着けていっただけです」 「その人は優しかったの?」 するとラファエルは、彼らしくもなく豪快に笑った。 「その魔道士は、フィールド・ワークとの名目で、旅を繰り返していました。様々な観光地を巡ったり、古い建築物を見にいったり、トモシビジシやアカマダラシロウサギ(*2)などの珍しい獣を探しにいったり。……私の世話は、使用人に任せっ切りでしたよ。唯一してくれた親らしいことといえば、莫大な遺産を遺してくれたことくらいですね。もう使い果たしましたけど」 ラファエルの目は今、過去を見ている。 あたしの位置からは見えることのない、彼だけに広がる地平。 そこは豊穣の色か、それとも冷たい灰色か、表情は実に微妙でそれさえも判別がつかない。 「それにしても、子供の頃の傷ってなかなか治りませんよね」 「え?」 「あ、いや、何でもありません。ああ、そろそろわたくしは眠ることにします」 ラファエルは踵を返し、瞬く間に遠くにいってしまった。 「あっ、そう。……じゃあね」 霧が世界を包み込み、薄光が朝露を照らし輝かす朝。 濡れた大地を馬が駆ける。 平穏で、それだからこそ美しい世界。 現実感は極めて薄く、まるで絵画の世界に迷い込んだかのようである。 街道を、あたし達を乗せた馬車が進む。 ローズ・シティはまだ遠い。 「ヴァルガーヴ、来ないわねえ」 砂漠を越えて、東に五日ほど進んだが、襲撃のはまだ一度もない。 「やはり、傷がひどいんじゃないでしょうか? あるいはなかなか居場所を見つけられないという可能性も……」 フィリアが言った。 当然のことながら、ヴァルガーヴに関して知っていることは、ここまでにすべて伝えてある。 「俺の剣も取り返さにゃならんからな」 ガウリイもいつになくやる気だというのに、暇な日々が続くばかりだ。 眠気と退屈さに、思わず欠伸をしたあたし。 ……このまま一生襲撃がなければ、それはそれで良いかも知んないけど。 だがその日の午後になって、状況は一変した。 あたし達を乗せた馬車は、半包囲され、ゆく手を阻まれていた。 悪意と敵意が溢れている。 沈黙と静寂、無気味な連中だ。 笑い声が聴こえた。 見回すと一人だけ異質の者がいる。 その男の声だ。 彼らは馬車ではなく、妙な獣に引かせた車に乗ってやって来た。 その獣の外見は、トカゲの竜の中間ような姿でも述べておけば良いだろうか。 彼らはいくつかの竜車――便宜的にそう呼ぶことにする――から降りて、あたし達を半包囲した。 人数はざっと三十人。 すでにあたし達は馬車を降りて、相手と向かい合っている。 もっともフィリアだけは例外で、馬車の中に篭って震えているが。 「雑魚……かしら?」 「盗賊とかじゃなさそうだな」 「あんな盗賊を見たことはありませんね」 確かに雑魚盗賊といった風体ではない。 この地方の盗賊に詳しいわけではないが、それでも断言出来る。 こんな盗賊はまずいない。 この連中は、一人を除いて全身白ずくめである。 亡きエイデンバングルの着ていたローブを白く塗り替えたら、大体こんな感じになると思う。 「何者よ? あんたら」 無気味な沈黙に対して、あたしは声を張り上げた。 「答えないなら……殺されても文句は言えないわよ」 あたしはそう言って、表情を一変、にっこりと笑って見せた。 だが動揺の様子は見られない。 黙っている者達は黙り続けている。 笑っている男は笑い続けている。 「いい加減、時間取らせないでよ。掛かって来るなら、とっとと掛かって来なさい!」 「ならば」 その時、笑っていた男が笑みを絶やした。 手には鉄槍を持ち、顔には無気味な木の仮面をつけ、露出の多い真っ黒な肉体に奇妙な紋様を刻んだシャーマンのような格好の男だ。 その男はガウリイの方を向き、真面目な表情で小さく呟く。 「眠れ」 その途端、ガウリイは全身の力が抜けたように倒れ、死んだように動かなくなった。 続いて視線はあたしに向けられる。 目をそらそうしたが、間に合わなかった。 視界が揺らぎ始める。 激しい眩暈に、自分が自分でなくなったのようだ。 言葉が呟かれた。 「眠れ」 その瞬間、意識が途絶えた。 ここはどこだろう。 始めにそれを考えた。 頭がぼんやりしている。 海中を漂っているかのようだ。 気分がひどく悪い。 ああ回る。 回り続ける。 渦を巻くように、回転は続く。 やがてあたしは目を覚ました。 その途端に、意識が復旧する。 慣れない瞳が映し出したのは、暗い部屋の情景であった。 隣にフィリアがいる。 毛布を纏っている。 眠っているのか? 起きているのか? あたし達は小さな部屋にいた。 石の床は氷のように冷たい。 毛布が部屋の隅に用意してある。 便器まである。 ここは牢獄か? 荷物はない。 武器の類もすべてなくなっている。 恐らくはボーディガーも。 「フィリア!」 あたしは彼女の身体を揺さぶる。 反応はあるみたいだ。 「……な、何するんですか。だから食べられませんってば。トマトも人参もピーマンも嫌です。勘弁してください!」 ……どんな夢見とんじゃ。 とにかく無理矢理フィリアを起こし、彼女に現実を直視させた。 「どうすんのよ。こんな牢屋入れられて……」 「そんなことはとっくに分かってますよ。