◆−夏の午後−れーな (2004/3/16 23:09:41) No.29623
29623 | 夏の午後 | れーな E-mail | 2004/3/16 23:09:41 |
こんばんわ。初めましての方がほとんどではないかと思われますので、初めまして。れーなと申します、よろしくしてやって下さい。 もしかしたらお久しぶりの方、ご無沙汰しております。ご無沙汰しすぎてごめんなさい。良かったらまた声かけてやって下さいな。 単発ゼロリナです。 とゆーかココ最近ゼロリナ少なくて、信奉者としては寂しい限りです(;; ので、こっそり投稿。苦手な人はごめんなさい。 ではよろしかったらどーぞ↓ ================================================================================= 眩しい日差しに 目が眩む 白昼夢 床に映る黒い影 私は 果たして 何を見たのだろう 「夏の午後」 初夏の段々と厳しくなってきた陽射しが、木々を道を、人々の肌をじりじりと焼いている。時折吹く清々しい風が、彼らの汗を冷やし、乾燥した道の砂塵を吹き上げてゆく。 リナは食堂をかねた宿屋の2階のテラス、その屋根の影に隠れるテーブルに1人で陣取っていた。 テラスは道に向かって張り出しており、テーブルが数組置かれている。そこでは階下の食堂で注文したものを食べることができた。 今はリナ以外の客はおらず、街の中心部から少し外れた場所にあるために道を通る人もまばらで、あたりは静かだった。リナは少し早い午後のお茶を楽しんでいるところだった。 というか、要するに暇だったのだけれど。 1杯目を飲み干し、2杯目をポットから注ぎ終えたときに、それは来た。 日なたに立っているにもかかわらず、その金色の陽射しに決して染まろうとしない黒を見ると、リナは呆れにも似た感情と共に、息を吐き出した。 仕方なくけだるい視線で見上げると、それはにこ、と微笑って近付いてきた。 「こんにちは」 「・・・・・・ゼロス」 この男との問答は決して嫌いではなかったが、気力を使う。 今日のような、真夏はまだ遠いのに気温は高く、首筋に張り付く髪が鬱陶しくて仕方が無いときに、さらに疲れてしまうであろうことが気詰まりだった。 「他の皆さんはどうなさったんです?」 「アメリアは買い物、ガウリイは荷物持ち。ゼルは・・・部屋にいるんじゃない」 座れば、と目で椅子を示したが、ゼロスは長く居るつもりはありませんから、と言って首を振った。 「・・・で、何か用?」 「いえ、特に用事というわけではないんですけどね。仕事の合間に寄ってみただけでして」 「ふーん。仕事ねぇ・・・」 「信じませんか?」 「さぁ、ね」 実際は別に信じるとか信じないとかいうことを思ったわけではなかった。 ただ、その仕事とはどのようなものだったのだろうか、ということが頭をよぎった。 例えばそれが誰かを殺すことだったとしても、この男はそれがどうしたと言わんばかりに、ここへやって来たのだろう。その法衣に溶ける黒い返り血も、纏わりつく鉄くさい匂いも、事の痕跡は全て消し去って、ここへやって来るのだろう。 この冷徹な魔族は。 「何を考えていらっしゃるんですか?」 ふと投げかけられた問いに、リナはカップから目線を引き上げて、言葉を探した。 「・・・・・・何だと思うの」 「さて・・・分かりかねますねぇ」 おどけた色をその瞳に乗せる。 本当に、この人間臭さといったら魔族一に違いない。 「僕は貴女の保護者さんとは違いますからね」 「保護者だからって何もかも分かられちゃたまらないわよ。・・・別に大したこと考えてたわけじゃないわ。それこそ、あんたにとっちゃどうでもいいようなコト」 嘘ではないはずだ、と思う。 「そうですか?」 ゼロスは少し首を傾げた。さら、と流れる髪は腹立たしいほど滑らかで。 「だったら教えてくださっても」 「いや。」 リナは短く言うと、すました顔で紅茶を啜る。 少し苦くて顔をしかめると、ゼロスがテーブルの中心にあった砂糖の壺を引き寄せてよこした。 「つれないですねぇ」 「普通でしょ。あんた相手じゃ」 リナは砂糖を少しすくって、紅茶の中に落とした。 茶色の液体をスプーンでかき混ぜれば、細かい粉はくるくると舞って、すぐに消えていった。 「そぉゆぅのを、差別っていうんですよ?」 「それ、あんたにだけは言われたくないわねー・・・」 半眼になって睨みやると、ゼロスはふむ、と顎に手をあてた。 「・・・・・・もしやリナさん」 「何よ」 まじまじとこちらを見つめてくるゼロスに、リナはこころもち腰をずらして遠ざかる。 「・・・・・・今日はご機嫌斜めですね?」 「・・・・・・・・・」 思わず脱力してテーブルに突っ伏した。 「あれ、リナさん?」 「・・・・・・あんた・・・」 「はい?」 リナはなんとも情けない気分になってゼロスを睨めつけた。 どうしようもなく、からかわれてる気がした。きっと裏でほく笑えんでるのに違いない。 こっちの気も知らないで。 「ったく・・・」 身体を起こすと、苛立たしく髪をかき上げる。 何考えてるんだか分かんないのはどっちよ、と心の中で吐き捨てた。 「えーえー、そーですともあたしは機嫌が悪いの。もー暑いし暇だし挙句の果てにおとぼけ魔族も出てくるし紅茶は苦いし?分かったらさっさと帰って頂戴」 「暑さや紅茶は僕のせいじゃ・・・」 「魔族のくせに細かいことにこだわらないの」 「はぁ・・・」 ゼロスは困ったように頬を掻いて言った。 「じゃぁ・・・今日はもう帰りますね」 リナは少し驚いてゼロスを見た。 「珍しく素直ね」 「長くは居ないと言ったでしょう?これでも忙しい身なんですよ」 その言葉とは裏腹に、ゼロスはこちらに向かって一歩、踏み出した。 「だったら――」 リナはそこで言葉を切った。 ゼロスの手がリナの顎に触れていた。 あっという間に、視界にゼロス以外のものが見えなくなる。 何故かそうすべきなのだと感じて、リナは眼を閉じた。 ゼロスはすぐに離れた。 それからにっこり笑って優雅に一礼する。 「またお会いしましょう、リナさん」 言葉の余韻だけ残して、魔族はふっとかき消えた。 リナはゼロスが去ったあともしばらくぼんやりしていたが、手に持ったままのティーカップを見下ろして、なんとなく飲む気をなくしてテーブルの上にそれを置いた。 紅茶はもうだいぶぬるくなっているようだった。 通りの方から、聞きなれた声が聞こえてきていた。アメリアとガウリイが帰ってきたらしい。 アメリアの賑やかな声に、少しほっとしながら立ち上がる。 リナはため息と共に、そっと呟いた。 「いやなやつ・・・」 机に戻した椅子が、かたん、と小さな返事を返した。 眩しい日射しに 目が眩んだ 白昼夢 床に黒い影が映る 私は 果たして 何かを見たのだろうか ====================================================================================== 季節感ズレすぎですねー、ご容赦ください。季節が分からないほど非常識、というわけでは決してないです。 夏に書き始めて、どういうわけか書きあがったときは冬だったとゆー代物です。こんなに短いのに・・・。 ではでは、読んでくださった方、ありがとうございましたm(_ _)m |