私はあなたより早く、意識を取り戻したんですから」 「じゃあ、呑気に寝てるんじゃない!」 「良いじゃないですか。別に起きてても事態が良くなるわけじゃないですし……」 ……確かにそれはそうかも。 あたしは少し焦っていたのかも知れない。 とりあえず唯一出口となりえる鉄の扉を調べにいこうとしたが、 「そこは開きませんよ。私の呪文でも無理でしたし」 そう言われ、おとなしく自分の毛布に包まることにした。 へたれで臆病者で役立たずな彼女も、一応は黄金竜の一族なのだ。 時が流れる。 微かに、ゆっくりと。 今は何時頃だろうか。 ガウリイとラファエルは無事なのか。 心配だ。 それに、 「退屈ですよね」 「そうね」 娯楽となりえるものは全くない。 あたし達はしあっち向いてほいや、連想ゲームなどつまらないゲームをして時間を潰していた。 かなりむなしい時間潰しだった。 それにしてもと、あたしはあの男のことを思い返す。 無気味な仮面をつけて、笑っていた男。 油断していたわけではないのに、見つめて言葉を呟いただけで、あたしを眠らせた。 魔道には眠りの術というものも存在するが、警戒している相手を、眠らせるのは容易ではない。 敵意を持って向かい合っている相手や興奮している相手を眠らせるには、相当な技量が必要なのである(*4)。 ……どうやら想像していたよりはずっと手強い相手のようだ。 目覚めてから三時間後くらいだろうか。 いや、正確な時間は全く分からない。 時を刻むものなど何もないのだ。 空腹を感じ始めた頃、扉が開いた。 冷たい風が吹き込んで来ると思ったが、むしろ風には暖かみを感じた。 入って来たのは白ずくめの男。 声は出さない。 無言のまま、あたし達に出るよう促がした。 どうやら食事ではないようだ。 廊下は生温い空気が占めていた。 あの部屋だけが寒かったのだろうか。 建造物は石で造られているようだ。 花の模様が壁に刻まれている。 狭い廊下を進まされ、あたし達は一つの広間に連れて来られた。 いくつもの丸い石柱に支えられた部屋で、中央には浴槽のようなものがあって、 水が湛えられていた。 透明な水で、底に硝子玉のようなものが沈んでいる。 もしやあの硝子玉はマジック・アイテムで水を生み出すものなのかも知れないと直感的に思った。 「浸かっておけ。出口で待っている。ちなみにタオルはあの獅子の口に入れてある」 白ずくめの男は部屋の奥の壁に彫ってある獅子のレリーフを指差して言い、早々と退室した。 残されたあたし達は、水の冷たさを恐れたが、悩んだ末に素直に浸かることに決めた。 フィリアの目を気にしながらも服を脱ぎ、水に足を入れる。 水は冷たかったが、普通の水に過ぎなく、少し安心した。 フィリアとともに十秒ほど浸かり、獅子の口から抜いたタオルで身体を拭いて、服を着、部屋を出た。 「もう夜だ。明日は早い。寝ておけ」 「ねえ、何か食べさせてよ」 「今は我慢しろ」 「……けち」 全く眠気はなかったし、空腹感もあったが、あたし達は横になることにした。 それにしても、この部屋だけ寒い。 これは嫌がらせなのか? あたしはいつの間にか眠っていたようだ。 その時に見た夢は覚えていない。 白ずくめに起こされて強制終了させられたこと以外は。 あたし達は建物の外まで連れていかれた。 驚いたことに、そこは深い森の中であった。 辺り一面が緑の壁。 絶望と不毛さを感じさせる。 とはいえ、ここは大樹海の中の孤島というわけではないかも知れない。 深い闇に続く道が、一本伸びている。 もしかしたら森を抜けられる道かも知れない。 またあたし達の出て来た建物の他に、小屋が一つあった。 ここは車を引いていたあの竜の出来損ないのための小屋なのだろうか。 気温は寒くはない。 空の顔色はあまり良くないが、妙に暖かさを感じる。 「着いて来い」 白ずくめが言って、緑の壁の方へと歩き出す。 逃げることを考慮に入れていないのかと思わせるほど、あたし達に関心を向けていない。 そんな態度を取られると、むしろ何か罠がある気がして来て、逃げる気にはなれなかった。 あたし達は素直に後を追う。 木々の間を潜り抜けて、白ずくめはどんどん先へいく。 木々が密集していて歩き辛い。 それでも白ずくめには自然と追いついた。 道中で聞いたことなのだが、この辺りが暖かいのはある事情があってのことらしい。 「理由はすぐに分かる。その原因へ連れていくのだからな」 ちなみにあたし達の部屋が寒かったのは、この暖かさが時としてもの凄い暑さになるからだという。 だからといって、暑くもないのに冷たい部屋に入れないで欲しいが。 気温は先に進むほど高まっていった。 同時に生き物達の気配は薄れていった。 一時間近くは歩いたのではないだろうか。 あたし達は開けた場所に出た。 ――リナちゃんのちょっとうるさい注釈―― (*1)大賢者レイ・マグナスに比べ、他の二者は知名度において大きく劣るが、功績については互角以上を見る者もいる。:マーヴェン・ローズとバース・ブラウンの知名度が低いのは謎であるが、あたしはインパクトの差だと思う。レイ・マグナスは開発した呪文竜破斬が派手だったから有名になったに違いない。 (*2)トモシビジシやアカマダラシロウサギ:トモシビジシには偶然にも出会う機会があったが、アカマダラシロウサギとは未だに会っていない。はっきり言ってかなり気持ち悪そうなんですが…… (*3)その獣の外見は、トカゲの竜の中間ような姿でも述べておけば良いだろうか。:竜に進化し損ねたトカゲでも良いだろう。こんな進化論を持ち出すとフィリアが怒りそうだが。 (*4)敵意を持って向かい合っている相手や興奮している相手を眠らせるには、相当な技量が必要なのである。:簡単に出来てしまったら、攻撃呪文の存在意義が大きく薄れてしまう。 あとがき こんばんはハイドラントです。 投稿が遅れたのとは実はあんまり関係ないのですが、期末テストみたいなものがありました。 全体的には簡単でしたが(うちの高校はかなりレヴェルが低いんです)、なかなか油断出来ない科目もありました。 それにしてもテストの日(全部で四日間)って本当によく目が覚める。 五時とか六時とかによく起きたし(すぐ寝たけど)。 ・ 眠りの呪文について 眠りの呪文に関してのアレコレは、本編と矛盾する可能性があります。 覚悟の上でやってます。 もし簡単に眠らすことが出来てしまったら、あまりにもヤバ過ぎですから。 ・ミスについて(ゼロスがおかしい?) ついにやっちゃいました。 今までで二箇所あるゼロス視点らしき部分の記述が後で明かされる真相とうまく噛み合わない危険性があります。これは今になってゼロスの行動がおかしいことに気付き、彼の行動理由、行動動機を考え直したためです(またどこかに欠陥があって設定が変わる可能性もありますが)。 本当にもうしわけございません。 ちなみに大きなミスで私が気付いているのではこれくらいですが、小さなミスは誤字脱字以上のものも日常的にやってるみたいです(丹念に見直してるつもりなんですが)。 粗探しするのも一つの楽しみかと(おいおい)。 それでは、これで失礼致します。 次回は第三期最終回である「神の住まう森(後編)」です。 |
29643 | スレイヤーズTRYノベル:十七話:神の住まう森(後編) | オロシ・ハイドラント | 2004/3/19 18:07:37 |
記事番号29635へのコメント 長いのは本編のせいでもありますが、余計なものが下の方にあるからでもあります。 <@><@><@><@><@><@><@><@><@><@> 17:神の住まう森(後編) そこには白ずくめ達がたくさんいた。 さらにあのシャーマン男も。 彼らの視線の先には、恐らくそれがあるのだろう。 巨大な獣。 緋色の毛皮を持った獅子。 熱を発する根源は、恐らくこの巨獣なのであろう。 獅子が動く気配はない。 寝息も聴こえないが目蓋は閉じているため、恐らく眠っているのだろうと思った。 それにしても暑い。 身体に熱が浸透して来る。 そんな中、あたしは白ずくめ達に促がされ、緋色の獅子の正面に立った。 シャーマン男があたし達の方に向き直る。 あたしは極力、相手と目を合わさないように努めた。 男が口を開く。 「よく来たな」 「あんたが来させたんじゃないの?」 「そうとも言う」 「後ろの馬鹿でかい動物は何?」 視線を外したまま、あたしは尋ねる。 「神の御使い暫定様のことか?」 「神の……」 「……御使い暫定?」 シャーマンは頷いた。 「この獣が、神が使わした獣である可能性が非常に高いということだ」 「こんな昼寝してる動物を使わす神様がどこにいんのよ」 「完全なる破壊と消滅と殺戮を好み、世界を闇へと還すことを望む唯一の神よ」 破壊神。 そんな言葉が脳裏をよぎった。 「この緋色の獅子を蘇らし、我は世界を蹂躙する」 「それで……あんたは世界征服でも望んでいるのかしら。陳腐だわね」 そう言って笑うが、状況は圧倒的に不利。 シャーマンはあたし達を容易く眠らせてしまえるだろう。 「ちょっと、リナさん……」 服を引っ張るフィリアに、あたしは一声、 「良いのよ」 訪れたしばしの沈黙。 シャーマン男がいきなり笑い出した。 「世界征服? 笑わせる。……我が望むのはすべての消滅。それのみだ」 「すべての……消滅?」 その望みは魔族の領分だ。 恐ろしき――そうでもないやつもいるけど――魔族達も、世界の滅びを望んでいる。 そういえば、この男が本当に人間であるかは定かではない。 まさかこのシャーマンも魔の一族の者なのであろうか。 「考えてみたことはないか? 世界はどのようにして誕生したかを……」 陶酔気味の声で投げ掛けられる問いに、あたしは首を振って、 「ないわよ」 だがそんなことは気にしていないといった顔で、シャーマンは語り出した。 「あれは今年の十月ほど前のことだ。我はふと思った。世界は最初、何もなかったはずだと」 何もない場所から世界が生まれるはずはない。 だからといって、最初から何かがあったというのはおかしい。 そのような意味の言葉を彼は言い連ねる。 「何かがあるとすれば、それには時間の流れがある。我らに年齢があるように、すべての物質も歳を取るはずだ」 彼が言うには、最初から物質が存在するということはありえないが、最初から何もなかったのならば、世界が存在していること事態がおかしいのだという。 世界を包む時間の出発点には何もあってはいけないが、何もなければ変化はありえない。 つまり世界が存在するのはおかしいのだと、このシャーマン男は言うのだ。 「……で、そんだけの理由で世界を壊すわけ?」 「そんだけとは何だ。立派な理由だ。道端で犬に餌をやっていた時、突然天啓が降りて来たのだぞ」 ……そんな時にかい。 「その三日後、我は神の声を聴いた。神は美しきの声で、世界を滅ぼせと命じられた。その命に従うと誓った時、我は凄まじい力を得た。……それから神に導かれて、我はこの森に辿り着いた。この獅子の目を覚ませというのも神のご意志だ」 内容を聞いただけでは、ただの狂人の台詞にしか思えない。 しかし彼にはあの力がある。 「神は仰った。この獅子が世界を滅ぼすかも知れない、と」 ……確証ないんかい。 「かも知れないと言われたから暫定なのだが、さてこの獅子を起こすには、乙女の肉が必要だと思うのだ」 「……思うって」 「我の勘が正しければそうなのだ」 「……勘って。蘇んなかったら、あたし達、無駄死に?」 「うむ」 はっきりと断言するシャーマン男。 「そうだ。冥土の土産に一つ聞かせてやろう。我が名はシュワルツという」 今さらどうでも良いことを聞かせて来る。 「さあ、獅子よ。乙女の血肉を喰らうが良い!」 そしてシャーマン男――シュワルツは、森の静寂を切り裂くほどの大声で叫んだ。 一斉に泣き叫ぶ木々の梢。 そして訪れた沈黙。 残酷なほど緩慢に、死神は時を刻んでいく。 あたし達はただ哀れな虜囚。 死の祭壇に捧げられる供物。 こんなところでは死にたくない。 だが、果たして抗うことが出来るだろうか。 この沈黙も、いつか終わるはず。 そしてそれは、同時にあたし達の終わりも意味する。 …………。 「……なぜだ!?」 獅子は全く反応しなかった。 ただ眠り続けるのみ。 思えば、目を覚ますのに肉を食わせるというのはおかしい。 眠っている者が肉を食べられるはずがない。 「…………」 シュワルツは俯き、黙り込んだ。 落ち込んでいるのかも知れないが、思考を巡らせているだけかも知れない。 長い沈黙が終わり、彼が口を開いた。 「……まずは我らで切り刻み、それから獅子の口を無理矢理開き、放り込むのだ。この際、「死贄」でも構わん」 諦めてくれれば良いのに、彼はそんな方法を試すつもりらしい。 だがすでにあたし達は、彼の正面にはいなかった。 隙をついて駆け出していたのだ。 彼がそれに気付いた時、すでにあたし達は森に紛れていた。 朝だというのに暗い森を、あたし達は疾駆する。 フィリアは走り辛そうだったが、それでもあたしを追い掛けて来た。 全力で逃げ、時には茂みや樹の上に隠れて追って来る白ずくめをやり過ごし、森の上空へ飛翔して辺りを観察し――だがあまりにも深いため、樹の塊しか見えなかった。 「ねえフィリア、空飛べない?」 あたしの飛行呪文ではきついだろうが、黄金竜の翼ならばこの森を抜けることも可能かも知れない。 「……すみません」 だが彼女は申し訳なさげな表情で、そう言った。 「でも、それしか方法が浮かばないのよ。ここは相手の方に地の理があるだろうし、きっといつかは捕まるわ。それに捕まんなかったとしても、無事に脱出出来るとは限らないし……」 「本当にすみません。無理なんです」 フィリアは必至で訴えた。 「……私、飛べないんです。幼い頃に飛ぶのに失敗して以来ずっと……」 そして完全に沈黙する。 「まあ仕方ないわ」 幼い頃の恐怖はなかなか拭い去れぬものだ。 飛べない竜というのは滑稽なものだが、本人にとっては笑いごとではあるまい。 あたし達は陸路での逃避行を再開した。 何度発見され掛け、何度発見されて戦うことになっただろうか。 白ずくめ達は結構強そうにも見えたのだが、意外にも簡単な呪文で簡単に消し去れた――霧のように消えてなくなった――が、仲間に連絡するためか、逃げようとする者が多いので苦労させられた。 ……あのシュワルツに発見されてはたまらない。 そして、それからどれだけ逃げたことだろう。 あたし達は完全に迷っていた。 深い森だ。 どこまで続くのだろう。 白ずくめ達の姿はもう見えないが、どこにいるかは分からない。 気配を探知するほどの精神力さえ残っていないのだ。 日が暮れて、闇はますます深くなる。 夜になって視界は完全に奪われて、明かりの呪文に頼らざるおえなくなった。 思えばずっと食事をしていない。 体力はすでに限界だ。 言葉を発する気力さえない。 それでもあたし達は歩き続けた。 本当に道はこれで良いのかなどという疑問は、すでに何十回も頭の中に芽生えている。 それでもまだ希望は捨てない。 だがもうだめと思うようになったのは、それからたった数十分ほど後のことであった。 あたしはへたれ込む。 それにつられてか、フィリアもあたしの真似をした。 はあ、と溜息を吐く。 生温い風が全身を揺さぶった。 明かりの呪文が時間切れで消え去る。 眠りの淵に誘われそうになったその瞬間、一筋の光が差し込んだ。 ガウリイ達、かと思った。 だが希望の色は絶望に塗られた。 微かな期待は残酷にも裏切られた。 一筋の光に照らされた顔。 それは望んだ姿を取ってはいなかった。 無気味な仮面が目に入った。 それを見た時、あたしの眼は全開した。 咄嗟に視線をそらす。 「ついに見つけた」 シュワルツに見つかってしまった。 彼は松明を手にしている。 焔はやけに激しく輝いている。 後続して現われ、次々と数を増やす白ずくめ達。 「覚悟しろ。どうせ逃げられはしない。取り囲め!」 シュワルツの声とともに、白ずくめ達があたし達の退路を封鎖した。 「……どうせ誰も助けには来ない」 それからしばし無言不動。 獲物であるあたし達を焦らすかのように何もしない。 あたしが脅えていなかったと言えば、それは嘘になる。 死への恐怖が全身を駆け巡っていた。 それでも、顔には極力表わさないようにした。 ……強がりとも言う。 「さて、うまく調理してやるからな。安心して眠れ!」 その言葉が発せられたのは、永劫の時を越えた先の終末に至る寸前の瞬間とも思えるほどに、非常に長い時間を要した後のことであった。 シュワルツがあたしを見つめる。 「今度は眠りの術ではない。「死ね」の一言でお前を殺す」 このままではまずい。 圧倒的にピンチだ。 死ぬ? あたしはこんなところで死ぬのだろうか? その時、爆風と閃光が世界を覆った。 絶叫が幾重にも響き渡る。 森の静謐は、一瞬にして失われた。 そんな中、それでもあたし達は生きていた。 強烈な爆風を受け、吹き飛ばされそうになりながらも。 白ずくめ達が消え去っている。 言葉通り跡形もなく。 「何ごとだ!?」 今のでダメージを受けたようには見えないシュワルツも、突然の出来事には驚愕を禁じえないようだ。 「ふふっ、驚きましたか?」 どこからともなく声が聴こえた。 知っている声だ。 あまりにもよく知っている。 「どこだ。どこにいる!?」 声を張り上げるシュワルツ。 狼狽と激しい怒気に包まれている。 「あなたのすぐ目の前ですよ」 言ったその一瞬後、シュワルツとあたし達の間には、黒い影が生まれていた。 シュワルツの松明の明かりに照らされ、その全貌が暴かれる。 何とそこにいたのはラファエルであった。 「き、貴様! どうやってここに……」 「どうやってあの扉を開けられたか、ですか? それとも、どうやってこの場所に来ることが出来たか、の方ですか?」 その後ろ姿からも、絶対の自信が窺えた。 「でもそんな疑問よりも、あなたの命の方が危ないのではないですか?」 「何を言うか。我の術は無敵だ!」 シュワルツの優位が、今崩れようとしている。 少なくともあたしはそう思ったし、そう思いたかった。 「確かにあなたは強い力を持っているようですが、このわたくしより強いとは限りませんよ」 ラファエルが何かを呟き始めた。 恐らく呪文詠唱なのだろう。 シュワルツが突進して来る。 シュワルツの槍がラファエルを襲う。 ラファエルの斜め後ろにいるあたしにも、その光景は見えた。 彼を護るものは何もない。 だがラファエルはその攻撃を素早くかわした。 さらに攻撃する。 しかし余裕でかわすラファエル。 眠れだの、死ねだのとシュワルツは言っているが、全く効果を発揮しない。 これだけの攻撃を受けてなお、彼は傷一つついておらず、詠唱を中断することもない。 つ、強い。 魔道士としてだけではなく、戦闘者としての能力が、十二分に備わっている(*1)。 ひょっとして剣なんかを使わせても、かなりの腕を見せるのではないだろうか。 だが華麗なステップも、永遠に続くわけではなさそうだ。 ラファエルの動きが危なっかしくなる。 激しい攻撃の応酬は、ラファエルの余裕という巨大な牙城を突き崩そうとしている。 ラファエルが後ろへ逃げると、そこには樹。 しゃがんで鋭い突きをかわすが、もう逃げられない。 呪文はまだ完成していないようだ。 このままではまずい。 あたしは叫んだ。 だが何も出来そうにない。 悪魔の角がラファエルを捉える。 そして一直線に、彼の胸へと至る……はずだった。 だが実際、槍は軌道をそれ、弧を描いた。 シュワルツは反転し、背後にいた者を迎え撃つ。 何かがぶつかり合う音がした。 シュワルツの槍と、剣だ。 闇に輝く金色の光。 何とそこにはガウリイがいた。 シュワルツの槍が叩き斬られる。 仮面に隠されて表情は見えないが、彼は動揺しているのだろう。 その時、ラファエルは叫んだ。 「ラグナ・ブレス!」 あの、ムッサボリーナであたし達を襲った巨狼を倒した呪文。 それがシュワルツに襲い掛かる。 何も見えなかった。 何も……。 突然、ガウリイと戦っていたシュワルツが、驚愕の叫びを上げる。 彼の仮面が消滅したのだ。 彼の全貌が明らかになった。 黒髪黒目の思い切り地味な壮年男であった。 何も生まず、ただ消し去るのみの呪文。 ラファエルがおこなったのは、恐らくそんな類の呪文だろう。 「その仮面からは強い魔力を感じたので、破壊させて頂きました。あなたの力の秘密ですよね」 「おのれ……」 ガウリイの攻撃を受け止めたまま、首だけ振り向いたシュワルツが言う。 「無駄ですよ。仮面を失ったあなたでは、ガブリエフさんには勝てない。……彼の持つ妖斬剣(ブラスト・ソード)という剣は、巨大な竜の鱗さえ切り裂きます。まともに喰らえば、あなたの命は失われるとわたくしは思いますが」 「んぬぬ……」 「わたくし達を、この森から出してください。当然のことながら、馬車と荷物も返却願います。あなたにはそれが可能ですよね」 改めてあたしは、ラファエルの強さを思い知った。 結局、シュワルツは屈服した。 彼はあたし達を、あたし達が囚われていたあの建物まで案内した。 詫びとして食事――肉や野菜、キノコなどを焼いたものであった(*2)――を出してくれた。 結構親切な人かも知れない。 まともな寝床はなかったので、あたし達は小屋に放り込まれていた馬車で眠り、翌朝出発した。 あの道通りに進むと、森を抜けることが出来た。 ほど良い頃に、あたしはラファエルと情報交換をした。 話によると、彼らも同じように囚われていたらしい。 彼らは閉ざされた部屋で餓死させられる予定となっていたのだという。 彼ら二人は、あたし達が殺されることを白ずくめ――あの白ずくめ達はシュワルツによって造られた使い魔のような存在らしい――によって知らされ、急遽脱出を試みた。 普通の呪文では開かなかった扉だが、シュワルツの仮面を消し去ったあの呪文を使って消滅させた。 そしてあたし達を探している途中、白ずくめに出会った。 その白ずくめの後を根気良く追っていくと、日も落ちた頃、急に白ずくめの移動ペースが上がった。 さらに追跡を続けると、あたし達のいる場所に辿り着いた。 「白ずくめ達は恐らく、何らかの方法であの男に呼び出されたのでしょう」 彼らは樹の上に登り、格好良く降り立った。 話は以上であった。 ちなみに追跡中、彼らはキノコで空腹を満たしていたのだという。 キノコには毒を持つものが多い。 知識豊富なラファエルがいてこそ出来ることだ。 またシュワルツと戦う時、シュワルツの術が全く通じなかったことも疑問に思っていたのだが、何とあれは目を瞑っていたからだそうである。 やはりシュワルツの術は見つめ合った相手にしか通じないらしい。 となると、彼はあの槍の猛襲を、視力に頼らずにかわし続けた? こんなことが出来るものなのだろうかと、あたしは改めてラファエルの凄さに驚いた。 続いて、あたし達も事情を話した。 ラファエルは興味深げに聞いていたが、特にコメントはなかった。 「それにしても、あれは何だったのかしら。……あの獅子」 緋色の毛皮を纏った獅子。 眠り続ける破壊の神の御使い。 「ああ、もしやトモシビジシなのかも知れません」 「トモシビジシ? どっかで聞いたような……」 「この辺りに住む獣の一種ですよ。本で読みました。……何でも一生に一度だけ目覚めて、異性を見つけるために大移動をするとか」 長命だが僅かな時間しか起きておられず、実質短命であることと変わりないこの獅子は、その儚さゆえに灯火獅子と呼ばれているのだとラファエルは続けた。 「全く、インバースさん達が羨ましいです。あのトモシビジシに出会えるなんて……」 トモシビジシは絶滅寸前、いやすでに絶滅したとも言われていたのだという。 夢だけを見続けた獅子は、いつしか楽園を失ってしまったのだ。 「それにしても、トモシビジシを神の御使いとして崇めよ、だなんて……意地悪な神様もいるもんですねえ」 何はともあれ、すべては終わった。 やはりシュワルツのあの力は、すべて仮面がもたらしたものらしい。 使い魔を造り出せたのも、仮面の魔力があったこそだからだという。 その仮面をどのようにして入手したのかと聞いても、神から授かったとしか言わなかったが。 ちなみに身体に刻んだ奇妙な紋様は、単なる飾りらしい。 ――リナちゃんのちょっと寂しい注釈―― (*1)魔道士としてだけではなく、戦闘者としての能力が、十二分に備わっている。:まあ、あたしがラファエルに負けたのは、彼の動きが凄かったからなので、初めから知っていたといえば知っていたのだが。 (*2)食事――肉や野菜、キノコなどを焼いたものであった:素材は良かったが、味つけが最悪だった。 あとがき ついに第三期終了しました。 やっとここまで来たぞ、という思いと、まだこんなところかよ、という思いが複雑に絡み合っている状態です。 それにしても今回注釈少ないですねえ。我ながら。あんまり面白くもないし。 さて、四期(と五期)はヴァルガーヴとの決戦に入ります。それだけでなく古都ローズ・シティを迷走したり、地下迷宮を冒険したり、と色んなオリジナル要素があるはず。 その前に「ゼルガディスの手記」が挟まれると思いますが…… それでは、これで失礼致します。 三期終了記念というほどのものかどうかは分かりませんけど、名前の由来集みたいなものを作ってみました。 興味のある方だけどうぞ。 登場名詞の名前の由来 由来があるものだけ書きました。 ラファエル フランス作家ジルベール・シヌエの暗号ミステリー(?)「サファイアの書」に出て来る修道士のラファエル・バルガスという人物が気に入ったので、そこから借用。 ちなみにこのラファエルの姓は明かされないと思います。 エイデンバングル ゲームソフト「ファイナルファンタジー7」に〜バングルという感じの防具がいくつもあり、エデンバングルって防御力高そうだなあと思ったのが始まり。いつの間にかエイデンバングルになってキャラの名前になってました。 ミュヘン ゲームソフト「ファイナルファンタジー10」に出て来る英雄ミュヘンから取りました。私の書くミュヘンは臆病者ですが、最初の威勢だけは英雄並みだと思いましたので。ちなみにゲームにはミュヘン街道という場所も出て来ます。超名前負け。 ザルフバザード(最長老) 後半部分、バザードはアニメ版のフィリアの父の名前。父じゃなく祖父なので、付属品をつけました。 ヨハネスハルト バザードにしようかと思ったんですが、似合わないと思ったので、止めました。ヨハネスブルクって土地があったし、ヨハネスという名前の教皇もいたような。 アデイル 良い名前が浮かばなかった時期でして、荻原規子の「西の善き魔女」の登場人物から取ったんですが、使ってみると意外と良い名前。気品のある老婦人といった感じで(「西の善き魔女」では若いお姫様でしたが)。 アルマール 古川日出男「砂の王」に登場する街の名前。 グラスフェル ちらっと出たキャラクタ。 グラスはワイングラスとかのグラスから。フェルは、アメリカの推理作家ジョン・ディクスン・カーの作り上げた名探偵フェル博士から。 シュワルツ ドイツ語で黒だったはず。田中芳樹の「銀河英雄伝説」にシュワルツランツェンレイター(黒色槍騎兵)という艦隊がありましたし。 アシュエル・ギー まだ登場してないけど(次回に登場)、登場人物一覧に乗ってるはずです。 アシュエルは古川日出男「砂の王」の戦士アシュエルから。ギーはTRYノベルにも大きな影響を与えたイタリアの作家ウンベルト・エーコのミステリー「薔薇の名前」に出て来る異端審問官ベルナール・ギーから。 フェンリル(動物) 北欧神話からだが、あまりそちらは参照にしていない。また鏡貴也の「武官弁護士エル・ウィン」にフェンリル運送とかいう企業があったような……。 ムッサボリーナ(街) 貪りいな、という言葉から来てます。つまり貪りなさい、とかそんな感じです。 つまり街の魅力を貪るように味わいつくせってことなんです。 まあスレイヤーズ世界の言葉は日本語ではないと思いますけど(アニメで挑発と長髪を間違えるシーンがあったが)。 パルス・タウン(町) 「スレイヤーズ」の呪文バルス・ロッドをパルス・ロッドと読み間違えたことからすべては始まりました。 金色の竜(喫茶店) 黄金竜からです、もちろん。 太陽の尖塔(建造物? 芸術作品?) 秋田禎信「魔術士オーフェン」の呪文「我は築く太陽の尖塔」と、あるいは岡本太郎の「太陽の塔」から。 巨竜の化石(山脈) 手塚一郎「最後の竜に捧げる歌」に神々の化石という場所がありました。あれは山脈ではないですが。 |
29646 | 不可思議な生態ですね | エモーション E-mail | 2004/3/19 22:01:48 |
記事番号29643へのコメント こんばんは。 番外(?)とはいえ、さりげなく伏線というか謎が散らされてそうと、 思いつつ読ませていただきました。 謎のシャーマン──シュワルツさん。……電波だ、ス○ラー波を受信しているぞ(笑)と、 読みながら呟いてしまいました。 「白ずくめ」で「パ○ウェーブ〜」とか連想したせいと思われます。 今回ちらりとラファエルさんの過去が語られましたね。本人がそう言っているだけなので、 どこまで事実かというのもありますが、「細かく語っていない部分はあっても、 まず事実なんだろうな」と感じました。 そしてやはり強い……。今回リナはすっかりヒロイン役ですね。 また、フィリアは空を飛べないんですか……。トラウマになるほどって、 余程凄まじい失敗したのでしょうか。 > やはりシュワルツのあの力は、すべて仮面がもたらしたものらしい。 > 使い魔を造り出せたのも、仮面の魔力があったこそだからだという。 > その仮面をどのようにして入手したのかと聞いても、神から授かったとしか言わなかったが。 シュワルツさんに聞こえた「神の声」そして仮面を与えた「神」……。 何となく、体よくデンパを利用して、嫌がらせ、というか、からかわれた感じがしますね。 ヴァルガーヴサイドとは微妙に違う感じなので、他のものなのでしょうけれど。 >「この辺りに住む獣の一種ですよ。本で読みました。……何でも一生に一度だけ目覚めて、異性を見つけるために大移動をするとか」 > 長命だが僅かな時間しか起きておられず、実質短命であることと変わりないこの獅子は、その儚さゆえに灯火獅子と呼ばれているのだとラファエルは続けた。 ずーっと眠り続けているトモシビジシ……。繁殖のためだけにしか起きないというのが……。 何だか個体数がもう少なくなっていて、確かに絶滅寸前になっているじゃないかとか、 目が覚めて、どこにいるか分からない相手を捜して移動しつつけるのかと思うと、 それはそれで凄いものがあるなとか、生態を調査するのに、かなりの時間と 根気と運が必要そうな生き物なんだなと、あれこれ考えてしまいました。 何気に私の細かい部分の設定好きのツボでした、このトモシビジシ。 リナちゃんの注釈、今回も面白かったです♪ 登場名詞の名前の由来も、あ、やっぱり(^.^)なものから、これからなんだーと、 楽しめました。 ゼルガディスの手記のあと、四期に入るのですね。 さて、リナたちよりは平穏に旅をしているはずのゼルアメ組。 火竜王の神殿にたどり着いたところから始まるのでしょうか。 続きを楽しみにしています。 それでは、今日はこの辺で失礼いたします。 |
29649 | Re:食べ物なしで生きられるんでしょうかねえ? | オロシ・ハイドラント | 2004/3/20 15:13:17 |
記事番号29646へのコメント >こんばんは。 こんばんは。 > >番外(?)とはいえ、さりげなく伏線というか謎が散らされてそうと、 >思いつつ読ませていただきました。 でも意外と露骨におかれてたり。 真相が明かされる時になって、あっこれが伏線だったんだ、と初めて気付くような伏線がベストだと思っているんですが(京極夏彦の「魍魎の匣」のトラックに関するアレでは、周りに家族がいたにも関わらず、「あっ」と声を上げてしまいました)、そこまでのものはなかなか難しいです。 露骨なものか、セコいくらい分かり辛いものになってしまいます。 > >謎のシャーマン──シュワルツさん。……電波だ、ス○ラー波を受信しているぞ(笑)と、 >読みながら呟いてしまいました。 >「白ずくめ」で「パ○ウェーブ〜」とか連想したせいと思われます。 そういえばいましたよね、そういうの(笑)。書いている時は微妙に意識していたかも知れません。 それにしても我ながら危なすぎ…… > >今回ちらりとラファエルさんの過去が語られましたね。本人がそう言っているだけなので、 >どこまで事実かというのもありますが、「細かく語っていない部分はあっても、 >まず事実なんだろうな」と感じました。 確かにあれが嘘だという可能性は低いと思います。 嘘を吐く必要性もなさそうですし…… >そしてやはり強い……。今回リナはすっかりヒロイン役ですね。 目を瞑ったまま、攻撃を連続回避ですからね。 もはや彼に勝てる人間なんて、ルナ姉さんくらいかも知れません(さすがにルナさんには及ばないかと)。 >また、フィリアは空を飛べないんですか……。トラウマになるほどって、 >余程凄まじい失敗したのでしょうか。 かなりスピード出ている状態で地面に激突してしまったとか、そんな感じでしょうかねえ。大失敗といえば。 > >> やはりシュワルツのあの力は、すべて仮面がもたらしたものらしい。 >> 使い魔を造り出せたのも、仮面の魔力があったこそだからだという。 >> その仮面をどのようにして入手したのかと聞いても、神から授かったとしか言わなかったが。 > >シュワルツさんに聞こえた「神の声」そして仮面を与えた「神」……。 >何となく、体よくデンパを利用して、嫌がらせ、というか、からかわれた感じがしますね。 >ヴァルガーヴサイドとは微妙に違う感じなので、他のものなのでしょうけれど。 「神」が実在するかどうかは別として、シュワルツも「悪」ではないようです。 > >>「この辺りに住む獣の一種ですよ。本で読みました。……何でも一生に一度だけ目覚めて、異性を見つけるために大移動をするとか」 >> 長命だが僅かな時間しか起きておられず、実質短命であることと変わりないこの獅子は、その儚さゆえに灯火獅子と呼ばれているのだとラファエルは続けた。 > >ずーっと眠り続けているトモシビジシ……。繁殖のためだけにしか起きないというのが……。 >何だか個体数がもう少なくなっていて、確かに絶滅寸前になっているじゃないかとか、 >目が覚めて、どこにいるか分からない相手を捜して移動しつつけるのかと思うと、 >それはそれで凄いものがあるなとか、生態を調査するのに、かなりの時間と >根気と運が必要そうな生き物なんだなと、あれこれ考えてしまいました。 >何気に私の細かい部分の設定好きのツボでした、このトモシビジシ。 トモシビジシは我ながら気に入ってたりする動物でもあります。何も食べないのに生きているのが不思議ですが。 こういう珍しい動物や、植物、自然現象に出会うのも旅の醍醐味ですね(?)。 > >リナちゃんの注釈、今回も面白かったです♪ >登場名詞の名前の由来も、あ、やっぱり(^.^)なものから、これからなんだーと、 >楽しめました。 ありがとうございます。こういうのは遊びで書けるから楽しくて良いです。 本文は本当に真面目に書いてますから(時々、ふざけるけど)。 > >ゼルガディスの手記のあと、四期に入るのですね。 とういうより、四期の初めがゼルガディスの手記といった感じです。 >さて、リナたちよりは平穏に旅をしているはずのゼルアメ組。 >火竜王の神殿にたどり着いたところから始まるのでしょうか。 ゼル達は砂漠で、今後重要になって来る人物と出会います。 相変わらず、基本的には平穏なサイドですが、謎の方はちゃんと配置されているかと…… >続きを楽しみにしています。 >それでは、今日はこの辺で失礼いたします。 ご感想どうもありがとうございました。 |